【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る宇宙用装置は、宇宙空間に存在する対象物に接着する接着部と、推進力を得るための推進部と、を備え、接着部で対象物に接着した状態で前記推進部によって前記対象物とともに移動することにより対象物を所定の目標位置へと運搬するものである。また、本発明に係る母機は、本宇宙用装置を搭載可能であって本宇宙用装置を宇宙空間に放出するように構成されるものである。
【0008】
かかる構成を採用すると、宇宙用装置を搭載した母機を宇宙空間に打ち上げて母機を対象物に接近させ、宇宙空間において母機から宇宙用装置を放出し、接着部で宇宙用装置を対象物に接着させ、推進部で宇宙用装置を移動させることにより、対象物を所定の目標位置へと運搬することができる。従って、例えば対象物がスペースデブリである場合には、宇宙用装置でスペースデブリを大気圏へと運搬して焼却除去することができる。この際、スペースデブリが比較的大型であっても、複数の宇宙用装置を使用して運搬することが可能となる。混雑した軌道上は、衝突確率も高く、人気ある軌道ゆえ今後もロケットや人工衛星が打ち上げられる可能性がある。そこに母機を配置することで、効率的に除去できる。また、対象物が正常な人工衛星である場合には、宇宙用装置で人工衛星を所定の目標位置(例えば別軌道上の目標位置)へと運搬することができる。このように、宇宙用空間において種々の任務を遂行することが可能となる。
【0009】
本発明に係る宇宙用装置は、対象物の回転を阻止する回転阻止手段を有していなくてもよい。
【0010】
本発明に係る宇宙用装置を用いてデブリ除去を行う場合、回転を阻止しなくても、接着しさえすれば宇宙用装置とスペースデブリとが一緒に回転して構わない。スペースデブリを大気圏に突入させるために必要なのは、スペースデブリを減速させるような力(制動力)であり、たとえスペースデブリが回転していてもそのような制動力を付与できるタイミングが到来するからである。また、宇宙用装置を用いて衛星運搬サービスを行う場合においては、対象となる人工衛星は制御不能な回転はしていないため、そもそも回転を阻止する必要はない。よって、宇宙用装置は、回転阻止手段を有する必要がないため、小型化が可能となる。
【0011】
本発明に係る宇宙用装置において、自己の位置及び姿勢を制御するための自律制御部を設けてもよい。また、宇宙用装置の位置及び姿勢を制御するための子機制御部を有する母機を採用することもできる。
【0012】
かかる構成を採用すると、宇宙用装置の位置及び姿勢を制御することができるので、対象物への宇宙用装置の接着を容易にすることができる。
【0013】
本発明に係るデブリ除去システムは、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間に存在するスペースデブリを除去するものであって、宇宙用装置をスペースデブリに接近移動させて接着部でスペースデブリに宇宙用装置を接着させる誘導制御部と、宇宙用装置がスペースデブリに接着した状態で、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置をスペースデブリとともに大気圏に向けて移動させるように宇宙用装置の推進部を制御する推進制御部と、を備えるものである。
【0014】
本発明に係るデブリ除去方法は、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間に存在するスペースデブリを除去する方法であって、宇宙用装置をスペースデブリに接近移動させる誘導工程と、接着部で宇宙用装置をスペースデブリに接着させる接着工程と、宇宙用装置がスペースデブリに接着した状態で、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置を大気圏に向けて移動させることによりスペースデブリを大気圏へと運搬する運搬工程と、を含むものである。
【0015】
かかる構成及び方法を採用すると、宇宙用装置をスペースデブリに接近移動させ、接着部で宇宙用装置をスペースデブリに接着させ、宇宙用装置がスペースデブリに接着した状態で、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置を移動させて、スペースデブリを大気圏へと運搬してスペースデブリを焼却除去したり、スペースデブリを衝突可能性の低い軌道(墓場軌道)へと移動させたりすることができる。この際、スペースデブリが比較的大型であっても、複数の宇宙用装置を使用して運搬することが可能となる。
【0016】
本発明に係るデブリ除去方法において、誘導工程の後であって接着工程の前に、スペースデブリの形状、重心、重量、熱制御の状況及び/又は回転状態その他を把握するデブリ状態把握工程を含むことができる。
【0017】
かかる方法を採用すると、宇宙用装置をスペースデブリに接近移動させてから宇宙用装置を接着させるまでの間に、スペースデブリの形状や回転状態を把握することができ、また、スペースデブリに対してどの位置に最終接近し、どの向きに宇宙用装置を接着させれば良いかを把握することができる。
【0018】
本発明に係るデブリ除去方法において、接着工程の後に、スペースデブリの姿勢を制御するデブリ制御工程を含むこともできる。
【0019】
かかる方法を採用すると、宇宙用装置をスペースデブリに接着させてから、スペースデブリの姿勢を制御することができる。
【0020】
本発明に係る衛星運搬システムは、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間の第一の軌道上に存在する人工衛星を運搬するものであって、宇宙用装置を人工衛星に接近移動させて接着部で第一の軌道上にある人工衛星に宇宙用装置を接着させる誘導制御部と、宇宙用装置が人工衛星に接着した状態で、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置を人工衛星とともに第一の軌道とは異なる第二の軌道に向けて移動させるように宇宙用装置の推進部を制御する推進制御部と、を備えるものである。
【0021】
本発明に係る衛星運搬方法は、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間の第一の軌道上に存在する人工衛星を運搬する方法であって、宇宙用装置を人工衛星に接近移動させる誘導工程と、接着部で宇宙用装置を人工衛星に接着させる接着工程と、宇宙用装置が人工衛星に接着した状態で、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置を人工衛星とともに第一の軌道とは異なる第二の軌道へと移動させることにより人工衛星を第一の軌道から第二の軌道へと運搬する運搬工程と、を含むものである。
【0022】
かかる構成及び方法を採用すると、宇宙用装置を宇宙空間の第一の軌道(例えば高度200km〜1000kmの低軌道)上に存在する人工衛星に接近移動させて接着部で宇宙用装置を人工衛星に接着させ、宇宙用装置の推進部で宇宙用装置を移動させて人工衛星を第一の軌道とは異なる第二の軌道へと運搬することができる。第一の軌道としての静止軌道上に存在する人工衛星を、第二の軌道としての墓場軌道(静止軌道よりも若干高度の高い軌道)へと運搬することもできる。
【0023】
本発明に係る衛星運搬システムにおいて、宇宙用装置を接着部で第一の軌道上にある人工衛星に接着させるように宇宙用装置の姿勢及び位置を制御する制御部(自律制御部や子機制御部)を備えることもできる。
【0024】
かかる構成を採用すると、宇宙用装置の姿勢及び位置を制御することができるので、第一の軌道上にある人工衛星に宇宙用装置を確実に接着させることができる。
【0025】
本発明に係る衛星制御システムは、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間の静止軌道上に存在する人工衛星の位置を制御するものであって、宇宙用装置を人工衛星に接近移動させて接着部で静止軌道上にある人工衛星に宇宙用装置を接着させる誘導制御部と、宇宙用装置が人工衛星に接着した状態で、人工衛星の静止軌道上の位置を保持するように宇宙用装置の推進部を制御する推進制御部と、を備えるものである。
【0026】
本発明に係る衛星制御方法は、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間の静止軌道上に存在する人工衛星の位置を制御する方法であって、宇宙用装置を人工衛星に接近移動させる誘導工程と、接着部で宇宙用装置を人工衛星に接着させる接着工程と、宇宙用装置が人工衛星に接着した状態で、人工衛星の静止軌道上の位置を保持するように宇宙用装置の推進部を制御する位置制御工程と、を含むものである。
【0027】
かかる構成及び方法を採用すると、宇宙用装置を宇宙空間の静止軌道上に存在する人工衛星に接近移動させて接着部で宇宙用装置を人工衛星に接着させ、宇宙用装置の推進部を制御して人工衛星の静止軌道上の位置を保持する(軌道保持を実現させる)ことができる。
【0028】
本発明に係るデブリ除去システム、衛星運搬システム及び衛星制御システムにおいて、地上に設置した誘導制御部を採用することができる。また、推進制御部については、地上に設置したものを採用したり、宇宙用装置に搭載したものを採用したりすることができる。
【0029】
本発明に係る宇宙用装置において、所定の軌道上を周回する人工衛星の状態を監視するように構成される宇宙用装置(又は母機)を採用してもよい。この際、人工衛星に対して電力を供給するように構成される宇宙用装置(又は母機)を採用したり、人工衛星に対して移動部を提供するように構成される宇宙用装置(又は母機)を採用したりすることもできる。
【0030】
かかる構成を採用すると、宇宙用装置(又は母機)によって、所定の軌道上を周回する人工衛星の状態を監視したり、人工衛星に対して電力を供給したり、人工衛星に対して移動部を提供し移動部で人工衛星を移動させたりする等、軌道上で種々のサービスを行うことができる。
【0031】
本発明に係る衛星監視システムは、既に述べた宇宙用装置又は母機を用いて宇宙空間の所定の軌道上を周回する人工衛星を監視するものであって、宇宙用装置又は母機を人工衛星に接近移動させる誘導制御部と、宇宙用装置又は母機で人工衛星の状態を監視するように宇宙用装置又は母機を制御する監視制御部と、を備えるものである。
【0032】
本発明に係る衛星監視方法は、既に述べた宇宙用装置を用いて宇宙空間の所定の軌道上を周回する人工衛星を監視する方法であって、宇宙用装置又は母機を人工衛星に接近移動させる誘導工程と、宇宙用装置又は母機で人工衛星の状態を監視する監視工程と、を含むものである。
【0033】
かかる構成を採用すると、宇宙用装置(又は母機)によって、所定の軌道上を周回する人工衛星の状態を監視することができる。
【0034】
本発明に係る衛星監視システムにおいて、地上に設置した誘導制御部を採用することができる。また、監視制御部については、地上に設置したものを採用したり、宇宙用装置に搭載したものを採用したりすることができる。