特許第6472729号(P6472729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 戸田建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000002
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000003
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000004
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000005
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000006
  • 特許6472729-検査ロボットの位置把握方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472729
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】検査ロボットの位置把握方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20190207BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G01B21/00 D
   G01C15/00 104Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-155954(P2015-155954)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-32527(P2017-32527A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 守正
(72)【発明者】
【氏名】稲井 慎介
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−136380(JP,A)
【文献】 特開平7−39035(JP,A)
【文献】 特開2009−98743(JP,A)
【文献】 特開2009−294713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/55020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
G01C 1/00− 1/14
G01C 5/00−15/14
B25J 1/00−21/02
G01D 1/00− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野縁および野縁受けとで仕切られた領域で構成される構造物の天井内部を走行し、搭載している撮影手段で前記天井内部の状況を撮影する検査ロボットの位置を把握する方法において、
前記検査ロボットが前記野縁若しくは野縁受けを乗越えたときに、検査ロボットの位置情報を更新すること、
を特徴とする検査ロボットの位置把握方法。
【請求項2】
検査ロボットが旧位置の領域から野縁または野縁受けを越えて隣接する領域に進出した際に、進出した領域が新しい領域である場合には、前記旧位置の領域に対して前記走行してきた方向に前記旧位置の領域に新しい領域のマス目を追加して、表示手段に表示するとともに、前記検査ロボットの前記新しい領域に係る更新位置情報を表示手段に表示すること、
を特徴とする請求項1に記載の検査ロボットの位置把握方法。
【請求項3】
検査ロボットが更新位置情報を表示手段に表示した後、所定の方向の内から既に来た方向を除いて新しい領域の方向を表示手段に表示して待機すること、若しくは、所定の方向の内から既に来た方向を除くと新しい領域の方向が存在しない場合にはその旨を表示手段に表示して待機すること、
を特徴とする請求項2に記載の検査ロボットの位置把握方法。
【請求項4】
検査ロボットが野縁を乗越えたか否か、若しくは、野縁受けを乗越えたか否かの制御装置における判断は、前記検査ロボットが野縁若しくは野縁受けを乗越える際の傾斜角度θの大小によって判断すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査ロボットの位置把握方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が入りにくい検査対象の場所を走行させる検査ロボットの位置把握方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、構造物の天井内部を対象に、車両型、多脚型および飛行型などの検査ロボットを用いて、補修すべき箇所などの有無やその箇所の位置を把握するための検査を行う際には、当該ロボットおよび撮影画像の位置把握が重要である。
【0003】
従来、検査ロボットの位置把握の方法には、例えば、GPS(全地球測位システム)を使用する方法があるが、構造物の室内ではGPSの電波が届かない場合がある。また、室内測位システムを使用する方法では、その室内測位システムの設備を室内に新たに設置する必要があり、コストが嵩んでしまう。更に、対象構造物にRFID(ID情報を埋め込んだRF(IC)タグを移動物体に取り付けて,その位置を電波などの近距離の無線通信によって情報のやり取りをして、リアルタイムに位置情報を把握する技術全般をいう)を設置する方法があるが、この方法でも設備のコストが嵩み、その設置に手間が掛かる。
【0004】
従来例として特許文献1には、GPSやジャイロ機能を搭載して検査ロボットの位置を認識し、自立移動できる例が記載されている(天井面では無く、構造物の壁面を検査対象にしている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−301665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の検査ロボットの位置把握方法においては、設備の設置の手間や、コストが掛かり、容易であって且つ低コストにして構造物の天井内部を検査することができないという課題がある。本発明に係る検査ロボットの位置把握方法は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る検査ロボットの位置把握方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、野縁および野縁受けとで仕切られた領域で構成される構造物の天井内部を走行し、搭載している撮影手段で前記天井内部の状況を撮影する検査ロボットの位置を把握する方法において、前記検査ロボットが前記野縁若しくは野縁受けを乗越えたときに、検査ロボットの位置情報を更新することである。
【0008】
前記検査ロボットが旧位置の領域から野縁または野縁受けを越えて隣接する領域に進出した際に、進出した領域が新しい領域である場合には、前記旧位置の領域に対して前記走行してきた方向に前記旧位置の領域に新しい領域のマス目を追加して、表示手段に表示するとともに、前記検査ロボットの前記新しい領域に係る更新位置情報を表示手段に表示することである。
【0009】
前記検査ロボットが更新位置情報を表示手段に表示した後、所定の方向の内から既に来た方向を除いて新しい領域の方向を表示手段に表示して待機すること、若しくは、所定の方向の内から既に来た方向を除くと新しい領域の方向が存在しない場合にはその旨を表示手段に表示して待機することである。
【0010】
更に、前記検査ロボットが野縁を乗越えたか否か、若しくは、野縁受けを乗越えたか否かの制御装置における判断は、前記検査ロボットが野縁若しくは野縁受けを乗越える際の傾斜角度θの大小によって判断することを含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の検査ロボットの位置把握方法によれば、既存の構造物の天井に簡便に適用できる。また、新たな設備の設置を必要としないのでコスト低減となる。検査ロボットが野縁若しくは野縁受けを乗越えていくだけなので周囲の環境によらず適用が可能である。
【0012】
格子状の野縁と野縁受けとに囲まれた領域に、新しい領域を追加してマップに表示するので、検査済み領域の天井マップが容易に作成できる。
【0013】
検査ロボットが未検査となっている新しい領域の方向を表示手段に表示するので、検査ロボットを次に向かわせる方向が瞬時に判り、コントロールしやすいものである。また、車台の傾斜角度により野縁を乗越えたのか、または、野縁受けを乗越えたのかが判るので、進行してきた方向に対して直交する方向に進むべきか、前進すべきかの判断が容易になり、移動制御が容易になる、と言う数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る検査ロボットの位置把握方法のフローチャート図である。
図2】同本発明の検査ロボットの位置把握方法により、表示手段において表示される天井内のマップが作成される様子を示す説明図である。
図3】同本発明の検査ロボットの位置把握方法により、表示手段において表示される天井内のマップが、図2に示す状態から新たな領域へ進出して作成されていることを示す説明図である。
図4】同本発明の検査ロボットの位置把握方法により、表示手段において表示される天井内のマップが作成された様子を示す説明図である。
図5】検査ロボットが野縁2を乗越える際の、検査ロボットの傾斜角度θ1を示す説明図(A)、同検査ロボットが野縁受け3を乗越える際の、検査ロボットの傾斜角度θ2を示す説明図(B)である。
図6】検査対象である構造物の格子状の天井を示す説明用斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る検査ロボットの位置把握方法は、図1に示すように、検査ロボットが野縁若しくは野縁受けを乗越えたか否かで位置情報を把握する方法である。
【実施例1】
【0016】
本願発明は、例えば、図6に示すように、検査対象の天井1において、野縁2および野縁受け3とで格子状に仕切られた領域(例えば、300×900mm程度)で構成される構造物の天井内部を、特殊車輪若しくはクローラによって走行するとともに、車台に搭載している撮影手段および投光手段で、前記天井1の内部の状況を撮影する検査ロボットの位置を把握する方法である。
【0017】
前記検査ロボットは、例えば、特殊車輪で全方向に移動できるとともに、車台に検査画像用の撮影手段としての小型カメラ、投光手段としてのLEDライト、通信手段としての無線送受信器(ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、ワイファイ(Wifi)など)、制御装置、車台の傾斜角度を測定する角度センサ、駆動用電源・電池などを備えている。
【0018】
前記特殊斜車輪は、車輪の表面に車軸に対して45°傾けた樽(バレル)によって覆われており、前後左右、回転、斜め45°方向への移動と、全方向移動が可能となっている(メカナムロボット,オムニロボット(市販品)のメカナムホイール、若しくはオムニホイール(登録商標)相当品)。
【0019】
前記小型カメラは、天井1の各領域を対象に検査画像として撮影するものであり、一例としてWebカメラ等を使用する。なお、撮影する画像は、前記領域の連続画像を撮影され、その画像は操作者の検査ロボット用制御装置であるパーソナルコンピュータ,スマートフォン等の表示手段であるディスプレイに表示される。なお、検査ロボットの走行状態を天井の入り口方向から撮影して、検査ロボットの走行状態を把握するための、走行用カメラが設けられる。この走行映像も前記ディスプレイに表示されるものである。
【0020】
前記検査ロボット用の制御装置を使用して、天井1内の検査ロボットの位置を把握する方法について説明する。天井1の入り口に走行用カメラを設置して、検査ロボットを天井1の一つの領域に設置する。検査ロボット側のスイッチをON状態にする。初期状態として、マップの作成のために、例えば、図2図3図4中の縦を列として、横を行とすると、N行×M列で、N/2行、M/2列の要素のみが「1」(検査済み)で、他の全ての要素が「0」(ゼロ:未検査)の配列を用意する。前記要素は、領域として検査済みか否かで要素を「1又は0」に区別したが、これに限らず、行と列とのそれぞれに、「1」若しくは「0」としても良い。
【0021】
前記初期状態の初期値は、行番のN/2行、列番号のM/2列とする。操作者側のパーソナルコンピュータ等から、検査画像および走行映像を操作者が見て、移動すべき方向の制御信号が制御装置から検査ロボットに送信される。
【0022】
図1に示すように、ステップ(STと略記、以下同じ)1で例えば、前進して移動する。次に、ST2で、検査ロボットが野縁2、若しくは、野縁受け3を乗越えたかどうか判断する。これには、図5に示すように、実際に、検査ロボットが乗越えるには、傾斜角度θ(θ1(野縁)<θ2(野縁受け))が生じるので、この角度センサで測定されるθの大きさを制御装置のCPU(中央演算装置)で判定して、野縁2若しくは野縁受け3のいずれかを乗越えた場合には、ST3で、行番号若しくは列番号を更新する。
【0023】
これを、図2を参照して説明すると、今現在、検査ロボットが存在している初期状態の領域1において、マップ作成用の配列の列番号(例えば配列の列数が全部でM列あるとすれば、初期値は配列の中央とするので、M列の中央の列「M/2」。また列数Mは天井面積から想定される数値よりはるかに大きい数値とする)と、行番号(例えば配列の行数が全部でN行あるとすれば、初期値は配列の中央とするので、N行の中央の行「N/2」。また行数Nは天井面積から想定される数値よりはるかに大きい数値とする)として、その要素が検査済みなので「1」に更新されている。これを、表示の仕方を「行、列、要素」とすると、「N/2,M/2,1」と表示する。
【0024】
前記領域1から、図2で示すように、一例として横線で示す野縁2を乗越えて、領域2へ検査ロボットが移動した場合、列番号は変わらないので、「M/2」のままであり、行番号は、更新されて一つ増えて、「(N/2)‐1」となる。
【0025】
尚、野縁2若しくは野縁受け3を乗越えていなければ、検査ロボットが移動して壁に衝突した場合であると考えられるので、ST2からST8へ飛び、検査ロボットの移動すべき移動方向を更新する。これは、例えば、図2の領域12から、図3に示す領域13へと移動させる場合であったり、同様に、図2において、領域9から領域10に移動する場合であったりする。
【0026】
次に、ST4で、列と行の要素を確認すると、要素が「0」である。そこで、ST5において、要素が「0」の未検査の領域なので、マップに1列目で、2行目の次の領域に、新規に長方形のマスと参照番号である、「2」を追加する。こうして、領域2が検査済みとして表示される。
【0027】
このように、検査ロボットが野縁2を乗越えていれば、野縁2と垂直方向に新規に長方形のマスと参照番号をマップに追加し、野縁受け3を乗越えていれば、野縁受け3と垂直方向に新規に長方形のマスと参照番号をマップに追加する。尚、乗越えた先の領域において、行番号・列番号のいずれか一つの要素が「1」であれば、検査済みの領域なので、ST7へ飛んで検査ロボットの位置を更新する。
【0028】
そして、ST6で、領域2に移動したので、表示に関して、「(N/2) ‐1,M/2,1」に更新する。そして、ST7で検査ロボットの位置を、領域2に更新する。その位置情報を表示手段であるディスプレイに表示する。
【0029】
次に、ST8で、検査ロボットの移動する方向を、操作者がディスプレイの走行映像を確認して、例えば、前進方向が壁であれれば壁に衝突しないように、左・右方向のいずれかの未検査領域に移動するように、移動方向を指示するものである。
【0030】
このようにして、検査ロボットの移動を繰り返して行い、図2乃至図4に示すように、天井1の格子状の領域1、2,3…を検査するものである。図4に示すように、領域が必ずしも順番に並んでいるわけではないものであり、例えば、領域3へ移動した後、仮に、移動先を自動プログラム化すれば、前方向と右方向へは行かずに、左方向に移動することになる。
【0031】
しかしながら、次の検査する対象の領域4を操作者が決定し、領域1に検査ロボットを一端戻して、それから、位置更新して、野縁受け3を乗越えさせて、未検査の領域4に移動させる。操作者が検査したい領域がある場合には、自動プログラムで走行させないで、移動方向を操作者から直接指示するようにするのが好ましい。
【0032】
各領域内での検査ロボットは、小型カメラを上下方向に回転移動させ、LEDライトで領域内を照らしながら連続して検査画像を撮るとともに、検査ロボットの車台を特殊車輪によって全方向に移動させることで、領域内を隈無く撮影できる。この連続した検査画像から、天井部材5のめくれ等の補修箇所を静止画像で取得し、それを印刷するなどして、天井内部を検査するのである。
【0033】
前記検査ロボットの天井1内での位置が、当該検査ロボットが前記野縁2、若しくは、野縁受け3を乗越えたときに、検査ロボットの位置情報が更新されて、参照すべき領域の番号が把握されて、位置把握できるものである。
【0034】
なお、検査ロボットが更新位置情報を表示手段に表示した後、所定の方向の内から既に来た方向を除いて新しい領域の方向を表示手段に表示して待機すること、若しくは、所定の方向の内から既に来た方向を除くと新しい領域の方向が存在しない場合には、その旨を表示手段に表示して待機するように、プログラムすることができる。それにより、操作者の検査ロボットを移動させるべき方向の判断も迅速にできる。
【0035】
前記検査ロボットは、駆動電源を有して走行するので、約1時間ほど自由に走行させることができ、電源・信号等のワイヤ等を引きずらないので、検査ロボットに対する負担が軽減され、走行性能が向上し検査作業が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る検査ロボットの位置把握方法は、格子状の天井の様子を検査する場合に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 検査ロボットの位置把握を把握する検査対象の天井、
2 野縁、
3 野縁受け、
4 吊りボルト、
5 天井部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6