(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6472920
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】食肉加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/60 20160101AFI20190207BHJP
A23B 4/005 20060101ALI20190207BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
A23L13/60 Z
A23B4/005
A23B4/06 501A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-149459(P2018-149459)
(22)【出願日】2018年8月8日
【審査請求日】2018年8月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317014448
【氏名又は名称】有限会社肉のまるかつ
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】篠原 勝広
【審査官】
高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0096082(KR,A)
【文献】
特許第143217(JP,C2)
【文献】
国際公開第2018/092385(WO,A1)
【文献】
特開昭62−257341(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3207323(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/FSTA/SCISEARCH/TOXCENTER/WPIDS(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉のすり身100質量部に卵白13〜30質量部、塩0.3〜1.0質量部および油2〜10質量部を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得ること、
前記ペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとすること、
前記真空パックごと前記ペースト状混合物の芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得ること、
加熱終了後、急速冷却し、前記成型加熱加工物の芯温を4℃以下とすること
を含む食肉加工食品の製造方法。
【請求項2】
加熱終了後、前記真空包装袋から前記成型加熱加工物を一旦取り出し、水洗い後、再び真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした後、前記急速冷却を行うことを特徴とする請求項1記載の食肉加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏肉、牛肉や豚肉等の畜肉を加工した食肉加工食品の製造方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
忙しい現代人は、安定した食事での栄養バランスを保つことが難しく、高カロリー食を口にする機会が多い。また、ストレスや運動不足などが生活習慣病や肥満の原因となっている。日本では生活習慣に起因する主な疾病として、がん、脳血管疾患や心臓病などが指摘され、それらは日本人の3大死因ともなっている。肥満はこれらの疾患になるリスクを上げる。また、肥満自体が生活習慣病のひとつともされることがある。糖尿病(1型糖尿病を除く)・脂質異常症(家族性脂質異常症を除く)・高血圧・高尿酸血症などが挙げられることもある。
【0003】
そこで、本出願人は、これらの病気から人々を守るため、鶏ムネ肉を使用した食肉加工食品を開発してきた。鶏ムネ肉は、高タンパク低脂肪であるため、ダイエットに適しており、上記の生活習慣病の予防に効果があるとされている。鶏ムネ肉は、100g換算で108kcalのエネルギーであり、たんぱく質が22.3gと多く、脂質が1.5g、炭水化物が0gとなっており、ビタミン・ミネラルではナイアシンとパントテン酸の成分も豊富である。
【0004】
従来、鶏ムネ肉を使用した食肉加工食品として、例えば特許文献1に記載ものが知られている。この食肉加工食品は、鶏ムネ肉のすり身10〜30重量部、卵白25〜45重量部、澱粉5〜10重量部および水4〜7重量部を含有する鶏肉すり身材の混合物と、10〜30重量部の鶏ムネ肉の挽肉とを混練し、成型・加熱した白色鶏肉だんごであり、はんぺん様の白色でソフトな食感を有するとされている。
【0005】
また、特許文献2には、畜肉のすり身と粒状の植物性タンパク質とピックル液とを減圧下で混合することで、すり身と植物性タンパク質の混合物を製造し、混合物をミンチ肉に混合して生地を製造し、生地を成型し、成型した生地を加熱調理することを特徴とする食肉加工食品の製造方法が記載されている。この食肉加工食品はミンチの一部をすり身に置き換えているにも関わらず、風味がよく、ミンチ肉の粗挽き感を十分に感じることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−236255号公報
【特許文献2】特開2017−147952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能な食肉加工食品の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の食肉加工食品の製造方法は、畜肉のすり身に卵白、塩および油を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得ること、ペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとすること、真空パックごとペースト状混合物の芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得ること、加熱終了後、急速冷却し、成型加熱加工物の芯温を4℃以下とすることを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の食肉加工食品の製造方法によれば、型に入れられた畜肉のすり身、卵白、塩および油のペースト状混合物が固形化した木綿豆腐のようなしっとりと柔らかな食感でコクのある味の食肉加工食品が得られる。また、この食肉加工食品は芯温が80〜85℃となるまで加熱することで一般細菌を死滅させた後、急速冷却して芯温を4℃以下としているため、そのまま冷却保存することが可能であり、鍋物、揚げ物、サラダ、みそ汁の具、冷奴など様々な調理に活用でき、日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能である。また、冷凍保存することも可能である。
【0010】
また、本発明の食肉加工食品の製造方法は、加熱終了後、真空包装袋から成型加熱加工物を一旦取り出し、水洗い後、再び真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした後、急速冷却を行うことが望ましい。これにより、加熱によって成型加熱加工物の表面に付着したドリップやアクを除去した状態で冷却保存することができる。
【発明の効果】
【0011】
(1)畜肉のすり身に卵白、塩および油を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得ること、ペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとすること、真空パックごとペースト状混合物の芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得ること、加熱終了後、急速冷却し、成型加熱加工物の芯温を4℃以下とすることにより、鍋物、揚げ物、サラダ、みそ汁の具、冷奴など様々な調理に活用でき、日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能な木綿豆腐のようなしっとりと柔らかな食感でコクのある味の食肉加工食品が得られる。また、食感が柔らかいため、高齢者の方々や小さな子どもの食事に適しており、一般家庭をはじめ、飲食店、病院や学校給食などの食事等に幅広く使用できる。
【0012】
(2)加熱終了後、真空包装袋から成型加熱加工物を一旦取り出し、水洗い後、再び真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした後、急速冷却を行うことにより、加熱によって成型加熱加工物の表面に付着したドリップやアクを除去した状態で冷却保存することが可能となり、肉の臭みが残らず、食味がより良くなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態における食肉加工食品は、畜肉に卵白、塩および油を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得て、この得られたペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気して真空パックとし、この真空パックごとペースト状混合物の芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得て、加熱終了後、急速冷却し、成型加熱加工物の芯温を4℃以下とすることにより製造する。
【0014】
畜肉としては、鶏肉、牛肉や豚肉等を使用することができる。畜肉はミンチ機装置に複数回かけることによりすり身とする。すり身とは肉塊をすり潰してペースト状にしたものをいう。この畜肉のすり身100質量部に対して、卵白を13〜30質量部より好ましくは16〜25質量部、塩を0.3〜1.0質量部より好ましくは0.5〜0.8質量部、油を2〜10質量部より好ましくは5〜8質量部加え、例えば氷で冷やしながら粘りが出るまでこねて混ぜ合わせ、ペースト状混合物とする。油としては、ヒマワリ油、オリーブ油、紅花油や菜種油等を使用することができる。
【0015】
このペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとする。真空包装袋は、耐熱性を有し、脱気して密閉可能なものを使用する。この真空パックしたペースト状混合物を例えばスチームコンベクションオーブン装置により芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得る。芯温が80〜85℃に達すると、一般細菌は死滅する。加熱は湯煎により行っても良い。なお、芯温が85℃を超えると成型加熱加工物の水分が抜けて食味が落ちることになる。
【0016】
加熱終了後、スチームコンベクションオーブン装置から真空パックを取り出す。ここで、真空包装袋から成型加熱加工物を一旦取り出し、水洗いをして、成型加熱加工物の表面に付着したドリップやアクを除去することが望ましい。その後、再び真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした後、急速冷却を行う。急速冷却は凍結しないように、例えば氷水で4℃以下まで冷却する。4℃以下では一般細菌の増殖が減るので、これを冷蔵庫で冷却保存する。これにより、畜肉のすり身100質量部、卵白13〜30質量部、塩0.3〜1.0質量部および油2〜10質量部を含む成型加熱加工物からなる食肉加工食品が得られる。
【0017】
こうして得られた食肉加工食品は、鍋物、揚げ物、サラダ、みそ汁の具、冷奴など様々な調理に活用でき、日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能な木綿豆腐のようなしっとりと柔らかな食感でコクのある味となる。また、食感が柔らかいため、高齢者の方々や小さな子どもの食事に適しており、一般家庭をはじめ、飲食店、病院や学校給食などの食事等に幅広く使用できる。
【実施例】
【0018】
鶏ムネ肉(国産若鶏ムネ肉(皮なし))1kg、卵白160g、塩(天然塩)8g、油(ヒマワリ油(ハイオレイック))50gを加工原料として試食品を製造し、官能試験を行った。具体的な加工手順は以下の通りである。
【0019】
(1)国産若鶏ムネ肉の皮を剥ぎ取り、ミンチ機装置(ワタナベ WMG−22)に3回かけてすり身とした。
(2)卵白、天然塩、ヒマワリ油を加え、氷で冷やしながら粘りが出るまでこねて混ぜ合わせた。
(3)型に入れ、真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした。真空包装袋は、福助工業株式会社(規格:ナイロンポリ NO22、NO16)およびMICS株式会社(規格:トリプルナイロン規格袋NY−5)を使用し、真空包装装置(ニチワ電気株式会社 ホットテンプLYNX42)により脱気、真空パックした。
(4)スチームコンベクションオーブン装置(ニチワ電気株式会社 SCOS−1010RY)で設定温度100℃、芯温80℃の設定で加熱を行った。芯温計はスチームコンベクションオーブン装置に付属のものを使用した。
(5)芯温が80℃に到達するとスチームコンベクションオーブン装置から取り出して、真空包装袋から中身を取り出し、水洗いをして表面に付着したドリップやアクを取り除いた。
(6)再び真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとした。
(7)氷水で4℃以下まで冷却した。
(8)冷蔵庫で冷却保存した。
【0020】
40名のモニターによる試食後の感想を表1に示した。
【表1】
【0021】
また、感想として「柔らかくて食べやすい」「腹もちがよい」「お酒によく合う」「みそ汁でもおかず感覚で食べられる」など、高評価であった。また、糖尿病の方から「このような健康的な食べ物が手軽にとれてうれしい」という感想もあった。その他、外で仕事をされる男性の方が「力仕事をする人にはもってこいだね」との意見もあった。
【0022】
なお、本実施例品は、鶏むね肉を主としており、高たんぱく低脂肪なのでダイエットに適している。鶏むね肉は、100g換算で108kcalのカロリーで、たんぱく質が22.3gと多く、脂質が1.5g、炭水化物が0gとなっており、ビタミン・ミネラルではナイアシンとパントテン酸の成分も豊富である。また、天然塩を加えることによりさらに体に良いミネラル分も増え、熱中症対策や疲労回復に効果がある。
【0023】
また、卵白を加えることによりパサつき感をおさえ、しっとりと柔らかな食感でコクのある味となる。また、卵白も鶏むね肉と同じような栄養バランスでありダイエット効果もあり体の粘膜も強くなり免疫力も向上する。さらに、ヒマワリ油(ハイオレイック)を加えることにより、ビタミンE・オレイン酸・その他ビタミン・ミネラルをバランスよく手軽に摂取することができ、新陳代謝を上げ、肌荒れを防ぎ、さらに活性酸素を除去する働きがあるので、がん予防にも大いに期待ができる。
【0024】
表2は、本実施例品と豆腐の栄養成分を100g当たりで比較したものである。
【表2】
【0025】
本発明品の栄養成分は、生活習慣病の予防に絶大な効果がある材料を合わせて加工したものであり、さらに日本人が頻繁に食する豆腐感覚の発明品であるため、手軽に食することができる。そして、この食肉加工食品は、表2に示すように豆腐よりさらに高タンパク質で脂質の少ない栄養バランスのとれたものである。筋力をつけるには、高タンパク質の食材が良く、スポーツ選手や筋力を使う仕事の方々の体づくりにも大いに役に立つ。豆腐は、朝のメニューから夜のメニューまで数多く使用されており、豆腐と同じような食べ方で本発明品を食することができれば、人々の健康に大きく貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、鶏肉、牛肉や豚肉等の畜肉を加工した食肉加工食品の製造方
法として有用であり、特に、日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能な食肉加工食品の製造方
法として好適である。
【要約】
【課題】日本人が頻繁に食する豆腐感覚で手軽に食することが可能な食肉加工食品の製造方法および食肉加工食品の提供。
【解決手段】畜肉のすり身に卵白、塩および油を加え、冷やしながら混合してペースト状混合物を得て、ペースト状混合物を型に入れ、さらに真空包装袋に入れて脱気し、真空パックとし、真空パックごとペースト状混合物の芯温が80〜85℃となるまで加熱して成型加熱加工物を得て、加熱終了後、急速冷却し、成型加熱加工物の芯温を4℃以下とする。
【選択図】なし