(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1)が、前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層の硬化をさらに含み、且つ工程(2)が、前記熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層の硬化をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記硬化したPVCプラスチゾル層の層厚が50〜400マイクロメートルであり、且つ前記硬化した熱硬化性及び/又は熱硬化性トップコート層の層厚が2〜50マイクロメートルであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層が、コイルコーティングによって生成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
工程(1)の前に、硬化した化成皮膜層が、前記金属基材上に直接生成され、且つ硬化したプライマーコーティング層が、前記硬化した化成皮膜層上に直接生成され、これにより、前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層が、次いで、前記硬化したプライマーコーティング層上に直接生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング層のいずれも同じ層状複水酸化物を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
層状複水酸化物の量が、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料それぞれの総量に基づいて0.1〜5重量%であり、且つ前記UV安定剤ブレンドの量が、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料それぞれの総量に基づいて0.1〜5重量%であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料が、バインダー成分としての少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリル樹脂及び架橋剤成分としての少なくとも1種のポリイソシアネート、バインダー成分としての少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤成分としての少なくとも1種のポリイソシアネート又はバインダー成分としての少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング層のいずれも、10〜300秒の間の180〜300℃の間のピーク金属温度で硬化することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
前記金属基材が、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム及びこれらの合金並びに鋼を含むか、又はこれらからなる基材から選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明において用いられる用語のいくつかを説明する。
【0010】
コーティング材料、例えばポリ塩化ビニルプラスチゾル材料の基材への塗布は以下の通り理解される。それぞれのコーティング材料は、そこから形成されるコーティング層が基材上に配置されるが、必ずしも基材と直接接触している必要はないように塗布される。他の層も、例えば、コーティング層と基材との間に配置されてもよい。例えば、本発明の方法の工程(1)において、ポリ塩化ビニルプラスチゾルコーティング層が金属基材上に形成されるが、化成皮膜、例えばリン酸亜鉛コーティング、及び/又は典型的なプライマー層のような他の層が、基材とプラスチゾルコーティング層との間に配置されてもよい。
【0011】
同じ原則が、コーティング材料(b)の、別のコーティング材料(a)により形成されたコーティング層(A)への塗布、又はコーティング層(B)の、例えば、金属基材上に配置された別のコーティング層(A)上の生成にあてはまる。コーティング層(B)は必ずしもコーティング層(A)と接触している必要はないが、単にその上方に、すなわち、金属基材と反対の方向を向いているコーティング層(A)の側の上に配置されなければならない。
【0012】
一方、コーティング材料の基材への直接の塗布は以下の通り理解される。それぞれのコーティング材料は、そこから形成されるコーティング層が基材上に配置され、基材と直接接触するように塗布される。従って、とりわけ、他の層は、コーティング層と基材との間に配置されない。もちろん、同じことが、コーティング材料(b)の、別のコーティング材料(a)により形成されたコーティング層(A)への直接の塗布、又はコーティング層(B)、例えば、金属基材上に配置された別のコーティング層(A)上の直接の生成にあてはまる。この場合、2つのコーティング層は直接接触しており、すなわち、直接重ね合わせて配置される。とりわけ、コーティング層(A)及び(B)の間に別の層は存在しない。
【0013】
本発明の文脈において、「硬化」は、多層コーティングの生成のための方法に関連して当業者なら知っている意味を有すると理解される。
【0014】
従って、コーティング層の硬化は、このような層の、すぐ使用できる状態、すなわち、それぞれのコーティング層を備えた基材が意図した通り運搬、保管及び使用できる状態への変換を意味すると理解される。とりわけ、硬化したコーティング層はもはや軟らかくはなく、粘着性もないが、その特性、例えば硬度又は基材への付着性が、以下で説明する硬化条件にさらにさらされても、何らかの別の著しい変化を経ることのない固いコーティング層としてコンディショニングされている。周知の通り、コーティング材料は原則的に、存在する成分、例えばバインダー及び架橋剤によって、物理的及び/又は化学的に硬化することができる。化学的硬化の場合、熱化学的硬化が記述されるものとする。コーティング材料が熱化学硬化性である場合、これは自己架橋及び/又は外部架橋でもよい。コーティング材料が自己架橋及び/又は外部架橋であるという記述は、本発明の文脈において、このコーティング材料が、ポリマーをバインダー及び任意選択で架橋剤として含み、これらが、それに応じて、反応性官能基の化学反応により互いに架橋することができることを意味すると理解されるべきである。これらの化学反応の活性化エネルギーは、熱エネルギーによって、すなわち加熱によって供給されてもよい。基礎となる機構並びに使用可能なバインダー及び架橋剤については、以下でさらに詳細に説明する。このような熱化学硬化性材料は、熱硬化性コーティング材料とも呼ばれる。
【0015】
本発明の文脈において、「物理的硬化性」又は用語「物理的硬化」は、例えば、ポリマー溶液中のポリマー鎖のインタールーピング(interlooping)及び/又はオルガノゾルもしくはヒドロゾルのようなポリマー分散物中のポリマー粒子の一体化及び融解による硬化したコーティング層の形成を意味し、これにより、上記インタールーピング並びに/又は一体化及び融解は通常、溶媒の蒸発を伴う。しばしば、物理的硬化は、例えば、溶媒を蒸発させるために、コーティング材料を加熱することによって誘発又は向上される。
【0016】
前述した通り、物理的硬化は、異なる手段及び機構を伴うことがある。しかし、物理的硬化それ自体は、バインダー及び任意選択の架橋剤の反応性官能基の化学反応を伴わない。
【0017】
例えば、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料の硬化プロセスもまた物理的硬化プロセスである。既知の通り、プラスチゾル材料は液体可塑剤中の熱可塑性ポリマー粒子の懸濁物であり、これにより、ポリマーは実際には、室温のような中温、すなわち、例えば15℃〜30℃の温度で可塑剤に溶解しない。しかし、プラスチゾルが十分に加熱されるとき、可塑剤は分散したポリマー粒子中に拡散し、ここで、可塑剤は巨大分子間に留まり、それゆえ、PVCプラスチゾルは可塑化を生じる。冷却すると、永続的に可塑化した固い(「硬化した」)生成物、例えば硬化したPVCプラスチゾル層が生じる。
【0018】
また、例えば、熱可塑性ポリフッ化ビニリデンコーティング材料のような熱可塑性コーティング材料の硬化は物理的硬化プロセスである。通常、ポリフッ化ビニリデンコーティング材料はオルガノゾル、すなわち、有機溶媒中のポリフッ化ビニリデンに基づく分散物として配合される。やはり、このような材料の硬化は、官能基、例えば、バインダーポリマーの化学反応を伴わないが、物理的硬化プロセスの機構を伴う。例えば、熱可塑性材料を加熱することによって、熱可塑性ポリマーは流動化され、溶媒は蒸発し、これにより、ポリマー粒子が集まり、例えば室温(20〜25℃)まで冷却されると凝固する均質な層が形成される。
【0019】
もちろん、化学硬化性と記述されるコーティング材料の硬化においては、常に、物理的硬化が起こる可能性もある。それでも、このようなコーティング組成物は、その場合、化学硬化性と記述される。
【0020】
本発明の方法
本発明の方法において、多層コーティングが金属基材上に形成される。
【0021】
既知の通り、金属を有機保護材料でコーティングする最も効率的な手段は、コイルコーティングラインプロセスによる。以下では、コイルコーティングプロセスを一般的に説明する。
【0022】
コイルコーティングは、ポストコーティング法と比較して一貫した製品を製造する連続的な大量のプロセスである。コイルコーティングは、ほとんどの他の塗装プロセスで得ることが実質的に不可能な制御を実現する。平坦なシートを扱うことで、前処理及びポリマーベースのコーティング材料の両方のコーティング重量の優れた制御を可能にする。例えば、ある連続プロセスにおいて、最大幅2.6メートル、最大200m/minで移動する金属のコイルが巻き出され、上側と下側の両方が洗浄され、化学的に処理され、下塗りされ、オーブン硬化され、トップコーティングされ、再びオーブン硬化され(複数のコーティング層で繰り返されることがあるプロセス)再び巻き取られ、出荷のために包装される。
【0023】
コイルコーティングは、金属ストリップ(コイル)の液体コーティング材料によるロールコーティング、並びに、場合によっては、スプレーコーティング及びフローコーティングの特殊な形態である。このコイルコーティングは連続プロセスである。すべての作業工程、例えば洗浄、前処理、コーティング及び硬化などを、1つの操作において1つのラインで実施することができる。概略的には、コイルコーティングは以下の工程を包含する:様々なゲージ、幅及び長さのコイルがコイルに対するエンドユーザーの要求に基づく連続プロセスのラインに送られる。
【0024】
コイルは、メカニカルスティッチ(mechanical stitch)の手段によって一緒にスティッチされるが、他の方法、例えば溶接及び接着剤も使用される。コーティング塗布の前に、ストリップは、好ましくは適切に前処理される。基材の効果的な前処理は、そのコーティング層の最適な付着及び耐食特性が得られるようにするために、基材と塗布された有機コーティング材料との間に親和性をもたらす重要な役割を持つことができる。前処理プロセスは通常、適した洗浄段階で始まり、ここで、典型的には回転ブラシ(又は複数のブラシ)があらゆる局所的な腐食を金属基材表面から除去し、その後、例えば亜鉛及び鋼基材からの有機汚れの除去に使用されるアルカリ洗浄剤の注意深い塗布が続く。アルカリ洗浄はまた、アルミニウム基材にも利用することができるが、酸性洗浄も利用することができる。残留する洗浄溶液は、表面から、すすぎ段階の利用を通じて除去される。典型的なすすぎ段階には、典型的には逆カスケードシステムにおける複数のすすぎセクションが含まれ、これにより真水がすすぎ段階の最後に供給され、次いでこの真水が先のすすぎタンクなどに供給される。すすぎ前処理はまた利用できず、これにより、残留する洗浄剤は表面からスキージーロール除去される。洗浄及びすすぎの後、基材は通常、次いで、化学的に前処理される。すすいだ系では、塗布はスプレー法又は浸漬法によって行われ、その後、スキージーロール、すすぎ及び乾燥が続く。すすぎ系がない場合、前処理は、スプレー塗布又はディップ塗布を用いて塗布することができて、その後、スキージーローラー又はローラーコーター(しばしば化学的コーター又はケムコーター(chemcoater)と呼ばれる。)が続く。この場合、その後のすすぎは必要でない。このタイプの系は、汚染排出物がないという環境上の利益を有する。複数の化成皮膜が前処理(リン酸鉄又はリン酸亜鉛、クロメート、クロム及び/又は重金属を含まない系を含むが、これらには限定されない。)のために利用できるが、どのすすぎ系も典型的にはクロメートあるいはクロム及び/又は重金属を含まない化学に基づかない。
【0025】
前処理が塗布及び乾燥(硬化)されると、通常、ストリップは、プライマーがシートの両側に通常塗布されるコーティング室に入る。プライマーが乾燥及び硬化すると、しばしば第2のコーターがトップコートを塗布する。ほぼすべての場合において、コーティングプロセスはローラーコーターの使用によって実現し、ここで、一連のロールが液体コーティング材料をストリップ表面へと移動させる。一部の用途(すなわち屋内、又は腐食性能の需要が低い他の用途)では、ただ1つのコーティング層が必要とされる。
【0026】
ローラーコーターは、コーティング材料のタイプ及びそのコーティング材料がどのように流れるか(その粘度又はレオロジーの点から記述される。)に応じて、異なる数のロールを用いて構成することができる。しかし、すべての場合において、湿ったコーティング材料の薄膜がアプリケータロール上に形成され、このアプリケータロールは次いで、このコーティング材料を、移動しているストリップの表面に付着させる。塗膜厚、アプリケータロール速度及びアプリケータロールとストリップの隙間のサイズを注意深く制御すると、ストリップ上に形成されるコーティング膜(コーティング層)を非常に良好に制御できる。
【0027】
コイルコーティング中に2つ以上のコーティング材料が塗布される場合、この塗布は、2つ以上の塗布ステーション及び、適切な場合には、硬化ステーションが直列に接続される、それに応じて構成されたラインで行われる。あるいは、第1のコーティング材料、例えばPVCプラスチゾルの塗布及び硬化の後、コーティングしたコイルは再び巻き上げられ、次いで、片側又は両側に、第2、第3などのコイルコーティングラインで、第2、第3などのコーティング材料が施される。
【0028】
ローラーコーティングは、コイルコーティングプロセスにおいて、コーティング材料を塗布する群を抜いて最も一般的な手段であるが、他の技術も存在し、その一部は現在採用されており、他は試行されたが、必ずしも商業的には行われていない。これらの技術には以下が含まれる:粉末コーティング−予備成形された物体のコーティングのために広く用いられるが、金属ストリップのコーティングのためにも用いることができる技術。カーテンコーティング−これは、重力を利用して連続的なカーテンを供給しながら、コーティング材料を、カーテン内を移動しているストリップ上に供給する非接触の技術である。ブロックコーティング−これは、ストリップの表面に塗りつけられるポリマーの固体のブロックを用いる。スプレー塗布−コーティングを表面にスプレーするために自動車業界において広く利用されているもの。膜積層−これは、ロールから送られ、ストリップに付着する押し出された積層品の塗布によって様々な異なる仕上げコーティングを生成するために、長年にわたり広く利用されてきた。共積層、すなわち、コーティング及び積層のハイブリッド。
【0029】
乾燥及び硬化は、それぞれ、湿ったコーティング材料をコーティングした基材がオーブンに入るときに起こり、オーブン内で、コーティング層をまず乾燥して揮発性の要素、例えば溶媒を除去し、次いで、高温で60秒間も硬化する。
【0030】
本発明の文脈において、乾燥又は中間乾燥は、従って、コーティング層系の生成において塗布されたコーティング材料中の有機溶媒及び/又は水を、通常、周囲温度に比べて高い温度で気化すること、又は気化させることを意味すると理解される。中間乾燥操作において、塗布されたコーティング材料は、従って、有機溶媒及び/又は水の一部を失う。特定のコーティング材料に関して、一般的であるのは、中間乾燥が硬化と比べて、例えば、より低い温度で、且つ/又はより短い時間で起こるということである。従って、乾燥又は中間乾燥はコーティング層に、使用できる状態、すなわち、上述の硬化したコーティング層の状態を与えない。従って、硬化は明らかに、乾燥又は中間乾燥操作とは区別される。
【0031】
乾燥及び硬化プロファイルはオーブン内の加熱及び冷却の速度であり、膨れを引き起こさずに溶媒を除去できるようにコーティング材料のタイプに注意深く適合させなければならない。コーティング層を通じて確実に硬化するために、周囲の空気だけでなく、金属基材が加熱されることが重要である。ピーク金属温度(PMT)は、金属がオーブン内を通過するときに金属が達する最高温度である。大部分の有機コーティング材料は、200〜250℃の領域で硬化する。このPMTに達するために、オーブンの温度は典型的には、はるかに高温である。ストリップがオーブンを出るとき、ストリップは空気又は水焼入れのいずれかで冷却される。エンボス加工ロールを、プラスチゾルのような厚膜コーティングに対する焼入れの前に適用して、熱可塑性コーティングがまだ比較的軟らかい間に表面エンボス加工を施すことができる。
【0032】
最も一般的な乾燥及び硬化技術は、ガス燃焼オーブンをコンベクション又はフローテーション硬化のいずれかのために使用することである。従来の熱的なコイルコーティングでは、コーティングがおよそ400℃の空気温度にさらされ、これが徐々にコーティングと金属コイルを加熱する。200〜250℃の間のピーク金属温度及び20〜30秒のドウェルタイムが、典型的には、液体コーティング材料を完全に硬化するために必要である。入熱は、オーブン自体の内部に配置されたガス燃焼バーナーから、又は焼却炉又は両方の組み合わせから得られる。オーブンは典型的にはいくつかのゾーンに分けられ、そこでは温度を個別に制御することができる。温度を徐々に上昇させる(例えば、特定の乾燥及び硬化プロファイル)と、硬化した皮が塗布したコーティング材料の表面、すなわちコーティング層の上に形成される前に溶媒を追い出すことができる。気化した溶媒をオーブンから除去し、濃度が確実に爆発下限界(LEL)未満に留まるようにするために、これらのオーブン内では高速空気流が必要である。オーブン内の溶媒の濃度がLELを超える場合、持続的な爆発の可能性が存在する。しかし、この限界値未満では、火花の存在下で爆発が継続するには不十分な燃料が存在する。この大量の溶媒を含んだ高温の空気は、どのような環境影響も限定し、且つプロセスのエネルギー効率を最大にするために、焼却炉内で処理される。
【0033】
代替の硬化法、例えば電気硬化及び放射線硬化技術が存在する。電気硬化には、誘導硬化又は赤外線硬化のような技術が含まれる。誘導硬化は、ストリップ内に電流を誘導し、抵抗によって加熱効果を引き起こす磁場内に金属ストリップを通すことによって金属基材を加熱することにより作用する。IR及びNIR硬化は、コーティング層を加熱するのみで、金属基材や周囲空気は加熱しない。従って、これらは、前述した従来の硬化技術よりもさらにいっそうエネルギー効率が高い。熱伝達は非常に速いため、全硬化時間は、薄いコーティング層厚では5秒未満にすることができて、短いオーブンのみを必要とする。放射線硬化には、UV硬化又は電子ビーム硬化のような技術が含まれる。UV硬化したコーティングは、光開始剤及び反応性モノマーに基づく。コーティング層を高密度UV源にさらすと、光開始剤が分解されてフリーラジカルが生じ、これが反応性モノマー間の連鎖反応を開始し、より長いポリマー鎖が結果として形成される。電子ビーム(EB)硬化では、重合及び架橋反応を開始するエネルギーが高エネルギーの電子ビームによって送られる。この場合、光開始剤は不要であり、高エネルギーの電子ビームはさらに厚いコーティング層を透過することができて、着色によって影響されない。
【0034】
コーティング層が完全に硬化し、焼入れされると、ストリップは次いで、再び連続プロセスを支持するために出口アキュムレータを通過した後、顧客の寸法に合わせて切断され、再び巻き取られる。
【0035】
コーティングした金属基材の加工は、コーティング操作後まで行われないため、得られるコーティングは極めて高い機械的完全性を有する必要がある。コーティングしたコイルは通例、建築分野では、天井及び壁要素、扉、管断熱材、ローラーシャッター又は窓用形材を製造するために、車両分野では、キャラバン又はトラック車体のパネルを製造するために、及び家庭分野では、洗濯機、皿洗い機、冷凍庫又はアイスボックスの形材要素を製造するために使用される。
【0036】
上述のコメントから、本発明の方法は、好ましくはコイルコーティング法であり、すなわち、少なくともポリ塩化ビニルプラスチゾル層並びに熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層がコイルコーティングによって生成されるということになる。
【0037】
それは、本発明の系が、標準的なローラーコーター塗布及び従来のガスオーブン硬化からなる従来のコイルコーティングラインで使用するためのシングルパス製品にすることができるよう設計されたことを意味する。本発明の系が、コーティングラインを通じてワンパスで塗布されるようにするために、すべての層が、代替の塗布及び硬化技術、例えば、電気硬化法、あるいはスプレー又はスクリーン塗布技術などを可能にするように開発された。
【0038】
有用な金属基材には、原則的に、例えば、多種多様な異なる形態及び組成の鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム及びこれらの合金並びに鋼を含むか、又はこれらからなる基材が含まれる。
【0039】
本発明のプロセスは、好ましくは、コイルコーティングによって実施されるため、好ましい金属は、コイルコーティングの機械的応力、化学的ストレス及び熱応力に耐えることができるコイルを生成することが可能なすべての金属である。非常に好ましい金属には、アルミニウム又は鉄に基づく金属が含まれる。鉄の場合、特定の適合性が、冷間圧延鋼、電解亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼又はステンレス鋼によって得られる。
【0040】
上述によれば、金属基材は、好ましくは、ストリップ、例えば鋼ストリップの形態を有する。明らかに、コイルコーティングプロセス内で標準であるので、これらのストリップは、コーティング材料の塗布前に直接巻き出されるコイルとして配置することができる。ストリップ又はコイル状ストリップは、好ましくは200マイクロメートル〜2ミリメートルの厚さを有する。
【0041】
本発明の方法の工程(1)の前に、金属基材は、好ましくは、それ自体既知の上述の方法で前処理され、すなわち、例えば、洗浄され、金属基材上に直接塗布される既知の化成皮膜層が施される。例示的に、化成層はチタン及び/又はジルコニウムベースの化成層であり、好ましくは六価クロムを含まない。それぞれのコーティング重量は、例えば、金属表面1平方メートル当たり2〜10mg コーティングである。
【0042】
また、本発明の方法の工程(1)の前、上記前処理の後に、好ましくは典型的なプライマーコーティング層が生成される。上述によれば、プライマーコーティング層は、好ましくは、金属基材の化成皮膜層上に直接生成される。このようなプライマーコーティング層及び内在するプライマーコーティング材料は当業者には既知である。本発明の文脈において、プライマー層は、コイルコーティングによって生成されることが好ましい。特に、それは、プライマーコーティング材料が、好ましくは、ローラーコーティングによって塗布されることを意味する。同じく、塗布されたプライマーコーティング材料(すなわちプライマーコーティング層)が本発明の方法の工程(1)の前に硬化し、これにより、硬化が、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜250℃の間のピーク金属温度で、10〜300秒間、より好ましくは20〜120秒間で起こることが好ましい。好ましいプライマーコーティング材料は、バインダー成分としてアクリル樹脂を含む熱可塑性アクリルベースのプライマーであり、これにより、プライマーコーティング材料は、好ましくは、六価クロムを含まない。
【0043】
硬化したプライマーコーティング層の層厚は、例えば、3〜30マイクロメートル、好ましくは3〜25マイクロメートルである。本発明の文脈において記載のすべてのコーティング層厚は、乾燥したコーティング層厚と理解されるべきである。従って、コーティング材料が特定のコート厚さで塗布されると記載されている場合、これは、記載のコート厚さが硬化後に得られるようにコーティング材料が塗布されることを意味すると理解されるべきである。
【0044】
本発明の方法の工程(1)において、金属基材上にポリ塩化ビニルプラスチゾル層が生成され、この生成は、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料の金属基材への塗布を含む。
【0045】
上述の通り、工程(1)の前に、金属基材に硬化した化成皮膜層及び硬化したプライマーコーティング層を施すことが好ましい。従って、本発明の好ましい実施形態において、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料は金属基材に直接塗布されないが、工程(1)の前に生成される硬化したプライマーコーティング層には直接塗布される。
【0046】
既知の通り、PVCプラスチゾルはPVCのコロイド分散物であり、可塑剤とのエマルション又はマイクロサスペンション重合により製造できる。PVCプラスチゾルが加熱されるとき、可塑剤は分散したポリマー粒子中に拡散し、ここで、可塑剤は巨大分子間に留まり、それゆえ、PVCプラスチゾルは可塑化を生じる。
【0047】
従って、PVCプラスチゾル材料は必然的に、少なくとも1種のPVCポリマー及び少なくとも1種の可塑剤を含む。
【0048】
PVCポリマーは、好ましくは、単峰形又は多峰形、特に単峰形になり得る粒径分布を有する粒子として構成される。単峰形の粒径分布の場合、粒径は、好ましくは10〜100マイクロメートル、特に10〜60マイクロメートル(D50、ISO 13320:2009に従ってレーザー回折により測定される。)になる。
【0049】
好ましいPVCプラスチゾル材料は、可塑剤との分散物中の少なくとも2種のPVCポリマー(すなわちホモポリマー)のブレンドを含み、これにより、少なくとも1種のPVCポリマーは、1〜40マイクロメートル(D50)の粒径を有し、可塑剤中の分散物としてニュートン流動を示し、ここで、少なくとも1種の他のPVCポリマーは、1〜40マイクロメートル(D50)の粒径を有し、可塑剤中の分散物として擬似塑性を示す。
【0050】
既知の通り、ニュートン流動とは、せん断を受けたPVCプラスチゾルの粘度は一定のままで、せん断速度は大きくなることを意味する。
【0051】
同じく既知の通り、擬似塑性は、せん断を受けたPVCプラスチゾルの粘度が減少することによって、せん断速度の増加に応答することを意味する。
【0052】
本発明で使用されるPVCプラスチゾル材料中のPVCホモポリマーの量は大きく変化してもよく、検討中のケースの要件によって左右される。本発明のPVCプラスチゾルは、その総量に基づいて、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%、特に60〜70重量%の少なくとも1種のPVCホモポリマーを含む。
【0053】
PVCホモポリマーは商品であり、例えば、Ineos社(ノルウェー)により、Pevikon(登録商標)、特にP1412及びPevikon(登録商標)P709というブランド名で、Solvay社(ベルギー)により、Solvin(登録商標)、特に266scというブランド名で販売されている。
【0054】
本発明のPVCプラスチゾル材料は、少なくとも1種の可塑剤を含む。可塑剤、特にPVCプラスチゾルのために一般に使用されるものは当業者には既知である。適した可塑剤の例は、例えば、Werner Sommerによって、「Taschenbuch der Kunststoff-Additive」, R. Gachter and H. Muller (eds.), Carl Hanser Verlag, Munich, Vienna, 1983, 「5 plasticizers」, p.261-307に記述されている。可塑剤は、好ましくは、フェノール酸エステル、アジピン酸エステル、脂肪族エステル、ホスフェート及び酪酸エステルからなる群から選択される。好ましくは、本発明のPVCプラスチゾルは、少なくとも2種の、より好ましくは少なくとも3種の、特に4種の可塑剤を含む。可塑剤は、好ましくは、異なるクラスの化合物からのものである。
【0055】
本発明のPVCプラスチゾル材料中の可塑剤の量は大きく変化してもよく、検討中のケースの要件によって、特に、PVCホモポリマー中のその可塑化効果によって、並びに、本発明の多層コーティング内で必要とされる耐熱性及び耐久性のレベルによって左右される。可塑剤の量は、それぞれの場合においてPVCプラスチゾルの総量に基づいて、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50%重量、特に20〜40重量%である。
【0056】
本発明において使用されるPVCプラスチゾル材料は、少なくとも1つの層状複水酸化物(LDH)を含む。
【0057】
LDHは一般に既知である。文献中、LDHはしばしば、理想的な一般式[M2
2+(1−x)M3
3+x(OH)
2]
x+[A
y−(x/y)・nH
2O]又は同様の実験式で記述される。M2は、式中、二価の金属カチオンを、M3は3価の金属カチオンを、A
y−は平均原子価yのアニオンを表す。本発明の文脈において、平均原子価により、取り込まれた、おそらく異なるアニオンの平均原子価の値を意味する。天然に存在するLDHの場合、当該アニオンは一般に無機アニオン、例えばカーボネート、クロライド、ナイトレート、ヒドロキシド及び/又はブロマイドである。最も一般的なアニオンは、カーボネート、サルフェート、クロライド及びヒドロキシドである。その他の種々の無機並びに有機アニオンが、特に合成LDH中に同様に存在してもよい。xについては、0.05〜0.5の値が既知である一方、結晶水の割合はn=0〜10の値を有し、大きく異なってもよい。LDHのある既知のクラスはヒドロタルサイトであり、これが本発明の文脈において好ましいLDHである。ヒドロタルサイト中、Mg
2+は二価のカチオンとして、Al
3+は3価のカチオンとして、カーボネートは基本的にアニオンとして存在する。合成ヒドロタルサイト中、特に、カーボネートは、少なくとも比例して、水酸化物イオンで、又は他の無機並びに有機アニオンで置換されていてもよい。ヒドロタルサイト又はLDHは、ブルーサイト(Mg(OH)
2)と同様の層様構造を有し、そのなかで、2つの無機金属水酸化物層の間に、比例して存在する3価の金属カチオンのために正の電荷を持ち、それぞれの場合において、インターカレートしたアニオンの負に荷電した層が存在し、この層は一般にさらに結晶水を含む。つまり、交互に存在する正及び負に荷電した層があり、対応するイオン性の相互作用の結果、層構造を形成する。上に示した式において、LDH層構造は、それに応じて付けた括弧により考慮される。天然に存在するLDH、例えばヒドロタルサイト、並びに合成LDH及びその製造のための方法は、例えば直接共沈法として既知である。
【0058】
PVCプラスチゾル材料に含まれるLDHにおいて、二価の金属カチオンM2
2+は、好ましくはZn
2+、Mg
2+、Ca
2+、Cu
2+、Ni
2+、Co
2+、Fe
2+、Mn
2+、Cd
2+、Pb
2+、Sr
2+及びこれらの混合物、より好ましくはZn
2+、Mg
2+、Ca
2+、Fe
2+、Mn
2+及びこれらの混合物、非常に好ましくはZn
2+及び/又はMg
2+、とりわけMg
2+からなる群から選択され、3価の金属カチオンM3
3+は、好ましくはAl
3+、Bi
3+、Fe
3+、Cr
3+、Ga
3+、Ni
3+、Co
3+、Mn
3+及びこれらの混合物、より好ましくはAl
3+からなる群から選択される。既に述べた通り、Mg
2+とAl
3+の組み合わせはヒドロタルサイト中で実現され、この組み合わせが明らかに好ましいことを意味する。同じ理由で、用途が広い無機及び有機アニオンが含まれてもよいが、カーボネート及びヒドロキシドが好ましい。
【0059】
好ましくは、LDHは粉末として使用され、これにより平均粒径はそれ自体重要なパラメータではなく、例えば低マイクロメートルの範囲内にあり、このことは充填材及び顔料には一般的である。例えば、LDHの粒径(D50)は、0.1〜10マイクロメートル、好ましくは0.1〜5マイクロメートル、より好ましくは0.2〜2マイクロメートル(ISO 13320:2009に従ってレーザー回折により測定される。)でもよい。
【0060】
LDHの量は、それぞれの場合においてPVCプラスチゾル材料の総量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜4%重量、特に0.5〜3重量%である。
【0061】
LDHの調製は従来通りである。さらに、これらの化合物は、例えば、Kisuma Chemicals社により、Alcamizer(登録商標)というブランド名で販売されている商品として入手することができる。
【0062】
さらに、本発明のPVCプラスチゾル材料は、好ましくは、少なくとも1種の別の安定剤を含む。安定剤、特にPVCプラスチゾルのために一般に使用されるものは当業者には既知である。適したPVC安定剤の例、例えば、UV安定剤のような光安定剤は、「Taschenbuch der Kunststoff-Additive」, R. Gacheter and H. Muller (eds.), Carl Hanser Verlag, Munich, Vienna, 1983, 「4 PVC stabilisers」, p.199-260に記述されている。安定剤は、好ましくは、特に金属石けん、エポキシ補助安定剤(co-stabilizer)及びヒンダードアミン光安定剤から選択され、これにより、後者のものは好ましくは、特に、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールのようなベンゾトリアゾール(BTZ)と組み合わせられる。
【0063】
混合金属石けん安定剤の例は、カルシウム亜鉛に基づく安定剤である。混合エポキシ補助安定剤の例は、エポキシ化大豆油に基づく安定剤である。ヒンダードアミン光/BTZ安定剤ブレンドの例は、例えば、BASFにより、Tinuvin(登録商標)5060というブランド名で販売されている市販の製品である。
【0064】
本発明の文脈において特に好ましいのは、PVCプラスチゾルが、UV安定剤として、少なくとも1種のベンゾトリアゾールと、少なくとも1種のヒンダードアミン化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体とのブレンドを含むことである。さらにより好ましいのは、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体から選択される少なくとも1種のヒンダードアミンとのブレンドである。
【0065】
別の安定剤、好ましくは2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体から選択される少なくとも1つのヒンダードアミンとの少なくとも1種のブレンドの量は、それぞれの場合においてPVCプラスチゾルの総量に基づいて、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.2〜4%重量%、特に0.5〜3重量%である。
【0066】
さらに、PVCプラスチゾル材料は、プラスチゾル材料の成分として一般に知られる別の成分、例えば、顔料、充填材、有機溶媒又は難燃剤などのような別の添加剤を含んでもよい。
【0067】
本発明のPVCプラスチゾル材料の調製には方法の点から特殊性はなく、上記成分を混合することによって行われる。これは、混合装置、例えば撹拌タンク、インライン溶解機を含む溶解機、ビーズミル、撹拌機ミルスタティックミキサー、歯車分散機(toothed-wheel disperser)又は押出機を使用して行うことができる。しかし、好ましくは混合は真空下で実施される。
【0068】
ポリ塩化ビニルプラスチゾル層の生成は、上記ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料の金属基材への塗布、好ましくは金属基材への直接の塗布ではなく、基材上の硬化したプライマーコーティング層への直接の塗布を含む。
【0069】
本発明の文脈において、PVCプラスチゾル層は、コイルコーティングによって生成されることが好ましい。特に、それは、PVCプラスチゾルコーティング材料が、好ましくは、ローラーコーティングによって塗布されることを意味する。
【0070】
塗布されたPVCプラスチゾル材料(すなわちPVCプラスチゾル層)は、本発明の方法の工程(2)の前に硬化してもよく、これにより、硬化したPVCプラスチゾル層が生じる。PVCプラスチゾル層が工程(2)の前に硬化する場合、硬化は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜250℃の間のピーク金属温度で、10〜300秒間、より好ましくは20〜120秒間で起こる。本発明の文脈において、PVCプラスチゾル層が別々に、すなわち本発明の方法の工程(2)の前に硬化することが好ましい。
硬化したPVCプラスチゾル層の層厚は、例えば、50〜400マイクロメートル、好ましくは150〜250マイクロメートルである。
【0071】
本発明の方法の工程(2)において、熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層がPVCプラスチゾル層上に直接生成され、この生成は、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料のPVCプラスチゾル層への直接の塗布を含む。
【0072】
明らかに、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料はPVCプラスチゾル材料とは異なる。従って、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は当業者なら知っているものであり、しばしばコーティング材料としてトップコートの生成のために使用される。
【0073】
反応性官能基、例えばヒドロキシル基を含む少なくとも1種のバインダー成分、及び少なくとも1種のバインダー成分の官能基と反応する官能基を含む少なくとも1種の架橋剤成分を含むコーティング材料を、熱硬化性コーティング材料として使用することができる。例えば、適切な熱硬化性コーティング材料は、架橋剤としてのポリイソシアネート又はメラミン樹脂と組み合わせた、少なくとも1種のヒドロキシ官能性樹脂、例えばヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂又はヒドロキシ官能性アクリル樹脂を含む。既に上述の通り、名付けた成分は、例えば、そのような塗布されたコーティング材料が加熱されるとき、すなわち化学的架橋反応が起こるとき、互いに反応する。冷却されると、高耐久性の仕上げが形成される。適切な場合には、触媒が、架橋過程を引き起こし、且つ/又は促進するために存在してもよい。
【0074】
特に、バインダー成分としての少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤成分としての少なくとも1種のポリイソシアネートを含む熱硬化性コーティング材料は本発明の文脈において好ましく、その理由は、これらがPVCプラスチゾル層の上に優れた付着特性をもたらすからである。さらに、これらは、単純な加熱のような、より一般的な硬化技術に加えて、NIR又は誘導硬化によって硬化可能である。
【0075】
ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂は、好ましくは、飽和ポリエステル樹脂からなる群から選択される。このような樹脂は商品であり、例えば、Cray Valleyにより、Synolac(登録商標)、特に9635というブランド名で販売されている。
【0076】
適したポリイソシアネートは、例えば、ジイソシアネートのような脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート、並びにそれらの二量体及び三量体、例えばウレトジオン及びイソシアヌレートである。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート並びにこれらのジイソシアネートのウレトジオン及びイソシアヌレートを参照することができる。もちろん、同様に巨大分子のポリイソシアネート、すなわち、例えば、さらに高分子量の付加生成物へと、互いに、且つ/又は別の成分と反応した、上述の名付けたジイソシアネートに基づくポリイソシアネートが使用されてもよい。架橋剤成分としてのポリイソシアネートは、好ましくは、ブロック化ポリイソシアネートの群から選択され、すなわち、イソシアネート基は遊離していないが、一般に既知のブロッキング剤と可逆に反応する。同じく既知の通り、そのようなイソシアネート基は、特定の条件下、特に加熱されるときデブロッキングしており、これは、ブロッキング剤が放出され、遊離イソシアネート基が、例えばヒドロキシル基との架橋反応に利用可能であることを意味する。架橋剤ポリイソシアネートは商品であり、例えば、Bayerにより、Desmodur(登録商標)、特にBL3175というブランド名で販売されている。
【0077】
バインダー成分としてのヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤成分としてのポリイソシアネートの量は大きく変化してもよく、検討中のケースの要件によって、特に、このようなコーティング材料中の顔料のレベルによって左右される。ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂対架橋剤成分としてのポリイソシアネートの重量比は、好ましくは、それぞれのコーティング組成物が、硬度を最大にするよう強く架橋したポリマーマトリックスを示すように選ばれる。重量比は、好ましくは5:1〜2:1、より好ましくは4:1である。
【0078】
上記したヒドロキシ官能性ポリエステルベースのコーティング材料は、好ましくは、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応のための少なくとも1種の触媒を含む。適した触媒は既知の金属触媒、例えば、スズ、モリブデン、ジルコニウム又は亜鉛の触媒などである。好ましい触媒は、スズ化合物、例えばジメチルスズジラウレート又はジブチルスズジラウレート、特にジブチルスズジラウレート(DBTL)である。DBTL触媒は、例えば商品であり、例えば、Akrosにより、Tinstab(登録商標)BL277というブランド名で販売されている。
【0079】
さらに、バインダー成分としてのヒドロキシ官能性アクリル樹脂及び架橋剤成分としてのポリイソシアネートを含む熱硬化性コーティング材料は本発明の文脈において好ましく、その理由は、これらがPVCプラスチゾル層の上に高耐久性の層をもたらすからである。さらに、これらは、単純な加熱のような、より一般的な硬化技術に加えて、NIR又は誘導硬化によって硬化可能である。
【0080】
ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂を含む上記熱硬化性コーティング材料と同様、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂を含む材料は、好ましくはさらに、架橋剤成分として、ブロック化ポリイソシアネートの群から選択されるポリイソシアネートを含む。
【0081】
バインダー成分としてのヒドロキシ官能性アクリル樹脂及び架橋剤成分としてのポリイソシアネートの量は大きく変化してもよく、検討中のケースの要件によって、特に、このようなコーティング材料中の顔料のレベルによって左右される。ヒドロキシ官能性アクリル樹脂対架橋剤成分としてのポリイソシアネートの重量比は、好ましくは、それぞれのコーティング組成物が、硬度を最大にするよう強く架橋したポリマーマトリックスを示すように選ばれる。重量比は、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは1:1である。
【0082】
上記したヒドロキシ官能性アクリル樹脂コーティング材料は、好ましくは、イソシアネート基とヒドロキシル基との反応のための少なくとも1種の触媒を含む。適した触媒は既知の金属触媒、例えば、スズ、モリブデン、ジルコニウム又は亜鉛の触媒などである。好ましい触媒は、スズ化合物、例えばジメチルスズジラウレート又はジブチルスズジラウレート、特にジブチルスズジラウレート(DBTL)である。DBTL触媒は、例えば商品であり、例えば、Akrosにより、Tinstab(登録商標)BL277というブランド名で販売されている。
【0083】
熱硬化性コーティング材料が好ましいが、熱可塑性コーティング材料の使用も可能である。特に、好ましい熱可塑性コーティング材料の一群は、ポリフッ化ビニリデンベースのコーティング材料、すなわち、バインダー成分として、ポリフッ化ビニリデン樹脂を含むコーティング材料の群である。ポリフッ化ビニリデンポリマー鎖に沿った交互のCH2基及びCF2基は、その溶解性及び電気的性質に影響を与える特有の極性をもたらす。ポリフッ化ビニリデンベースコーティング材料は、そこから生成されるコーティング層に非常に高い耐UVレベルをもたらす。
【0084】
既に説明の通り、そのような熱硬化性コーティング材料は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂、すなわちポリフッ化ビニリデン樹脂を含む。これらの樹脂は、典型的には、特に有機溶媒ベースのコーティング材料用に設計されたポリフッ化ビニリデンの結晶性、高分子量の粉末状である。従って、好ましいポリフッ化ビニリデンベースのコーティング材料はまた、少なくとも1種の有機溶媒も含む。ポリフッ化ビニリデン樹脂は商品として入手できて、例えば、Arkemaにより、Kynar(登録商標)、特に500というブランド名で販売されている。
【0085】
熱可塑性ポリフッ化ビニリデンベースのコーティング材料中のポリフッ化ビニリデン樹脂の量は大きく変化してもよく、検討中のケースの要件によって左右される。ポリフッ化ビニリデンベースのコーティング材料は、その総量に基づいて、好ましくは40〜80重量%の少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂を含む。
【0086】
熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、少なくとも1種のLDHを含む。PVCプラスチゾル材料に含まれるLDHに関する上述の実施形態のすべてはまた、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料に含まれるLDHに関しても有効である。これはまた、すべての好ましい特徴、さらに好ましい特徴及び最も好ましい特徴にも特にあてはまる。好ましくは、PVCプラスチゾル材料並びに熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、同じLDHを含む。
【0087】
LDHの量は、それぞれの場合において熱硬化性及び/又は熱硬化性コーティング材料の総量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜4%重量%、特に0.5〜3重量%である。
【0088】
さらに、本発明の熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、好ましくは、少なくとも1種の別の安定剤を含む。やはり、PVCプラスチゾル材料に含まれる安定剤に関する上述の実施形態のすべてはまた、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料に含まれる安定剤に関しても有効である。これはまた、すべての好ましい特徴、さらに好ましい特徴及び最も好ましい特徴についても特にあてはまる。好ましくは、PVCプラスチゾル材料並びに熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、同じ安定剤を含む。
【0089】
従って、本発明の文脈において特に好ましいのは、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料が、UV安定剤として、少なくとも1種のベンゾトリアゾールと、少なくとも1つのヒンダードアミン化合物、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体とのブレンドを含むことである。さらにより好ましいのは、2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体から選択される少なくとも1種のヒンダードアミンとのブレンドである。
【0090】
別の安定剤、好ましくは2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体から選択される少なくとも1種のヒンダードアミンとの少なくとも1種のブレンドの量は、それぞれの場合において熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料の総量に基づいて、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜4%重量、特に0.2〜3重量%、さらにより好ましくは0.5〜3重量%である。
【0091】
さらに、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、熱硬化性及び/又は熱硬化性コーティング材料の成分として一般に知られる別の成分、例えば、顔料、充填材、有機溶媒又は難燃剤などのような別の添加剤を含んでもよい。
【0092】
本発明に従って使用される熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、このようなコーティング材料の製造において通例となっており、且つ既知である混合装置及び混合技術を利用して製造されてもよい。
【0093】
熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層の生成は、上記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料のPVCプラスチゾル層への直接の塗布を含む。
【0094】
本発明の文脈において、熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層は、コイルコーティングによって生成されることが好ましい。特に、それは、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料が、好ましくは、ローラーコーティングによって塗布されることを意味する。
【0095】
塗布された熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料(すなわち熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層)は典型的には硬化し、これにより、硬化した熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層が生じる。硬化は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜250℃の間のピーク金属温度で、10〜300秒間、より好ましくは20〜120秒間で起こる。PVCプラスチゾル層が、熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料の塗布の前に硬化しなかった場合、言うまでもなくPVCプラスチゾル層は、塗布された熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料と共に硬化する。しかし、既に前述の通り、本発明の文脈において、PVCプラスチゾル層が別々に硬化することが好ましい。
【0096】
硬化した熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層の層厚は、例えば、2〜50マイクロメートル、好ましくは5〜25マイクロメートルである。
【0097】
以下では、本発明の方法の塗布技術及び硬化技術に関していくつかの別の情報を示す。
【0098】
既に記載の通り、PVCプラスチゾル材料並びに熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料は、コイルコーティング材料としての使用に非常に適している。コイルコーティングについては、金属コイルは、例えば、独国特許出願公開第19632426A1号に記載のコイルコーティングラインを、使用されるコーティング材料の塗布及び硬化特性に適合させた速度で通過する。速度は、6〜180m/minに大きく変化してもよく、特に好ましくは20〜120m/min、特に20〜90m/minである。
【0099】
従って、たとえ、PVCプラスチゾル材料並びに熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料が任意の方法で、例えば、吹付、フローコーティング又はロールコーティングによって塗布することができても、これらの塗布技術のうち、ロールコーティングが特に有利であり、従って、本発明に従って好ましく利用される。
【0100】
ロールコーティングにおける各塗布工程は、2つ以上のロールを用いて実施することができる。2つから4つのロール、特に3つのロールをドクターブレードと共に使用するのが好ましい。
【0101】
ロールコーティングの場合、回転するピックアップロールが、例えばPVCプラスチゾル材料の貯槽に浸かっており、それにより塗布される材料をすくい上げる。この材料は、典型的には、計量ロールで作られた隙間を通過させて表面を平らにし、過剰な材料を除去して所望のコーティング層厚を得る。この材料は、次いで、ピックアップロールから、回転する塗布ロールへと直接又は少なくとも1つのトランスファーロールを介して移動する。材料はこの塗布ロールから取り外され、それにより、同じか、反対の方向に進みながら、コイルへと移動する。
【0102】
代替として、例えば、PVCプラスチゾル材料は、ロール間の隙間に直接ポンプで送ることができて、従って、当業者にニップ供給と呼ばれる。
【0103】
本発明によれば、リバースストリッピングによる移動、又はリバースローラーコーティング技術には利点があり、従って好ましく利用される。
【0104】
ロールコーティングの場合、ピックアップロール、計量ロール及び塗布ロールの円周速度は、あるコーティング操作と別のコーティング操作で大きく変化してもよい。塗布ロールは、好ましくは、コイル速度の120〜140%である円周速度を有し、ピックアップロールは、コイル速度の110〜125%である円周速度を有する。
【0105】
熱硬化の場合のコーティング層、例えばPVCプラスチゾル層の加熱は、好ましくは、対流熱伝達、近赤外もしくは遠赤外による照射によって、及び/又は、鉄ベースのコイルの場合、電気誘導によって行われる。最高基材温度又はPMTは、好ましくは、最高でも220℃、特に216℃である。比較的低温を使用することができて、しかも、エンボスされた模様を保持し、且つ顕著な性能特性を有するコーティング層が生じることは、PVCプラスチゾル材料及び本発明の方法の特定の利点である。
【0106】
実質的に対流熱伝達が使用される場合、20〜50mの長さの強制通風式オーブンが、好ましいコイル速度で必要とされる。強制通風温度は、好ましくは300℃未満である。
【0107】
上記塗布法及び硬化法はまた、PVCプラスチゾル材料の塗布工程に続く熱硬化性及び/又は熱硬化性コーティング材料の塗布及び硬化にも利用することができる。同じ方法が、別のコーティング材料、例えばプライマーコーティング材料の塗布及び硬化をもたらす。
【0108】
コイルコーティング中に2つ以上のコーティング材料が塗布される場合、この塗布は、例えば、2つ以上の塗布ステーション及び、適切な場合には、硬化ステーションが一連に接続される、対応する構成ラインで行われる。あるいは、第1のコーティング材料、例えばPVCプラスチゾル材料の塗布及び硬化の後、コーティングしたコイルは再び巻き上げられ、次いで、片側又は両側に、少なくとも1つの別のコイルコーティングラインで、少なくとも1つの別のコーティング層が施される。
【0109】
コーティングしたコイルを製造した後、これらを巻き上げ、次いで、さらに別の場所で加工することができる;あるいは、これらを、コイルコーティング操作によって得られるときにさらに直接加工することができる。サイズの縮小に続いて、これらを適切なサイズの部品に機械成形することができる。適した機械成形法の例には、プレス及び深絞りが含まれる。
【0110】
本発明で得られるコイル、形材要素及び成形部品は、引っかき抵抗があり、腐食に対して安定であり、風化作用に対して安定であり、化学物質に対して安定である。
本発明の方法によって製造されたコーティングしたコイルは、従って、建築分野、屋内外の使用の両方、例えば、屋根及び壁要素、扉、門、管断熱材、ローラーシャッター又は窓用形材を製造するのに著しく適している。
【実施例】
【0111】
本発明を以下で実施例により説明する。
1.コーティング組成物の生成
PVCプラスチゾル材料
【0112】
実施例1〜3(本発明)及びC1〜C3(比較例)
PVCプラスチゾル材料1〜3及びC1〜C3を、表1及び表2に示す、表に指定の量の原料を混合し、生じる混合物を均質化することによって調製した。
【表1】
【表2】
【0113】
バインダー成分としてのヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤としてのブロック化ポリイソシアネートに基づく熱硬化性コーティング材料
実施例4〜6(本発明)及びC4〜C6(比較例)
熱硬化性コーティング材料4〜6及びC4〜C6を、表3及び表4に示す、表に指定の量の原料を混合し、生じる混合物を均質化することによって調製した。
【表3】
【表4】
【0114】
バインダー成分としてのヒドロキシ官能性アクリル樹脂及び架橋剤としてのブロック化ポリイソシアネートに基づく熱硬化性コーティング材料
実施例7〜9(本発明)及びC7〜C9(比較例)
熱硬化性コーティング材料7〜9及びC7〜C9を、表5及び表6に示す、表に指定の量の原料を混合し、生じる混合物を均質化することによって調製した。
【表5】
【表6】
【0115】
ヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤としてのメラミン樹脂に基づく熱硬化性コーティング材料
熱硬化性コーティング材料C10を、表7に示す、表に指定の量の原料を混合し、生じる混合物を均質化することによって調製した。
【表7】
【0116】
2.金属基材上のコーティングの生成
それぞれの場合において、0.5mm 亜鉛めっき鋼板(95% 亜鉛、5% アルミニウムの合金ブレンド)を洗浄し、スキージーロール塗布を用いて、六価クロム顔料を含まないチタン/ジルコニウムベースの前処理材に基づく前処理化成皮膜で、基材表面1平方メートル当たり2〜10mg コーティングの公称コーティング重量にコーティングした。化成皮膜を90℃(オーブン温度)の温度で従来の電気ボックスオーブン内で2秒間乾燥させた。次に、熱可塑性アクリル樹脂に基づくプライマーコーティング材料を、バーコーター塗布を利用して、5マイクロメートルの公称厚さまで塗布し、従来の電気ボックスオーブン内で215℃のピーク金属温度まで硬化させた。215℃に達するために、オーブンは280℃の一定の空気温度を有し、コーティングした鋼板(パネル)のドウェルタイムは45秒であった。パネルを周囲温度まで空冷し、次いで、PVCプラスチゾルで200マイクロメートルの公称厚さまで、3つのロール・リバース・ローラー塗布により、20m/minの速度でコーティングした。パネルを次いで、上述の通り、210℃のピーク金属温度まで43秒のドウェルタイムで硬化した。パネルを周囲温度まで空冷し、さらに、トップコーティング材料で20マイクロメートルの公称厚さまで、2つのロール・ハーフ・リバース・ローラー塗布を利用して、20m/minの速度でコーティングした。パネルを次いで、上述の通り、220℃のピーク金属温度まで50秒のドウェルタイムで硬化した。
【0117】
3.金属基材上のコーティングの特性の調査
第2項で説明の通り調製した金属基材上のコーティングの一部について、別の特性を調査した。本発明の多層コーティングの利益を示すために、その性能を、金属基材上の現在最先端の高耐久性PVCプラスチゾル層、並びに現在入手できる金属基材上のバインダー成分としてのヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤としてのブロック化ポリイソシアネートに基づく熱硬化性トップコート層と比較した。具体的には、以下のコーティング材料を使用した:現在最先端の高耐久性PVCプラスチゾル層は、PVCプラスチゾル材料C1に基づく。現在最先端の熱硬化性トップコート層は、熱硬化性コーティング材料C4に基づく。本発明の多層コーティングについては、PVCプラスチゾル材料1及び熱硬化性コーティング材料4を使用した。本発明の多層コーティングは、各製品の固有の弱点をなくすことが目的であるため、それぞれ特定した効果について、本発明の多層コーティングを現在の性能が悪いコーティングタイプ(PVCプラスチゾル層又はポリエステル/ポリイソシアネートに基づく熱硬化性トップコート層のいずれか)と比較した。さらに、すべての本発明の系並びに最先端のPVC及びポリエステル/ポリイソシアネート系を、最先端のポリエステル系、すなわち、コーティング材料C10に基づく金属基材上のコーティングと比較した。それは、すべての記載のデータがコーティング材料C10に基づくコーティングと比較されることを意味する。その理由は、そのようなポリエステル系が業界標準のコイルコーティングを表すからである。これを念頭に、性能の以下の実施例をまとめて、特定の試験パラメータにおいて弱点を有するコーティング層タイプに対して、本発明の多層コーティングの改善された特性を示す。表8に得られたデータをまとめた。
【表8】
記号
−=C10に基づくコーティングと比べて不十分な性能。
0=C10に基づくコーティングと同等の性能。
+=C10に基づくコーティングよりも優れた性能。
++=C10に基づくコーティングよりもはるかに優れた性能。
【0118】
結果は、本発明の多層コーティングが、優れた耐食性と高い耐UV及び耐熱特性とを併せ持つことを示す。加えて、本発明の多層コーティングはまた、別の技術的利点、例えばコーティングに装飾模様又は会社のロゴをエンボスする能力、あるいは特徴、例えば水適飲性、向上した耐火性及び特殊な光学効果を可能にする能力も提供する。さらに、本多層コーティングは、最先端の標準的な系よりも性能が優れている。
【0119】
本発明の多層コーティングは、従って、例えば、建築分野、例えば建築要素において耐候性要素の製造に非常に適している。
なお、本発明には、以下の実施態様が包含される。
[1]金属基材上に多層コーティングを生成するための方法であって、所与の順番で、
(1)ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料の前記金属基材への塗布を含む、ポリ塩化ビニルプラスチゾル層を前記金属基材上に生成する工程と、
(2)熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料の前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層への直接の塗布を含む、熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層を前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層上に直接生成する工程と
を含み、
前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料のいずれも層状複水酸化物を含むことを特徴とする、方法。
[2]工程(1)が、前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層の硬化をさらに含み、且つ工程(2)が、前記熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層の硬化をさらに含むことを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3]前記硬化したPVCプラスチゾル層の層厚が50〜400マイクロメートルであり、且つ前記硬化した熱硬化性及び/又は熱硬化性トップコート層の層厚が2〜50マイクロメートルであることを特徴とする、[2]に記載の方法。
[4]前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性トップコート層が、コイルコーティングによって生成されることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]工程(1)の前に、硬化した化成皮膜層が、前記金属基材上に直接生成され、且つ硬化したプライマーコーティング層が、前記硬化した化成皮膜層上に直接生成され、これにより、前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層が、次いで、前記硬化したプライマーコーティング層上に直接生成されることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記少なくとも1種の層状複水酸化物がヒドロタルサイトであることを特徴とする、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング層のいずれも同じ層状複水酸化物を含むことを特徴とする、[1]から[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料のいずれも、UV安定剤として、少なくとも1種の2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン又はその誘導体から選択される少なくとも1種のヒンダードアミンとのブレンドを含むことを特徴とする、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]層状複水酸化物の量が、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料それぞれの総量に基づいて0.1〜5重量%であり、且つ前記UV安定剤ブレンドの量が、ポリ塩化ビニルプラスチゾル材料並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料それぞれの総量に基づいて0.1〜5重量%であることを特徴とする、[8]に記載の方法。
[10]前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング材料が、バインダー成分としての少なくとも1種のヒドロキシ官能性アクリル樹脂及び架橋剤成分としての少なくとも1種のポリイソシアネート、バインダー成分としての少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂及び架橋剤成分としての少なくとも1種のポリイソシアネート又はバインダー成分としての少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン樹脂を含むことを特徴とする、[1]から[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記ポリ塩化ビニルプラスチゾル層並びに前記熱硬化性及び/又は熱可塑性コーティング層のいずれも、10〜300秒の間の180〜300℃の間のピーク金属温度で硬化することを特徴とする、[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]前記金属基材が、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム及びこれらの合金並びに鋼を含むか、又はこれらからなる基材から選択されることを特徴とする、[1]から[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13][1]から[12]いずれか一項に記載の方法によって生成された多層コーティング。
[14][13]に記載の多層コーティングでコーティングされた金属基材。