(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472799
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】直流中間回路の中間点と交流グリッドの中性導体の端子間のスイッチを含むインバータとインバータを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20190207BHJP
H02M 1/12 20060101ALI20190207BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
H02M7/487
H02M1/12
H02J3/38 130
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-533563(P2016-533563)
(86)(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公表番号】特表2016-537954(P2016-537954A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014074601
(87)【国際公開番号】WO2015074965
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】102013113000.3
(32)【優先日】2013年11月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ブレミッカー,スフェン
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−027957(JP,A)
【文献】
特開2012−130224(JP,A)
【文献】
特開2008−5611(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2608375(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/487
H02M 1/12
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側で発電機(2)へ出力側で多相交流グリッド(3)へ接続されるトランスレスインバータ(1)であって前記入力側の直流中間回路(4)の中間点(12)と前記多相交流グリッド(3)の中性導体(33)の端子(32)間のスイッチ(35、36)を有する多相インバータブリッジ(5)を含むトランスレスインバータ(1)を動作させる方法において、
第1の動作条件であって、
(1−1)前記トランスレスインバータ(1)において測定する残留電流、漏れ電流が、前記スイッチ(35、36)の開状態で第1の電流制限を越えること、
(1−2)前記トランスレスインバータ(1)において測定する残留電流、漏れ電流が、前記スイッチ(35、36)の閉状態で前記第1の電流制限より小さい第2の電流制限を越えること、
(1−3)前記直流中間回路(4)に接続する前記発電機(2)に対する漏れ電流が、容量制限を越えるということ、
(1−4)多相交流グリッドの位相導体(22〜24)に、非対称給電が意図されていること、
の少なくとも1つを含む第1の動作条件が存在する場合、電力がスイッチ(35、36)閉状態で前記インバータブリッジ(5)により前記直流中間回路(4)から前記交流グリッド(3)中へ送出され、
前記第1の動作条件から前記第1の動作条件と異なる第2の動作条件であって、
(2−1)前記トランスレスインバータ(1)において測定する残留電流、漏れ電流が、スイッチ(35、36)開状態で第1の電流制限を維持すること、
(2−2)前記トランスレスインバータ(1)において測定する残留電流、漏れ電流が、スイッチ(35、36)閉状態で第1の電流制限より小さい第2の電流制限を維持すること、
(2−3)直流中間回路に接続する前記発電機(2)に対する漏れ容量が、容量制限を維持すること、
(2−4)前記直流中間回路(4)の中間回路電圧は前記交流グリッド(3)の相電圧のピーク値の2倍に達しないこと、
(2−5)多相交流グリッドの位相導体(22〜24)に、対称給電が意図されていることの少なくとも1つを含む第2の動作条件へ遷移すると前記スイッチ(35、36)は開放され、
前記第2の動作条件から前記第1の動作条件へ遷移すると前記スイッチ(35、36)は閉じられ、
前記第2の動作条件が存在する場合、電力はスイッチ(35、36)開状態で前記インバータブリッジ(5)により前記直流中間回路(4)から前記交流グリッド(3)中へ送出される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記インバータ(1)において測定される残留電流または漏れ電流は、前記直流中間回路(4)の中間回路電圧を前記交流グリッド(3)の線間電圧のピーク値超から前記相電圧のピーク値の2倍の値超まで増加することによりスイッチ(35、36)開状態で低減される、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
入力側の直流中間回路(4)と、
多相インバータブリッジ(5)と、
発電機(2)の入力側端子と、
多相交流グリッド(3)の出力側端子部(19〜21、32)と、
前記入力側直流中間回路(4)の中間点(12)と前記多相交流グリッド(3)の中性導体(33)の端子(32)間のスイッチ(35、36)と、
前記インバータブリッジ(5)と前記スイッチ(35、36)を請求項1又は2に記載の方法に従って制御するコントローラ(44)とを有するトランスレスインバータ(1)。
【請求項4】
請求項3に記載のインバータ(1)において、前記インバータ(1)における残留電流または前記入力側で前記インバータ(1)へ接続された前記発電機(2)の漏れ電流を測定するための測定装置が前記コントローラ(44)へ接続され、前記測定装置は残留電流センサ(43)を含む、ことを特徴とするインバータ(1)。
【請求項5】
請求項3または4に記載のインバータ(1)において、前記インバータブリッジ(5)は、前記直流中間回路の前記中間点(12)と前記インバータブリッジ(5)のハーフブリッジ(6〜8)の中間点(10)間の双方向スイッチ(11)を有する多重回路を含む、ことを特徴とするインバータ(1)。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか一項に記載のインバータ(1)において、
前記スイッチ(35、36)はライン(34)に配置され、前記ライン(34)は、前記直流中間回路(4)の前記中間点(12)と、前記インバータブリッジ(5)から前記交流グリッド(3)の位相導体(22〜24)の端子(19〜21)へ至る前記ライン(34)およびライン(16〜18)へ接続された第1のキャパシタ(39)と前記位相導体(22〜24)の前記端子(19〜21)へ至る前記ライン(34)とライン(16〜18)とへ接続された前記インバータ(1)の第2のキャパシタ(40)間に位置する点における前記中性導体(33)の前記端子(32)とを接続する、ことを特徴とするインバータ(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のインバータ(1)において、別のスイッチ(27、28)が、前記インバータブリッジ(5)から前記交流グリッド(3)の前記位相導体(22〜24)の前記端子(19〜21)へ至る各ライン(16〜18)に設けられる、ことを特徴とするインバータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続されるインバータであって直流中間回路の中間点と交流ネットワークの中性導体の端子間のスイッチを有するインバータとそのインバータを動作させる方法に関する。
【0002】
交流グリッドの中性導体は零導体とも呼ばれる。
【背景技術】
【0003】
入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続されるインバータであって直流中間回路の中間点と交流グリッドの中性導体の端子間のスイッチを有するインバータは欧州特許第2608375A2号明細書から知られている。この公知のインバータにより電力が直流中間回路へ接続された太陽電池発電器から交流グリッドへ送出されるときは常に、スイッチは閉じられる。スイッチは別の電気機械スイッチと直列に接続された電気機械スイッチである。2つの電気機械スイッチのこのような直列構成はまた、インバータのインバータブリッジと交流グリッドの位相導体の端子間に設けられる。直流中間回路の中間点と中性導体の端子間の電気機械スイッチをそれらの分離性能に関して試験するために、スイッチは個々に開閉され得る。
【0004】
電気機械スイッチを試験することに関してさえ、インバータブリッジと交流グリッドの位相導体の端子間のすべての電気機械スイッチが閉じられ、一方直流中間回路の中間点と中性導体の端子間の1つまたは両方の電磁開閉器がそれぞれ閉じられるインバータのいかなる状態も欧州特許第2608375A2号明細書には記載されていない。
【0005】
欧州特許第2107672A1号明細書から、交流グリッドの中性ラインと直流中間回路の中間点との接続無しに入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続された三相インバータは知られている。このインバータは高効率を有し、直流中間回路では低い中間回路電圧で機能する。しかし、このインバータでは、直流中間回路へ接続された発電機から流れる漏れ電流が比較的大きいことが分かった。加えて、交流グリッドの異なる相内への電力のいかなる非対称給電も可能ではない。
【0006】
欧州特許第2107672A1号明細書から公知の三相インバータでは、直流中間回路の中間点は、インバータのインバータブリッジのハーフブリッジの中間点から交流グリッドの位相ラインに至るラインへフィルタキャパシタを介し接続され、フィルタインダクタンスはこれらのラインに配置される。ハーフブリッジは多重(multi−level)回路特に3重(three−level)回路として構成される。インバータブリッジの中間点はそれぞれ、対向する遮断方向を有する2つの直列接続半導体スイッチからなる双方向スイッチを介し直流中間回路の中間点へ接続される。
【0007】
欧州特許第2375552A1号明細書から、欧州特許第2107672A2号明細書に記載のような入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続されたインバータを動作させる方法は知られている。この公知の方法では、インバータの動作中に発生する漏れ電流は、インバータの入力側の直流中間回路の中間回路電圧を増加させることにより低減される。これは、その直流中間回路の中間点と出力側に接続された交流グリッドの中性ラインとの接続無しにインバータにより許容される低い中間電圧の範囲内で可能である。交流グリッドの位相−位相ライン(phase−to−phase line)電圧のピーク値と交流グリッドのピーク位相−中性ライン(phase−to−neutral line)電圧の2倍の値との間のこの電圧範囲内では、インバータブリッジのスイッチは、位相ライン中へ送出される交流電流が所謂過変調により形成されるように駆動される。この過変調は、中間回路電圧の低下時に過変調の増加度とともに増加する漏れ電流を生じる。したがって、直流中間回路へ接続された発電機の漏れ容量にさらに依存する漏れ電流は、中間回路電圧を増加することにより低減され得る。
【0008】
欧州特許第2367272A2号明細書から、入力側で発電機へ接続され三相ブリッジ回路を含むインバータは公知であり、インバータの出力側の位相ラインは三相交流グリッドへ接続され得る。インバータは、交流グリッドの中性ラインへのいかなる接続も含まない。共通接続点へ接続されたキャパシタは各位相ラインへそれぞれ接続される。インバータの入力側の中間回路は、減衰抵抗器を介し接続点へ接続された平滑キャパシタの直列配置へ接続される。
【0009】
米国特許出願公開第2013/0229837A1号明細書から、交流グリッドの電力品質を改善するために能動フィルタとして動作されるトランスレス変換器は知られている。変換器は、交流側で交流グリッドへ直流側で直流中間回路へ接続される三相の変換器ブリッジを含む。制御可能スイッチが直流中間回路の中間点と多相交流グリッドの中性導体の端子間に設けられる。このスイッチは、一方では実際の直流中間回路の中間点へ他方では補助キャパシタモジュールの中心点へ接続された中性ラインの2つの分岐内の2つの別個のチョークモジュールと組み合わせられる。変換器は、スイッチ開状態で3p3w構成またはスイッチ閉状態で3p4w構成の何れかとなるスイッチにより構成され得る。リプル電流を抑制するために直流中間回路の能力を増す補助キャパシタモジュールは3p4w構造の一部を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続されるインバータを動作させる方法と、大きな漏れ容量を有する発電機へ入力側で接続される際に最適なやり方で多くの動作条件をカバーするインバータとを提供する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、独立請求項1の特徴を有する方法と独立請求項5の特徴を有するトランスレスインバータにより達成される。本方法およびインバータの好適な実施形態は従属請求項において規定される。
【0012】
入力側で発電機へ出力側で多相交流グリッドへ接続されたトランスレスインバータであって入力側の直流中間回路の中間点と多相交流グリッドの中性導体の端子間のスイッチを有する多相インバータブリッジを含むトランスレスインバータを動作させる方法では、電力は、第1の動作条件が存在する場合、スイッチ閉状態でインバータブリッジにより直流中間回路から交流グリッドへ送出され、一方、電力は、第1の動作条件と異なる第2の動作条件が存在する場合、スイッチ開状態でインバータブリッジにより直流中間回路から交流グリッドへ送出される。したがって、本発明による方法では、入力側の直流中間回路の中間点と多相交流グリッドの中性導体の端子との接続はこれら動作条件に依存して確立または遮断される。
【0013】
したがって、本動作条件では、インバータの効率が最適化され、漏れ電流の増加が最小化され、交流グリッドの位相ライン中への非対称給電が実現され、および/または低いまたは高い中間回路電圧が最適に利用され得る。
【0014】
本発明による方法を実行することは実際には、スイッチが開状態の場合インバータが入力側のその直流中間回路の中間点と交流グリッドの中性ラインとの接続(直流中間回路の中間点が例えばキャパシタを介し交流グリッドの位相ラインへ接続される)無しにインバータに適切な有効回路(effective circuit)を含むということを必要とするということが理解される。キャパシタを介したこのような接続は追加的に、交流グリッドの位相ラインと交流グリッドの中性ライン間に存在し得る。但し、スイッチが開状態である限り、入力側直流中間回路の中間点と中性ラインとは電気化学的に絶縁されたままである。スイッチが閉じられると、入力側の直流中間回路の中間点と出力側に接続された交流グリッドの中性ラインとの接続を有するインバータに適切な有効回路が生じる。
【0015】
スイッチ開状態で電力が直流中間回路から交流グリッド中へ送出される第2の動作条件は、インバータにおいて測定される残留電流または漏れ電流がスイッチ開状態で第1の電流制限を維持するということを特徴とし得る。換言すれば、残留電流または漏れ電流の値はスイッチを閉じるためのいかなる理由も与えない。この場合、残留電流は、誤りに起因する残留電流を指すのではなく、そのかなりの電流成分を形成する直流中間回路へ接続された発電機からの容量性漏れ電流を有するインバータの誤り無し(error−free)動作において発生する残留電流を指す。
【0016】
逆に、インバータにおいて測定される残留電流または漏れ電流であってスイッチ閉状態で第2の電流制限を維持する残留電流または漏れ電流は、スイッチを開放するための指標であり得る。この場合、第2の電流制限は、スイッチ開状態における動作に起因する基本的に高い残留電流を考慮するとともにスイッチの頻繁な作動を回避するために、第1の電流制限より著しく低くてもよい。
【0017】
原理的に、直流中間回路へ接続された発電機に対して判断された漏れ容量値が容量制限を維持すれば、電流制限と同じ判定基準が適用され得る。漏れ容量の値は、インバータの規定動作で発生する漏れ電流したがって残留電流を規定する。漏れ容量が容量制限を維持する限り、スイッチがそれぞれ開または閉状態である場合第1と第2の電流制限値を維持することが可能である。発電機の漏れ容量を判断する方法は例えば国際公開第2011/121056号パンフレットから知られている。
【0018】
第2の動作条件の有無の十分判定基準はさらに、直流中間回路の中間電圧が交流グリッドのピーク位相−中性ライン電圧の2倍の値に達しないということである。しかし、これは、すべての交流グリッドの位相ライン中への対称的給電が意図されているという第2の動作条件の有無の必要判定基準である。
【0019】
逆の考察が第1の動作条件に当てはまる。交流グリッドの位相ライン中への非対称給電が意図されているということがその有無の十分判定基準である。さらに、インバータにおいて測定された残留電流または漏れ電流がスイッチ開状態で第1の電流制限を越えるまたはスイッチ閉状態で第2の電流制限を越えれば第1の動作条件が存在する。漏れ容量に関する対応判定基準は、直流中間回路へ接続された発電機に対して判断された漏れ容量が容量制限を越えるということである。
【0020】
第2の動作条件から第1の動作条件への遷移が本発明による方法において検知されれば、スイッチは閉じられ、インバータのインバータブリッジの制御は、必要に応じ、そのように適応化される。逆の考察は第1の動作条件から第2の動作条件への遷移に当てはまり、ここでは、インバータのインバータブリッジの制御は、必要に応じ、スイッチ開状態での動作に適応化される。
【0021】
スイッチ開状態では、インバータにおいて測定される残留電流または漏れ電流は、直流中間回路の中間電圧をピーク位相−位相ライン電圧より高い値から交流グリッドのピーク位相−中性ライン電圧の2倍の値より高い値まで増加することにより低減され得るまたは比較的小さく維持され得る。これは、このスイッチの閉鎖がインバータの効率に関する欠点に関連付けられるのでスイッチを閉じる前に残留電流を当初制限するために利用され得る。交流グリッドのピーク位相−位相ライン電圧は中間回路電圧の最小値を規定する。この値未満では、いかなる無歪交流電流もスイッチ開状態ですら放出され得ない。交流グリッドのピーク位相−位相ライン電圧を越えると、無歪交流電流は過変調によりスイッチ開状態で放出され得る。
【0022】
過変調は、最大で交流グリッドの位相−中性ライン電圧のピーク値の2倍まで要求され、直流中間回路へ接続された発電機の一定の漏れ容量では、中間電圧の増加と共に減少する漏れ電流の増加を生じる。過変調下のインバータのインバータブリッジを動作させるやり方は、例えば欧州特許第2375552A1号明細書から導出され得る。
【0023】
入力側の直流中間回路と、多相インバータブリッジと、多相交流グリッドの端子と、入力側の直流中間回路の中間点と多相交流グリッドの中性導体の端子間のスイッチとを有する本発明によるトランスレスインバータは、本発明による方法に従ってインバータブリッジとスイッチとを制御するコントローラを含む。
【0024】
第1と第2動作条件を検知するために、インバータの残留電流または入力側でインバータへ接続された発電機からの漏れ電流を測定するための測定装置がコントローラへ接続され得、測定装置は残留電流センサを含む。インバータブリッジは多重回路を含み得る。特に、多重回路はタイプNPC(中性点クランプ:Neutral Point Clamped)の3重回路であり得る。より具体的には、多重回路は、直流中間回路の中間点とそのハーフブリッジの中間点間の双方向スイッチを有するBSNPC(双方向スイッチ中性点クランプ:Bidirectional Switch Neutral Point Clamped)回路であり得る。これらの双方向スイッチは、対向する遮断方向を有する一対の直列または並列接続半導体スイッチからなり得る。
【0025】
直流中間回路の中間点と中性導体の端子間のスイッチは、直流中間回路の中間点と、ラインに接続された第1と第2のキャパシタ間に位置する点における中性導体の端子とを接続するラインに配置され得る。第1と第2キャパシタは、この場合、それらの両端で、交流グリッドの位相導体の端子に至るラインへ接続される。第1と第2のキャパシタは、それぞれが交流グリッドの位相導体の端子へのラインに追加インダクタンスを含むインバータの第1と第2のフィルタの一部であり得る。
【0026】
直流中間回路の中間点と交流グリッドの中性導体間のスイッチはインバータと交流グリッドとを接続するためのリレーの一部であり得る。このとき、このリレーはさらに、インバータブリッジから交流グリッドの位相導体の端子へ至るラインに別のスイッチを含む。しかし、個々のラインにおいて同期動作される個別スイッチを有する通常リレーとは異なり、交流グリッドの中性導体へのラインのスイッチは別個に切り替えられるように構成されなければならない。リレーは、そうでなければよくあることだが各ラインに2つの直列接続電気機械スイッチを含み得る。
【0027】
本発明の有利な発展形態は、特許請求の範囲、明細書および添付図面から生じる。明細書内の上記いくつかの特徴のおよび特徴の組み合わせの利点は、単に例示的であり、本発明の実施形態により必然的に達成される利点無しに代替的または累積的に成立し得る。添付特許請求の範囲の請求主題の範囲を変更すること無く、以下は、最初に出願された出願文書および特許の開示内容に関し当てはまる:別の特徴が、添付図面から、特には様々な部品間の相対配置および相互作用から導出され得る。本発明の様々な実施形態の特徴または様々な特許請求項の特徴の組み合わせもまた、特許請求の範囲の選択された後方参照(back references)から逸脱して可能であり、示唆される。これはまた、別の図に示されるまたはその説明において記述されるこのような特徴に関する。これらの特徴はまた、異なる特許請求項の特徴と組み合わせられ得る。加えて、特許請求の範囲において列記された特徴は、本発明の別の実施形態では省略され得る。
【0028】
特許請求の範囲と明細書において述べられた特徴は、正確にそれらの数または記載の数より大きな数が、用語「少なくとも」の明示的な使用を必要とすることなく存在するように理解されるものとする。例えば、一要素について述べられれば、これは、正確に1つの要素、2つの要素、またはより多くの要素が存在するやり方で理解されなければならない。これらの特徴は、他の特徴により補完されてもよいし、それぞれの製品に含まれる唯一の特徴であってもよい。
【0029】
特許請求の範囲に含まれる参照符号は、特許請求の範囲により保護される主題の範囲を制限しない。これらは、特許請求の範囲をより容易に理解可能にするようにすることだけを目的としている。
【0030】
以下に、本発明はさらに示され、添付図面を参照して実施形態により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるインバータの基本構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、その入力側が太陽電池発電器2へ接続され出力側が三相交流グリッド3へ接続された本発明によるインバータ1を示す。アースに対する明確な漏れ容量を有する発電機の一例としての太陽電池発電器2はインバータ1の三相インバータブリッジ5へ接続された分割(split)直流中間回路4を充電する。インバータブリッジ5の3つのハーブリッジ6〜8はそれぞれBSNPCタイプの3重回路として構成される。この目的のため、ハーブリッジ6〜8は、中間点10と直流中間回路4の2つの外側ポールの一方との間に接続されるスイッチ9に加えて、中間点10と直流中間回路4の中間点12間の双方向スイッチ11を含む。双方向スイッチ11はそれぞれ、対向する遮断方向を有する一対の半導体スイッチ13および逆平行ダイオード14からなる。
【0033】
スイッチ9はまた、半導体スイッチからなり、従来の配向の遮断方向および逆平行ダイオード15を含む。各ハーフブリッジ6〜8の中間点10から、それぞれのライン16〜18は交流グリッド3の3つの位相導体22〜24のうちの1つの3つの端子19〜21のうちの1つに至る。この場合、電流センサ25、インダクタ26、リレー29の2つの直列接続電気機械スイッチ27、28、および別のインダクタ30、31はこれらのライン16〜18に配置される。交流グリッド3の中性導体33の追加端子32がライン34を介し直流中間回路4の中間点12へ接続される。この場合、中間点12から見て、リレー29の2つの直列接続電気機械スイッチ35、36とインダクタ30、31へ結合されたインダクタ37、38とがこのライン34に設けられる。スイッチ35、36はリレー29へ割り当てられるが、スイッチ27、28と独立に切り替え可能である。
【0034】
スイッチ35、36の上流側では、中間点12から見て、ライン34はキャパシタ39を介しライン16〜18へ接続される。スイッチ35、36の下流とインダクタ37、38間には、別のキャパシタ40がそれぞれライン34と、ライン16〜18のうちの1つとへ接続される。追加キャパシタ41がすべてのライン16〜18、34とアース42間に設けられる。インダクタ26とフィルタキャパシタ39は、正弦フィルタとして設計され得るインバータ1の第1のフィルタ46を形成する。インダクタ30、31、37、38とキャパシタ40、41は、インバータ1の別の正弦フィルタおよび/またはラインフィルタとして設計され得るインバータ1の第2のフィルタ47を形成する。第1のフィルタ46と第2のフィルタ47間では、スイッチ35、36がライン34に設けられる。
【0035】
インバータ1は、開スイッチ35、36(すなわち中間点12と中性導体33間のガルヴァニック接続無し)により第1の動作モードで動作される。しかし、インバータ1における残留電流または残留電流センサ43により判断される太陽電池発電器2の漏れ電流が大きくなり過ぎれば、または電流センサ25の制御下で個々の位相導体22〜24中への非対称給電が意図されていれば、スイッチ35、36はインバータ1のコントローラ44により閉じられる。残留電流センサ43はこの場合、インバータ1の交流側に配置される。但し、残留電流センサ43はまた、インバータの直流側に配置され得る。コントローラ44はまた、ライン16〜18とライン34間(すなわち測定装置45を介し各位相導体22〜24と中性導体33間)の電圧を判断する。これにより、コントローラ44はまた、個々の位相導体22〜24間の電圧を間接的に判断する。コントローラは通常、ハーフブリッジ6〜8の中間点10においてインバータ1により放出された電圧が測定装置45により測定される交流グリッド3の電圧と同期された場合だけリレー29(すなわち少なくともスイッチ27、28)を閉じる。
【0036】
スイッチ35、36の位置に依存して、コントローラ44はまた、
図1に不図示の制御ラインを介しインバータブリッジ5のスイッチ9、11を制御する。スイッチ35、36の開状態では、これは例えば欧州特許第2375552A1号明細書から知られた方法に従って行われる。スイッチ35、36の閉状態では、制御は、交流グリッド3の位相導体22〜24中への対称的給電または非対称給電の何れかが実現されるように選択され得る。開状態では、対称的給電だけが合理的である。
【符号の説明】
【0037】
1 インバータ
2 太陽電池発電器
3 交流グリッド
4 直流中間回路
5 インバータブリッジ
6 ハーフブリッジ
7 ハーフブリッジ
8 ハーフブリッジ
9 スイッチ
10 中間点
11 双方向スイッチ
12 中間点
13 半導体スイッチ
14 逆平行ダイオード
15 逆平行ダイオード
16 ライン
17 ライン
18 ライン
19 端子
20 端子
21 端子
22 位相導体
23 位相導体
24 位相導体
25 電流センサ
26 フィルタインダクタ
27 電気機械スイッチ
28 電気機械スイッチ
29 リレー
30 インダクタ
31 インダクタ
32 端子
33 中性導体
34 ライン
35 電気機械スイッチ
36 電気機械スイッチ
37 インダクタ
38 インダクタ
39 キャパシタ
40 キャパシタ
41 キャパシタ
42 アース
43 残留電流センサ
44 コントローラ
45 測定装置
46 フィルタ
47 フィルタ