【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度〜平成26年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池と内燃機関とを組み合わせ、前記燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、前記排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、前記内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記分岐点より分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁と、前記ベントラインの前記遮断弁より下流側に設けられた圧力損失手段と、前記再循環ラインに液相の水を供給する水供給手段と、前記燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧を計測する系統差圧計測手段と、を具備した複合発電システムの制御方法であって、
前記燃料電池の発電を停止する場合、または前記燃料電池の発電が異常停止する場合に、封じ込めをするか否かを判定し、
封じ込めをしない場合は、前記ベントラインに前記圧力損失手段で所定の圧力損失を与えながら、前記遮断弁を開状態とし、前記水供給手段の水流量を制御して前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とする複合発電システムの制御方法。
燃料電池と内燃機関とを組み合わせ、前記燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、前記排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、前記内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記分岐点より分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁と、前記ベントラインの前記遮断弁より下流側に設けられた圧力損失手段と、前記再循環ラインに液相の水を供給する水供給手段と、前記燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧を計測する系統差圧計測手段と、を具備する複合発電システムの制御プログラムであって、
前記燃料電池の発電を停止する場合、または前記燃料電池の発電が異常停止する場合に、封じ込めをするか否かを判定し、
封じ込めをしない場合は、前記ベントラインに前記圧力損失手段で所定の圧力損失を与えながら、前記遮断弁を開状態とし、前記水供給手段の水流量を制御して前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とすることをコンピュータに実行させるための複合発電システムの制御プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のように、窒素を用いて発電停止時の差圧制御をするには、窒素の使用量が多くなるので、SOFCシステムの導入先は十分な窒素ユーティリティ設備が用意できるサイトに限定され、市場性を阻害する要因になる課題があった。また、窒素ユーティリティの設備があるサイトにおいても窒素の消費に伴うランニングコストが高くなるので窒素の消費を極力抑制し、経済性が低いという課題があった。
また、上記特許文献2のように、水蒸気を用いる場合には、気化器を設ける必要があり、経済性に対する課題を解決できない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、設備コスト及びランニングコストを抑えることのできる複合発電システム、その制御装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、燃料電池と内燃機関とを組み合わせた複合発電システムの制御装置であって、前記複合発電システムは、前記燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、前記排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、前記内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記分岐点より分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁と、前記ベントラインの前記遮断弁より下流側に設けられた圧力損失手段と、前記再循環ラインに液相の水を供給する水供給手段と、前記燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧を計測する系統差圧計測手段と、を具備し、前記燃料電池の発電を停止する場合、または前記燃料電池の発電が異常停止する場合に、
封じ込めをするか否かを判定し、封じ込めをしない場合は、前記ベントラインに前記圧力損失手段で所定の圧力損失を与えながら、前記遮断弁を開状態とし
、前記水供給手段の水流量を制御
して前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とする複合発電システムの制御装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、燃料電池と内燃機関とを組み合わせ、燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、分岐点より分岐して燃料電池に排燃料ガスを流通させる再循環ラインとを具備する複合発電システムにおいて、燃料電池の発電を停止する場合、または燃料電池の発電が異常停止する場合に、分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁より下流側の圧力損失手段によって、ベントラインに所定の圧力損失が与えられ、ベントラインの遮断弁は開状態とされ、燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧が所定値になるよう再循環ラインに供給される液相の水流量が制御される。
再循環ラインから供給された水は、再循環ラインを流通する高温(例えば、250〜500℃)の排燃料ガスにより気化し、蒸気となって燃料電池側に供給される。こうして燃料側を正圧に維持し、水によって燃料電池の空気系統と燃料系統の系統差圧が制御される。
このように、窒素に比べて安価な水を使用するのでランニングコストが抑えられ、経済性が高い。また、水は、貯蔵も容易である。また、再循環ラインから窒素を供給させないようにすれば、コスト低減につながる。
燃料極におけるC析出の予防に対して水(H2O)が一定量以上必要であるが、本発明では水を供給するので、C析出予防の観点からも水を十分確保できる。
【0010】
上記複合発電システムの制御装置において、封じ込めをする場合は、前記燃料電池の前記燃料系統及び前記空気系統の供給系と、前記燃料系統及び前記空気系統の排出系とをそれぞれ遮断し、前記燃料系統の圧力が前記空気系統の圧力より所定圧力以上小さい場合は、前記水供給手段の水流量を制御して前記燃料系統の圧力を調整し、前記燃料系統の圧力が前記空気系統の圧力より所定圧力以上大きい場合は、前記遮断弁を開状態として前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とするとしてもよい。
【0011】
上記複合発電システムの制御装置において、燃料系統の圧力は、前記遮断弁を開閉すること、または、前記水供給手段の水流量を制御することにより、調整されることとしてもよい。
【0012】
内燃機関が故障した場合等のインターロックやトリップ動作時には背圧調整ができなくなるが、ベントラインの遮断弁を遮断することで水の供給側で圧力調整ができる。このように、遮断弁の間欠運転によって燃料側の圧力上昇に速やかに対応できる。また、遮断弁は、制御弁より安価であり、比較的にコストが低い。
【0013】
上記複合発電システムの制御装置において、前記水供給手段は、前記水を噴霧して供給するスプレー手段を具備することが好ましい。
【0014】
水を噴霧して、再循環ラインに水を供給することにより、気化しやすくなり、簡便に水で差圧制御ができる。
【0015】
上記複合発電システムの制御装置において、前記燃料系統の圧力は、前記水供給手段から水流量を制御するとともに、前記再循環ラインへの窒素供給流量を制御することで調整されてもよい。
窒素を併用することにより、系統差圧の制御が短時間に行える。
【0016】
上記複合発電システムの制御装置は、前記燃料電池の発電が異常停止し、封じ込めをする場合において、前記燃料系統の圧力が、前記空気系統の圧力より所定圧力以上小さくなった場合に、前記水供給手段から水を供給し、前記燃料系統の圧力を調整してもよい。
【0017】
封じ込めにおいて燃料系統の圧力が空気系統の圧力より所定圧力以上小さくなり、系統差圧が大きくなった場合には、水供給により燃料系統の圧力が簡便に調整できる。
【0018】
上記複合発電システムの制御装置は、前記燃料電池の発電が異常停止し、封じ込めをする場合において、前記燃料系統の圧力が、前記空気系統の圧力より所定圧力以上大きくなった場合に、前記遮断弁を開状態にし、前記燃料系統の圧力を調整してもよい。
【0019】
封じ込めにおいて燃料系統の圧力が空気系統の圧力より所定圧力以上大きくなり、系統差圧が大きくなった場合には、遮断弁の開放により燃料系統の圧力が簡便に調整できる。
【0020】
本発明は、上記いずれかに記載の制御装置を備えた複合発電システムを提供する。
【0021】
本発明は、燃料電池と内燃機関とを組み合わせ、前記燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、前記排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、前記内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記分岐点より分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁と、前記ベントラインの前記遮断弁より下流側に設けられた圧力損失手段と、前記再循環ラインに液相の水を供給する水供給手段と、前記燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧を計測する系統差圧計測手段と、を具備した複合発電システムの制御方法であって、前記燃料電池の発電を停止する場合、または前記燃料電池の発電が異常停止する場合に、
封じ込めをするか否かを判定し、封じ込めをしない場合は、前記ベントラインに前記圧力損失手段で所定の圧力損失を与えながら、前記遮断弁を開状態とし
、前記水供給手段の水流量を制御
して前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とする複合発電システムの制御方法を提供する。
【0022】
本発明は、燃料電池と内燃機関とを組み合わせ、前記燃料電池から排燃料ガスをブロワにより送気する排燃料ガスラインと、前記排燃料ガスラインの分岐点より分岐して、前記内燃機関に排燃料ガスを供給する排燃料ガス供給ラインと、前記分岐点より分岐して前記燃料電池に前記排燃料ガスを流通させる再循環ラインと、前記分岐点より上流側から分岐するベントラインに設けられる遮断弁と、前記ベントラインの前記遮断弁より下流側に設けられた圧力損失手段と、前記再循環ラインに液相の水を供給する水供給手段と、前記燃料電池の空気系統と燃料系統の間の差圧を計測する系統差圧計測手段と、を具備す
る複合発電システムの制御プログラムであって、前記燃料電池の発電を停止する場合、または前記燃料電池の発電が異常停止する場合に、
封じ込めをするか否かを判定し、封じ込めをしない場合は、前記ベントラインに前記圧力損失手段で所定の圧力損失を与えながら、前記遮断弁を開状態とし
、前記水供給手段の水流量を制御
して前記燃料系統の圧力を調整して前記系統差圧計測手段で計測する差圧を所定値とすることをコンピュータに実行させるための複合発電システムの制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設備コスト及びランニングコストを抑えて複合発電設備の制御ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る複合発電システム、その制御装置及び方法並びにプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1に示される複合発電システム1は、高温型の燃料電池であるSOFC10と、内燃機関であるガスタービンやガスエンジンの一例としてマイクロガスタービン(以下、「MGT」と呼ぶ)50と制御装置90とを備えており、SOFC10とMGT50とを組み合わせることにより、効率のよい発電を行うものである。
【0027】
すなわち、都市ガス(天然ガス)等を改質した燃料ガス及び空気等の酸化性ガスの供給を受けて電解質を介した電気化学反応により発電するSOFC10に加えて、SOFC10から発電後に排出される高温の排燃料や排出空気を燃焼器に導入して燃焼ガスによってMGT50を運転し、MGT50の出力軸に連結された不図示の発電機を駆動して発電を行うものである。なお、酸化性ガスとは、酸素を略15%〜30%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用できる。
さらに、MGT50から排出される高温の燃焼排ガスを排熱回収ボイラに導入すれば、発生した蒸気によって蒸気タービンを駆動することによる発電も組み合わせた複合発電システムの構築も可能である。
【0028】
以下では、上述したSOFC10を採用した複合発電システム1について説明する。このSOFC10は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスを用い、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、石炭ガス化ガスなどを燃料として運転(発電)するものであり、イオン伝導率を高めるため、作動温度が約800〜1000℃程度と高く設定されている。
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直行する水平方向に対応してもよい。
また、以下においては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルスタックとして円筒形を例として説明するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。
【0029】
図2を参照して本実施例に係る円筒形セルスタックについて説明する。ここで、
図2は、本実施形態に係るセルスタックの一態様を示すものである。セルスタック101は、円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105の内、基体管103の軸方向において最も端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を有する。
【0030】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ:カルシア安定化ジルコニア)、又はY
2O
3安定化ZrO
2(YSZ:イットリア安定化ジルコニア)、又はMgAl
2O
4とされる。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0031】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を有する。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111を介して供給される酸素イオン(O
2−)とを固体電解質111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)を生成するものである。なお、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0032】
固体電解質111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。この固体電解質111は、空気極113で生成される酸素イオン(O
2−)を燃料極109に移動させるものである。
【0033】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成するものである。
【0034】
インターコネクタ107は、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタにより直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0035】
燃料極109は、燃料供給系20から天然ガス等の燃料が供給され、SOFC10に供給された燃料ガスを燃料ガス排出系27に排出する。
空気極113は、酸化性ガス供給系70から空気が供給され、電気化学反応に利用された高温の排出空気を酸化性ガス排出系72に排出する。酸化性ガス供給系70は、後述するガスタービン53の圧縮機21と接続され、酸化性ガス排出系72は、ガスタービン20の燃焼器52に接続されている。
【0036】
なお、SOFCモジュールは、複数のSOFCカートリッジ11(
図3参照)と、これら複数のSOFCカートリッジを収納する圧力容器81とを有している。
SOFCカートリッジ11は、
図3に示す通り、複数のセルスタック101と、発電室13と、燃料ガス供給室14と、燃料ガス排出室15と、酸化性ガス供給室16と、酸化性ガス排出室17とを有する。
【0037】
本実施形態のSOFCカートリッジ11は、セルスタック101の長手方向で空間を仕切り燃料ガス供給室14及び燃料ガス排出室15を形成する管板82a,82b、及びセルスタック101の長手方向で空間を仕切り、管板82bとの間で酸化性ガス供給室16を形成する断熱板83b、及び管板82aとの間で酸化性ガス排出室17を形成する断熱板83aを有しており、
図3に示されるように、紙面上から下に、順に燃料ガス供給室14、酸化性ガス排出室17、発電室13、酸化性ガス供給室16、燃料ガス排出室15が形成され、配置されている。
【0038】
燃料ガス供給室14と燃料ガス排出室15と酸化性ガス供給室16と酸化性ガス排出室17とがこのように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっている。しかし、必ずしもこの配置や構成に限定されることはなく、例えば、セルスタックの内側と外側とを平行して流れる、または、酸化性ガスがセルスタックの長手方向と直交する方向へ流れるようにしてもよい。
【0039】
発電室13は、酸化性ガス供給室16と酸化性ガス排出室17との間に形成された領域である。この発電室13は、セルスタック101の燃料電池セルが配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室13のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度は、燃料電池モジュールの定常運転時に、およそ800℃〜1000℃の高温雰囲気となる。
【0040】
燃料ガス供給室14は、セルスタック101の一方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室15に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室14は、図示しない燃料ガス供給管枝から燃料ガス供給孔を介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
【0041】
燃料ガス排出室15は、セルスタック101の他方の端部が、セルスタック101の基体管103の内部が燃料ガス排出室15に対して開放して配置されている。この燃料ガス排出室15は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出室15に供給される排燃料ガスを集約して、図示しない燃料ガス排出孔を介して燃料ガス排出枝管に導くものである。
【0042】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ11の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室13に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室15に供給される。また、燃料ガスは、発電室13から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室13に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室13に供給することができる。
【0043】
以下の説明では、燃料として都市ガスをSOFC10の外部または内部で改質して使用し、酸化性ガスとして空気を使用する場合について説明するが、この場合の空気は、MGT50から供給される圧縮空気となる。又は、別に空気圧縮機を設けて空気を供給することとしても良い。
【0044】
MGT50は、例えば、
図1に示されるように、圧縮機51と、燃焼器52と、タービン53とを備えている。なお、図中の符号54はフィルタ、55は再生熱交換器である。圧縮機51は、フィルタ54を介して導入した大気(空気)を圧縮するもので、この場合の駆動源はタービン53となる。圧縮機51で圧縮された圧縮空気は、燃焼器52や再生熱交換器55を介してSOFC10等へ供給される。燃焼器52は、圧縮空気の供給を受けて燃料の都市ガスを燃焼させ、高温高圧の燃焼排ガスを生成してタービン53へ供給する。この燃焼器52には、後述する排燃料ガス供給ライン27cと、未使用の都市ガス(燃料ガス)を供給する燃料ガス供給系統40とが接続されている。
【0045】
タービン53は、燃焼排ガスのエネルギーにより回転して軸出力を発生し、この軸出力を利用して圧縮機51及び図示しない発電機が駆動される。タービン53で仕事をした燃焼排ガスは、再生熱交換器55で圧縮空気との熱交換により昇温させた後、煙突60から大気へと放出される。
【0046】
複合発電システム1は、SOFC10及びMGT50を組み合わせて発電を行うシステムであり、燃料極109に燃料を供給する燃料供給系20及び空気極113に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給系70を備えている。
燃料供給系20は、給水ポンプ23を備えた水供給ライン22aと、窒素供給弁(開閉弁)21bを備えた窒素供給ライン22bと、都市ガス供給弁(開閉弁)21cを備えた都市ガス(燃料ガス)供給ライン22cとを備えている。
水供給ライン22aは、再循環ライン27b(後述する)との合流点に水供給部(水供給手段)24を設けている。本実施形態においては、水供給部24は、水を噴霧して供給するスプレー(スプレー手段)であることとして説明する。水供給部24から水を噴霧することにより、再循環ライン27bに水を供給する。水供給部24から水が噴霧されると、再循環ライン27bに流通する排燃料ガスが高温(例えば、250〜500℃)であるため、水が気化し、蒸気がSOFC10に供給される。
【0047】
燃料ガス排出系27は、SOFC10に供給された燃料ガスをMGT50に送給する流路である。この燃料ガス排出系27は、排燃料ブロワ(ブロワ)29を有する排燃料ガスライン27aと、排燃料ガスライン27aを経由してMGT50と接続する排燃料ガス供給ライン27cと、排燃料ガスライン27aを経由して排燃料ガス供給ライン27cから分岐して、SOFC10に排燃料ガスを流通(再循環)させる再循環ライン27bとを備えている。
再循環ライン27bは、燃料供給系20と連結しており、排燃料ガスをSOFC10に戻す(再循環する)ための流路である。
【0048】
また、排燃料ガス供給ライン27cが再循環ライン27bに分岐する分岐点Tより上流側から分岐するベントライン28には、排燃料ガス及び水を排出する燃料ベント遮断弁(遮断弁)31が設けられる。燃料ベント遮断弁31の下流側には、排燃料ガスライン27aに所定の圧力損失を与えるオリフィス(圧力損失手段)32が設けられる。
なお、再循環ライン27bには、水供給部24によりスプレー水が噴霧される位置(スプレー水と排燃料ガスの合流点)からSOFC10入口までの間に、温度センサー36が設けられる。
【0049】
排燃料ガス供給ライン27cは、SOFC10からMGT50の燃焼器52へ流量調整弁30を介して排燃料ガスを供給する流路である。
DPX(系統差圧計測手段)18は、SOFC10の燃料系統と空気系統の間の差圧を計測して制御装置90に出力する。
【0050】
図示の酸化性ガス供給系70は、MGT50の圧縮機51で圧縮され、再生熱交換器55で熱交換した圧縮空気(酸化性ガス)をSOFC10の空気極113に供給する流路である。また、酸化性ガス供給系70には遮断弁71が設けられており、遮断弁71は、SOFC10に酸化性ガスを封じ込める場合に閉状態にされる。
また、酸化性ガス排出系72は、SOFC10に供給され発電に利用された排酸化性ガスをMGT50に供給する流路であって、SOFC10とMGT50との間を連結する。酸化性ガス排出系72には遮断弁73が設けられており、遮断弁73は、SOFC10に酸化性ガスを封じ込める場合に閉状態にされる。また、酸化性ガス排出系72から分岐して空気ベントライン74が設けられ、空気ベントライン74には、排酸化性ガスを排出する遮断弁75と、遮断弁75の下流側にオリフィス76が設けられる。例えば、SOFC10の発電が異常停止(トリップ)される時には空気ベントライン74から排酸化性ガスをベントする。
【0051】
酸化性ガス供給系70は、MGT50の圧縮機51で圧縮された圧縮空気の一部をSOFC10の空気極113へ供給する流路である。酸化性ガス供給系70は、再生熱交換器55で熱交換した圧縮空気をSOFC10へ供給する。
【0052】
ここで、トリップ動作とは異常を検知して停止動作を行うことであり、電圧異常や温度異常などにより封じ込めを必要としない軽故障である場合と、例えば、停電や制御装置90の故障により封じ込めが必要となるような重故障である場合がある。
例えば、SOFC10の発電の通常停止時及び封じ込め以外のトリップ動作する場合には、減圧操作や減圧による温度低下等による系統差圧の変動要因があるが、上述したように再循環ライン27bに水を噴霧(水を供給)することにより、こうした系統差圧の変動を防ぐことができる。
また、例えば、停電や制御装置90の故障により封じ込めが必要となる場合には、燃料供給系20及び酸化性ガス供給系70を遮断し、さらに、燃料ガス排出系27及び酸化性ガス排出系72も遮断し、SOFC10の系内に燃料ガスや圧縮空気を封じ込めるが、放置すると、時間の経過とともに系内の温度が低下する。
【0053】
このため、SOFC10の系内である燃料供給系20と燃料ガス排出系27の間の系内、及び酸化性ガス供給系70と酸化性ガス排出系72の間の系内は、燃料ガスや圧縮空気の供給源から遮断されているため通気ガスの補充を受けられず、また、燃料ガス排出系27や酸化性ガス排出系72とも遮断されているため、この結果、SOFC10の系内の温度低下や各系統及び系統間のガスリークに伴って系統差圧が大きくなる。燃料系統の圧力が、空気系統の圧力より小さくなる場合は水を噴霧し、燃料系統の圧力が、空気系統の圧力より大きくなる場合は燃料ベント遮断弁31を開状態にする。
なお、本実施形態においては、燃料系統の圧力が空気系統の圧力より大きくなる場合を正圧(プラス表記)とし、燃料系統の圧力が空気系統の圧力より小さくなる場合を負圧(マイナス表記)とする。
【0054】
制御装置90は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0055】
制御装置90は、SOFC10の発電を停止する場合、またはSOFC10の発電が異常停止(トリップ)する場合に、ベントライン28にオリフィス32で所定の圧力損失を与えながら、燃料ベント遮断弁31を開状態とし、DPX18で計測する差圧が所定値(所定差圧:例えば、0.5kPa)になるようスプレーの水流量を制御し、SOFC10の空気系統と燃料系統との系統差圧を制御する。
また、水の供給により燃料側を正圧に維持できない場合には、燃料ベント遮断弁31を遮断(閉状態)し、燃料系統の圧力を上昇させるようにしてもよい。
【0056】
また、制御装置90は、SOFC10の発電が異常停止し、封じ込めをする場合において、燃料系統の圧力が、空気系統の圧力より所定圧力以上小さくなった場合に、スプレーから水を供給し、燃料系統の圧力を調整する。
また、制御装置90は、SOFC10の発電が異常停止し、封じ込めをする場合において、燃料系統の圧力が、空気系統の圧力より所定圧力以上大きくなった場合に、燃料ベント遮断弁31を開状態にし、燃料系統の圧力を調整する。
【0057】
以下に、本実施形態に係る複合発電システム1の制御装置90の作用について
図1、
図4、及び
図5を用いて説明する。
複合発電システム1のSOFC10とMGT50との連携運転(コンバインド運転)において、燃料である都市ガスはSOFC10に投入され,燃料の化学エネルギーがSOFC10で直接電力に変換される。その後、SOFC10からの排燃料ガスはMGT50の燃焼器52に供給される。一方、フィルタ54を介して導入した(空気)はMGT50の圧縮機51で昇圧された後にSOFC10に供給され、酸化剤(酸化性ガス)として一部が使用された後、高温排熱とともに再びMGT50に送られ、空気の持つ顕熱や圧力もエネルギーとして下流のMGT50側で電力に変換されることにより、システム全体では高い発電効率を得ることが可能となる。
【0058】
再循環ライン27bにおいて、排燃料ガスの温度が所定温度(例えば、200℃)以上である場合において、SOFC10の停止指令、またはSOFC10のトリップを検出したか否かが判定され(
図4のステップSA1)、停止指令またはトリップを検出していなければこの判定を繰り返す(
図4のステップSA1のNo)。
SOFC10の発電の停止、またはSOFC10の発電のトリップを検出した場合には(
図4のステップSA1のYes)、封じ込めか否かが判定される(
図4のステップSA2)。封じ込めの場合と判定された場合には(
図4のステップSA2のYes)、
図5に移動する。
封じ込めの場合でないと判定された場合には(
図4のステップSA2のNo)、ベントライン28の燃料ベント遮断弁31が開状態とされる(
図4のステップSA3)。
【0059】
そして、一定流量の都市ガスを供給するように都市ガス供給弁21cが開状態にされ、給水ポンプ23を介して水供給ライン22aを流通した水が、再循環ライン27bに噴霧されて供給される(
図4のステップSA4)。
再循環ライン27bに噴霧された水は気化して蒸気となり、燃料極109に供給される。こうして、SOFC10の系統差圧が制御される。
【0060】
SOFC10の系統差圧が、第1所定値(例えば、−5kPa)以下か否かが判定される(
図4のステップSA5)。SOFC10の系統差圧が第1所定値より大きい場合には(
図4のステップSA5のNo)、ステップSA4に戻る。SOFC10の系統差圧が、第1所定値以下の場合であり(
図4のステップSA5のYes)、噴霧した水により系統差圧を正圧に維持できない(第1所定値以下である)と判定した場合には、燃料ベント遮断弁31が遮断(閉状態に)される(
図4のステップSA6)。こうして、系統差圧が第1所定値より大きくなるように制御する。
【0061】
系統差圧が、第1所定値より大きい第2所定値(例えば、0.5kPa)以上か否かが判定され(
図4のステップSA7)、系統差圧が第2所定値より小さい場合には(
図4のステップSA7のNo)、ステップSA6を繰り返し、系統差圧が第2所定値以上の場合には(
図4のステップSA7のYes)、ステップSA3に戻り、所定値になるように、本処理を繰り返す。
【0062】
また、
図4のステップSA2で封じ込めの場合とされると、
図5に移行し、封じ込めの状態が保持される(
図5のステップSB1)。系統差圧が、第3所定値(例えば、−5kPa)以下か否かが判定され(
図5のステップSB2)、第3所定値より大きいと判定された場合には(
図5のステップSB2のNo)、本ステップを繰り返し、第3所定値以下であると判定された場合には(
図5のステップSB2のYes)、給水ポンプ23を介して水供給ライン22aを流通した水が、再循環ライン27bに噴霧されて供給される(
図5のステップSB3)。再循環ライン27bに噴霧された水は気化して蒸気となり、燃料極109に供給される。こうして、SOFC10の系統差圧が制御される。
系統差圧が、第3所定値より大きい第4所定値(例えば、0.5kPa)以上か否かが判定され(
図5のステップSB4)、系統差圧が第4所定値より小さい場合にはステップSB3の水の噴霧が繰り返され(
図5のステップSB4のNo)、系統差圧が第4所定値以上であると判定された場合には(
図5のステップSB4のYes)、水の噴霧を止め(
図5のステップSB5)、
図5のステップSB1に戻り、状態保持する。
【0063】
また、
図5のステップSB1の封じ込めの状態が保持されており、ステップSB2の判定とともに、系統差圧が第5所定値(例えば、5kPa)以上か否かが判定され(
図5のステップSB6)、系統差圧が第5所定値より小さい場合には(
図5のステップSB6のNo)、本ステップを繰り返し、系統差圧が第5所定値以上である場合には(
図5のステップSB6のYes)、ベントライン28の燃料ベント遮断弁31が開状態とされる(
図5のステップSB7)。その後、系統差圧が第5所定値より小さい第6所定値(例えば、1kPa)以下か否かが判定され(
図5のステップSB8)、系統差圧が第6所定値より大きい場合には(
図5のステップSB8のNo)、本ステップを繰り返し、系統差圧が第6所定値以下である場合には(
図5のステップSB8のYes)、燃料ベント遮断弁31を閉状態にし(
図5のステップSB9)、
図5のステップSB1に戻り、封じ込めの状態を保持する。
【0064】
以上説明してきたように、本実施形態に係る複合発電システム1、その制御装置90及び方法並びにプログラムによれば、排燃料ガス供給ライン27cが再循環ライン27bに分岐する分岐点Tより上流側から分岐するベントライン28に設けた燃料ベント遮断弁31が開状態とされ、再循環ライン27bから水が供給される。再循環ライン27bから供給された水は、再循環ライン27bを流通する高温の排燃料ガスにより気化し、蒸気となってSOFC10側に供給される。こうして再循環ライン27bに水を供給することによってSOFC10の空気系統と燃料系統の系統差圧を制御する。
【0065】
このように、窒素に比べて安価な水を使用するのでランニングコストが抑えられ、経済性が高い。また、水は、貯蔵も容易である。また、再循環ライン27bから窒素を供給させないようにすれば、コスト低減につながる。
燃料極109におけるC析出の予防に対して水(H2O)が一定量以上必要であるが、本実施形態では水を供給するので、水を十分確保でき、C析出の予防に対して水が足りなくなるというリスクが低減する。
また、水を噴霧して、再循環ライン27bに水を供給することにしたので、気化されやすくなり、簡便に差圧制御ができる。
【0066】
MGT50が故障した場合等のインターロックやトリップ動作時には背圧調整ができなくなるが、ベントライン28の燃料ベント遮断弁31を遮断することで、水の供給側で圧力調整ができる。このように、燃料ベント遮断弁31を間欠運転させることによって燃料系統の圧力上昇に速やかに対応できる。また、燃料ベント遮断弁31は、遮断弁を用いることとしており、遮断弁は制御弁より安価であるため、本実施形態によれば、よりコストが抑えられる。
【0067】
〔変形例〕
本実施形態においては、SOFC10の発電の停止時または発電の異常停止(トリップ)時に、再循環ライン27bから水を噴霧させて系統差圧を制御していたが、これに限定されず、水の供給とともに窒素の供給をしてもよい。具体的には、系統差圧をする場合に、水の噴霧とともに、所定量の窒素を供給するように窒素供給弁21bを開状態にする。このように、水の供給とともに窒素を供給することにより、系統差圧の制御にかかる時間を短縮できる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。