特許第6472703号(P6472703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472703ナノダイヤモンド分散組成物および光学部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472703
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ナノダイヤモンド分散組成物および光学部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20190207BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20190207BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190207BHJP
   C01B 32/25 20170101ALI20190207BHJP
【FI】
   C08L101/00
   G02B1/111
   C08K3/04
   C01B32/25
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-86243(P2015-86243)
(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公開番号】特開2016-196616(P2016-196616A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-76008(P2015-76008)
(32)【優先日】2015年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】梅本 浩一
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263208(JP,A)
【文献】 特開2011−201720(JP,A)
【文献】 特開2007−126636(JP,A)
【文献】 特開2002−196107(JP,A)
【文献】 特開2012−161965(JP,A)
【文献】 特開2015−113278(JP,A)
【文献】 特開2015−127364(JP,A)
【文献】 特開2016−089062(JP,A)
【文献】 特開2016−160394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
G02B 1/10−1/18
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、
粒径D50が1〜50nmであり且つ前記分散媒中に分散している、ナノダイヤモンドの微粒子と、
前記分散媒中に分散している透明性樹脂のエマルション粒子と、を含み、
前記ナノダイヤモンドの微粒子のゼータ電位と、前記透明性樹脂のエマルション粒子のゼータ電位とは、同符号であり、
厚さ100nmの膜体に成膜後に、JIS K 7136に準拠して測定される値として2.0%以下のヘーズを示し、且つJIS K 7142に準拠して測定される値として1.6〜2.2の屈折率を示す、ナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項2】
前記エマルション粒子の平均粒径は、1〜300nmである、請求項に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項3】
前記ナノダイヤモンドは爆轟法ナノダイヤモンドである、請求項1または2に記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項4】
前記分散媒は水である、請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項5】
前記微粒子は一次粒子である、請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項6】
前記透明性樹脂はウレタン樹脂である、請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項7】
前記透明性樹脂は硬化性樹脂である、請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散組成物から形成された部位を、光透過領域の少なくとも一部に有する、光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率微粒子の分散している組成物、および、そのような組成物から形成された部位を有する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途において、透明性に優れ且つ屈折率の高いプラスチック系材料ないし樹脂系材料が求められている。例えば、フラットパネルディスプレイ用の基板、各種カメラのレンズ、LED封止材、眼鏡レンズ表面の被膜、並びに、各種光学部材における屈折率調整膜(いわゆるインデックスマッチングフィルムや屈折率調整接着層)および反射防止膜の用途においてである。また、そのような樹脂系材料として、高屈折率微粒子たるジルコニア微粒子や酸化チタン微粒子が分散された複合材料が開発されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−185924号公報
【特許文献2】特開2009−162848号公報
【特許文献3】特開2009−275115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば爆轟法により、ナノダイヤモンドと呼称される微粒子状のダイヤモンドが生成することが知られている。ナノダイヤモンドは、バルクダイヤモンドがそうであるように高い屈折率等を示す。微粒子たるナノ粒子は、一般に、表面原子(配位的に不飽和である)の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きくて凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。爆轟法ナノダイヤモンドは、このように結晶子ないし一次粒子の間が重畳的に相互作用し得る特異な性質を有するところ、当該ナノダイヤモンドが例えば樹脂材料中に分散した状態を創出することには技術的困難を伴う。ナノダイヤモンドは、爆轟法により得られる生成物にて先ずは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとり、二次粒子から一次粒子への解砕や、一次粒子を所望の樹脂材料に分散させることに、技術的困難を伴うのである。
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであり、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を形成するのに適したナノダイヤモンド分散組成物を提供することを、目的とする。また、本発明は、そのような光透過性の樹脂部ないし樹脂膜を有する光学部材を提供することを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、ナノダイヤモンド分散組成物が提供される。このナノダイヤモンド分散組成物は、分散媒と、粒径D50(メディアン径)が1〜50nmであり且つ分散媒中に分散しているナノダイヤモンドの微粒子と、透明性樹脂のエマルション粒子とを含み、成膜後に2.0%以下のヘーズおよび1.6〜2.2の屈折率を示す。本発明において、ヘーズとは、JIS K 7136に準拠して厚さ100nmの膜体について測定されたものであり、屈折率とは、例えば、JIS K 7142に準拠して厚さ100nmの膜体について測定されたものである。
【0007】
このような構成のナノダイヤモンド分散組成物は、例えば所定の基材上に塗布された後に乾燥されることにより、光透過性の樹脂膜ないし樹脂部を形成するための材料である。本組成物に含まれる透明性樹脂のエマルション粒子は、本組成物から形成される樹脂部において透明性樹脂マトリックスをなすこととなる。本組成物に含まれるナノダイヤモンド微粒子は、本組成物から形成される樹脂部において、本組成物の分散媒中での安定分散状態を反映して透明性樹脂マトリックス中に分散して含まれることとなる。透明性樹脂マトリックスとこれに分散しているナノダイヤモンド微粒子とを含んでなる樹脂部は、光透過性を有する。本組成物においては、例えばナノダイヤモンド微粒子に関する粒径や含有率の調整により、厚さ100nmに成膜された場合のヘーズが2.0%以下となるように設定される。ナノダイヤモンド微粒子に関する含有率とは、例えば、本組成物におけるナノダイヤモンド微粒子および透明性樹脂エマルション粒子の総含有量に対するナノダイヤモンド微粒子の含有量の割合である。
【0008】
また、本組成物の分散媒中には、高屈折率微粒子であるナノダイヤモンド微粒子が分散している。当該ナノダイヤモンド微粒子は、本組成物から形成される樹脂部において、本組成物の分散媒中での安定分散状態を反映して透明性樹脂マトリックス中に分散して含まれることとなる。透明性樹脂マトリックスとこれに分散している高屈折率のナノダイヤモンド微粒子とを含んでなる樹脂部は、当該透明性樹脂のみからなる樹脂体よりも高い屈折率を有し得る。本組成物においては、例えばナノダイヤモンド微粒子に関する含有率の調整により、当該樹脂部の屈折率が1.6〜2.2となるように設定される。
【0009】
以上のように、本ナノダイヤモンド分散組成物は、成膜状態にてメディアン径1〜50nmのナノダイヤモンド微粒子が透明性樹脂マトリックス中に適切に分散し得て2.0%以下のヘーズおよび1.6〜2.2の屈折率を示す、という構成を有するのである。このような構成を有するナノダイヤモンド分散組成物は、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を形成するのに適する。
【0010】
好ましくは、ナノダイヤモンドの微粒子のゼータ電位と、透明性樹脂のエマルション粒子のゼータ電位とは、同符号である。すなわち、ナノダイヤモンド微粒子のゼータ電位および透明性樹脂エマルション粒子のゼータ電位はそれぞれネガティブであるか、或は、ナノダイヤモンド微粒子のゼータ電位および透明性樹脂エマルション粒子のゼータ電位はそれぞれポジティブである。このような構成によると、各ナノダイヤモンド微粒子は他のナノダイヤモンド微粒子と反発しあうと共に透明性樹脂エマルション粒子とも反発しあい、且つ、各透明性樹脂エマルション粒子は他のエマルション粒子と反発しあうと共にナノダイヤモンド微粒子とも反発しあう。したがって、本構成は、ナノダイヤモンド微粒子と透明性樹脂エマルション粒子とが互いに引き付け合って凝集するのを抑制して両粒子群を分散媒中に安定して分散させるうえで好適である。本ナノダイヤモンド分散組成物が比較的に高濃度でナノダイヤモンド微粒子および透明性樹脂エマルション粒子を含む場合において例えば、ナノダイヤモンド微粒子と透明性樹脂エマルション粒子とを分散媒中に安定して分散させるうえで好適である。
【0011】
好ましくは、透明性樹脂のエマルション粒子の平均粒径は、1〜300nmである。本ナノダイヤモンド分散組成物に含まれる透明性樹脂について適切にエマルション粒子の形態を実現するという観点から、前記平均粒径は1nm以上であるのが好ましい。また、本ナノダイヤモンド分散組成物から形成される樹脂部においてナノダイヤモンド連続層(ナノダイヤモンドが連なって存在する領域)が生じるのを抑制するという観点から、前記平均粒径は300nm以下であるのが好ましい。ナノダイヤモンド連続層の発生の抑制は、本ナノダイヤモンド分散組成物から形成される樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好ましい。
【0012】
好ましくは、ナノダイヤモンドは、爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)である。爆轟法ナノダイヤモンドの一次粒子の粒径は一桁ナノメートルであるところ、このような構成は、本ナノダイヤモンド分散組成物から形成される樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好適である。
【0013】
好ましくは、分散媒は水である。このような構成は、ナノダイヤモンド微粒子を分散媒中に安定して分散させるうえで好適である。
【0014】
好ましくは、ナノダイヤモンドの微粒子は一次粒子である。ナノダイヤモンド微粒子が二次粒子より小さな一次粒子である構成は、本ナノダイヤモンド分散組成物から形成される樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好適である。
【0015】
好ましくは、透明性樹脂はウレタン樹脂である。このような構成によると、本ナノダイヤモンド分散組成物から、ナノダイヤモンド微粒子が適切に分散したウレタン樹脂膜ないしウレタン樹脂部を形成することが可能となる。また、このような構成は、耐水性を有する樹脂膜ないし樹脂部を本ナノダイヤモンド分散組成物から形成するうえで好適である。
【0016】
好ましくは、透明性樹脂は硬化性樹脂である。このような構成によると、本ナノダイヤモンド分散組成物から、ナノダイヤモンド微粒子が適切に分散した硬化性樹脂膜ないし硬化性樹脂部を形成することが可能となる。硬化性樹脂は、好ましくは、アクリル系樹脂またはエポキシ樹脂である。このような構成は、耐摩耗性などの機械的特性に優れた樹脂膜ないし樹脂部を本ナノダイヤモンド分散組成物から形成するうえで好適である。
【0017】
本発明の第2の側面によると、光学部材が提供される。この光学部材は、本発明の第1の側面に係るナノダイヤモンド分散組成物から形成された部位を、光透過領域の少なくとも一部に有する。本光学部材は、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を有する光学部材を実現するうえで、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一の実施形態に係るナノダイヤモンド分散組成物の拡大模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る光学部材の拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施形態に係るナノダイヤモンド分散組成物たるND分散組成物X1の拡大模式図である。ND分散組成物X1は、例えば所定の基材上に塗布された後に乾燥されることによって光透過性の樹脂膜ないし樹脂部を形成するための材料である。本実施形態のND分散組成物X1は、ND微粒子11と、分散媒12と、透明性樹脂のエマルション粒子13とを含み、成膜後に2.0%以下のヘーズおよび1.6〜2.2の屈折率を示すように設計されている。本実施形態において、ヘーズとは、JIS K 7136に準拠して厚さ100nmの膜体について測定されたものであり、屈折率とは、例えば、JIS K 7142に準拠して厚さ100nmの膜体について測定されたものである。
【0020】
ND微粒子11は、ナノダイヤモンドの微粒子であり、互いに離隔して分散媒12中にコロイド粒子として分散している。ND微粒子11は、所定の生成過程を経て生成した一次粒子であってもよいし、一次粒子間が集成してなる二次粒子であってもよい。ND微粒子11が二次粒子より小さな一次粒子である構成は、ND分散組成物X1から形成される樹脂膜ないし樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好ましい。また、コロイド粒子たるND微粒子11のいわゆるゼータ電位の絶対値は、分散媒12中でのND微粒子11の分散安定性の観点から大きいほうが好ましい。コロイド粒子たるND微粒子11としては、ゼータ電位がネガティブのナノダイヤモンド微粒子であってもよいし、ゼータ電位がポジティブのナノダイヤモンド微粒子であってもよい。
【0021】
ND微粒子11の粒径D50(メディアン径)は、1〜50nmである。この粒径D50の上限は、好ましくは20nmであり、より好ましくは10nmであり、更に好ましくは8nmであり、特に好ましくは6nmである。ND微粒子11の粒径D50が小さいほど、ND分散組成物X1から形成される樹脂膜ないし樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好ましい傾向にある。本明細書では、一次粒子の粒径D50は、TEM観察によって測定される値とする。このTEM観察において具体的には、まず、対象となる試料について一視野あたりに含まれる一次粒子の数が200〜300個となるように画像を撮影する。そして、その画像内の一次粒子の各々について画像解析ソフトを使用して粒径を求め、その結果に基づいて当該一次粒子群に係るメディアン径を算出する。また、本明細書では、二次粒子の粒径D50は、いわゆる動的光散乱法によって測定される値とする。
【0022】
ND微粒子11の含有率は、例えば15〜90質量%である。ND微粒子11の含有率とは、ND分散組成物X1における分散媒12以外の成分の総含有量に対するND微粒子11の含有量の割合をいうものとする。ND分散組成物X1がND微粒子11と、分散媒12と、透明性樹脂のエマルション粒子13とからなる場合、ND微粒子11の含有率は、ND分散組成物X1中のND微粒子11とエマルション粒子13との総含有量に対するND微粒子11の含有量の割合である。ND分散組成物X1から形成されることとなる樹脂部の透明性および屈折率のバランスの観点から、ND微粒子11の含有率の下限は、好ましくは25質量%であり、より好ましくは35質量%であり、更に好ましくは45質量%である。ND分散組成物X1から形成されることとなる樹脂部の透明性および屈折率のバランスの観点から、ND微粒子11の含有率の上限は、好ましくは90質量%である。
【0023】
一次粒子の粒径D50が一桁ナノメートルであるナノダイヤモンドは、例えば爆轟法によって生成することが可能である。爆轟法においては、例えば、爆薬を密閉容器中で爆発させる。その際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。
【0024】
爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には、金属酸化物が含まれやすい。この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。
【0025】
爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には、グラファイト(黒鉛)が含まれている。このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、例えば水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物からグラファイトを除去することができる(酸化処理)。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩、並びに、過酸化水素が挙げられる。
【0026】
爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)は、以上のような酸処理および酸化処理を経て精製された後であっても、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。この凝着体を所定の分散媒に分散させて得られる懸濁液を解砕処理に付すことによって、粒径が一桁ナノメートルのナノダイヤモンドを得ることができる。分散媒としては、ナノダイヤモンドが溶解性を示し得る溶媒が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、およびN−メチルピロリドンが挙げられる。解砕処理は、例えば、高剪断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、またはコロイドミルを使用して行うことができる。また、上記のような解砕処理の後、ナノダイヤモンドの分散している懸濁液の水分量を必要に応じて低減することによって、所定濃度のナノダイヤモンド分散液を得ることができる。或は、上記のような解砕処理の後、ナノダイヤモンドの分散している懸濁液から必要に応じて水分を除去することによって、ナノダイヤモンドの粉体を得ることができる。これら水分量低減および水分除去は、例えばエバポレーターを使用して行うことができる。
【0027】
分散媒12は、ND分散組成物X1においてND微粒子11および透明性樹脂のエマルション粒子13を適切に分散させるための媒体である。分散媒12としては、ナノダイヤモンドが溶解性を示し得る溶媒が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN−メチルピロリドンが挙げられる。ND微粒子11の分散性の観点からは水が好ましい。分散媒12としては、一種類の分散媒を用いてもよいし、二種類以上の分散媒を用いてもよい。
【0028】
透明性樹脂のエマルション粒子13は、互いに離隔して分散媒12中に分散しており、ND分散組成物X1から形成される樹脂膜ないし樹脂部において透明性樹脂マトリックスをなすこととなる成分である。このようなエマルション粒子13をなすための透明性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、MS樹脂(メチルメタクレート-スチレン共重合体)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、およびポリアミドが挙げられる。これらのうち、耐水性の観点からは例えばウレタン樹脂が好ましく、耐摩耗性などの機械的特性の観点からは例えばアクリル系樹脂およびエポキシ樹脂が好ましい。エマルション粒子13をなす透明性樹脂としては、一種類の樹脂を用いてもよいし、二種類以上の樹脂を用いてもよい。
【0029】
ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する重合体であって、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させることにより得られる。ウレタン樹脂を得るためのポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、およびメチルシクロヘキシレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。一方、ウレタン樹脂を得るためのポリオールとしては、例えば、水酸基含有共役ジエン重合体、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールが挙げられる。水酸基含有共役ジエン重合体としては、例えば、ポリブタジエンポリオールおよびポリイソプレンポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合したものが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多価カルボン酸とのエステル化反応物が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ホスゲン等の炭酸誘導体と多価アルコールとの反応生成物が挙げられる。
【0030】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸エステル構造を有するモノマー)に由来するモノマーユニットを主たるモノマーユニットとして含む樹脂である。例えば「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」、「メタクリル」、または、「アクリル」と「メタクリル」の両方を表す。アクリル系樹脂を得るためのモノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレートおよび多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノールEO変性アクリレート、o−フェニルフェノールEO変性アクリレート、パラクミルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキシルヘキサヒドロフタルイミド、およびメトキシポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタールジアクリレート、トリシクロデカンジメタールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジメタクリレート、ビスフェノールA PO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO変性トリアクリレート、ジグリセリンEO変性アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、およびペンタエリスリトールEO変性テトラアクリレートが挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂は、オキシラン環を有する高分子化合物についてアミンや酸無水物等の硬化剤を作用させて硬化させることによって得られる。エポキシ樹脂としては、例えば、二官能型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、多官能型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。二官能型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、およびビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。多官能型グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、およびトルイジン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
ND分散組成物X1におけるエマルション粒子13の含有率は、ND分散組成物X1の塗工性や塗工後の乾燥のしやすさ、および、ND分散組成物X1から形成される膜の強度のバランスの観点から、例えば5〜90質量%である。
【0033】
透明性樹脂のエマルション粒子13の平均粒径は、好ましくは1〜300nmである。ND分散組成物X1に含まれる透明性樹脂について適切にエマルション粒子の形態を実現するという観点から、前記平均粒径は1nm以上であるのが好ましい。ND分散組成物X1から形成される樹脂部においてナノダイヤモンド連続層(ナノダイヤモンドが連なって存在する領域)が生じるのを抑制するという観点から、前記平均粒径は300nm以下であるのが好ましい。ナノダイヤモンド連続層の発生の抑制は、ND分散組成物X1から形成される樹脂部について低いヘーズすなわち高い透明性を実現するうえで好ましい。本明細書では、エマルション粒子13の平均粒径は、動的光散乱法によって測定される値とする。
【0034】
透明性樹脂のエマルション粒子13のゼータ電位の絶対値は、分散媒12中でのエマルション粒子13の分散安定性の観点から大きいほうが好ましい。また、透明性樹脂のエマルション粒子13のゼータ電位と、上述のND微粒子11のゼータ電位とは、同符号であるのが好ましい。すなわち、透明性樹脂のエマルション粒子13のゼータ電位およびND微粒子11のゼータ電位はそれぞれネガティブであるか、或は、透明性樹脂のエマルション粒子13のゼータ電位およびND微粒子11のゼータ電位はそれぞれポジティブである。このような構成は、透明性樹脂のエマルション粒子13とND微粒子11とを共に分散媒12中に安定して分散させるうえで好適である。ND分散組成物X1が比較的に高濃度でND微粒子11および透明性樹脂のエマルション粒子13を含む場合において例えば、ND微粒子11とエマルション粒子13とを分散媒12中に安定して分散させるうえで好適である。
【0035】
ND分散組成物X1は、例えば、次のようにして製造することができる。ND微粒子11の分散液(水分散液等)と上述の透明性樹脂の乳化液(透明性樹脂のエマルション粒子13の分散液)とを混合する(第1の方法)。透明性樹脂の乳化液にND微粒子11を添加して混合する(第2の方法)。ND微粒子11と透明性樹脂とを分散媒12中で混合して透明性樹脂の乳化を図る(第3の方法)。ND微粒子11の分散性の観点からは、第1の方法が好ましい。
【0036】
ND分散組成物X1は、ND微粒子11および透明性樹脂のエマルション粒子13に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、透明性樹脂のエマルション粒子13の構成材料として硬化性化合物を採用する場合に当該化合物を硬化させるための硬化剤や、消泡剤、レベリング剤が挙げられる。
【0037】
ND分散組成物X1は、例えば所定の基材上に塗布された後に乾燥されることにより、光透過性の樹脂膜ないし樹脂部を形成するための材料である。上述のように、透明性樹脂のエマルション粒子13は、ND分散組成物X1から形成される樹脂部において透明性樹脂マトリックスをなすこととなる。上述のように、ND微粒子11は、ND分散組成物X1から形成される樹脂部において、当該組成物の分散媒12中での安定分散状態を反映して透明性樹脂マトリックス中に分散して含まれることとなる。透明性樹脂マトリックスとこれに分散しているND微粒子11とを含んでなる樹脂部は、光透過性を有する。ND分散組成物X1においては、例えばND微粒子11に関する粒径や含有率の調整により、厚さ100nmに成膜された場合のヘーズが2.0%以下となるように設定される。
【0038】
また、ND分散組成物X1の分散媒12中には、高屈折率微粒子であるND微粒子11が分散している。上述のように、高屈折率のND微粒子11は、ND分散組成物X1から形成される樹脂部において、当該組成物の分散媒12中での安定分散状態を反映して透明性樹脂マトリックス中に分散して含まれることとなる。透明性樹脂マトリックスとこれに分散している高屈折率のND微粒子11とを含んでなる樹脂部は、当該透明性樹脂のみからなる樹脂体よりも高い屈折率を有し得る。ND分散組成物X1においては、例えばND微粒子11に関する含有率の調整により、当該樹脂部の屈折率が1.6〜2.2となるように設定される。当該屈折率は、好ましくは1.7〜2.1となるように設定される。
【0039】
以上のように、ND分散組成物X1は、成膜状態にてメディアン径1〜50nmのND微粒子11が透明性樹脂マトリックス中に適切に分散し得て2.0%以下のヘーズおよび1.6〜2.2の屈折率を示す、という構成を有するのである。このような構成を有するND分散組成物X1は、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を形成するのに適する。
【0040】
図2は、本発明の他の実施形態に係る光学部材Yの拡大部分断面図である。光学部材Yは、透明基材20と、ナノダイヤモンド分散樹脂膜たるND分散樹脂膜X2とを備える。光学部材Yは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、およびプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用の透明基板、レンズ、並びにタッチパネル用透明パネルなど、光が透過することとなる光学部材である。透明基材20は、そのような光学部材Yの主たる構造要素をなす透明部材であって、光が透過することとなる領域を含む。このような透明基材20は、例えば、プラスチック系材料ないし樹脂系材料、またはガラス系材料よりなる。ND分散樹脂膜X2は、上述のND分散組成物X1から形成されたものであって(内部構造につき図示略)、透明基材20の光透過領域の少なくとも一部を覆うように設けられている。すなわち、光学部材Yは、上述のND分散組成物X1から形成された部位を光透過領域の少なくとも一部に有するのである。ND分散樹脂膜X2の厚さは、例えば0.01〜10μmである。透明基材20の例えば屈折率に応じてND分散樹脂膜X2の例えば屈折率および/または厚さが設定されることにより、ND分散樹脂膜X2は屈折率調整膜(インデックスマッチングフィルム)や反射防止膜として機能することが可能である。
【0041】
このような光学部材Yは、上述のND分散組成物X1を透明基材20上に塗布して薄膜化した後に乾燥固化(必要な場合には硬化)させることによって、製造することができる。塗布手段としては、例えば、バーコーター、スプレー塗布、スピンコーター、ディップコーター、ダイコーター、コンマコーター、およびグラビアコーターが挙げられる。
【0042】
光学部材Yは、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を形成するのに適するND分散組成物X1から形成されたND分散樹脂膜X2を有する。したがって、光学部材Yは、高い透明性を有するとともに高い屈折率を有する樹脂部ないし樹脂膜を有する光学部材を実現するのに適する。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス(SF)170」,ウレタン成分濃度33質量%,平均粒径10nm,pH8におけるゼータ電位;−50mV,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Vox D」,ナノダイヤモンド濃度5質量%,粒径D50;5nm,pH9におけるゼータ電位;−55mV,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分70重量部に対してナノダイヤモンド成分が30重量部となる量比で、超音波中で分散させながら混合した。このようにして、実施例1のナノダイヤモンド分散組成物を調製した。このナノダイヤモンド分散組成物を、表面にハードコート層(厚さ3μm)を有して当該表面にコロナ処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「コスモシャインA4300」,厚さ188μm,TOYOBO社製)の上に滴下し、バーコーターを使用して、乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。この後、乾燥機にて80℃で2分間乾燥した。以上のようにして、実施例1のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0045】
〔実施例2〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて60重量部(ウレタン成分)および40重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例2のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例2のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0046】
〔実施例3〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて50重量部(ウレタン成分)および50重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例3のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例3のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0047】
〔実施例4〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて40重量部(ウレタン成分)および60重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例4のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例4のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0048】
〔実施例5〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて30重量部(ウレタン成分)および70重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例5のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例5のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0049】
〔実施例6〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて20重量部(ウレタン成分)および80重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例6のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例6のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0050】
〔実施例7〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を70重量部および30重量部に代えて10重量部(ウレタン成分)および90重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例1と同様にして、実施例7のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例7のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0051】
〔実施例8〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス130」,ウレタン成分濃度35質量%,平均粒径30nm,pH8におけるゼータ電位;−52mV,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Vox D」,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分50重量部に対してナノダイヤモンド成分が50重量部となる量比で、超音波中で分散させながら混合した。このようにして、実施例8のナノダイヤモンド分散組成物を調製した。このナノダイヤモンド分散組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャインA4300」,厚さ188μm,TOYOBO社製)の上に滴下し、バーコーターを使用して、乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。この後、乾燥機にて80℃で2分間乾燥した。以上のようにして、実施例8のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0052】
〔実施例9〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス620」,ウレタン成分濃度30質量%,平均粒径20nm,pH7におけるゼータ電位;+35mV,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Hydrogen D」,ナノダイヤモンド濃度2.5質量%,粒径D50;5nm,pH6におけるゼータ電位;+42mV,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分50重量部に対してナノダイヤモンド成分が50重量部となる量比で、超音波中で分散させながら混合した。このようにして、実施例9のナノダイヤモンド分散組成物を調製した。このナノダイヤモンド分散組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャインA4300」,厚さ188μm,TOYOBO社製)の上に滴下し、バーコーターを使用して、乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。この後、乾燥機にて80℃で2分間乾燥した。以上のようにして、実施例9のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0053】
〔実施例10〕
ウレタン成分およびナノダイヤモンド成分の量比を50重量部および50重量部に代えて20重量部(ウレタン成分)および80重量部(ナノダイヤモンド成分)とした以外は実施例9と同様にして、実施例10のナノダイヤモンド分散組成物を調製し、そして実施例10のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0054】
〔比較例1〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス170」,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Vox D」,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分90重量部に対してナノダイヤモンド成分が10重量部となる量比で、超音波中で分散させながら混合した。このようにして、比較例1のナノダイヤモンド分散組成物を調製した。このナノダイヤモンド分散組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「コスモシャインA4300」,厚さ188μm,TOYOBO社製)の上に滴下し、バーコーターを使用して、乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。この後、乾燥機にて80℃で2分間乾燥した。以上のようにして、比較例1のナノダイヤモンド分散樹脂膜を形成した。
【0055】
〔比較例2〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス620」,pH7におけるゼータ電位;+35mV,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Vox D」,pH9におけるゼータ電位;−55mV,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分70重量部に対してナノダイヤモンド成分が30重量部となる量比で、超音波中で混合した。しかしながら、液中にて成分が凝集して沈降した。用いたウレタンエマルション中のエマルション粒子のゼータ電位と、用いたナノダイヤモンド水分散液中のナノダイヤモンド微粒子のゼータ電位とが逆符号であるため、エマルション粒子とナノダイヤモンド微粒子とが互いに引き付け合って凝集が生じたと考えられる。このように、ナノダイヤモンド分散組成物を調製することはできなかった。
【0056】
〔比較例3〕
ウレタンエマルション(商品名「スーパーフレックス170」,pH8におけるゼータ電位;−50mV,第一工業製薬社製)と、ナノダイヤモンド水分散液(商品名「Hydrogen D」,pH6におけるゼータ電位;+42mV,Carbodeon社製)とを、ウレタン成分70重量部に対してナノダイヤモンド成分が30重量部となる量比で、超音波中で混合した。しかしながら、液中にて成分が凝集して沈降した。用いたウレタンエマルション中のエマルション粒子のゼータ電位と、用いたナノダイヤモンド水分散液中のナノダイヤモンド微粒子のゼータ電位とが逆符号であるため、エマルション粒子とナノダイヤモンド微粒子とが互いに引き付け合って凝集が生じたと考えられる。このように、ナノダイヤモンド分散組成物を調製することはできなかった。
【0057】
〈ヘーズ〉
上述のようにPETフィルム上に形成された各ナノダイヤモンド分散樹脂膜について、ヘーズメーター(商品名:「ヘーズメーター300A」,日本電色工業社製)を使用してヘーズを測定した。ヘーズの測定は、JIS K 7136に準拠して行った。その結果を表1に掲げる。
【0058】
〈屈折率〉
上述のように形成された各ナノダイヤモンド分散樹脂膜について、エリプソメーター(商品名「自動エリプソメーター DVA−36LA」,溝尻光学工業所製)を使用して、波長633nmにおける屈折率を測定した。その結果を表1に掲げる。
【0059】
【表1】
【符号の説明】
【0060】
X1 ND分散組成物
X2 ND分散樹脂膜
Y 光学部材
11 ND微粒子
12 分散媒
13 エマルション粒子
20 透明基材
図1
図2