(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472687
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】4探針測定プローブのゼロアジャスト補正治具
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20190207BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
G01R27/02 R
G01R35/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-52823(P2015-52823)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-173274(P2016-173274A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】半田 信久
【審査官】
青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−131876(JP,U)
【文献】
特開2000−292463(JP,A)
【文献】
特開平08−114634(JP,A)
【文献】
特開2012−255739(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0181293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源に接続される正極側電流探針と負極側電流探針との間に、電圧検出手段に接続される正極側電圧探針と負極側電圧探針とが、上記各電流探針を結ぶ仮想の直線に沿って並べられた状態で、上記4本の探針が電気絶縁性のピンボードに植設されている4探針測定プローブのゼロアジャスト補正治具において、
電気絶縁材からなる基板の片面に上記4本の探針が同時に接触可能な面積をもって形成された導体膜を有し、上記導体膜のうち、上記正極側電圧探針と上記負極側電圧探針とが接触する電圧探針接触領域の周りには、上記定電流源より上記正極側電流探針から上記負極側電流探針に向けて流れる測定電流が上記電圧探針間を流れないようにするための電流バリアが形成されていることを特徴とするゼロアジャスト補正治具。
【請求項2】
上記電流バリアは上記電圧探針接触領域の全周を囲む環状ではなく、上記電圧探針接触領域と、その外側に存在する上記各電流探針が接触する電流探針接触領域とが導通していることを特徴とする請求項1に記載のゼロアジャスト補正治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四端子測定用の4探針がピンボードに植設(貫設)されている4探針測定プローブのゼロアジャスト補正治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、四端子測定法による抵抗測定装置は、基本的な構成として、被測定抵抗体Rxに測定電流を供給する定電流源100と、その測定電流により被測定抵抗体Rxに生ずる電圧降下分を測定する電圧測定手段(電圧計)200と、演算制御部(CPU)300とを備え、演算制御部300は、定電流源100から供給それる測定電流をI、電圧測定手段200にて測定された電圧をVとして、被測定抵抗体Rxが有する抵抗率RをR=F×V/Iにより求める(Fは所定の補正係数)。
【0003】
この抵抗測定には、定電流源100の正極(Hi)と負極(Lo)とに接続される電流供給側端子101,102と、電圧測定手段200の正極(Hi)と負極(Lo)とに接続される電圧検出端子201,202の合計4本の端子が用いられる。
【0004】
測定に先立って、種々の補正(調整)が行われるが、その一つにゼロアジャスト補正(ショート補正とも言う)がある。ゼロアジャスト補正は、電圧検出端子201,202との間を0Ωとして測定を行い、そのとき電圧測定手段(電圧計)200に表示されるオフセット分を差し引いてゼロ点を調整する。
【0005】
各端子101,102:201,202がワニ口クリップであれば、例えば特許文献1の
図12(a)(b)に示されているように、電圧検出端子201,202が直に接触するように、一対のワニ口クリップをかみ合わせれば、ゼロアジャスト補正を行うことができる。
【0006】
これに対して、各端子101,102:201,202が、単独のプローブピン(本明細書では、「探針」と言う)からなる場合には、4探針測定プローブとして、
図3に示すように、定電流源100に接続される正極側電流探針101と負極側電流探針102との間に、電圧検出手段200に接続される正極側電圧探針201と負極側電圧探針202とが、各電流探針101,102を結ぶ仮想の直線に沿って並べられた状態で、4本の探針101,102:201,202が電気絶縁性のピンボードPBに植設(貫設)されることになる。
【0007】
この一体型4探針測定プローブでは、ゼロアジャスト補正を行う場合、電圧探針201,202を直に接触させることができないため、従来では、
図4に示すような補正治具1を用いている。
【0008】
この補正治具1は、電気絶縁材からなる基板2の片面に、4本の探針101,102:201,202を同時に接触し得る面積をもって形成された導体3を備えている。この場合、導体3には、通常、抵抗率が小さい比較的厚めの導体基層の表面に金メッキが施された導体が用いられる。
【0009】
これによれば、導体3上に4本の探針101,102:201,202を同時に接触させ、定電流源100より正極側電流探針101から負極側電流探針102に向けて測定電流を流した状態で、正極側電圧探針201と負極側電圧探針202間の電圧を電圧測定手段200にて測定することにより、その電圧測定値をオフセット値としてゼロアジャスト補正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−255739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の補正治具1にあっては、導体3として、比較的厚めの導体基層の表面に金メッキを施すようにしているため、コスト的に好ましくない。また、探針の繰り返しの接触によって金メッキが剥がれ易いことから耐久性にかける。
【0012】
さらには、金メッキで抵抗値が小さいとは言え、電圧探針201,202の間には抵抗値が存在するため、正確な意味でのゼロアジャスト補正とは言えない。
【0013】
したがって、本発明の課題は、四端子測定用の4探針がピンボードに植設(貫設)されている4探針測定プローブを対象として、正確なゼロアジャスト補正(ショート補正)が行えるようにしたゼロアジャスト補正治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、定電流源に接続される正極側電流探針と負極側電流探針との間に、電圧検出手段に接続される正極側電圧探針と負極側電圧探針とが、上記各電流探針を結ぶ仮想の直線に沿って並べられた状態で、上記4本の探針が電気絶縁性のピンボードに植設されている4探針測定プローブのゼロアジャスト補正治具において、
電気絶縁材からなる基板の片面に上記4本の探針が同時に接触可能な面積をもって形成された導体膜を有し、上記導体膜のうち、上記正極側電圧探針と上記負極側電圧探針とが接触する電圧探針接触領域の周りには、上記定電流源より上記正極側電流探針から上記負極側電流探針に向けて流れる測定電流が上記電圧探針間を流れないようにするための電流バリアが形成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の好ましい態様によると、上記電流バリアは上記電圧探針接触領域の全周を囲む環状ではなく、上記電圧探針接触領域と、その外側に存在する上記各電流探針が接触する電流探針接触領域とが導通している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電気絶縁材からなる基板の片面に形成された導体膜のうち、正極側電圧探針と負極側電圧探針とが接触する電圧検出領域の周りに、定電流源より正極側電流探針から負極側電流探針に向けて流れる測定電流が電圧探針間を流れないようにするための電流バリアが形成されていることにより、電流探針間に測定電流を流したとしても、電圧探針間には電圧が発生しないため、0V時の電圧測定手段(電圧計)の表示値(読み値)をオフセット値として得ることができる。
【0017】
また、電流バリアは電圧探針接触領域の全周を囲む環状ではなく、電圧探針接触領域と、その外側に存在する上記各電流探針が接触する電流探針接触領域とが導通している態様においては、四端子法による抵抗測定装置が断線検出機能(プローブが被測定抵抗体に接触していない状態を検出する機能)を有する場合、その断線検出機能を働かせることなく、ゼロアジャスト補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るゼロアジャスト補正治具を示す平面図。
【
図2】四端子法による抵抗測定装置の構成を概略的に示す模式図。
【
図3】4探針測定プローブの構成を示す模式的な正面図。
【
図4】従来のゼロアジャスト補正治具を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本発明のゼロアジャスト補正治具は、先に説明した
図3の4探針測定プローブ(4本の探針101,102:201,202を直線的に配列してピンボードPBに植設(貫設)した測定プローブ)に適用される。
【0020】
図1に示すように、この実施形態に係るゼロアジャスト補正治具10は、電気絶縁材からなる基板11と、基板11の片面に形成された導体膜12とを備えている。このゼロアジャスト補正治具10として、プリント回路基板用の銅張り積層基板が用いられてよい。
【0021】
導体膜12は、
図3に示した4探針測定プローブが備えている4本の探針101,102:201,202が同時に接触し得る面積を有している。
【0022】
このうち、正極側電圧探針201と負極側電圧探針202とが接触する電圧探針接触領域12aの周りには、定電流源100より正極側電流探針101から負極側電流探針102に向けて流れる測定電流の電圧探針接触領域12aへの流れ込みを阻止する電流バリア13が形成されている。
【0023】
電流バリア13は電流が流れない電気絶縁領域で、ゼロアジャスト補正治具10に例えば銅張り積層基板が用いられる場合には、その銅箔をエッチング等により除去することにより形成することができる。
【0024】
電流バリア13を環状として、電圧探針接触領域12aと、正極側電流探針101と負極側電流探針102とが接触する電流探針接触領域12bとを電気的に分離すれば、電流探針101,102間に測定電流を流しても、電圧探針201,202間を確実に0V状態とすることができ、ゼロアジャスト補正用の正確なオフセット値を得ることができる。
【0025】
しかしながら、電流バリア13を環状とした場合、電流探針101,102と電圧端子201,202とが電気的に切り離され、これは実際の測定において、探針が被測定抵抗体に接触していない断線(オープン)状態を意味し、抵抗測定装置が断線検出機能を有している場合、測定値が表示されないことになる(断線検出機能を有する四端子測定法による抵抗測定装置については、例えば特開2005−69786号公報参照)。
【0026】
そこで、断線検出機能を働かせないようにするため、電流バリア13を環状ではなく、電流バリア13の形成時に、その一部分に導体膜12の一部12cを残し、電流バリア13を
図1に示すようなC字状に形成して、電圧探針接触領域12aと電流探針接触領域12bとを導通状態とする。
【0027】
これによれば、4本の探針101,102:201,202をゼロアジャスト補正治具10に同時に接触した場合、正極側電流探針101と正極側電圧探針201とが導通、また、負極側電流探針102と負極側電圧探針202とが導通し、
図2の測定状態となるため、断線検出機能は働かないことになる。
【0028】
なお、電流バリア13は、
図1に示したC字状に限定されるものではなく、測定電流が電圧探針201,202間には流れず、かつ、電圧探針接触領域12aと電流探針接触領域12bとが導通するような形状であればよい。
【符号の説明】
【0029】
10 ゼロアジャスト補正治具
11 電気絶縁材基板
12 導体膜
12a 電圧探針接触領域
12b 電流探針接触領域
13 電流バリア
100 定電流源
101,102 電流探針
200 電圧測定手段(電圧計)
201,202 電圧探針