(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に開示されたウインドデフレクタを、被取付部を有する透明樹脂からなるデフレクタ板本体と、該デフレクタ板本体の被取付部に取り付けられる取付部、及び該デフレクタ板本体の下端部を覆うカバー部を有するカバーとで構成することで、運転者等の後部視界を良好にすることが考えられる。かかる場合、上記デフレクタ板本体の表裏面に傷付き防止の目的でハードコート材からなる塗膜を形成することが考えられるが、特許文献1のようにハードコート剤の塗布により塗膜を形成しようとすると、デフレクタ板本体の被取付部配設箇所に塗装時にハードコート剤が付着することで塗膜が形成され、該塗膜の厚さのばらつきによりカバーの取付け位置精度が悪化したり、取付け不良を招く虞がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗膜の厚さのばらつきによるカバーの取付け位置精度の悪化、及び取付け不良を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、塗装時に取付部配設箇所へのハードコート剤の流れ込みを規制する手段をデフレクタ板本体に設けたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、オープンカーの車室後端部のトリムに取り付けられるウインドデフレクタを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、パネル部、及び該パネル部の両面の下端部近傍に車幅方向に延びるように一体に突設された突条部を有し、上記パネル部には、該パネル部の上方から液状のハードコート剤を吐出した場合にハードコート剤の流れ込みが上記突条部で規制される規制領域が形成され、該規制領域に被取付部が設けられた透明樹脂からなるデフレクタ板本体を備え、ハードコート材からなる塗膜が上記デフレクタ板本体の上記規制領域を除く領域に形成され、かつ上記規制領域には形成されていないデフレクタ板と、上記デフレクタ板の突条部及び規制領域を覆うカバー部、該カバー部に下方に向けて突設され、上記トリムに取り付けられる取付片部、及び上記デフレクタ板の被取付部に取り付けられる取付部を有するカバーとを備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係るウインドデフレクタにおいて、上記デフレクタ板本体の規制領域には、位置決め孔が貫通形成され、上記カバーのカバー部には、上記位置決め孔に挿入される位置決めピンが内側に向けて突設されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るウインドデフレクタにおいて、上記デフレクタ板本体の規制領域には、塗装時に当該デフレクタ板本体をその板面を略水平方向に向けた状態で下方から支持する塗装治具の係合部との係合用の被係合部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、第3の発明に係るウインドデフレクタの製造方法であって、上記デフレクタ板本体を成形し、上記デフレクタ板本体の被係合部に上記塗装治具の係合部を係合させて上記デフレクタ板本体をその板面を略水平方向に向けた状態で上記塗装治具により下方から支持し、この状態で液状のハードコート剤を上記デフレクタ板本体の上方から吐出して上記ハードコート剤を上記デフレクタ板本体の表面に沿って下方に流して付着させ、硬化させることにより、上記塗膜が上記デフレクタ板本体の上記規制領域を除く領域に形成され、かつ上記規制領域には形成されていないデフレクタ板を得て、次いで、上記デフレクタ板の被取付部に上記カバーの取付部を取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1〜4の発明によれば、デフレクタ板本体の被取付部配設箇所に塗膜が形成されていないので、塗膜の厚さのばらつきによるカバーの取付け位置精度の悪化、及び取付け不良を防止できる。
【0014】
また、液状のハードコート剤をデフレクタ板本体の上方から吐出するだけで、マスキング作業や一旦形成された塗膜の除去作業を行うことなく突条部の下方に塗膜非形成領域を設けることができるので、塗装作業を容易にできる。
【0015】
また、デフレクタ板の被取付部、突条部、及び塗膜非形成領域がカバー部で覆われて露出しないので、見栄えが良い。
【0016】
第2の発明によれば、カバーの位置決めピンをデフレクタ板の位置決め孔に挿入するだけで、カバーをデフレクタ板の板面に沿う方向に位置決めできるので、カバーの取付作業を容易にできる。
【0017】
また、液状のハードコート剤をデフレクタ板本体の上方から吐出して塗膜を形成する場合には、一旦形成された塗膜の除去作業が不要となり、塗膜の除去作業により位置決め孔の内面が削られることがないので、位置決め孔の大きさのばらつきを抑制できる。したがって、カバーを精度良く位置決めできる。
【0018】
また、デフレクタ板本体の位置決め孔形成箇所に塗膜が形成されていないので、塗膜の厚さのばらつきによるカバーの取付け位置精度の悪化、及び取付け不良を防止できる。
【0019】
また、デフレクタ板本体の位置決め孔がカバーのカバー部で覆われて露出しないので、見栄えが良い。
【0020】
第3の発明によれば、液状のハードコート剤をデフレクタ板本体の上方から吐出して塗膜を形成する場合に、ハードコート剤が被係合部を介して塗装治具の係合部に伝わらず、塗装治具の係合部に塗膜が形成されない。したがって、塗装治具を繰り返し使用する場合に、塗装治具の係合部配設箇所に形成された塗膜を除去する手間を減らすことができる。また、除去された塗膜がその後の塗装時にゴミとしてデフレクタ板に付着することを防止できる。
【0021】
また、デフレクタ板本体の被係合部がカバーのカバー部で覆われて露出しないので、見栄えが良い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態)
図1は、オープンカー3を示す。該オープンカー3の車室後端部には、フロントフロア(図示せず)の後端に立設されたキックアップ部(図示せず)が車幅方向に連続して配設され、該キックアップ部の上方には、車体側部材である金属製のクロスバー(図示せず)が車体のベルトラインLの高さ付近で車幅方向全体に亘って配設されている。また、上記クロスバーの上部には、
図2に示すように、樹脂製のガーニッシュによって覆われた逆U字状のロールバー5が、座席7に対応するように取り付けられている。また、各ロールバー5には、挟持部材8が車幅方向内側に向けて突出するように取り付けられている。
【0025】
そして、上記キックアップ部及びクロスバーは、樹脂製のトリム9によって車体前方、後方及び上方から覆われている。
【0026】
上記一対のロールバー5の間のトリム9の上面部には、
図3〜
図9にも示す本発明の実施形態に係るウインドデフレクタ1が車幅方向に延びるように取り付けられている。このウインドデフレクタ1は、下方に向けて一体に突設された1対の板状の取付片部11を有し、これら取付片部11の先端に形成された係合爪11aを上記トリム9に固定された取付部材(図示せず)に係止させることで、上記トリム9の上面部に取り付けられている。また、このウインドデフレクタ1の車幅方向両端部の上端部近傍は、上記挟持部材8で挟持されている。
【0027】
上記ウインドデフレクタ1は、板面を車体前後方向に向けて車幅方向に延びる略板状のデフレクタ板本体13を備えている。当該デフレクタ板本体13は、上方に向けて徐々に幅広となる略台形状の板状の本体部13aを有し、該本体部13aの車幅方向両端縁の下端部近傍には、下側が上側よりも幅狭となるように段部13bが形成されている。
【0028】
また、上記本体部13aの下端縁の両端部近傍には、被取付部としての締結孔15aを有する板状の第1舌状片部15が下方に向けて一体に突設されている。
【0029】
また、上記第1舌状片部15より車幅方向内側の上記本体部13aの下端縁には、上記第1舌状片部15よりも大きい1対の板状の第2舌状片部17が互いに間隔を空けて下方に向けて一体に突設されている。当該第2舌状片部17の基端部近傍には、被取付部としての締結孔17aが貫通形成され、該締結孔17aの下方には位置決め孔17bが貫通形成されている。
【0030】
また、上記本体部13aの下端縁における上記第1舌状片部15と第2舌状片部17との間には、板状の係合片部19が一体に突設され、該係合片部19の先端縁の車幅方向略中央部には、被係合部としての凹部19aが形成されている。上記係合片部19の先端縁のうち上記凹部19aよりも車幅方向外側に位置する部分には、上記凹部19aよりも車幅方向内側に位置する部分よりも上方に位置し、かつ車幅方向外側に向けて下方に傾斜する傾斜部19bが形成されている。
【0031】
上記第1舌状片部15、第2舌状片部17、及び係合片部19の基端部の両面にはそれぞれ、車幅方向外側から中央部に向けて上方に湾曲して車幅方向に延びる突条部21が一体に突設されている。
【0032】
また、上記本体部13aの下端縁における上記第1舌状片部15の突設箇所に車幅方向内側から隣接する箇所、上記第2舌状片部17の突設箇所に車幅方向両側から隣接する箇所、及び上記係合片部19の突設箇所に車幅方向両側から隣接する箇所には、下方に開放する略U字状の切欠部23が形成されている。
【0033】
さらに、上記本体部13aの下端縁の中央部には、下方に向けて徐々に幅狭となる台形状の突出部25が下方に向けて一体に突設されている。
【0034】
ここで、上記本体部13a、第1舌状片部15、第2舌状片部17、係合片部19、及び突出部25が、平坦なパネル部27を構成している。したがって、上記突条部21は、当該パネル部27の両面の下端部近傍に突設されている。そして、該パネル部27における上記突条部21の下方には、上記パネル部27の上方から液状のハードコート剤H(
図13及び
図14参照)を吐出した場合にハードコート剤Hの流れ込みが上記突条部21で規制される規制領域Rが形成されている。したがって、上記締結孔15a,17aは規制領域Rに設けられている。
【0035】
上記デフレクタ板本体13の規制領域R、及び上記突条部21の下面を除く領域には、ハードコート材からなる塗膜28が全体に亘って形成され、該塗膜28と上記デフレクタ板本体13とでデフレクタ板29が構成されている。一方、上記デフレクタ板本体13の規制領域R及び上記突条部21の下面には、上記塗膜28が形成されていない。なお、
図3、
図8、
図9及び
図15では、塗膜28が形成されていない領域に点々を付している。また、
図4〜
図7及び
図16において、塗膜28の図示を省略している。
【0036】
上記デフレクタ板29の段部13bより下方の領域は、カバー31により車体前後方向から覆われている。上記カバー31は、前側部材33と後側部材35とからなる。上記前側部材33は、上記デフレクタ板29の段部13bより下方の領域を前方から覆う略矩形浅皿状の前側カバー部33aを備えている。当該前側カバー部33aは、板面を車体前後方向に向けて車幅方向に延びる前壁部33bと、該前壁部33bの外周部に全周に亘って後方に向けて一体に突設された前側周壁部33cとからなる。上記前壁部33bの内側(後側)の面の上端部寄りには、4つの板状の前側突出片部33dが上記デフレクタ板29の上記第1舌状片部15、第2舌状片部17、及び係合片部19の形成されていない領域に対応して一体に突設されている。各前側突出片部33dの先端部には、第1爪部33eが下方に向けて一体に膨出形成されている。各前側突出片部33dの上面の車幅方向両端部には、板面を車幅方向に向けて上記前壁部33bの内側の面から一体に突出する平面視三角形状の板状の補強リブ33fが一体に連結されている。また、下側の前側周壁部33cの先端部近傍には、3つの第2爪部33gが互いに間隔を空けて上方に向けて一体に膨出形成されている。
【0037】
上記後側部材35は、上記デフレクタ板29の段部13bより下方の領域を後方から覆う略矩形浅皿状の後側カバー部35aを備えている。この後側カバー部35aは、板面を車体前後方向に向けて車幅方向に延びる後壁部35bと、該後壁部35bの外周部に全周に亘って前方に向けて一体に突設された後側周壁部35cとからなる。上記後壁部35bの内側(前側)の面の上端部寄りには、第1係合孔35eを有する4つの板状の第1後側突出片部35dが上記前側部材33の前側突出片部33dに対応して一体に突設されている。第1後側突出片部35dの上面の車幅方向両端部には、上記後壁部35bの内側の面から一体に突出する平面視台形状の板状の補強リブ35fが一体に連結されている。さらに、上記後壁部35bの内側の面には、取付部としての筒状のボス部35gが上記デフレクタ板29の第1舌状片部15、第2舌状片部17の締結孔15a,17aに対応するように一体に突設されているとともに、位置決めピン35hが上記デフレクタ板29の第2舌状片部17の位置決め孔17bに対応するように車体前方(内側)に向けて一体に突設されている。各ボス部35g及び各位置決めピン35hの外周面の上端部及び下端部には、板面を車幅方向に向けて上記後壁部35bの内側の面から一体に突出する板状の縦リブ35iが連結されている。各位置決めピン35hの外周面の上端部に連結された縦リブ35iは、上記ボス部35gの外周面の下端部に連続している。また、上記ボス部35g及び縦リブ35iの先端面は面一をなしている。また、下側の後側周壁部35cの先端縁には、第2係合孔35kを有する3つの第2後側突出片部35jが上記前側周壁部33cの第2爪部33gに対応するように一体に突設されている。
【0038】
また、上記後側カバー部35aの下側の後側周壁部35cの先端部(前端部)の車幅方向両端部近傍には、上記取付片部11が下方に向けて一体に突設され、該取付片部11の先端部には、上記係合爪11aが前方に向けて一体に膨出形成されている。また、上記取付片部11の後側の面の車幅方向両端部近傍には、板面を車幅方向に向けて上記下側の後側周壁部35cから下方に一体に突出する板状の補強リブ11bが連結されている。
【0039】
そして、上記前側部材33の前側カバー部33aと上記後側部材35の後側カバー部35aの開放側が互いに対向して上記デフレクタ板29の段部13bより下方の領域を前後から覆っている。したがって、上記デフレクタ板29の締結孔15a,17a、突条部21、及び規制領域Rは、上記前側カバー部33aと後側カバー部35aとで覆われている。また、上記後側部材35のボス部35g及び縦リブ35iの先端面が上記デフレクタ板29の第1舌状片部15及び第2舌状片部17に後方から当接し、上記第2舌状片部17の位置決め孔17bに上記位置決めピン35hが挿入されている。さらに、上記ボス部35gと上記デフレクタ板29の締結孔15a,17aとを対応させて両者にネジ37を挿通することで、上記後側部材35がデフレクタ板29に締結されている。また、上記前側部材33の第1爪部33eが上記後側部材35の第1係合孔35eにそれぞれ係止されているとともに、上記前側部材33の第2爪部33gが上記後側部材35の第2係合孔35kにそれぞれ係止されている。
【0040】
上記ウインドデフレクタ1は、次の要領にて製造される。
【0041】
製造に際し、
図10に示すように、上記デフレクタ板本体13の車体前側を成形する前側凹状成形面101aを有する固定型101と、上記デフレクタ板本体13の車体後側を成形する後側凹状成形面103aを有する可動型103とを用意する。上記固定型101の前側凹状成形面101aにおける上記突出部25対応箇所の下方には、前側ランナー形成用凹部101bが延設されている。該前側ランナー形成用凹部101bには型開き方向に延びるスプル−101cが連通し、該スプル−101cの他端は射出機(図示せず)のノズル105に連通している。また、上記可動型103の後側凹状成形面103aにおける上記突出部25対応箇所の下方にも、上記前側ランナー形成用凹部101bに対向するように後側ランナー形成用凹部103bが延設されている。
【0042】
また、
図12〜
図14に示すように、塗装時に上記デフレクタ板本体13をその板面を略水平方向に向けた状態で下方から支持する塗装治具としてのセット治具111と、塗装時に該セット治具111への塗料の付着を規制する治具カバー113とを準備する。セット治具111は、長板状の連結部111aと、該連結部111aの両端部から互いに対向するように垂直に延出する一対の平面視L字状の板状の支持部111bと、上記連結部111aの長手方向中央部から上記支持部111b延出方向とは反対の方向に突出する円柱状の把持部111cとを備えている。また、上記支持部111bの延出端縁の中央部には、係合部としてのコ字状の切欠凹部111dが形成されている。
【0043】
上記治具カバー113は、円柱状の軸部113aを備え、該軸部113aには、塗装時に上記デフレクタ板本体13を表裏両側から挟む1対のカバー部材113bがヒンジ部113cを介して該軸部113aの周方向に回動可能に取り付けられている。両カバー部材113bは、ヒンジ部113cを介して回動することで、デフレクタ板本体13を挟む部分の間隔が狭まった所定の使用位置(
図14中実線で示す)と、デフレクタ板本体13を挟む部分の間隔が上記使用位置よりも広がった回動位置(
図14中破線で示す)とに移動可能になっている。両カバー部材113bは、上記使用位置にあるときに、互いに間隔を空けて板面を略水平方向に対向させて平行に延びる長尺板状の立壁部113dと、上記使用位置にあるときに、上記立壁部113dの下端縁から互いに接近する方向(相手方のカバー部材113b側)に向かって上方に傾斜して一体に延出する傾斜壁部113eとを備えている。上記傾斜壁部113eは、上記立壁部113dの下端縁に全長に亘って連結された長尺板状のガイド部113fと、該ガイド部113fの長手方向中途部及び長手方向一端部に上記傾斜壁部113eの延出方向(相手方のカバー部材113b側)に向けて一体に突設された一対の矩形板状の液受部113gと、上記ガイド部113fの長手方向他端部に上記傾斜壁部113eの延出方向(相手方のカバー部材113b側)に向けて一体に突設された長尺板状の突出板部113hとからなる。上記1対の液受部113gの間隔は、上記セット治具111の支持部111bの間隔に対応している。両カバー部材113bの液受部113gは、両カバー部材113bが上記使用位置にあるときに互いに接近する一方、両カバー部材113bが上記回動位置にあるときに互いに離間するようになっている。上記ガイド部113fの上記長手方向他端部側(突出板部113h側)の端縁、及び該端縁と連続する上記突出板部113hの端縁には、板面を水平方向に向けた板状の連結壁部113iが上記立壁部113dと連続するように一体に立設され、該連結壁部113iは、上記ヒンジ部113cに連結されている。また、上記立壁部113dの下端部の長手方向中央部及び上記ガイド部113fの基端部の長手方向中央部には、連続する導出孔113jが貫通形成されている。さらに、上記立壁部113dの下端部の上記長手方向他端部(突出板部113h側端部)及び上記ガイド部113fの基端部の上記長手方向他端部、及び上記連結壁部113iの上記立壁部113dとの連結箇所にも、連続する導出孔113jが貫通形成されている。
【0044】
そして、
図10に示すように、上記固定型101と可動型103とを型締めすることにより、上記前側凹状成形面101aと後側凹状成形面103aとの間にキャビティCを形成するとともに、上記前側ランナー形成用凹部101bと後側ランナー形成用凹部103bとの間にランナー107を形成する。このとき、上記キャビティCとランナー107との境界にゲート109が形成される。そして、この状態で、透明樹脂TをキャビティC内に射出充填することにより、デフレクタ板本体13を成形する。このとき、透明樹脂Tは、射出機のノズル105から射出されることにより、スプル−101c及びランナー107を経てゲート109から射出される。なお、透明樹脂Tとして、PC(ポリカーボネート)、AES(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン)等を用いることができる。しかる後、可動型103を後退させて固定型101と可動型103とを型開きし、デフレクタ板本体13を固定型101から脱型する。このとき、
図11に示すように、デフレクタ板本体13には、ランナー107及びスプル−101cに残留して固化した残留部39が付着しているので、当該残留部39を切り離し、デフレクタ板本体13の成形が完了する。
【0045】
次いで、上記セット治具111の支持部111bの切欠凹部111dの底面を上記デフレクタ板本体13の係合片部19の傾斜部19bに当接させて内側に摺動させることにより、上記セット治具111の切欠凹部111dを上記係合片部19の凹部19aに案内して係合させる。これにより、上記デフレクタ板本体13がその板面を略水平方向に向けた状態で上記セット治具111により下方から支持される。
【0046】
その後、上記治具カバー113の両カバー部材113bを上記回動位置に回動させた状態で、セット治具111の把持部111cを掴んで上記デフレクタ板本体13を治具カバー113の両カバー部材113bの間に反軸部113a側から挿入し、上記治具カバー113の液受部113gが上記セット治具111の支持部111bに対応する位置までスライドさせる。そして、上記両カバー部材113bを回動させて上記使用位置に移動させる。これにより、両カバー部材113bの液受部113gの先端部が上記デフレクタ板本体13の突条部21の下方に位置するとともに、上記セット治具111の支持部111bの延出端部を上方から覆う。また、上記ガイド部113fの反軸部113a側端縁、及び上記導出孔113jが、上記セット治具111と鉛直方向に重ならない箇所に位置する。
【0047】
そして、この状態で、
図12〜
図14に示すように、吐出ノズル115をデフレクタ板本体13の長手方向(
図12中矢印Yで示す方向)に移動させながらハードコート剤Hを上記デフレクタ板本体13の上方から吐出して上記ハードコート剤Hをデフレクタ板本体13の表裏面に沿って下方に流して付着させる。このとき、上記規制領域Rではハードコート剤Hの流れ込みが上記突条部21で規制され、ハードコート剤Hが付着しない。したがって、ハードコート剤Hは係合片部19の凹部19aを介してセット治具111の切欠凹部111dに伝わらない。このとき、上記突条部21の基端部における上記切欠部23と隣接する箇所には、切欠部23を形成しない場合に比べて液塊が形成されにくいので、上記各突条部21の車幅方向端部から規制領域Rにハードコート剤Hが流れ込むことがより確実に防止される。また、セット治具111の支持部111bの延出端部が上記カバー部材113bの液受部113gで上方から覆われているので、上記デフレクタ板本体13の係合片部19の基端部に形成された突条部21から流れ落ちるハードコート剤Hが、セット治具111の支持部111bの延出端部に付着しない。さらに、上記係合片部19の基端部に形成された突条部21から流れ落ちるハードコート剤Hは、治具カバー113の液受部113gを介して上記ガイド部113fに誘導され、ガイド部113fの反軸部113a側端縁、及び上記導出孔113jから流れ落ちる。このとき、上記ガイド部113fの反軸部113a側端縁、及び上記導出孔113jが、上記セット治具111と鉛直方向に重ならない箇所に位置しているので、治具カバー113から流れ落ちるハードコート剤Hがセット治具111に付着しない。
【0048】
その後、治具カバー113の両カバー部材113bを上記回動位置に回動させ、上記デフレクタ板本体13を上記セット治具111に装着したまま反軸部113a側にスライドさせて上記治具カバー113から離脱させる。
【0049】
そして、
図15に示すように、上述のようにハードコート剤Hが付着したデフレクタ板本体13に紫外線照射ランプ121で紫外線Uを照射することにより、ハードコート剤Hを硬化させる。これにより、上記塗膜28がデフレクタ板本体13の上記規制領域R及び上記突条部21の下面を除く領域に形成され、かつ上記規制領域R及び上記突条部21の下面には形成されていないデフレクタ板29が得られる。このとき、セット治具111には、上述のようにハードコート剤Hが付着していないので、塗膜28が形成されない。したがって、セット治具111を繰り返し使用する場合に、セット治具111に形成された塗膜28を除去する手間が必要ない。また、除去された塗膜28がその後の塗装時にゴミとしてデフレクタ板29に付着することが防止される。
【0050】
そして、
図16に示すように、デフレクタ板29の位置決め孔17bに上記カバー31の後側部材35の位置決めピン35hを挿入し、上記後側部材35を上記デフレクタ板29の板面に沿う方向に位置決めする。また、デフレクタ板29の一方の面を上記後側部材35のボス部35g及び縦リブ35iの先端面に当接させる。そして、この状態で、デフレクタ板29の締結孔15a,17aと上記後側部材35のボス部35gとにネジ37を挿通してデフレクタ板29と後側部材35とを締結する。このように、カバー31の位置決めピン35hをデフレクタ板29の位置決め孔17bに挿入するだけで、カバー31をデフレクタ板29の板面に沿う方向に位置決めできるので、カバー31の取付作業を容易にできる。
【0051】
その後、上記カバー31の前側部材33の第1爪部33eを後側部材35の第1後側突出片部35dの先端部に押し付けるとともに、前側部材33の第2爪部33gを後側部材35の第2後側突出片部35jの先端部に押し付ける。これにより、前側部材33の前側突出片部33dが上記第1爪部33eの反膨出方向に撓み、上記第1爪部33eが後側部材35の第1係合孔35eに挿入係止される。またこれと同時に、前側部材33の第2爪部33g周りの前側周壁部33cが外周側に撓むとともに後側部材35の第2後側突出片部35jが内周側に撓み、上記第2爪部33gが後側部材35の第2係合孔35kに挿入係止され、ウインドデフレクタ1が完成する。
【0052】
したがって、本実施形態によると、液状のハードコート剤Hをデフレクタ板本体13の上方から吐出するだけで、突条部21の下方へのハードコート剤Hの流れ込みが突条部21によって規制され、マスキング作業や一旦形成された塗膜28の除去作業を行うことなく突条部21の下方に塗膜28非形成領域を設けることができるので、塗装作業を容易にできる。
【0053】
また、デフレクタ板本体13の位置決め孔17bの内側に一旦形成された塗膜28の除去作業が不要となり、塗膜28の除去作業により位置決め孔17bの内面が削られることがないので、位置決め孔17bの大きさのばらつきを抑制できる。したがって、カバー31を精度良く位置決めできる。
【0054】
また、デフレクタ板本体13の締結孔15a,17a形成箇所、及び位置決め孔17b形成箇所に塗膜28が形成されていないので、塗膜28の厚さのばらつきによるカバー31の取付け位置精度の悪化、及び取付け不良を防止できる。
【0055】
また、デフレクタ板29の締結孔15a,17a、位置決め孔17b、凹部19a、突条部21、及び塗膜28非形成領域がカバー31の前側カバー部33aと後側カバー部35aとで覆われて露出しないので、見栄えが良い。
【0056】
(実施形態の変形例)
図17は、本発明の実施形態の変形例に係るウインドデフレクタ1を示す。本変形例では、上記突条部21が、車幅方向一方に向けて下方に傾斜するように直線状に形成されている。また、切欠部23が形成されていない。
【0057】
その他のウインドデフレクタ1の構成及び製造方法は、上記実施形態と同じであるので同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
なお、上記実施形態では、デフレクタ板本体13を射出成形により成形したが、射出圧縮成形により成形してもよい。