特許第6472689号(P6472689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472689地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法及びその搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472689
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法及びその搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/10 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
   E02F7/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-55539(P2015-55539)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-176202(P2016-176202A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100096448
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−031513(JP,A)
【文献】 特開2000−282505(JP,A)
【文献】 特開2002−138668(JP,A)
【文献】 特開平11−303400(JP,A)
【文献】 特開2003−119758(JP,A)
【文献】 特開2009−007787(JP,A)
【文献】 特開2001−073402(JP,A)
【文献】 特開昭61−045093(JP,A)
【文献】 実開昭63−018539(JP,U)
【文献】 米国特許第05573363(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 7/10
E02F 3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良工事又は浚渫工事を行う際、略横方向に延びた搬送管を備え、搬送管の内部に不溶性搬送物を入れて、不溶性搬送物を搬送管により搬送するようにした地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法において、
不溶性搬送物を搬送管により搬送するとき、搬送管を所定の時間毎に回転し、搬送管の回転によって、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとともに、所定の長さの搬送管を上流側から下流側に向かって複数本接続し、複数本の搬送管において、搬送管の回転を、下流側に備えた搬送管から上流側に備えた搬送管に向かって順番に行うようにしたことを特徴とする地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法。
【請求項2】
搬送管の内部の不溶性搬送物に衝撃や振動等の力を外から加える外力作用手段を設け、搬送管を回転している途中又は回転した後、外力作用手段により搬送管の内部の不溶性搬送物に力を加えて、搬送管の内部に堆積する不溶性搬送物を取り除くようにしたことを特徴とする請求項1記載の地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法。
【請求項3】
地盤改良工事又は浚渫工事を行う際、不溶性搬送物を内部に入れて不溶性搬送物を搬送するようになる略横方向に延びた搬送管を備えた地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送装置において、
搬送管を回転させる回転機構部を設け、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとき、回転機構部によって、搬送管を所定の時間毎に回転し、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとともに、回転機構部によって回転する搬送管に、搬送管の回転位置がわかる識別用の印を設けたことを特徴とする地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工事における地盤改良材や排泥、浚渫工事における浚渫土といった不溶性搬送物を搬送管により搬送するようにした地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法及びその搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良工事にあっては、高圧噴射攪拌工法を用いて地盤を改良することが知られており、この高圧噴射攪拌工法は、地盤中に管ロッドを挿入し、この管ロッドの先端からセメントミルク等の地盤改良材を噴射する。そして、この地盤改良材の噴射エネルギーで地盤を切削しながら、噴射した地盤改良材と地盤とを混合攪拌し、これを管ロッドを引抜きながら上方に向かって行うことで、地盤中に固結改良体を造成するようにしたものである。
【0003】
そして、この高圧噴射攪拌工法を行うためのプラントとしては、図1に示すように、地盤中に管ロッド1を挿入あるいは引き抜くための施工機械2を備える。この施工機械2は、自走可能な小型の杭打ち機やボーリングマシン等である。この施工機械2としては、マスト3を立設し、このマスト3に沿って管ロッド1を縦に向けて取り付けると共に、マスト3に管ロッド1を地盤中に挿入したり引き抜いたりする昇降装置と管ロッド1を回転させる回転装置をそれぞれ設ける。また、管ロッド1は、その内部に地盤改良材であるセメントミルクや圧縮空気等が通るようになる中空状の鋼管であり、その下端である先端に地盤改良材であるセメントミルクを噴射する噴射口を設けている。
【0004】
また、施工機械2の周辺には、施工機械2に取り付けた管ロッド1に地盤改良材であるセメントミルクを供給する設備を備え、この設備としては、セメント原料を貯蔵するセメントサイロ4と、このセメントサイロ4からセメント原料を流入して水と混合して地盤改良材であるセメントミルクを生成するセメント生成装置5を設ける。そして、この下流側に、高圧ポンプ6を設けると共に、略横方向に延びた円筒状の搬送管7を備え、高圧ポンプ6によって、セメントミルクをセメント生成装置5から搬送管7を経て管ロッド1に供給するようにしている。なお、図示していないが、圧縮空気を供給するためのコンプレッサーや発電機といった機器も備えている。
【0005】
また、施工機械2の管ロッド1にあっては、地盤改良材であるセメントミルクを噴射し、地盤を切削しながら、噴射したセメントミルクと地盤とを混合攪拌することから、切削されて余った地盤とセメントミルクが混ざって排泥として管ロッド1の周囲に地盤中から噴出するようになる。このため、施工機械2の管ロッド1の周囲には、地盤中から噴出する排泥を溜める排泥受槽10を設けている。さらに、近傍の地盤が強固で安定した場所には、大量の排泥を溜めておくことのできる排泥タンク11を設けている。そして、この排泥受槽10から排泥タンク11につながる略横方向に延びた円筒状の搬送管12を備え、この搬送管12は、その上流側の基端に圧送ポンプ13を設け、この圧送ポンプ13によって、排泥受槽10に溜まった排泥を排泥タンク11に搬送している。そして、排泥タンク11に集まった排泥はバキューム車14によって運び出すようにしている。
【0006】
このような高圧噴射攪拌工法を用いた地盤改良工事にあって、セメント生成装置5から管ロッド1に供給する地盤改良材であるセメントミルク、あるいは地盤中から噴出して排泥受槽10に溜まっている排泥といった不溶性搬送物において、これを搬送するための搬送方法としては、前述したように、略横方向に延びた搬送管7,12を備え、この搬送管7,12の内部に地盤改良材であるセメントミルクあるいは排泥といった不溶性搬送物を入れて、この不溶性搬送物を搬送管により搬送するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる従来の地盤改良材であるセメントミルクあるいは排泥といった不溶性搬送物の搬送方法にあっては、セメントサイロや混合生成装置、排泥タンク等を、地盤が強固で安定した場所に設置するようにしていたことから、ここにつながる搬送管としては、たとえば全長が100mを超える非常に長い距離のものとなり、このため、一本の長さが10m程度の搬送管を複数本接続して使用していた。
【0008】
そして、たとえば、不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送管12では、地盤とセメントミルクが混ざった排泥において、図2(a)に示すように、比重の重いものが沈殿していき、徐々に搬送管12の内部に堆積し、図2(b)に示すように、ここで固化して搬送管12を閉塞し、排泥の搬送ができなくなることがあった。このため、搬送管12が閉塞して排泥の搬送ができなくなると、作業を一旦中断し、すべての搬送管12を取り外してその内部に固化して溜まった排泥を取り除いて洗浄する作業、あるいは新しい搬送管12に交換する作業を行うようになり、これらの作業については、一日に何回か行うこともあった。
【0009】
このように、地盤改良工事を行う際、一日に何回か作業を中断し、すべての搬送管を取り外してから、搬送管を洗浄する作業、あるいは新しい搬送管に交換する作業を行うといったことが必要になることから、その作業性が非常に悪いものとなり、これにより、地盤改良工事における工期が長くなると共に、その工費も高くなるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題に鑑み、不溶性搬送物を搬送する搬送管において、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくし、不溶性搬送物を常に良好に搬送することができる地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法及びその搬送装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、地盤改良工事又は浚渫工事を行う際、略横方向に延びた搬送管を備え、搬送管の内部に不溶性搬送物を入れて、不溶性搬送物を搬送管により搬送するようにした地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法において、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとき、搬送管を所定の時間毎に回転し、搬送管の回転によって、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとともに、所定の長さの搬送管を上流側から下流側に向かって複数本接続し、複数本の搬送管において、搬送管の回転を、下流側に備えた搬送管から上流側に備えた搬送管に向かって順番に行うようにした地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法である。
【0012】
第二の発明は、第一の発明において、搬送管の内部の不溶性搬送物に衝撃や振動等の力を外から加える外力作用手段を設け、搬送管を回転している途中又は回転した後、この外力作用手段により搬送管の内部の不溶性搬送物に力を加えて、搬送管の内部に堆積する不溶性搬送物を取り除くようにした地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法である。
【0014】
の発明は、地盤改良工事又は浚渫工事を行う際、不溶性搬送物を内部に入れて不溶性搬送物を搬送するようになる略横方向に延びた搬送管を備えた地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送装置において、搬送管を回転させる回転機構部を設け、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとき、回転機構部によって、搬送管を所定の時間毎に回転し、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとともに、回転機構部によって回転する搬送管に、搬送管の回転位置がわかる識別用の印を設けた地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、不溶性搬送物を搬送管により搬送するとき、搬送管を所定の時間毎に回転し、この搬送管の回転によって、搬送管の内部にて不溶性搬送物の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、不溶性搬送物を搬送管により搬送するようにしたことで、搬送管の内部において堆積した不溶性搬送物の一部が固化して搬送管を閉塞するといったことをなくし、不溶性搬送物を常に良好に搬送することができる。これにより、従来のような搬送管を洗浄する作業あるいは新しい搬送管に交換する作業を行うために地盤改良工事又は浚渫工事の作業を中断するといったことをなくすことができ、その作業性を良いものにすることにより、地盤改良工事又は浚渫工事における工期の短縮を図ることができると共に、その工費についても安価にすることができる。
【0017】
また、搬送管の内部の不溶性搬送物に衝撃や振動等の力を外から加える外力作用手段を設け、搬送管を回転している途中又は回転した後、この外力作用手段により搬送管の内部の不溶性搬送物に力を加えて、搬送管の内部に堆積する不溶性搬送物を取り除くようにしたことで、搬送管の内部に堆積した不溶性搬送物を容易に取り除くことができ、搬送管における不溶性搬送物の搬送を極めて良好に行うことができる。
【0018】
また、複数本の搬送管において、搬送管の回転を、下流側に備えた搬送管から上流側に備えた搬送管に向かって順番に行うようにしたことで、下流側を常に流れやすい状態にしておくことができ、これにより、複数本の搬送管にあっても、搬送管の内部に堆積した不溶性搬送物を下流側に良好に流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】地盤改良工事におけるプラントの全体説明図である。
図2】(a)従来の搬送管の内部の状態を示す断面図である。(b)従来の搬送管の内部の状態を示す断面図である。
図3】本発明による不溶性搬送物の搬送装置における搬送管の説明図である。
図4】本発明による不溶性搬送物の搬送装置における回転機構部の説明図である。
図5図4におけるA−A拡大断面図である。
図6】(a)本発明の搬送管の内部の状態を示す断面図である。(b)本発明の搬送管の内部の状態を示す断面図である。(c)本発明の搬送管の内部の状態を示す断面図である。
図7】本発明による不溶性搬送物の搬送装置における他の回転機構部の説明図である。
図8】本発明による不溶性搬送物の搬送装置における外力作用手段の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の地盤改良工事又は浚渫工事における不溶性搬送物の搬送方法及びその搬送装置の第一の実施形態について説明する。ここで説明するものは、高圧噴射攪拌工法を用いた地盤改良工事において、地盤中から噴出した不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送方法及びその搬送装置についてである。なお、不溶性搬送物とは、液体に溶けない性質を持つものであって、地盤改良工事においては地盤改良材であるセメントミルクや排泥であり、浚渫工事においては浚渫土である。
【0021】
まず、高圧噴射攪拌工法を行うためのプラントとしては、従来と同様である。そして、このプラントにおいて、不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送装置としては、まず、管ロッド1の周囲に設けた排泥受槽10から排泥タンク11まで排泥を搬送する搬送管12を備えるが、この搬送管12は、図3に示すように、直径が約7〜15cmで、一本の長さが10m程度の円筒状の搬送管12を複数本、たとえば10本接続して使用している。この複数本の搬送管12にあっては、その上流側の基端に圧送ポンプ13を設けると共に、ここを排泥受槽10につなげ、また、その下流側を排泥タンク11につなげることにより、排泥受槽10から排泥タンク11につながる略横方向に延びた複数本の搬送管12を備えるようにする。
【0022】
そして、この複数本の搬送管12において、搬送管12を回転させる回転機構部20をそれぞれに設ける。この回転機構部20としては、図4図5に示すように、複数本の搬送管12を、両側に回転自在となる回転部21を有したスイベルジョイント22を用いて接続することで、このスイベルジョイント22の両側の回転部21それぞれに接続した2本の搬送管12が自由に回転できるようにする。なお、複数本の搬送管12のうちのはしに位置する搬送管12の端部においてもスイベルジョイント22を用いることで、はしに位置する搬送管12も自由に回転できるようにする。そして、各搬送管12において、その両端それぞれの下方に回転支持台23を設け、この回転支持台23は、台本体24と、この台本体24の上部に設けた遊動回転自在となる2つのガイドローラ25とからなり、2つのガイドローラ25にて搬送管12を下方より回転自在に支持したもので、この2つのガイドローラ25によって搬送管12を回転できるようにする。
【0023】
そして、各搬送管12の外周には、搬送管12を回転するとき使用する突起状の嵌合ピン26をそれぞれ設けており、この嵌合ピン26に棒状の回転用工具27を嵌め込むことができるようにする。なお、この突起状の嵌合ピン26を、搬送管12の外周ではなく、スイベルジョイント22の回転部21の外周に設けるようにしても良い。
【0024】
また、搬送管12等には、回転機構部20によって搬送管12が回転した際、搬送管の回転位置がわかるようにする識別用の印を設ける。この識別用の印としては、搬送管12の外周に、あるいは搬送管12を接続するスイベルジョイント22の回転部21の外周に、異なる色を付けるようにしたもので、たとえば、外周の半分に赤色を付け、残り半分に青色を付けたものである。また、この識別用の印としては、色を付ける代わりに、記号や文字等を付けるようにしても良く、たとえば、角度を表す数字である30、60、90、120、これを360まで付けるようにして、回転する角度を示すようにしても良い。
【0025】
このように、回転機構部20にあっては、作業者が回転用工具27を使用し、この回転用工具27を搬送管12の嵌合ピン26に嵌め込み、嵌め込んだ後、作業者が手動にて回転用工具27によって搬送管12を回転できるようにしている。
【0026】
このような搬送管12を回転させる回転機構部20を設けた不溶性搬送物の搬送装置において、その搬送方法としては、地盤改良工事において、不溶性搬送物である排泥を複数本の搬送管12により搬送するとき、複数本の搬送管12を所定の時間毎に回転し、この搬送管12の回転によって、搬送管12の内部にて排泥の一部が沈殿して堆積するのをなくしながら、排泥を搬送管12により下流側の排泥タンク11に搬送する。
【0027】
これは、不溶性搬送物である排泥を搬送管12により搬送するとき、回転機構部20において、作業者が回転用工具27を使用して手動にて、所定の時間毎、たとえば20〜30分毎に搬送管12を回転させるようにする。このときの回転する角度は180度、すなわち、搬送管12の上下を逆さまにするものである。なお、この回転する角度として、180度に限定されるものではなく、90度や120度等の他の角度でも良いが、180度回転させたものの方が、搬送管12の内部に堆積した排泥を容易に取り除くことができる。
【0028】
そして、複数本の搬送管12において、その回転を行う順番は、排泥タンク11側となる下流側に備えた搬送管12から排泥受槽10側となる上流側に備えた搬送管12に向かって順番に行う。このように下流側の搬送管12から上流側の搬送管12に向かって順番に搬送管12の回転を行うことで、下流側を常に流れやすい状態にしておくことができ、これにより、複数本の搬送管12にあっても、搬送管12の内部に堆積した排泥を下流側に良好に流すことができる。ただし、複数本の搬送管12において、必ずしも、搬送管12の回転を順番に行う必要はなく、複数本の搬送管12すべてにおいて、同時に回転を行うようにしても良い。
【0029】
また、回転機構部20における搬送管12の回転については、所定の時間毎に回転を行うようにしているが、この所定の時間は、前述した20〜30分に限定されるものではなく、搬送管12にて搬送する不溶性搬送物である排泥の土質や土性によって異なるものであり、たとえば1時間や2時間毎といったこともあり、さらには、地盤改良工事における地盤改良材であるセメントミルクや浚渫工事における浚渫土といった不溶性搬送物を搬送する場合も、この時間が異なるものである。よって、搬送する不溶性搬送物に応じて最適な時間となるように試験や実験等により予め決定しておくのが良い。
【0030】
このようになる不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送方法及びその搬送装置にあっては、不溶性搬送物である排泥を搬送管12により搬送するとき、図6(a)に示すように、排泥の一部(比重の重いもの)が沈殿して搬送管12の内部に堆積しても、搬送管12を20〜30分毎に、作業者が手動にて搬送管12を回転することにより、図6(b)に示すように、搬送管12の上下が逆さまになり、堆積した排泥を固化する前に落下させて取り除き、搬送管12の内部に排泥の一部が沈殿して堆積するのをなくすことができる。これにより、図6(c)に示すように、ここで堆積した排泥が固化して搬送管12を閉塞するといったことがなくなり、搬送管12において、排泥を常に良好に搬送することができるようになる。
【0031】
また、前述した不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送方法及びその搬送装置において、搬送管12に外力作用手段を設ける。この外力作用手段としては、搬送管12の内部の不溶性搬送物である排泥に衝撃や振動等の力を外から加えるものであって、たとえば、手動で行うものであれば、ハンマー等の打撃工具である。
【0032】
そして、このような外力作用手段である打撃工具を作業者が使用し、搬送管12を回転した後、この打撃工具にて搬送管の外側をたたき、搬送管12の内部の排泥に外から衝撃を加えて、上下が逆さまになった搬送管12の内部に堆積した排泥を落下させることで、排泥を取り除くようにする。
【0033】
このように、搬送管12を回転した後、作業者が打撃工具を使用して手動にて、搬送管12の内部の排泥に衝撃を加えることで、搬送管12の内部に堆積した排泥を打撃工具による衝撃の力で容易に落下させることができ、これにより、堆積した排泥を容易に取り除くことができ、搬送管12における排泥の搬送を極めて良好に行うことができる。
【0034】
また、外力作用手段としては、前述の打撃工具を使用して手動で行うものに限定されるものではなく、その他の手段にて搬送管12に衝撃を加えるものでも良い。さらに、搬送管12に衝撃を加えるもの以外に、搬送管12に振動を加えるもの、あるいは搬送管12の内部に圧縮空気を噴射して圧縮空気による衝撃を加えるものなどでも良い。この搬送管12に振動を加えるものとしては、搬送管12の下に設けた振動機であり、この振動機を使用して搬送管12を振動させ、搬送管12の内部の排泥に外から振動を加えるようにする。また、搬送管12の内部に圧縮空気を噴射して圧縮空気による衝撃を加えるものとしては、たとえば、各搬送管12を接続するスイベルジョイント22の内部に噴射口を設け、ここから圧縮空気を噴射するといったエアー噴射装置であり、このエアー噴射装置を使用して搬送管12の内部に圧縮空気を噴射し、搬送管12の内部の排泥に圧縮空気による衝撃を加えるようにする。
【0035】
なお、外力作用手段により搬送管12の内部の不溶性搬送物である排泥に力を加えるときは、搬送管12を回転した後に行っていたが、これを搬送管12を回転している途中で行うようにしても良い。特に、振動機を用いた場合や圧縮空気を噴射する場合等は、搬送管12を回転している途中で行うと、搬送管12の内部に堆積した排泥を、より早く取り除くことができる。
【0036】
次に、不溶性搬送物である排泥を搬送する搬送方法及びその搬送装置の第二の実施形態について説明する。
【0037】
これは、前述の第一の実施形態で説明したものは、搬送管12の回転を作業者が手動で行っていたが、これを自動で行うようにしたものである。図7に示すように、まず、各搬送管12それぞれに設けた回転機構部20において、回転支持台23としては、台本体24と、この台本体24の上部に設けた回転自在となる2つの歯車28とからなると共に、この2つの歯車28に噛み合うリング状の歯車29を搬送管12の外周に設ける。そして、2つの歯車28のどちらか一方にモータ30を取り付ける。
【0038】
また、各搬送管12に設けた回転機構部20のモータ30については、図示していないコントローラによって制御するようにしており、所定の時間である20〜30分毎に作動して搬送管12を180度回転させる。
【0039】
そして、このときも、複数本の搬送管12において、下流側に備えた搬送管12から上流側に備えた搬送管12に向かって順番に回転を行うように、コントローラによって制御する。
【0040】
このように搬送管12の回転を自動で行うようにしたことで、複数本の搬送管12が5、6本程度であれば、作業者一人が手動で行っても、それほどの重労働にはならないものの、10本さらにはそれ以上の本数になると、搬送管12の回転を作業者が手動で行うのは、かなりの重労働となり、その作業効率も悪くなるが、搬送管12の回転を自動で行うことから、これを極めて容易に行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0041】
また、この第二の実施形態で説明した搬送管12の回転を自動で行うようにしたものの別の例としては、前述のものでは、回転機構部20において、回転支持台23に2つの歯車28を設けると共に、搬送管12の外周にリング状の歯車29を設けるようにしていたが、この代わりに、前述の第一の実施形態で説明したものと同様の2つのガイドローラ25を設け、この2つのガイドローラ25のどちらか一方にモータ30を取り付けるようにしても良い。
【0042】
さらに、ここに、搬送管12に外力作用手段を設けるようにしても良い。このときの外力作用手段としては、たとえば、モータ30を取り付けたガイドローラ25を卵型カム形状にし、この卵型カム形状のガイドローラ25にあっては、1回転(360度)すると、搬送管12を180度回転させるようにする。これにより、図8に示すように、卵型カム形状のガイドローラ25が1回転する間に、搬送管12が卵型カム形状のガイドローラ25により持ち上がり、そして落下するようになり、この落下するときに搬送管12に衝撃が加わることで、搬送管12の内部の排泥にも衝撃を加えることができ、搬送管12の内部に堆積した排泥を容易に取り除くことができる。
【0043】
なお、前述した第一又は第二の実施形態では、地盤改良工事における地盤中から噴出した排泥といった不溶性搬送物を搬送管12により搬送する搬送方法及びその搬送装置であったが、この搬送する不溶性搬送物については、排泥に限定されるものではなく、地盤改良工事における管ロッド1に供給する地盤改良材であるセメントミルク、さらには、浚渫工事において発生する浚渫土等でも良く、すなわち、地盤改良工事における地盤改良材であるセメントミルク、浚渫工事における浚渫土といった不溶性搬送物を搬送管により搬送する搬送方法及びその搬送装置でも良い。
【符号の説明】
【0044】
1…管ロッド、2…施工機械、3…マスト、4…セメントサイロ、5…セメント生成装置、6…高圧ポンプ、7…搬送管、10…排泥受槽、11…排泥タンク、12…搬送管、13…圧送ポンプ、14…バキューム車、20…回転機構部、21…回転部、22…スイベルジョイント、23…回転支持台、24…台本体、25…ガイドローラ、26…嵌合ピン、27…回転用工具、28…歯車、29…歯車、30…モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8