(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準としている。以下では、一例として、複数の電池セル10の積層方向を上下方向として説明するが、これに限定されない。複数の電池セル10の積層方向は、他の任意の方向と一致してもよい。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る組電池1の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す組電池1の内部の部品ごとの分解斜視図である。組電池1は、大きな構成要素として、6つの電池セル10と、絶縁シート20と、拘束板30と、第1ケース40と、第2ケース50とを備える。
【0011】
6つの電池セル10は、上下方向に積層される。以下では、積層された6つの電池セル10を、下方から上方に向けて、それぞれ電池セル10a、10b、10c、10d、10e、及び10fとして表記する。各電池セルを区別しない場合には、まとめて電池セル10と記載する。各電池セル10は、上下方向に略平行な前面及び後面によりそれぞれ構成される2つの外面11を有する。各電池セル10は、積層方向に垂直な方向、特に前後方向に沿って、2つの外面11から互いに反対方向に突出する1組の電極タブ12p及び12nを有する。各電池セル10は、1組の電極タブ12p及び12nが前後方向に沿って配置された状態で積層される。
【0012】
絶縁シート20は、ポリエチレン(PE:polyethylene)、又はポリプロピレン(PP:polypropylene)樹脂などの電気絶縁性素材により略平板状に形成される。絶縁シート20は、積層された電池セル10のうち上端に位置する電池セル10fの上面に当接するように配置される。絶縁シート20は、組電池1の上面に当接される拘束板30と、組電池1内部の電池セル10との電気的な絶縁を確保するために設けられる。
【0013】
拘束板30は、絶縁シート20の上面に当接するように配置される。拘束板30は、係合した第1ケース40及び第2ケース50の上面にねじ止めなどの適宜な方法により固定される。例えば、拘束板30は、四隅に貫設された孔部31を第1ケース40の前端の左右両端部に設けられた2つのねじ孔41及び第2ケース50の後端の左右両端部に設けられた2つのねじ孔51に合わせてねじ止めすることで、係合した第1ケース40及び第2ケース50上に固定される。拘束板30は、各電池セル10の上面及び下面によって構成される積層方向に垂直な外面13を拘束した状態で、電池セル10を第1ケース40及び第2ケース50に挟持させる。同時に、拘束板30は、電池セル10を支持する。
【0014】
第1ケース40及び第2ケース50は、互いに係合した状態で、積層された電池セル10を内部で支持する。すなわち、積層された電池セル10は、第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aに載置される。係合した第1ケース40及び第2ケース50は、底面と対向し、その上面に構成された開口Oを有する。第1ケース40及び第2ケース50同士の接続面S1は、電極タブ12p又は12n側の電池セル10の外面11と略平行である。すなわち、接続面S1は、上下方向に平行である。このように、第1ケース40及び第2ケース50は、電池セル10の電極タブ12p及び12nの突出方向に沿って係合又は分離する。
【0015】
なお、積層された電池セル10のうち、互いに隣接する電池セル10同士を、接着剤又は両面テープなどの粘着剤によって接着固定してもよい。例えば、各電池セル10の上面に接着剤を塗布するなどの任意の方法により、互いに隣接する電池セル10同士を接着固定してもよい。同様に、電池セル10f及び絶縁シート20同士を、粘着剤によって接着固定してもよい。さらに、絶縁シート20及び拘束板30同士も同様に、粘着剤によって接着固定してもよい。
【0016】
図3は、
図2の電池セル10単体を示す図である。
図3(a)は、電池セル10の上面図である。
図3(b)は、電池セル10の側面図である。
図3は、一例として、
図2のように配置された電池セル10bを示す。他の電池セル10についても、
図3に示す電池セル10bと同様に構成される。
【0017】
電池セル10は、上面視において略平板状に形成される。電池セル10の外装部材14は、ラミネートフィルムによって構成される。外装部材14の最外層は、電気絶縁性を確保するために樹脂によって構成される。外装部材14の上下両面は、外面13を構成する。外面11は、中央部において、左右両端部よりも一段外方に突出する。すなわち、外面11は、上面視において凸状に形成される。外面11のうち一段外方に突出した部分から、電極タブ12p又は12nが突設される。電極タブ12p及び12nは、通常は平板状に突設されるが、上下方向に隣接する他の電池セル10の電極タブなどと接触させるために、外方に向けて、側面視において略L字状となるように互いに対称的に曲げ加工される。例えば、電極タブ12pは、前後方向に沿って外方に直線状に突出した後、下方に屈曲する。電極タブ12nは、前後方向に沿って外方に直線状に突出した後、上方に屈曲する。以下では、一例として、下方に屈曲する電極タブ12pを正極端子、上方に屈曲する電極タブ12nを負極端子として説明するが、これに限定されない。電極タブ12p及び12nは、正極及び負極の役割が逆になるように構成されてもよい。
【0018】
図4は、
図2の拘束板30単体を示す図である。
図4(a)は、拘束板30の上面視による斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のI-I矢線に沿う断面図である。
【0019】
拘束板30は、任意の剛性の高い材料により構成されるのが好適である。例えば、拘束板30は、金属材のみによって構成されるのが好適である。これに限定されず、拘束板30は、表面にPET樹脂などの電気絶縁性素材が付与された金属材又は樹脂材によって構成されてもよい。拘束板30は、略平板状に形成される。拘束板30は、略中央部に形成され、上下方向に沿って一段内方に凹設された略矩形状の凹部32を有する。4つの孔部31は、凹部32を囲む拘束板30の外縁部の四隅からそれぞれ突設される。凹部32の表面は、一例として、拘束板30の外縁部の表面と略平行になるように直線状に形成される。凹部32の表面は、このような構成に限定されず、例えば、その表面が中央部に向かうにつれてさらに内方に突出するような、直線状又は曲線状の傾斜面として形成されてもよい。組電池1は、凹部32による加圧によって、内部の電池セル10を強固に固定できる。拘束板30は、凹部32のような構成に限定されない。例えば、拘束板30は、凹部32を有さずに、拘束板30の表面が外縁部から中央部に向かうにつれて内方に徐々に突出するような、直線状又は曲線状の傾斜面を有するように形成されてもよい。また、拘束板30は、凹部32に代えて、例えば中央部の下面に突設される、少なくとも1つのリブを有してもよい。
【0020】
図5は、
図2の第1ケース40単体を示す図である。
図5(a)は、第1ケース40の前面の一部を拡大した上面視による斜視図である。
図5(b)は、第1ケース40の背面視による斜視図及び2つの破線囲み部をそれぞれ拡大した図である。
図5(c)は、第1ケース40の背面図及びその破線囲み部を拡大した図である。
【0021】
第1ケース40は、表面にPET樹脂などの電気絶縁性素材が付与された金属材又は樹脂材によって構成される。第1ケース40は、任意の剛性の高い材料により構成されてもよい。第1ケース40の前面中央部は、一段外方に突出するように形成される。当該前面中央部には、前面を貫通する4つの窓部42が、左右方向に沿って略矩形状に延設される。窓部42は、左右方向の一方の半部が、他方の半部よりも上下方向に幅広となるように形成される。窓部42は、電池セル10の電極タブ12p及び12nの先端面S2よりも小さくなるように形成される。電極タブ12p及び12nの先端面S2とは、それぞれの上下方向に屈曲した部分の外面である(
図3(b)参照)。4つの窓部42は、各々の左右両端部位置及び幅広となる半部の左右位置を合わせた状態で、上下方向に沿って一列に配列される。また、第1ケース40の前面中央部の左右両側面には、治具挿入孔43が形成される。治具挿入孔43は、4つの窓部42の各々に対応して、各窓部42と略同一の高さ位置に一対形成される。すなわち、一対の治具挿入孔43は、第1ケース40の前面中央部の左右両側面に略同一の高さ位置となるように形成される。
【0022】
第1ケース40は、電池セル10の外面11より突出する電極タブ12p若しくは12n、又は外面11と当接する当接部44を有する。例えば、当接部44は、電池セル10の第1ケース40への挿入時に、電池セル10の電極タブ12p又は12nが対向する、第1ケース40の第1内壁44aにより構成されるのが好適である。すなわち、第1内壁44aは、第1ケース40の前面中央部の裏面のうち、窓部42が形成される面によって構成される。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、電極タブ12p又は12nの先端面S2が、第1内壁44aと当接する。
【0023】
第1ケース40は、治具挿入孔43の裏側に位置し、第1内壁44aよりも一段内側に形成される第2内壁44bを有する。当接部44は、第2内壁44bにより構成されてもよい。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、外面11のうち、左右両端部よりも一段外方に突出した中央部が、第2内壁44bと当接する。
【0024】
第1ケース40は、第2内壁44bよりもさらに一段内側に形成される第3内壁44cを有する。当接部44は、第3内壁44cにより構成されてもよい。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、外面11のうち、中央部よりも一段内方に凹んだ左右両端部が、第3内壁44cと当接する。
【0025】
このように、各電池セル10の位置決めは、電極タブ12p若しくは12n、又は外面11を基準にして、対応する部分を第1ケース40の当接部44と当接させることで行われる。また、当接部44は、窓部42の近傍に位置する。より具体的には、当接部44は、第1ケース40のうち、窓部42が形成される前面中央部と同じ前端部に位置するように形成される。以上のような構成により、組電池1は、隣接する電池セル10の電極タブ12p及び12n同士を溶着する時に、精度よく位置決めできる。
【0026】
第1ケース40は、第1内壁44aから内側に突設され、電池セル10の挿入時に、第1内壁44aに向けて電極タブ12p又は12nを誘い込むためのガイド部45をさらに有する。ガイド部45は、第1内壁44aから少なくとも1つ突設される。第1ケース40は、第1内壁44aから内側に突設され、電池セル10の積層方向に隣接する電極タブ12p及び12nを互いに電気的に絶縁する第1絶縁部46aをさらに有する。第1絶縁部46aは、4つの窓部42の各々の間に1つずつ、合計で3つ設けられる。第1絶縁部46aの後端の前後位置は、第2内壁44bと同一である。すなわち、第1絶縁部46aの後面と第2内壁44bとは、同一平面をなす。
【0027】
ガイド部45の各々は、第1絶縁部46aの上下両面に、前後方向にわたって上下方向に突出した状態で延設される。一例として、ガイド部45は、各第1絶縁部46aの上面に4つ延設される。その各々は、左右方向に等間隔に離間するのが好適である。同様にガイド部45は、各第1絶縁部46aの下面に4つ延設される。その各々は、左右方向に等間隔に離間するのが好適である。第1絶縁部46aの上下両面にそれぞれ形成されたガイド部45は、互いに同一の左右方向位置に配置されてもよいし、互いに異なる左右方向位置に配置されてもよい。
【0028】
ガイド部45は、第1内壁44aから内側に離間する方向に向かってテーパ状となるテーパ部45aを有してもよい。例えば、ガイド部45の前半部における第1絶縁部46aからの突設量は一定であるが、略中央付近を境に、ガイド部45の後半部における第1絶縁部46aからの突設量が、内側に向けて次第に減少してもよい。例えば、テーパ部45aのテーパ形状は、直線状であってもよいし、緩やかな曲線状であってもよい。これにより、上下方向に離間した状態で隣り合うガイド部45の離間幅が、内側に向かうにつれて増加する。以上のようなテーパ部45aの構成により、組電池1は、第1ケース40への電池セル10の挿入性をさらに向上できる。
【0029】
第1ケース40は、一段外方に突出する前面中央部の裏部を3つの第1絶縁部46aによって上下方向に区切った、4つの収容部47を有する。すなわち、各収容部47は、対応する上下位置に配置された電極タブ12p及び12nを収容する。以下では、4つの収容部47を、下方から上方に向けて、それぞれ収容部47a、47b、47c、及び47dとして表記する。各収容部を区別しない場合には、まとめて収容部47と記載する。収容部47a乃至47dの前端には、窓部42がそれぞれ1つずつ配置される。
【0030】
第1ケース40は、左右方向の両内側面から内側に突設される第2絶縁部46bを有する。第2絶縁部46bは、積層された状態で隣接する各電池セル10を互いに絶縁する。例えば、第2絶縁部46bは、6つの積層された電池セル10の各々の間に1つずつ、合計5つ配置される。例えば、第2絶縁部46bは、6つの電池セル10の積層方向、すなわち上下方向に沿って、同一の前後幅及び同一の前後位置で配列される。なお、第2絶縁部46bは、電池セル10の第1ケース40への挿入時に、ガイドとしての機能も果たす。
【0031】
図6は、
図2の第2ケース50単体を示す図である。
図6(a)は、第2ケース50の後面の一部を拡大した上面視による斜視図である。
図6(b)は、第2ケース50の背面視による斜視図及び2つの破線囲み部をそれぞれ拡大した図である。
図6(c)は、第2ケース50の背面図及びその破線囲み部を拡大した図である。
【0032】
第2ケース50は、第1ケース40と同様に構成され、ねじ孔51、窓部52、治具挿入孔53、第1内壁54a、第2内壁54b、第3内壁54c、ガイド部55、テーパ部55a、第1絶縁部56a、第2絶縁部56b、及び収容部57を有する。上記の第1ケース40に対する説明は、第2ケース50の対応する各構成部に対しても同様に適用される。以下では、第2ケース50に関する第1ケース40と異なる点について主に説明する。
【0033】
第2ケース50の窓部52は、上下方向において、各々が第1ケース40の対応する窓部42の間に位置するように3つ形成される。より具体的には、4つの窓部42を、下方から上方に向けて、それぞれ窓部42a、42b、42c、及び42dとして表記し、3つの窓部52を、下方から上方に向けて、それぞれ窓部52a、52b、及び52cとして表記する。この場合、窓部52aは、上下方向において、窓部42a及び窓部42bの間に位置する。窓部52bは、上下方向において、窓部42b及び窓部42cの間に位置する。窓部52cは、上下方向において、窓部42c及び窓部42dの間に位置する。
【0034】
一例として、窓部52の幅広となる半部は、窓部42の幅広となる半部と、左右方向において同一の側に形成されてもよい。すなわち、窓部42の幅広となる半部が、
図5に示すとおり、一例として左側に形成される場合、窓部52の幅広となる半部は、
図6に示すとおり、左側に形成される。
【0035】
第1絶縁部56aは、3つの窓部52の各々の間に1つずつ、合計で2つ設けられる。収容部57は、一段外方に突出する後面中央部の裏部を2つの第1絶縁部56aによって上下方向に区切った状態で、3つ設けられる。すなわち、各収容部57は、対応する上下位置に配置された電極タブ12p及び12nを収容する。以下では、3つの収容部57を、下方から上方に向けて、それぞれ収容部57a、57b、及び57cとして表記する。各収容部を区別しない場合には、まとめて収容部57と記載する。ガイド部55は、収容部57aの底面及び収容部57cの天井面にも同様に延設される。一例として、ガイド部55は、それぞれの面に4つ延設される。
【0036】
図7は、組電池1を組み立てるための工程を示す模式図である。
図7(a)乃至(d)は、組電池1を組み立てるための代表的な第1工程乃至第4工程をそれぞれ示した模式図である。
図8は、
図7の第3工程及び第4工程時の第1ケース40及び第2ケース50の内部の様子を示した模式図である。
図8(a)は、
図7(c)のII-II矢線に沿う断面の一部を拡大した図である。
図8(b)は、
図7(d)のIII-III矢線に沿う断面の一部を拡大した図である。
図9は、
図8の破線囲み部を拡大した図である。
図9(a)は、
図8(a)の破線囲み部R1を拡大した図である。
図9(b)は、
図8(a)の破線囲み部R2を拡大した図である。
【0037】
図7(a)に示す第1工程では、積層する6つの電池セル10及び絶縁シート20を、1つずつ下方から順番に第1ケース40に挿入する。6つの電池セル10は、それぞれの電極タブ12p及び12nが屈曲した状態で、第1ケース40に挿入される。このとき、各電池セル10は、電極タブ12p若しくは12n、又は外面11を基準にして、対応する部分が第1ケース40の当接部44に当接することで、位置決めされる。すなわち、電池セル10のうち、電極タブ12p又は12nが形成される外面11側が、電池セル10、特に電極タブ12p又は12nの第1ケース40に対する位置決めのために用いられる。
図7(b)に示す第2工程では、電池セル10及び絶縁シート20を保持する第1ケース40に対して後方から第2ケース50を嵌合させる。同時に、総プラスバスバ60a及び総マイナスバスバ60bを第1ケース40に仮固定する。
図7(c)に示す第3工程では、第1ケース40の治具挿入孔43から対応する治具70aを挿入し、電極タブ12p及び12nを第1ケース40内で固定する。一例として、治具70aにより、電極タブ12p及び12nを第1内壁44aに当接させた状態で固定する。その後、レーザ溶接などの適宜な方法により、電極タブ12p及び12n、電極タブ12p及び総プラスバスバ60a、並びに電極タブ12n及び総マイナスバスバ60bをそれぞれ溶接する。例えば、レーザ溶接の場合、溶接用のレーザは、窓部42を通じて溶接箇所に照射される。
図7(d)に示す第4工程では、第2ケース50の治具挿入孔53から対応する治具70bを挿入し、電極タブ12p及び12nを固定する。その後、レーザ溶接などの適宜な方法により、電極タブ12p及び12nを互いに溶接する。例えば、レーザ溶接の場合、溶接用のレーザは、窓部52を通じて溶接箇所に照射される。
【0038】
拘束板30は、
図7(d)に示す第4工程の後、係合した第1ケース40及び第2ケース50の上面にねじ止めなどの適宜な方法により固定される。以上により、組電池1の組み立てが完了する。
【0039】
上記工程により、
図8に示すとおり、各電池セル10の電極タブ12p及び12nは、第1ケース40の収容部47及び第2ケース50の収容部57に収容される。この状態で、6つの電池セル10は、前方及び後方において、隣接する電池セル10の電極タブ12p及び12nが交互に配置されるように積層される。
【0040】
例えば、
図8(a)に示すとおり、収容部47aには、電池セル10aの電極タブ12pが配置される。収容部47bには、電池セル10aの上部に隣接して配置される電池セル10bの電極タブ12nが配置される。同様に、収容部47bには、電池セル10bの上部に隣接して配置される電池セル10cの電極タブ12pが配置される。収容部47c及び47dについても同様に、電池セル10d、10e、及び10fの前面側の電極タブ12p及び12nが交互に配置される。結果として、第1ケース40の4つの収容部47には、下方から上方に向けて電極タブ12p及び12nが交互に配置された状態で、1つ、2つ、2つ、1つの電極タブが収容される。
【0041】
例えば、
図8(b)に示すとおり、収容部57aには、電池セル10aの電極タブ12nが配置される。収容部57aには、電池セル10aの上部に隣接して配置される電池セル10bの電極タブ12pも配置される。収容部57b及び57cについても同様に、電池セル10c、10d、10e、及び10fの後面側の電極タブ12p及び12nが交互に配置される。結果として、第2ケース50の3つの収容部57には、下方から上方に向けて電極タブ12p及び12nが交互に配置される。各収容部57には、2つの電極タブ12p及び12nが収容される。
【0042】
以上のように、各電池セル10の電極タブ12p及び12nは、互いに上下逆方向に屈曲することで、隣接する電池セル10の反対の極性を有する電極タブとそれぞれ接続される。最終的に、6つの電池セル10は、互いに直列に接続される。
【0043】
図9(a)に示すとおり、第1ケース40の上端の収容部47dには、1つの電池セル10fの電極タブ12nが収容される。収容部47dには、総マイナスバスバ60bの端部も収容される。一例として、電極タブ12nの先端面S2が第1内壁44aに対向し、当該先端面S2の裏側が総マイナスバスバ60bの端部と対向する。換言すると、第1内壁44a、電極タブ12nの先端部、及び総マイナスバスバ60bの端部の順番で、外側から内側に向かって、各々が配置される。この状態で、
図7(c)に示す第3工程により治具70aが挿入されると、それぞれの面が互いに当接する。
【0044】
なお、
図8(a)にも示すとおり、第1ケース40の下端の収容部47aには、1つの電池セル10aの電極タブ12pが収容されると共に、総プラスバスバ60aの端部も収容される。
図9(a)に対する上記の説明は、収容部47aにおける電極タブ12pと総プラスバスバ60aとの関係についても適用される。
【0045】
図9(b)に示すとおり、第1ケース40の中央の2つの収容部47b及び47cには、2つの電池セル10の電極タブ12p及び12nが重畳した状態で収容される。一例として、電極タブ12nの先端面S2が第1内壁44aに対向し、当該先端面S2の裏側が電極タブ12pの先端面S2と対向する。換言すると、第1内壁44a、電極タブ12nの先端部、及び電極タブ12pの先端部の順番で、外側から内側に向かって、各々が配置される。この状態で、
図7(c)に示す第3工程により治具70aが挿入されると、それぞれの面が互いに当接する。
【0046】
図10は、筐体80に収容された組電池1を示す図である。
図10(a)は、組電池1を支持する筐体80の断面を示す、上面視による斜視図である。
図10(b)は、
図10(a)のIV-IV矢線に沿う断面図である。
図10(c)は、
図10(b)の破線囲み部を拡大した図である。
【0047】
筐体80は、アルミニウムなどの金属材によって構成されるのが好適である。これに限定されず、筐体80は、任意の剛性の高い材料により構成されてもよい。例えば、筐体80は、表面にPET樹脂などの電気絶縁性素材が付与された金属材又は剛性の高い樹脂材によって構成されてもよい。
【0048】
組電池1は、筐体80の内部にねじ止めなどの適宜な方法により固定される。より具体的には、組電池1は、第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aが筐体80の底面80aに当接した状態で、筐体80の内部に収容される。この時、筐体80の底面80aは、上方の拘束板30と同様に、積層された電池セル10を下方から拘束するための拘束部材として機能する。すなわち、積層された電池セル10は、底面80aに当接した第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aと当接することで、間接的に底面80aによって拘束される。このような構成に限定されず、例えば、第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aが十分な剛性を有していて拘束部材としての役割をこれら自身で果たすことができるのであれば、底面80aと底面40a及び底面50aとは当接していなくてもよい。
【0049】
図10に示すとおり、第1ケース40及び第2ケース50の筐体80に対する固定部Fは、筐体80の底面80aよりも内側に設けられる。すなわち、固定部Fは、積層された6つの電池セル10から構成される電池セル集合体100の重心により近づくように、底面80aよりも上方に位置する。
【0050】
固定部Fは、例えば、以下のように構成されてもよい。すなわち、一例として、第1ケース40の2つのねじ孔41は、第1ケース40の上面から下面まで貫通して構成されてもよい。同様に、第2ケース50の2つのねじ孔51は、第2ケース50の上面から下面まで貫通して構成されてもよい。一方で、筐体80は、2つのねじ孔41及び2つのねじ孔51を支持するために、各々に対応する位置に、底面80aから内側に突設された支持部81を有する。支持部81の上面には、2つのねじ孔41及び2つのねじ孔51のそれぞれに上方から挿入されたねじと螺合するためのねじ穴81aが螺設される。例えば、第1ケース40及び第2ケース50は、ねじ孔41及びねじ孔51に対してねじを上方から挿入してねじ穴81aと螺合させることで、筐体80に固定されてもよい。すなわち、固定部Fは、ねじ孔41又はねじ孔51とねじ穴81aとによって構成されてもよい。
【0051】
以上のように、組電池1の底面は、筐体80の底面80aに当接した状態で固定される。したがって、組電池1の底面側は、筐体80の底面80aによって下方から強固に拘束される。一方で、組電池1の上面側が仮に第1ケース40及び第2ケース50と絶縁シート20とによってのみ構成される場合、底面側と比較して拘束力が弱い。そこで、筐体80に組電池1が固定された状態で、拘束板30は、積層方向の一方、すなわち上方から電池セル集合体100を覆うように第1ケース40及び第2ケース50に固定されている。上述したとおり、拘束板30は、電池セル集合体100の上面に向かって一段凹んだ凹部32を有する。この時、拘束板30と電池セル集合体100の上面との間には、絶縁シート20が配置される。絶縁シート20は、拘束板30の凹部32及び電池セル集合体100の上面に当接する。一方で、第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aが筐体80の底面80aに当接する。すなわち、電池セル集合体100の上面が、拘束板30により上方から加圧されると同時に、電池セル集合体100の下面が、当接する第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aを介して、筐体80の底面80aにより支持される。これにより、各電池セル10の上下方向位置が規制される。この時、経時劣化によって電池セル10の内部で発生したガスは、積層方向における加圧によって電池セル10の外周に集まりやすくなる。すなわち、内部ガスは、中央部に形成された電極から離間した場所に集められる。
【0052】
一般的に、電池セル10の電池特性と、電池セル10の積層方向に対する圧力との間には相関関係がある。すなわち、所定の圧力を加えることで、電池セル10内部の電極間隔が安定するため、内部抵抗が低下し、電池セル10の電池特性が向上する。一方で、圧力が過大に加わると、電池セル10内部の化学反応自体が阻害され、電池特性が低下する。したがって、組電池1の組み立て時には、経時的に安定した良好な電池特性が得られるように、所定の圧力範囲内で圧力が加わるよう、拘束板30を固定するのが好適である。これにより、経時劣化に伴って電池セル10が膨張し、反作用によって電池セル10の積層方向に対する圧力が増大したとしても、電池特性を維持できる最適な圧力値を確保できる。
【0053】
以上のような第1実施形態に係る組電池1は、隣接する電池セル10の電極タブ12p及び12n同士を溶着する時に、精度よく位置決めできる。すなわち、位置決めの基準となる電極タブ12p若しくは12n、又は外面11と、溶着する部分とが互いに近接して配置される。これにより、組電池1は、位置決めの基準と溶着する部分とが電池セルの異なる方向の外面に配置される場合と比較して、溶着時の電極タブ12p及び12nの位置決め精度を向上できる。特に、組電池1は、当接部44を第1内壁44aとすることで、位置決めの基準となる電極タブ12p又は12nと、溶着する部分とを略同一位置に配置することができる。これにより、溶着時の電極タブ12p及び12nの位置決め精度がより向上する。このように、組電池1は、電極タブ12p及び12nの溶着工程を簡素化して、溶着作業を容易化できる。これにより、組電池1は、製品としての信頼性の向上にも寄与できる。
【0054】
組電池1は、ガイド部45及び55並びに第2絶縁部46b及び56bを有することで、第1ケース40及び第2ケース50への電池セル10の挿入性を向上できる。当該効果は、ガイド部45及び55並びに第2絶縁部46b及び56bのうちの少なくとも1つの構成によっても得られる。これらの構成が全て設けられた場合、当該効果は、最も顕著に現れる。また、組電池1は、ガイド部45及び55にそれぞれテーパ部45a及び55aを設けることで、挿入性をさらに向上できる。すなわち、組電池1は、挿入時に電極タブ12p及び12nが第1ケース40又は第2ケース50の内面に接触して変形することを防止して、電極タブ12p及び12nを確実に収容部47及び57に収容可能である。特に、テーパ部45a及び55aの形成によって、ガイド部45及び55のそれぞれの上下方向の離間幅が内側に向かうにつれて増加するので、挿入時における電極タブ12p及び12nとケースの内壁との干渉を回避しやすくなる。また、組電池1は、ガイド部45及び55の左右方向位置及び数が同一であることにより、第1ケース40及び第2ケース50の製造工程を簡素化できる。すなわち、組電池1は、生産性向上に寄与できる。
【0055】
組電池1は、第1絶縁部46a及び56a並びに第2絶縁部46b及び56bを設けることで、隣接する電池セル10の積層方向に対する電気的な絶縁を確保できる。すなわち、初期状態はもとより、経時劣化により電池セル10が膨張して電極タブ12p及び12nの上下位置が変化したとしても、絶縁性を維持できる。
【0056】
組電池1は、第1ケース40及び第2ケース50を表面に電気絶縁性素材が付与された金属材又は樹脂材によって構成することで、組電池1の外部に配置される電気部品などの部品と、組電池1内部の電池セル10との電気的な絶縁を確保できる。
【0057】
組電池1は、電池セル10の積層方向に垂直な外面13を拘束板30により拘束することで、組電池1の使用時、充放電時、又は経時劣化後に内部ガスが発生したとしても、電池セル10の積層方向への膨張を抑制できる。組電池1は、拘束板30を金属材により形成することで、その剛性を向上させ、効果的に電池セル10の膨張を抑制できる。一方で、組電池1は、第1ケース40及び第2ケース50と同様に、拘束板30を電気絶縁性素材が付与された金属材又は樹脂材によって形成することで、電気的な絶縁性をさらに向上できる。また、このような場合、組電池1は、拘束板30を軽量化して安価に製造可能であるので、組電池1自体の軽量化及び低コスト化に貢献できる。
【0058】
組電池1は、積層された電池セル10の一方にのみ絶縁シート20及び拘束板30を1つずつ設けるので、部品点数を削減して、生産性を向上できる。このように、組電池1は、例えば電池セル毎にセルカバーを設けて各電池セルを保護するような従来の組電池と比較して、部品点数及び生産性の観点で有利である。すなわち、組電池1は、簡素化された構成によって、生産性の向上及び低コスト化に寄与できる。また、電池セル10同士、電池セル10及び絶縁シート20同士、並びに、絶縁シート20及び拘束板30同士を粘着剤により固着することで、組電池1の振動又は衝撃に対する耐性が向上する。例えば、組電池1は、車両に搭載される場合、走行時の振動又は衝撃などによる部品同士の相対的な変位を防止できる。このように、組電池1は、内部の各部品同士を互いに強固に固定して、振動又は衝撃に伴う内部の部品の破損を防止することもできる。
【0059】
組電池1は、積層された電池セル10の膨張を抑制しつつ、小型化及び低背化できる。すなわち、組電池1は、電池セル集合体100を、積層方向の一方から上面を1つの拘束板30によって加圧すると同時に、下面を第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aと当接させることで、電池セル10の積層方向の膨張を抑制できる。同時に、組電池1は、使用する拘束板30の枚数が1枚であるので、複数の拘束板を設ける従来の電池モジュールに比べて小型化、低背化、及び軽量化できる。同様に、組電池1は、部品点数及びコストの低減にも寄与する。さらに、組電池1は、第1ケース40の底面40a及び第2ケース50の底面50aを筐体80の底面80aに当接させることで、電池セル集合体100の支持性をさらに向上できる。特に、組電池1は上面側に拘束板30を有し、組電池1の底面は筐体80の底面80aに当接するので、内部の電池セル集合体100は、上下両方向から強固に拘束される。さらに、拘束板30及び底面80aによる上下方向からの拘束により、第1ケース40及び第2ケース50は、電池セル集合体100を支持した状態であっても、撓みにくくなる。換言すると、拘束板30及び底面80aによって、第1ケース40及び第2ケース50の撓みが規制される。
【0060】
組電池1は、開口Oを設けることで、第1ケース40及び第2ケース50の劣化を抑制できる。例えば、開口Oが設けられずに、拘束板30を直接第1ケース40及び第2ケース50の上面に配置すると、拘束板30がこれらのケースを直接加圧することになるので、ケースが変形し、劣化が促進される。したがって、組電池1は、このような経時劣化に伴うケースの破損を防止できる。
【0061】
組電池1は、拘束板30の凹部32の構成により、積層方向に垂直な電池セル10の外面13の中央部に適切に加圧できる。これにより、組電池1は、電池セル10の積層方向への膨張を抑制できる。また、組電池1は、拘束板30による加圧によって、第1ケース40及び第2ケース50の内部に電池セル集合体100を適切に保持できるので、保持信頼性も向上する。すなわち、組電池1は、凹部32による加圧によって、電池セル集合体100をさらに強固に固定できる。組電池1は、良好な電池特性を維持できる最適な範囲内の圧力で加圧することで、電池セル10内の内部抵抗を安定化できる。さらに、組電池1は、加圧により内部ガスを電極近傍から電池セル10の外周へと逃がすので、電池セル10の劣化を抑制できる。すなわち、組電池1は、内部ガスが電極間に存在することによる電池特性の劣化を抑止する。特に、組電池1は、凹部32の表面が中央部に向かうにつれてさらに内方に突出するように形成されることで、電池セル10の外面13の中央部に加圧をより集中させて、当該電池セル10の積層方向への膨張をより効果的に抑制できる。この場合、組電池1は、内部ガスを電池セル10の外周へとより効率的に集めることもできる。
【0062】
組電池1は、絶縁シート20の配置により、拘束板30と、内部の電池セル10との電気的な絶縁を確保できる。
【0063】
組電池1は、固定部Fが電池セル集合体100の重心により近づくように配置されることで、電池セル集合体100という重量物をバランス良く固定できる。例えば、組電池1が車両に搭載される場合、走行時の振動又は衝撃などによって発生する応力が緩和される。これにより、組電池1は、製品としての信頼性を向上できる。さらに、組電池1は、当該配置により、低背化に寄与できる。
【0064】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る組電池1の外観を示す斜視図である。
図11(a)は、組電池1の完成図である。
図11(b)は、組電池1の分解斜視図である。
図12は、
図11の電池セル10単体を示す上面図である。第2実施形態では、
図11に示すとおり、第1実施形態に係る組電池1の拘束板30を省略して説明するが、第2実施形態に係る組電池1は、第1実施形態同様に拘束板30を有してもよい。第2実施形態に係る組電池1は、電池セル10の電極タブ12p及び12nが同一面上に形成される点で第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と同じ構成部については同一の符号を付す。また、その説明を省略し、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0065】
図12に示すとおり、電池セル10の外面11は、左右方向に沿った2つの半部のそれぞれの中央部において、左右両端部よりも一段外方に突出する。すなわち、外面11は、上面視において2つの凸形状が左右方向に連なるように形成される。外面11のうち一段外方に突出した2つの部分から、電極タブ12p及び12nがそれぞれ突設される。電極タブ12p及び12nは、外方に向けて、略L字状となるように互いに対称的に突出する。例えば、電極タブ12pは、前方に直線状に突出した後、下方に屈曲する。電極タブ12nは、前方に直線状に突出した後、上方に屈曲する。
【0066】
図11(b)に示すとおり、6つの電池セル10は、隣接する電池セル10同士で電極タブ12p及び12nの左右方向位置が互い違いになるように積層される。具体的には、最下部の電池セル10aの外面11の右側に電極タブ12pが配置され、左側に電極タブ12nが配置される。電池セル10aの上部に隣接する電池セル10bの外面11の右側に電極タブ12nが配置され、左側に電極タブ12pが配置される。電池セル10c、10d、10e、及び10fについても同様に電極タブ12p及び12nが配置される。
【0067】
図13は、
図11の第1ケース40単体を示す図である。
図13(a)は、第1ケース40の背面視による斜視図及びその破線囲み部を拡大した図である。
図13(b)は、第1ケース40の背面図及びその破線囲み部を拡大した図である。
【0068】
第1ケース40の前面には、右半部を貫通する4つの窓部421及び左半部を貫通する3つの窓部422が、左右方向に沿って略矩形状に延設される。窓部421及び窓部422は、左右方向の一方の半部が、他方の半部よりも上下方向に幅広となるように形成される。4つの窓部421は、各々の左右両端部位置及び幅広となる半部の左右位置を合わせた状態で、上下方向に沿って一列に配列される。同様に、3つの窓部422は、各々の左右両端部位置及び幅広となる半部の左右位置を合わせた状態で、上下方向に沿って一列に配列される。
【0069】
3つの窓部422は、上下方向において、各々が対応する窓部421の間に位置するように形成される。より具体的には、4つの窓部421を、下方から上方に向けて、それぞれ窓部421a、421b、421c、及び421dとして表記し、3つの窓部422を、下方から上方に向けて、それぞれ窓部422a、422b、及び422cとして表記する。この場合、窓部422aは、上下方向において、窓部421a及び窓部421bの間に位置する。窓部422bは、上下方向において、窓部421b及び窓部421cの間に位置する。窓部422cは、上下方向において、窓部421c及び窓部421dの間に位置する。また、一例として、窓部421の幅広となる半部及び窓部422の幅広となる半部は、第1ケース40の前面の中央部側にそれぞれ位置してもよい。
【0070】
第1ケース40は、電池セル10の外面11より突出する電極タブ12p及び12n又は外面11と当接する当接部44を有する。例えば、当接部44は、電池セル10の第1ケース40への挿入時に、電池セル10の電極タブ12p及び12nが対向する、第1ケース40の第1内壁44aにより構成されるのが好適である。すなわち、第1内壁44aは、第1ケース40の前面の裏側のうち、窓部421及び422が形成される面によって構成される。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、電極タブ12p及び12nの先端面S2が、第1内壁44aと当接する。
【0071】
第1ケース40は、第1内壁44aよりも一段内側に形成される第2内壁44bを有する。当接部44は、第2内壁44bにより構成されてもよい。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、外面11のうち、左右両端部よりも一段外方に突出した2つの半部のそれぞれの中央部が、第2内壁44bと当接する。
【0072】
第1ケース40は、第2内壁44bよりもさらに一段内側に形成される第3内壁44cを有する。当接部44は、第3内壁44cにより構成されてもよい。この場合、6つの電池セル10が第1ケース40に挿入されると、外面11のうち、2つの半部のそれぞれの中央部よりも一段内方に凹んだ、中央部及び左右両端部が、第3内壁44cと当接する。
【0073】
このように、各電池セル10の位置決めは、電極タブ12p及び12n又は外面11を基準にして、対応する部分を第1ケース40の当接部44と当接させることで行われる。また、当接部44は、窓部421及び422の近傍に位置する。より具体的には、当接部44は、第1ケース40のうち、窓部421及び422が形成される前面と同じ前端部に位置するように形成される。
【0074】
第1ケース40は、第1実施形態と同様に構成されるガイド部45、テーパ部45a、及び第1絶縁部46aをさらに有する。第1絶縁部46aは、4つの窓部421及び3つの窓部422の各々の間に1つずつ、合計で5つ設けられる。
【0075】
第1ケース40は、前面の左右両半部のそれぞれの裏側を3つの第1絶縁部46a及び2つの第1絶縁部46aによって上下方向に区切った、4つの収容部471及び3つの収容部472を有する。すなわち、各収容部471及び472は、対応する上下位置に配置された電極タブ12p及び12nを収容する。以下では、4つの収容部471を、下方から上方に向けて、それぞれ収容部471a、471b、471c、及び471dとして表記する。3つの収容部472を、下方から上方に向けて、それぞれ収容部472a、472b、及び472cとして表記する。各収容部を区別しない場合には、まとめて収容部471及び472と記載する。収容部471a乃至471dの前端には、窓部421a乃至421dがそれぞれ配置される。収容部472a乃至472cの前端には、窓部422a乃至422cがそれぞれ配置される。
【0076】
第1ケース40は、左右方向の両内側面から第3内壁44cにかけて内側に突設される第2絶縁部46bを有する。第2絶縁部46bは、積層された状態で隣接する各電池セル10を互いに絶縁する。
【0077】
第1ケース40の左右両側面の前端部には、治具挿入孔43が形成される。治具挿入孔43は、7つの窓部421及び422の各々に対応して、各窓部421及び422と略同一の高さ位置に一対形成される。
【0078】
図11(b)に示すとおり、第2ケース50は、内面に沿って略コ字状に突設される第2絶縁部56bを有してもよい。第2絶縁部56bは、例えば、左右両側面のみ又は後面のみに形成されてもよい。第2絶縁部56bは、積層された状態で隣接する各電池セル10を互いに絶縁する。第2絶縁部56bは、第1ケース40の第2絶縁部46bと同一の上下方向位置に同数配列されるのが好適である。
【0079】
第2ケース50は、第1実施形態同様、ガイド部55を有してもよい。この場合、例えば、ガイド部55は、後面に形成された第2絶縁部56bの上面及び下面の少なくとも一方に、適切な配置及び数で突設されてもよい。
【0080】
本実施形態では、窓部421及び422が前面に集中しているので、組電池1の組み立てにおいて、
図7を用いて説明した第4工程を必要としない。
図7で説明した第1工程から第3工程までと同様の工程により、組電池1の組み立てが完了すると、各電池セル10の電極タブ12p及び12nは、第1ケース40の収容部471及び472に収容される。この状態で、6つの電池セル10は、隣接する電池セル10の電極タブ12p及び12nが交互に配置されるように積層される。
【0081】
例えば、収容部471aには、電池セル10aの電極タブ12p及び図示しない総プラスバスバ60aが配置される。収容部472aには、電池セル10aの電極タブ12n及び電池セル10の上部に隣接して配置される電池セル10bの電極タブ12pが配置される。同様に、収容部471bには、電池セル10bの電極タブ12n及び電池セル10bの上部に隣接して配置される電池セル10cの電極タブ12pが配置される。収容部472b、471c、472c、及び471dついても同様に、電極タブ12p及び12nが交互に配置される。収容部471dでは、電池セル10fの電極タブ12nに加えて、図示しない総マイナスバスバ60bも配置される。
【0082】
以上のような第2実施形態に係る組電池1は、第1実施形態において説明した上記の効果と同様の効果を奏する。加えて、第2実施形態に係る組電池1は、窓部421及び422が前面に集中しているので、組み立ての工数を削減できる。これにより、組電池1は、生産性の向上に寄与できる。さらに、電池セル10の電極タブ12p及び12nが外面11にのみ形成され、電池セル10の後部は平坦となることで、電池セル10の前後幅が、電極タブ12p又は12nの分だけ短くなる。これに伴って、第2ケース50の前後幅も短くなり、組電池1は、全体として小型化に寄与できる。
【0083】
(第3実施形態)
図14は、本発明の第3実施形態に係る組電池1の外観を示す斜視図である。第3実施形態に係る組電池1は、
図14に示すとおり、第1実施形態に係る組電池1の構成に加えて、電池セル10の内部で発生したガスを外部に排出するための排出部90を備える。なお、組電池1は、第2実施形態に係る組電池1の構成に排出部90を付加してもよい。以下では、第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成部については同一の符号を付す。また、その説明を省略し、第1実施形態及び第2実施形態と異なる排出部90に着目して主に説明する。
【0084】
排出部90は、例えば、第2ケース50の左側面に1つ設けられる。排出部90は、当該側面から外部に向かって延びる排出チューブ91を有する。排出部90は、内部ガスを効率的に外部に排出可能であれば、第1ケース40及び第2ケース50の外面のうち、第2ケース50の左側面以外の任意の外面に設けられてもよい。排出部90は、1つに限定されず、複数設けられてもよい。
【0085】
経時劣化に伴って、電池セル10の内部ではガスが発生する。内部ガスの圧力が所定値を上回ると、内部ガスは、電池セル10の周囲端部から外部へと放出される。排出部90は、排出チューブ91を通じて、電池セル10から放出された内部ガスを、組電池1の外部へと誘導する。
【0086】
以上のような第3実施形態に係る組電池1は、第1実施形態及び第2実施形態において説明した上記の効果と同様の効果を奏する。加えて、第3実施形態に係る組電池1は、排出部90によって内部ガスを外部へと誘導することで、安全性を向上できる。換言すると、組電池1は、製品としての信頼性を向上できる。
【0087】
本発明は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的なものであり、これに限定されるものではない。発明の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるものとする。
【0088】
図15は、第1ケース40と第2ケース50との嵌合部分を示す図である。
図15(a)は、組電池1の外観を示す斜視図である。
図15(b)は、
図15(a)の破線囲み部を拡大した図である。
【0089】
例えば、第1ケース40及び第2ケース50は、一方の左右両側面に係合爪E1が形成され、他方の対応する左右両側面に係合孔E2が形成された状態で、互いに嵌合されてもよい。すなわち、第1ケース40及び第2ケース50の嵌合時に、係合爪E1が係合孔E2に係合する。組電池1は、爪と孔との係合による構成に限定されない。例えば、第1ケース40及び第2ケース50は、それぞれの左右両側面から突設された任意の凸部がクリップなどの弾性部材によって挟持されることで、嵌合されてもよい。また、第1ケース40及び第2ケース50は、ねじ止めなどによる任意の締結構造によって嵌合されてもよい。このように、組電池1は、第1ケース40及び第2ケース50を確実に嵌合可能であれば、任意の係合構造を有してもよい。これにより、組電池1は、良好な組立性を実現でき、結果として、製品の信頼性向上に寄与できる。
【0090】
上記では、第1ケース40にのみ当接部44が設けられる構成を説明したが、これに限定されない。例えば、第2ケース50が当接部を有してもよく、この場合、当接部は、第1内壁54a、第2内壁54b、及び第3内壁54cの少なくとも1つにより構成されてもよい。また、第1ケース40及び第2ケース50の双方が当接部を有してもよい。
【0091】
組電池1は、電池セル10の第1ケース40及び第2ケース50への挿入性を確保できれば、テーパ部45a及び55aを有さなくてもよい。
【0092】
組電池1は、ガイド部45及び55を独立して設ける構成に限定されない。例えば、組電池1は、ガイド部45及び55を設けず、第1絶縁部46a及び56aをガイド部として兼用するように構成されてもよい。この場合、第1絶縁部46a及び56aにテーパ形状を設けることで、電池セル10の挿入性を向上させてもよい。
【0093】
組電池1は、電池セル集合体100の下面側にも開口Oと共に拘束板30を配置してもよい。これにより、電池セル集合体100は、上下両方向から剛性の高い拘束板30によって狭持されるので、加圧保持性がさらに向上する。
【0094】
同様に、組電池1は、電池セル集合体100の下面側にも絶縁シート20を配置してもよい。これにより、組電池1は、絶縁性をさらに向上できる。
【0095】
電池セル10の枚数並びに窓部42及び52の数は、上記の構成に限定されない。電池セル10の枚数は、任意の数でよい。窓部42及び52は、電池セル10の枚数に応じた最適な態様で形成されてもよい。
【解決手段】本発明に係る組電池1は、積層された複数の電池セル10と、互いに係合した状態で、複数の電池セル10を内部で支持する第1ケース40及び第2ケース50と、第1ケース40及び第2ケース50のうち少なくとも一方に設けられ、電池セル10の挿入時に、電池セル10の外面11より突出する電極タブ又は電極タブ側の外面11と当接する当接部44と、を備え、第1ケース40及び第2ケース50同士の接続面S1は、電極タブ側の外面11と略平行である。