(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472787
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】金属の電解採取のための電解セル
(51)【国際特許分類】
C25C 7/00 20060101AFI20190207BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20190207BHJP
C25C 7/02 20060101ALI20190207BHJP
C25C 7/04 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
C25C7/00 301
C25C1/12
C25C7/02 305
C25C7/04 301
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-505818(P2016-505818)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(65)【公表番号】特表2016-522314(P2016-522314A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014056680
(87)【国際公開番号】WO2014161928
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月22日
(31)【優先権主張番号】MI2013A000505
(32)【優先日】2013年4月4日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】フィオルッチ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】カルデラーラ,アリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】イアコペティ,ルチアーノ
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−513860(JP,A)
【文献】
特表2014−530961(JP,A)
【文献】
特表昭58−502222(JP,A)
【文献】
特開昭63−137191(JP,A)
【文献】
実開昭63−119672(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の電解採取用のセルであって、次の各要素:
酸素の発生反応に対する触媒表面を有する陽極;
電解浴から金属を付着させるのに適していて、前記陽極と平行に配置された陰極;
導電性の多孔質スクリーンであって、前記陽極と前記陰極の間に挿入されていて、前記陽極に電気的に接続されていて、450A/m2の電流密度の下で前記陽極の酸素発生電位よりも少なくとも100mV高い酸素発生電位を有する、前記多孔質スクリーン;
を含む、前記電解採取用のセル。
【請求項2】
前記陽極は、貴金属酸化物を含む触媒で被覆された金属の支持体から成り、前記金属の支持体はチタン製であってよい、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記多孔質スクリーンは、酸素の発生反応に対して触媒不活性な被覆を設けたチタンのメッシュまたは有孔シートから成る、請求項1または2に記載のセル。
【請求項4】
前記触媒不活性な被覆は5g/m2を超える比配合量の酸化スズを含む、請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記陽極と前記多孔質スクリーンは0.01〜100Ωの電気抵抗を有する抵抗体を介して電気的に接続されている、請求項1から4のいずれかに記載のセル。
【請求項6】
前記陽極と前記多孔質スクリーンの間に配置された非導電性の多孔質セパレーターをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載のセル。
【請求項7】
前記陽極は、上にデミスターを置いた透過性のセパレーターからなる包囲体の内部に挿入されている、請求項1から6のいずれかに記載のセル。
【請求項8】
前記陽極と前記陰極は25〜100mmの相互の間隔をおいて配置されていて、そして前記陽極と前記多孔質スクリーンは1〜20mmの相互の間隔をおいて配置されている、請求項1から7のいずれかに記載のセル。
【請求項9】
金属の電解採取用のセルのための陽極装置であって、酸素の発生反応に対する触媒表面を有する陽極を含み、この陽極は450A/m2の電流密度の下で陽極の酸素発生電位よりも少なくとも100mV高い酸素発生電位を有する多孔質スクリーンと電気的に接続されていて、前記スクリーンは前記陽極と平行に配置されている、前記陽極装置。
【請求項10】
相互に電気的に接続した請求項1から8のいずれかに記載のセルの積重ねを含む、電解浴から主要な金属を抽出するための電解装置。
【請求項11】
第一銅イオンおよび/または第二銅イオンを含む溶液から出発して、銅を製造するための方法であって、前記溶液を請求項10に記載の電解装置の中で電気分解することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属の電解採取のためのセル(電解槽)に関し、特に、イオン溶液から銅およびその他の非鉄金属を電解製造するのに有用なセルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気冶金プロセスは一般に、電解浴と複数の陽極(アノード)および陰極(カソード)を有する非分割型の電気化学セルにおいて行われる。そのようなプロセス(例えば、銅の電着)においては、陰極(これは通常、ステンレス鋼から成る)において電気化学反応が起こり、陰極の表面上に銅の
金属が付着する。通常、陰極と陽極は垂直に配置され、そして対面する位置で差し挟まれる。陽極は適当な陽極ハンガーバー(陽極吊り棒)に固定され、ハンガーバーは、セル本体と一体になった正極のブスバー(母線)と電気的に接触している。陰極も同様に陰極ハンガーバーによって支持され、ハンガーバーは負極のブスバーと接触している。付着した金属の採取を行うために、陰極は定期的な間隔で(通常は数日の間隔で)抜き取られる。金属の付着物は陰極の表面全体にわたって一定の厚さで成長することが期待され、それは電流の通路を伴って蓄積するが、しかし、銅などの幾つかの金属は樹枝状の付着物を時折形成することが知られていて、それは局部的に増進的に成長し、それらの先端が対面する陽極の表面に接近して、陽極と陰極の間の局部的な距離が小さくなるので、樹枝状に成長した位置に増大した電流が集中しやすく、最後に、陰極と陽極の間で短絡した状態になる。これは明らかに、プロセスのファラデー効率の低下を必然的に伴うのであり、何故ならば、供給される電流の一部は、より多くの金属を生成するのに用いられるよりも、短絡電流として散逸されるからである。加えて、短絡状態の形成は接触点に対応して局部的な温度上昇を引き起こし、それは陽極表面の損傷の原因となる。鉛のシートから成る古い世代の陽極を用いると、損傷は一般に樹枝状の先端の周囲の小さな面積での溶融に限定されるが、しかし、そのような状況は、メッシュまたはエキスパンデッドシート(展延シート)のような、触媒を被覆したチタン製の有孔構造物から成る現代の陽極を用いる場合には、もっとずっと重大なことになる。この場合、陽極の小さな質量と熱容量は、高い融点と相まって、広範囲にわたる損傷をしばしばもたらし、実質的に陽極の領域の全体が破壊する。これが起らない場合であっても、樹枝状の先端が陽極のメッシュを横切って広がる恐れがあり、メッシュに溶着するかもしれず、製品の採取を行う際に、陰極の以後の抜き取りに支障が生じる。
【0003】
同時係属中の特許出願の国際公開(WO)2013060786号に記載されているように、さらに進んだ世代の陽極において、触媒を被覆したチタンのメッシュが透過性のセパレーター(例えば、ポリマー材料の多孔質シートまたは陽イオン交換膜)からなる
包囲体(envelope)の内部に挿入され、セパレーターは枠に固定されて、その上にデミスター(demister)が置かれる。この場合、陽極の表面へ向かって成長する樹枝状構成物が、それらが陽極の表面に達する前に透過性のセパレーターを突き通すという、さらなる危険性を必然的に伴い、その結果、装置は必然的に破壊する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開(WO)2013060786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、金属の電解採取用セルの陰極表面上に樹枝状の付着物が制御不能に成長することから生じる有害な結果を防ぐことを可能にする技術的な解決策を提供する必要があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な態様が、添付する特許請求の範囲に示されている。
【0007】
一つの側面において、本発明は金属の電解採取を行うセルに関し、このセルは、酸素を発生する反応に対して触媒作用のある表面を有する陽極と、この陽極に平行に配置された金属の電解付着に適した表面を有する陰極を含み、またセルは、陽極と陰極の間に配置された多孔質の導電性スクリーンを有し、そして場合により、このスクリーンは適当な寸法の抵抗体を介して陽極に電気的に接続されていて、多孔質スクリーンは、酸素の発生について陽極よりもかなり低い触媒活性を有する。かなり低い触媒活性とは、ここでは、典型的なプロセス条件において(例えば、450A/m
2の電流密度の下で)、スクリーンの表面が陽極の表面よりも少なくとも100mV高い酸素発生電位を有することによって特徴づけられる、ということを意味する。酸素の陽極での放出についての高い過電圧のほかにも、スクリーンは、十分に緻密であるがしかし多孔質な構造であることによって特徴づけられ、そのため、陰極と陽極の間のイオンの伝導を妨げることなく電解液の通過を可能にする。驚くべきことに、発明者らは、説明しているようなセルの設計を用いて電気分解を行うことによって、形成する可能性のある樹枝状物は、それらが対面する陽極の表面に達する前に効果的に停止され、従って、それらの成長は実質的に妨げられる、ということを見出した。スクリーンの表面を特徴づける高い陽極過電圧は、通常のセルの操作を行う間にスクリーンの表面が陽極として作用することを防止し、それにより、電流のラインが乱されることなく陽極の表面に到達し続けることを可能にする。一方、樹枝状物が陰極の表面から成長したとしても、それはスクリーンと接触するようになるまで進行することができるに過ぎない。接触が起きると、最初の種類の導電体の回路が閉じて(陰極/樹枝状物/スクリーン/陽極のブスバー)、そのため陽極へ向かう樹枝状物の成長は有利ではなくなる。スクリーンの表面上に金属が付着する可能性により、スクリーンの導電度はある程度増大するかもしれないが、それは短絡電流の流れを導くことになる。スクリーンの抵抗は、構成材料とそれらの寸法取り(例えば、織物構造物の場合にはワイヤのピッチ(間隔)と直径、メッシュの場合には直径とメッシュの開口)あるいは幾分かの導電性インサートの導入量を選択することによって、最適な値に調整する(calibrate)ことができる。一つの態様において、スクリーンは適当な厚さの炭素の織物で製造することができる。別の態様において、スクリーンを耐食性金属(例えば、チタン)のメッシュまたは有孔シートで構成し、酸素の発生反応に対して触媒不活性な被覆を設けてもよい。これは、必要な機械的特徴を与える役割をメッシュまたは有孔板に残しつつ、最適な電気抵抗を達成するために被覆の化学的性質と厚さを拠りどころにする、という利点をもたらすことができる。一つの態様において、触媒不活性な被覆はスズをベースとするものであってもよく、例えば、酸化物の形のものである。陽極での酸素の発生に対する触媒活性が無い場合に、特定の
比配合量を超える(5g/m
2を超える、典型的には約20g/m
2以上の)酸化スズは、最適な抵抗を付与するのに特に適していることが証明された。触媒不活性な被覆を得るためのその他の適当な物質としてはタンタル、ニオブおよびチタンがあり、例えば、酸化物の形のものである。一つの態様において、短絡電流の抑制は、調整した抵抗体(例えば、0.01〜100Ωの抵抗を有するもの)を介して陽極と多孔質スクリーンを相互に接続することによって達成される。スクリーンの電気抵抗を適切に調整することは、本発明の利点を最大限まで生かすことによって装置を作動させることを可能にする。極めて低い抵抗は過剰な量の電流の流出を招き、それにより銅の付着量の全体的な収量を減少させるようであり、一方、スクリーンがある程度の導電性を有することは、「先端効果(tip effect)」(これは樹枝状物が成長する主な原因である)を破壊するとともに樹枝状物から電流を平面を通して消散させるのに有用であり、それにより、スクリーンの開口を通して樹枝状物が成長して、その結果、以後の陰極の抜き取り操作において機械的な障害が生じる危険が防止される。スクリーンと選択的に設ける抵抗体との連結した電気抵抗の最適値の調整は、基本的にはセルの全体的なサイズに依存し、当業者であれば容易に計算することができる
【0008】
一つの態様において、電解採取用のセルは、陽極とスクリーンの間に配置される非導電性の多孔質セパレーターをさらに含む。これは、最初の種類の二つの平らな導電体の間にイオンの伝導体を挿入し、それにより陽極に関連する電流の流れとスクリーンから出る電流の流れとの間に明確な分離を形成する、という利点を有するだろう。非導電性のセパレーターは、絶縁材料のウェブ、プラスチック材料のメッシュ、スペーサーの集成体、またはこれらの要素の組み合わせであってよい。同時係属中の特許出願の国際公開(WO)2013060786号に記載されているように、透過性のセパレーターからなる
包囲体の内部に陽極が配置される場合、そのような役割は、その同じセパレーターが担うことができる。
【0009】
当業者であれば、プロセスの特徴および設備の全体的な寸法取りの特徴に応じて、陽極の表面からの多孔質スクリーンの最適な距離を決定することができるだろう。発明者らは、対面する陰極から25〜100mmの間隔をおいた陽極を有するセルを用い、そしてその陽極から1〜20mmの位置に置いた多孔質スクリーンを用いて、うまくいく最良の結果を得た。
【0010】
別の側面において、本発明は相互に電気的に接続した上述したセルの積重ねを含む、電解浴から金属を電解採取するための電解装置に関し、例えば、並列に連続して相互に接続したセルの積重ねから成る電解装置に関する。当業者には明らかであろうが、セルの積重ねとは、二つの対面する陰極の間に各々の陽極が挟まれていて、陰極がその二つの面のそれぞれによって二つの隣接するセルの境界を画定していて、陽極およびそれと相応して対面する陰極のそれぞれの面の間に多孔質スクリーンが差し挟まれていて、そして場合により、それぞれの面の間に非導電性の多孔質セパレーターも差し挟まれている、という構成を意味する。
【0011】
別の側面において、本発明は、上述した電解装置の中で銅をイオンの形で含んでいる溶液を電気分解することによって銅を製造する方法に関する。
【0012】
本発明を例証する幾つかの具体例を添付図面を参照して以下で説明するが、それらの説明は本発明の特定の具体例についての様々な構成要素の相互の配置を相対的に例示することだけを目的にしていて、特に、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の一つの態様に係る電解装置の内部の細部の分解組み立て図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一つの態様に係る電解装置を構成するセルのモジュラースタックの最小反復単位を示す。二つの隣接する電解セルは中央の陽極(100)とこの陽極に対向する二つの陰極(400)によって画定されていて、陰極(400)と陽極(100)の二つの面との間に、非導電性の多孔質セパレーター(200)と導電性の多孔質スクリーン(300)が置かれている。導電性の多孔質スクリーン(300)は陽極(100)と電気接続されていて、この接続は、陽極(100)自体を電解装置の陽極ブスバー(図示せず)に掛けるために用いられる陽極ハンガーバー(110)を介して結線(500)によってなされている。
【実施例】
【0015】
以下の実施例は本発明の特定の態様を証明するために提示されるものであり、本発明の実行可能性は特許請求の範囲に記載された数値の範囲内で十分に実証されている。当業者であれば、実施例において開示された構成と技術は本発明を実施するために十分に機能するものであることが発明者によって見いだされた構成と技術を示していることを理解するはずであるが、しかるに、当業者であれば、本明細書の開示に照らして、開示された特定の態様において多くの変更を行うことができて、それでもなお、本発明の範囲から逸脱することなく、同様の結果または類似する結果が得られることを理解するであろう。
【0016】
実施例1
170mm×170mmの全体の断面と1500mmの高さを有していて、陰極と陽極を有する単一の電解採取用セルの中で実験室試験を行った。厚さが3mm、幅が150mm、そして高さが1000mmのAISI 316ステンレス鋼の薄板を陰極として使用した。陽極は、グレード1のチタンで厚さが2mm、幅が150mm、そして高さが1000mmのエキスパンデッドシートからなり、イリジウムとタンタルの混合酸化物の被覆で活性化されたものであった。陰極と陽極は垂直に対面させて配置し、外側の表面の間について40mmの距離で間隔をおいた。
【0017】
陽極と陰極の間の間隙の中に、グレード1のチタンで厚さが0.5mm、幅が150mm、そして高さが1000mmのエキスパンデッドシートからなり、21g/m
2の酸化スズの層で被覆したスクリーンを、陽極の表面から10mmの間隔をおいて配置し、そして1Ωの電気抵抗を有する抵抗体を介して陽極に電気接続した。
【0018】
このセルを、160g/lのH
2SO
4とCu
2SO
4としての50g/lの銅を含む電解液を用い、そして67.5Aの直流電流(これは450A/m
2の電流密度に相当する)を供給して運転すると、陽極において酸素が発生し、そして陰極において銅の付着が開始した。このような電気分解の条件を実施する間に、ガスの泡の発生を観察することによって、酸素の発生反応に対するスズをベースとする被覆の高い過電圧のために、対面するスクリーンの上ではなく陽極の表面上で陽極反応が選択的に生じることを確認した。このことは、スクリーンを通る電流を測定し、それについてゼロの値を検出したことによっても確認された。
【0019】
大部分の試験を行う間、銅は不均一に付着し、特に樹枝状に付着することが観察され、例えばある場合には、陰極の表面上で約10mmの直径の樹枝状物が成長して、それがスクリーンと接触するまで進行したことが観察された。樹枝状物を生成させる電流は最初の種類の導電体からなる回路を通して流出したが、その接触点、酸化スズを被覆したチタンのスクリーン、抵抗体、および陽極ブスバーへの結合部を通して2Aの電流が検出され、これは13A/m
2に相当し、電気分解の電流密度である450A/m
2よりも十分に小さい値であった。これは、セルの効率の損失が極めて小さいこと、特に保護スクリーンが無いセルにおける短絡に典型的な損失と比較して、損失が極めて小さいことを示している。このような状態は、顕著な問題を示さずに約8時間にわたって安定して持続した。
【0020】
比較例1
陰極と陽極の間に保護遮蔽物を置かずに、実施例1の試験を繰り返した。約2時間の試験の後、約12mmの直径を有する樹枝状物が形成し、陽極の表面と接触するまで成長した。これによって発生した短絡を通しての電流は、使用した整流器の限度である500Aを超え、陽極構造物に広範囲の腐食が生じて、樹枝状物の直径に相当する直径の穴が形成した。その時点で試験を強制的に終了させた。
【0021】
以上の説明は本発明を限定することを意図しておらず、本発明はその範囲から逸脱することなく様々な態様に従って用いることができ、本発明の範囲は添付する特許請求の範囲だけによって確定される。
【0022】
本願の明細書と特許請求の範囲を通して、「含む」(および「含んでいる」というような変形)という用語は、他の構成要素、構成部材または追加の加工工程の存在を除外することを意図していない。
【0023】
文献中の検討事項、法令、資料、方策、記事、その他同種類のものは、単に本発明についての背景を提供するという目的のために本明細書に含まれる。これらの事項の何らかのもの、あるいはそれらの全てが先行技術の基礎の部分を形成していたか、あるいは、それらが、本出願の各々の請求項の優先日の前に、本発明に関連する分野において一般的な共通認識になっていた、ということは示唆されないし、表明されてもいない。
【符号の説明】
【0024】
100 陽極、 110 陽極ハンガーバー、 200 多孔質セパレーター、 300 多孔質スクリーン、 400 陰極、 500 結線。