(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とした第1層と、該第1層の裏側に形成された軽量骨材と結合剤とを主成分とした第2層とを少なくとも備え、化粧面となる上記第1層の表面にエンボス型による凹凸模様が形成された加熱圧縮形成物からなる無機質板であって、
上記第1層は、最小厚さが1mm以上になるように形成され、
上記凹凸模様は、上記第1層と共に上記第2層を凹ませる凹部を有している
ことを特徴とする無機質板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、エンボス加工によって凹凸模様が形成される表層に重なる芯層を無機質発泡剤と結合剤とを主成分とする材料で形成すると、凹凸模様の中に溝のような急斜面で形成された尖鋭な凹部がある場合、エンボス型で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部を形成するためのエンボス型の尖鋭な凸部が表層を突き破り、凹部が芯層にまで至ってしまうことがある。芯層は、低密度である分、強度が低いため、芯層にまで至る凹部が形成された無機質板では、その凹部部分で曲げ強度が著しく低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板において曲げ強度の増大を図ると共に、そのような無機質板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板において、凹凸模様が形成される化粧面側の比較的高密度の第1層を分厚く形成することとした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とした第1層と、該第1層の裏側に形成された軽量骨材と結合剤とを主成分とした第2層とを少なくとも備え、化粧面となる上記第1層の表面に凹凸模様が形成された加熱圧縮形成物からなる無機質板を前提としている。
【0010】
そして、第1の発明に係る無機質板は、上記第1層は、最小厚さが1mm以上になるように形成され、上記凹凸模様は、
上記第1層と共に上記第2層を凹ませる凹部を有していることを特徴としている。
【0011】
第1の発明では、加熱圧縮によって凹凸模様が形成される第1層が、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とする材料で形成され、第1層の裏側の第2層が、軽量骨材と結合剤とを主成分とする材料で形成されている。つまり、表面に凹凸模様が形成される第1層の裏側の第2層が、比較的密度の低い材料で形成されている。また、第1の発明では、加熱圧縮によって表面に凹凸模様が形成される第1層を、最小厚さが1mm以上になるように形成している。このような構成により、第1層は、最も薄くなる尖鋭な凹部が形成される部分においても1mm以上の厚さが確保されることとなる。そして、このように第1層が分厚く形成されることにより、凹凸模様の中に尖鋭な凹部があっても、該凹部が比較的密度の低い材料で形成された第2層にまで至ることがない。従って、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板において、尖鋭な凹部を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部部分における強度の低下を抑制することができる。言い換えると、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板において曲げ強度の増大を図ることができる。
【0012】
第2の発明は、化粧面に凹凸模様が形成された無機質板の製造方法が対象である。
【0013】
そして、第2の発明に係る無機質板の製造方法は、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分として含むスラリーから湿式抄造によって形成した第1層マットと、軽量骨材と結合剤とを主成分として含む材料からなる第2層マットとを少なくとも積層して湿潤基材を形成する湿潤基材形成工程と、上記湿潤基材を乾燥させて乾燥基材とする乾燥工程と、上記乾燥基材の上記第1層マットの表面に上記凹凸模様が形成されるようにエンボス型で上記乾燥基材を加熱圧縮して上記結合剤を硬化させる加熱圧縮工程とを備え、上記湿潤基材形成工程では、上記第1層マットの厚さが上記凹凸模様の最大高低差以上になるように上記湿潤基材を形成し、上記加熱圧縮工程では、
上記第1層マットと共に上記第2層マットを凹ませる凹部が上記凹凸模様の一部として形成され、且つ上記第1層マットの最小厚さが1mm以上になるように上記エンボス型で上記乾燥基材を加熱圧縮することを特徴としている。
【0014】
第2の発明では、少なくとも第1層マットと第2層マットとを積層して湿潤基材を形成する湿潤基材形成工程において、第1層マットの厚さが、後の加熱圧縮工程においてエンボス型で形成される凹凸模様の最大高低差以上になるように湿潤基材を形成することとしている。このように第1層マットの厚さが凹凸模様の最大高低差以上になるように湿潤基材を形成することにより、湿潤基材を乾燥させて乾燥基材とした後、エンボス型で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部を形成するためのエンボス型の尖鋭な凸部が第1層マットを突き破って第2層マットに至るのが抑制される。つまり、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板の製造にあたり、無機質板に尖鋭な凹部を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部部分における強度の低下が抑制された無機質板を製造することができる。言い換えると、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板であって曲げ強度の高い無機質板を製造することができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記湿潤基材は、上記第1層マットと、上記第2層マットと、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分として含むスラリーから湿式抄造によって形成した第3層マットとを順に積層することによって形成され、上記湿潤基材形成工程では、上記第1層マットの厚さが上記第3層マットの厚さより厚くなるように上記湿潤基材を形成することを特徴としている。
【0016】
第3の発明では、第1層マットと、第2層マットと、第1層マットと同様に形成された第3層マットとを順に積層することによって湿潤基材を形成することとしている。そして、第1層マットの厚さを第3層マットの厚さより厚くしている。このように第1層マットの厚さを分厚くすることにより、湿潤基材を乾燥させて乾燥基材とした後、エンボス型で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部を形成するためのエンボス型の尖鋭な凸部が第1層マットを突き破って第2層マットに至るのが抑制される。従って、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板であって曲げ強度の高い無機質板を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る無機質板によると、化粧面となる表面に凹凸模様が形成された無機質板において、凹凸模様が形成される化粧面側の比較的高密度の第1層を分厚く形成することにより、尖鋭な凹部を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部部分における強度の低下を抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る無機質板の製造方法によると、エンボス型で加熱圧縮することによって表面に凹凸模様が形成される比較的高密度の第1層マットの厚さを分厚く形成することにより、無機質板に尖鋭な凹部を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部部分における強度の低下が抑制された無機質板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
《発明の実施形態1》
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係る無機質板の製造方法によって製造された無機質板10を示している。無機質板10は、化粧面となる表面1にエンボス加工によって凹凸模様が形成され、例えば、住宅等の建物の内装材、造作材、開口部材、家具等の化粧材として用いられる。
【0022】
−構成−
無機質板10は、本実施形態では、表面1側(
図2の上側)に位置する表層(第1層)11と、裏面2側(
図2の下側)に位置する裏層(第3層)12と、表層11と裏層12との間に位置する芯層(第2層)13とを有し、三層構造に構成されている。表層11と裏層12とは、互いに同じものであり、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とする層である。一方、芯層13は、軽量骨材と結合剤と繊維を主成分とする層である。表層11と裏層12と芯層13とは、結合剤の硬化によって複合一体化されている。
【0023】
無機質板10は、エンボス型20によって加熱圧縮されることにより、表層11側の表面1に、凹凸模様が形成されている。凹凸模様は、本実施形態では、深彫り形状の石目調のタイル模様に形成されている。なお、凹凸模様は、いかなるものであってもよい。本実施形態では、無機質板10は、最も薄い部分の厚さが6mm、最も厚い部分の厚さが9mmとなるように、凹凸模様が形成されている。
【0024】
〈表層及び裏層の主成分〉
[鉱物質繊維]
表層11と裏層12の鉱物質繊維として、ロックウール、スラグウール、ミネラルウール、グラスウール等を用いることができる。これらは、単独で用いることも可能であり、複数を組み合わせて用いてもよい。鉱物質繊維は、粘りと強度とを持たせつつ、高い表面性を得るために添加されるものであり、固形成分全体の40重量%以上80重量%以下だけ添加される。鉱物質繊維は、添加量が40重量%未満になると、鉱物質繊維どうしの絡み合いが少なくなって曲げ強度が弱くなり、また、80重量%を超えると、無機質粉状体の添加割合が少なくなるため、表面の緻密性が低くなり、化粧性が損なわれるためである。
【0025】
[無機質粉状体]
表層11と裏層12の無機質粉状体として、炭酸カルシウム、マイクロシリカ、水酸化アルミニウム、スラグ紛等を用いることができる。これらは、単独で用いることも可能であり、複数を組み合わせて用いてもよい。無機質粉状体は、防火性及び硬度を確保するために添加されるものであり、固形成分全体の20重量%以上60重量%以下だけ添加される。無機質粉状体は、添加量が20重量%未満になると、形成される無機質板10の表面の緻密性が低くなって化粧性が損なわれ、また、60重量%を超えると、鉱物質繊維の添加割合が少なくなるため、曲げ強度が弱くなるためである。
【0026】
[結合剤]
表層11と裏層12の結合剤は、熱硬化性樹脂結合剤であり、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン樹脂等の粉末状、或いは水性結合剤を用いることができる。また、結合剤として、ポリビニルアルコール、スターチ類、ポリアクリルアミド、SBRラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等の水溶性又は水分散性の高分子結合剤を、熱硬化性樹脂と併用することも可能である。結合剤は、鉱物質繊維及び無機質粉状体を含む成分を結合するために添加されるものであり、固形成分全体の5重量%以上20重量%以下、好ましくは、7重量%以上15重量%以下だけ添加される。結合剤は、添加量が5重量%未満になると、強度が不足する一方、20重量%を超えると、不燃性が損なわれるためである。
【0027】
〈芯層の主成分〉
[軽量骨材]
芯層13の軽量骨材として、パーライト、シラス発泡体、シリカフラワー、ガラス発泡体等を用いることができる。軽量骨材は、圧縮強度を確保しつつ、軽量化するために添加されるものであり、固形成分全体の40重量%以上90重量%以下だけ添加される。軽量骨材は、添加量が40重量%未満になると、軽量化が不十分になり、また、散布時に均一に撒くことが難しくなる一方、90重量%を超えると、強度が弱くなり、また、圧縮時の圧力が高くなりすぎて生産性が低下するためである。
【0028】
[結合剤]
芯層13の結合剤は、熱硬化性樹脂結合剤であり、表層11及び裏層12に用いることができるもの、即ち、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素メラミン樹脂等の粉末状、或いは水性結合剤を用いることができる。また、表層11及び裏層12の結合剤と同様に、ポリビニルアルコール、スターチ類、ポリアクリルアミド、SBRラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等の水溶性又は水分散性の高分子結合剤を、熱硬化性樹脂と併用することも可能である。結合剤は、軽量骨材を含む成分を結合するために添加されるものであり、固形成分全体の5重量%以上20重量%以下、好ましくは、7重量%以上15重量%以下だけ添加される。結合剤は、添加量が5重量%未満になると、強度が不足する一方、20重量%を超えると、不燃性が損なわれる。
【0029】
[繊維]
芯層13の繊維として、無機繊維又は有機繊維を用いることができる。具体的には、無機繊維として、ガラス繊維、ワラストナイト等を用いることができる。また、有機繊維として、ポリエステル、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、木質繊維、パルプ等を用いることができる。これらは、単独で用いることも可能であり、複数を組み合わせて用いてもよい。繊維は、粘りと強度とを持たせるために添加されるものであり、固形成分全体の1重量%以上10重量%以下だけ添加される。繊維は、添加量が1重量%未満になると、粘りが無くなり、補強効果が低くなり、10重量%を超えると、抄造時に凹凸が生じ、良好な湿潤マットを得ることができなくなるためである。
【0030】
〈凹凸模様〉
無機質板10の表面1には、凹凸模様が形成されている。無機質板10は、この凹凸模様によって複数のブロックに区画されている。
【0031】
具体的には、本実施形態1では、
図1及び
図2に示すように、無機質板10の表面1には、上記凹凸模様の一部を構成する複数の溝3が形成され、この複数の溝3によって無機質板10が複数のブロックに区画されている。無機質板10において溝3が形成された部分が無機質板10の最も薄い部分を構成し、溝3での無機質板10の厚さは6mmである。一方、最も分厚い部分(凹凸模様の最大凸部部分)での無機質板10の厚さは、9mmである。
【0032】
なお、無機質板10の凹凸模様は、無機質板10の最も分厚い部分(凹凸模様の最大凸部部分)において、表層11の厚さが3mm、芯層13の厚さが3.5mm、裏層12の厚さが2.5mm程度になるように形成されている。また、無機質板10の凹凸模様は、無機質板10の最も薄い溝3部分において、表層11の厚さが1mm、芯層13の厚さが3mm、裏層12の厚さが2mm程度になるように形成されている。
【0033】
つまり、本実施形態では、凹凸模様は、最大高低差(最大凸部部分の表面と溝3の底面とのレベル差)が3mm程度になるように形成されている。
【0034】
また、溝3は、側面の傾斜角が60°以上90°以下となるように形成され、溝3以外の部分に比べて尖鋭な凹部に構成されている。
【0035】
−製造方法−
以下、本発明の実施形態1に係る無機質板10の製造方法について
図3に基づいて説明する。
【0036】
無機質板10の製造方法は、湿潤基材形成工程S1と、乾燥工程S2と、塗布工程S3と、加熱圧縮工程S4とを有する。
(1)湿潤基材形成工程
まず、湿潤基材形成工程S1を行う。本実施形態では、湿潤基材形成工程S1は、裏層マット形成工程と、芯層マット形成工程と、表層マット形成工程とで構成されている。
【0037】
〈裏層マット形成工程〉
裏層マット形成工程では、裏層12を形成するための材料、即ち、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを水中に添加して攪拌し、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とするスラリーを生成する。そして、生成したスラリーを長網式湿式抄造装置又は丸網式湿式抄造機で湿式抄造して裏層マット10c(第3層マット)を形成する。本実施形態では、裏層マット10cは、4mmの一様な厚さになるように形成する。
【0038】
〈芯層マット形成工程〉
芯層マット形成工程では、芯層13を形成するための材料、即ち、軽量骨材と結合剤と繊維とを、水を噴霧しながら混合して芯層用組成物を生成する。そして、生成した芯層用組成物を、先に生成した裏層マット10cの上に均一に散布して芯層マット10b(第2層マット)を形成する。本実施形態では、芯層マット10bは、5mmの一様な厚さになるように形成する。
【0039】
〈表層マット形成工程〉
表層マット形成工程では、裏層マット形成工程と同様に、表層11を形成するための材料、即ち、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを水中に添加して攪拌し、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とするスラリーを生成する。そして、生成したスラリーを長網式湿式抄造装置又は丸網式湿式抄造機で湿式抄造して表層マット10a(第1層マット)を形成し、この表層マット10aを、芯層マット10bの上に積層する。本実施形態では、表層マット10aは、5mmの一様な厚さになるように形成する。このように、本実施形態では、表層マット10aの厚さ(5mm)を裏層マット10cの厚さ(4mm)より厚く形成している。また、表層マット10aをこのように分厚く形成することにより、後の加熱圧縮工程S4によって表面1に凹凸模様が形成される無機質板10の表層11の最小厚さ(溝3での厚さ)を1mm以上に形成することができる。
【0040】
以上のような湿潤基材形成工程S1を行うことにより、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分として含む湿潤マットからなる表層マット10a及び裏層マット10cで、軽量骨材と結合剤と繊維とを主成分として含む芯層マット10bを挟む三層構造の板状の湿潤基材10Aが形成される(
図4(A)を参照)。上述したように、本実施形態では、三層構造の湿潤基材10Aは、表層マット10aの厚さが5mm、芯層マット10bの厚さが5mm、裏層マット10cの厚さが4mmで、計14mmの厚さになるように形成される。
(2)乾燥工程
次に、乾燥工程S2を行う。乾燥工程S2では、湿潤基材形成工程S1によって形成された湿潤基材10Aを熱風循環式ドライヤーに搬入し、含水率が10重量%未満、好ましくは、4重量%未満となるように乾燥し、乾燥基材(ドライボード)10Bを形成する。このとき、湿潤基材10A中に含まれる結合剤(熱硬化性樹脂結合剤)がプレキュアー状態に至らないように、即ち、結合剤が硬化しない条件下で湿潤基材10Aを乾燥させる。これは、結合剤が完全に硬化しないまでもプレキュアー状態に至ると、プレキュアー状態の結合剤によって結合された組織が後の加熱圧縮工程S4で潰れることにより、得られる無機質板10が脆弱化するおそれがあるためである。
【0041】
また、湿潤基材10Aは、熱風循環式ドライヤーによる乾燥の前に、加熱ロール、連続プレス、平板プレス等で加熱圧縮してもよい。このように乾燥前に予備的な加熱圧縮を行うことにより、強度の高い乾燥基材10Bに形成することができる。この予備的な加熱圧縮を行う場合も、湿潤基材10A中の結合剤がプレキュアー状態に至らない条件下で行う。
【0042】
なお、結合剤がプレキュアー状態に至らない条件は、結合剤によって異なるが、例えば、結合剤として粉末フェノール樹脂を用いた場合、熱風循環式ドライヤーによる乾燥では、60℃〜140℃程度の温度条件、予備的な加熱圧縮では、80℃〜180℃程度の温度条件で行うことができる。
(3)塗布工程
次に、塗布工程S3を行う。塗布工程S3では、乾燥基材10Bの表面1B及び裏面2Bに、水又は樹脂水溶液からなる軟化剤を塗布する。これにより、乾燥基材10Bの表面1B及び裏面2Bが軟化し、後の加熱圧縮工程S4において乾燥基材10Bの表面1B及び裏面2Bにおいて亀裂や割れが生じ難くなる。本実施形態では、乾燥基材10Bの表面1Bには、400g/m
2の軟化剤を塗布し、乾燥基材10Bの裏面2Bには、100g/m
2の軟化剤を塗布する。
(4)加熱圧縮工程
次に、加熱圧縮工程S4を行う。加熱圧縮工程S4では、表面1B及び裏面2Bに軟化剤が塗布された乾燥基材10Bを多段式ホットプレス等の加熱圧縮装置の熱盤間に挿入し(
図4(B)を参照)、表面1Bに所定の凹凸模様を形成するためのエンボス型20を用いて、結合剤(熱硬化性樹脂結合剤)の硬化温度以上の温度で加熱圧縮する(
図4(C)を参照)。
【0043】
乾燥基材10Bを加熱圧縮すると、先の塗布工程S3において乾燥基材10Bの表面1B及び裏面2Bに塗布された軟化剤が、蒸気となって乾燥基材10B中に浸透する。ここで、乾燥基材10B中の表層マット10a、芯層マット10b及び裏層マット10cの結合剤は、プレキュアーしていない状態にあるため、乾燥基材10B中に浸透した軟化剤によって流動性を得て軟化剤と共に乾燥基材10B中に行き亘る。
【0044】
また、乾燥基材10Bは、エンボス型20を用いて加熱圧縮されるため、圧縮されると共に、裏面2Bは平滑に、表面1Bは凹凸模様形状に変形していく。このとき、先の塗布工程S3において、乾燥基材10Bの表面1B及び裏面2Bに軟化剤が塗布されて軟化しているため、特に、表面1Bには多量の軟化剤が塗布されて裏面2Bより軟化している。そのため、乾燥基材10Bは、亀裂や割れなどを生じることなく変形することとなる。
【0045】
また、湿潤基材形成工程において、表層マット10aの厚さ(5mm)を凹凸模様の最大高低差(3mm)以上に形成している。そのため、乾燥基材10Bをエンボス型20で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部である溝3を形成するためのエンボス型20尖鋭な凸部21が表層マット10aを突き破って芯層マット10bに至ることなく、表面1Bに凹凸模様が形成される。
【0046】
そして、乾燥基材10Bが変形した状態で、該乾燥基材10B中に行き亘った結合剤(熱硬化性樹脂結合剤)が硬化することにより、表面1に彫りの深いシャープな凹凸模様が形成された無機質板10が形成される(
図4(D)を参照)。
【0047】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態1の無機質板10では、加熱圧縮によって凹凸模様が形成される表層11が、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とする材料で形成され、表層11の裏側の芯層13が、軽量骨材と結合剤とを主成分とする材料で形成されている。つまり、表面に凹凸模様が形成される表層11の裏側の芯層13が、比較的密度の低い材料で形成されている。また、本実施形態1の無機質板10では、加熱圧縮によって表面に凹凸模様が形成される表層11を、最小厚さ(溝3での厚さ)が1mm以上になるように形成している。このような構成により、表層11は、最も薄くなる尖鋭な凹部が形成される部分においても1mm以上の厚さが確保されることとなる。そして、このように表層11が分厚く形成されることにより、凹凸模様の中に尖鋭な凹部(溝3)があっても、該凹部(溝3)が比較的密度の低い材料で形成された芯層13にまで至ることがない。従って、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10において、尖鋭な凹部(溝3)を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部(溝3)部分における強度の低下を抑制することができる。言い換えると、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10において曲げ強度の増大を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態1の無機質板10では、加熱圧縮によって凹凸模様が形成される表層11と裏側の裏層12が、鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とする材料で形成され、表層11と裏層12との中間の芯層13が、軽量骨材と結合剤とを主成分とする材料で形成される三層構造に構成されている。また、加熱圧縮によって表面に凹凸模様が形成される表層11が、裏層12よりも最大厚さが厚くなるように形成されている(表層11の最大厚さ3mm>裏層12の最大厚さ2.5mm)。このように表裏層の合計の厚みを一定の厚みにした場合でも、表層11が分厚く形成されることにより、凹凸模様の中に尖鋭な凹部(溝3)があっても、該凹部(溝3)が比較的密度の低い材料で形成された芯層13にまで至ることがない。従って、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10において曲げ強度の増大を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態1の無機質板の製造方法によれば、少なくとも表層マット10aと芯層マット10bとを積層して湿潤基材10Aを形成する湿潤基材形成工程S1において、表層マット10aの厚さ(5mm)が、後の加熱圧縮工程S4においてエンボス型20で形成される凹凸模様の最大高低差(3mm)以上になるように湿潤基材10Aを形成することとしている。このように表層マット10aの厚さが凹凸模様の最大高低差以上になるように湿潤基材10Aを形成することにより、湿潤基材10Aを乾燥させて乾燥基材10Bとした後、エンボス型20で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部(溝3)を形成するためのエンボス型20の尖鋭な凸部が表層マット10aを突き破って芯層マット10bに至るのが抑制される。つまり、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10の製造にあたり、無機質板10に尖鋭な凹部(溝3)を形成する場合であっても、該尖鋭な凹部(溝3)部分における強度の低下が抑制された無機質板10を製造することができる。言い換えると、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10であって曲げ強度の高い無機質板10を製造することができる。
【0050】
さらに、本実施形態1の無機質板の製造方法によれば、表層マット10aと、芯層マット10bと、表層マット10aと同様に形成された裏層マット10cとを順に積層することによって湿潤基材10Aを形成することとしている。そして、表層マット10aの厚さ(5mm)を裏層マット10cの厚さ(4mm)より厚くしている。このように表層マット10aの厚さを分厚くすることにより、湿潤基材10Aを乾燥させて乾燥基材10Bとした後、エンボス型20で加熱圧縮する際に、尖鋭な凹部(溝3)を形成するためのエンボス型20の尖鋭な凸部が表層マット10aを突き破って芯層マット10bに至るのが抑制される。従って、化粧面となる表面1に凹凸模様が形成された無機質板10であって曲げ強度の高い無機質板10を製造することができる。
【0051】
また、本実施形態1の無機質板の製造方法によれば、表層マット10aの厚さ(5mm)を従来よりも厚く形成する一方、芯層マット10bの厚さ(5mm)を従来よりも薄く形成してこれらを積層した湿潤基材10Aを形成することとしている。このように、表層マット10aの質量を従来より増加させた分、芯層マット10bの質量を従来より低減することにより、加熱圧縮工程において圧縮圧力の増大を抑制することができる。
【0052】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、湿潤基材10Aを三層構造としていたが、湿潤基材10Aは、これに限られない。表層11及び裏層12を構成する1つの湿潤マットからなる単層構造でもよく、また、芯層13のない二層構造であってもよい。その他、芯層13の他に中間層を設けて四層以上の構造としてもよい。
【0053】
なお、上記実施形態1では、表層11は、最小厚さ(無機質板10の最も薄い溝3部分における表層11の厚さ)が1mmになるように形成されていたが、表層11は、最小厚さが1mm以上になるように形成されていればよい。つまり、無機質板10の最も薄い溝3部分における表層11の厚さは、1mm以上であればよく、2mmとなるように形成してもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態1では、湿潤基材形成工程において、表層マット10aの厚さが5mmになるように湿潤基材10Aを形成していた。しかし、表層マット10aの厚さは5mmに限られない。湿潤基材形成工程において、表層マット10aの厚さが後の加熱圧縮工程S4においてエンボス型20で形成される凹凸模様の最大高低差(3mm)以上になるように湿潤基材10Aを形成すればよい。例えば、凹凸模様の最大高低差が5mmの場合、表層マット10aを厚さ6mmに形成してもよい。
【解決手段】鉱物質繊維と無機質粉状体と結合剤とを主成分とした表層11と、該表層11の裏側に形成された軽量骨材と結合剤とを主成分とした芯層13とを少なくとも備え、化粧面となる表層11の表面1にエンボス型による凹凸模様が形成された加熱圧縮形成物からなる無機質板10において、表層11を、最小厚さが1mm以上になるように形成する。