(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アクリル化合物(A)、脂環式エポキシ化合物(B)、及び硬化触媒(C)を必須成分として含む活性エネルギー線硬化性組成物(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)である。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上記必須成分(成分(A)〜(C))以外にも必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0025】
[アクリル化合物(A)]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物におけるアクリル化合物(A)は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」は、アクリル及び/又はメタクリル(アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方)を意味し、(メタ)アクリレート等についても同様である。
【0026】
アクリル化合物(A)が分子内に有するアクリロイル基及びメタクリロイル基の数(総数)は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜15個)が好ましく、より好ましくは3個以上(例えば、3〜12個)、さらに好ましくは6個以上(例えば、6〜10個)である。また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるアクリル化合物(A)の平均官能基数は、特に限定されないが、3官能以上(例えば、3〜15官能)が好ましく、さらに硬化物の表面硬度を向上させる観点から、6官能以上(例えば、6〜12官能)がより好ましい。なお、アクリル化合物(A)の平均官能基数とは、アクリル化合物(A)1分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数である。
【0027】
アクリル化合物(A)の分子量は、特に限定されないが、300〜13000が好ましく、より好ましくは400〜13000、さらに好ましくは500〜10000、さらに好ましくは500〜3000である。また、アクリル化合物(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、400〜13000が好ましく、より好ましくは500〜10000、さらに好ましくは500〜3000である。分子量が300未満及び/又は重量平均分子量が400未満では、硬化物のカール性が増大する場合がある。一方、分子量及び/又は重量平均分子量が13000を超えると、硬化物の表面硬度が低下し、プラスチック基材等のトップコート(特に、ハードコート)としての役割を果たせなくなる場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法により測定される標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0028】
アクリル化合物(A)としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート(直鎖又は分岐鎖状脂肪族(メタ)アクリレート)、脂環式(メタ)アクリレート等の非芳香族(メタ)アクリレート);芳香族(メタ)アクリレート等のいずれであってもよい。中でも、硬化物の非着色性の観点から脂肪族(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
具体的には、アクリル化合物(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、フェニルフェノールジエトキシ(メタ)アクリレート、フェニルフェノールペンタエトキシ(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロイルモルホリン、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、これらの誘導体等の単官能(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、これらの誘導体等の二官能(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等)、これらの誘導体等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルカジエン(メタ)アクリレート(例えば、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等)、メラミン(メタ)アクリレート、ポリアセタール(メタ)アクリレート等の単官能又は多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
中でも、アクリル化合物(A)としては、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基(総数)を有する脂肪族(メタ)アクリレート、平均官能基数が3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基(総数)を有する脂肪族(メタ)アクリレートである。上記脂肪族(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、商品名「DPHA」(ダイセル・オルネクス(株)製)等の市販品を入手可能である。また、上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネートと、イソシアネート基に対して反応性を有する(メタ)アクリロイル化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、商品名「KRM8904」(ダイセル・オルネクス(株)製)等の市販品を入手可能である。
【0031】
また、アクリル化合物(A)としては、基材への密着性や脂環式エポキシ化合物(B)との反応性の観点から、分子内に(メタ)アクリロイル基と水酸基の両方を有しているもの(「水酸基含有アクリル化合物」と称する場合がある)を使用してもよい。上記水酸基含有アクリル化合物は、例えば、上述の分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する脂肪族(メタ)アクリレートや平均官能基数が3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート等とともに、併用する形態で使用することができる。水酸基含有アクリル化合物が分子内に有する(メタ)アクリロイル基と水酸基の数は特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基と水酸基の合計数が2個以上であることが好ましい。
【0032】
上記水酸基含有アクリル化合物としては、上記で例示した化合物のうち水酸基を有するもの等が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0033】
式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を示す。また、R
2は、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基等)を示す。sは、0〜20の整数(好ましくは1〜10の整数、より好ましくは1〜5の整数)を示す。
【0034】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物においてアクリル化合物(A)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物におけるアクリル化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、30〜99重量%が好ましく、より好ましくは40〜99重量%、さらに好ましくは50〜98重量%、さらに好ましくは60〜95重量%、さらに好ましくは70〜90重量%である。アクリル化合物(A)の含有量を上記範囲に制御することにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性がより高くなったり、硬化物が低カール性や透明性により優れるものとなる傾向がある。
【0036】
アクリル化合物(A)の中でも、水酸基含有アクリル化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、アクリル化合物(A)の全量(100重量%)に対して、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。水酸基含有アクリル化合物の含有量を1重量%以上とすることにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性、硬化物の基材への密着性及び低カール性がより向上する傾向がある。一方、水酸基含有アクリル化合物の含有量を30重量%以下とすることにより、硬化物の表面硬度がより向上する傾向がある。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるアクリル化合物(A)及び脂環式エポキシ化合物(B)の総量(100重量%)に対するアクリル化合物(A)の割合は、特に限定されないが、40〜99.9重量%が好ましく、より好ましくは50〜99.9重量%、さらに好ましくは65〜90重量%である。アクリル化合物(A)の上記割合を40重量%以上とすることにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性がより高くなる傾向がある。一方、アクリル化合物(A)の上記割合を99.9重量%以下とすることにより、硬化物が低カール性や透明性により優れるものとなる傾向がある。
【0038】
[脂環式エポキシ化合物(B)]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における脂環式エポキシ化合物(B)は、分子内に脂環(脂肪族炭化水素環)構造とエポキシ基(オキシラニル基)とを少なくとも有する化合物である。脂環式エポキシ化合物(B)としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物、(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物等が挙げられる。
【0039】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
【0040】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、硬化物の透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化2】
【0041】
上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(I)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基等の置換基が結合していてもよい。
【0042】
上記式(I)中のXが単結合である化合物としては、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサン等が挙げられる。
【0043】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0044】
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0045】
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と二価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。二価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0046】
上記式(I)で表される化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン等が挙げられる。なお、下記式(I−5)、(I−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(I−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【化3】
【化4】
【0047】
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0048】
式(II)中、R'は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(−OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'−(OH)
p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコール(炭素数1〜15のアルコール等)等が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0049】
上述の(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物)、ビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物)、水添ビフェノール型エポキシ化合物、水添フェノールノボラック型エポキシ化合物、水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAの水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ナフタレン型エポキシ化合物、トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水添エポキシ化合物等の水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物等が挙げられる。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において脂環式エポキシ化合物(B)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。また、脂環式エポキシ化合物(B)としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。
【0051】
脂環式エポキシ化合物(B)としては、硬化物の表面硬度、カール性、透明性の観点で、(i)脂環エポキシ基を有する化合物が好ましく、上記式(I−1)で表される化合物[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート;例えば、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)等]、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサンが特に好ましい。
【0052】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における脂環式エポキシ化合物(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、0.01〜60重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは2〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。脂環式エポキシ化合物(B)の含有量を上記範囲に制御することにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化性がより向上し、硬化物のカール性がより低減され、透明性に優れる傾向がある。
【0053】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対するアクリル化合物(A)と脂環式エポキシ化合物(B)の総量の割合は、特に限定されないが、硬化性(硬化速度)、硬化物の表面硬度、低カール性、透明性の観点で、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)が好ましく、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上(例えば、40〜100重量%)が好ましく、さらに好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上(例えば、90〜99重量%)である。
【0054】
[硬化触媒(C)]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における硬化触媒(C)は、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線の種類や、アクリル化合物(A)、脂環式エポキシ化合物(B)の種類によっても異なり、特に限定されないが、例えば、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができる。硬化触媒(C)としては、公知乃至慣用の光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等の光ラジカル重合開始剤;ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、商品名「イルガキュア−184」、「イルガキュア−127」、「イルガキュア−149」、「イルガキュア−261」、「イルガキュア−369」、「イルガキュア−500」、「イルガキュア−651」、「イルガキュア−754」、「イルガキュア−784」、「イルガキュア−819」、「イルガキュア−907」、「イルガキュア−1116」、「イルガキュア−1173」、「イルガキュア−1664」、「イルガキュア−1700」、「イルガキュア−1800」、「イルガキュア−1850」、「イルガキュア−2959」、「イルガキュア−4043」、「ダロキュア−1173」、「ダロキュア−MBF」(BASF製)等の市販品を好ましく使用することもできる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「CPI−101A」、「CPI−100P」、「CPI−200K」(以上、サンアプロ(株)製);商品名「CYRACURE UVI−6990」、「CYRACURE UVI−6992」(以上、ダウ・ケミカル社製);商品名「UVACURE1590」(ダイセル・オルネクス(株)製);商品名「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国サートマー製);商品名「イルガキュア−264」(BASF製);商品名「CIT−1682」(日本曹達(株)製);商品名「PHOTOINITIATOR 2074」(ローディアジャパン(株)製)等の市販品を好ましく使用することもできる。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において硬化触媒(C)は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化触媒(C)として、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤の一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。活性エネルギー線硬化性組成物の硬化反応をより効率的に進行させるためには光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤の両方を含むことが好ましいが、アクリル化合物(A)及び脂環式エポキシ化合物(B)の種類、これらの配合比によっては、いずれか一方のみでも十分に硬化反応を進行させることができる場合がある。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における硬化触媒(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、光ラジカル重合開始剤の場合は、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、1〜20重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは2〜4重量%である。光ラジカル重合開始剤の含有量が1重量%よりも少ないと硬化不良を引き起こすおそれがあり、逆に20重量%よりも多いと硬化物に開始剤由来の臭気が残存することがある。また、光カチオン重合開始剤の場合は、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、0.0005〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜3重量%である。光カチオン重合開始剤の含有量が0.0005重量%よりも少ないと硬化不良を引き起こすおそれがあり、逆に10重量%よりも多いと硬化物に開始剤由来の臭気が残存することがある。硬化触媒(C)を上記範囲内で使用することにより、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化速度が速くなり、硬化物が表面硬度、低カール性、透明性により優れたものとなる傾向がある。
【0058】
[その他の硬化性化合物]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アクリル化合物(A)や脂環式エポキシ化合物(B)以外の硬化性化合物(「その他の硬化性化合物」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の硬化性化合物としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテル、オキセタン化合物(オキセタニル基を1個以上有する化合物)、ビニルエーテル化合物(ビニルエーテル基を1個以上有する化合物)等が挙げられる。
【0059】
上述の芳香族グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン等のビスフェノールA型エポキシ化合物;ビス[o,o−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[o,p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[p,p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタン等のビスフェノールF型エポキシ化合物;ビフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物;クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物等が挙げられる。
【0060】
上述の脂肪族多価アルコールポリグリシジルエーテルとしては、例えば、グリセリン、テトラメチレングリコール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0061】
上述のオキセタン化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3−{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0062】
上述のビニルエーテル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールジビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールジビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールジビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、イソソルバイドジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物においてその他の硬化性化合物は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。その他の硬化性化合物としては、市販品を使用することもできる。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物におけるその他の硬化性化合物の含有量(配合量)は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、90重量%以下(例えば、0〜90重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以下(例えば、1〜80重量%)、さらに好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。
【0065】
[添加剤]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を含有していてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の水酸基を有する化合物を含有させると、反応を緩やかに進行させることができる。中でも、ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール等を含有させると、硬化物に可撓性を付与することができる。ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールとしては、例えば、商品名「プラクセル205」、「プラクセル205U」、「プラクセルL205AL」、「プラクセル208」、「プラクセル210」、「プラクセル210N」、「プラクセル212」、「プラクセルL212AL」、「プラクセル220」、「プラクセル220N」、「プラクセル220NP1」、「プラクセルL220AL」、「プラクセル230」、「プラクセル230N」、「プラクセル240」、「プラクセル303」、「プラクセル305」、「プラクセル308」、「プラクセル312」、「プラクセルL320AL」、「プラクセル405D」、「プラクセルCD205」、「プラクセルCD210」、「プラクセルCD220」、「プラクセルCD205PL」、「プラクセルCD205HL」、「プラクセルCD210PL」、「プラクセルCD210HL」、「プラクセルCD220PL」、「プラクセルCD220HL」、「プラクセルCD220EC」、「プラクセルCD221T」(以上、(株)ダイセル製);商品名「ETERNACOLL UH−CARB50」、「ETERNACOLL UH−CARB100」、「ETERNACOLL UH−CARB300」、「ETERNACOLL UH−CARB90(1/3)」、「ETERNACOLL UH−CARB90(1/1)」、「ETERNACOLL UH−CARB100」(以上、宇部興産(株)製);商品名「デュラノールT6002」、「デュラノールT5652」、「デュラノールT4672」、「デュラノールT4692」、「デュラノールG3452」(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)等の市販品を使用することもできる。水酸基を有する化合物(例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等)の含有量は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、1〜40重量%(より好ましくは5〜30重量%)の範囲から適宜選択できる。
【0066】
その他にも、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、硬化助剤、オルガノシロキサン化合物、金属酸化物粒子、ゴム粒子、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、界面活性剤、無機充填剤(例えば、シリカ、アルミナ等)、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体(例えば、YAG系の蛍光体微粒子、シリケート系蛍光体微粒子等の無機蛍光体微粒子等)、溶剤(例えば、メチルエチルケトン等)、染料等の慣用の添加剤を使用することができる。これら添加剤の含有量は、特に限定されず、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(100重量%)に対して、0〜40重量%(例えば、1〜20重量%)の範囲で適宜設定できる。
【0067】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、特に限定されないが、上述の各成分を、必要に応じて加熱した状態で、攪拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、2以上に分割された成分(各成分は2以上の成分の混合物であってもよい)を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。上記攪拌・混合の方法は、特に限定されず、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式攪拌装置等の公知乃至慣用の攪拌・混合手段を使用できる。また、攪拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0068】
<ハードコート用組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化させることにより、表面硬度、低カール性、透明性に優れた硬化物(本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。このため、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ハードコート用組成物(ハードコート剤)として好ましく使用することができる。
【0069】
<塗装物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を対象物(被塗装物)としての物品(基材;例えば、金属又は樹脂製の基材等)の表面に塗布し、硬化させることによって、塗装物が得られる。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、物品(TACやPET等の薄膜プラスチックフィルム等)に塗布した後、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化させることができる。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ってもよい。物品に塗布した本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることにより、上記塗装物が得られる。当該塗装物は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物が硬化性(硬化速度)に優れ、また、本発明の硬化物が表面硬度、低カール性、透明性に優れるため、生産性と品質の両方に優れる。
【0070】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、コーティング剤(特にハードコート用途)、インク、接着剤、シーラント、封止剤、レジスト、複合材料、透明基材、透明フィルム又はシート、光学材料(例えば、光学レンズ等)、光造形材料、電子材料(例えば、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等)、機械部品材料、電気部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、プラスチック形成材料、溶剤(例えば、反応性希釈剤等)等の各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1、表2中の「NV合計」は、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分の総重量部を示し、「合計」は、活性エネルギー線硬化性組成物の揮発分及び不揮発分の総重量部を示す。
なお、実施例2及び4は、参考例として記載するものである。
【0072】
実施例1
[活性エネルギー線硬化性組成物の調製1]
表1(表2中の実施例1も同じである)に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」(脂環式エポキシ化合物、(株)ダイセル製)、商品名「イルガキュア−184」(光ラジカル重合開始剤、BASF製)、及び商品名「CPI−101A」(光カチオン重合開始剤、サンアプロ(株)製)を、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0073】
[活性エネルギー線硬化性組成物の調製2]
活性エネルギー線硬化性組成物の調製1で得た活性エネルギー線硬化性組成物を、NV(不揮発分)の割合が80重量%になるようにメチルエチルケトンで希釈することで、活性エネルギー線硬化性組成物(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0074】
[透過率測定用試料の作製]
活性エネルギー線硬化性組成物の調製1で得た活性エネルギー線硬化性組成物を、成形型(厚さ0.5mmの注型用型枠)に注型した。その後、照射量約1060mJ/cm
2の条件で紫外線を照射することによって硬化させ、硬化物(透過率測定用試料)を得た。
【0075】
[硬化フィルムの作製]
活性エネルギー線硬化性組成物の調製2で得た活性エネルギー線硬化性組成物(メチルエチルケトン溶液)を、易接着PET基材(商品名「A4100」、東洋紡(株)製;膜厚100±5μm)上にバーコーターを用いて塗布した。
この時、乾燥後の膜厚が、約5μm、約10μm、約20μmとなるようにバーコーターを使用して、それぞれ塗布した。その後、80℃、5分間の条件で乾燥させた後、窒素置換した密閉容器内に入れた状態で、照射量約1160mJ/cm
2の条件で紫外線を照射することによって硬化させた。
このようにして得られた「PET基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(硬化フィルム)のうち、硬化物の膜厚が約20μmであるものを、鉛筆硬度評価用の試料として用いた。
また、上記で得られた「PET基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(硬化フィルム)のうち、硬化物の膜厚が約10μmであるものをPET基材に対する密着性評価用の試料として用いた。
また、上記で得られた「PET基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(硬化フィルム)のうち、硬化物の膜厚が約10μmであるものから幅5cm×長さ14cmの試験片を切り取り、これを耐屈曲性評価用の試料として用いた。
また、上記で得られた「PET基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(硬化フィルム)から1辺が10cm正方形の試験片を切り取った。上記試験片について、
図1(1a)の丸で囲んだ数字1〜5に示した測定点の膜厚を測定した。これら全ての測定点において、測定点の膜厚からPET基材の膜厚(あらかじめ測定しておいた膜厚)を差し引いた硬化塗膜の膜厚がそれぞれ5μm±2μm(硬化塗膜の膜厚が約5μmの場合)、10μm±2μm(硬化塗膜の膜厚が約10μmの場合)、20μm±2μm(硬化塗膜の膜厚が約20μmの場合)の場合を合格として、これをカール性評価用の試料として用いた。不合格の場合は、上記の測定点の膜厚が合格となるまで、バーコーターを変更し、上記の塗布・乾燥・硬化工程を繰り返して、カール性評価用の試料を作製した。
【0076】
[金属基材に対する密着性評価用試料の作製]
活性エネルギー線硬化性組成物の調製2で得た活性エネルギー線硬化性組成物を、リン酸亜鉛処理鋼板(商品名「PB144」、日本テストパネル(株)製)上に、乾燥後の膜厚が約10μmとなるようにバーコーターを使用して塗布した。その後、80℃、5分間の条件で乾燥させた後、窒素置換した密閉容器内に入れた状態で、照射量約1160mJ/cm
2の条件で紫外線を照射することによって硬化させ、金属基材に対する密着性評価用試料を得た。
【0077】
実施例2、3、4
活性エネルギー線硬化性組成物の各成分の配合比を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0078】
実施例5
DPHAをKRM8904(脂肪族ウレタンアクリレート)に変更し、活性エネルギー線硬化性組成物の各成分の配合比を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0079】
実施例6
セロキサイド2021Pを3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0080】
実施例7
セロキサイド2021Pを3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキサンに変更したこと以外は実施例5と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0081】
実施例8、9
プラクセルFA2Dを追加したこと以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0082】
比較例1
セロキサイド2021P及びCPI−101Aを使用せず、活性エネルギー線硬化性組成物の各成分の配合比を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0083】
比較例2
セロキサイド2021P及びCPI−101Aを使用せず、活性エネルギー線硬化性組成物の各成分の配合比を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして、活性エネルギー線硬化性組成物及びその硬化物(試料)を得た。
【0084】
<評価>
実施例及び比較例で得た活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(試料)について、以下の評価試験を実施した。
【0085】
[鉛筆硬度]
実施例及び比較例で得られた硬化フィルム(硬化塗膜の膜厚約20μm)の鉛筆硬度を測定し、これを「鉛筆硬度(20μm)」とした。
硬化塗膜の鉛筆硬度の評価は、JIS K5600に準拠して、PET基材上に形成した硬化塗膜について実施した。評価は外観観察によって行い、PET基材上の硬化塗膜を鉛筆でこすり、表面に傷が確認できたものをNG(不良)とした。具体的には、ある硬さの鉛筆でまず評価を行い、傷が付かなかった場合に、1つ上の硬さの鉛筆で評価を行うという作業を繰り返し、傷が確認できたらその1つ下の硬さで再評価した。また、傷が確認できなかったら再度1段階上の硬さの鉛筆を用い、2回以上の再現性が確認できた場合、傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度をその硬化塗膜の鉛筆硬度とし、評価結果は鉛筆の芯の硬度で表した。評価条件は以下の通りである。
評価用鉛筆:三菱鉛筆社製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:500gf
引掻き距離:50mm以上
引掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
なお、試験に使用する試料(硬化フィルム)は、23℃、50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
【0086】
[カール性]
実施例及び比較例で得た硬化フィルム(膜厚約5μm、約10μm、約20μmの3種類)について、
図1(1b)に示すように水平面に置いた場合の四隅の反りを測定し、その平均値をそれぞれ「カール(膜厚5μm)」、「カール(膜厚10μm)」、「カール(膜厚20μm)」とした。反りの大きなものは、硬化収縮又は硬化膨張が大きいとみなされる。なお、硬化収縮が起きた場合(硬化フィルムの
図1(1b)の水平面と接する面が硬化塗膜とは反対側の場合)の反りを正の値、硬化膨張が起きた場合(硬化フィルムの
図1(1b)の水平面と接する面が硬化塗膜側の場合)の反りを負の値として、表1に示した。
【0087】
[透明性]
実施例及び比較例で得られた硬化物(厚さ0.5mm)の光の透過率を、分光光度計(商品名「UV−2450」、(株)島津製作所製)を使用して測定し、波長350nm、400nm、450nm、550nmの光の透過率の値を、「透過率(350nm)」、「透過率(400nm)」、「透過率(450nm)」、「透過率(550nm)」とした。
【0088】
[耐屈曲性]
実施例及び比較例で得られた硬化フィルム(膜厚約10μm)について、JIS K5600−5−1(耐屈曲性(円筒形マンドレル))に準拠して、屈曲試験機(商品名「マンドレル屈曲試験機」、(株)東洋精機製作所製)を使用して評価し、硬化塗膜の割れが生じたマンドレルの直径を示した。
【0089】
[密着性]
実施例及び比較例で得られた密着性評価用試料(PET基材に対する密着性評価用試料、及び金属基材に対する密着性評価用試料、それぞれ硬化塗膜の膜厚約10μm)について、JIS K5400に準拠した碁盤目試験法によって評価を行い、100マス中、剥離せずに残ったマスの数を示した。また、残ったマス(残マス)の数に基づく点(点数)も示した。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
なお、表1、表2中の略号は、次のものを示す。
(アクリル化合物)
DPHA:商品名「DPHA」[ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、6官能]
KRM8904:商品名「KRM8904」[脂肪族ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、9官能]
プラクセルFA2D:商品名「プラクセルFA2D」[不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン、(株)ダイセル製]
(エポキシ化合物)
セロキサイド2021P:商品名「セロキサイド2021P」[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製]
(硬化触媒)
IRG184:商品名「イルガキュア−184」[光ラジカル重合開始剤、BASF製]
CPI−101A:商品名「CPI−101A」[光カチオン重合開始剤、サンアプロ(株)製]
【0093】
表1に示すように、アクリル化合物(A)、脂環式エポキシ化合物(B)、及び硬化触媒(C)を必須成分とする本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(実施例)はいずれも、高い表面硬度、低カール性、優れた透明性を有するものであった。より詳しくは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(実施例1〜7)は、脂環式エポキシ化合物(B)を含まない組成物の硬化物(比較例1、2)と比較して、同等の表面硬度及び透明性を有しながら(鉛筆硬度・透過率の大きな低下は伴わず)、低カール性を有したものになっていた。
また、表2に示すように、水酸基含有アクリル化合物を含む本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物(実施例8、9)は、水酸基含有アクリル化合物を含まない組成物の硬化物(実施例1、6、及び比較例1)と比較して、高い表面硬度、低カール性、高い耐屈曲性を有しながら、さらにPETフィルムや金属に対する密着性にも優れる傾向を示した。特に実施例8で得られた硬化物は、透明性、表面硬度、低カール性、耐屈曲性、及びPETフィルムや金属に対する密着性が非常に高いレベルで共立されたものであった。