特許第6472715号(P6472715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472715ナノダイヤモンド分散液およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472715
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ナノダイヤモンド分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/28 20170101AFI20190207BHJP
   B01J 3/08 20060101ALI20190207BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20190207BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190207BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190207BHJP
【FI】
   C01B32/28
   B01J3/08 D
   B01J13/00 B
   B01J3/08 M
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-118639(P2015-118639)
(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-1915(P2017-1915A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】木本 訓弘
(72)【発明者】
【氏名】松野 直良
(72)【発明者】
【氏名】西川 正浩
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−519623(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096854(WO,A1)
【文献】 特表2016−501811(JP,A)
【文献】 特開2007−238411(JP,A)
【文献】 特開2006−225208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
B01J 3/00−3/08
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、
粒径D50が10nm以下であり且つ前記分散媒中に分散しているナノダイヤモンド粒子と、を含み、
前記ナノダイヤモンド粒子の含有量に対するジルコニア含有量が50質量ppm以下であり、
前記ナノダイヤモンド粒子のゼータ電位が−45〜−30mVである、ナノダイヤモンド分散液。
【請求項2】
前記分散媒は水である、請求項1に記載のナノダイヤモンド分散液。
【請求項3】
pHが4〜7の範囲にある、請求項1または2に記載のナノダイヤモンド分散液。
【請求項4】
前記ナノダイヤモンド粒子は、空冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項1からのいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散液。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法であって、
ナノダイヤモンド粗生成物を精製する精製工程と、
水酸化ナトリウムおよび過酸化水素を含む溶液中において、前記精製工程を経たナノダイヤモンドに水酸化ナトリウムおよび過酸化水素を作用させる、化学的解砕処理を行う工程と、
前記化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液を遠心分離処理して上清液を採取する工程と、を含む、ナノダイヤモンド分散液製造方法。
【請求項6】
前記化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液のpHを前記遠心分離処理より前に調整する工程を更に含む、請求項に記載のナノダイヤモンド分散液製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノダイヤモンドの分散する分散液、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノダイヤモンドと呼称される微粒子状のダイヤモンド材料の開発が進められている。ナノダイヤモンドについては、用途によっては、粒径が10nm以下のいわゆる一桁ナノダイヤモンドが求められる場合がある。そのようなナノダイヤモンドの分散する分散液に関する技術については、例えば下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−001983号公報
【特許文献2】特開2010−126669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば爆轟法によると、一次粒子の粒径が数ナノメートルのナノダイヤモンドが生成される。ナノダイヤモンドは、バルクダイヤモンドがそうであるように高い機械的強度や、高い屈折率、高い熱伝導性などを示し得る。微粒子たるナノ粒子は、一般に、表面原子(配位的に不飽和である)の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きくて凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)の場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。爆轟法ナノダイヤモンドは、このように結晶子ないし一次粒子の間が重畳的に相互作用し得る特異な性質を有するところ、ナノダイヤモンドの一次粒子間を解離させて当該一次粒子が例えば溶媒中で分散した状態を創り出すことには、技術的困難を伴う。ナノダイヤモンドは、爆轟法により得られる生成物にて先ずは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとり、二次粒子から一次粒子への解砕や、一次粒子を所望の溶媒に安定して分散させることに、技術的困難を伴うのである。
【0005】
爆轟法ナノダイヤモンドの二次粒子から一次粒子への解砕手法として、高硬度のジルコニアビーズを用いたビーズミリングが見出されている。しかしながら、この方法においては、ミリングの過程でジルコニアビーズの表面がナノダイヤモンド粒子との接触によって欠け、そうして生じたジルコニアのナノ粒子がナノダイヤモンド粒子群に混入してしまう。ジルコニアビーズを用いたビーズミリングを経ると、ナノダイヤモンド粒子群に不可避的にジルコニアナノ粒子が混入してしまうのである。また、当該ビーズミリングにてミル容器として内壁がジルコニアコーティングされているものが使用される場合、ミリング過程でジルコニア壁面がナノダイヤモンド粒子との接触によって欠け、生じたジルコニアナノ粒子が、ナノダイヤモンド粒子群に混入してしまう。このようにしてナノダイヤモンド粒子群に混入するジルコニアナノ粒子は、ナノダイヤモンドの一次粒子と同程度の粒径を有する。加えて、ジルコニアは、強酸に対しても強アルカリに対しても難溶性である。そのため、ナノダイヤモンド粒子群に混入したジルコニアナノ粒子をナノダイヤモンド粒子群から除去することには、技術的困難を伴う。したがって、ジルコニアビーズを用いたビーズミリングを経たナノダイヤモンドやその分散液においては、求められるナノダイヤモンド純度を充足することができない場合がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであり、高いナノダイヤモンド純度を実現するのに適したナノダイヤモンド分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなナノダイヤモンド分散液を得るのに適したナノダイヤモンド分散液製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、ナノダイヤモンド分散液が提供される。この分散液は、分散媒と、粒径D50が10nm以下であり且つ分散媒中に分散しているナノダイヤモンド粒子とを含み、ナノダイヤモンド粒子の含有量に対するジルコニア含有量が50質量ppm以下である。
【0008】
ナノダイヤモンド粒子群に混入しているジルコニアを当該ナノダイヤモンド粒子群から除去することには、上述のように技術的困難を伴う。これに対し、本ナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド粒子の含有量に対するジルコニア含有量が50質量ppm以下に抑えられて実質的にジルコニアを含まないため、ナノダイヤモンドの高純度化の観点からジルコニアを除去する必要性に乏しい。高純度化を阻むジルコニアを実質的に含まないこのようなナノダイヤモンド分散液は、高いナノダイヤモンド純度を実現するのに適する。
【0009】
好ましくは、本ナノダイヤモンド分散液の分散媒は水である。このような構成は、ナノダイヤモンド粒子を分散媒中に安定して分散させるうえで好適である。
【0010】
好ましくは、本ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位は、−45〜−30mVである。このような構成は、本分散液におけるナノダイヤモンド粒子について安定分散化や安定分散状態の維持を図るうえで、好適である。本発明において、ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位とは、ナノダイヤモンド濃度が0.2質量%で25℃のナノダイヤモンド分散液におけるナノダイヤモンド粒子について測定される値とする。ナノダイヤモンド濃度0.2質量%のナノダイヤモンド分散液の調製のためにナノダイヤモンド分散液の原液を希釈する必要がある場合には、希釈液として超純水を用いる。
【0011】
好ましくは、本ナノダイヤモンド分散液のpHは4〜7の範囲にある。このような構成は、本分散液におけるナノダイヤモンド粒子について安定分散化や安定分散状態の維持を図るうえで、好適である。
【0012】
上述の爆轟法としては、いわゆる空冷式爆轟法といわゆる水冷式爆轟法とが知られているところ、本ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子は、好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子(空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子)である。空冷式爆轟法は、所定の冷媒が充填された密閉容器内で爆薬を爆発させる合成法であり、水冷式爆轟法は、水中で爆薬を爆発させる合成法である。空冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子は水冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子よりも一次粒子が小さい傾向にあるので、当該構成は、ナノダイヤモンド粒径の小さなナノダイヤモンド分散液を実現するうえで、好適である。
【0013】
本発明の第2の側面によると、ナノダイヤモンド分散液の製造方法が提供される。本方法は、精製工程と、化学的解砕工程と、遠心分離工程とを含む。精製工程では、ナノダイヤモンド粗生成物が精製される。この精製には、例えば、爆轟法等によって得られるナノダイヤモンド粗生成物から強酸を用いて金属酸化物を溶解・除去するための酸処理、および/または、酸化剤を用いてナノダイヤモンド粗生成物からグラファイトを除去するための酸化処理が含まれる。化学的解砕工程では、精製工程を経たナノダイヤモンドが化学的に解砕処理される。遠心分離工程では、化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液が遠心分離処理に付され、これによって得られる上清液が採取される。
【0014】
例えば爆轟法によって得られるナノダイヤモンドは、上述のように、得られる生成物にて先ずは一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。本方法では、そのようなナノダイヤモンド凝着体に対し、精製工程(例えば上記のような酸処理や酸化処理)において使用される化学種が例えば加熱条件下で作用するのに加え、化学的解砕工程において使用される化学種(例えば後記のようなNaOHやH22)が例えば加熱条件下で作用する。これにより、ナノダイヤモンド凝着体において少なくとも一部のナノダイヤモンド一次粒子間の凝着が化学的に解かれ、当該ナノダイヤモンド一次粒子がナノダイヤモンド凝着体から分離しやすくなる。遠心分離工程では、このようなナノダイヤモンドを含む溶液について遠心力の作用を利用して固液分離が図られる。すなわち、ナノダイヤモンド凝着体を主に含む沈降物と、ナノダイヤモンドの一次粒子をコロイド粒子として含む上清液とが、分離される。この上清液の採取により、ナノダイヤモンドの一次粒子が分散するナノダイヤモンド分散液が、製造されることとなる。
【0015】
本方法では、ナノダイヤモンド凝着体(二次粒子)からナノダイヤモンドの一次粒子を分離させるうえで、上述のような化学的解砕処理が行われる。ナノダイヤモンドの一次粒子を分離させるための解砕手法として、本方法では、ジルコニアビーズを用いた上述のビーズミリングは行われない。そのため、本方法によって製造されるナノダイヤモンド分散液は、高純度化を阻むジルコニアを実質的に含まない。本方法によって製造されるナノダイヤモンド分散液や、当該分散液から得られる紛体としてのナノダイヤモンド粒子について、ジルコニアの検出を試みたとしても、採用される検出法の検出限界を上回る量のジルコニアは検出されないことが想定される。
【0016】
以上のようなナノダイヤモンド分散液製造方法は、高いナノダイヤモンド純度を実現するのに適したナノダイヤモンド分散液を得るのに適する。
【0017】
好ましくは、上記方法における化学的解砕処理では、水酸化ナトリウム(NaOH)をナノダイヤモンドに作用させる。好ましくは、上記方法における化学的解砕処理では、過酸化水素(H22)をナノダイヤモンドに作用させる。これらの構成は、ナノダイヤモンドの凝着体(二次粒子)から一次粒子を分離しやすくするのに好適であり、従って、化学的解砕を進行させるうえで好適である。
【0018】
本発明の第2の側面に係るナノダイヤモンド分散液製造方法は、好ましくは、化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液のpHを遠心分離処理より前に調整する工程を更に含む。このような構成は、製造されるナノダイヤモンド分散液のpHを所望の範囲に設定するうえで好適である。例えば、当該pH調整工程において、化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液のpHを遠心分離処理より前に所定の酸性領域に調整することによって、製造されるナノダイヤモンド分散液のpHを4〜7の範囲に設定することも可能である。製造されるナノダイヤモンド分散液のpHを所望の範囲に設定することは、分散液中のナノダイヤモンド粒子について安定分散化や安定分散状態の維持を図るうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一の実施形態に係るナノダイヤモンド分散液の拡大模式図である。
図2】本発明の一の実施形態たるナノダイヤモンド分散液製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一の実施形態に係るナノダイヤモンド分散液たるND分散液10の拡大模式図である。ND分散液10は、ND粒子11と、分散媒12とを含み、ND分散液10中のND粒子11の含有量に対するジルコニア含有量が50質量ppm以下である。
【0021】
ND分散液10に含まれるND粒子11は、粒径D50(メディアン径)が10nm以下のナノダイヤモンド一次粒子であり、且つ、分散媒12中にて互いに離隔してコロイド粒子として分散している。ND粒子11の粒径D50は、好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下、更に好ましくは7nm以下である。例えば、ナノダイヤモンド含有透明部材を形成する際に透明樹脂等にナノダイヤモンドを添加するための材料としてND分散液10を用いる場合、ND粒子11の粒径D50が小さいほど、当該透明部材において高い透明性を実現するうえで好ましい傾向にある。一方、ND粒子11の粒径D50の下限は、例えば1nmである。本明細書では、一次粒子の粒径D50は、いわゆる動的光散乱法によって測定される値とする。
【0022】
ND分散液10におけるND粒子11の濃度(固形分濃度)は、例えば、0.1〜5質量%である。また、ND分散液10中のND粒子11の純度は、例えば98質量%以上である。ナノダイヤモンド分散液には、Na,Fe,Cr等が不純物として含まれる場合がある。
【0023】
ND分散液10に含まれるND粒子11のいわゆるゼータ電位は、例えば−45〜−30mVである。コロイド粒子たるND粒子11のゼータ電位は、分散媒12中でのND粒子11の分散安定性に影響を与えるところ、当該構成は、ND分散液10におけるND粒子11について安定分散化や安定分散状態の維持を図るうえで、好適である。本発明において、ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子のゼータ電位とは、ナノダイヤモンド濃度が0.2質量%で25℃のナノダイヤモンド分散液におけるナノダイヤモンド粒子について測定される値とする。ナノダイヤモンド濃度0.2質量%のナノダイヤモンド分散液の調製のためにナノダイヤモンド分散液の原液を希釈する必要がある場合には、希釈液として超純水を用いる。
【0024】
ND分散液10のpHは、例えば4〜7の範囲にある。このような構成は、ND分散液10におけるND粒子11について安定分散化や安定分散状態の維持を図るうえで、好適である。
【0025】
ND分散液10に含まれるND粒子11は、例えば爆轟法ナノダイヤモンド粒子(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子)である。爆轟法としては、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法とが知られているところ、ND粒子11は、好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子(空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド粒子)である。空冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子は、水冷式爆轟法ナノダイヤモンド粒子よりも、一次粒子が小さい傾向にあるので、ND粒子11の小さなND分散液10を実現するうえで好適である。
【0026】
ND分散液10に含まれる分散媒12は、ND分散液10においてND粒子11を適切に分散させるための媒体である。分散媒12としては、ナノダイヤモンドが溶解性を示し得る溶媒が好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN−メチルピロリドンが挙げられる。分散媒12としては、一種類の分散媒を用いてもよいし、二種類以上の分散媒を用いてもよい。ND粒子11の分散性の観点からは、分散媒12は、水、または、水を50質量%以上含む水系分散媒であるのが好ましい。
【0027】
従来の技術に関して上述したように、ナノダイヤモンド粒子群に混入しているジルコニアを当該ナノダイヤモンド粒子群から除去することには、技術的困難を伴う。これに対し、上記のND分散液10は、ND粒子11の含有量に対するジルコニア含有量が50質量ppm以下に抑えられて実質的にジルコニアを含まない。ND分散液10や、ND分散液10から得られる紛体としてのND粒子11について、ジルコニアの検出を試みたとしても、採用される検出法の検出限界を上回る量のジルコニアは検出されないことが想定される。そのため、ND分散液10においては、ナノダイヤモンドの高純度化の観点からジルコニアを除去する必要性に乏しい。高純度化を阻むジルコニアを実質的に含まないND分散液10は、高いナノダイヤモンド純度を実現するのに適する。このようなND分散液10は、例えば、各種の構造部材や、各種の光学部材、各種の放熱部材の作製にあたり、母材に対する添加剤としての高純度ナノダイヤモンド一次粒子を供給する材料として、使用することができる。
【0028】
図2は、ND分散液10を製造するための一の実施形態たるナノダイヤモンド分散液製造方法の工程図である。本方法は、精製工程S1と、化学的解砕工程S2と、pH調整工程S3と、遠心分離工程S4とを含む。本方法では、例えば空冷式爆轟法によって得られたナノダイヤモンド粗生成物を原料として用いることができる。空冷式爆轟法においては、例えば、爆薬と共に不活性ガスが充填された密閉容器内で爆薬を爆発させる。その際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってナノダイヤモンドが生成する。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。
【0029】
精製工程S1は、本実施形態では、原料たるナノダイヤモンド粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させる酸処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物には金属酸化物が含まれやすいところ、この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe,Co,Ni等の酸化物である。例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては、鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸処理では、一種類の強酸を用いてもよいし、二種類以上の強酸を用いてもよい。酸処理で使用される強酸の濃度は例えば1〜50質量%である。酸処理温度は例えば70〜150℃である。酸処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。
【0030】
精製工程S1は、本実施形態では、酸化剤を用いてナノダイヤモンド粗生成物(精製終了前のナノダイヤモンド凝着体)からグラファイトを除去するための酸化処理を含む。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれているところ、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、例えば水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ナノダイヤモンド粗生成物からグラファイトを除去することができる(酸化処理)。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩が挙げられる。酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3〜50質量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付されるナノダイヤモンド粗生成物100重量部に対して例えば300〜500重量部である。酸化処理温度は例えば100〜200℃である。酸化処理時間は例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。また、酸化処理は、グラファイトの除去効率向上の観点から、鉱酸の共存下で行うのが好ましい。鉱酸としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸化処理に鉱酸を用いる場合、鉱酸の濃度は例えば5〜80質量%である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。
【0031】
以上のような精製工程S1を経て精製された後であっても、例えば爆轟法ナノダイヤモンドは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。この凝着体から一次粒子を分離させるために、本方法では、次に化学的解砕工程S2が行われる。例えば水溶媒中で所定のアルカリおよび過酸化水素を作用させることにより、ナノダイヤモンド凝着体からナノダイヤモンド一次粒子を分離させて解砕を進行させることができる(化学的解砕処理)。この化学的解砕処理に用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム等が挙げられる。化学的解砕処理におけるアルカリの濃度は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜8質量%、更に好ましくは0.5〜5質量%である。化学的解砕処理における過酸化水素の濃度は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、更に好ましくは4〜8質量%である。化学的解砕処理において、処理温度は例えば40〜95℃であり、処理時間は例えば0.5〜5時間である。また、化学的解砕処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような化学的解砕処理の後、デカンテーションによって上澄みが除かれる。
【0032】
本方法では、次に、pH調整工程S3が行われる。pH調整工程S3は、上述の化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液のpHを後述の遠心分離処理より前に所定のpHに調整するための工程である。本工程では、デカンテーション後の沈殿液に酸やアルカリを加える。酸としては例えば塩酸を用いることができる。ナノダイヤモンドを含む溶液のpHを本工程で例えば2〜3に調整することによって、本方法によって製造されることとなるナノダイヤモンド分散液のpHを例えば4〜7の範囲に設定することが可能である。
【0033】
本方法では、次に、遠心分離工程S4が行われる。遠心分離工程S4は、上述の化学的解砕処理を経たナノダイヤモンドを含む溶液を遠心分離処理に付して所定の上清液を得るための工程である。具体的には、まず、上述の化学的解砕工程S2およびpH調整工程S3を経たナノダイヤモンド含有液について、遠心分離装置を使用して最初の遠心分離処理を行う。最初の遠心分離処理後の上清液は、淡い黄色透明である場合が多い。そして、遠心分離処理によって生じた沈殿物と上清液とを分けた後、沈殿物に超純水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して更なる遠心分離処理を行って固液分離を図る。加える超純水の量は、例えば、沈殿物の3〜5倍(体積比)である。遠心分離による固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理という一連の過程を、遠心分離処理後に黒色透明の上清液が得られるまで反復して行う。3回目以降の遠心分離処理で黒色透明の上清液が得られる場合、最初の遠心分離処理と黒色透明の上清液が得られる遠心分離処理との間に行われる遠心分離処理で得られる上清液は、無色透明である場合が多い。以上のようにして得られる黒色透明の上清液が、本方法によって製造されるナノダイヤモンド分散液(ND分散液10)である。本工程の各遠心分離処理における遠心力は例えば15000〜25000×gであり、遠心時間は例えば10〜120分である。また、黒色透明の上清液を分離取得した後に残る沈殿物については、上述の精製工程S1を経た別の固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)と合せて、或は単独で、上述の化学的解砕工程S2、pH調整工程S3、および遠心分離工程S4の一連の過程に再び供してもよい。
【0034】
例えば爆轟法によって得られるナノダイヤモンドは、上述のように、得られる生成物にて先ずは一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。上記のナノダイヤモンド分散液製造方法においては、ナノダイヤモンド凝着体に対し、精製工程S1において使用される化学種が加熱条件下で作用するのに加え、化学的解砕工程S2において使用される化学種が加熱条件下で作用する。これにより、化学的解砕工程S2において、ナノダイヤモンド凝着体にて少なくとも一部のナノダイヤモンド一次粒子間の凝着が化学的に解かれ、当該ナノダイヤモンド一次粒子がナノダイヤモンド凝着体から分離しやすくなる。遠心分離工程S4では、このようなナノダイヤモンドを含む溶液について遠心力の作用を利用した固液分離とその後の懸濁操作とが反復され、所定回数の遠心分離処理の後に、ナノダイヤモンド一次粒子の分散する黒色透明の上清液が採取される。このようにして、ナノダイヤモンドの一次粒子が分散するナノダイヤモンド分散液が製造されるのである。また、製造されたナノダイヤモンド分散液については、水分量を低減することによってナノダイヤモンド濃度を高めることができる。この水分量低減は、例えばエバポレーターを使用して行うことができる。
【0035】
本方法では、ナノダイヤモンド凝着体(二次粒子)からナノダイヤモンドの一次粒子を分離させるうえで、上述のような化学的解砕処理と懸濁操作を含む遠心分離処理とが行われる。ナノダイヤモンドの一次粒子を分離させるための解砕手法として、本方法では、ジルコニアビーズを用いた上述のビーズミリングは行われない。そのため、本方法によって製造されるナノダイヤモンド分散液は、高純度化を阻むジルコニアを実質的に含まない。本方法によって製造されるナノダイヤモンド分散液や、当該分散液から得られる紛体としてのナノダイヤモンド粒子について、ジルコニアの検出を試みたとしても、採用される検出法の検出限界を上回る量のジルコニアは検出されないことが想定される。
【0036】
以上のようなナノダイヤモンド分散液製造方法は、高いナノダイヤモンド純度を実現するのに適したナノダイヤモンド分散液を得るのに適する。また、このようなナノダイヤモンド分散液から必要に応じて水分を除去することによって、ナノダイヤモンドの粉体を得ることができる。この水分除去は、例えばエバポレーターを使用して行うことができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
以下のようにしてナノダイヤモンド分散液を製造した。まず、ナノダイヤモンド粗生成物に対して精製工程の酸処理を行った。具体的には、ナノダイヤモンド粗生成物たる空冷式爆轟法ナノダイヤモンド煤(ナノダイヤモンド一次粒子径;4〜8nm,株式会社ダイセル製)200gに6Lの10質量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0039】
次に、精製工程の酸化処理を行った。具体的には、デカンテーション後の沈殿液に、5Lの60質量%硫酸水溶液と2Lの60質量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上澄み液は着色しているところ、上澄み液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
【0040】
次に、化学的解砕工程を行った。具体的には、デカンテーション後の沈殿液に、1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液と1Lの30質量%過酸化水素水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った(化学的解砕処理)。この化学的解砕処理における加熱温度は50〜105℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。
【0041】
次に、pH調整工程を行った。具体的には、化学的解砕処理後のデカンテーションによって得られた沈殿液に塩酸を加え、沈殿液のpHを2.5に調整した。このようにして、pHを調整されたスラリーを得た。
【0042】
次に、遠心分離工程を行った。具体的には、上述のようにしてpH調整を経たスラリー(ナノダイヤモンド含有液)について、まず、遠心分離装置を使用して最初の遠心分離処理を行った。この遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は10分とした。最初の遠心分離処理後の上清液は、少し黄色い透明であった。本工程では、次に、最初の遠心分離処理によって生じた沈殿物と上清液とを分けた後、沈殿物に超純水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して2回目の遠心分離処理を行って固液分離を図った。加えた超純水の量は、沈殿物の4倍(体積比)とした。2回目の遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は60分とした。2回目の遠心分離処理後の上清液は、無色透明であった。本工程では、次に、2回目の遠心分離処理によって生じた沈殿物と上清液とを分けた後、沈殿物に超純水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して3回目の遠心分離処理を行って固液分離を図った。加えた超純水の量は、沈殿物の4倍(体積比)とした。3回目の遠心分離処理における遠心力は20000×gとし、遠心時間は60分とした。3回目の遠心分離処理後の上清液は、黒色透明であった。この後、固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に4倍量の超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理(遠心力20000×g,遠心時間60分)という一連の過程を、遠心分離処理後に黒色透明の上清液が得られる限り反復して行った。
【0043】
以上のようにして、黒色透明のナノダイヤモンド分散液を製造した。上記3回目の遠心分離処理後のナノダイヤモンド分散液のpHについてpH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」,アズワン株式会社製)を使用して確認したところ、6であった。本分散液のナノダイヤモンド固形分濃度は1.08質量%であった。本分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子の粒径を動的光散乱法によって測定した結果、粒径D50(メディアン径)は6.04nmであった。本分散液の一部についてナノダイヤモンド濃度0.2質量%への超純水による希釈を行った後に当該ナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンド粒子のゼータ電位を測定したところ、−42mV(25℃,pH6)であった。また、本分散液を乾固させて得られた乾燥粉体について、後記のICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法によってジルコニア含有量の測定を試みたが、検出されなかった。具体的には、検出限界(下限)50質量ppm以上の測定結果は得られなかった。
【0044】
〔比較例1〕
実施例1と同様のナノダイヤモンド粗生成物200gに対し、まず、実施例1と同様に酸処理および酸化処理を行った。次に、酸化処理後のデカンテーションによって得られた沈殿液に1Lの10質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理は、実施例1における上述の化学的解砕処理とは、過酸化水素水溶液を使用しない点で異なる。次に、冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。次に、デカンテーションによって得られた沈殿液に塩酸を加え、沈殿液のpHを2.5に調整した。次に、pH調整を経たスラリー(ナノダイヤモンド凝着体を含む)について、遠心分離工程を行った。具体的には、実施例1と同様にして、遠心分離処理による固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理という一連の過程を、反復して行った。しかしながら、黒色透明の上清液は得られなかった。
【0045】
〔比較例2〕
比較例1における遠心分離工程での最初の遠心分離処理によって得られた沈殿物に超純水を加えて懸濁し、固形分濃度6質量%のスラリー(60ml)を調製した。次に、水酸化ナトリウムの添加によってスラリーのpHを10に調整した。このスラリーを、ビーズミル装置(RMB型ビーズミル装置,アイメックス株式会社製)を使用して行うビーズミリングに供した。具体的には、装置の具備する200ml容量のビーズミルベッセル(内筒)に対し、60mlのジルコニアビーズ(ビーズ直径;0.03mm)と前記のスラリー(60ml)とを共に投入した後、装置を稼働させて物理的解砕処理を行った。本処理では、ビーズミルベッセルの回転軸回りの周速を5.9m/sとし、処理時間を2時間とした。この解砕処理の後、遠心力20000×gおよび遠心時間10分の条件で、遠心分離を利用した分級操作を行った。この遠心分級操作により、黒色透明のナノダイヤモンド分散液が得られた。
【0046】
比較例2のナノダイヤモンド分散液のpHは9.2であった。本分散液のナノダイヤモンド固形分濃度は5.82質量%であった。本分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子の粒径を動的光散乱法によって測定した結果、粒径D50(メディアン径)は4.3nmであった。本分散液の一部についてナノダイヤモンド濃度0.2質量%への超純水による希釈および希塩酸によるpH調整を行った後に当該ナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンド粒子のゼータ電位を測定したところ、−45mV(25℃,pH6)であった。また、本分散液を乾固させて得られた乾燥粉体について、後記のICP発光分光分析法によってジルコニア含有量を測定した結果、8600質量ppmであった。
【0047】
〈固形分濃度〉
ナノダイヤモンド分散液に関する上記の固形分濃度は、秤量した分散液3〜5gの当該秤量値と、当該秤量分散液から加熱によって水分を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)について精密天秤によって秤量した秤量値とに基づき、算出した。
【0048】
〈粒径〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記の粒径D50は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。測定に付されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度が0.5〜2.0質量%となるように超純水で希釈した後に、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
【0049】
〈ゼータ電位〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンド粒子に関する上記のゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した値である。測定に付されたナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンド濃度0.2質量%への超純水による希釈を行った後に超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。また、測定に付されたナノダイヤモンド分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」,アズワン株式会社製)を使用して確認した値である。
【0050】
〈ICP発光分光分析法〉
ナノダイヤモンド分散液から加熱によって水分を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)100mgについて、磁性るつぼに入れた状態で電気炉内にて乾式分解を行った。この乾式分解は、450℃で1時間の条件、これに続く550℃で1時間の条件、及びこれに続く650℃で1時間の条件にて、3段階で行った。このような乾式分解の後、磁性るつぼ内の残留物について、磁性るつぼに濃硫酸0.5mlを加えて蒸発乾固させた。そして、得られた乾固物を最終的に20mlの超純水に溶解させた。このようにして分析サンプルを調製した。この分析サンプルを、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」,リガク社製)によるICP発光分光分析に供した。本分析の検出下限値が50質量ppmとなるように前記分析サンプルを調製した。また、本分析では、検量線用標準溶液として、SPEX社製の混合標準溶液XSTC−22、および、関東化学社製の原子吸光用標準溶液Zr1000を、分析サンプルの硫酸濃度と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈調製して用いた。そして、本分析では、空のるつぼで同様に操作および分析して得られた測定値を、測定対象たるナノダイヤモンド分散液試料についての測定値から差し引き、試料中のジルコニア濃度を求めた。
【符号の説明】
【0051】
10 ND分散液
11 ND粒子
12 分散媒
S1 精製工程
S2 化学的解砕工程
S3 pH調整工程
S4 遠心分離工程
図1
図2