特許第6472817号(P6472817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64728173次元的基材のパターニング方法及びマスク作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472817
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】3次元的基材のパターニング方法及びマスク作製方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/10 20060101AFI20190207BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20190207BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20190207BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C25D1/10
   C25D1/00 361
   G02C7/04
   G02C11/00
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-564166(P2016-564166)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-519898(P2017-519898A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】US2015027219
(87)【国際公開番号】WO2015164564
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】61/984,693
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】パンドジラオ−スンコジラオ・プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ジェームズ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トナー・アダム
(72)【発明者】
【氏名】ミラー・ジェフリー
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−229605(JP,A)
【文献】 特表2013−533046(JP,A)
【文献】 特開昭52−121459(JP,A)
【文献】 米国特許第02255440(US,A)
【文献】 特開2014−028141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00− 3/66
C25D 5/00− 7/12
G02C 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元的基材のパターニング用マスクの作製方法であって、
前記3次元的基材の形状に対応する、機械加工された型枠を表面に含むマンドレルを供給することと、
前記型枠の第1の領域にメッキ層を成膜することと、
前記型枠の第2の領域に金属層を成膜することであって、前記第2の領域が前記第1の領域とは異なる、ことと、
前記第1の領域の前記メッキ層及び前記第2の領域の前記金属層より下にある、前記マンドレルの部分を除去することと、を含み、
前記3次元的基材が眼用レンズ用である、方法。
【請求項2】
前記マンドレルの前記部分を除去した後に前記メッキ層を剥離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の領域が前記第1の領域を取り囲む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッキ層がリング状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メッキ層が前記型枠の外周に成膜される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メッキ層の幅が100マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記メッキ層の厚さが100マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属層の厚さが100マイクロメートル未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元的基材がほぼ非平面状である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記3次元的基材が非回転対称である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記型枠の上面に接続されたブリッジを設けることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
3次元的基材を請求項1に記載の方法により作製したマスクでパターニングする方法であって、
前記3次元的基材を供給することと、
前記マスクを前記3次元的基材に上重ねすることであって、前記マスクが開口部によって第2の領域から分離された第1の領域を含む、ことと、
前記開口部を介して前記3次元的基材の上に層を成膜することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記開口部の幅が100マイクロメートル未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスクの厚さが100マイクロメートル未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記層が、金属、誘電体、合金、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記3次元的基材がほぼ非平面状である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記3次元的基材が、電子デバイスを設置するための平面領域を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記開口部が前記マスクの前記第1の領域の外周に沿ったリング形状である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2014年4月25日出願の米国特許出願第61/984,693号に対する優先権を主張し、そのすべての開示内容が参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、全般的には、3次元的基材を、その上に成膜されパターニングされた材料で形成されるマスク及び生産物でパターニングする新規方法に関する。本発明はまた、3次元的基材のパターニング用のマスクを作製する新規方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この10年間の消費者需要は、技術を電子デバイスの更なる小型化に駆り立ててきた。とりわけ、消費者の間で電子デバイスのサイズ及び可視性を小さくしようとする流れは、消費者の活動的なライフスタイルと関連しているであろう。即ち、多くの消費者は、少なくとも世界と関わりを持ち続けるため、あるいは個人的な進捗をより効率的に追跡記録するために、電子デバイスを常に携行することを望んでいる。例えば、現在、電子デバイスは、医療デバイスにおいて、様々なメカニズムを通じて生体化学反応の態様を監視し、医薬品又は治療薬を管理された用量で投与するために用いられている。
【0004】
つい最近では、技術企業は、眼用装着型レンズ及びコンタクトレンズにおける超小型電子デバイスの用途を探究してきた。具体的には、人の眼は、数百万の色を識別する能力、光条件の変化に対して容易に適応する能力、及び高速のインターネット接続を上回る速度で信号又は情報を脳に伝達する能力を有する。この知識を利用することにより、超小型電子デバイスを組み込んで適切に設計されたレンズは、視力の向上及び/又は視野欠損の補正を行うことができる。例えば、装着型レンズは、好ましくはポリマーで作製され、眼の能力を増強又は向上させる、電子式可変焦点を有するレンズアセンブリを含み得る。様々な回路及び構成要素が、機能向上を実現するために、これらのポリマー構造に組み込まれる。これらの構成要素には、制御回路、マイクロプロセッサ、通信デバイス、電源装置、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナが含まれ得る。
【0005】
電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、ズームイン及びズームアウト機能によって視力向上をもたらすように設計され得る。あるいは、それらは、レンズの屈折能力、反射能力、及び透過能力を修正し得る。電子及び/又は電動式コンタクトレンズはまた、色及び解像度を向上させ、文字情報を表示し、会話をリアルタイムで字幕に翻訳し、ナビゲーションシステムからの視覚的キューを与え、画像処理及びインターネットアクセスを提供し、光量が少ない状態での視力を向上させるようにも設計され得る。レンズ上の適切に設計された電子素子及び/又は電子素子の配置は、可変焦点光学レンズなしで画像を網膜に投影することを更に可能にし得る。用途には、新しい種類の画像表示、ビデオ、マルチメディア、及び目覚ましアラートが含まれ得る。
【0006】
装着型コンタクトレンズは、角膜前(涙)膜中の特定化学物質の濃度を検出する電子センサを含み得る。このコンタクトレンズは、装用者のバイオマーカー及びヘルスインジケータを非侵襲的に監視する構成要素を内蔵し得る。レンズに組み込まれたセンサは、糖尿病患者が、血液を採取しなくても、涙膜の成分を分析することによって血糖値を監視できるようにし得る。別途に、レンズ内のセンサは、pH、コレステロール、ナトリウム及びカリウムの濃度、並びに他の生物学的マーカーを監視することを可能にし得る。これにより、血液検査室まで行く必要がなくなるので、患者の時間及び費用を節約できる可能性がある。同様に、無線データ送信機と一体となったセンサは、医師が患者の血液化学をほぼ即時で入手することを可能にし得る。
【0007】
技術は絶え間なく進歩し続けているが、電子デバイスを非常に小さい、光学グレードのポリマーレンズの上に組み込むには、いくつかの困難が存在する。具体的には、このような構成要素をレンズの上に直接製造することは、サイズ上の制約により困難である。これらの構成要素は、約1.5cmのポリマーの上に組み込む必要がある。更に重要なことに、電子的構成要素は、汚染防止のために眼の液体環境から十分離れていなければならない。また、平面状の電子デバイスを非平面状のレンズ表面に設置し、相互に接続することも困難である。更には、レンズに電子的構成要素が追加されている状態で、装用者にとって快適なコンタクトレンズを作製することもまた困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、当該技術分野では、超小型電子デバイス及び電源に通じて電気的接続を形成する層が表面に正確に成膜されている3次元的基材を形成するニーズが存在する。
【0009】
当該技術分野での別のニーズとして、眼窩に導入しても十分安全である成膜層及び超小型電子デバイスを表面に備えている3次元的基材を形成することも存在する。
【0010】
当該技術分野での更なるニーズとして、視力の補正、視力の向上、並びに/又は装用者のバイオマーカー及びヘルスインジケータの監視を目的とした成膜層及び超小型電子デバイスを表面に備えている快適な3次元的基材を形成することも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、ヒドロゲル部分に対して剛性インサート、メディアインサート及び/又は電子的要素の制御された接着を促進する工程を含む、エネルギー印加された生体医学及び非生体医学デバイスの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の別の態様では、3次元的基材のパターニング用マスクの作製方法が提供される。この方法は、3次元的基材の形状に対応する、機械加工された型枠を表面に含むマンドレルを供給することを含み得る。型枠の第1の領域にメッキ層が成膜される。型枠の第2の領域に金属層が成膜され、この第2の領域は第1の領域とは異なる。次いで、第1の領域のメッキ層より下にある及び第2の領域の金属層より下にあるマンドレルの部分が除去される。
【0013】
本発明の更に別の態様では、3次元的基材をマスクでパターニングする方法が提供される。この方法は、基材の上にマスクを上重ねする(overlying)工程を含む。マスクは、外周に沿って形成されたリング状開口部によって第2の領域から分離されている第1の領域を含む。リング状開口部を介して基材の上に層が成膜される。
【0014】
本発明の更に別の態様では、3次元的基材が提供される。この基材は、レンズ部分、及びレンズ部分の外側に形成された非平面状部分を含む。更に、この基材は、非平面状部分の上に形成されたリング形状層を含む。この層は、約100マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0015】
以上、発明を実施するための形態がより良く理解されるように、及び当該技術分野への本発明の寄与がより良く理解されるように、本発明の特定の態様を幾分大まかに説明した。言うまでもなく、本発明の更なる態様が以下で説明され、また本明細書に添付された特許請求の範囲の主題を例示することになる。
【0016】
この点において、本発明は、その用途において、以下の説明に記載した又は図面に示した各構成要素の構造又は構成に限定されないことを理解されたい。本発明は、説明したもの以外の態様が可能であり、また様々な方式で実施及び実行され得る。更に、本明細書並びに要約書で用いられる表現及び用語は、説明を目的とするものであり、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明をより深く理解できるよう、ここでは添付図面について言及するが、図面中の同様の要素は同様の番号で参照されるものとする。これらの図面は、本発明を制限するものと解釈すべきではなく、例示のみを意図している。
図1A】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図である。
図1B】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図である。
図1C】本発明に基づく1個のシャドーマスクブランクを有する第1の例示的なマンドレルを示す図である。
図2A】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図である。
図2B】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図である。
図2C】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する第2の例示的なマンドレルを示す図である。
図3A】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図である。
図3B】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図である。
図3C】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図である。
図3D】本発明に基づく複数のシャドーマスクブランクを有する例示的なマンドレルアセンブリを示す図である。
図4】本発明に基づいてマンドレルの機械加工されたウェル内のエポキシ/メッキマスク及びマンドレルの上方に配設されたブリッジ構成要素を組み込んだハイブリッド成膜マスクを製造するための例示的な技術を示す図である。
図5図4Cのマンドレル及びブリッジの断面図である。
図6】本発明に基づく例示的なシャドーマスクの断面図である。
図7】本発明に基づいてマスク対象となる基材上の電子的構成要素を収容するための機械加工された平面を含む例示的なシャドーマスクを示す図である。
図8】本発明に基づく、マスクを用いて相互接続が構成され得る表面を有している例示的な3次元的基材を示す図である。
図9】光学素子及び電子素子の両方を備える例示的なコンタクトレンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は図面を参照しながら説明されるが、本明細書中では同様の参照番号は同様の部品を指すものとする。
【0019】
本明細書において、「一実施形態」若しくは「一態様」、又は同種の用語を参照するときは、その態様と関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。本明細書中の様々な場所における、例えば、用語「一実施形態」又は「一態様」の記載は、必ずしもすべてが同じ態様を参照するわけではなく、また他の態様の相互排他的な別個又は代替の態様でもない。更に、いくつかの態様によって提示され、他では提示されないことがある、様々な特徴が記載される。同様に、いくつかの態様には必要であるが、他の態様には必要でないことがある、様々な必要条件が記載される。
【0020】
マスクは、一般には、その下に位置する基材の特定位置の上に正確な材料の層を成膜するために使用される。具体的には、マスクは、基材の表面の上に所定のパターンを形成するブロックされた領域及びブロックされていない領域を含む。より具体的には、これらのパターンは、3次元的基材(a three three-dimensional substrate)の回転対称表面の上、及び平面状表面などの非回転対称特徴部の上にも相互接続を形成するのに有用である。本明細書に記載されている本発明のデバイス及び方法により、精密なマスクが製造され、その後にそれを用いて、眼科用途及び医療用途で使用される相互接続特徴部が、複雑で、非平面状の3次元表面の上に形成され得る。
【0021】
本発明の第1の態様では、非平面状の基材をパターニングするためのマスクの作製方法が提供される。マスクは、マンドレルを用いて製造される。マンドレルには、当該技術分野において複数の定義があり、これには、機械加工された被機械加工物を成形するために使用される物体、機械加工される材料を保持又は他の何らかの方法で固定する工具、及び他の動く工具を固定するために用いることができる工具が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的では、マンドレルは、シャドーマスクの製造に用いられる1つ又は2つ以上の部品を備えるベース型枠である。より詳細には、マンドレルとは、その内部又はその上に1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクを形成することが可能な要素である。
【0022】
例示的な実施形態では、マンドレルは、ほぼディスク又は円筒形状である。マンドレルは、その一端に位置する、旋盤又は同種の装置に取り付け可能な、1つ又は2つ以上のシャフトを含む。マンドレルの反対側の平面状表面は、詳細な手法によって機械加工され、表面粗さは好ましくは約10nm未満である。マンドレルのこの反対側の平面状表面は、1つ又は2つ以上の型枠ウェルで機械加工され得る。好ましくは、ウェル特徴部は、約100マイクロメートル未満である。より好ましくは、ウェル特徴部は、10マイクロメートル未満である。マンドレルの機械加工された表面は、1つ又は2つ以上の型枠ウェルを含んでおり、マスクされる部材の内部輪郭及び特徴部とほぼ一致する。好ましくは、マスクされる部材は3次元的基材である。より好ましくは、マスクされる部材は非平面状の3次元的基材である。更により好ましくは、マスクされる部材は、超小型電子デバイスがその上に配設されている眼用レンズである。
【0023】
図1A、1B、及び1Cに示されている一実施形態を参照すると、例示的なマンドレル100は、その一平坦面104に1個の型枠又は型枠ウェル102が機械加工された状態で図示されている(図1Aを参照)。図1Bでは、例示的なマンドレル100は、1個のシャドーマスクブランク108がその上に形成されているシャドーマスクブランクメッキ板106を備えている状態で図示されている。図1Cは、マンドレル100から分離したシャドーマスクブランクメッキ板106の一実施形態を図示している。シャドーマスクブランク108は、シャドーマスクブランクメッキ板106から剥離されシャドーマスクを形成し得る。この例示的な実施形態では、マンドレル100は、1個のみの型枠102が内部に機械加工されているためにほぼ円筒形状を有している。マンドレル100を旋盤に固定するための取り付けシャフト110が破線で示されている。図の例示的な実施形態では、型枠102はマスクが用いられる3次元的基材と一致する多くの層及び面を有している。マンドレル100は好ましくはアルミニウムからなり、1個のシャドーマスクブランク108は好ましくはニッケルからなる。1個のシャドーマスクブランク108及びシャドーマスク自体は、本明細書に述べられるような任意の好適なプロセスを用いて製造することが可能である。好ましくは、シャドーマスクの厚さは約100マイクロメートル未満である。更に、パターンの幅に対するシャドーマスクの厚さの比は約1未満である。別の言い方をすれば、100マイクロメートル幅のパターンは、約100マイクロメートル又はそれ未満の厚さのシャドーマスクを必要とする。好ましくは、シャドーマスクの幅は約100〜75マクロメートルである。
【0024】
図2A、2B、及び2Cに示されている別の実施形態を参照すると、一平坦面204に複数の型枠又は型枠ウェル202が機械加工された例示的なディスク形状のマンドレル200(図2A)、複数のシャドーマスクブランク208を含むシャドーマスクブランクメッキ板206がその上に形成された例示的なディスク形状のマンドレル200(図2B)、及びマンドレル200から分離されたシャドーマスクブランクメッキ板206(図2C)が図示されている。複数のシャドーマスクブランク208は、ブランクからマスクを製造するために用いられるのと同じプロセス、例えば、レーザー機械加工を用いてシャドーマスクブランクメッキ板206から剥離され、シャドーマスクを形成し得る。この例示的な実施形態では、マンドレル200は、内部に機械加工される複数の型枠202が収まるようにほぼディスク形状を有している。型枠202のサイズ、型枠202の数、及びマンドレル200のサイズはいずれも互いに関係、又は依存している。複数の型枠202は、任意の適当な構成で配列することができる。破線で図示された、マンドレル200を旋盤に固定するための取り付けシャフト210は、反対側の平坦面において型枠202のそれぞれの裏側中心にあたる位置に配置される。
【0025】
図2Aの図示された例示的な実施形態では、型枠202はそれぞれ、マスクが用いられる3次元的基材と一致する層及び面からなる同一パターンを有しているが、1個のマンドレル上に異なる型枠を用いることも可能である。この場合もやはり、マンドレル200は好ましくはアルミニウムからなり、シャドーマスクブランク208は好ましくはニッケルからなる。シャドーマスクブランク208及びシャドーマスク自体は、本明細書に述べられるような任意の好適なプロセスを用いて製造することが可能である。
【0026】
図3Aに示されている代替の例示的な実施形態を参照すると、複数の開口部302が全面にわたって設けられた、ディスク形状の構造300が図示されている。このようなほぼディスク形状の構造300は、上記に述べたようにアルミニウムなどの任意の数の材料から製造することができる。スルホール開口部302は、1個の型枠又は型枠ウェル306を内部に有する1個のマンドレル構造304を受容するようなサイズに構成されている。図3Bは、マンドレルアセンブリ308を形成する、ほぼディスク形状の構造300(図3A)と複数の1個のマンドレル構造304との組み合わせを図示している。1個のマンドレル構造304及びほぼディスク形状の構造300は、例えばネジ山のような、互いを着脱可能に取り付けるための任意の適当な手段を有し得る。このように各要素同士が相互に連結されることにより、様々な型枠306を1個のマンドレルアセンブリ308に組み込むことができる。図3Cは、シャドーマスクブランクメッキ板310及び関連するシャドーマスクブランク312を備えたマンドレルアセンブリ308を図示している。図3Dは、マンドレルアセンブリ308から分離したシャドーマスクブランクメッキ板310を図示している。
【0027】
図1〜3に図示されているように、1つ又は2つ以上のウェル型枠は一般に対称である。具体的には、転削工具は、1つ又は2つ以上のウェル型枠の中心と一致している、マンドレルの1つ又は2つ以上のシャフトに取り付けられる。マンドレルは、好ましくは、型枠の機械加工時の揺れが小さくなる軽量の材料である。マンドレルはまた、反復使用による応力、ひずみ、及び摩耗に耐えることができる。例示的な実施形態では、マンドレルは、軽量で強度重量比が高く、比較的安価な金属材料から製造される。好ましくは、この材料は、展性及び化学的に溶解される特性を有することからアルミニウムである。それにより、3次元的基材の内部輪郭を複製したウェル型枠を得ることができる。
【0028】
当業者に周知の任意のプロセスを用いて、ウェル型枠を機械加工することができる。例えば、旋盤又はターンミル及びロータリートランスファーマシンなどの他の回転式機械は、1つ又は2つ以上の型枠を製造するために天然又は合成ダイヤモンド先端工具を装備し得る。このプロセスは、ダイヤモンドターニングとして従来周知である。ダイヤモンドターニングは、機械加工の最初の段階が一連のコンピュータ数値制御旋盤を使用して行われる多段階プロセスである。一連の連続した旋盤のそれぞれは、その前のものよりも精密となっている。一連の工程の最後の工程では、ダイヤモンド先端工具を使用してサブナノメートルレベルの表面仕上げ及びサブマイクロメートルレベルの型枠の精度が得られる。
【0029】
あるいは、放電加工を用いて1つ又は2つ以上のウェル型枠が作製され得る。一般に、放電加工は、放電を利用して材料を除去することで所定の形状又は型枠を形成することにより所定の形状を得る製造プロセスである。例示的な実施形態では、マンドレル内で機械加工されるウェルは、マスクされる3次元的基材の成形型とほぼ同一になる。ウェルは、平面状及び非平面状の表面を含み得る。例えば、平面状の表面は、ダイ、電池、及び電極など、これらに限定されない電子的構成要素を収容する基材上の平面状領域と一致するようにウェル内に存在し得る。
【0030】
別の実施形態では、図4Aに示されているようにウェル型枠がマンドレル400内で機械加工された後、図4Bに示されているようにメッキマスク層410がウェル内で成膜される。好ましくは、メッキマスクは非金属材料を含む。例示的な実施形態では、非金属材料はエポキシを含む。更に、ニッケルメッキプロセスを妨げない限り、どのような材料でも用いることができる。具体的には、この層は、型枠の第1の領域に形成される。第1の領域は、型枠の外周のまわりに形成され得る。好ましくは、リング形状で型枠のまわり360度の円である。成膜された層は、好ましくは、シャドーマスクと同じ厚さから数個の原子の層にまですることができる。好ましくは、成膜された層の厚さは100マイクロメートル以下である。更に、成膜された層の幅は、好ましくは100マイクロメートル以下である。その後の3次元的基材のマスキングプロセス中、後で更に詳しく論じるように、材料を3次元的基材の上の特定の位置に成膜及びパターニングするために、エポキシの位置の領域が使用される。シャドーマスクは再利用可能である。例えば、一実施形態では、シャドーマスクは最大数百の複数の成膜に使用され得る。更なる実施形態では、シャドーマスクを洗浄し、無期限に使用することができる。
【0031】
更に別の実施形態では、シャドーマスクは、図4Cに図示されているようなブリッジ構成要素420を含む。好ましくは、ブリッジは1個の一体型構造である。ブリッジは任意の材料で構成され得る。好ましくは、ブリッジは、マンドレルと同じ材料から形成される。ブリッジは、上平坦面及び下平坦面を含む。ブリッジは、マンドレル内に位置する機械加工された型枠のほぼ上方に配設される。ブリッジの各部は型枠内の開口部と交差することができる。例示的な実施形態では、ブリッジは、マンドレルの軸方向に対して直角な、水平の本体を含む。好ましくは、ブリッジの高さは、パターニング/成膜プロセスを妨げることがないように設計される。ブリッジ及びマンドレルは、アルミニウムが溶解された後の部品の一体性及び操作性を維持するように設計される。
【0032】
マンドレル及びブリッジの断面図が図5に示されている。ブリッジの本体521は、1つ又は2つ以上の開口部を含む。開口部は、その後の工程で部品を更に効率よくコーティングすることを可能にする。好ましくは、本体521は、マンドレルの中央部分の真上に位置する中央開口部522を含む。機械加工されたウェル内に位置し、好ましくは機械加工によって形成された、マンドレルの起立部分505は、マンドレルの中央部分の軸方向で上に突出する。好ましくは、ブリッジの中央開口部522、例えば、雌型部分は、機械加工されたウェルの起立部分505、例えば、雄型部分と嵌合してしっかりと取り付けられるように構成される。
【0033】
ブリッジはまた、本体の両端に位置する脚部523も含む。脚部523は、ブリッジ520の本体521の下面から、機械加工されたウェルの隣に位置するマンドレル500の上平坦面に向かって、マンドレル500の軸方向に延在する。好ましくは、脚部523のそれぞれの下面は、マンドレル500の上平坦面506と当接する。例示的な実施形態では、ブリッジ520は、中央開口部522から等距離に離れていて、互いに真向いにある、例えば、180度離れている、2つの脚部523を備える。
【0034】
更なる実施形態では、1つ又は2つ以上のシャドーマスクブランクは、電気メッキ又は電鋳プロセスによってマンドレルの型枠内及びブリッジの上に形成される。具体的には、シャドーマスクブランクは、3次元的基材のパターニングに使用される最終的なマスクの前駆体である。即ち、それらは、後にマスクされる3次元的基材の形状を複製している型枠の形状を複製する。言い換えれば、型枠は、3次元的基材の上に重ね合わせると、ほぼ完全に一致する。基材の上に最適な成膜を行うために、近接して重ね合わされた設計が好ましい。型枠内の不整は、マスクの下で基材の望ましくない領域の上に材料を成膜させる原因となり得る。それにより、基材の上に形成された電子デバイスの静電容量及び他の電気特性が損なわれ得る。それはまた、光学的に透明又は不透明なパターンの透過、反射、及び散乱特性にも影響を与え得る。
【0035】
多くの種類の金属材料がシャドーマスクブランクの製造に使用可能である。例示的な実施形態では、シャドーマスクブランクはニッケルから製造される。好ましくは、成膜金属は、約100マイクロメートル未満の厚さを有する。一般に、パターンの幅に対するシャドーマスクの厚さの比は約1以下である。したがって、100マイクロメートル幅のパターンは、100マイクロメートル又はそれ未満の厚さのシャドーマスクが必要になる。好ましくは、シャドーマスクの厚さは約75〜100マクロメートルである。ただし、シャドーマスクブランクの厚さは用途に応じて変化し得る。
【0036】
シャドーマスクブランクを形成するプロセスは、電鋳から別の好適なプロセスに変更され得る。電鋳は、電気メッキプロセスを用いて薄い部品を製造する周知の金属成形プロセスである。電鋳は、製造される部品が最高の公差又は複雑性を有する場合に用いられる。電気メッキは、溶液中の金属イオンが電界によって移動することでベースの上に金属の被膜をコーティング又はメッキし、メッキが完了した後にこれを剥離するプロセスである。プロセスの性質により、この技術によれば高い忠実度の構造の製造が可能である。別の言い方をすれば、電鋳によって、収縮又は歪みをいっさい生じることなく型枠が正確に複製される。
【0037】
例示的な実施形態では、成膜された金属層の厚さは、約100マイクロメートル未満である。結果として得られたマスクは、1つ又は2つ以上の追加の層をパターニングするために、3次元的基材の上に重ねて置かれる。好ましくは、マスクは、基材の上に配設された前方光学素子から約5マイクロメートル未満に存在するように重ねて置かれる。マスクの厚さの減少は、基材上の成膜された層の寸法管理の改良に関わり、この改良は、後で更に詳しく論じるように、基材の上に形成された電気的構成要素間の静電容量を低減する。
【0038】
図6に図示されているような更なる実施形態では、成膜金属は、マンドレルの頂部平坦面の上、機械加工されたウェルの内側、及びブリッジの上に適用される。例示的な実施形態では、金属層は型枠の第2の領域に適用される。成膜金属は、機械加工されたウェルの内側で、メッキ層が成膜される型枠の第1の領域とは異なる表面及び領域に沿って選択的に適用される。より好ましくは、第2の領域内の成膜金属は、第1の領域内の成膜されたメッキ層と隣接する。図6に示されているように、メッキ層は、後で更に詳しく論じるように、後続のマスク形成プロセスの工程によって剥離される。
【0039】
次いで、マンドレルの上部及びブリッジによって形成されたシャドーマスクブランク(及びエポキシ/メッキマスク)は、マンドレルの残り部分から剥離される。シャドーマスクブランクは、例えば、化学的又は物理的な分離を含む複数の方法で剥離され得る。一実施形態では、シャドーマスクブランクより下にあるマンドレル部分は化学的に溶解される。好ましくは、溶解プロセス後に金属層及びメッキ層より下に残存するアルミニウムは100マイクロメートル未満である。より好ましくは、金属層及びメッキより下にあるマンドレルのアルミニウムはすべて溶解される。別の実施形態では、シャドーマスクブランクは、手によって、又はロボットマニピュレータによってマンドレルから物理的に分離してから、固定台に置き、更なる処理を行う。
【0040】
更なる実施形態では、シャドーマスクがマンドレルから剥離された後、メッキマスクはシャドーマスクから除去される。例示的な実施形態では、メッキマスクは金属層から分離される。好ましくは、エポキシメッキマスクの除去は、熱プロセスによって実施される。例えば、エポキシは、ピーリングによる除去が容易になるように、蒸発又は分解され得る。化学又はプラズマ方式のエッチングもまた、エッチングプロセスがマスク材料に影響しない限り使用することができる。それにより、シャドーマスクに開口部601が形成され、マスクの外周まわりにリング形状が設けられる。この開口部は、エポキシメッキマスクがもともと成膜されていた領域と完全に一致する。マスク600の断面が図6に示されている。図示されているシャドーマスクの厚さは、約100マイクロメートル以下である。図6に図示されているように、リング状のメッキマスクを除去することを考えれば、ブリッジ構成要素は、マンドレルの上部をそれに固定するために利用することができる。
【0041】
また更なる実施形態では、マスクは所望のパターンで処理され得る。所望のパターンは例えば電気的相互接続などの特定の用途に対応する。このパターンは、例えば、レーザー機械加工、レーザーアブレーション、及び/又は化学エッチングを用いた任意の好適な方法で形成され得る。例示的な一実施形態では、パターンはレーザーミクロ機械加工することによってシャドーマスクに形成される。したがって、シャドーマスクブランクをマンドレルから剥離した後、これらをレーザー機械加工システムに適合した保持固定台上に置く。現在利用可能なレーザーシステムの精度は、極めて入り組んだパターンのマイクロ加工を可能とする。
【0042】
更に別の実施形態では、マンドレル内の機械加工されたウェルは、上述のように、非回転対称の領域を含むように機械加工され得る。図7に示されているように、マスク700は、ダイ、半導体、又は電極などの電子デバイスを収容するための平面領域710、例えば、平坦領域を含む。この平面領域は、電気的構成要素間の接続及び応答の高速化を支援する。位置合わせ特徴部もまた、自動化された組み立て及び製造プロセスで利用することができるように、マンドレル及びシャドーマスクに組み込まれ得る。
【0043】
本発明の更なる態様により、3次元的基材の上にある層をパターニングする方法が提供される。例えば、完成したマスクは、レーザーミクロ機械加工固定台から、最終製品を作製するためにマスクされる基材への仮固定に移される。例えば、最終製品が電動式コンタクトレンズのインサート上の電気的相互接続用の基材として用いられる場合、シャドーマスクの開口部から相互接続材料を基材上に成膜することを可能とするシャドーマスクを、特殊な固定部材によって前方光学要素に固定することができる。例示的な実施形態では、成膜される材料は、シャドーマスクに形成された360度のリング状開口部を通過するであろう。基材と適合している限り、当業者に周知の任意の好適な成膜プロセスが使用され得る。
【0044】
例示的な実施形態では、3次元的基材は非平面状である。より好ましくは、基材はほぼ非平面状である。3次元的基材の製造には多数の方法が存在する。いくつかの例示的な実施形態では、射出成形技術を用いて物体を形成し得る。別の例示的な実施形態は、プラスチックフィルムのような様々な材料を形成することにより画定されてもよく、プラスチックシートの熱的加熱と鋳型形成部品からの圧力とが、プラスチックシートを3次元形状に形成する。別の例示的な実施形態は、例えば金属フィルムのスタンピング又は金属材料の電鋳により3次元形状とした後、それらの産物を、別個の電気的相互接続が上部に形成されるように、絶縁材料で被覆することを含み得る。ステレオリソグラフィ及びボクセルベースのリソグラフィのような、3次元的形状の製品を形成し得る他のプロセスが好適であり得る。当業者には、電気的絶縁材料から作製され又は電気的絶縁材料で被覆され得る3次元形状を画定する任意の方法が好適であり得ることは明らかであろう。
【0045】
図8に示されているような例示的な実施形態では、眼用レンズなどの基材800が提供される。図8は、基材800の一部を切断した断面を図示することによって、基材800の3次元的態様の様々な特性を示している。基材800は、外側部分又は縁部802、中央部分又は中央領域804、並びに中間特徴部806及び808を有している。図に示されるように、これらの中間特徴部806及び808のそれぞれは、独自の局所的な3次元的トポロジーを有している。
【0046】
眼用レンズの用途では、縁部802から中央領域804までの高さの差は最大で4mmであり、中間特徴部806と808とは、0.001〜0.5mmの間で変化する局所的な高さの差を有してよく、その側壁の傾きは約2〜約90°まで変化している。
【0047】
マスクは、3次元的基材の上に重ね合わされる、又は重ねて置かれる。本発明に基づいて製造されるシャドーマスクは、基材800の正確な形状に一致するように用いることができる。別の言い方をすると、本発明に基づいて作製されるシャドーマスクは、基材の形状と正確に一致すべきであり、基材に表面と表面で可能な限り近接して配置されなければならない。好ましくは、重ね合わされたマスクとほぼ非平面状の基材の平面領域に位置する前方光学素子との間の誤差は約15nm未満である。具体的には、マスクと基材との間にすき間があると、成膜材料が、マスク内で画定された明確な縁部に制限されない可能性がある。それどころか、材料はマスクの画定された特徴部に近接している特徴部にまで広がる可能性がある。場合によっては、平行な線が互いに近接して配置されている場所では、成膜特徴部が明確に画定されていないと、これらの特徴部の間に電気的短絡が結果として生じる可能性がある。
【0048】
マスクがそれとほぼ一致する3次元的基材の上に位置合わせをして配置された後、シャドーマスク成膜プロセスが実施され得る。ここで薄膜成形に使用され得る成膜技術は多数存在する。例えば、スパッタ成膜が用いられ得る。また、複数のフィルムも使用され得る。例えば、フィルムは、金属フィルム、誘電体フィルム、高k誘電体フィルム、導電性及び非導電性エポキシ、並びに他の導電性及び非導電性フィルムを含み得る。具体的には、金、透明な導電材料(ITOなど)、誘電体(窒化ケイ素、二酸化珪素など)が使用され得る。好ましい実施形態では、金が使用される。更に、これらの種類のそれぞれでは、当該技術分野の範囲内において有用なフィルムの成形に使用することができる一貫性のある材料の幅広い多様性が存在し得る。この一般範囲を制限することなく、特に関心のあるいくつかの材料として、酸化インジウムスズ(ITO)、グラフェン、カーボンナノ粒子及びナノファイバーが挙げられ得る。
【0049】
成膜工程後、適切な厚さを有するフィルムが基材上の所定の位置に形成される。結果として相互接続が直接形成された基材の生産物が実現される。試行により、相互接続特徴部の静電容量は70ピコファラド未満である。より好ましくは、静電容量は約50ピコファラド未満である。好ましい実施形態では、静電容量は約20ピコファラド未満である。この効果は、基材上の360度のリング状成膜層の精度によって実現される。
【0050】
また更なる実施形態では、導電性層、例えば、トレースが確定された後、レーザーアブレーション処理が再び用いられ得る。シャドーマスクによって画定された導電トレース又は相互接続特徴部がレーザーアブレーションによって達成され得る精度を有していない場合、画定された導電トレース又は相互接続特徴部は、レーザーアブレーションの使用によって「トリミング」されても、更に画定されてもよい。特定の例示的な実施形態では、所望の仕上げられた製品に極めて近い特徴部がシャドーマスキングにより形成された後、レーザーアブレーションによってわずかな変更が加えられるため、このようなトリミングによってスループットが改善されうる。
【0051】
例示的な電動式又は電子コンタクトレンズは、1つ又は2つ以上の視力障害を有する患者の視力を補正かつ/又は向上させるか、又は他の有用な眼科的機能を行ううえで必要な要素を有する。更に、それらのレンズは、単純に通常の視力を向上する目的で使用することもでき、又は広範な機能性を与えることもできる。電子コンタクトレンズは、コンタクトレンズに埋め込まれるか又は任意の適当な機能性を与えるためにレンズなしで電子部品を単純に埋め込んだ、組み立てられた前方光学素子である可変焦点光学レンズとして構成することができる。例示的な電子レンズは、任意の数のコンタクトレンズに組み込まれ得る。
【0052】
図9を参照すると、電気的及び機械的相互接続が必要となるような、光学的及び電子的構成要素の両方を含む例示的なコンタクトレンズ900が図示されている。コンタクトレンズ900は、視力の補正及び/又は向上機能を有しても有さずともよい光学領域902を備えるか、あるいは、任意の好適な機能性を与える埋め込まれた電子素子の基材として単純に機能し得る。図の例示的な実施形態では、光学領域902を形成しているポリマー又はプラスチックは、電子素子が取り付けられる基材904を形成するように拡張されている。半導体ダイ906及び電池908などの電子的構成要素が、基材904に機械的かつ電気的に接続されている。これらの電子的構成要素は、ディジタル制御システム、レンズドライバ、ダイ内の他の回路又はブロックにバイアスを供給する手段などの機能ブロックを含み得る。可視、赤外及び/又はその他の形態の電磁放射線に対して応答性がある光センサもまた含まれ得る。
【0053】
導電トレース912は、半導体ダイ906及び電池908など、基材904上の電子的構成要素を電気的に相互接続している。図の例示的な実施形態では、第1の導電トレース912aが半導体ダイ906を前方光学電極914に接続し、第2の導電トレース912bが半導体ダイ906を後方光学電極916に接続している。接着層918は、前方及び後方光学素子を接続するために用いられ得る。上述の導電トレース912は、本明細書に述べたマスク及びマスキング技術を用いて好ましくは製造される。上述のように、導電トレースを形成している成膜層は、基材の外周まわり360度のリング形状になり得る。
【0054】
本発明は最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるもので図示及び説明されているが、説明及び図示した特定の設計及び方法からの変更がそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、記載し例証した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得るすべての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 3次元的基材のパターニング用マスクの作製方法であって、
前記3次元的基材の形状に対応する、機械加工された型枠を表面に含むマンドレルを供給することと、
前記型枠の第1の領域にメッキ層を成膜することと、
前記型枠の第2の領域に金属層を成膜することであって、前記第2の領域が前記第1の領域とは異なる、ことと、
前記第1の領域の前記メッキ層及び前記第2の領域の前記金属層より下にある、前記マンドレルの部分を除去することと、を含む、方法。
(2) 前記マンドレルの前記部分を除去した後に前記メッキ層を剥離することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第2の領域が前記第1の領域を取り囲む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記メッキ層がリング状である、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記メッキ層が前記型枠の外周に成膜される、実施態様1に記載の方法。
【0056】
(6) 前記成膜されたメッキ層の幅が約100マイクロメートル未満である、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記成膜されたメッキ層の厚さが約100マイクロメートル未満である、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記成膜された金属層の厚さが約100マイクロメートル未満である、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記3次元的基材がほぼ非平面状である、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記3次元的基材が非回転対称である、実施態様1に記載の方法。
【0057】
(11) 前記3次元的基材が眼用レンズ用である、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記型枠の上面に接続されたブリッジを設けることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(13) 3次元的基材をマスクでパターニングする方法であって、
前記3次元的基材を供給することと、
前記マスクを前記基材に上重ねすることであって、前記マスクが開口部によって第2の領域から分離された第1の領域を含む、ことと、
前記開口部を介して前記3次元的基材の上に層を成膜することと、を含む、方法。
(14) 前記開口部の幅が約100マイクロメートル未満である、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記マスクの厚さが約100マイクロメートル未満である、実施態様13に記載の方法。
【0058】
(16) 前記層が、金属、誘電体、合金、及びこれらの組み合わせから選択される、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記3次元的基材がほぼ非平面状である、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記3次元的基材が、電子デバイスを設置するための平面領域を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記基材が眼用レンズである、実施態様13に記載の方法。
(20) 前記開口部が前記第1の領域の外周に沿ったリング形状である、実施態様13に記載の方法。
【0059】
(21) レンズ部分と、
前記レンズ部分の外側に形成された非平面状部分と、
前記非平面状部分の上に形成されたリング形状層であって、厚さが約100マイクロメートル未満である、前記リング形状層と、を含む、3次元的基材。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A-4C】
図5
図6
図7
図8
図9