(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス浄化用触媒にセリア/ジルコニア複合酸化物のような酸素吸蔵材(OSC(Oxygen Storage Capacity)材)を含むことで、触媒内の排ガス雰囲気を安定的にストイキ(理論空燃比)近傍に維持することができる。つまり、OSC材は、排ガスの空燃比がリーン雰囲気(すなわち酸素過剰の雰囲気)のときに排ガス中の酸素を吸蔵し、排ガスの空燃比がリッチ雰囲気(すなわち燃料過剰の雰囲気)のときに吸蔵している酸素を放出する働きをする。これにより、排ガス中の酸素濃度が変動しても触媒内の雰囲気をストイキ近傍に維持することができる。その結果、安定した触媒性能が得られるようになり、浄化性能が向上し得る。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の構成はなおも改善の余地があるものだった。つまり、近年では、製造コストの低減などを目的として、触媒金属の使用量が低減される傾向にある。触媒金属は、リーン雰囲気のときには上記酸素の吸蔵を仲介する役割を担っている。このため、触媒金属量の低減された排ガス浄化用触媒では、OSC材への酸素吸蔵率(OSC能)が著しく低下してしまう。触媒のOSC量は、例えばOSC材の含有量そのものを増やすことで増加させ得るが、かかる手法では排ガスが隔壁を通過する際の圧力損失(圧損)が上昇する背反がある。したがって、上述のようなOSC能の低下を補うためにも、触媒のOSC能を向上することが望まれている。
加えて、例えば特許文献1の排ガス浄化用触媒では、隔壁の内部全体にPd含有層を備え、且つ隔壁の表面を覆うようにRh含有層を配置している。このため、排ガスが流れにくくなり、圧損が増大する問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ウォールフロー型の排ガス浄化用触媒であって、酸素吸蔵材のOSC能がいかんなく発揮され、OSC量が向上した排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ウォールフロー型の基材を備えた排ガス浄化用触媒において、上記課題を解決すべく様々な角度から検討を重ねた。その結果、隔壁の延伸方向における圧損を制御することに想到した。そして、更なる鋭意検討を重ね、圧損の低減を図りつつもOSC能を向上させる手段を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明により、ウォールフロー型の基材と、第1触媒層と、第2触媒層と、を備える排ガス浄化用触媒が開示される。上記基材は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、上記入側セルと上記出側セルとを仕切る多孔質な隔壁と、を備える。
上記隔壁の延伸方向の全長をL
wとしたときに、上記第1触媒層は、上記隔壁の内部に、上記入側セルと接するよう上記排ガス流入側の端部から上記延伸方向に向かって上記L
w未満の長さL
1で配設されている。また、上記第2触媒層は、上記隔壁の内部に、上記出側セルと接するよう上記排ガス流出側の端部から上記延伸方向に向かって上記L
w未満の長さL
2で配設されている。また、上記排ガス流出側の端部に近接する上記隔壁の内部では、上記入側セルと接する領域に上記第1触媒層及び上記第2触媒層が配設されていない基材露出部を有する。
上記第1触媒層及び上記第2触媒層は、酸素吸蔵材を含む。そして、上記第2触媒層のコート密度D
2に対する上記第1触媒層のコート密度D
1の比(D
1/D
2)は1.1〜1.8である。
【0010】
かかる構成の排ガス浄化用触媒では、OSC材が2つの触媒層に配置されている。これにより、例えば特許文献1の構成に比べて、排ガスとOSC材との接触機会が多くなる。また、基材の隔壁内で2つの触媒層を上記のように配置することで、排ガスが隔壁を通過する際の圧損の比率(すなわち、第1触媒層を通過する際の圧損と、第2触媒層を通過する際の圧損との比率)を最適化することができる。これにより、圧損の低減を図りつつ、触媒のOSC能を効果的に引き出すことができる。したがって、本発明によると、従来品に比べて浄化性能に優れた排ガス浄化用触媒を実現することができる。
【0011】
なお、本明細書において、「(触媒層が)隔壁の内部に配設されている」とは、触媒層が、隔壁の外部(典型的には表面)に比べて、隔壁の内部に偏って存在する(偏在する)ことをいう。例えば、第1触媒層の隔壁の断面を電子顕微鏡で観察し、排ガス流入側の端部から延伸方向に向かって0.1L
wの長さの範囲におけるコート密度全体を100%とする。このとき、隔壁の内部に存在するコート密度分が、典型的には80%以上、例えば90%以上、好ましくは95%以上、特には実質的に100%であることをいう。また、例えば、第2触媒層の隔壁の断面を電子顕微鏡で観察し、排ガス流出側の端部から延伸方向に向かって0.1L
wの長さの範囲におけるコート密度全体を100%とする。このとき、隔壁の内部に存在するコート密度分が、典型的には80%以上、例えば90%以上、好ましくは95%以上、特には実質的に100%であることをいう。したがって、例えば隔壁の表面に触媒層を配設しようとした際に触媒層の一部が非意図的に隔壁の内部へ浸透するような場合とは明確に区別されるものである。
【0012】
また、本明細書において「コート密度」とは、基材の体積(セルの容積を含めた全体の嵩容積)1L当たりの触媒層のコート量(g)をいう。単位は、g/Lである。
かかるコート密度は、例えば、触媒層をコートする前のリファレンス基材と触媒層付きの基材とをそれぞれ溶媒中(例えば水中)に浸漬させ、アルキメデス法で溶媒中における質量を測定して、以下の(式1)から算出することができる。
ρ=W×ρ(l)/(W−W') (式1)
ただし、ρは触媒層のコート密度(g/L)であり;Wは「触媒層付き基材の大気中での質量」から「リファレンス基材の大気中での質量」を差し引いて求めた「触媒層の大気中での質量」であり;W'は「触媒層付き基材の溶媒中での質量」から「リファレンス基材の溶媒中での質量」を差し引いて求めた「触媒層の溶媒中での質量」であり;ρ(l)は溶媒(例えば水)の密度である。
【0013】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、上記D
1/D
2が1.4〜1.7である。これによって、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0014】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、触媒全体の触媒平均コート密度D
Aが40〜150g/Lである。これによって、触媒のOSC量を向上する効果と、触媒全体としての圧損の抑制とをより高度に両立することができる。
【0015】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、上記第1触媒層及び上記第2触媒層が、触媒金属を担持しない助触媒として上記酸素吸蔵材を含む。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記第1触媒層における上記基材の体積1Lあたりの上記酸素吸蔵材の含有量O
1(g)と、上記第2触媒層における上記基材の体積1Lあたりの上記酸素吸蔵材の含有量O
2(g)との比(O
1/O
2)が1.4〜1.7である。
これによって、例えばリーン雰囲気における酸素吸蔵率を一層高めることができる。
【0016】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、上記第1触媒層がロジウムを含む。換言すれば、第1触媒層には、還元活性の高い貴金属種(ロジウム)を配置することが好ましい。
また、ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記第2触媒層がパラジウムを含む。換言すれば、第2触媒層には、酸化活性の高い貴金属種(パラジウム)を配置することが好ましい。
このような構成であると、排ガス中の有害成分を効率よく浄化することができる。その結果、排ガス浄化性能をさらに向上することができる。
【0017】
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、上記L
wと上記L
1と上記L
2とが、次式:L
w<(L
1+L
2)<2L
w;を満たす。つまり、上記第1触媒層と上記第2触媒層とが上記延伸方向に一部重なり合って構成されている。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の他の好ましい一態様では、上記隔壁の上記延伸方向に直交する厚さ方向の全体厚みをT
wとし、上記厚さ方向の上記第1触媒層の厚みをT
1とし、上記厚さ方向の上記第2触媒層の厚みをT
2としたときに、上記T
wと上記T
1と上記T
2とが、次式:T
w<(T
1+T
2)<2T
w;を満たす。つまり、上記第1触媒層と上記第2触媒層とが上記厚さ方向に一部重なり合って構成されている。
2つの触媒層(第1触媒層及び第2触媒層)を隔壁の延伸方向および/または厚さ方向で一部相互に重ね合わせることにより、触媒層を通らずに隔壁内をすり抜ける排ガスが無くなる。このため、排ガスをより的確に浄化(無害化)することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において「≒」とは、製造過程で生じるバラつき(個体差)などを包含し得る用語であり、例えば両者の差が±10%程度、典型的には±5%程度、好ましくは±2%程度であることをいう。
【0020】
ここに開示される排ガス浄化用触媒はいわゆるウォールフロー型であり、ウォールフロー構造の基材と2つの触媒層(第1触媒層及び第2触媒層)とを備える。そして、(1)上記基材の隔壁の内部に所定の配置で2つの触媒層が配設されていること、(2)2つの触媒層がいずれも酸素吸蔵材を含むこと、及び(3)第2触媒層のコート密度D
2に対する第1触媒層のコート密度D
1の比(D
1/D
2)が所定の範囲を満たすことで、本発明特有の顕著な効果を発揮するものである。したがって、その他の構成については特に限定されず、種々の基準に照らして任意に決定し得る。
【0021】
排ガス浄化用触媒の骨格を構成する基材には、従来この種の用途に用いられる種々の形態のものを採用することができる。
図1は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の基材を模式的に示す斜視図である。この態様では、外形が円筒形状のハニカム基材(ハニカム構造体)1を採用している。ハニカム基材1は、該ハニカム基材の延伸方向(円筒形状の筒軸方向)に沿って形成された隔壁と、該隔壁によって仕切られ規則的に配列された複数のセルとを有している。このハニカム基材1は、端部1aにおいて、延伸方向の一の開口端と他の一の開口端とが隣り合うセル同士で交互に封止されている。
図2は、
図1のハニカム基材1の端部1aを模式的に示す断面図である。この態様では、端部1aは略円形状である。端部1aでは、隣り合うセル同士の間に多孔質な隔壁6が配置されている。また、封止部2と開口部4とがいわゆる市松模様状に配されている。
【0022】
ハニカム基材1の素材には、従来この種の用途に用いられる種々の材料を採用することができる。好ましくは、内燃機関が高負荷条件で運転される場合などを考慮して、高温(例えば400℃以上)の排ガスに曝された場合にも安定した性状を有する材料で構成される。一好適例として、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックス製、或いはステンレス鋼などの合金製が挙げられる。
ハニカム基材1の容量(セルの総体積)は、通常0.1L以上(好ましくは0.5L以上)であって、例えば5L以下(好ましくは3L以下、より好ましくは2L以下)であるとよい。また、ハニカム基材1の延伸方向の全長(換言すれば隔壁6の延伸方向の全長L
w)は、通常10〜500mm(例えば50〜300mm)程度であるとよい。なお、ハニカム基材1全体の外形は、
図1に示す円筒形にかえて、例えば、楕円筒形、多角筒形などとすることもできる。
【0023】
図3は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の隔壁近傍の構成を模式的に示す拡大断面図である。
図3に示す排ガス浄化用触媒10の基材は、排ガス流入側の端部24aのみに開口部4を有する(コの字状の)入側セル24と、排ガス流出側の端部25aのみに開口部4を有する(コの字状の)出側セル25と、両セルを仕切る多孔質な隔壁26と、を備えている。換言すれば、入側セル24の排ガス流出側の端部及び出側セル25の排ガス流入側の端部には封止部22が配設され、これによって目封じがされている。
入側セル24及び出側セル25は、排ガス浄化用触媒10に供給される排ガスの流量や成分を考慮して、適切な形状及び大きさに設定するとよい。また、入側セル24及び出側セル25の形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状とすることができる。
【0024】
隔壁26は、排ガスが通過可能な多孔質構造である。隔壁26の全体厚み(換言すれば隔壁6の延伸方向に直交する厚さ方向の長さ)T
wは、排ガス浄化性能を向上する観点、機械的強度を向上する観点、圧損の増大を抑制する観点などから、例えば0.05〜2mm程度であるとよい。また、隔壁26の気孔率は、機械的強度を向上する観点や圧損の増大を抑制する観点などから、通常40〜70%程度であるとよい。また、隔壁26の平均細孔径は、PMの捕集性能を向上する観点や圧損の増大を抑制する観点などから、通常10〜40μm程度であるとよい。
ここに開示される排ガス浄化用触媒10では、隔壁26の内部(具体的には隔壁26の細孔内)に、所定の性状(例えば、長さや厚み、コート密度、OSC材の含有密度)を有する2つの触媒層、すなわち第1触媒層261及び第2触媒層262を備える。このように、隔壁26上には実質的に(意図的に)触媒層を設けないことで、排ガスの流路を適切に確保し、圧損の増大を効果的に抑制することができる。
【0025】
このような構成の排ガス浄化用触媒10では、内燃機関から排出された排ガスが、排ガス流入側の端部24aから入側セル24内へと流入する。そして、多孔質な隔壁26の細孔内を通過して、隣接する出側セル25の排ガス流出側の端部25aから流出する。かかる排ガス浄化用触媒10では、主に排ガスが隔壁内26内を通過する間に触媒層(第1触媒層261及び/又は第2触媒層262)と接触し、これによって排ガス中の有害成分が浄化(無害化)される。例えば、排ガスに含まれるHC成分やCO成分は触媒層の触媒機能によって酸化され、水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)などに変換(浄化)される。また、NO
x成分は触媒層の触媒機能によって還元され、窒素(N
2)に変換(浄化)される。また、PM成分は隔壁26の細孔内を通り難いため、一般に、入側セル24内の隔壁26上に(例えば封止部22に近い部分に)堆積する。該堆積したPMは、第1触媒層261の触媒機能によって、或いは所定の温度(例えば500〜700℃程度)で燃焼され、分解される。
【0026】
なお、ウォールフロー型と対比される構造として、いわゆるストレート型がある。ストレート型の排ガス浄化用触媒では、基材の前段(上流側)から後段(下流側)に向かって排ガスが触媒層と順番に反応し、有害成分が浄化される。このため、ストレート型の排ガス浄化用触媒では、浄化反応の順序を考慮して触媒金属の種類や触媒層の配置(長さや厚さ方向の積層構造等)等が決定される。一方、ここに開示されるウォールフロー型の排ガス浄化用触媒では、隔壁内の排ガスの流れを制御するために触媒層の配置や性状を決定する。かかる点で、ウォールフロー型とストレート型とは技術的に大きく異なっている。
【0027】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10は、隔壁26の内部に、第1触媒層261及び第2触媒層262を備える。2つの触媒層をいずれも隔壁26の内部に備えることで、隔壁26の開口面積を広く確保することができる。このため、圧損が高くなり過ぎることを高度に抑制することができる。
2つの触媒層は、排ガスを浄化する場として排ガス浄化用触媒10の主体をなすものであり、それぞれ、酸化及び/又は還元触媒として機能する触媒金属粒子が担持された担体を備えている。また、2つの触媒層は、それぞれ酸素吸蔵材(OSC材)を含んでいる。2つの触媒層にOSC材を配置することにより、OSC材と排ガスとの接触機会が多くなる。そのため、触媒全体のOSC能がより良く向上することができる。
【0028】
触媒金属としては、酸化触媒や還元触媒として機能し得ることが知られている種々の金属種のなかから1種又は2種以上を適宜採用し得る。典型的には、白金族であるロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの貴金属が挙げられる。或いは、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及び上記貴金属とこれら金属との合金を用いることもできる。
かかる触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から十分に小さい粒径の微粒子として使用されることが好ましい。触媒金属粒子の平均粒径(TEM観察により求められる粒径の平均値。以下同じ。)は通常1〜15nm程度であり、10nm以下、7nm以下、更には5nm以下であることが特に好ましい。
【0029】
2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)に含まれる触媒金属の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
一好適例では、第1触媒層261にロジウム(Rh)を備える。反応活性の高いロジウムを第1触媒層261に配置することで、限られた触媒金属量のなかで効果的に浄化性能(特にはNO
xの浄化性能)を高めることができる。また、例えば排ガスの温度が一時的に触媒活性温度を下回ったりする態様(例えば、運転中や信号待ちなどの一時停止中にエンジンが起動・停止を繰り返すようなエコカー)にあっても、触媒内の温度を高く維持する(保温する)ことができる。その結果、安定的に優れた触媒活性を実現することができる。
他の一好適例では、一方の触媒層(例えば第1触媒層261)に還元活性が高い金属種(例えばロジウム)を、もう一方の触媒層(例えば第2触媒層262)に酸化活性が高い金属種(例えばパラジウム(Pd))を備える。かかる構成によると、排ガス中の有害成分を一度に効率よく浄化することができる。
【0030】
各触媒層における触媒金属の担持率(担体を100質量%としたときの触媒金属含有量)は、特に限定されない。例えば各触媒層の長さや厚み、供給される排ガスの流量などを考慮して決定するとよい。
一好適例では、各触媒層における担持率がそれぞれ1.5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上1質量%以下である。担持率が1.5質量%以下であると、金属の粒成長(シンタリング)を高度に抑制することができる。その結果、高耐久性を実現することができる。更に、コスト面でも有利である。また、担持率が0.05質量%以上であると、優れた触媒活性を実現するために効果的である。さらに、上述の通り、触媒金属の担持率が低いと酸素吸蔵材のOSC能が低下しがちである。このため、担持率が低い場合には本発明の適用が特に効果を奏する。
【0031】
第1触媒層261の触媒金属の担持率と第2触媒層262の触媒金属の担持率とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第2触媒層262の担持率よりも第1触媒層261の担持率が高くてもよい。好適な一態様では、第2触媒層262の担持率に対する第1触媒層261の担持率の比が1〜1.8(典型的には1.1〜1.7、例えば1.4〜1.7)である。これによって、排ガスの上流側(入側セル24の領域)で活発に浄化反応を生じさせることができる。その結果、浄化反応時の反応熱を排ガスの下流側(出側セル25の領域)に伝達することができ、触媒全体の暖機性を効率よく向上することができる。したがって、例えば排ガスの温度が一時的に触媒活性温度を下回ったりする態様(例えば、運転中や信号待ちなどの一時停止中にエンジンが起動・停止を繰り返すようなエコカー)にあっても、安定的に優れた触媒活性を実現することができる。
【0032】
上述の触媒金属を担持する担体としては、従来の排ガス浄化用触媒と同様の無機材料を1種又は2種以上を適宜採用し得る。なかでも、比表面積(ここではBET法により測定される比表面積をいう。以下同じ。)が比較的大きな多孔質材料が好ましい。一好適例として、アルミナ(Al
2O
3)、セリア(CeO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、及びこれらの固溶体(例えば、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物))などが挙げられる。なかでも、アルミナやCZ複合酸化物が好適である。
担体(例えばアルミナ粉末やCZ複合酸化物の粉末)の比表面積は、耐熱性や構造安定性の観点から、概ね10〜500m
2/g程度、例えば200〜400m
2/gであるとよい。また、担体の平均粒径は、1〜500nm程度、例えば10〜200nmであるとよい。
なお、2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)に含まれる担体の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
酸素吸蔵材(OSC材)は、触媒内の排ガス雰囲気を安定的にストイキ(理論空燃比)近傍に維持する役割を担うものである。OSC材としては、酸素吸蔵能を有することが知られている種々の化合物のなかから1種又は2種以上を適宜採用し得る。一好適例として、上述のセリア(CeO
2)や該セリアを含む複合酸化物(例えばCZ複合酸化物)などが挙げられる。なかでも、CZ複合酸化物が好適である。ZC複合酸化物では、ジルコニアとセリアを固溶させることで、粒成長が抑制されている。このため、耐久性に優れ、長期に亘って優れたOSC能を発揮することができる。CZ複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、セリア/ジルコニア=0.25〜0.75(例えば0.3〜0.6)程度であるとよい。これにより、触媒活性とOSC能とをバランスよく向上することができる。
なお、2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)に含まれるOSC材の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
OSC材は、上記触媒金属粒子の担持されている担体として、及び/又は、触媒金属粒子が担持されていない助触媒として、2つの触媒層にそれぞれ含まれる。なお、2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)に含まれるOSC材の態様は同じであってもよく、異なっていてもよい。
好適な一態様では、第1触媒層261及び/又は第2触媒層262において、助触媒としてOSC材を含む。これにより、OSC材への酸素吸蔵率(OSC能)が向上し得、本発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0035】
第1触媒層261におけるOSC材の含有密度と第2触媒層262におけるOSC材の含有密度とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第2触媒層262の含有密度よりも第1触媒層261の含有密度が高くてもよい。
好適な一態様では、第1触媒層261におけるOSC材の含有密度(基材の体積1LあたりのOSC材の含有量)O
1と、第2触媒層262におけるOSC材の含有密度(基材の体積1LあたりのOSC材の含有量)O
2との比(O
1/O
2)が、コート密度の比(D
1/D
2)と略等しい。すなわち、O
1/O
2が1.1〜1.8(好ましくは1.4〜1.7)であるとよい。これによって、OSC能向上の効果がより高いレベルで発揮される。したがって、優れた浄化性能を安定的に実現することができる。
【0036】
第1触媒層261におけるOSC材の含有密度は、基材の性状(例えばセルの形状や隔壁の厚み、気孔率)などによるため特に限定されない。一好適例では、圧損を低減する観点において、第1触媒層261におけるOSC材の含有密度が、概ね80g/L以下、好ましくは70g/L以下、より好ましくは50g/L以下、例えば45g/L以下である。また、他の一好適例では、OSC能を高める観点において、第1触媒層261におけるOSC材の含有密度が、概ね10g/L以上、好ましくは20g/L以上、より好ましくは30g/L以上、例えば40g/L以上である。
第2触媒層262におけるOSC材の含有密度は、基材の性状(例えばセルの形状や隔壁の厚み、気孔率)などによるため特に限定されない。一好適例では、圧損を低減する観点において、第2触媒層262におけるOSC材の含有密度が、概ね60g/L以下、好ましくは55g/L以下、より好ましくは50g/L以下、例えば35g/L以下である。また、他の一好適例では、OSC能を高める観点において、第2触媒層262におけるOSC材の含有密度が、概ね5g/L以上、好ましくは10g/L以上、例えば20g/L以上である。
【0037】
また、2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)には、上記成分に加えて他の成分が添加されていてもよい。かかる添加成分は、上記担体に及び/又は上記OSC材を構成する添加元素として、或いは独立した形態で、各触媒層に含まれ得る。そのような添加成分の一例として、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属(例えばバリウム)、希土類金属の化合物や酸化物が挙げられる。
【0038】
ここに開示される技術では、2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)のコート密度の比が所定の範囲にある。すなわち、第2触媒層262のコート密度D
2に対する第1触媒層261のコート密度D
1の比(D
1/D
2)が1.1〜1.8である。換言すれば、第1触媒層261のコート密度D
1が、第2触媒層262のコート密度D
2の1.1〜1.8倍である。第1触媒層261と第2触媒層262のコート密度を異ならせることで、隔壁26の延伸方向に圧損の分布が生まれる。その結果、延伸方向に排ガスの通りやすい部分と通りにくい部分とを生じさせることができる。
【0039】
つまり、1.1≦(D
1/D
2)を満たすことによって、第1触媒層261の圧損が増大する。これにより、第1触媒層261の形成されていない隔壁26部分(典型的には第2触媒層262のみが形成されている部分)を流れる排ガスの流量が多くなる。その結果、入側セル24において排ガスと第1触媒層261中のOSC材とが接触する機会を増加させることができる。したがって、触媒全体のOSC能を効果的に向上させることができる。その結果、OSC材への酸素吸収効率をより高めることができる。
好適な一態様では、1.2≦(D
1/D
2)、1.4≦(D
1/D
2)、例えば1.45≦(D
1/D
2)を満たす。これにより、本発明の効果をより高いレベルで奏することができる。
【0040】
また、(D
1/D
2)≦1.8を満たすことによって、入側セル24から出側セル25に至る排ガスの流れが円滑になる。その結果、排ガス浄化用触媒10全体としての圧損を低減することができる。また、本発明者らの検討によれば、圧損差が過度に高くなりすぎると、排ガスが触媒層内を素早く通り抜けてしまう。そのため、浄化性能が低下することがあり、好ましくない。
好適な一態様では、(D
1/D
2)≦1.7、例えば(D
1/D
2)≦1.65を満たす。これにより、排ガス浄化用触媒10全体としての圧損の低減とOSC能向上の効果とをより高度に両立することができる。
【0041】
好適な一態様では、触媒全体の触媒平均コート密度D
Aが40〜150g/Lである。触媒全体の触媒平均コート密度D
Aが150g/L以下、好ましくは120g/L以下、例えば100g/L以下であると、触媒全体としての圧損をより良く抑制することができる。また、触媒全体の触媒平均コート密度D
Aが40g/L以上、好ましくは50g/L以上、例えば60g/L以上であると、浄化性能をより良く発揮することができる。したがって、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
【0042】
第1触媒層261のコート密度D
1は、基材の性状(例えばセルの形状や隔壁の厚み、気孔率)などによるため特に限定されない。一好適例では、圧損(特には、触媒内に排ガスが流入する際の面圧損)を低減する観点において、第1触媒層261のコート密度D
1が、概ね200g/L以下、好ましくは195g/L以下、例えば190g/L以下である。また、他の一好適例では、排ガスの上流側(入側セル24)における浄化性能を高める観点から、第1触媒層261のコート密度D
1が、概ね40g/L以上、好ましくは45g/L以上、より好ましくは50g/L以上、例えば65g/L以上である。
【0043】
第2触媒層262のコート密度D
2は、上記D
1/D
2の比を満たす限りにおいて特に限定されない。一好適例では、圧損を低減する観点において、第2触媒層262のコート密度D
2が、概ね150g/L以下、好ましくは140g/L以下、例えば130g/L以下である。また、他の一好適例では、第2触媒層262のコート密度D
2が、概ね25g/L以上、好ましくは30g/L以上、より好ましくは35g/L以上、例えば45g/L以上である。
【0044】
第1触媒層261は、隔壁26の内部に、排ガス流入側の端部24aから隔壁26の延伸方向に向かって、隔壁26の延伸方向の全長L
wよりも短い長さL
1(つまり、L
1<L
w)で形成されている。なお、
図3に示す実施形態では、L
1≒0.7L
wである。
【0045】
第1触媒層261の延伸方向の長さL
1は、L
1<L
wの限りにおいて特に限定されない。L
1<L
wを満たすことで、圧損の増大を好適に抑制することができる。かかる観点からは、L
1<0.9L
wを満たすことが好ましく、L
1<0.8L
wを満たすことがより好ましい。換言すれば、排ガス流出側の端部25aから延伸方向に向かってL
wの少なくとも10%(好ましくは20%)の部分には、第1触媒層261が配設されていないことが好ましい。L
1<0.9L
wを満たすことで、コート密度の比(D
1/D
2)を上記範囲とする本願発明の構成がより効果を発揮する。また、本発明者らの検討によれば、排ガス中のPM成分は隔壁26を通過し難く、入側セル24内の排ガス流出側の端部25a付近に堆積し易い傾向にある。このため、かかる領域に第1触媒層261を配設しないことで、圧損の増大を好適に抑制することができる。かかる観点からは、L
1<0.8L
wを満たすことが好ましく、L
1<0.75L
wを満たすことがより好ましい。
他の一好適例では、L
1が0.3L
w<L
1を満たす。これにより、触媒の上流側(入側セル24の領域)において排ガスとOSC材とが接触する機会をより好適に増やすことができる。その結果、OSC能を一層高めることができる。また、触媒の暖機性を向上することもできる。かかる観点からは、0.5L
w<L
1を満たすことが好ましく、0.6L
w<L
1を満たすことがより好ましく、0.65L
w<L
1を満たすことが特に好ましい。
【0046】
第2触媒層262は、隔壁26の内部に、排ガス流出側の端部25aから隔壁26の延伸方向に向かって、隔壁26の延伸方向の全長L
wよりも短い長さL
2(つまり、L
2<L
w)で形成されている。なお、
図3に示す実施形態では、L
2≒0.5L
wである。
【0047】
第2触媒層262の延伸方向の長さL
2は、L
2<L
wの限りにおいて特に限定されない。L
2<L
wを満たすことで、圧損の増大を好適に抑制することができる。かかる観点からは、L
2<0.9L
wを満たすことが好ましく、L
2<0.8L
wを満たすことがより好ましい。換言すれば、排ガス流入側の端部24aから延伸方向に向かってL
wの少なくとも10%(好ましくは20%)の部分には、第2触媒層262が形成されていないことが好ましい。第1触媒層261の長さL
1等にもよるが、一実施形態では、0.4L
w<L
2<0.6L
wを満たすことが特に好ましい。
【0048】
好適な一態様では、隔壁26の全長L
wと、第1触媒層261の長さL
1と、第2触媒層262の長さL
2とが、次式:L
w<(L
1+L
2)<2L
w;を満たす。換言すれば、隔壁26の内部において、第1触媒層261及び第2触媒層262の一部が隔壁26の延伸方向に相互に重なり合っていることが好ましい。
図3に示す実施形態では、L
1+L
2≒1.2L
wである。第1触媒層261と第2触媒層262の一部を延伸方向に敢えて重ねることによって、隔壁26内の触媒層の形成されていない部分を通じて入側セル24から出側セル25へと達する経路が無くなる。したがって、排ガスをより確実に第1触媒層261及び/又は第2触媒層262と接触させることができる。その結果、排ガスをより的確に浄化(無害化)することができる。
【0049】
2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)が隔壁26の延伸方向に重なり合う長さは、例えば各触媒層の厚み(延伸方向に直交する方向の長さ)などによっても異なり得るため特に限定されないが、通常は、L
wの2%以上、典型的には5%以上、好ましくは10%以上であって、L
wの40%以下、好ましくは30%以下、例えば20%以下であるとよい。なかでも、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮する観点からは、上記L
wの10〜30%程度(特には10〜20%程度)であることが好ましい。換言すれば、上記L
wと上記L
1と上記L
2とが、次式:1.1L
w≦(L
1+L
2)≦1.3L
w;を満たすことが好ましい。
【0050】
第1触媒層261の延伸方向に直交する方向の長さ(厚み)T
1は、例えば隔壁26の厚みや第1触媒層261の延伸方向の長さなどによっても異なり得るため特に限定されない。典型的には、入側セル24と接し、且つ出側セル25と接しないように、隔壁26の厚みT
wよりも短く形成される(つまり、T
1<T
w)。換言すれば、隔壁26内部の入側セル24の方に偏在していることが好ましい。好適な一態様では、排ガス流出側の端部25aから延伸方向に向かってL
wの少なくとも10%(好ましくは20%)の部分では、隔壁26の入側セル24と接する領域に、第1触媒層261及び第2触媒層262のいずれも形成されていない。これにより、触媒全体としての圧損を効果的に低減することができる。
【0051】
また、第2触媒層262の延伸方向に直交する方向の長さ(厚み)T
2は、第2触媒層262は、出側セル25に接し且つ入側セル24に接しないように、隔壁26の厚みT
wよりも短く形成される。換言すれば、隔壁26内部の出側セル25の方に偏在している。好適な一態様では、上記排ガス流入側の端部24aから延伸方向に向かってL
wの少なくとも10%(好ましくは20%)の部分では、隔壁26の出側セル25と接する領域に第1触媒層261及び第2触媒層262のいずれも形成されていない。これにより、触媒全体としての圧損を効果的に低減することができる。
【0052】
第1触媒層261の厚みT
1及び第2触媒層262の厚みT
2は、それぞれ、上記T
wの概ね20%以上、典型的には30%以上、好ましくは40%以上、例えば50%以上であって、例えば90%以下、典型的には80%以下であるとよい。これにより、OSC能の向上と圧損の低減と浄化性能の維持向上とをより高いレベルで兼ね備えることができる。
図3に示す実施形態では、T
1≒T
2≒0.8T
wである。
なお、第1触媒層261の厚みT
1と、第2触媒層262の厚みT
2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
好適な一態様では、隔壁の厚みT
wと、第1触媒層261の厚みT
1と、第2触媒層262の厚みT
2とが、次式:T
w<(T
1+T
2)<2T
w;を満たす。換言すれば、隔壁26の内部において、第1触媒層261及び第2触媒層262の一部が隔壁26の厚さ方向に相互に重なり合っていることが好ましい。
図3に示す実施形態では、T
1+T
2≒1.6T
wである。これにより、排ガスエミッションをより効果的に低減することできる。
【0054】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10は、排ガス流出側の端部25aに近接する隔壁26の内部であって入側セル24と接する領域に、基材露出部26N
1を有する。基材露出部26N
1は、第1触媒層261及び第2触媒層262がいずれも配設されていない部分である。基材露出部26N
1を有することで、圧損をより確実に低く抑えることができる。
基材露出部26N
1の寸法(長さや厚み)は特に限定されない。例えば、基材の性状や使用用途(例えば、予想されるPMの発生量やエンジンの出力)などを考慮して決定するとよい。一好適例では、基材露出部26N
1が排ガス流出側の端部25aから延伸方向に向かって0.1L
w以上の長さであり、例えば0.1L
w〜0.3L
wの長さである。また、他の一好適例では、基材露出部26N
1の厚みが0.1T
w以上であり、例えば0.1T
w〜0.3T
wである。このような態様であると、浄化性能の維持を図りつつ圧損をより良く低減することができる。したがって、本発明の効果を更に高いレベルで発揮することができる。
【0055】
好適な一態様では、排ガス流入側の端部24aに近接する隔壁26の内部であって出側セル25と接する領域に、第2の基材露出部26N
2を有する。これにより、例えば第1触媒層261のコート密度(絶対値)を比較的高く設定する場合にあっても、圧損の上昇を効果的に抑えることができる。したがって、本発明の効果を更に高いレベルで発揮することができる。
なお、例えば、2つの触媒層の長さが次式:L
w<(L
1+L
2);を満たす場合や、2つの触媒層の厚みが次式:T
w<(T
1+T
2);を満たす場合、基材露出部26N
1は、排ガス流出側の端部25aに近接する隔壁26の内部のみならず、より広い範囲に亘って配設され得る。また、基材露出部26N
1と第2の基材露出部26N
2とは、3次元的に連結した1の部分であり得る。
【0056】
このような触媒層は、従来と同様の方法で形成し得る。例えば
図3に示すような2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)は、以下のように形成し得る。
先ず、
図1,2に示すような基材を用意する。次に、2種類の触媒層形成用スラリー(すなわち、第1触媒層形成用スラリー及び第2触媒層形成用スラリー)を調製する。触媒層形成用スラリーは、それぞれ、所望の触媒金属成分(典型的にはPd、Pt、Rhなどの触媒金属をイオンとして含む溶液)と、所望のOSC材(典型的には、セリア、CZ複合酸化物)とを必須の成分として含み、その他の任意成分(例えばその他の担体粉末、助触媒、バインダ、各種添加剤等)を含み得る。なお、スラリーの性状(粘度や固形分率など)は、使用する基材のサイズや隔壁26の気孔率、形成する触媒層の性状などを考慮して調整するとよい。
【0057】
次に、上記調製した第1触媒層形成用スラリーを基材の排ガス流入側の端部24aから延伸方向にL
1の長さまで入側セル24内に供給する。これにより、入側セル24に接する部分の隔壁26の細孔内に、所望の性状の第1触媒層261を形成する。第1触媒層261の性状(例えばコート密度D
1や気孔率)は、第1触媒層形成用スラリーの性状やスラリーの供給量、供給回数などによって調整することができる。例えばコート密度D
1を大きくしたい場合には、スラリーの粘度を高めること、スラリーの固形分率を上げること、スラリーの供給量を増やすこと、スラリーの供給を複数回行うこと、などが有効である。また、第1触媒層261の厚みT
1は、スラリーの供給時間や、上記スラリーの供給時に出側セル25を加圧して入側セル24と出側セル25との間に圧力差を生じさせることなどによって、調整することができる。なお、スラリーの供給や乾燥、焼成の操作は従来の触媒層形成時と同様でよい。
【0058】
次に、上記調製した第2触媒層形成用スラリーを基材の排ガス流出側の端部25aから延伸方向にL
2の長さまで出側セル25内に供給する。これにより、出側セル25に接する部分の隔壁26の細孔内に、所望の性状の第2触媒層262を形成する。第2触媒層262の性状(例えばコート密度D
2や気孔率)や厚みT
2は、上記第1触媒層261の形成時と同様に、第2触媒層形成用スラリーの性状やスラリーの供給量、供給回数、供給時間、入側セル24と出側セル25との間に生じさせる圧力差などによって調整することができる。
そして、触媒層形成用スラリーを付与した後のハニカム基材を所定の温度及び時間で乾燥、焼成する。これによって、
図3に示すような2つの触媒層(第1触媒層261及び第2触媒層262)を形成し得る。
【0059】
なお、上記では、2種類の触媒層形成用スラリーの性状や供給量、供給回数を異ならせることにより、コート密度の異なる2つの触媒層を形成する方法を紹介したが、これに限定されるものではない。例えば、2種類の触媒層形成用スラリーで担体(種類や性状)そのものを異ならせることによっても、コート密度の異なる2つの触媒層を形成することができる。
【0060】
ここに開示される排ガス浄化用触媒10は、OSC材を含有する効果がいかんなく発揮され、従来に比べてOSC量が向上していることを特徴とする。また、OSC量の向上と圧損の低減とを高度なレベルで両立可能なものであり得る。したがって、種々の内燃機関、例えば自動車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの排気系(排気管)に好適に配置することができる。
【0061】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示
すものに限定することを意図したものではない。
【0062】
〔I.第2触媒層のコート密度を変化させた試験例〕
<例1>
まず、ハニカム基材として、
図1,2に示すようなコーディエライト製のウォールフロー型基材1(セル数300cpsi(cells per square inch)、容積0.9L、全長105mm、外径103mm、隔壁厚み0.3mm、隔壁の気孔率59%)を準備した。
次に、担体としてのAl
2O
3粉末(γ−Al
2O
3)40gと、Rh含有量が0.2gである硝酸ロジウムと、適量のイオン交換水とを混合した。得られた混合液を乾燥した後、焼成(500℃、1時間)することにより、Al
2O
3にRhが担持された形態の粉末を得た。かかる粉末と、焼成後のCZ複合酸化物量が60gとなるCeO
2−ZrO
2複合酸化物粉末(助触媒)とをイオン交換水を混合して、第1触媒層形成用スラリーを調製した。
【0063】
次に、上記調製した第1触媒層形成用スラリーをハニカム基材1の排ガス流入側の端部から入側セル内に供給し、乾燥することにより、該入側セルに接する隔壁部分の細孔内に第1触媒層(延伸方向の長さL
1:隔壁の全長L
wの70%、厚みT
1:隔壁の厚みT
wの80%)を形成した。このとき、出側セルの排ガス流出側の端部からガスを供給して、入側セルと出側セルとの間に相対的な圧力差を生じさせ、スラリーが隔壁内に浸透する深さを調整した。例1では、基材の体積1L当たりの第1触媒層のコート密度D
1を65g/Lとした。また、基材の体積1L当たりの第1触媒層のOSC材の含有密度O
1を36g/Lとした。
【0064】
次に、触媒金属としてPd源(硝酸パラジウム)を用いたこと以外は上記第1触媒層形成用スラリーと同様にして、第2触媒層形成用スラリーを調製した。
次に、上記調製した第2触媒層形成用スラリーをハニカム基材1の排ガス流出側の端部から出側セル内に供給し、乾燥することにより、該出側セルに接する隔壁部分の細孔内に第2触媒層(延伸方向の長さL
2:隔壁の全長L
wの50%、厚みT
2:隔壁の厚みT
wの80%)を形成した。このとき、第1触媒層の形成時と同様に、出側セルの排ガス流出側の端部からガスを供給して、入側セルと出側セルとの間に相対的な圧力差を生じさせ、スラリーが隔壁内に浸透する深さを調整した。例1では、基材の体積1L当たりの第2触媒層のコート密度D
2を45g/Lとした。つまり、コート密度の比(D
1/D
2)は、1.44とした。また、基材の体積1L当たりの第2触媒層のOSC材の含有密度O
2を25g/Lとした。また、触媒金属の担持率は第1触媒層と第2触媒層で略等しくした。
【0065】
そして、第1触媒層及び第2触媒層を付与したハニカム基材を、150℃で1時間乾燥した後、500℃で1時間焼成して、排ガス浄化用触媒(例1)を得た。なお、例1の排ガス浄化用触媒では、隔壁の延伸方向において、第1触媒層と第2触媒層とが隔壁の全長L
wの20%の長さにわたって重なり合っている。また、隔壁の厚さ方向において、第1触媒層と第2触媒層とが隔壁の全体厚みT
wの60%にわたって重なり合っている。
【0066】
<例2、参考例1,2>
第2触媒層のコート密度が下表1に示す値となるように第2触媒層形成用スラリーの性状(粘度や固形分率)や供給回数を調整したこと以外は上記例1と同様に、排ガス浄化用触媒(例2、参考例1,2)を作製した。なお、触媒層の触媒金属の担持量は全ての例で等しくした。
触媒層の仕様を下表1に纏める。
【0068】
<OSC能の評価>
上記排ガス浄化用触媒の酸素吸放出能(OSC)を評価した。具体的には、上記排ガス浄化用触媒をエンジンの排気管に取り付け、触媒の下流にO
2センサを取り付けた。そして、エンジンに供給する混合ガスの空燃比A/Fをリッチとリーンの間で所定時間ごとに周期的に切り替え、O
2センサの挙動を基に、(1)触媒が酸素を放出しきってから酸素を吸蔵しきるまでの運転条件と時間、及び(2)酸素を吸蔵しきってから放出しきるまでの運転条件と時間、から平均酸素吸放出量(OSC量)を算出した。結果を表1の該当欄に示す。なお、ここでは参考例1のOSC量を基準(1.0)としたときの相対値を表している。また、
図4には触媒のOSC量とD
1/D
2との関係を示す。
【0069】
<圧損の評価>
上記排ガス浄化用触媒の圧損増加率を測定した。具体的には、まず、触媒層をコートする前のハニカム基材(リファレンス)を準備し、6m
3/minの風量で空気を流通させたときの圧力を測定した。次に、上記作製した排ガス浄化用触媒(触媒層付きのハニカム基材)を用いて、同様に6m
3/minの風量で空気を流通させたときの圧力を測定した。そして、次式:〔(排ガス浄化用触媒の圧力−リファレンスの圧力)/リファレンスの圧力〕×100;から圧損増加率(%)を算出した。結果を表1の該当欄に示す。なお、ここでは参考例1の圧損増加率を基準(1.0)としたときの相対値を表している。また、
図5には、圧力損失の増加率とD
1/D
2との関係を表す。
【0070】
表1及び
図4から明らかなように、OSC量は、コート密度の比(D
1/D
2)が大きくなるほど増加する傾向にあった。コート密度の比(D
1/D
2)を1.1以上(例えば1.18以上)とすることで、OSC材の効果がより良く発揮された。
また、表1及び
図5から明らかなように、圧損は、コート密度の比(D
1/D
2)が大きくなるほど低減される傾向にあった。コート密度の比(D
1/D
2)を1.1以上(例えば1.18以上)とすることで、圧損の上昇を1割以上低減することができた。
つまり、第2触媒層のコート密度D
2(OSC材の含有密度O
2)を減少させることで、OSC能の向上と圧損の低減とを高度に両立することができた。
【0071】
〔II.第1触媒層のコート密度を変化させた試験例〕
<例3,4、参考例3>
第1触媒層のコート密度が下表2に示す値となるよう第1触媒層形成用スラリーの性状(粘度や固形分率)や供給回数を調整したこと以外は上記例1と同様に、排ガス浄化用触媒(例3,4、参考例3)を作製した。なお、触媒層の触媒金属の担持量は全ての例で等しくした。触媒層の仕様を下表2に纏める。
そして、上記I.と同様に、触媒のOSC能及び圧損を評価した。結果を表2の該当欄に示す。なお、ここでは上記参考例1のOSC量又は圧力損失を基準(1.0)としたときの相対値を表している。また、
図6には触媒のOSC量とD
1/D
2との関係を示す。
図7には圧力損失の増加率とD
1/D
2との関係を表す。
【0073】
表2及び
図6から明らかなように、第1触媒層のコート密度D
1(OSC材の含有密度O
1)を増加させると、所定量まではOSC量が増加するが、これを過ぎるとOSC量が減少した。つまり、コート密度の比(D
1/D
2)が1.5付近のときにOSC量が最も大きかった。コート密度の比(D
1/D
2)を1.4〜1.8、例えば1.44〜1.67とすることで、OSC材を添加した効果がより良く発揮された。第1触媒層のコート密度D
1(OSC材の含有密度O
1)が所定量以上になるとOSC量が低下した理由としては、第1触媒層の圧損が増大し、隔壁内の第1触媒層の形成されている部分を排ガスが流れ難くなったことが考えられる。
また、表1及び
図7から明らかなように、圧損は、コート密度の比(D
1/D
2)が大きくなるほど増大(悪化)する傾向にあった。
以上のことから、コート密度の比(D
1/D
2)を1.1〜1.8(好ましくは1.4〜1.7)とすることは、OSC能の向上と圧損の低減とを高度に両立する観点からより優位であるといえる。
【0074】
〔III.第1触媒層のOSC含有密度を変化させた試験例〕
<例5,6>
第1触媒層形成用スラリーのOSC材の含有密度が下表3に示す値となるようを調整したこと以外は上記例1と同様に、排ガス浄化用触媒(例5,6)を作製した。なお、本試験例ではOSC材の含有密度を増やした分、アルミナの含有密度を減らして、コート密度を一定とした。また、触媒層の触媒金属の担持量は全ての例で等しくした。触媒層の仕様を下表3に纏める。
そして、上記I.と同様に、触媒のOSC能及び圧損を評価した。結果を表3の該当欄に示す。
【0076】
表3から明らかなように、OSC量は、第1触媒層のOSC材の含有密度O
1が増えるほど向上した。また、圧損も、第1触媒層のOSC材の含有密度O
1が増えるほど低減された。この理由としては、アルミナの嵩密度がCZ複合酸化物よりも高いことが考えられる。つまり、嵩密度の高いアルミナの含有量が減ったことで、排ガスの流路が広がり、圧損が低減されたことが考えられる。
【0077】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。