特許第6472821号(P6472821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472821
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】梯子製造装置及び梯子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/00 20060101AFI20190207BHJP
   B23K 37/04 20060101ALI20190207BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20190207BHJP
   B63B 29/20 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B23K37/00 F
   B23K37/04 J
   B23K9/00 501Z
   B63B29/20
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-37212(P2017-37212)
(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公開番号】特開2018-140428(P2018-140428A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2017年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】593083918
【氏名又は名称】株式会社コクホ
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳弘
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3076680(JP,U)
【文献】 特開平7−214305(JP,A)
【文献】 特開平7−284936(JP,A)
【文献】 特開平7−285042(JP,A)
【文献】 特開昭53−69384(JP,A)
【文献】 実開昭61−41800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/00
B23K 37/04
B23K 9/00
B63B 29/20
E06C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の金属製の縦材と、前記一対の縦材間に複数配置されて該縦材に形成された貫通孔に端部が挿入される金属製の横材とを備えた梯子を製造する梯子製造装置であって、
前記一対の縦材間に前記複数の横材が仮付けされて成る仮組梯子を長手方向に移動させる送り機構と、
前記仮組梯子の移動ライン上に配置された溶接部と、
前記溶接部に到達した前記仮組梯子の前記横材を定められた溶接位置で保持する位置決めクランプ機構と、
前記位置決めクランプ機構による前記仮組梯子の前記横材の保持が成された状態で前記仮組梯子を固定する押さえ機構を備え、
前記溶接部には、前記一対の縦材のうちの一方の縦材の前記貫通孔に一端部を挿入した前記横材を前記一方の縦材に対して該一方の縦材の内向き面側で且つ前記仮組梯子の表裏両側から溶接する2組の溶接トーチと、前記一対の縦材のうちの他方の縦材の前記貫通孔に他端部を挿入した前記横材を前記他方の縦材に対して該他方の縦材の外向き面側から溶接する1組の溶接トーチが配置されている梯子製造装置。
【請求項2】
前記送り機構により移動する前記仮組梯子の前記横材が溶接部に到達する毎に前記送り機構による前記仮組梯子の移動を停止させる制御機構を備えている請求項1に記載の梯子製造装置。
【請求項3】
前記送り機構は、駆動源と、前記駆動源の駆動力を前記一対の縦材のうちの一方の縦材に伝える伝達体と、前記一対の縦材のうちの他方の縦材を前記仮組梯子の表裏両側から挟み込む一対のガイド体を具備し、前記一対のガイド体を前記横材の長手方向に移動可能としてある請求項1又は2に記載の梯子製造装置。
【請求項4】
前記位置決めクランプ機構は、前記仮組梯子の移動方向の前後側から前記横材を挟み込む一対の流体圧シリンダを具備し、前記横材を前記仮組梯子の移動方向の進行側で受けて圧縮する受け側流体圧シリンダには、前記横材が定められた溶接位置に達した時点で圧縮を停止させる圧力センサが配置されている請求項1〜3のいずれかに記載の梯子製造装置。
【請求項5】
前記押さえ機構は、前記仮組梯子における前記他方の縦材の前記外向き面と当接する球状押圧体と、前記球状押圧体を介して前記他方の縦材を前記一方の縦材側に押圧する流体圧シリンダを具備し、前記球状押圧体を前記横材の長手方向に移動可能としてある請求項1〜4のいずれかに記載の梯子製造装置。
【請求項6】
互いに対向する一対の金属製の縦材と、前記一対の縦材間に複数配置されて該縦材に形成された貫通孔に端部が挿入される金属製の横材とを備えた梯子を請求項1〜5のいずれかに記載の梯子製造装置により製造するに際して、
前記一対の縦材間に前記複数の横材が仮付けされて成る仮組梯子を前記送り機構によって長手方向に移動させ、
前記仮組梯子の移動ライン上に配置された前記溶接部に到達した前記仮組梯子の前記横材を定められた溶接位置で前記位置決めクランプ機構によって保持すると共に、前記押さえ機構により前記仮組梯子を固定した後、
前記溶接部において、前記一対の縦材のうちの一方の縦材の前記貫通孔に一端部を挿入した前記横材と前記一方の縦材とを2組の溶接トーチにより該一方の縦材の内向き面側で且つ前記仮組梯子の表裏両側から溶接すると共に、前記一対の縦材のうちの他方の縦材の前記貫通孔に他端部を挿入した前記横材と前記他方の縦材とを1組の溶接トーチにより該他方の縦材の外向き面側から溶接する梯子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する一対の金属製の縦材と、この一対の縦材間に複数配置される金属製の横材とを備えた梯子を製造するのに用いる梯子製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような梯子製造装置としては、例えば、特許文献1に記載された船舶用鋼製梯子自動製作装置がある。
この船舶用鋼製梯子自動製作装置は、一対の鋼製側板(縦材)を溶接位置に搬入すると共に完成した船舶用鋼製梯子を搬出する走行架台と、この走行架台を搬送中の一対の鋼製側板に鋼製ステップ材(横材)を取り付けるための孔を開ける孔明け部と、鋼製側板の孔に鋼製ステップ材を供給するステップ材供給部と、走行架台により溶接位置に搬入された鋼製側板及び鋼製ステップ材を溶接姿勢で保持する溶接ポジショナと、溶接ロボットである6軸多関節ロボットを備えている。
【0003】
この船舶用鋼製梯子自動製作装置では、走行架台上において、ステップ材供給部から供給される鋼製ステップ材の端部を鋼製側板の孔に挿入し、溶接ポジショナによって溶接姿勢で保持された鋼製側板及び鋼製ステップ材を6軸多関節ロボットによって溶接して固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-267183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の船舶用鋼製梯子自動製作装置において、鋼製側板及び鋼製ステップ材を6軸多関節ロボットによって溶接して固定するようにしているので、鋼製側板及び鋼製ステップ材に対して様々な方向からアプローチすることができ、効率よく溶接を行うことができる分だけ、鋼製梯子の生産性が向上する。
【0006】
ところが、溶接ロボットとして6軸多関節ロボットを採用している都合上、走行架台の脇に6軸多関節ロボットの作動スペースを確保する必要があることから、限られたスペースでも設置し得る梯子製造装置の構築が望まれており、これを解決することが従来の課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、高い生産性を実現したうえで、コンパクト化をも実現することが可能である梯子製造装置及び梯子製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、互いに対向する一対の金属製の縦材と、前記一対の縦材間に複数配置されて該縦材に形成された貫通孔に端部が挿入される金属製の横材とを備えた梯子を製造する梯子製造装置であって、前記一対の縦材間に前記複数の横材が仮付けされて成る仮組梯子を長手方向に移動させる送り機構と、前記仮組梯子の移動ライン上に配置された溶接部と、前記溶接部に到達した前記仮組梯子の前記横材を定められた溶接位置で保持する位置決めクランプ機構と、前記位置決めクランプ機構による前記仮組梯子の前記横材の保持が成された状態で前記仮組梯子を固定する押さえ機構を備え、前記溶接部には、前記一対の縦材のうちの一方の縦材の前記貫通孔に一端部を挿入した前記横材を前記一方の縦材に対して該一方の縦材の内向き面側で且つ前記仮組梯子の表裏両側から溶接する2組の溶接トーチと、前記一対の縦材のうちの他方の縦材の前記貫通孔に他端部を挿入した前記横材を前記他方の縦材に対して該他方の縦材の外向き面側から溶接する1組の溶接トーチが配置されている構成としている。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記送り機構により移動する前記仮組梯子の前記横材が溶接部に到達する毎に前記送り機構による前記仮組梯子の移動を停止させる制御機構を備えている構成とする。
【0010】
本発明の第3の態様において、前記送り機構は、駆動源と、前記駆動源の駆動力を前記一対の縦材のうちの一方の縦材に伝える伝達体と、前記一対の縦材のうちの他方の縦材を前記仮組梯子の表裏両側から挟み込む一対のガイド体を具備し、前記一対のガイド体を前記横材の長手方向に移動可能としてある構成とする。
【0011】
本発明の第4の態様において、前記位置決めクランプ機構は、前記仮組梯子の移動方向の前後側から前記横材を挟み込む一対の流体圧シリンダを具備し、前記横材を前記仮組梯子の移動方向の進行側で受けて圧縮する受け側流体圧シリンダには、前記横材が定められた溶接位置に達した時点で圧縮を停止させる圧力センサが配置されている構成とする。
【0012】
本発明の第5の態様において、前記押さえ機構は、前記仮組梯子における前記他方の縦材の前記外向き面と当接する球状押圧体と、前記球状押圧体を介して前記他方の縦材を前記一方の縦材側に押圧する流体圧シリンダを具備し、前記球状押圧体を前記横材の長手方向に移動可能としてある構成とする。
【0013】
一方、本発明の第6の態様において、互いに対向する一対の金属製の縦材と、前記一対の縦材間に複数配置されて該縦材に形成された貫通孔に端部が挿入される金属製の横材とを備えた梯子を請求項1〜5のいずれかに記載の梯子製造装置により製造するに際して、
前記一対の縦材間に前記複数の横材が仮付けされて成る仮組梯子を前記送り機構によって長手方向に移動させ、前記仮組梯子の移動ライン上に配置された前記溶接部に到達した前記仮組梯子の前記横材を定められた溶接位置で前記位置決めクランプ機構によって保持すると共に、前記押さえ機構により前記仮組梯子を固定した後、前記溶接部において、前記一対の縦材のうちの一方の縦材の前記貫通孔に一端部を挿入した前記横材と前記一方の縦材とを2組の溶接トーチにより該一方の縦材の内向き面側で且つ前記仮組梯子の表裏両側から溶接すると共に、前記一対の縦材のうちの他方の縦材の前記貫通孔に他端部を挿入した前記横材と前記他方の縦材とを1組の溶接トーチにより該他方の縦材の外向き面側から溶接する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る梯子製造装置では、高い生産性を実現したうえで、コンパクト化をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る梯子製造装置により製造される船舶用鋼製梯子の全体斜視説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る梯子製造装置を示す側面説明図である。
図3図2に示した梯子製造装置の平面説明図である。
図4図3におけるA−A線位置に基づく断面説明図である。
図5図4に示した送り機構の拡大説明図である。
図6図3におけるB−B線位置に基づく断面説明図である。
図7図6における位置決めクランプ機構の拡大平面説明図である。
図8図2における梯子製造装置の押さえ機構の拡大正面説明図である。
図9図6における溶接部の下側溶接トーチの拡大説明図である。
図10図6における2組の下側溶接トーチによる溶接要領を示す溶接部分の拡大斜視説明図(a)及び1組の上側溶接トーチによる溶接要領を示す溶接部分の拡大斜視説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1図10は、本発明の一実施形態による梯子製造装置を示しており、この実施形態では、本発明に係る梯子製造装置によって船舶用鋼製梯子を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示すように、船舶用鋼製梯子Wは、互いに対向する一対の鋼製の側板(金属製の縦材)WA,WAと、これらの側板WA,WA間に複数配置されて該側板WAに形成された角孔(貫通孔)WAhに端部WBeが挿入される鋼製の角材(金属製の横材)WBを備えており、図2及び図3に示すように、梯子製造装置1には、一対の鋼製の側板WA,WA間に複数の角材WBを溶接により仮付けした仮組梯子KWの状態で投入される。
【0018】
この梯子製造装置1は、仮組梯子KWをその長手方向に移動させる送り機構2と、仮組梯子KWの移動ライン上に配置された溶接部3と、送り機構2により移動する仮組梯子KWの角材WBが溶接部3に到達する毎に送り機構2による仮組梯子KWの移動を停止させる制御機構4と、溶接部3に到達した仮組梯子KWの角材WBを定められた溶接位置で保持する位置決めクランプ機構5と、この位置決めクランプ機構5による仮組梯子KWの角材WBの保持が成された状態で仮組梯子KWを固定する押さえ機構6を備えている。
【0019】
送り機構2は、図4にも示すように、レールフレーム21と、駆動源としてのモータ22と、このモータ22の駆動力を一対の鋼製の側板WA,WAのうちの下方に位置する側板WAL(一方の縦材)に伝える駆動ローラ(伝達体)23を具備している。
【0020】
また、この送り機構2は、レールフレーム21に沿って複数組配置されて、一対の鋼製の側板WA,WAのうちの上方に位置する側板WAU(他方の縦材)を仮組梯子KWの表裏両側(図4左右側)から挟み込む一対の可動ガイドローラ(ガイド体)24,24を具備している。
【0021】
一対の可動ガイドローラ24,24は、図5にも示すように、ローラフレーム25によって支持されており、ハンドル26の回転操作により180°回転させて、角材WBの長手方向の実線で示す位置及び一点鎖線で示す位置の2か所で選択的に固定する(図示上下方向に移動させる)ことができるようにしてある。つまり、角材WBの長さが異なる2種類の仮組梯子KWの送りに対応可能としてある。
【0022】
そして、この実施形態では、一対の可動ガイドローラ24,24の上方に一対の固定ガイドローラ27,27を配置することで、角材WBの長さが異なる二点鎖線で示すさらにもう1種類(合計3種類)の仮組梯子KWの送りに対応可能としてある。
【0023】
なお、この実施形態における送り機構2は、一対の鋼製の側板WA,WAのうちの下方に位置する側板WALを仮組梯子KWの表裏両側から挟み込む一対の可動ガイドローラ24,24もレールフレーム21に沿って複数組具備している。また、図2及び図3における符号28は送りローラであり、駆動ローラ23と同じものを使用している。
【0024】
制御機構4は、溶接3近傍の送り機構2におけるローラフレーム25に配置した位置決めセンサ41と、この位置決めセンサ41からの角材検出信号を受けて送り機構2による仮組梯子KWの移動を停止させる図示しないコントローラを具備しているほか、仮組梯子KWの搬入及び溶接終了後の搬出を検出する図示しないセンサを具備している。
【0025】
位置決めクランプ機構5は、図6及び図7に示すように、仮組梯子KWの移動方向と直交する方向に配置された第1油圧シリンダ51と、この第1油圧シリンダ51の作動により仮組梯子KWに対して進退するスライドフレーム52と、仮組梯子KWの移動方向に沿って配置されてスライドフレーム52とともに進退する第2油圧シリンダ(受け側流体圧シリンダ)53と、この第2油圧シリンダ53と同じく仮組梯子KWの移動方向に沿って配置されてスライドフレーム52とともに進退する第3油圧シリンダ54を具備している。
【0026】
第2油圧シリンダ53にはクランプ受け具55が設けられており、一方、第3油圧シリンダ54のシリンダロッド54aの先端にはベルクランク56が接続されており、第2油圧シリンダ53及び第3油圧シリンダ54は、クランプ受け具55及びベルクランク56を介して角材WBを仮組梯子KWの移動方向(図7矢印方向)前後側から挟み込むようになっている。
【0027】
この場合、第2油圧シリンダ53には、図示しない圧力センサが組み込まれており、仮組梯子KWの角材WBが定められた溶接位置に達した時点で圧縮を停止させる、すなわち、サイズの異なる角材WB、例えば、一辺19mmの角材WB及び一辺22mmの角材WBのいずれの角材WBをも正確に溶接位置で把持することができるようになっている。また、金属製の横材が角材WBとは異なる断面形状を有する場合(例えば、金属製の横材が丸棒である場合)も、角材WBと同様に正確に溶接位置で把持することができる。
【0028】
押さえ機構6は、図8にも示すように、送り機構2におけるローラフレーム25,25間の架設フレーム29に配置された2本のガイド61,61と、これらのガイド61,61間で且つ上方に配置された作動シリンダ62と、この作動シリンダ62にロッド押し出し動作をさせるエアシリンダ63と、作動シリンダ62のロッド62aの先端に装着されて2本のガイド61,61間で摺動するスライダ64と、作動シリンダ62のロッド押し出し動作により仮組梯子KWの上方に位置する側板WAUの外向き面WAoと当接して押圧する球状押圧体65を具備している。
【0029】
この実施形態において、作動シリンダ62には、ロッド62aのストロークを変更する(球状押圧体65を角材WBの長手方向に移動させる)図示しない調整ハンドルが設けてあり、この調整ハンドルの操作によって角材WBの長さが異なる複数種(この実施形態では実線で示す側板WAU,一点鎖線で示す側板WAU及び二点鎖線で示す側板WAUの3種類)の仮組梯子KWを固定することができるようになっている。
【0030】
そして、この梯子製造装置1において、溶接部3には、図6及び図9に示すように、下方に位置する側板WALの角孔WAhに一端部WBeを挿入した角材WBを下方に位置する側板WALに対してその内向き面WAi側で且つ仮組梯子KWの表裏両側(図示左右側)から溶接する2組の下側溶接トーチ31,31と、図2及び図6に示すように、上方に位置する側板WAUに対してその外向き面WAo側から溶接する1組の上側溶接トーチ32とをそれぞれ配置している。
【0031】
2組の下側溶接トーチ31,31は、いずれも溶接台33,33上におけるX方向及びY方向の2方向に送り動作可能なXYテーブル34,34にホルダ37を介して配置されており、下方に位置する側板WALの溶接点PLに対して互いに進退して、向かい合わせで図10(a)の矢印に沿って隅肉溶接を行うようになっている。
【0032】
一方、1組の上側溶接トーチ32も、溶接部3の門型フレーム35上のXYテーブル36に配置されており、上方に位置する側板WAUの溶接点PUに対して、2組の下側溶接トーチ31,31と同時に図10(b)の矢印に沿って平面溶接を行うようになっている。なお、図2及び図6における符号38は、トーチ高さ調節ユニットであり、上側溶接トーチ32の高さを仮組梯子KWの幅に合わせる場合に使用する。
【0033】
そこで、本実施形態による梯子製造装置1により、船舶用鋼製梯子Wを製造する要領を説明する。
【0034】
まず、一対の鋼製の側板WA,WA間に複数の角材WBを溶接により仮付けした仮組梯子KWを梯子製造装置1に搬入する。制御機構4の図示しないセンサがこの仮組梯子KWの搬入を検出することで送り機構2のモータ22が作動し、その駆動力が駆動ローラ23によって一対の鋼製の側板WA,WAのうちの下方に位置する側板WALに伝えられ、仮組梯子KWはその長手方向に移動する。
【0035】
この移動の間、レールフレーム21に沿って複数組配置した上側の一対の可動ガイドローラ24,24が一対の鋼製の側板WA,WAのうちの上方に位置する側板WAUを仮組梯子KWの表裏両側から挟み込んでいると共に、同じくレールフレーム21に沿って複数組配置した下側の一対の可動ガイドローラ24,24が一対の鋼製の側板WA,WAのうちの下方に位置する側板WALを仮組梯子KWの表裏両側から挟み込んでいるので、仮組梯子KWの送りが円滑に成されることとなる。
【0036】
次いで、溶接部3に仮組梯子KWの最初の角材WBが到達すると、これを制御機構4の位置決めセンサ41が検出し、この位置決めセンサ41からの角材検出信号を受けてコントローラが送り機構2による仮組梯子KWの送りを停止させる。
【0037】
仮組梯子KWの送りが停止すると、位置決めクランプ機構5の第1油圧シリンダ51の作動によりスライドフレーム52が仮組梯子KWに接近するのに続いて、第2油圧シリンダ53が作動してクランプ受け具55が溶接部3に到達した角材WBに当接する。
【0038】
これと同時に、押さえ機構6のエアシリンダ63による作動シリンダ62のロッド押し出し動作により、球状押圧体65が仮組梯子KWの上方に位置する側板WAUの外向き面WAoを押圧して仮組梯子KWを固定する。
【0039】
そして、位置決めクランプ機構5の第3油圧シリンダ54が作動して、第2油圧シリンダ53のクランプ受け具55及び第3油圧シリンダ54のベルクランク56によって、角材WBを仮組梯子KWの移動方向の前後側から挟み込む。
【0040】
この挟み込みに際して、第2油圧シリンダ53には、図示しない圧力センサが組み込んであるので、仮組梯子KWの角材WBが定められた溶接位置で把持された時点で第2油圧シリンダ53の圧縮が停止する。
【0041】
このとき、仮組梯子KWの角材WBの位置が仮組梯子KWの移動方向に若干ずれていたとしても、押さえ機構6の球状押圧体65で仮組梯子KWの側板WAUの外向き面WAoを押圧しているので、押さえ機構6による仮組梯子KWの固定に支障を来すことはない。
【0042】
このようにして仮組梯子KWを固定した後、溶接部3において、控えポジションに退避していた2組の下側溶接トーチ31,31が、XYテーブル34,34により下方に位置する側板WALの溶接点PLに互いに接近して、向かい合わせで図10(a)に示す矢印に沿ってそれぞれ隅肉溶接を行い、これと同時に、1組の上側溶接トーチ32も、XYテーブル36により上方に位置する側板WAUの溶接点PUに接近して、図10(b)に示す矢印に沿って平面溶接を行う。
【0043】
そして、溶接終了後において、2組の下側溶接トーチ31,31及び1組の上側溶接トーチ32は各々の控えポジションにそれぞれ後退し、続いて、位置決めクランプ機構5による角材WBの拘束が解除されると共に、押さえ機構6による仮組梯子KWの固定が解除される。
【0044】
この後、送り機構2のモータ22が再び作動して、次の角材WBを溶接部3に位置させるべく仮組梯子KWを移動させて、以降、上記工程を繰り返す。
【0045】
そして、上記一連の工程の終了後には、仮組梯子KWの上方に位置する側板WAU及び下方に位置する側板WALの位置を逆にして梯子製造装置1に搬入し、上記一連の工程を施すことで、船舶用鋼製梯子Wの製造が完了する。
【0046】
上記したように、本実施形態による梯子製造装置1では、仮組梯子KWの移動ラインを跨いで2組の下側溶接トーチ31,31を配置すると共に、1組の上側溶接トーチ32を移動ライン上に配置しているので、移動ラインの脇に広い作動スペースを確保する必要がなく、その結果、生産性の向上を図りつつ、コンパクト化をも実現し得ることとなる。
【0047】
また、本実施形態による梯子製造装置1では、仮組梯子KWの角材WBが溶接部3に到達する毎に送り機構3による仮組梯子KWの移動を停止させる制御機構4を備えているので、溶接部3に角材WBを正確に停止させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態による梯子製造装置1では、上方に位置する側板WAUを仮組梯子KWの表裏両側から挟み込む送り機構2の一対の可動ガイドローラ24,24を、角材WBの長手方向の2か所で選択的に固定することができるようにしてあるので、角材WBの長さが異なる(幅の異なる)2種類の仮組梯子KWの送りに対応し得ることとなる。
【0049】
さらにまた、本実施形態による梯子製造装置1は、位置決めクランプ機構5が、仮組梯子KWの移動方向の前後側から角材WBを挟み込む第2油圧シリンダ53及び第3油圧シリンダ54を具備しており、角材WBを仮組梯子KWの移動方向の進行側で受けて圧縮する受け側の第2油圧シリンダ53に、角材WBが定められた溶接位置に達した時点で圧縮を停止させる圧力センサを設けた構成としているので、丸棒等の断面形状の異なる横材や、サイズの異なる角材WBをも正確に溶接位置で把持することができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態による梯子製造装置1において、球状押圧体65を介して側板WAUを押圧する作動シリンダ62の作動ストロークを変更可能としてある、すなわち、球状押圧体65を角材WBの長手方向に移動可能としてある構成としているので、角材WBの長さが異なる(幅の異なる)複数種の仮組梯子KWを固定することができる。
【0051】
加えて、仮組梯子KWの上方に位置する側板WAUの外向き面WAoを押さえ機構6の球状押圧体65で押圧するようにしているので、位置決めクランプ機構5の第2油圧シリンダ53のクランプ受け具55及び第3油圧シリンダ54のベルクランク56による角材WBの挟み込みに際して、仮組梯子KWの角材WBの位置が仮組梯子KWの移動方向に若干ずれていたとしても、押さえ機構6による仮組梯子KWの固定に支障を来すことを回避し得る。
【0052】
本発明に係る梯子製造装置及び梯子製造方法の構成は、上記した実施形態の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 梯子製造装置
2 送り機構
3 溶接部
4 制御機構
5 位置決めクランプ機構
6 押さえ機構
22 モータ(駆動源)
23 駆動ローラ(伝達体)
24 可動ガイドローラ(ガイド体)
31 下側溶接トーチ
32 上側溶接トーチ
53 第2油圧シリンダ(受け側流体圧シリンダ)
54 第3油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
63 エアシリンダ(流体圧シリンダ)
65 球状押圧体
KW 仮組梯子
W 船舶用鋼製梯子
WA 一対の側板(縦材)
WAL 下方の側板(一方の縦材)
WAU 上方の側板(他方の縦材)
WAi 側板の内向き面
WAh 角孔(貫通孔)
WAo 側板の外向き面
WB 角材(横材)
WBe 角材の端部
図1
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