(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472691
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】巻尺テープ用のトップコートと該トップコートを塗布した巻尺テープ
(51)【国際特許分類】
G01B 3/10 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
G01B3/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-59677(P2015-59677)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-180603(P2016-180603A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165882
【氏名又は名称】原度器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071238
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恒久
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】原 照剛
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
実開平6−2103(JP,U)
【文献】
特開2010−82918(JP,A)
【文献】
特公昭52−1942(JP,B1)
【文献】
特開昭49−107255(JP,A)
【文献】
実公昭48−39632(JP,Y1)
【文献】
特開昭50−99354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/10
B23B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻尺テープの形状変化に追従可能な硬度に調整された巻尺テープ用のトップコートであって、該トップコートには、少なくとも角部が曲面になっている透明の複数の極小体が混合されており、塗布後の乾燥により、少なくとも表面付近の極小体によって塗布表面に盛り上がりが形成されてなることを特徴とする巻尺テープ用のトップコート。
【請求項2】
上記複数の極小体が、表面にハジキ性を有するものであり、塗布後の乾燥により、表面付近の極小体の一部が塗布表面から露出してなることを特徴とする請求項1に記載の巻尺テープ用のトップコート。
【請求項3】
上記複数の極小体が、曲面で形成されてなるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻尺テープ用のトップコート。
【請求項4】
上記複数の極小体が、球体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻尺テープ用のトップコート。
【請求項5】
上記複数の極小体が、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、シリコン、これら単体もしくは複数組み合わせたものからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の巻尺テープ用のトップコート。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の巻尺テープ用のトップコートを塗布してなることを特徴とする巻尺テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻尺テープの測定用の目盛およびテープ地色となるベースコートを摺動などによる傷付や消失から保護するために塗布される巻尺テープ用のトップコートに関し、特に、巻尺テープに特化させた巻尺テープ用のトップコートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な巻尺テープは、テープの本体となる薄板のベース材に下地となるアンダーコートが行われ、次いでこのアンダーコートの上にテープ地色となる白色などのベースコートが塗布され、次いでこのベースコートの上に測定用の目盛が印刷などによって表示され、さらにこれらベースコートや目盛を摺動などによる傷付や消失から保護するためのトップコートが塗布されてテープが完成する。
【0003】
該トップコートの塗布においては、焼き付け塗装によってテープ上に定着させるようにしたり、また、所定の被覆材をテープ面に付着硬化させて該テープ面を被覆するようにしている。
【0004】
そして、アンダーコート/ベースコート/目盛/トップコートは、巻尺テープの形状変化、すなわち、巻尺テープはケース内に収納されているときは平坦な状態に形状が変化して回転ドラムに巻回され、また、ケース内から引き出されたときはテープの幅方向に湾曲した元の形状に戻り、さらに、使用時にはテープがヘアピン状に折り曲げられることもある部材なので、テープが形状変化したき、トップコートが目盛りやベースコートから剥離しないようテープの形状変化に追従可能な硬度で塗布されている。
【0005】
しかしながら、トップコートはベースコートや目盛を摺動などによる傷付や消失から保護する目的で塗布するものであるため、該目的を考慮すれば、少なくとも表面の硬度を高にして摺動時などの耐摩耗性を上げなければならないが、上述したように、巻尺を使用したときのテープの形状変化に追従できる硬度で塗布されていることから、焼き付け塗装による塗布や、被覆材による被覆のいずれの場合もトップコートの硬度を低く設定しなければならないために耐摩耗性も低く、従って、テープの長期使用に十分に耐え得るものではなかった。すなわち、トップコートの硬度設定において、耐摩耗性を向上させることと形状変化に追従させることは相反する関係であることから、この問題は未だ解決できていなかった。
【0006】
また、従来のトップコートは、上述のように低い耐摩耗性に加え、トップコートを焼き付け塗装で定着させているものは、表面が平坦であるがゆえ摩擦係数が高くなり易く、そして、被覆材により被覆しているものは、被覆に厚みがあるがゆえ巻尺ケースのコンパクト化が難しく、また、被覆がテープの側面から剥がれ易いといった問題もあった。なお、近年におけるトップコートの塗布は、容易に作業を行えて巻尺ケースのコンパクト化にも有効である焼き付け塗装によって塗布するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−268142号公報
【特許文献2】特開2014−065814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、トップコートの耐摩耗性を向上させて、トップコート下のベースコートや目盛を長期に渡り保護できるようにすると共に、巻尺使用時におけるテープの形状変化にも追従できる巻尺テープ用のトップコートと該トップコートを塗布した巻尺テープを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る巻尺テープ用のトップコートは、巻尺テープの形状変化に追従可能な硬度に調整された巻尺テープ用のトップコートであって、該トップコートには、少なくとも角部が曲面になっている透明の複数の極小体が混合されており、塗布後の乾燥により、少なくとも表面付近の極小体によって塗布表面に盛り上がりが形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、上記複数の極小体が、表面にハジキ性を有するものであり、塗布後の乾燥により、表面付近の極小体の一部が塗布表面から露出してなることを特徴とする。
【0011】
また、上記複数の極小体が、曲面で形成されてなるものであることを特徴とする。
【0012】
また、上記複数の極小体が、球体であることを特徴とする。
【0013】
また、上記複数の極小体が、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、シリコン、これら単体もしくは複数組み合わせたものからなることを特徴とする。
【0014】
上述の巻尺テープ用のトップコートを詳しく説明すると、巻尺テープの形状変化とは、該テープは、ケース内に収納されているときは平坦な状態に形状が変化して回転ドラムに巻回されており、また、ケース内から引き出されたときはテープの幅方向に湾曲した元の形状に戻り、さらに、使用時にはテープがヘアピン状に折り曲げられることもある部材であり、このように、テープの形状が変化することである。
【0015】
そして、巻尺テープの形状変化に追従可能な硬度に調整されたとは、上述のようにテープの形状が変化することが考慮されて、トップコートを含めテープの塗装に用いられる塗料は、該テープに形状変化が生じた場合に塗膜が剥れることがないよう塗膜硬化後の該塗膜の硬さ(硬度)が調整(硬化後で3H〜4H程度)されていて、テープ形状が変化した場合でもこの変化に塗膜が対応できるようにしたことである。従って、塗膜硬度を調整することで、テープ形状が変化した場合でも塗膜が剥がれない。
【0016】
そして、少なくとも角部が曲面になっている透明の極小体とは、複数の平面が隣接してなる極めて小さな立体で、且つ平面と平面が隣接する境に生じる全ての角が面取りされて曲面状になっている立体のことである。言い換えれば、平面と平面が曲面を介して接続された立体のことである。また、該立体における一つの平面と一つの曲面とを比較した場合の比率は、平面よりも曲面の方を大にする方が望ましい。
【0017】
この極小体の大きさは、塗布する巻尺テープの寸法(幅や厚みや湾曲度など)やトップコートの塗膜厚などによって好適な大きさの極小体が選定されるが、具体的には、10μm〜0.1μmの範囲で選定される。
【0018】
そして、上記極小体は、上述した少なくとも角部が曲面になっている極小体の他、全面を曲面で形成した極小体や、球体に形成した極小体が用いられる。
【0019】
上記極小体の素材も、透明に形成可能な素材であればよく、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ナイロン、シリコン、これらの素材を単体もしくは複数組み合わせて形成すればよい。また、ガラスはケイ酸塩を主成分としており、アクリルやポリカーボネートは有機ガラスで、そして、シリコンは硬質のものである。
【0020】
極小体の硬度は、該極小体と外部部材との摺動による摩耗度合いを考慮し、テープの使用形態に合わせて適宜設定すればよい。一般的な寸法測定に用いる巻尺テープでは、硬度はなるべく高くした方が望ましい。
【0021】
そして、上述の極小体がトップコートに混合されて懸濁状態になり、該トップコートが塗布され乾燥した後に、少なくとも表面付近の極小体によって塗布表面に盛り上がりが形成されるようになっている。また、極小体が、表面にハジキ性を有するものであれば、該トップコートが塗布され乾燥した後に、表面付近の極小体の一部が塗布表面から露出した状態になる。
【0022】
さらに、本巻尺テープは、上述の少なくとも角部が曲面になっている極小体が、巻尺用のテープの形状変化に追従可能な硬度に調整されたトップコートに混合され、塗布後の乾燥により、少なくとも表面付近の極小体によって塗布表面に盛り上がりが形成されるようになっている巻尺テープ用のトップコートを塗布してなることを特徴とする。また、極小体が、表面にハジキ性を有するものであれば、該トップコートが塗布され乾燥した後に、表面付近の極小体の一部が塗布表面から露出した状態になる巻尺テープ用のトップコートを塗布してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の巻尺テープ用のトップコートによれば、従来、相反する関係であった耐摩耗性の向上と形状変化への追従の両性能を最大限に引き出すことができる。すなわち、本トップコートを塗布することで、該トップコートの表面と外部の被寸法測定部材の表面との接触を点接触にできるので、トップコート表面の摩擦係数を低下させることができて、トップコート表面の耐摩耗性を向上させることができる。従って、トップコートが長期の使用にも十分に耐えられるので、トップコート下のテープ地の色となるベースコートおよび測定用の目盛を、長期に渡りしっかりと保護することができる。また、テープのベース材が鋼材であれば、従来、傷付によってベース材に生じていた錆も抑制することができる。
【0024】
そして、本トップコートの硬度は、従来のトップコートと同様に巻尺テープの形状変化に追従できる硬度に設定できるので、巻尺のケース内の回転ドラムに平坦な状態に形状を変化させて巻回されていても、また、ケース内から引き出されてテープの幅方向に湾曲した元の状態に形状が変化しても、さらには、使用時にテープがヘアピン状に折り曲げられても、トップコートが該トップコート下の目盛りおよびベースコートの塗膜から剥離することがない。
【0025】
また本トップコートは、トップコート表面の摩擦係数を小なる値にできることからテープ引き込み時の摺動抵抗が大に低減され、これにより、テープ引き込みばねのトルクを小にできるため、テープの引き込みばねをコンパクトにすることができて、巻尺ケースのコンパクト化や巻尺の軽量化にも寄与し、しかもトップコートの塗布を、容易に作業を行うことができる焼き付け塗装で行うことができるため、大なる市場競争力を有すると共に経済的にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るトップコートを塗布した巻尺テープの一部切欠き斜視図。
【
図2】使用時におけるテープと外部部材との接触状態を示した断面図。
【
図4】使用時におけるテープと外部部材との接触状態を示した拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る巻尺テープ用のトップコートと該トップコートを塗布した巻尺テープを、添付図面に示す具体例に基づいて説明する。また、本実施例では、表裏両面に目盛りを表示した両面目盛りテープを示しているが、巻尺の仕様により片面目盛りになる場合もある。なお、図中のベース材/アンダーコート/ベースコート/目盛/極小体/トップコートなどは、図を見やすくするため実際よりも増厚や広径に作図している。
【0028】
図1は、本トップコートを塗布した巻尺テープ1の一部分を切り欠いた斜視図であり、この切り欠いた部分(切欠き部2)の断面を、切欠き部の拡大断面図として同
図1中に示している。
【0029】
そして、切欠き部の拡大断面図中の符号3は、テープの本体となる樹脂や鋼材などからなる薄板状のベース材、符号4は、塗料の食いつきなどを良くするために塗布されるアンダーコート、符号5は、テープ地の色となるベースコート、符号6は、測定用の目盛、符号7は、ベースコート5および目盛6を主に摺動による傷付や消失などから保護するために塗布される本発明のトップコート、符号8は、トップコート7に混合されている極小体である。
【0030】
なお、アンダーコート4/ベースコート5/目盛6/トップコート7に用いている塗料は、巻尺テープ1の形状変化に追従可能な硬度に調整(硬化後で3H〜4H程度)された塗料であるので、巻尺テープ1がケース内に収納されているときは平坦な状態に形状が変化して回転ドラムに巻回され、また、テープをケース内から引き出したときは該テープの幅方向に湾曲した元の状態に戻り、さらに、測定作業を行っている場合など、測定環境などによりテープをヘアピン状に折り曲げられたときも、アンダーコート4/ベースコート5/目盛6/トップコート7は、それぞれ下層の部材や塗膜から剥離することはない。
【0031】
また、本切欠き部の拡大断面図に示すように、本トップコート7を塗布した巻尺テープ1は、該トップコート7に混合している極小体8により、トップコート7表面たる平坦面7aに盛り上がり9が形成される。すなわち、トップコート7を塗布したとき、トップコート7の概ね表面に位置する極小体8の外方側の面に沿って回った塗料が硬化して、該トップコート7の平坦面7aを盛り上げる。
【0032】
図2は、巻尺のテープ使用時におけるテープと外部部材との接触状態を示した断面図であり、
図2中(a)図は、テープの使用期間がそれほど長くないときの状態を示し、また、
図2中(b)図は、テープの使用期間が長くなったときの状態を示している。
【0033】
そして、
図2中(a)図と
図2中(b)図との図中での相違部位は、
図2中(a)図では、テープの使用期間がそれほど長くないため、外部部材10の表面11と接触するトップコート7の盛り上がり9の頂点9aに摺動による摩耗が生じていない状態であるのに対し、
図2中(b)図では、テープの使用期間が長くなったことから、外部部材10の表面11と接触するトップコート7の盛り上がり9の頂点9a((a)図参照)やこの周辺が摺動によって徐々に摩耗が進行し、盛り上がり9の部分からトップコート7に混合されている極小体8の一部分8aが外部に露出した状態になったものである。なお、極小体8の一部分8aが外部に露出するまでには、盛り上がり9の部分がこの頂点9a部分から徐々に削られて平坦に変化していく過程があるが、この過程で増加する摺動摩擦は、盛り上がり9を作る極小体8の寸法を考慮すれば極めて小なる増加の値であることは自明であり、従って、トップコート7の表面の滑り性には何ら影響はない。また、本相違部位付近の拡大図を
図3に示しており、
図2中(a)図に対応する図は
図3中(a)図で、
図2中(b)図に対応する図は
図3中(b)図である。
【0034】
ときに、トップコート7と極小体8とが例えばアクリルを主成分とするものから形成されたときは、アクリル塗料を硬化させたトップコート7と、成形品たる極小体8とでは、成形品たる極小体8の方が硬度ははるかに高いということは自明である。
【0035】
図4は、表面にハジキ性を有するポリプロピレン、ナイロン、シリコンから成形した極小体8を混合したトップコート7を塗布した場合を示していて、該トップコート7の表面付近に位置する極小体8は、ハジキ性によって当初より極小体8の一部分8aがトップコート7の表面7aから露出した状態になる。すなわち、トップコート7を塗布したとき、トップコート7の概ね表面に位置する極小体8の外方側の面がトップコート7の塗料をハジキ、この状態でトップコート7が硬化して、極小体8の一部分8aがトップコート7の平坦面7aから露出する。この極小体8においては、巻尺の使用環境などに合わせ、表面にハジキ性を有する極小体もしくは表面にハジキ性の無い極小体を適宜選定して用いればよい。なお、表面にハジキ性を有する極小体を用いる場合、表面にハジキ性の無い極小体にハジキ処理を行ってハジキ性を有するものにしてもよい。
【0036】
それでは、本トップコート7の作用を説明すると、先ず
図2中(a)図は、テープの使用期間がそれほど長くないときの状態なので、寸法測定を行うためにケース(図示は省略)内から引き出した巻尺テープ1を被測定物たる外部部材10の表面11に置くと、該外部部材10と接触する巻尺テープ1の部位は、該巻尺テープ1に塗布されているトップコート7の表面たる平坦面7aに形成された盛り上がり9の頂点9aとなる。
【0037】
そして、この状態で巻尺テープ1をケース内に引き込むときは、上記盛り上がり9の頂点9aが外部部材10の表面11に接触した状態で巻尺テープ1がケース内に引き込まれる。すなわち、巻尺テープ1がケース内に引き込まれるとき、該巻尺テープ1におけるトップコート7の盛り上がり9の頂点9aだけが外部部材10の表面11に接触している点接触の状態で摺動する。従って、点接触での摺動となるのでトップコート7の表面の滑り性が向上し、この滑り性の向上によりトップコート7の表面の摩擦係数が小なる値となる。そして、トップコート7の平坦面7aは基本的に外部部材10の表面11と接触しないので、該平坦面7aは摺動による摩耗は無いに等しくなる。
【0038】
また、
図2中(b)図は、テープの使用期間が長くなったときの状態なので、寸法測定を行うためにケース(図示は省略)内から引き出した巻尺テープ1を被測定物たる外部部材10の表面11に置くと、該外部部材10と接触する巻尺テープ1の部位は、該巻尺テープ1に塗布されているトップコート7の表面たる平坦面7aに形成された盛り上がり9の部分から外部に露出した極小体8の一部分8aとなる。
【0039】
そして、この状態で巻尺テープ1をケース内に引き込むときは、トップコート7の摩耗により該トップコート7の盛り上がり9の部分から外部に露出した極小体8の一部分8aが外部部材10の表面11に接触した状態で巻尺テープ1がケース内に引き込まれる。すなわち、巻尺テープ1がケース内に引き込まれるとき、該巻尺テープ1におけるトップコート7の盛り上がり9の部分から外部に露出した極小体8の一部分8aが外部部材10の表面11に接触している点接触の状態で摺動する。従って、点接触での摺動となるのでトップコート7の表面の滑り性は維持され、この滑り性の維持によりトップコート7の表面の摩擦係数は小なる値のままとなる。そして、トップコート7の平坦面7aは基本的に外部部材10の表面11と接触しないので、該平坦面7aは摺動による摩耗は無いに等しくなる。
【0040】
従って、本トップコート7を塗布することで、上述したように、
図2中(a)図に示したテープの使用期間がそれほど長くないときの状態は勿論のこと、
図2中(b)図に示した長期に渡りテープを使用した場合でも、トップコート7の盛り上がり9の部分から外部に露出した極小体8の一部分8aが外部部材10の表面11に接触する点接触の状態が長期に渡り持続するので、トップコート7の表面の滑り性の低下をゼロに等しくできる。すなわち、巻尺テープ1の使用を始めたときはトップコート7の盛り上がり9の頂点9a部分のトップコート材によって該トップコート7の表面の滑り性が確保され、巻尺テープ1の使用が進行して頂点9a部分のトップコート材が摩耗したときには、盛り上がり9の部分から外部に露出した極小体8の一部分8aによってトップコート7の表面の滑り性が確保される。また、極小体8は透明な個体なので硬度および強度も大であり且つ透視できるので、トップコート7の表面の滑り性およびトップコート7下の目盛の視認性は、長期に渡り確保される。
【0041】
なお、
図4に示した表面にハジキ性を有する極小体8を混合したトップコート7を塗布している場合は、巻尺のテープ使用当初よりトップコート7の平坦面7aから外部に露出した極小体8の一部分8aが外部部材10の表面11に接触している点接触の状態で摺動する。
【0042】
ところで、テープの使用期間が極めて長くなったり酷使されたりして当初より外部部材10の表面11に接触していた相当な範囲の極小体8が万一脱落した場合には、この脱落した極小体8に近接した層に位置する極小体8bが極小体8の代わりとなり、摺動によりトップコート7が摩耗して極小体8bの一部分が外部に露出したとき、この露出した一部分が外部部材10の表面11に点接触の状態で接触する(
図3/
図4を参照)。
【0043】
また、
図5は、自動巻取式の巻尺の一例を示しており、図中の符号12は、測定用のテープたる巻尺テープ1を平坦な状態で周囲に巻回する回転ドラムを内装している巻尺の本体となるケース、符号13は、巻尺テープ1の先端を被測定物の端部などに引っ掛けるために設けられているフック片、符号14は、引き出した巻尺テープ1を引出し状態で固定しておくためのブレーキレバー、符号15は、巻尺の携帯時に使用される携帯ストラップである。
【符号の説明】
【0044】
1…巻尺テープ
2…切欠き部
3…ベース材
4…アンダーコート
5…ベースコート
6…目盛
7…トップコート
7a…平坦面
8…極小体
8a…一部分
8b…極小体
9…盛り上がり
9a…頂点
10…外部部材
11…表面
12…ケース
13…フック片
14…ブレーキレバー
15…携帯ストラップ