(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地面に鋼管や矢板などの挿入体を打ち込む工法の1つとしてバイブロハンマー工法がある。この工法は、振動式杭打ち機で強制振動を杭や矢板に伝達することにより、当該鋼管などの先端の抵抗及び摩擦抵抗を急速かつ一時的に低減させ、打ち込みや引き抜きを行うものであり、クレーン作業が可能で、1つの機械で打ち込みと引き抜きを行えるほか、振動力を利用した打ち込み原理のため挿入体の先端の変形や座屈を起こしにくいという特徴がある。
【0003】
このような工法においては、鋼管などの挿入体が予定通りの角度で挿入されているかどうか、主として、鉛直な状態で地面に圧入していくかが重要である。この挿入体の挿入姿勢の測定及び管理は、従来は、下げ振り、水糸、トランシットを用いて計測し、管理されていた。
【0004】
このような挿入体の挿入方向を測定する技術については種々開発されており、たとえば、特許文献1(特開2002−38869号公報)には、オールケーシング工法において、ケーシングの内部の立坑芯上に位置検出センサを配置し、検出センサにより検出したケーシング又はケーシングの前記立坑芯上からの位置ずれを計測することでケーシングの傾きを計測、管理する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2(特開11−148290号公報)には、オーガスクリューの向きの方向性を測定するために、オーガの先端と上部の支持アームにそれぞれ傾斜計と変調機を付し、傾斜計からの信号をケーブルで地上に伝達できるようにして掘削が鉛直方向に進んでいるかを検出する技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3(特開平9−125854号公報)にも、スクリューシャフトの内面に傾斜角センサを付設し、オーガとオーガマシンの接続部にはスクリューシャフトの方位検知装置を設けて、両者の方位検出信号と傾斜角検出信号とに基づいてXY二方向におけるスクリューシャフトの傾斜角を測定すると共に、180度回転する都度、各々の方向における傾斜角検出信号同士の和を求め、和がゼロになるようにリーダーの角度を調整する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献に記載されているいずれの技術も、装置の構成上、計測のために作業を中断しなければならないという問題があった。そして、この作業の中断は、多数の管理情報が時々刻々と変化する状況において、管理情報にリアルタイム性を持たせて一括管理することを困難にし、これらを統括管理し施工進捗を検討判断するために、相当の熟練を積んだ管理作業者を、掘削の作業者の他に必要としていた。
【0009】
例えば、特許文献1に記載の技術は、下げ振りの原理を応用したものであり、ケーシングが傾斜した場合にはセンサが立坑芯上から移動することで、ケーシングの傾斜を検出することができる。しかし、ケーシング内にセンサを配置するため、土砂を排出するクラブジャケットとの併用が不可能で、測定時にはクラブジャケットを取り除き、センサを配置する必要があることから、測定時には作業を中断する必要があった。また、傾斜の向きを特定しにくく、精度が十分ではなかった。たとえば、ケーシングが横方向にシフトした場合と傾いた場合とを判別することが困難であった。
【0010】
また、特許文献2及び特許文献3は、切削を行うオーガの先端に傾斜センサを取り付ける構成であるため、オーガの回転による振動等によって精度が悪くなるという問題があった。また、回転する掘削部材であるオーガに取り付けられた傾斜センサは、破損、故障しやすく、取り扱いが不便であるという問題もあった。
【0011】
さらに、バイブロハンマー工法による挿入体の挿入は、振動式杭打ち機による振動を伴うため、下げ振りの原理を用いたり、杭や矢板にセンサを取り付けてリアルタイムで測定することは困難であるという問題があった。このため、振動式杭打ち機を停止させ、振動しない状態で測定する必要があることから、測定時には作業を中断する必要があった。
【0012】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、作業を中断することなくリアルタイムに計測対象物の挿入姿勢を高精度に検知することができる姿勢測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の姿勢測定装置を提供する。
【0014】
本発明は、計測対象物の三次元空間内における傾き姿勢を測定する姿勢測定装置であって、
前記計測対象物の表面に滑動可能な程度に押し当て配置され
、前記計測対象物の表面に自由度なく前記計測対象物に追従可能に構成された当接ユニットと、
棒状の部材で構成され、前記当接ユニットに対する角度が変更可能に前記当接ユニットを先端に連結する連結シャフトと、
前記当接ユニットの三次元空間内における傾きを測定するセンサ部と、
前記連結シャフトの後端側を支点として前記連結シャフトを揺動可能に支持する支持部材と、
前記連結シャフトの中間部分を支持して前記連結シャフトを初期位置に支持すると共に、前記連結シャフトの揺動時には、前記連結シャフトを前記初期位置に復帰させる付勢力を与える減衰部材と、を有することを特徴とする、姿勢測定装置である。
【0015】
前記当接ユニットは、前記計測対象物の表面に少なくとも平面を構成する3点で接触することができる。また、前記当接ユニットは、回転軸が互いに平行に設けられている一対のローラを有していることが好ましい。
【0016】
上記構成において、前記当接ユニットは、前記計測対象物の表面に磁力によって吸着するマグネット部材を備えることが好ましい。
【0017】
前記支持部材と減衰部材は、前記連結シャフトを軸が初期位置において水平方向となるように支持することができる。
【0018】
前記支持部材と減衰部材は、前記連結シャフトをその軸方向にスライド可能に支持することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、計測対象物の表面に三次元的に接触する当接ユニットを用いて、接触抵抗が少ない状態で接触させると共に、計測対象物の傾き姿勢に追従する倣い機構とすることで計測対象物の傾き姿勢を測定することができる。また、計測対象物が揺動や振動している場合であっても、当接ユニットの傾き姿勢は、先端が連結する連結シャフトの後端を支持する支持部材の位置が計測原点となり、計測原点と当接ユニットが正対する位置を支点とし、さらに減衰部材により、連結シャフトの揺動が規制されるため、計測対象物の振動などに対して計測対象物の表面で当接ユニットが滑って振動が減衰され、振動などの影響を排除しながらセンサ部による角度計測の誤差を小さくすることができる。
【0020】
また、接触部が挿入体の移動に追従して回動可能に配置されたローラで構成されることにより、接触抵抗を少なくすると共に、挿入体の表面の状態に応じて高い精度で本体部の傾斜として追従することができ、高精度の姿勢状態の検出を可能とする。
【0021】
また、接触部は磁力によって吸着する吸着部材を備えることにより、接触抵抗を少なくすると共に、計測対象物の振動にも連結シャフトによる支持力によって、倣い角度が変わることなく計測対象物の表面ですべりが発生し、傾き姿勢を測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る姿勢測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施の形態にかかる姿勢測定装置を用いて、地面に挿入されている鋼管の傾き姿勢を測定している状態を模式的に示す概略図である。
【0025】
鋼管100は、バイブロハンマー工法により地面Gに挿入される。バイブロハンマー工法は、鋼管100の上端に取り付けた振動式杭打ち機101で鋼管100に強制振動を伝達し、鋼管100の先端100aの抵抗及び摩擦抵抗を急速かつ一時的に減速させ、鋼管100の地面への打ち込みや引き抜きを行う方法である。振動式杭打ち機101は、クレーン102からワイヤー103によって吊り下げられており、グリップ101aによって鋼管100の上端を把持する。
【0026】
振動式杭打ち機101の内部には、モーターが設けられており、モーターの回転軸に取り付けられた偏心重錘を高速で回転させて振動式杭打ち機101を上下方向の振動力を発生させ、当該振動を鋼管100に伝達させて、地面Gに鋼管を挿入する。なお、このときの振動周波数は、最大で60Hz程度にも達する。
【0027】
計測対象物である鋼管100は、振動式杭打ち機101の上下方向の振動力によって、略鉛直方向となるように地面Gに挿入される。一方、地盤中の転石等によって鋼管100の進行方向が妨げられ、傾斜するような場合があり、このような状況では、挿入角度の鉛直度が保てなくなる。
【0028】
このような鋼管100の挿入方向の修正は、これらの鋼管100がどのような姿勢で掘進しているかを知ることが必要である。そこで、本実施形態では、鋼管100の挿入姿勢のずれを検出しながら挿入方向を変更できるようにするため、姿勢測定装置1を設け、鋼管100の姿勢を検知しながら工程を進める。
【0029】
図2は、本実施形態にかかる姿勢測定装置の概略構成を示す側面図である。
図3は
図2の姿勢測定装置の概略構成を示す平面図である。
図4は、
図2の姿勢測定装置の概略構成を示す正面図である。本実施形態にかかる姿勢測定装置1は、
図2に示すように、地面の上に配置され、後述する2本の円筒ローラ14を鋼管100に押し当てるように配置される。
【0030】
姿勢測定装置1の構成を説明する前に、まず、3次元座標軸について定義する。本実施形態において、鉛直方向をZ軸とし、鋼管100の中心に向かう方向をX軸とする。すなわち、水平面がXY平面となる。以下、この座標軸に基づいて説明を進める。
【0031】
姿勢測定装置1は、地面の上に固定されるベース部2の上に、鋼管100に押圧される当接ユニット3と、当接ユニットの三次元空間内における傾きを測定するセンサ部4と、3軸方向に揺動可能に当接ユニット3を先端に備えた連結シャフト5と、連結シャフト5の後端を支持し、ベース部2に支持する支持部材6と、連結シャフト5の中間部分を支持して連結シャフトを初期位置に支持すると共に、前記連結シャフトの揺動時には、前記連結シャフト5を初期位置に復帰させる付勢力を与える減衰部材7とが設けられた構成である。
【0032】
ベース部2は、地面に固定される台部8上に支持部材6及び減衰部材7が設けられる。台部8は、X軸方向に細長い板状の部材であり、支持部材6及び減衰部材7に設けられたホイール9によって、支持部材6及び減衰部材7をそのX軸方向にスライド可能であり、X軸方向の任意の位置に移動させて固定できるように構成されている。
【0033】
支持部材6の上端には、自在継手10が設けられており、連結シャフト5の後端部分5eを支持する。自在継手10は、連結シャフト5を3軸方向に揺動可能であり、連結シャフト5は、支持部材6に対して任意の向きとすることができる。また、連結シャフト5の先端5fには、自在継手11が設けられており、当接ユニット3と連結する。なお、支持部材6は、後述するように連結シャフト5を初期状態で略水平に支持することができるような高さに構成されているが、特に連結シャフトの支持方向は水平に限定されるものではなく、例えば、斜めに支持する場合には、任意の高さにすることが可能である。
【0034】
自在継手10,11は、XYZいずれの軸の周りにも捻り旋回が可能に構成されており、例えば、ボール軸受やユニバーサルジョイントなどを好適に使用することができる。
【0035】
連結シャフト5は、後端側にリニアスライダ12を備えており、リニアスライダ12介して支持部材6に固定される。すなわち、連結シャフト5は、支持部材6に対して、連結シャフト5の軸方向にスライド可能に支持されている。
【0036】
当接ユニット3は、略矩形に略矩形に構成されたフレーム本体13を有し、フレーム本体13の略中央部分には、上記の自在継手11が設けられて、ベース部2と連結される。上記の通り自在継手は、3軸方向に旋回が可能に構成されており、連結シャフト5に対する角度が任意に変更される。
【0037】
また、フレーム本体13には、鋼管100に対向する側の面にY軸方向両端に円筒ローラ14を支持するローラ支持部15が設けられている。ローラ支持部15は、フレーム本体13に対し円筒ローラ14を鋼管100側に突出するように支持する。
【0038】
図3及び
図4に示すように、Z軸方向に伸びる回転軸16を有し互いに平行に配置された2本のローラである。また、2つの円筒ローラ14の間隔は、鋼管100の立ち姿勢に追従できる程度の間隔が設けられていることが好ましく、用いられる鋼管100の径寸法に応じて適宜設計することができる。
【0039】
円筒形に構成された鋼管100の表面に2つの円筒ローラ14が線接触する結果、当接ユニット3は鋼管100の表面に対して自由度なく特定の方向を向いて配置されることになるため、鋼管100に対して倣い追従する。
【0040】
また、フレーム本体13の鋼管100との対向面には、当接ユニット3を鋼管100に吸着させる吸着マグネット17が設けられている。吸着マグネット17は、非接触の状態で当接ユニット3を磁性体で構成された鋼管100に対して吸着させる。吸着マグネット17は、永久磁石又は電磁石で構成され、鋼管100の表面に対して当接ユニット3の滑動を許容しながら、連結シャフト5による支持と協働して当接ユニット3が鋼管100から脱落しないようにする。なお、鋼管100に接触する円筒ローラ14の表面材質は、例えば、合成樹脂、金属、ゴムなど、鋼管100の表面に対して若干の摩擦を維持しつつ鋼管100の表面に対してすべりを生じさせるような材質で構成されていることが好ましい。また、吸着マグネット17による押し当て力により、弾性変形しない程度の剛性が求められる。
【0041】
なお、上述のように、円筒ローラ14は、その回転軸がZ軸に平行に構成されているため、鋼管100が軸方向に旋回した場合は、円筒ローラ14が追従し、当接ユニット3にY軸方向の振動が及ぶことが防止される。すなわち、上記の通り、当接ユニット3を支持する連結シャフト5は、Y軸方向には平行移動できないため、当該Y軸方向への当接ユニット3のスライドが発生させないようにすることが好ましい。
【0042】
なお、当接ユニット3は、後述するように、自在継手11を介して連結シャフト5に連結されており、鋼管100に対向するXYZ軸の3軸周りに傾き角度が変更可能であり、鋼管100の姿勢に応じて変更可能になっている。
【0043】
また、フレーム本体13には、当接ユニット3の地軸に対する角度を測定するセンサ部4が設けられている。本実施形態において、センサ部4は、XYZ軸方向の角度をそれぞれ測定することができる。なお、センサ部4は測定に必要な方向の傾斜角度が測定できれば十分であり、本実施形態では、XY軸周りの2軸に対する傾斜角度を測定する。
【0044】
上記の通り、当接ユニット3は、初期状態で略水平方向に伸びる連結シャフト5によって、支持されると共に、吸着マグネット17によって、鋼管100側に吸着した状態に配置される。また、円筒ローラ14が全高にわたって接触することにより、鋼管100との相対位置及び向きが一律に決定され、鋼管100の姿勢に応じて倣い機構の原理によりその向きが追従する。
【0045】
連結シャフト5の中間部分を支持する減衰部材7は、連結シャフト5に外挿されるリニアスライダ19がスプリング20を介してフレーム21にYZ平面上で移動可能に構成されている。リニアスライダ19は、連結シャフト5を軸方向(X軸方向)にスライド可能に支持する。スプリング20は、リニアスライダ19をフレーム21の初期位置に配置すると共に、連結シャフト5が揺動した場合は、当該連結シャフトの揺動に応じてリニアスライダ19がYZ平面上を移動することを許容しつつ、初期位置に復帰させる付勢力を与える。
【0046】
スプリング20による付勢力は、鋼管100と当接ユニット3との摩擦等の諸条件に応じて適宜決定すればよく、後述する減衰部材7による適切な減衰効果が得られるように調整することができる。
【0047】
図5は、鋼管がX軸方向に傾いた状態における当接ユニット3の向きを示す模式図である。
図5に破線で示した基準姿勢に対して、矢印90に示すように、鋼管100がX軸周りに傾斜すると、鋼管100の姿勢に追従して当接ユニット3もX軸方向に傾斜し、当接ユニット3に設けられているセンサ部4により、測定部の地軸に対するX軸方向の傾斜角度が測定される。
【0048】
また、同様に鋼管100がY軸方向に傾いた場合は、
図6に示すように、矢印91に示す傾斜方向と同様に当接ユニット3もY軸方向に傾斜し、当接ユニット3に設けられているセンサ部4により、測定部の地軸に対するY軸方向の傾斜角度が測定される。
【0049】
さらに
図7に示すように、鋼管100が矢印92に示すY軸方向に横ずれした場合は、自在継手11を中心として当接ユニット3がZ軸中心に旋回するように移動する。このため、センサ部4により当接ユニット3の地軸に対するZ軸方向の傾斜角度が測定される。ただし、実際の動作において鋼管100がZ軸に平行な状態を維持したままX軸方向又はY軸方向に平行移動することはほとんど想定されないため、センサ部4としての測定は、X軸及びY軸方向の2軸のみをそれぞれ計測できれば姿勢測定装置1に求められる性能としては必要十分である。
【0050】
本実施形態にかかる姿勢測定装置1は、鋼管100と当接ユニット3との相対位置が鋼管100の姿勢に応じて一律に決定されるように、円筒ローラが鋼管100の外表面に接触する。また、上記の通り、センサ部4により当接ユニット3の傾斜を測定することで、掘削ケーシングの掘削作業時にリアルタイムで、センサ部4からX軸及びY軸方向の当接ユニット3の傾きに関する情報が独立して出力される。
【0051】
一方で、上記のように、鋼管100は、振動式杭打ち機101により、地面Gに挿入されるため、鋼管100には、振動式杭打ち機100により与えられた周波数(最大で60Hz)もの振動が生じている。このため、鋼管100は、常時振動しており、当該振動が当接ユニット3に伝達するが、本実施形態では、連結シャフト5による当接ユニットの支持を上記構成にすることによって、センサ部4の角度測定に影響が生じることを防止する。
【0052】
すなわち、本実施形態では、連結シャフト5の支点を計測対象物である鋼管100と正対する後端の支持部材6との連結点とすると共に、鋼管100が有する振動が当接ユニット3に伝達され、伝達された当該運動成分を減衰部材7により排除しながら、支点からの投影範囲内で当接ユニット3を鋼管100に追従させる。
【0053】
すなわち、計測対象物である鋼管100の振動を、鋼管100の運動系から独立した当接ユニット3の測定原点である連結シャフトの後端とし、当該連結シャフト5の振動を減衰部材7による付勢力で排除する。これにより、当接ユニット3は、振動成分による微細動に関してはすべりを生じ、鋼管100に対する相対的な角度を一定に維持したまま鋼管100の傾き姿勢に倣い追従する。
【0054】
したがって、本実施形態にかかる姿勢測定装置1によれば、振動する鋼管100の振動成分が当接ユニットに伝わることを排除しつつ、姿勢に関するリアルタイムな情報を入手することができるため、これらの情報を用いて鋼管100の挿入角度の精度向上と作業合理化を実現することができる。
【0055】
図8は、計測された鋼管の姿勢に関する情報が表示されたモニタ表示画面の一例である。モニタでは、鋼管100の傾斜に関する情報60がXY2次元平面上に表示されて管理されている。
【0056】
また、本実施形態にかかる姿勢測定装置から出力されるX軸及びY軸ごとの鋼管100の姿勢に関する情報は、図示しない情報処理ユニットに有線あるいは無線により送信され、鋼管100の現状における傾き姿勢をリアルタイムで検出しモニタに表示される。
【0057】
具体的には、X軸及びY軸方向に鋼管100がどのように傾斜しているかの情報を示しており、座標中のポインタ61の位置によって、掘削ケーシングの傾斜方向と程度を示している。作業者は、このポインタ61が鉛直精度管理円62内に入るように、圧入機102の操作を行うことで、鋼管の挿入姿勢制御、例えば、鉛直精度の管理を行うことができる。なお、鉛直精度管理円62の大きさは、許容される鉛直度の精度に応じて適宜設定することができ、小さくすることで厳密な管理を行なうことができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態にかかる姿勢測定装置によれば、倣い機構の原理により、鋼管100の姿勢を測定機の傾きの情報としてとらえ、これをセンサ部により検知することで、鋼管100の姿勢をリアルタイムに検出することができる。また、振動式杭打ち機101により鋼管100に与えられる振動成分は、当接ユニットに対して正対する位置に設けられた支点を中心に揺動する連結シャフト5及びシャフトの微小振動を減衰させる減衰部材7によって排除され、鋼管100の傾斜成分のみを倣い機構により角度検知することができる。よって、作業を中断することなく鉛直度管理等に好適に用いることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。上記実施形態1及び2では、断面が円形で軸方向に直線的に挿入される鋼管100の鉛直挿入姿勢管理に姿勢測定装置を用いたが、鋼管のほかに、矢板、シートパイル、H字綱杭などを地面に挿入するような場合にも挿入姿勢を計測可能である。
【0060】
また、さらに、水平方向に挿入される挿入体についても、連結シャフトを挿入体の上面又は下面を接触面とし、当該接触面に対して略直交するように縦向きに配置することで、挿入姿勢を測定可能である。
【0061】
また、例えば、測定部の構成については、掘削ケーシングに接触するローラは、倣い機構として当接ユニット3のフレーム本体部との位置関係が一律に決定できるように少なくとも平面を構成する3点で接触すれば十分であり、必ずしも円筒ローラである必要はなく、掘削ケーシングに接触し、掘削ケーシングの移動に対して滑動する他の部材、例えば、ボールキャスター、点接触するプローブなどで構成されていてもよい。
【0062】
さらに、当接ユニット3を計測対象物に押圧させる手段としては、磁力を用いた吸着マグネットに限定されるものではなく、スプリングやダンパー等を使用することも可能である。