【実施例】
【0053】
下記の実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0054】
<試験方法>
(1)BET比表面積の測定方法
比表面積測定装置(Macsorb、Mountech Co., Ltd.製)を使用して、窒素ガスを用いたガス吸着法(BET法)によりBET比表面積を測定した。
【0055】
(2)ブレーン比表面積の測定方法
ブレーン空気透過装置(C−202B 株式会社西日本試験機製)により、JIS R5201:2015(8.粉末度試験、8.1比表面積試験)のとおりにブレーン比表面積を測定した。本測定では室温298K±1、ポロシチーを0.80に設定して測定した。
【0056】
(3)ホウ素(B)の含有量の測定方法
測定試料を、12Nの塩酸(試薬特級)に加え加熱して完全に溶解させた後、ICP発光分光分析装置(PS3520 VDD 株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、ホウ素(B)の含有量を測定した。
【0057】
(4)塩素(Cl)の含有量の測定方法
塩素(Cl)の含有量については、試料を酸に溶解した後、分光光度計(UV−2550、島津製作所製)を用いて質量を測定することで、試料中の濃度を算出した。
【0058】
(5)CAAの測定方法
0.4Nのクエン酸溶液1×10
-4m
3と、指示薬として適量(2×10
-6m
3)の1%フェノールフタレイン液とを、2×10
-4m
3ビーカーに入れ、液温を303Kに調整し、マグネットスターラーを使用して700rpmで攪拌しながら、クエン酸溶液中に40%の最終反応当量の酸化マグネシウムを投入して、最終反応までの時間、つまりクエン酸が消費され溶液が中性となるまでの時間を測定した。
【0059】
(6)フォルステライト被膜生成率
フォルステライトの形成機構は反応式:2MgO+SiO
2→Mg
2SiO
4で示される。そのため、酸化マグネシウム粉末と非晶質の二酸化ケイ素のモル比を、2:1になるように調合した混合物を作成し、この混合物0.8×10
−3kgを圧力50MPaで成形し、直径15×10
−3m、高さ約3×10
−3mの成形体を得た。次に、この成形体を窒素雰囲気中で、1473Kで4.0時間焼成し、得られた焼結体中のフォルステライト生成量を、X線回折により定量分析した。生成率が90%以上の場合、充分な反応性を有し、良好なフォルステライト被膜が形成されると考えられる。
【0060】
(7)フォルステライト被膜の外観
フォルステライト被膜の外観、フォルステライト被膜の密着性及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性の試験試料供試鋼として、方向性電磁鋼板用のケイ素鋼スラブを、公知の方法で熱間圧延、冷間圧延を行って、最終板厚0.28×10
−3mとし、更に、窒素25%+水素75%の湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍した鋼板を用いた。脱炭焼鈍前の鋼板の組成は、質量%で、C:0.01%、Si:3.29%、Mn:0.09%、Al:0.03%、S:0.07%、N:0.0053%、残部は不可避的な不純物とFeである。この電磁鋼板上に酸化マグネシウムを塗布して、フォルステライト被膜の被膜特性を調査した。具体的には、本発明の酸化マグネシウム又は比較例の酸化マグネシウムをスラリー状にして、乾燥後の質量で14×10
−3kg・m
−2になるように鋼板に塗布し、乾燥後、1473Kで20.0時間の最終仕上焼鈍を行った。最終仕上焼鈍が終了したのち冷却し、鋼板を水洗し、塩酸水溶液で酸洗浄した後、再度水洗して、乾燥させた。被膜の外観は、洗浄後の被膜の外観から判断した。すなわち、灰色のフォルステライト被膜が、均一に厚く形成されている場合を◎、被膜が均一であるがやや薄く形成されている場合を○、被膜が不均一で薄いが、下地の鋼板が露出している部分がない場合を△、被膜が不均一で非常に薄く、下地の鋼板が明らかに露出した部分がある場合を×とした。
【0061】
(8)フォルステライト被膜の密着性
フォルステライト被膜の密着性は、洗浄前の被膜状態から判断した。すなわち、被膜が均一に形成され、剥離部位が存在しない場合を◎、被膜が僅かに不均一であるが、剥離部分が存在しない場合を○、被膜が不均一で、ピンホール状の剥離部位が存在する場合を△、被膜が不均一で、明確な剥離部位が存在する場合を×とした。
【0062】
(9)未反応酸化マグネシウムの酸除去性
未反応酸化マグネシウムの酸除去性(単に、「酸除去性」ともいう。)は、洗浄後の被膜状態から判断した。すなわち、未反応の酸化マグネシウムが完全に除去されている場合を◎、明確な未反応酸化マグネシウムの残存は認められないものの、被膜に濃淡があり僅かに未反応酸化マグネシウムが残存すると判断した場合を○、点状に未反応酸化マグネシウムの残存が明確に観察される場合を△、明らかに未反応酸化マグネシウムが残存している場合を×とした。
【0063】
<試薬での合成例>
<合成例1>
塩化マグネシウム(試薬特級)を純水に溶解させ0.5×10
3mol・m
−3の塩化マグネシウム水溶液を作製した。次に水酸化カルシウム(試薬特級)を純水に入れ、0.5×10
3mol・m
−3の水酸化カルシウム分散液を作製した。これらの塩化マグネシウム水溶液及び水酸化カルシウム分散液をMgCl
2/Ca(OH)
2=1.1のモル比で1.0×10
-3m
3になるように混合し、混合液を得た。その後、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量(B)が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を混合液に投入し、4枚ばねの攪拌羽を使用して、300rpmで撹拌しながら363Kにて6.0時間反応させ、水酸化マグネシウムスラリーを得た。その後、水酸化マグネシウムスラリーをろ過し、得られる水酸化マグネシウムの質量の100倍の質量の純水で洗浄し、378Kで12.0時間乾燥して水酸化マグネシウム粉末を得た。得られた水酸化マグネシウム粉末を、電気炉を用いて、1073Kで2.0時間焼成した。このようにして、ブレーン比表面積が7.6×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が29.2×10
3m
2・kg
−1の酸化マグネシウムを得た。
【0064】
<合成例2>
塩化マグネシウム(試薬特級)を純水に溶解させ0.5×10
3mol・m
−3の塩化マグネシウム水溶液を作製した。次に水酸化カルシウム(試薬特級)を純水に入れ、0.5×10
3mol・m
−3の水酸化カルシウム分散液を作製した。これらの塩化マグネシウム水溶液及び水酸化カルシウム分散液をMgCl
2/Ca(OH)
2=1.1のモル比で1.0×10
-3m
3になるように混合し、混合液を得た。その後、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を混合液に投入し、4枚ばねの攪拌羽を使用して、300rpmで撹拌しながら303Kにて6.0時間反応させ、水酸化マグネシウムスラリーを得た。その後、水酸化マグネシウムスラリーをろ過し、得られる水酸化マグネシウムの質量の100倍の質量の純水で洗浄し、378Kで12.0時間乾燥して水酸化マグネシウム粉末を得た。得られた水酸化マグネシウム粉末を、電気炉を用いて、1273Kで0.5時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムをボールミルにて1.0時間粉砕することで、ブレーン比表面積が3.4×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が25.6×10
3m
2・kg
−1の酸化マグネシウムを得た。
【0065】
<合成例3>
塩化マグネシウム(試薬特級)を純水に溶解させ0.5×10
3mol・m
−3の塩化マグネシウム水溶液を作製した、次に水酸化カルシウム(試薬特級)を純水に入れ、0.5×10
3mol・m
−3の水酸化カルシウム分散液を作製した。これらの塩化マグネシウム水溶液及び水酸化カルシウム分散液をMgCl
2/Ca(OH)
2=1.1のモル比で1.0×10
-3m
3になるように混合し、混合液を得た。その後、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を混合液に投入し、4枚ばねの攪拌羽を使用して、600rpmで撹拌しながら、363Kにて5.5時間反応させ水酸化マグネシウムスラリーを得た。その後、水酸化マグネシウムスラリーをろ過し、得られる水酸化マグネシウムの質量の100倍の質量の純水で洗浄し、378Kで12.0時間乾燥して水酸化マグネシウム粉末を得た。得られた水酸化マグネシウム粉末を、電気炉を用いて、1373Kで2.0時間焼成した。このようにして、ブレーン比表面積が1.4×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が5.0×10
3m
2・kg
−1の酸化マグネシウムを得た。
【0066】
<合成例4>
塩化マグネシウム(試薬特級)を純水に溶解させ0.5×10
3mol・m
−3の塩化マグネシウム水溶液を作製した、次に水酸化カルシウム(試薬特級)を純水に入れ、0.5×10
3mol・m
−3の水酸化カルシウム分散液を作製した。これらの塩化マグネシウム水溶液及び水酸化カルシウム分散液をMgCl
2/Ca(OH)
2=1.1のモル比で1.0×10
-3m
3になるように混合し、混合液を得た。その後、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を混合液に投入し、4枚ばねの攪拌羽を使用して、600rpmで撹拌しながら313Kにて5.5時間反応させ、水酸化マグネシウムスラリーを得た。その後、水酸化マグネシウムスラリーをろ過し、得られる水酸化マグネシウムの質量の100倍の質量の純水で洗浄し、378Kで12.0時間乾燥して水酸化マグネシウム粉末を得た。得られた水酸化マグネシウム粉末を、電気炉を用いて、1273Kで1.5時間焼成した。このようにして、ブレーン比表面積が0.7×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が23.8×10
3m
2・kg
−1の酸化マグネシウムを得た。
【0067】
表1に、試薬を原料に製造した酸化マグネシウムの合成例1〜4の成分を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<試薬での実施例及び比較例>
<実施例1〜3、比較例1〜5>
合成例1〜4を、表2に示す配合で混合し、実施例1〜3及び比較例1〜5の酸化マグネシウムを得た。なお、実施例1〜3及び比較例1〜5の酸化マグネシウムのCAAを測定したところ、すべて60〜90秒の範囲だった。
【0070】
得られた酸化マグネシウムを、脱炭焼鈍を終えた鋼板に塗布し、焼鈍し、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成した。このようにして得られた鋼板の、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性について、評価した。表2に、それらの結果を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から明らかなように、試薬を使用して合成した、BET比表面積及びブレーン比表面積が所定の範囲の酸化マグネシウム(実施例1〜3)を用いて形成したフォルステライト被膜は、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性のすべてにおいて優れ、均一で充分な厚みを有する被膜である。
【0073】
これに対し、酸化マグネシウムのBET比表面積及びブレーン比表面積を調整せず、BET比表面積及びブレーン比表面積が所定の範囲外の酸化マグネシウム(比較例1〜5)を用いて形成したフォルステライト被膜は、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性という特性のうちいずれかを満たしてはいないため、所望の鋼板が得られないことが分かる。
【0074】
<試薬以外での実施例及び比較例>
<実施例4>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで撹拌しながら323Kにて7.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1273K、1.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が3.8×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が18.6×10
3m
2・kg
−1であった。
【0075】
<実施例5>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が2.0×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら353Kで2.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1273K、2.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が4.1×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が19.5×10
3m
2・kg
−1であった。
【0076】
<実施例6>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が1.0×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら333Kにて20.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1373K、0.5時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が5.3×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が18.8×10
3m
2・kg
−1であった。
【0077】
<実施例7>
反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10
3mol・m
−3となるように、脱炭処理した海水に水酸化カルシウムを加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて水酸化マグネシウムを生成した。なお、反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンにより、1373K、1.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が3.1×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が15.0×10
3m
2・kg
−1であった。
【0078】
<実施例8>
反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.05×10
3mol・m
−3となるように、脱炭処理した海水に水酸化カルシウムを加え、最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入し、323Kで20.0時間、反応させて水酸化マグネシウムを生成した。なお、反応終了5.0時間前に、高分子凝集剤を0.02質量%加えた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンにより、1323K、1.0時間で焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が4.7×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が14.8×10
3m
2・kg
−1であった。
【0079】
<実施例9>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が1.0×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら333Kにて20.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1373K、0.75時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が3.1×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が12.6×10
3m
2・kg
−1であった。
【0080】
<実施例10>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.07質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.8×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら333Kにて15.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルン炉で、1173K、1.5時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が4.0×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が23.4×10
3m
2・kg
−1であった。
【0081】
<実施例11>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.8×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら、363Kにて10.0時間反応させた。その後、フィルタープレスでろ過し、水洗し、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルン炉で、1223K、1.5時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られた酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が6.1×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が22.0×10
3m
2・kg
−1であった。
【0082】
<比較例6>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.8×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら、333Kにて10.0時間反応させた。その後フィルタープレスでろ過、水洗、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1423K、1.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られる酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が3.3×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が7.0×10
3m
2・kg
−1であった。
【0083】
<比較例7>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.8×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌し、353Kにて6.0時間反応させた。その後フィルタープレスでろ過、水洗、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1373K、1.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られる酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が2.0×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が7.5×10
3m
2・kg
−1であった。
【0084】
<比較例8>
最終的に得られる酸化マグネシウム中のホウ素含有量が0.06質量%になるように、純水で0.3×10
3mol・m
−3に調整したホウ酸水溶液を投入した濃度2.0×10
3mol・m
−3のマグネシウムイオンを含む苦汁に、水酸化カルシウムスラリーを、反応後の水酸化マグネシウム濃度が0.8×10
3mol・m
−3になるように添加し、600rpmで攪拌しながら、343Kにて8.0時間反応させた。その後フィルタープレスでろ過、水洗、乾燥して水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをロータリーキルンで、1473K、1.0時間焼成し、酸化マグネシウム粉末を得た。得られた酸化マグネシウムを、衝撃型粉砕機(ジェットミル)を用いて所定の範囲になるようにブレーン比表面積及びBET比表面積を調整し、最終的に得られる酸化マグネシウムを測定した結果、ブレーン比表面積が1.2×10
3m
2・kg
−1、BET比表面積が5.0×10
3m
2・kg
−1であった。
【0085】
上記のようにして得られた実施例4〜11及び比較例6〜8の酸化マグネシウムのブレーン比表面積及びBET比表面積を、表3に示す。
【0086】
上述のようにして得られた実施例4〜11及び比較例6〜8の酸化マグネシウムを、脱炭焼鈍を終えた鋼板に塗布し、仕上焼鈍し、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成した。このようにして得られた鋼板の、フォルステライト被膜生成率、被膜の外観、被膜の密着性、及び未反応酸化マグネシウムの酸除去性について、評価した。表3に、それらの結果を示す。なお、実施例4〜11及び比較例6〜8の酸化マグネシウムのCAAを測定したところ、すべて60〜90秒の範囲だった。
【0087】
【表3】
【0088】
表3から明らかなように、工業用の原料である海水、苦汁を使用して合成した、BET比表面積及びブレーン比表面積が所定の範囲の酸化マグネシウム(実施例4〜11)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)フォルステライト被膜生成率が90%以上と優れていることが明らかとなった。更に、(b)被膜の外観、(c)被膜の密着性、及び(d)未反応酸化マグネシウムの酸除去性についてもすべて優れていることが明らかとなった。
【0089】
これに対し、酸化マグネシウムのBET比表面積及びブレーン比表面積を調整せず、BET比表面積及びブレーン比表面積が所定の範囲外の酸化マグネシウム(比較例5〜7)を用いて形成したフォルステライト被膜は、(a)フォルステライト被膜の生成しやすさ(フォルステライト被膜生成率)、(b)被膜の外観、(c)被膜の密着性、及び(d)未反応酸化マグネシウムの酸除去性という特性のうち、いずれかを満たしてはいないため、所望の鋼板が得られないことが明らかとなった。
【0090】
以上のことから、本発明の焼鈍分離剤用酸化マグネシウムによれば、優れた絶縁特性と磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができることが明らかとなった。