【実施例】
【0014】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、「前方」とは、ボールペンチップの先端方向を意味し、「後方」とは、その逆方向を意味する。また、「径外方向」とは、インク収容管、チップジョイント又はボールペンチップの径方向において中心部から離れる方向を意味し、「径内方向」とは、その逆方向を意味する。
【0015】
筆記具100は、ノック部140の押圧操作によりボールペンリフィール120前端の筆記部(ボールペンチップ30)を、透明な軸筒110の前端から突出させ、この突出状態を、クリップ111を軸筒中心側へ撓ませる操作により解除するようにした出没式のボールペンである(
図1参照)。
【0016】
ボールペンリフィール120は、
図2に示すように、インク収容管側管状部品10(インク収容管)と、該インク収容管側管状部品10の前端側に接続されたチップ側管状部品20(チップジョイント)と、該チップ側管状部品20の前端側に接続されたボールペンチップ30と、これらの内部に充填されたインク40及びフォロア50とを具備する。そして、このボールペンリフィール120は、チップ側管状部品20の後端側外周面に、インク収容管側管状部品10の前端側を環状に嵌め合せて、これら双方の部品の周壁が径方向に重なり合うようにした接続構造を有する。
【0017】
インク収容管側管状部品10は、本実施の一例によれば、インク40を収容するための長尺円筒状のインク収容管である。このインク収容管側管状部品10は、透明又は透光性の合成樹脂材料から形成される。前記合成樹脂材料は、本実施例ではPP(ポリプロピレン)としているが、他の合成樹脂材料とすることも可能である。
【0018】
チップ側管状部品20は、本実施の一例によれば、インク収容管側管状部品10(インク収容管)とボールペンチップ30との間に介在し、これらを接続する略円筒状のチップジョイントである。このチップ側管状部品20は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の硬質合成樹脂材料により成形される。
このチップ側管状部品20は、
図5に示すように、前端側の内周面に、ボールペンチップ30をメス嵌合するためのチップ嵌合孔21を有し、後端側の外周面に、インク収容管側管状部品10に対しオス嵌合するためのインク収容管嵌合部22を有し、これらチップ嵌合孔21とインク収容管嵌合部22の間に環状鍔部23を有する。
【0019】
チップ嵌合孔21は、チップ側管状部品20における環状鍔部23よりも前側の筒状部分の前端側内周面に設けられる。このチップ嵌合孔21は、ボールペンチップ30の後端部を圧入するように、ボールペンチップ30の後端部の外径よりも若干小さい内径の円筒面状に形成される。
【0020】
インク収容管嵌合部22は、インク収容管側管状部品10(インク収容管)の前端側に挿入可能な略円筒状に形成される。このインク収容管嵌合部22の外周面には、インク収容管側管状部品10の前端側の内周面に全周にわたって圧接される第1の環状突出部22aと、該第1の環状突出部に対し後方へ離れた位置でインク収容管側管状部品10の内周面に全周にわたって圧接される第2の環状突出部22bと、これら第1の環状突出部22aと第2の環状突出部22bとの間で全周にわたる環状凹部22cとが設けられる。
【0021】
第1の環状突出部22aは、凹凸の無い円筒面状に形成され、その全外周面を、インク収容管側管状部品10の内周面に対し圧接される圧接面としている。この圧接面の外径d5(
図4参照)は、インク収容管側管状部品10の前端側の内径D(
図6参照)よりも若干大きく設定される。
そして、この第1の環状突出部22aの前後方向(図示の上下方向)の長さは、第2の環状突出部22bにおける圧接面の前後方向の長さよりも長く形成され、特に本実施の好ましい一例によれば、この長さは、第2の環状突出部22bの圧接面の前後方向の長さと、環状凹部22cの前後方向の長さとを合計した長さよりも長く設定される(
図6参照)。
【0022】
第2の環状突出部22bは、全周に連続して径外方向へ突出する環状突起であり、その突端側の部分を、インク収容管側管状部品10の前端側内周面に対し圧接する。
この第2の環状突出部22bにおける突端部(換言すれば最大径部分)の外径は、インク収容管側管状部品10の前端側の内径よりも大きく、且つ第1の環状突出部22aの突端部(最大径部分)の外径よりも大きく設定される。
【0023】
第2の環状突出部22bの形状についてより詳細に説明すれば、第2の環状突出部22bは、
図4に示すように、チップ側管状部品20の最後端部の外径縁から前方へ向かって徐々に拡径した後側環状テーパ面22b1と、該環状テーパ面22b1よりも前側に連なる第1圧接面22b2と、環状テーパ面22b1と第1圧接面22b2とを凸曲状に滑らかに結ぶ面取り部22b3と、第1圧接面22b2の前端からさらに径外方向へ突出した第2圧接面22b4と、該第2圧接面22b4から前方へ向かって徐々に縮径した前側環状テーパ面22b5とを有し、略山形状に構成される。
【0024】
後側環状テーパ面22b1の最小部分の外径d1は、インク収容管側管状部品10の前端側内径D(
図6参照)よりも小さい径に設定される。
第1圧接面22b2は、円筒面状に形成され、その外径d2が、インク収容管側管状部品10の前端側内径Dよりも大きく、且つ第1の環状突出部22aの外径d5と略同等に設定されている。
第2圧接面22b4は、全周に連続する断面山形状(換言すれば凸曲面状)に形成され、その最大径部分の外径d3が、インク収容管側管状部品10の前端側内径D及び第1圧接面22b2の外径d2よりも大きく、且つ第1の環状突出部22aの外径d5よりも大きく設定されている。
【0025】
環状凹部22cは、第1の環状突出部22aと第2の環状突出部22bの間で、これら突出部に相対し径内方向へ凹んだ環状の凹部である。
この環状凹部22cの底部の外径面は、前後方向に適宜な幅を有する円筒面状であって、インク収容管側管状部品10の前端側内径Dと略同等の外径d4に設定される。
そして、環状凹部22cの前端側は、面取り状の環状傾斜面22dを介して第1の環状突出部22aの後端に接続される(
図4参照)。
【0026】
また、環状鍔部23は、第1の環状突出部22aの前側に位置し、チップ側管状部品20の全周にわたる環状に径外方向へ突出している。この環状鍔部23の後端面には、インク収容管側管状部品10の前端部が当接する(
図6参照)。
【0027】
そして、インク収容管嵌合部22に対しインク収容管側管状部品10を環状に装着した状態においては、
図6に示すように、第1の環状突出部22aの全外周面がインク収容管側管状部品10の内周面に圧接され、この圧接部分から後方に間隔をおいて、第2の環状突出部22bにおける第1圧接面22b2及び第2圧接面22b4が、インク収容管側管状部品10の内周面に圧接される。特に、第2圧接面22b4は、第1圧接面22b2よりも大きい圧接力にて、局部的にインク収容管側管状部品10内周面に圧接される。
そして、第1の環状突出部22a及び第2の環状突出部22bの圧接により、インク収容管側管状部品10の周壁は、径外方向へ弾性的に若干膨張し、該インク収容管側管状部品10の内周面と環状凹部22cとの間には、微小な環状空間sが確保される。
【0028】
また、ボールペンチップ30は、内部を前後方向へ貫通した略筒状のチップ本体31の前端側に、転写ボール32を回転自在に抱持してなり(
図2参照)、転写ボール32の回転によりチップ本体31内のインクを、転写ボール32とチップ本体31前端との隙間から吐出するように構成される。
【0029】
前端側にチップ側管状部品20及びボールペンチップ30を装着したインク収容管側管状部品10(インク収容管)の内部には、インク40が充填され、さらに、インク40の後部側にフォロア50が充填される。
【0030】
インク40は、比較的低粘度な染料系インクである。
フォロア50は、グリス状の高粘度流体であり、インク40が後方へ流出するのを阻む。
【0031】
次に本実施例における特徴的な作用効果について説明する。
本実施例の接続構造によれば、インク収容管側管状部品10内のインク40が、インク収容管側管状部品10内周面とインク収容管嵌合部22外周面との間に染み込んで拡がるのを、第2の環状突出部22b(詳細には第1圧接面22b2と第2圧接面22b4)の圧接箇所により阻むことができる。
万が一、インク収容管側管状部品10内周面と第2の環状突出部22bの外周面との間に、微小な凹凸や異物等に起因して隙間が生じ、該隙間による毛細管力によりインク40が第2圧接面22b4を超えてその前方へ侵入したとしても、前記毛細管力を環状空間sにより弱めることができ、その結果、インク40が、第1の環状突出部22aの外周部にまで染み込むようなことを阻むことができる。
したがって、インク収容管側管状部品10とインク収容管嵌合部22との間に染み込んで拡がったインク40が、透明なインク収容管側管状部品10及び軸筒110等を介して外部から目視され、ボールペンリフィール120や軸筒110の外観上の体裁を損ねたり、該インク40が外部に洩れたりするようなことを防ぐことができる。
【0032】
また、環状空間sよりも前側においては、第1の環状突出部22aが前後方向にわたる広い範囲でインク収容管側管状部品10内周面に圧接され、インク収容管側管状部品10の前端が環状鍔部23の後端に当接しているため、チップ側管状部品20に対し、インク収容管側管状部品10が、径方向へがたつくようなことを防ぐことができる。
【0033】
また、製造段階においては、インク収容管嵌合部22をインク収容管側管状部品10前端側に挿入する際、先ず、後側環状テーパ面22b1から第1圧接面22b2までの範囲(
図4参照)がインク収容管側管状部品10内へ滑らかに進入し、第1圧接面22b2とインク収容管側管状部品10内周面とが圧接されて芯合わせが行われ、この後、第2圧接面22b4、環状凹部22c及び第1の環状突出部22aがインク収容管側管状部品10内へ進入してゆく。よって、その接続作業がスムーズであり、両部材間を高精度に接続することができる。
【0034】
なお、上記実施例によれば、インク収容管嵌合部22の環状凹部22c底部の外径d4をインク収容管側管状部品10の内径Dと略同等に形成し、インク収容管側管状部品10を弾性的に拡径させることで、環状凹部22c内に環状空間sが確保されるようにしているが、他例としては、環状凹部22c底部の外径d4をインク収容管側管状部品10の内径Dよりも小さくして、環状空間sの厚みをより大きく確保することも可能である。
【0035】
また、上記実施例によれば、チップ側管状部品20の後端側外周面に、第1の環状突出部22a、第2の環状突出部22b及び環状凹部22c等を設けたが、他例としては、チップ側管状部品20の後端側外周面を凹凸の無い円筒状の面に形成し、インク収容管側管状部品10の前端側内周面に、第1の環状突出部22a、第2の環状突出部22b及び環状凹部22cと同様の凹凸部を設けた態様とすることも可能である。
【0036】
また、上記実施例によれば、インク収容管側管状部品10としてインク収容管を用いるとともに、チップ側管状部品20としてチップジョイントを用いたが、他例としては、インク収容管側管状部品10としてチップジョイントを用いるとともに、チップ側管状部品20としてボールペンチップ30のチップ本体31を用い、これらの接続部分に上記接続構造を適用することも可能である。
さらに他例としては、インク収容管側管状部品10としてインク収容管を用いいるとともに、チップ側管状部品20としてチップ本体31を用い、これらを直接接続し、この接続部分に上記接続構造を適用することも可能である。