【実施例】
【0067】
実施例A: 900℃および速いランプ速度でのSPS − 二元Ni−Ti合金
予合金Ni−Ti粉末Aを約2.5gの量でSPS装置の直径10mmのダイに一度に添加し、各2.5gの添加の間で緻密化圧力を適用して4工程で積層する。最初の2.5gを緻密化するために、緻密化圧力を110MPa超にしうるが、ダイの破裂を防止するために、後続の緻密化では圧力を90MPaに徐々に低下させる。主にNiTi粉末の性質に起因して、ただし、ダイの膨張およびSPS機自体の一般的コンプライアンスにも起因して、除荷時にスプリングバックが顕在化する。
【0068】
本試験では、約900℃の焼結温度および約50MPaの焼結圧力を用いて、二元Ni−Ti合金に対して最良の密度が得られる。より高い温度または圧力を用いた場合、パンチでフラッシュアウトを生じるおそれがある。使用した保持時間は、この場合も最良の緻密化を達成する目的で選択される10分間である。ランプ速度は、820℃まで約100℃/分であり、次いで、その後は、漸減方式で有意に低減される。6.5g/cm3の理論密度を用いて計算される98%超の密度が達成される。
【0069】
グラファイトダイとNiTi粉末との間の反応が焼結中に起こりうるので、焼結後、いかなる可能性のある炭素混入をも排除するために、材料の最初の1mmをビレットから除去した。炭素および酸素の不純物レベルを低く保つように努力した。なぜなら、それらの存在により相変態挙動が有意に影響を受ける可能性があるからである。また、酸化物は、脆性を引き起こして、冷間加工をより困難にする可能性がある。したがって、真空中で焼結を行った。ビレットのガス分析から、予想されたよりもかなり低い70wppmの酸素レベルであることが示された。これは、出発Ni−Tiロッド材プレアトマイゼーション時の指定酸素レベル(約300wppm)およびガスアトマイゼーション時の予想ピック(約150wppm、全量で約450wppm)を有意に下回わる。また、この粉末の貯蔵期間は、3年間であった(酸化物が時間と共に増加して、指数関数的に減少する)。SPS時に材料に熱および圧力を加えた場合、粒子の表面上でガス放出が起こり、これは、極微細プラズマを確立するのに適した雰囲気を提供して、酸素含有率の低減をもたらしうる。
【0070】
焼結後、二元Ni−Ti合金は、加熱および冷却するとワンステップ変態を呈し、Af温度は、示差走査熱量測定(DSC)により決定される18℃である。2回の押出しパスおよび550℃での15分間アニーリングを行った後、DSCピークは、加熱および冷却すると非常にシャープであり、Af温度は、9℃にさらに低下した。
【0071】
実施例B: 速いランプ速度での900℃/850℃のSPS − 二元Ni−Ti合金
最終マイクロ構造を改良するために入手したままのTi粉末を混合前に20ミクロンのサイズに篩処理して、NiおよびTi元素の粉末を等原子比で混合する。この実施例の焼結プロセスは、50MPaの焼結圧力でかつ900℃の焼結温度で10分間または850℃の焼結温度で1分間行われる。ランプ速度は、820℃まで約100℃/分であり、次いで、その後は、漸減方式で有意に低減される。また、真空中で焼結を行う。850℃で1分間焼結したサンプルでは、篩処理後でさえも依然としてTi元素が残存することが、走査型電子顕微鏡(SEM)画像により示される。
【0072】
ASTM E1019−08に準拠してガス分析を行ったところ、SPSビレット中の炭素レベルは、ASTM規格により設定された許容レベル内にある0.06at.%であることが、結果により示される。酸素含有率を測定したところ、市販の溶融Ni−Ti合金をはるかに下回る0.007at.%であった。出発粉末の純度(99.9at.%)および酸化を防止する特別な対策をなんら講じることなくボールミルで混合を行ったという事実を考慮すれば、これは、おそらくSPSの性質に起因して、著しく低レベルの酸素である。標準的SPS構成を用いた場合、焼結中のグラファイトダイとNiTi粉末との間の反応が可能であり、合金組成にかなり影響を及ぼすおそれがある。焼結ビレットの直径から0.5mmのNiTi材料を除去すれば、炭素混入がバルク材料の性質に影響を及ぼすおそれのあるリスクが排除される。
【0073】
マイクロ構造の観測結果と組み合わされた密度および硬度のデータに基づいて、最適焼結温度は、50MPaの圧力で10分間にわたり900℃であると決定される。より高い温度または圧力を用いた場合、金属がパンチでフラッシュアウトするおそれがある。より短い焼結時間では、かなり不十分な引張り性を有するサンプルが製造されたので、また、850℃で10分間焼結されたサンプルも、不満足な引張り性を有していたので、二元Ni−Tiサンプルを最適な900℃の焼結温度に保持する時間量は、重要なSPSパラメーターである。
【0074】
以上に規定された最適焼結パラメーターを用いると、焼結されたままのおよび押し出されたNiTiは両方とも、溶融キャストNiTi合金に類似して、DSCで冷却および加熱すると明確な変態ピークを示した。一方、押出しの前および後に850℃で焼結されたビレットの変態温度は、弱い吸熱および発熱ピークを示した。
【0075】
実施例C: 速いランプ速度を用いた900℃でのSPS − Ni−Ti−Er合金
エルビウム金属は、その純粋状態(>99.5%)で非常に軟質であり(70HV)、高価なミリング助剤を用いた場合でさえも、金属粉末に安全に変換することが困難である。したがって、現在、市販されている希土類金属粉末はほとんどまたはすべて、水素脆化、ミル処理、次いで脱水素化が行われている。典型的には高真空条件下で900℃まで金属を加熱することを必要とする脱水素化は、費用がかさむ可能性があるので、プロセスは、温度、真空、および時間の最適設定下で行われないおそれがある。したがって、出発粉末を汚染物質に関して分析したところ、HDH Er粉末化は、O、H、およびNが多いことが、結果により示された。現時点では、より純粋な希土類粉末を入手することができなかったので、評価のために、HDH(「水素化−脱水素化」)粉末(
図1E参照)を、ガスアトマイズ予合金Ni−Ti粉末Aと共に、Ni−Ti−6at.%Er合金ビレットの形に焼結した。
【0076】
二元Ni−Ti焼結パラメーターと同一のSPSパラメーター(すなわち、820℃まで約100℃/分のランプ速度を用いて、900℃の焼結温度、およびこの温度で10分間の保持を行って、続いて、その後、漸減速度を用いる)を用いて三元Ni−Ti−6at.%Erを形成した場合、粒子間網状構造は形成されないことが、マイクロ構造分析により示唆される。熱誘起相変化は起こらず、硬度は非常に高い505HVであることが、粉末のDSCにより示される。Erは、Er
xNi
y相を形成するので、Ni−Ti合金マトリックスからニッケルを捕捉して、変態温度(たとえばAf)を上昇させることが、エネルギー分散型X線(EDX)分析により示される。
【0077】
予合金Ni−Ti粉末Aと混合する前に6at.%のHDH Er粉末を6at.%のNi粉末と混合し、その後、混合物を900℃で10分間焼結しても、依然として、いずれの熱誘起相変化を示す焼結サンプルも作製されない。エルビウムまたはエルビウム合金が粒子間網状構造を形成していることを示す証拠と共に、合金中にErxNiy相の大きいアグロメレートが見いだされた。試料の酸素レベルは、非常に高い4230wppmであることが判明したたが、水素レベルは、測定されなかった。
【0078】
類似の実験では、6at.%のHDH Er粉末を50at.%のNi粉末および44at.%のTi粉末に添加し、次いで、混合物を10分間焼結した。NiリッチNiTiが確かに形成されたが、より大きいTi粒子がマトリックス中に拡散し、NiリッチEr
xNi
y化合物がマトリックス内に形成された。また、硬度は、非常に高い542HVであった。
【0079】
要約すると、HDH Er粉末を二元予合金Ni−Ti粉末またはNi元素およびTi元素の粉末のいずれかに添加し、次いで、900℃で10分間焼結した場合(焼結二元Ni−Ti合金を形成するために首尾よく行われたように)、不利なマイクロ構造および性質を有する焼結Ni−Ti−Er合金が生成された。いずれの場合も、Er粒子は、Niし合金化した。予合金Ni−Ti粉末を用いた場合、HDH Er粒子は、明らかに溶融され、NiTiからのNiと合金化してEr
xNi
y相を形成した。これは、いくつかの場合にはダイから排出されるであろう。HDH Er粒子をNi元素およびTi元素の粉末と共に焼結した時の合金化の明確な原因は、チタンとニッケルとの間よりもエルビウムとニッケルとの間のほうがはるかに強い結合であったことであり、結果として、焼結後、多くのTi元素の粒子が多くのNiリッチEr
xNi
y化合物と共に存在した。また、この組合せの合金の熱間加工の結果は、好ましくないことが実証された。
【0080】
900℃の高温で焼結されたNi−Ti−Er合金はすべて、押出しがきわめて困難であることが実証された。粉末混合物にホウ素(B)を添加することにより、押出しの容易性を改良することが可能である。たとえば、6at%のHDH ErならびにNiB、ErB
4、およびEr元素の形態で6at.%のNiを含む予合金Ni−Ti粉末AにB元素を添加した場合、ErB
4は、硬度低下の最良の結果を示すが、ホウ素元素は、より高いwppmレベルでのみ硬度低下に寄与することが、硬度試験の結果により示唆された。
【0081】
実施例D: 速いランプ速度を用いた835℃でのSPS − Ni−Ti−Er合金
前の100℃/minの速度に類似したランプ速度を用いて、HDH Erを835℃の中温および60MPaで予合金Ni−Ti粉末Aと共に焼結した場合、Erは、予合金Ni−Ti粉末からのNiと連続的に合金化したと思われる。焼結合金のAf温度が許容できないほど高いという結果になった。
【0082】
さまざまなエルビウム対ニッケル比(たとえば、ErNi、Er
2Ni、Er
3Ni、およびErNi
3)を有するエルビウム−ニッケル化合物としてエルビウムを添加した場合、化合物からのErは、依然として、予合金Ni−Ti粉末からのNiと合金化すると思われ、いくつかの場合には、Er
xNi
y化合物は、液体金属としてSPSダイおよびパンチから排出された。
【0083】
速い温度ランプ速度(100℃/分)、さらには最も高い融解温度を用いた中程度の焼結温度(835℃)試験では、化合物(1254℃の融解温度を有するErNi
3)は、融解してSPSダイから排出された。
【0084】
実施例E: 835℃および低減されたランプ速度でのSPS − Ni−Ti−Er合金
希土類元素(この場合、エルビウムまたはErxNiy化合物)は、主に、希土類元素の比熱が低いことに起因して(たとえば、Erは、170J/kg℃であるのに対して、NiTiは、約4倍の620J/kg℃)、NiTiよりも速く加熱されると考えられる。希土類元素およびNiTiの抵抗率には有意差がないので、抵抗率の影響は、最小限に抑えられると推定される。
【0085】
より遅いランプ速度では、ErxNiy化合物はすべて、焼結中に安定性を維持することが判明した。本発明に係る焼結Ni−Ti−RE合金の形成方法の一実施形態では、使用される焼結温度は、835℃であり、圧力は、60MPaであった。温度ランプ速度は、25℃/minであった。たとえば、ErNi3粒子を835℃および60MPaで予合金Ni−Ti粉末Aと共に焼結したところ、ErNi3は、プロセス中、安定性を維持した。焼結後、Ni−Ti−Er合金を835℃で首尾よく3回押し出して0.6mmのワイヤーを形成したところ、ワイヤーは、ErNi
3の大きい介在物に起因して、かなり脆性であった。
【0086】
焼結合金中の大きい介在物の存在を排除するために、さらなる焼結試験の前に、出発粉末を20ミクロンの篩に通した。次いで、(a)篩処理されたHDH Er、(b)篩処理されたEr
3Ni、(c)篩処理されたEr
2Ni、および(d)篩処理されたErNiと個別に混合された篩処理された予合金Ni−Ti粉末Aを用いて、焼結合金を形成した。Er相は、いずれの場合も、安定性を維持し、焼結ビレットは、さまざまな脆性度を呈した。
【0087】
図4を参照して、より高レベルのErを含む第2相化合物は、NiTiマトリックスを最も少なく硬化させたことが、硬度データにより示唆され、実際に、Er
3NiおよびHDH Erは、NiTiをその二元値未満に軟化させた。一般的には、三元SPS処理Ni−Ti−Erビレットの押出しは、焼結されたままの状態と比較して、A
f温度の低下をもたらすが、値は、依然として体温を超える状態を維持した。
【0088】
実施例F: 800℃および低減されたランプ速度でのSPS − Ni−Ti−Er合金
焼結温度を800℃に低下させることと、HDH Erと混合された予合金Ni−Ti粉末Bを使用することと、を組み合わせることにより、SPS三元Ni−Ti−Er合金のAf変態温度を体温未満に制御することが可能なる。焼結温度の低下と組み合わせて、焼結中の圧力を70MPaに増大させたところ、>95%の密度が達成された。温度ランプ速度は、25℃/分であった。
【0089】
図5Aおよび5Bに示されるように、それぞれ、(a)篩処理されたHDH Erと混合して835℃でSPS処理された篩処理された予合金Ni−Ti粉末Aと、(b)HDH Erと混合して800℃でSPS処理された予合金Ni−Ti粉末Bと、の間で、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定されたAf変態温度の比較を行うことが可能である。予合金Ni−Ti粉末B中の余分のニッケルは、より低い焼結温度と組み合わせた場合、Af変態温度を許容レベル(体温を大幅に下回る約18℃)に低下させる効果を有する。
【0090】
焼結Ni−Ti−Er合金の硬度は、333HVであった。また、HDH Er粒子は、835℃の焼結温度では合金化が起こらなかったので、予合金Ni−Ti粉末B中のニッケルと合金化しなかったことが、SEM/EDX分析により示された。焼結後、合金を800℃の温度で熱間圧延した。高さが28.5%減少するまで11回の圧延パスで加工可能であることが実証された。その後、合金は、バラバラに破壊された。破壊は、Er粒子の連結一体化または合金中の高い水素レベルが原因であると推定された。
【0091】
690℃で4日間脱水素化を行ったHDH Er粉末を以上に記載の予合金Ni−Ti粉末Bとの焼結に使用した場合、改良された熱間加工結果が得られた。得られた焼結合金のマイクロ構造を
図5Cおよび5DのSEM画像に示す。この場合、得られた焼結合金は、3mmの厚さから1mmの厚さに850℃で容易に熱間圧延された。熱間圧延合金のマイクロ構造を
図5EのSEM画像に示す。
【0092】
実施例G: 800℃および低減されたランプ速度でのSPS − Ni−Ti−Er合金
予合金Ni−Ti粉末Aを予合金ErNi粉末(両方とも篩処理なし)と混合し、100MPaの圧力および25℃/分の温度ランプ速度を用いて800℃でSPS処理した。
図6Aを参照して、サンプルは、まったく亀裂を生じることをなんら伴うことなく、高さが30%減少するまで850℃で首尾よく熱間圧延された。最初に、1.35mmの厚さ(55%の高さの減少)の圧延された材料をその「容器」から取り出した。引張り試験時、材料は、
図6Cに示されるように超弾性であることが実証された。最初に2%の歪みを加えたところ、約0.2%歪みの除荷でパーマネントオフセットに帰着した。これは、予歪みとみなしうる。続いて3%および4%の歪みを加えたところ、ほぼ完全に回復可能な歪みに帰着した。理由は十分に理解されないが、上側の負荷プラトーが各サイクル時に徐々に増大された。
図6Bに示されるように、SPS処理された材料はまた、0.89mmの厚さに880℃で首尾よく熱間圧延された。
【0093】
以上の実施例Eに記載されるように835℃で焼結された合金のDSC分析から(篩処理されたErNi粉末と焼結前に混合された篩処理された予合金Ni−Ti粉末A)、この試料では0℃のAf温度であることが明らかにされた。予合金Ni−Ti粉末A+ErNi粉末(両方とも篩処理なし)を800℃で焼結一体化させたが、A
f温度は、有意に変化しなかった。また、熱間圧延後も、有意に変化しなかった。この材料は、約3℃±4℃の安定なA
fを有することが、DSCにより示唆される。
【0094】
実施例H: 800℃/760℃および低減されたランプ速度でのSPS − Ni−Ti−Er−Fe合金
図7A〜7Cに示されるように、ErFe粉末(
図1F参照)を予合金Ni−Ti粉末Aと混合し、800℃および760℃で焼結した。25℃/minのランプ速度を利用した。結果は驚くべきものであり、両方の焼結温度で元のErFe粒子の周りに、より微細なErリッチ粒子のハローが形成された。
【0095】
800℃で焼結されたサンプルを800℃で熱間圧延したところ、破壊前に高さが≦66%低減された。破壊は、Erリッチ相を取り囲む非常に微細なTiリッチ粒子の形成に起因しうる。これらのTiリッチ粒子の体積は、熱間圧延温度で時間と共に増大し、粒子は、高さが66%減少した後、合体し始める。
図7Cを参照して、760℃で焼結および熱間圧延されたサンプルは、二元NiTiに匹敵する優れた結果を生じた。焼結後に観測されたハロー効果は、熱間圧延後も依然として存在した。サンプルを厚さ(サンプル高さ)3mmから1.3mmに熱間圧延した。これは、56%の高さ減少または長さ25mmから50mmへの100%の長さ増加に等しい。物品は、欠点を伴うことなく全体を通じて完全であると思われた。次いで、1パスあたり8%以内の減少を維持しつつ、材料を厚さ0.35mmに冷間圧延した。パス間で物品を760℃で5分間インターパスアニールした。この場合も、サンプルは、欠点を伴うことなく全体を通じて完全な状態であった。
【0096】
DSCおよび引張り試験のために、冷式圧延されたサンプルのセクションを切り出した。この材料は、Af温度が100℃であったので、室温ではそのマルテンサイト状態であることが、DSC分析により示された。Af温度が高かったが、これは、焼結時および処理時、ErがErNiを形成して、マトリックスからの非常に多くのNiの枯渇を起こしたことが原因であったと思われる。室温(または体温)で超弾性を得るには変態温度が高すぎたので、引張り試験を行って歪み破壊を確定した。
図7Dに示されるように、サンプルに3%の歪みを負荷して除荷し、次いで、6%の歪みを負荷して除荷し、最後に破壊するまで負荷した。予想どおり、回復可能な歪みは得られなかったが、試験データから負荷プラトーおよび除荷プラトーが明らかにされ、試料は、破壊前に11%の歪みに達した。0.35mm冷間圧延サンプルのマイクロ構造分析では、冷間圧延後のマイクロ構造の良好な微細化が示され、光学顕微鏡写真では、試料は実質的に酸化物フリーであることが示された。
【0097】
実施例I: 800℃/760℃および低減されたランプ速度でのNi−Ti−Er−AgのSPS
25℃/分のランプ速度の後、予合金Ni−Ti粉末BをErAg粉末(
図1G参照)と共に800℃および760℃で焼結したErAg化合物は、焼結中、800℃まで安定であり、800℃以上では、ErAg粒子の化学量論比は、わずかにAgリッチになると思われた。このことは、760℃の焼結温度を用いた場合には起こらなかった。760℃で焼結されたサンプルのマイクロ構造を示すSEM画像を
図8Aおよび8Bに示す。
【0098】
予合金Ni−Ti粉末Aと混合して760℃および85MPaで焼結されたErAgから作製された焼結Ni−Ti−Er−AgサンプルのDSC試験では、
図8Cに示されるように、24℃のAfを示して好ましいことが実証された。焼結サンプルは、760℃および800℃の両方で熱間圧延中に破壊し始めた。760℃の焼結温度および圧延温度では、なんら亀裂を生じることなく50%超の減少が可能であったが、さらに減少させたところ、表面から亀裂伝播を生じた。また、760℃では、合金中にTiリッチ領域が形成し始めると思われる。これらの予備的結果から、ErAg化合物をNi−Ti予合金粉末と共に焼結してNi−Ti−Er−Ag合金を首尾よく形成可能であることが確証される。また、処理中のErAg成分およびNiTi成分の不安定化を回避するために、760℃未満の熱間圧延温度が必要とされうることが、結果から浮き彫りにされる。
【0099】
本発明をその特定の実施形態を参照してかなりに詳細に説明してきたが、本発明から逸脱することなく他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる好ましい実施形態の説明に限定すべきでない。特許請求の意味の範囲内にある実施形態はすべて、文字どおりまたは等価性により、本明細書に包含されることが意図される。さらに、以上に記載の利点は、必ずしも本発明のみの利点というわけではなく、また、記載の利点がすべて、本発明のすべての実施形態により達成されるであろうことが、必ずしも期待されるというわけではない。
【0100】
本明細書に記載の種々の実施形態のさまざまな特徴を組み合わせることが可能であることを理解すべきである。本出願が優先権を主張する2011年10月21日出願の英国特許出願第1118208.6号およびこの出願に付随する要約の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。