【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、以下でより詳細に説明する方法を用いて実現することが可能であった。
【0009】
本発明は、低分子量ポリヒドロキシ化合物を5倍から10倍の量のTDIと反応させ、ここで、使用されるTDIは、5重量ppm未満の2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエン(CIMCH)を含み、次いで、過剰なTDIを好ましくは真空中で薄膜蒸留により除去することによって、トルイレンジイソシアネートに基づく淡色のポリイソシアネートを製造することができるという驚くべき観察に基づく。この文脈において淡色は、このように製造されたポリイソシアネートが、DIN EN 1557に基づいて測定される、50ハーゼン未満、好ましくは30ハーゼン未満、特に好ましくは25ハーゼン以下のAPHA色指数を有することを意味する。
【0010】
CIMCHは、さまざまな比率でTDI中に存在することができる3種類の二重結合異性体の形態が可能である。これらは、例えば、使用されるTDA中に含まれる1−アミノ−2−メチル−シクロヘキセノンからのTDIの製造において生成され、これは、ジニトロトルエン(DNT)からのTDAの製造において、TDAの部分的な核水素化およびアミノ官能基の水による交換により生成することができる。トルエンのニトロ化によるDNTの製造における酸化的攻撃によって、その分のケト官能基をもとから導入することも可能であり、ここで、ニトロクレゾールがまず生成され、次に、その後の水素化において上記の1−アミノ−メチル−2−シクロヘキセノンを生成することができる。
【0011】
したがって、本発明は、有機性ポリヒドロキシ化合物を過剰量のトルイレンジイソシアネートと反応させ、次いで、未反応のトルイレンジイソシアネートを蒸留によって除去することにより、50ハーゼン未満のAPHA色指数を有する淡色のポリイソシアネートを製造するための方法であって、使用されるトルイレンジイソシアネートが、5重量ppm未満の2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエン(CIMCH)を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、本発明による方法により得ることができる50ハーゼン未満のAPHA色指数を有する淡色のポリイソシアネート、およびポリウレタンコーティング中、特に、二成分ポリウレタンコーティング中のポリイソシアネート成分としてのその使用も提供する。
【0013】
本発明による方法のための出発原料は、トルイレンジイソシアネートおよび低分子量ポリヒドロキシ化合物である。
【0014】
トルイレンジイソシアネートとして、特に、2,4−トルイレンジイソシアネート、および5重量ppm未満、好ましくは3重量ppm以下の2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエン(CIMCH)を含む、混合物に基づいて最大35重量%の2,6−トルイレンジイソシアネートを伴う2,4−トルイレンジイソシアネートの市販の混合物が考慮される。このようなTDIのグレードは、例えば、欧州特許第1413571(B1)号明細書に記載の通り、2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエンを、隔壁蒸留塔による蒸留によって予備濃縮された未精製のTDI溶液から意図的に除去することによって得ることができる。しかし、TDAの気相ホスゲン化により製造され、2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエンの含有量が検出限界未満のトルイレンジイソシアネートが特に好ましい。このようなグレードのトルイレンジイソシアネートは、Bayer Material Science AGから中国のCaojing基地の製造により得ることができる。
【0015】
2種類の独立した分析法が、2−クロロ−6−イソシアナト−メチルシクロヘキサジエン成分を明確に特徴づけるために利用された。ガスクロマトグラフィー法により、約80重量%の2,4−体の含有量を有する異なるトルイレンジイソシアネートのグレードについて、2次的な成分のスペクトルにおける相違点を試験した。その後、結合させたガスクロマトグラフィー−質量分析により、169g/molの分子量が、3種類のこれまで未知の化合物(2種類の異性体を含むCIMCH)に割り当てられた。フラグメンテーションから、当業者に周知の方法でさらに構造的な情報を得ることができた。複雑な核磁気共鳴分光法の実験(
1H−NMR、
1H−COSY、
1H−、
1H−TOCSYおよび
1H−、
13C−HMBC)により、以下に示す構造をm/z169の3種類の成分に割り当てることができた。
【化1】
【0016】
意図的な方法の開発により、Macherey−Nagel製のOptima 5 HTカラム(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)をヒューレット・パッカード製HPシリーズ6890ガスクロマトグラフで使用して、ガスクロマトグラフィー−スペクトロスコピーによってCIMCHの異性体の検出限界を1重量ppmに設定することができた。
【0017】
本発明による方法で使用される低分子量ポリヒドロキシ化合物として、62〜146の分子量を有する2個から4個の水酸基を持つアルコール、ならびに/あるいはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを純粋な形態、または任意の混合物の形態で加えることにより、そのアルコールから調製されるポリエーテルポリオールを使用した。
【0018】
2個から4個の水酸基を持つアルコールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチルヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが考慮される。
【0019】
適したポリエーテルポリオールは、ヒドロキシル基含有量およびヒドロキシル官能基から計算できる106〜600、好ましくは106〜470の分子量を有する。ポリエーテルジオールおよびポリエーテルトリオールが使用されるのが好ましい。これらのポリエーテルポリオールは、適した二官能性から四官能性スターター分子またはスターター分子の適した混合物のアルコキシル化により、それ自体周知の方法で得ることができて、アルコキシル化では、特にプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドが使用され、混合物で順次、任意の所望の順序で使用されてもよい。前述の2個から4個の水酸基を持つアルコールは、好ましくは、スターター分子として使用される。トリメチロールプロパンおよびジエチレングリコールの混合物が使用されるのが最も特に好ましい。
【0020】
本発明による方法を実施するために、ポリヒドロキシ化合物は、トルイレンジイソシアネートと40〜140℃の温度、好ましくは70〜110℃で反応させる。反応物の量は、通常、4:1〜20:1、好ましくは5:1〜10:1のNCO/OH当量比に対応する。
【0021】
予備重合の後、過剰な未反応のトルイレンジイソシアネートは、真空薄膜蒸留により、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で除去される。それによって、本発明によるポリイソシアネートが硬質から半硬質の樹脂の形態で得られる。
【0022】
本発明による方法により製造されるポリイソシアネートは、ポリイソシアネートの混合物であり、ゲルクロマトグラフィーによるその分析は、複数のポリイソシアネート成分が同時に存在することを示し、その組成および官能基は、使用されるヒドロキシ化合物および予備重合において過剰に存在するTDIに依存する。主な生成物は、それぞれの場合において、個々のヒドロキシ化合物を、その官能基に対応する数のTDI分子と反応させることによって生成した「単量体の」ウレタンである。しかし、2種類以上のポリヒドロキシ分子を含むことができる、より高分子量のオリゴマーのウレタンもさらに存在し、より高分子量のオリゴマーの相対的な割合は、予備重合において過剰なTDIが増加するにつれて低下する。主な成分の官能基は、使用されるポリヒドロキシ成分の官能基に対応し、それに応じて、2個、3個または4個であり、一方、2次的な成分として存在するオリゴマーは、それぞれの場合において、さらに多くの官能基を有する。本発明による方法により製造される生成物の官能基の平均は、イソシアネート含有量およびゲルクロマトグラフィーにより求められる分子量から計算できるが、2.0〜4.0個、好ましくは2.5〜3.5個、最も特に好ましくは2.8〜3.2個である。ゲルクロマトグラフィーによる測定は、ヒューレット・パッカード製HP 1100タイプのゲルクロマトグラフを使用して行った。そのために、Macherey & Nagel製の4重のカラムアセンブリ(2つのNucleogel−100および2つのNucleogel−50ならびにNucleogel−10プレカラム)を35℃でポリスチレン標準および溶離液としてTHFを使用して用いた。
【0023】
本発明により製造されるポリイソシアネートは、通常、有機溶媒中の溶液の形態で使用される。適した溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、トルエン、異性体のキシレンなどの既知のコーティング溶媒、および(登録商標)Solvent Naphthaまたは(登録商標)Solvessoなどの市販の溶媒、またはこのような溶媒の混合物である。
【0024】
本発明による方法により製造されるポリイソシアネートは、一成分および二成分ポリウレタンコーティングの価値ある原料である。これらのポリイソシアネートの使用の特に好ましい分野は、二成分ポリウレタンコーティング中のポリイソシアネート成分としてのその使用である。この好ましい使用に好ましい本発明によるポリイソシアネートの反応物は、ポリヒドロキシポリエステルおよびポリエーテル、ポリヒドロキシポリアクリレートであり、ポリウレタンコーティング技術においてそれ自体周知の低分子量多価アルコールでもよい。
【0025】
また、ポリアミン、特にポリケチミンまたはオキサゾリジンとしてブロックされた形態のポリアミンも、本発明による方法の反応物として考えられる。本発明による方法により製造されるポリイソシアネートと、二成分ポリウレタンコーティングの製造において使用される、述べられている反応物の比は、通常、イソシアネート基に対して反応性の基がイソシアネート基あたり0.8〜3.0個、好ましくは0.9〜1.1個あるように選ばれる。
【0026】
使用されるポリヒドロキシ成分の選定に応じて、二成分ポリウレタンコーティング組成物は、異なるポットライフを有することができる。特に迅速な硬化が望まれる場合は、イソシアネートの化学において従来からある触媒、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジンなどのアミン、あるいは、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、2−エチルカプロン酸スズ(II)、ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)またはグリコール酸モリブデンなどの金属塩などを同時に使用することができる。
【0027】
本発明による方法により製造されるポリイソシアネートをバインダーとして含む一成分ポリウレタンコーティング、および特に、本発明による方法により製造されるポリイソシアネートを架橋剤として含む二成分ポリウレタンコーティングは、非常に多種多様な基材に対して優れた付着性を持ち、高い耐摩耗性を有する硬いが、依然として弾力があるコーティング膜になる。さらに、コーティング膜は、非常に変色が少ないことが特徴で、したがって、このコーティング膜でコーティングされた薄い色の木材の種類の木目でさえも、はっきりと見ることができる。
【0028】
本発明による方法により製造されるポリイソシアネートをバインダーとして、または硬化剤として含むポリウレタンコーティングは、もちろん、コーティング技術において従来からある顔料、流動助剤、充填材などの補助物質および添加剤を含むことができる。
【0029】
[実施例]
以下の実施例において、パーセントはすべて重量による。以下の方法を用いて得られた生成物を特徴づけた。
【0030】
実施例および比較例に記載の樹脂のNCO含有量は、DIN EN ISO 11909にしたがって滴定により測定した。
【0031】
動的粘度は、DIN 3219にしたがってDIN測定体125を用い、23℃でAnton Paar製Reolab QC粘度計を使用して、1〜1600 1/sのせん断速度範囲で測定した。
【0032】
残留モノマー含有量は、ガスクロマトグラフィーによりDIN EN ISO 10283にしたがって測定した。
【0033】
固形分(非蒸発分)は、DIN 3251にしたがい、その規格に記載のイソシアネートの試験条件下で測定した。
【0034】
色指数は、DIN EN 1557に基づき、HACH Lange製LICO 400を使用して50mmの長方形の使い捨てキュベット内で23℃で測定した。
【0035】
[実施例1]
(本発明による)
約80重量%の2,4−体の含有量および3重量ppmのCIMCHの含有量を有する660gのトルイレンジイソシアネートを1000mlの2重ジャケット付すりガラス容器内に入れる。反応容器を所望の85℃の反応温度まで加熱する。次に、30分以内に、トリメチロールプロパンおよびジエチレングリコールの混合物を含む65℃まで予熱した80gのポリオール混合物を計量して連続的に入れる。それによって放出される反応熱を冷蔵−加熱循環装置により安全に放散させ、したがって、手順は恒温といえる。次に、ウレタン基を含む未精製の溶液をさらに45分間、所与の温度で撹拌する。続いて実施するNCO含有量の測定は33.4重量%を示し、これは理論値に対応する。得られる粘性のある無色の溶液から、2段階の真空薄膜蒸留(145℃/155℃、p≦0.5mbar)により90分の間に過剰な単量体のトルイレンジイソシアネートを除去する。まだ温かいうちに、290gの量で存在するウレタン基を含むポリイソシアネートを酢酸エチル中に75重量%に溶解する。このように得られる溶媒およびウレタン基を含むポリイソシアネートは、以下の特性値を有する。
【0036】
NCO含有量=13.27重量%
粘度=1490mPa*s(23℃時)
残留モノマー含有量=0.29重量%
固形分=75.2重量%
APHA色指数=25ハーゼン
[実施例2]
(本発明による)
手順は実施例1と同様であるが、反応は、気相ホスゲン化により製造された約80重量%の2,4−体含有量および検出限界未満(<1重量ppm)のCIMCH含有量を有するトルイレンジイソシアネートを用いて実施する。このように得られる溶媒およびウレタン基を含むポリイソシアネートは、以下の特性値を有する。
【0037】
NCO含有量=13.24重量%
粘度=1505mPa*s(23℃時)
残留モノマー含有量=0.25重量%
固形分=74.9重量%
APHA色指数=21ハーゼン
[実施例3]
(本発明によらない)
手順は実施例1と同様であるが、反応は、160重量ppmのCIMCHを含有する、約80重量%の2,4−体を含有するトルイレンジイソシアネートを用いて実施する。このように得られる溶媒およびウレタン基を含むポリイソシアネートは、以下の特性値を有する。
【0038】
NCO含有量=13.23重量%
粘度=1510mPa*s(23℃時)
残留モノマー含有量=0.26重量%
固形分=75.3重量%
APHA色指数=80ハーゼン
[実施例4]
(本発明によらない)
手順は実施例1と同様であるが、反応は、70重量ppmのCIMCHを含有する、約80重量%の2,4−体を含有するトルイレンジイソシアネートを用いて実施する。このように得られる溶媒およびウレタン基を含むポリイソシアネートは、以下の特性値を有する。
【0039】
NCO含有量=13.28重量%
粘度=1500mPa*s(23℃時)
残留モノマー含有量=0.27重量%
固形分=75.0重量%
APHA色指数=62ハーゼン
[実施例5]
(本発明によらない)
手順は実施例1と同様であるが、反応は、35重量ppmのCIMCHを含有する、約80重量%の2,4−体を含有するトルイレンジイソシアネートを用いて実施する。このように得られるウレタン基を含むポリイソシアネートは、以下の特性値を有する。
【0040】
NCO含有量=13.24重量%
粘度=1480mPa*s(23℃時)
残留モノマー含有量=0.28重量%
固形分=75.3重量%
APHA色指数=55ハーゼン
実施例1から5は、5重量ppm未満のCIMCH含有量を有するトルイレンジイソシアネートが使用されるとき、50ハーゼン未満のAPHA色指数を有する淡色のポリイソシアネートが得られることを示している。
【0041】
[実施例6]
使用
実施例1および実施例3のポリイソシアネートをそれぞれ、NCO/OH比1:1で市販のポリエステルポリオール((登録商標)Desmophen 1300、Bayer AGの商品、ヒドロキシル含有量は4重量%)と混合し、酢酸ブチル中で40重量%の全濃度を得る。使用に固有の比較は、コーティングに関連する特性の違いを全く示さない。
【表1】