特許第6472731号(P6472731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472731
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】負荷変調回路、及び、半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/02 20060101AFI20190207BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20190207BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20190207BHJP
【FI】
   H04B5/02
   H02J50/12
   H02J50/80
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-166573(P2015-166573)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-46137(P2017-46137A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】南 一保
(72)【発明者】
【氏名】相澤 裕俊
【審査官】 浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−111968(JP,A)
【文献】 特開2011−040890(JP,A)
【文献】 特開2014−171278(JP,A)
【文献】 特開2013−141387(JP,A)
【文献】 特開2005−267643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H04B 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線にて供給された電力を受電するコイルの端部に第1の端部が接続されたコンデンサと、
前記コンデンサの第2の端部を基準電位に接続するスイッチ素子と、
前記スイッチ素子をオン,オフ制御する第一の制御部と、
前記コンデンサに蓄積されている電荷量を制御する第二の制御部と、
を有し、前記第二の制御部は、前記スイッチ素子がオフに切り替えられると、前記コイルに流れる交流電流を整流して出力する同期整流回路のローサイドスイッチ素子がオンするタイミングと同期して前記スイッチ素子をオンに切り替えて前記コンデンサに蓄積されている電荷を放電する、負荷変調回路。
【請求項2】
前記スイッチ素子は、MOSトランジスタであり、前記第二の制御部は、前記MOSトランジスタをオンに切り替えて前記コンデンサに蓄積されている電荷を放電する、請求項1に記載の負荷変調回路。
【請求項3】
無線にて供給された電力を受電するコイルの端部に第1の端部が接続されたコンデンサの第2の端部を基準電位に接続する第1のMOSトランジスタと、
前記コイルのインピーダンスを制御する第1の制御信号と、前記コイルに流れる交流電流を整流して出力する同期整流回路のローサイドスイッチ素子の動作と同期する第2の制御信号とが入力され、出力が前記第1のMOSトランジスタのゲート電極に接続されたオア回路と、を有する半導体装置。
【請求項4】
前記同期整流回路のローサイドスイッチ素子は第2のMOSトランジスタであり、前記第2の制御信号は、前記第2のMOSトランジスタのゲート電極に入力される信号に同期した信号である、請求項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、負荷変調回路、及び、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コイル間の電磁結合により非接触で電力伝送を行う、いわゆる無線給電技術が普及しつつある。無線で電力を伝送する方法としては種々の方法が従来から提案されているが、2つの隣接するコイルの片方に電流を流すと発生する磁束を媒介として、隣接したもう片方に起電力が発生する電磁誘導の原理を用いた、いわゆる「電磁誘導方式」による無線給電技術が近年注目されており、同方式による無線給電システムが搭載された製品も実用化され始めている。
【0003】
電磁誘導方式による無線給電システムでは、受電側から送電側への単方向通信が行われる。受電側のアンテナコイルに負荷変調回路を接続し、同回路の負荷を変動させることで、受電側の負荷容量を変化させる。これにより、送電側のコイル電圧の振幅を変化させ、2値ASK(Amplitude shift keying)を実現する。一般的に、キャパシタを用いた負荷変調回路では、トランジスタをスイッチング素子として用い、同キャパシタへの電荷の蓄積と放出をコントロールすることで、受電側のトータルの負荷容量を変化させる。
【0004】
スイッチング素子として用いるトランジスタは、通常、C-DMOS (Complementary and Doublediffused MOS) プロセスを用いて、周辺回路と同一チップに組み込まれるので、高耐圧のLDMOS (Laterally Diffused MOS) で構成される。このような構成においては、負荷変調のために用いるキャパシタが蓄電された状態で、かつ、同トランジスタがオフ状態であり、ドレイン電圧が基準電圧(GND)から順方向電圧以上に降下する場合には、基板と同トランジスタのウェル拡散領域との間に形成された寄生ダイオードが、キャパシタの放電パスとなる。
【0005】
しかしながら、C-DMOS(Complementary and Doublediffused MOS)プロセスを用いてトランジスタを形成した場合、同トランジスタと周辺回路とが電気的に完全に分離されないため、寄生ダイオードによる放電電流により、基板に接した近傍の拡散領域(ウェル拡散領域と同じ導電型の拡散領域)をコレクタとした寄生バイポーラトランジスタが動作してしまう。従って、コレクタ電流の供給源となる近傍の拡散領域を使用している周辺回路が誤動作する可能性が高まるという問題がある。また、同拡散領域に高電位が印加されている場合には、寄生バイポーラトランジスタのコレクタ電流による消費電力が甚大となり、発熱量が増加してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−135198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本実施形態は、周辺回路の誤動作を防止することができる、負荷変調回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の負荷変調回路は、無線にて供給された電力を受電するコイルの端部に第1の端部が接続されたコンデンサと、前記コンデンサの第2の端部を基準電位に接続するスイッチ素子と、前記スイッチ素子をオン,オフ制御する第一の制御部と、前記コンデンサに蓄積されている電荷量を制御する第二の制御部と、を有し、前記第二の制御部は、前記スイッチ素子がオフに切り替えられると、前記コイルに流れる交流電流を整流して出力する同期整流回路のローサイドスイッチ素子がオンするタイミングと同期して前記スイッチ素子をオンに切り替えて前記コンデンサに蓄積されている電荷を放電する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係わる負荷変調回路を用いた無線給電アンテナ装置の構成を説明する概略ブロック図。
図2図1に示す無線給電アンテナ装置の各点における信号波形を示す図。
図3】負荷変調制御用トランジスタM5及び周辺回路の構造を説明する断面図。
図4】本発明の実施形態に係わる負荷変調回路を用いた無線給電アンテナ装置の別の構成を説明する概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係わる負荷変調回路を用いた無線給電アンテナ装置の構成を説明する概略ブロック図である。無線給電アンテナ装置は、受電アンテナコイルL1と、直列共振容量C1と、並列負荷容量C2と、同期整流回路2と、負荷変調回路1と、全波整流平滑容量C3とから主に構成されている。同期整流回路2は、受電アンテナコイルL1で受信する交流電圧の負側の電圧を反転させ、入力電圧の絶対値を出力する回路である。負荷変調回路1は、受電アンテナコイルL1のインピーダンスを変化させる回路であり、受電アンテナコイルL1で受信する交流電圧の振幅を変化させる。全波整流平滑容量C3は、同期整流回路2によって全波整流された脈流電圧の脈動成分を減らし、直流電圧を取り出すための容量である。
【0012】
受電アンテナコイルL1の一端は、同期整流回路2の一方の入力端子LX1に接続されている。また、受電アンテナコイルL1の他端は、直列共振容量C1を介して、同期整流回路2の他方の入力端子LX2に接続されている。また、並列負荷容量C2は、直列接続された受電アンテナコイルL1と直列共振容量C1に並列に接続されている。すなわち、並列負荷容量C2の一端は、同期整流回路2の一方の入力端子LX1に接続されており、他端は整流回路2の他方の入力端子LX2に接続されている。
【0013】
同期整流回路2は、4つの同期整流用トランジスタM1、M2、M3、M4と、4つのコンパレータ21、22、31、32と、2つのインバータINV1、INV2と、2つのレベルシフト回路11、12から構成される、フルブリッジ同期整流回路である。ハイサイドスイッチである同期整流用トランジスタM1、M3はP型のMOSトランジスタで構成され、ローサイドスイッチである同期整流用トランジスタM2、M4はN型のMOSトランジスタで構成されている。
【0014】
同期整流用トランジスタM1、M2は、それぞれのドレインが入力端子LX1に接続されている。同期整流用トランジスタM3、M4は、それぞれのドレインが入力端子LX2に接続されている。また、同期整流用トランジスタM1、M3は、それぞれのソースが全波整流平滑容量C3の一端に接続されている。同期整流用トランジスタM2、M4は、それぞれのソースがGND(グランド)に接続されている。
【0015】
コンパレータ21は、反転入力に同期整流回路2の一方の入力端子LX1が接続されており、非反転入力にGNDが接続されている。また、コンパレータ21の出力は、レベルシフト回路12、インバータINV2を介して同期整流用トランジスタM3のゲートに入力される。すなわち、同期整流用トランジスタM3は、入力端子LX1の電位がGNDより低下した場合にオンになるよう、コンパレータ21により制御される。
【0016】
コンパレータ22は、反転入力に同期整流回路2の一方の入力端子LX2が接続されており、非反転入力にGNDが接続されている。また、コンパレータ22の出力は、レベルシフト回路11、インバータINV1を介して同期整流用トランジスタM1のゲートに入力される。すなわち、同期整流用トランジスタM1は、入力端子LX2の電位がGNDより低下した場合にオンになるよう、コンパレータ22により制御される。
【0017】
コンパレータ31は、反転入力に同期整流回路2の一方の入力端子LX1が接続されており、非反転入力にGNDが接続されている。また、コンパレータ31の出力は同期整流用トランジスタM2のゲートに入力される。すなわち、同期整流用トランジスタM2は、入力端子LX1の電位がGNDより低下した場合にオンになるよう、コンパレータ31により制御される。
【0018】
コンパレータ32は、反転入力に同期整流回路2の他方の入力端子LX2が接続されており、非反転入力にGNDが接続されている。また、コンパレータ32の出力は同期整流用トランジスタM4のゲートに入力される。すなわち、同期整流用トランジスタM4は、入力端子LX2の電位がGNDより低下した場合にオンになるよう、コンパレータ32により制御される。
【0019】
このように、コンパレータ21、22、31、32は、入力端子LX1とLX2の電位を比較し、GNDから受電アンテナコイルL1を通り全波整流平滑容量C3に達する経路のうち、受電アンテナコイルL1で受信した交流電流の流れの向きに沿った経路のインピーダンスが最も小さくなるように、同期整流用トランジスタM1、M2、M3、M4のオン・オフのタイミングを制御する。
【0020】
すなわち、入力端子LX1の電位が入力端子LX2の電位よりも高い場合、同期整流用トランジスタM1、M4をオンに、同期整流用トランジスタM2、M3をオフに制御することで、同期整流用トランジスタM4のソースに接続されたGNDから、同期整流用トランジスタM4、直列共振容量C1、受電アンテナコイルL1、同期整流用トランジスタM1を介して全波整流平滑容量C3に電荷を蓄積させる。また、入力端子LX2の電位が入力端子LX1の電位よりも高い場合、同期整流用トランジスタM2、M3をオンに、同期整流用トランジスタM1、M4をオフに制御することで、同期整流用トランジスタM2のソースに接続されたGNDから、同期整流用トランジスタM2、受電アンテナコイルL1、直列共振容量C1、同期整流用トランジスタM3を介して全波整流平滑容量C3に電荷を蓄積させる。
【0021】
なお、コンパレータ21、22、31、32は、それぞれ入力にオフセット電圧が設定されており、同期整流用トランジスタM1、M2、M3、M4のオン・オフのタイミングが調整されている。
【0022】
全波整流平滑容量C3の一端は、同期整流用トランジスタM1、M3のソースが接続されており、他端はGNDが接続されている。受電アンテナコイルL1に誘起された交流電流が同期整流回路2によって全波整流され、全波整流平滑容量C3に蓄電される。
【0023】
負荷変調回路1は、受電アンテナコイルL1のインピーダンスを変化させるコンデンサとしての2つの負荷調整用容量C4、C5と、負荷変調制御回路とで構成されている。負荷変調制御回路は、2つの負荷変調制御用トランジスタM5、M6と、2つのオア回路OR1、OR2とから構成されている。負荷調整用容量C4、C5と受電アンテナコイルL1とを接続するスイッチとしての負荷変調制御用トランジスタM5、M6は、N型のMOSトランジスタで構成されている。
【0024】
負荷調整用容量C4の一端は、同期整流回路2の一方の入力端子LX1に接続されている。
また、負荷調整用容量C4の他端は、負荷変調制御用トランジスタM5のドレインに接続されている。
【0025】
負荷調整用容量C5の一端は、同期整流回路2の他方の入力端子LX2に接続されている。
また、負荷調整用容量C5の他端は、負荷変調制御用トランジスタM6のドレインに接続されている。
【0026】
負荷変調制御用トランジスタM5、M6のソースはGNDに接続されている。なお、負荷変調制御用トランジスタM5、M6のソースとGNDとの間にプルダウン抵抗を挿入してもよい。
【0027】
第一及び第二の制御部としてのオア回路OR1は、コンパレータ31の出力と、負荷変調制御信号COMとが入力される。オア回路OR1の出力は、負荷変調制御用トランジスタM5のゲートに入力される。なお、負荷変調制御信号COMは、負荷変調回路による受電アンテナコイルL1の並列負荷容量値の制御のオン・オフを切り替える信号である。負荷変調制御信号COM=”H”のときに負荷変調を行い、負荷変調制御信号COM=”L”のときには負荷変調を行わない。
【0028】
同じく、第一及び第二の制御部としてのオア回路OR2は、コンパレータ32の出力と、負荷変調制御信号COMとが入力される。オア回路OR2の出力は、負荷変調制御用トランジスタM6のゲートに入力される。
【0029】
負荷変調制御信号COM=”H”のとき、オア回路OR1、OR2の出力は”H”となるので、負荷変調制御用トランジスタM5、M6がオンする。すると、負荷調整用容量C4、C5が並列負荷容量C2と並列接続されるので、受電アンテナコイルL1の並列負荷容量値が変化する。すなわち、負荷変調制御用トランジスタM5、M6がオフの場合、受電アンテナコイルL1の並列負荷容量値はC2である。一方、負荷変調制御用トランジスタM5、M6がオンの場合、受電アンテナコイルL1の並列負荷容量値はC2+(C4+C5)/(C4×C5)となり、(C4+C5)/(C4×C5)の分だけ容量値が変化する。このように、受電アンテナコイルL1の並列負荷容量値が変化することにより、受電アンテナコイルL1で受信する交流信号の振幅が変化するため、電磁結合されている送電アンテナコイル側へのASK通信が可能となる。
【0030】
一方、負荷変調制御信号COM=”L”のとき、オア回路OR1、OR2の出力はコンパレータ31、32の出力と同期する。すなわち、負荷変調制御用トランジスタM5は、入力端子LX1側に接続されている同期整流用トランジスタM2と同期してオン・オフし、負荷変調制御用トランジスタM6は、入力端子LX2側に接続されている同期整流用トランジスタM4と同期してオン・オフする。
【0031】
次に、負荷変調時における負荷調整用容量C4、C5の充放電動作について説明する。なお、負荷調整用容量C5及び負荷変調制御用トランジスタM6の動作は、負荷調整用容量C4及び負荷変調制御用トランジスタM5の動作と同一であるので、ここでは負荷調整用容量C4の充放電動作について説明する。図2は、図1に示す無線給電アンテナ装置の各点における信号波形を示す図である。図2には、入力端子LX1の電位、負荷変調制御信号COM、コンパレータ31の出力信号、オア回路OR1の出力信号、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位、の各波形を示している。
1)負荷変調制御信号COM = ”L” の場合(負荷変調を行う前の状態)
a)入力端子LX1から電流が流出している場合
入力端子LX1の電位VLX1(L)は、以下に示す(1)式で表される。
【0032】
VLX1(L) = GND − Ichg × Ron(M2) … (1)式
(1)式において、Ichgは充電電流、Ron(M2)は同期整流用トランジスタM2のオン抵抗を表す。負荷変調制御信号COM = ”L”なので、負荷変調制御用トランジスタM5のオン・オフを制御するオア回路OR1の出力値、及び、出力値が”H”→”L”、”L”→”H”に切り替わるタイミングとは、コンパレータ31の出力値、及び、出力値が”H”→”L”、”L”→”H”に切り替わるタイミングと等しくなる。すなわち、同期整流用トランジスタM2に同期して負荷変調制御用トランジスタM5がオン・オフする。
【0033】
入力端子LX1から電流が流出している場合、コンパレータ31の出力は”H”となり同期整流用トランジスタM2がオンの状態になる。オア回路OR1の出力も ”H” になり、負荷変調制御用トランジスタM5はオンの状態になるので、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)は0Vに収束する。従って、負荷調整用容量C4の充電電圧VC4は、以下に示す(2)式で表される。
【0034】
VC4 = GND − VLX1(L) = Ichg × Ron(M2) … (2)式
b)入力端子LX1に電流が流入している場合
入力端子LX1の電位VLX1(H)は、以下に示す(3)式で表される。
【0035】
VLX1(H) = VC3 + Ichg × Ron(M1) … (3)式
(3)式において、VC3は全波整流平滑容量C3に充電された電圧、Ron(M1)は同期整流用トランジスタM1のオン抵抗を表す。入力端子LX1に電流が流入している場合、コンパレータ31の出力は”L”となり同期整流用トランジスタM2がオフの状態になる。オア回路OR1の出力も ”L” になり、負荷変調制御用トランジスタM5はオフの状態になるので、負荷調整用容量C4は放電せずに(2)式に示す充電電圧VC4を維持する。すなわち、負荷変調制御信号COM = ”L”の期間、一旦Ichg × Ron(M2)に充電されると、負荷調整用容量C4はその充電電圧を維持し続ける。
【0036】
なお、このとき、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)はVLX1(H)+VC4であるので、VLX1(H)よりもIchg × Ron(M2)だけ高い電位を維持する。
2)負荷変調制御信号COM = “L” → ”H” の場合(負荷変調ありに切り替えた状態)
負荷変調制御信号COM = ”H”になると、負荷変調制御用トランジスタM5のオン・オフを制御するオア回路OR1の出力は、コンパレータ31の出力に係わらず、常に”H”になり、負荷変調制御用トランジスタM5は常にオンの状態になるので、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)は0Vに収束する。
a)入力端子LX1に電流が流入している場合
この時、入力端子LX1の電位はVLX1(H)であるので、負荷調整用容量C4は充電を開始し、その充電電圧VC4は、以下に示す(4)式で表される値に収束する。
【0037】
VC4 = VLX1(H) − VD(M5) = VLX1(H) … (4)式
b)入力端子LX1から電流が流出している場合
この時、入力端子LX1の電位はVLX1(L)であるので、負荷調整用容量C4は放電を開始し、その充電電圧VC4は、以下に示す(5)式で表される値に収束する。
【0038】
VC4 = VD(M5) − VLX1(L) = −VLX1(L) … (5)式
このように、入力端子LX1の電流方向により、負荷調整用容量C4は充放電を繰り返す。この時、負荷変調制御用トランジスタM5は常にオンの状態のため、負荷調整用容量C4の充放電電流IC4は、負荷変調制御用トランジスタM5のオン抵抗により制限されている。
3)負荷変調制御信号COM = “H” → ”L” の場合(負荷変調なしに切り替えた状態)
負荷変調制御信号COM = ”L”になると、負荷変調制御用トランジスタM5のオン・オフを制御するオア回路OR1の出力は、コンパレータ31の出力と等しくなる。すなわち、同期整流用トランジスタM2に同期して負荷変調制御用トランジスタM5がオン・オフする。負荷変調制御信号COMが “H” から ”L”に切り替わる時、入力端子LX1に電流が流入している場合、コンパレータ31の出力は”L”となり同期整流用トランジスタM2がオフの状態になる。従って、オア回路OR1の出力も ”L” になり、負荷変調制御用トランジスタM5はオフの状態になる。
【0039】
この時、入力端子LX1の電位はVLX1(H)であるので、負荷調整用容量C4の充電電圧VC4は、(4)式で表されるように、VLX1(H)である。
【0040】
その後、入力端子LX1から電流が流出すると、入力端子LX1の電位はVLX1(L)に変化するため、負荷調整用容量C4は放電を開始する。
【0041】
従来の負荷変調回路においては、負荷変調制御信号COM = ”L”の間、負荷変調制御用トランジスタM5はオフである。従って、負荷調整用容量C4は放電することができず、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)はVLX1(L) − VLX1(H)まで降下することになる。
【0042】
ここで、負荷変調制御用トランジスタM5は、通常、C-DMOSプロセスを用いて、周辺回路と同一チップに組み込まれるので、高耐圧のLDMOSで構成される。図3は、負荷変調制御用トランジスタM5及び周辺回路の構造を説明する断面図である。図3に示すように、負荷変調制御用トランジスタM5は、p型の半導体基板(Psub)100に注入されたn型ウェル(Deep Nwell)101に形成されている。
【0043】
n型ウェル(Deep Nwell)101の上部には、p型のボディ拡散領域(Pwell)102とn型の拡散領域(Nwell)103とが、所定距離だけ離間した位置に形成されている。p型のボディ拡散領域(Pwell)102の上部には、高濃度のp型バックゲート拡散領域(P+)104と高濃度のn型ソース拡散領域(N+)105とが互いに接するように形成されている。p型バックゲート拡散領域(P+)104にはバックゲート電極(BG)106が接続されており、n型ソース拡散領域(N+)105にはソース電極107がそれぞれ接続されている。n型の拡散領域(Nwell)103の上部には、高濃度のn型ドレイン拡散領域(N+)108が形成されており、n型ドレイン拡散領域(N+)108にはドレイン電極(D)109が接続されている。半導体基板100の表面には、p型のボディ拡散領域(Pwell)102の一部とn型ウェル(Deep Nwell)101、及びn型の拡散領域(Nwell)103の一部とを覆うように、図示しないゲート酸化膜を介してゲート電極(G)110が形成されている。
【0044】
ソース電極107とバックゲート電極106は、GNDに接続されている。ドレイン電極109は、負荷調整用容量C4の一端に接続されている。負荷調整用容量C4の他端は入力端子LX1に接続されている。ゲート電極110はオア回路OR1に接続されており、オア回路OR1からの出力信号が入力される。
【0045】
このような構成においては、n型ドレイン拡散領域(N+)108からn型の拡散領域(Nwell)103、n型ウェル(Deep Nwell)101につながるn型の拡散領域と、半導体基板100との間に寄生ダイオードが形成されており、負荷変調のために用いる負荷調整用容量C4が蓄電された状態で、かつ、負荷変調制御用トランジスタM5がオフ状態であり、ドレイン電圧が基準電圧(GND)から順方向電圧以上に降下する場合には、この寄生ダイオードが負荷調整用容量C4の放電パスとなる。
【0046】
このときの負荷調整用容量C4の放電電流IC4は、以下に示す(6)式で表される。
【0047】
(6)式において、VFは、半導体基板100とn型ドレイン拡散領域(N+)108との間に形成されている寄生ダイオードの順方向電圧、Rpは、GNDから負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)の間の寄生抵抗を表す。
【0048】
このときの放電電流IC4は、寄生抵抗でのみ制限されるため、n型ドレイン拡散領域(N+)108からn型の拡散領域(Nwell)103、n型ウェル(Deep Nwell)101につながるn型の拡散領域と、半導体基板100との間に形成された寄生ダイオードの電流能力限界値にまで達する可能性がある。
【0049】
負荷調整用容量C4の放電により、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)がGND−VFに達すると、放電パスがなくなるため、負荷調整用容量C4の充電電圧VC4は、以下に示す(7)式の値で固定される。
【0050】
VC4 = VLX1(L) − VD(M5)
= GND − Ichg × Ron(M2) − (GND −VF)
= VF − Ichg × Ron(M2) … (7)式
図3に示すように、通常、負荷変調制御用トランジスタM5はC-DMOSプロセスを用いて、高耐圧のLDMOSで構成される。従って、高電位電源Paや周辺トランジスタMaなどの周辺回路と完全に電気的に分離されておらず、半導体基板100の深部領域では導通する可能性がある。
【0051】
上述のように、負荷変調制御信号COMを“H”から”L”に切り替える場合、n型ドレイン拡散領域(N+)108からn型の拡散領域(Nwell)103、n型ウェル(Deep Nwell)101につながるn型の拡散領域と、半導体基板100との間に形成された寄生ダイオードによる放電電流により、n型ウェル(Deep Nwell)101をエミッタ、半導体基板100をベース、半導体基板100に接しており、負荷変調制御用トランジスタM5の近傍に位置する周辺回路のn型拡散領域(Deep Nwell)111、112をコレクタとする寄生バイポーラトランジスタが動作してしまう。従って、高電位電源Paにおいて、n型拡散領域(Deep Nwell)111に高電位が印加されている場合、寄生バイポーラトランジスタのコレクタ電流Ic1による消費電力が甚大となり、発熱量が増大してしまう可能性がある。また、寄生バイポーラトランジスタのコレクタ電流Ic2を供給する周辺トランジスタMaも、誤動作する可能性がある。
【0052】
一方、本実施形態の負荷変調回路においては、入力端子LX1から電流が流出すると、入力端子LX1の電位はVLX1(L)に変化するため、負荷調整用容量C4は放電を開始する。このとき、同期整流用トランジスタM2がオンするので、これに同期して負荷変調制御用トランジスタM5もオンする。従って、負荷調整用容量C4の放電電流IC4は、負荷変調制御用トランジスタM5のオン抵抗により制限され、以下に示す(8)で表される。
【0053】
最終的に、負荷変調制御用トランジスタM5のドレイン電位VD(M5)は0Vに収束し、以降、1)〜3)の各状態を繰り返す。
【0054】
このように、本実施形態によれば、負荷調整用容量C4の放電電流IC4が負荷変調制御用トランジスタM5のオン抵抗により制限された電流値となる。すなわち、負荷調整用容量C4が放電を開始すると共に、同期整流用トランジスタM2に同期して負荷変調制御用トランジスタM5がオンになるため、負荷変調制御用トランジスタM5を介してGNDへの放電パスが確保される。同様に、負荷調整用容量C5が放電を開始すると共に、同期整流用トランジスタM4に同期して負荷変調制御用トランジスタM6がオンになるため、負荷変調制御用トランジスタM6を介してGNDへの放電パスが確保される。
【0055】
従って、n型ドレイン拡散領域(N+)108からn型の拡散領域(Nwell)103、n型ウェル(Deep Nwell)101につながるn型の拡散領域と、半導体基板100との間に形成された寄生ダイオードによる放電を回避することができる。これにより、n型ウェル(Deep Nwell)101をエミッタ、半導体基板100をベース、負荷変調制御用トランジスタM5の近傍に位置する周辺回路のn型拡散領域(Deep Nwell)111、112をコレクタとする寄生バイポーラトランジスタが動作しないため、コレクタ電流の供給源となる近傍の拡散領域を使用している周辺回路が誤動作したり、発熱量が増加したりすることを防止することができる。
【0056】
なお、同期整流回路2は、4つの同期整流用トランジスタM1、M2、M3、M4に換えて、4つのダイオードD1、D2、D3、D4で構成してもよい。図4は、本発明の実施形態に係わる負荷変調回路を用いた無線給電アンテナ装置の別の構成を説明する概略ブロック図である。図4に示すように、同期整流回路2´は、4つのダイオードD1、D2、D3、D4で構成されるフルブリッジ同期整流回路である。図1に示す同期整流回路2では、4つの同期整流用トランジスタM1、M2、M3、M4のオン・オフを切り替えるために、4つのコンパレータ21、22、31、32と、2つのインバータINV1、INV2と、2つのレベルシフト回路11、12で構成されるゲート電圧調整回路を有していたが、図4に示すダイオード型の同期整流回路2´では同回路は不要である。
【0057】
同期整流用のダイオードD1のアノードと同期整流用のダイオードD2のカソードは入力端子LX1に接続されている。同期整流用のダイオードD3のアノードと、同期整流用のダイオードD4のカソードは、入力端子LX2に接続されている。また、同期整流用のダイオードD1、D3は、それぞれのカソードが全波整流平滑容量C3の一端に接続されている。同期整流用のダイオードD2、D4は、それぞれのアノードがGND(グランド)に接続されている。
【0058】
すなわち、入力端子LX1の電位が入力端子LX2の電位よりも高い場合、ダイオードD4のアノードに接続されたGNDから、ダイオードD4、直列共振容量C1、受電アンテナコイルL1、ダイオードD1を介して全波整流平滑容量C3に電荷を蓄積させる。また、入力端子LX2の電位が入力端子LX1の電位よりも高い場合、ダイオードD2のアノードに接続されたGNDから、ダイオードD2、受電アンテナコイルL1、直列共振容量C1、ダイオードD3を介して全波整流平滑容量C3に電荷を蓄積させる。
【0059】
オア回路OR1には、負荷変調制御信号COMと、制御信号COM2とが入力される。制御信号COM2は、入力端子LX1から電流が流出しているときに”H”を出力し、入力端子LX1に電流が流入しているときに”L”を出力する。オア回路OR2には、負荷変調制御信号COMと、制御信号COM3とが入力される。制御信号COM2は、入力端子LX2から電流が流出しているときに”H”を出力し、入力端子LX2に電流が流入しているときに”L”を出力する。
【0060】
すなわち、負荷変調なしの状態であり、かつ、入力端子LX1から電流が流出している場合、負荷調整用容量C4の放電パスを確保するために、負荷変調制御用トランジスタM5をオンさせる制御信号COM2がオア回路OR1に入力される。同様に、負荷変調なしの状態であり、かつ、入力端子LX2から電流が流出している場合、負荷調整用容量C5の放電パスを確保するために、負荷変調制御用トランジスタM6をオンさせる制御信号COM3がオア回路OR2に入力される。
【0061】
負荷変調時における負荷調整用容量C4、C5の充放電動作は、図2において、コンパレータ31の出力波形を制御信号COM2の出力波形に置き換えれば、図1に示す負荷変調回路を用いた無線給電アンテナ装置の動作と同様である。
【0062】
このように、全波整流回路にダイオードを用いた場合にも、負荷調整用容量C4が放電を開始すると共に、入力端子LX1から電流が流出しているときに負荷変調制御用トランジスタM5がオンになるため、負荷変調制御用トランジスタM5を介してGNDへの放電パスが確保される。
【0063】
同様に、負荷調整用容量C5が放電を開始すると共に、入力端子LX2から電流が流出しているときに負荷変調制御用トランジスタM6がオンになるため、負荷変調制御用トランジスタM6を介してGNDへの放電パスが確保される。従って、n型ドレイン拡散領域(N+)108からn型の拡散領域(Nwell)103、n型ウェル(Deep Nwell)101につながるn型の拡散領域と、半導体基板100との間に形成された寄生ダイオードによる放電を回避することができる。
【0064】
これにより、n型ウェル(Deep Nwell)101をエミッタ、半導体基板100をベース、負荷変調制御用トランジスタM5の近傍に位置する周辺回路のn型拡散領域(Deep Nwell)111、112をコレクタとする寄生バイポーラトランジスタが動作しないため、コレクタ電流の供給源となる近傍の拡散領域を使用している周辺回路が誤動作したり、発熱量が増加したりすることを防止することができる。
【0065】
本明細書における各「部」は、実施の形態の各機能に対応する概念的なもので、必ずしも特定のハードウェアやソフトウエア・ルーチンに1対1には対応しない。従って、本明細書では、実施の形態の各機能を有する仮想的回路ブロック(部)を想定して説明した。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1…負荷変調回路、2…同期整流回路、11、12…レベルシフト回路、21、22、31、32…コンパレータ、100…半導体基板、106…バックゲート電極、107…ソース電極、109…ドレイン電極、110…ゲート電極、C1…直列共振容量、C2…並列負荷容量、C3…全波整流平滑容量、C4、C5…負荷調整用容量、COM…負荷変調制御信号、COM2、COM3…制御信号、D1、D2、D3、D4…ダイオード、Ic1、Ic2…コレクタ電流、INV1、INV2…インバータ、L1…受電アンテナコイル、LX1、LX2…入力端子、M1、M2、M3、M4…同期整流用トランジスタ、M5、M6…負荷変調制御用トランジスタ、Ma…周辺トランジスタ、OR1、OR2…オア回路、Pa…高電位電源、
図1
図2
図3
図4