(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の加熱調理器は、加熱部による加熱を開始して所定時間が経過すると循環ファンの動作を開始するため、循環ファンによる送風で加熱部の発熱が阻害され、調理室内の温度上昇が遅れることを防止できる。しかしながら、特許文献1による熱風循環調理には、未だ改良の余地がある。
【0006】
本発明は、被調理物を熱風により調理する加熱調理器の効率化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被調理物が配置される調理室と、前記調理室に隣接して設けられた加熱室と、前記調理室内に配置された第1加熱部と、前記加熱室内に配置された第2加熱部と、前記調理室内の空気を前記加熱室内に流入させ、前記第2加熱部によって加熱された空気を前記調理室に循環させるファンと、前記第1加熱部を動作させるとともに前記ファンによる空気の循環を停止させた予加熱工程と、前記予加熱工程の実行後に実行され前記第2加熱部を動作させるとともに前記ファンによって空気を循環させた調理工程とを有する熱風循環調理を行う制御部とを備える、加熱調理器を提供する。
【0008】
この態様では、調理工程は、予加熱工程を終了した直後に実行させてもよいし、予加熱工程の終了後に他の工程を実行し他の工程の実行後に実行させてもよい。また、予加熱工程でファンによる空気の循環を停止させるとは、ファンの動作を停止する構成は勿論、第1加熱部の発熱を阻害しない程度でファンを動作させる構成を含む。また、予加熱工程で第2加熱部は、動作を停止させてもよいし、動作させてもよい。また、調理工程で第1加熱部は、動作を停止させてもよいし、動作させてもよい。また、調理工程で第1加熱部を動作させる場合、出力を随時変更して動作(温調)させてもよいし、予加熱工程と同一出力を維持するようにしてもよいし、予加熱工程とは異なる出力を一定に維持するようにしてもよい。また、調理工程では、第2加熱部とファンの動作を同時に開始してもよいし、第2加熱部の動作を開始した後にファンの動作を開始してもよいし、ファンの動作を開始した後に第2加熱部の動作を開始させてもよい。
【0009】
この加熱調理器によれば、予加熱工程ではファンによる空気の循環を停止しているため、ファンによる空気の循環によって第1加熱部の発熱が妨げられることはない。また、調理工程では、加熱室に配置した第2加熱部を動作させるとともに、ファンにより空気を循環させるため、被調理物が過加熱されることで表面に焦げが生じることを抑制し、循環供給する空気を適した温度に加熱できる。よって、予加熱工程では調理室内の温度を速やかに上昇させ、調理工程では熱風循環調理の効率化を図ることができる。
【0010】
前述のように、予加熱工程では第2加熱部を動作させ、調理工程では第1加熱部を動作させてもよい。しかし、前記予加熱工程では前記第2加熱部が停止され、前記調理工程では前記第1加熱部が停止されることが好ましい。ここで、予加熱工程で第2加熱部を停止させるとは、加熱室内が昇温しない程度で第2加熱部を動作させる構成を含む。また、調理工程で第1加熱部を停止させるとは、輻射熱で被調理物を加熱しない程度で第1加熱部を動作させる構成を含む。この態様によれば、予加熱工程及び調理工程で必要な部分だけに出力(火力)を集中できる。そのため、無駄な消費電力を抑えつつ、理想的な熱風循環調理を実現できる。
【0011】
この場合、前記調理工程で前記第2加熱部は、前記予加熱工程で前記第1加熱部の動作が停止された後に動作が開始される。この態様によれば、第1加熱部と第2加熱部とが同時に動作されることはないため、一時的に過剰な電流が流れることによる過負荷を防止できる。
【0012】
この加熱調理器は、前記予加熱工程を終了する設定時間を記憶する記憶手段と、前記予加熱工程の実行時間を計時する計時手段とを備え、前記制御手段は、前記予加熱工程の開始後に前記計時手段によって計時した実行時間が前記設定時間になると、前記予加熱工程を終了する。この態様によれば、調理室内を確実に希望温度まで昇温できるうえ、温度センサ等の温度検出手段が必要ないため、加熱調理器の製造コストを低減できる。又は、前記予加熱工程を終了する設定温度を記憶する記憶手段と、前記調理室内の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記予加熱工程の開始後に前記温度検出手段によって検出した前記調理室内の温度が前記設定温度になると、前記予加熱工程を終了する。この態様によれば、調理室内を確実に希望温度まで昇温できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加熱調理器では、予加熱工程では、ファンによる空気の循環が停止されているため、第1加熱部によって調理室内を速やかに希望温度に昇温させることができる。また、調理工程では、第2加熱部を動作させるとともにファンによって空気を循環させるため、被調理物が過加熱されることを抑制しつつ、循環供給する空気を適した温度に加熱できる。そのため、理想的な熱風循環調理を効率的に実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
図1から
図5は、本発明の実施形態に係る加熱調理器10を示す。以下の説明では、各図において前扉20が設けられた正面を前側として方向を特定する。また、各図に記載したFは前側を意味し、Bは後側を意味し、Lは左側を意味し、Rは右側を意味する。
【0017】
(全体構成)
図3に示すように、加熱調理器10は、外装ケース11の内部に加熱庫30を備える。この加熱庫30の内部は、隔壁32によって調理室37と加熱室38とに区画されている。調理室37の内部にはグリル加熱部(第1加熱部)65A〜65Eが配置されている。加熱室38の内部には送風加熱部(第2加熱部)67A,67Bと循環ファン(ファン)70とが配置されている。グリル加熱部65A〜65E、送風加熱部67A,67B及び循環ファン(ファン)70を制御するマイコン95は、循環ファン70を停止した状態でグリル加熱部65A〜65Eを動作させる予加熱工程と、送風加熱部67A,67B及び循環ファン70を動作させる調理工程とを有する熱風循環調理を行う。
【0018】
図1から
図3に示すように、加熱調理器10の外装ケース11は、底に位置するベース板12と、ベース板12の左側部と右側部と上側部を覆う外カバー13と、ベース板12の後側部を覆う後カバー14と、ベース板12の前側部に配置した前板15とを備える。
図1に最も明瞭に示すように、前板15には開口部16が設けられ、この開口部16に前扉20が開閉可能に取り付けられている。前扉20は、調理室37内を目視可能な窓部21を備える。
【0019】
図2から
図4に示すように、加熱庫30は、遮熱壁31A〜31Eによって前端を除く部分が閉塞されている。加熱庫30の前端は外装ケース11の開口部16であり、この開口部16が前扉20によって閉塞されている。調理室37は、上遮熱壁31Aと、左遮熱壁31Bと、右遮熱壁31Cと、下遮熱壁31Dと、隔壁32と、前扉20とで画定されている。加熱室38は、上遮熱壁31Aと、左遮熱壁31Bと、右遮熱壁31Cと、下遮熱壁31Dと、後遮熱壁31Eと、隔壁32とで画定されている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、調理室37と加熱室38とは、吸込口34と上下一対の吹出口36A,36Bとによって連通している。吸込口34は、隔壁32の中央に設けた多数の孔からなる。隔壁32の上端には、上遮熱壁31Aに向けて前向きに傾斜する上導風部33Aが設けられている。この上導風部33Aの先端と上遮熱壁31Aとの間隙より上吹出口36Aが形成されている。また、隔壁32の下端には、下遮熱壁31Dに向けて前向きに傾斜する下導風部33Bが設けられている。この下導風部33Bの先端と下遮熱壁31Dとの間隙より下吹出口36Bが形成されている。
【0021】
図1から
図3に示すように、調理室37の内部には、網状の載置部材50が配置されている。載置部材50は、概ね調理室37の上下方向の中央に位置し、前後方向に延びるように配置されている。前扉20を開閉すると載置部材50は、前扉20のフック22によって調理室37内で前後に移動する。載置部材50の前後方向の移動は、左右の遮熱壁31B,31Cのガイド溝51と、載置部材50に係合させたガイドピン52によってガイドされている。載置部材50には、被調理物が直接配置される場合と、被調理物を図示の包焼きケース60に収容した状態で配置される場合とがある。なお、包焼きケース60は、分離可能な下皿61と上蓋62とを備え、上蓋62に形成した一対の開口部63A,63Bを熱風が通過する。
【0022】
図2及び
図3に示すように、第1加熱部である5個のグリル加熱部65A〜65Eは、調理室37内に配置され、輻射熱によって被調理物を加熱する。第2加熱部である2個の送風加熱部67A,67Bは、加熱室38内に配置され、循環供給する空気を加熱することで、加熱した熱風によって被調理物を加熱する。これら加熱部65A〜65E,67A,67Bは、例えば石英管ヒータであり、シーズヒータであってもよい。加熱部65A〜65E,67A,67Bは、左遮熱壁31Bから右遮熱壁31Cにかけて架設されている。2個のグリル加熱部65A,65Bは、調理室37内の上遮熱壁31Aの近傍に、前後方向に間隔をあけて配置されている。3個のグリル加熱部65C〜65Eは、調理室37内の下遮熱壁31Dの近傍に、前後方向にそれぞれ間隔をあけて配置されている。送風加熱部67Aは、加熱室38内の上遮熱壁31Aの近傍に配置されている。送風加熱部67Bは、加熱室38内の下遮熱壁31Dの近傍に配置されている。
【0023】
第1ファンである循環ファン70は、加熱室38の内部に配置され、吸込口34から調理室37内の空気を加熱室38内に流入させ、再び加熱室38から調理室37内へ空気を流出させる。この循環ファン70は、軸方向から吸い込んだ空気を径方向に送出するターボ形やシロッコ形のような遠心ファンが用いられる。
図4を併せて参照すると、循環ファン70を駆動する循環ファンモータ(第1ファンモータ)71は、外装ケース11と加熱庫30との間に形成された部品配置部40に配置されている。詳しくは、循環ファンモータ71は、外装ケース11の後カバー14と加熱庫30の後遮熱壁31Eとの間の後側部41に配置されている。循環ファンモータ71の出力軸72は、後遮熱壁31Eを貫通して加熱室38内に突出している。出力軸72は、軸線が隔壁32に対して直交方向に延び、吸込口34の中心と一致するように配置されている。
【0024】
図3に示すように、加熱庫30内の空気は、循環ファン70の駆動によって加熱室38の上下の吹出口36A,36Bから調理室37内に供給される。
図3に矢印W1で示すように、上吹出口36Aから吐出された空気は、上遮熱壁31A及び前扉20の内面に沿って流れる。
図3に矢印W2で示すように、下吹出口36Bから吐出された空気は、下遮熱壁31D及び前扉20の内面に沿って流れる。2つの空気流W1,W2は、前扉20の高さ方向中央付近で衝突し、合流して後側に流動する水平方向の空気流W3になる。この空気流W3は、開口部63A,63Bを介して包焼きケース60内を通過し、吸込口34を通って加熱室38に戻される。
【0025】
図4及び
図5に示すように、部品配置部40には、循環ファンモータ71を配置した後側部41と異なる右側部42に冷却ファン75(第2ファン)が配置されている。冷却ファン75は、循環ファン70と同様に、軸方向から吸い込んだ空気を径方向に送出するターボ形やシロッコ形のような遠心ファンが用いられる。冷却ファン75は、後遮熱壁31Eを介して加熱庫30内の熱が伝わる循環ファンモータ71の過熱を防止する。部品配置部40には、右側部42から後側部41にかけて延びる平面視L字形状のダクト80が配置され、このダクト80の一端側に循環ファンモータ71が配置され、ダクト80の他端側に冷却ファン75が配置されている。
【0026】
冷却ファン75を駆動する冷却ファンモータ(第2ファンモータ)76は、部品配置部40の右側部42のダクト80の外側に配置した遮熱ケース85の内部に配置されている。遮熱ケース85は、外カバー13の右面部13aに対向する開口部86を備える一端開口の容器である。遮熱ケース85には、開口部86と逆側の閉塞部に、ダクト80の内部に連通する通気孔87が設けられている。冷却ファンモータ76の出力軸77は、通気孔87を通してダクト80内に突出している。
【0027】
図1に示すように、前扉20の右側には操作パネル90が配置されている。操作パネル90は、使用者が調理メニューを選択する複数の入力部91と、選択状態や動作状態を表示する表示部92とを備える。
図4及び
図5に示すように、操作パネル90の背部には、基板ボックス93が配置されている。この基板ボックス93の内部には、マイコン95を実装した制御基板(図示せず)が配置されている。
【0028】
図6に示すように、マイコン95は、グリル加熱部65A〜65E、送風加熱部67A,67B、循環ファンモータ71、及び冷却ファンモータ76等の駆動部品を制御する制御部である。このマイコン95は、グリル調理及び熱風循環調理を行うプログラムや、移行データ等を記憶するメモリ(記憶手段)96を備える。また、マイコン95は、駆動部品の実行時間T等を計測するタイマ(計時手段)97を備える。
【0029】
制御部であるマイコン95は、グリル調理が選択されると、グリル加熱部65A〜65Eを動作させ、輻射熱だけで調理室37の内部に配置された被調理物を加熱調理する。また、熱風循環調理が選択されると、グリル加熱部65A〜65E、送風加熱部67A,67B、循環ファンモータ71、及び冷却ファンモータ76を制御し、熱風だけで調理室37の内部に配置された被調理物を加熱調理する。
【0030】
(熱風循環調理の詳細)
図7に示すように、熱風循環調理は、調理室37内の温度を上昇させる予加熱工程と、熱風により被調理物を調理する調理工程と、加熱庫30内を冷却するための冷却工程とを備える。制御部であるマイコン95は、予加熱工程を予め設定した時間T1実行し、この予加熱工程の実行後に調理工程を予め設定した時間(T2+T3)実行し、この調理工程の実行後に冷却工程を予め設定した時間T4実行することで、熱風循環調理を行う。
【0031】
(予加熱工程の詳細)
予加熱工程では、グリル加熱部65A〜65Eが動作され、循環ファン70の動作が停止される。これにより循環ファン70による加熱庫30内の空気の循環が停止される。また、予加熱工程では、送風加熱部67A,67Bの動作が停止され、冷却ファン75の動作も停止される。ここで、循環ファン70による空気の循環を停止させるとは、第1加熱部であるグリル加熱部65A〜65Eの発熱を阻害しない程度で、循環ファンモータ71を介して循環ファン70を継続的または間欠的に動作させる構成を含む。また、第2加熱部である送風加熱部67A,67Bの動作を停止させるとは、加熱室37内が昇温しない程度で、送風加熱部67A,67Bを継続的または間欠的に動作させる構成を含む。
【0032】
予加熱工程には、個々の調理メニュー(異なる被調理物)に応じて異なる時間T1が設定され、その設定時間T1がメモリ96に記憶されている。この設定時間T1は、調理メニューに応じて必要な庫内温度を目標温度とし、グリル加熱部65A〜65Eの動作により調理室37内が常温から目標温度まで昇温する時間である。
【0033】
マイコン95は、予加熱工程を開始すると、グリル加熱部65A〜65Eを設定した一定の出力で動作させる。また、マイコン95は、グリル加熱部65A〜65Eの動作を開始すると、タイマ97を動作させて実行時間Tを計測し、実行時間Tが設定時間T1になる(経過する)と、グリル加熱部65A〜65Eの動作を停止する。
【0034】
このように、予加熱工程では循環ファン70によって空気を循環させることなく、調理室37に配置したグリル加熱部65A〜65Eを動作させるため、循環ファン70の送風によってグリル加熱部65A〜65Eの発熱が妨げられることはない。よって、調理室37内の温度を速やかに目標温度まで上昇させることができる。また、予加熱工程は、調理室37内が設定温度に達する設定時間T1が経過すると終了される構成であるため、調理室37内を確実に目標温度まで昇温できるうえ、サーミスタ(温度センサ)等の温度検出手段が必要ないため、製品の製造コストを低減できる。
【0035】
(調理工程の詳細)
調理工程では、送風加熱部67A,67Bが動作され、循環ファン70も動作される。これにより循環ファン70によって加熱庫30内の空気が循環される。また、調理工程では、冷却ファン75が動作され、グリル加熱部65A〜65Eの動作が停止される。ここで、第1加熱部であるグリル加熱部65A〜65Eの動作を停止させるとは、輻射熱で被調理物を加熱しない程度で、グリル加熱部65A〜65Eを継続的または間欠的に動作させる構成を含む。
【0036】
調理工程には、予加熱工程でグリル加熱部65A〜65Eの動作を停止した後、送風加熱部67A,67Bの動作を開始するまでの間に待機時間T2が設定されている。この待機時間T2は、瞬間的にもグリル加熱部65A〜65Eと送風加熱部67A,67Bとが同時にオン状態にならないようにするための時間(例えば2秒)であり、メモリ96に記憶されている。また、調理工程には、待機時間T2の経過後に送風加熱部67A,67Bを動作させる時間T3が設定され、その設定時間T3がメモリ96に記憶されている。この実行時間T3は、個々の調理メニューに応じて設定された調理に必要な時間である。
【0037】
マイコン95は、グリル加熱部65A〜65Eを停止して調理工程を開始すると、タイマ97により時間Tを計測し、待機時間T2が経過すると、送風加熱部67A,67B、循環ファン70、及び冷却ファン75の動作を同時に開始する。また、マイコン95は、送風加熱部67A,67Bを設定した一定の出力で動作させる。また、マイコン95は、循環ファン70及び冷却ファン75を、循環ファンモータ71及び冷却ファンモータ76を介して設定した一定の回転数で動作させる。また、送風加熱部67A,67Bの動作を開始すると、タイマ97を動作させて実行時間Tを計測し、実行時間Tが設定時間T3になると、送風加熱部67A,67Bの動作を停止する。
【0038】
このように、調理工程では、調理室37に配置したグリル加熱部65A〜65Eを停止させ、加熱室38に配置した送風加熱部67A,67Bを動作させるため、被調理物が輻射熱によって過加熱されることで生じる表面の焦げを抑制できる。ここで、加熱した熱風によって被調理物を調理する場合、流動中の空気を加熱する必要があるため、高出力の加熱手段を用いる必要がある。高出力の加熱手段を調理室37に配置して動作させた場合には、輻射熱によって被調理物も直接加熱されるため、被加熱物に焼き色(焦げ)を生じさせてしまう。これに対して、調理工程では、調理室37に配置したグリル加熱部65A〜65Eの動作を停止し、加熱室38に配置した送風加熱部67A,67Bを動作させることで、輻射熱によって被調理物を直接加熱することを防止している。
【0039】
即ち、送風加熱部67A,67Bは、グリル加熱部65A〜65Eと比較して高出力の加熱手段を用いることができる。詳しくは、個々の送風加熱部67A,67Bの出力P6,P7は、個々のグリル加熱部65A〜65Eの出力P1〜P5より大きくしている。但し、全ての送風加熱部67A,67Bの出力を加算した総出力(P6+P7)は、全てのグリル加熱部65A〜65Eの出力を加算した総出力(P1+P2+P3+P4+P5)より小さくしている。また、上方に配置した送風加熱部67Aの出力P6と、下方に配置した送風加熱部67Bの出力P7は、同一(P6=P7)としている。このように高出力で動作可能な送風加熱部67A,67Bを用いているため、調理工程で循環供給する空気を適した温度に加熱できる。よって、熱風循環調理の効率化を図ることができる。
【0040】
(冷却工程の詳細)
冷却工程では、グリル加熱部65A〜65Eの動作が停止され、送風加熱部67A,67Bの動作も停止される。また、冷却工程では、循環ファン70が動作され、冷却ファン75も動作される。循環ファン70及び冷却ファン75は、調理工程の終了後に、動作を停止することなく引き続いて継続される。この冷却工程には、循環ファン70及び冷却ファン75を動作させる時間T4が設定され、その設定時間T4がメモリ96に記憶されている。この設定時間T4は、調理メニューに関係なく、送風加熱部67A,67Bを含む加熱庫30の放熱に必要な一定の時間である。
【0041】
マイコン95は、送風加熱部67A,67Bを停止して冷却工程を開始すると、タイマ97により実行時間Tを計測し、実行時間Tが設定時間T4になると、循環ファン70及び冷却ファン75の動作を停止する。これにより熱風循環調理の全ての工程が終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態の加熱調理器10は、予加熱工程では送風加熱部67A,67Bが停止され、調理工程ではグリル加熱部65A〜65Eが停止されるため、予加熱工程及び調理工程で必要な部分だけに出力(火力)を集中できる。そのため、無駄な消費電力を抑えつつ、理想的な熱風循環調理を実現できる。しかも、調理工程で動作される送風加熱部67A,67Bは、予加熱工程で動作されるグリル加熱部65A〜65Eの動作が完全に停止した後に動作が開始されるため、一時的に過剰な電流が流れることによる過負荷を確実に防止できる。
【0043】
なお、本発明の加熱調理器は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、前記実施形態の調理工程では、送風加熱部67A,67B、循環ファン70、及び冷却ファン75の動作を同時に開始するようにしたが、
図8に示すようにしてもよい。具体的には、
図8の変形例では、送風加熱部67A,67Bの動作を開始した後、循環ファン70及び冷却ファン75の動作を開始するまでの発熱時間T5を設定している。マイコン95は、調理工程を開始すると、タイマ97によって実行時間Tを計測して待機時間T2が経過するまで待機し、待機時間T2が経過すると送風加熱部67A,67Bの動作を開始する。ついで、タイマ97によって実行時間Tを計測して発熱時間T5が経過するまで待機し、発熱時間T5が経過すると循環ファン70及び冷却ファン75の動作を開始する。このようにすれば、送風加熱部67A,67Bの発熱が循環ファン70からの送風で妨げられることを防止できるため、熱風循環調理を更に効率化できる。
【0045】
また、前記実施形態の予加熱工程では、送風加熱部67A,67Bの動作を停止させたが、送風加熱部67A,67Bを動作させてもよい。この場合、送風加熱部67A,67Bは、調理工程と同一の出力で動作させてもよし、調理工程より低い(異なる)同一出力で動作させてもよい。このようにすれば、調理工程で送風加熱部67A,67Bが発熱する時間を削減できるため、調理工程の実行時間T3を短くすることができる。
【0046】
また、前記実施形態の調理工程では、グリル加熱部65A〜65Eの動作を停止させたが、グリル加熱部65A〜65Eを動作させてもよい。この場合、グリル加熱部65A〜65Eは、予加熱工程と同一の出力で動作させてもよいし、輻射熱で被調理物が加熱されない程度の低い出力で動作させてもよい。このようにすれば、送風加熱部67A,67Bで加熱した熱風が被調理物に到達するまでの間に降温することを抑制できる。
【0047】
また、前記実施形態の予加熱工程では、設定した実行時間T1が経過すると終了するようにしたが、調理室37内の温度に基づいて終了するようにしてもよい。具体的には、
図9に示すように、調理室37には、調理室37内の温度を検出する温度検出手段として、サーミスタ等の温度センサ98が配置されている。また、メモリ96には、調理メニューに応じて調理室37内を昇温させる目標温度(設定温度)が記憶されている。そして、マイコン95は、予加熱工程にて温度センサ98によって調理室37内の温度を検出し、調理室37内が設定温度に達すると、グリル加熱部65A〜65Eの動作を停止させて予加熱工程を終了する。このようにすれば、調理室37内を確実に希望温度まで昇温させることができる。
【0048】
また、調理室37内に温度センサ98を配置する場合、調理工程で調理室37内が目標温度を維持するように、グリル加熱部65A〜65Eをオンオフ制御(温調制御)するようにしてもよい。このようにすれば、熱風循環調理を更に効率化できる。
【0049】
また、循環ファン70と冷却ファン75とは、同時に動作を開始させたが、異なる時期に動作を開始させてもよい。また、
図7に示す実施形態では送風加熱部67A,67Bと同時に循環ファン70の動作を開始させ、
図8に示す変形例では送風加熱部67A,67Bの動作を開始した後に循環ファン70の動作を開始させたが、循環ファン70の動作を開始した後に送風加熱部67A,67Bの動作を開始してもよい。ここで、送風加熱部67A,67Bを停止した状態で循環ファン70だけを動作させた時間帯は、調理工程とは異なる他の工程とみなすことができる。このように、熱風循環調理は、グリル加熱部65A〜65Eを動作させた予加熱工程と、送風加熱部67A,67Bを動作させた調理工程との間に、他の工程を設けることが可能である。そして、予加熱工程の終了後に前述の送風工程のような他の工程を実行し、他の工程の終了後に調理工程を実行させてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、グリル調理と熱風循環調理の両方を行うことが可能な加熱調理器10を例に挙げて説明したが、本発明が適用される加熱調理器は、熱風循環調理だけを行う専用器(コンベクションオーブン)であってもよい。