特許第6472926号(P6472926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6472926
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】埋立管理方法及び埋立管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20190207BHJP
   E02B 3/18 20060101ALI20190207BHJP
   E02D 15/08 20060101ALI20190207BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G01D21/00 C
   E02B3/18 D
   E02D15/08
   G01C13/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-242751(P2018-242751)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2018年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−348837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00
E02B 3/18
E02D 15/08
G01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋立前の埋立領域における原地盤の物性を測定する工程と、
測定した前記原地盤の物性に応じた圧密沈下特性を特定する工程と、
埋立前の前記埋立領域における原地盤表面の3次元形状を測定する工程と、
前記埋立領域に対する埋立材の投入毎に当該埋立材の物性を測定する工程と、
前記原地盤表面の3次元形状と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の、当該埋立材の物性と、当該埋立材の投入日時と、当該埋立材の投入位置と、当該埋立材の投入量とに基づき、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状を推定する工程と、
前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の、測定した当該埋立材の物性に応じた圧密沈下特性を特定する工程と、
前記原地盤表面の3次元形状と、前記原地盤の圧密沈下特性と、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の圧密沈下特性とに基づき、指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の沈下量を推定する工程と
を備える埋立管理方法。
【請求項2】
指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の推定された沈下量に基づき、前記埋立領域内に新たに投入する埋立材の投入位置を決定する工程
を備える請求項1に記載の埋立管理方法。
【請求項3】
埋立材の投入後の前記埋立領域における埋立材表面の3次元形状の測定を行い、
測定された埋立材表面の3次元形状を用いて、推定した埋立材の堆積形状を修正する工程
を備える請求項1又は2に記載の埋立管理方法。
【請求項4】
前記埋立領域内の既知位置に沈下計を設置する工程と、
前記沈下計により計測された沈下量を用いて、推定された沈下量の精度を検証し、圧密沈下特性に関する入力パラメータを修正する工程と
を備える請求項1又は2に記載の埋立管理方法。
【請求項5】
埋立材の投入後の前記埋立領域における埋立材表面の3次元形状を複数時点で測定する工程と、
測定された埋立材表面の3次元形状を用いて、推定された沈下量の精度を検証し、圧密沈下特性に関する入力パラメータを修正する工程と
を備える請求項1又は2に記載の埋立管理方法。
【請求項6】
埋立材の投入前の埋立領域における原地盤の物性の測定値を示す原地盤物性データと、埋立材の投入前の前記埋立領域における原地盤表面の3次元形状の測定値を示す原地盤形状データと、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の物性の測定値を示す埋立材物性データと、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の投入日時と投入位置と投入量とを示す埋立材投入データとを取得する取得手段と、
前記原地盤形状データが示す原地盤表面の3次元形状と、前記埋立材物性データが示す投入毎の埋立材の物性と、前記埋立材投入データが示す投入毎の埋立材の投入日時と投入位置と投入量とに基づき、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状を推定する形状推定手段と、
前記原地盤物性データが示す物性に基づき原地盤の圧密沈下特性を特定し、前記埋立材物性データが示す物性に基づき投入毎の埋立材の圧密沈下特性を特定する圧密沈下特性特定手段と、
前記原地盤形状データが示す原地盤表面の3次元形状と、前記形状推定手段により推定された埋立材の堆積状態及び形状と、前記圧密沈下特性特定手段により特定された原地盤及び投入毎の埋立材の圧密沈下特性とに基づき、指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の沈下量を推定する沈下量推定手段と
を備える埋立管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立管理方法及び埋立管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
埋立工事における土砂投入を管理する発明として、例えば特許文献1に開示された施工管理システムがある。このシステムでは、埋立予定水域をメッシュ状に分割し、分割要素における水底地形データを作成する。また、このシステムでは、所定のボーリング位置を対応する分割要素に関連付け、ボーリング位置での地盤データを作成し、ボーリングを行っていない分割要素における推定地盤データを作成する。土砂を投入する前には、土砂投入量に応じた沈下量を推定地盤データから予測する。土砂の投入にあたっては、水深又は盛土高さをナローマルチビーム測深ソナー及びGPS測量装置によって監視しつつ、水深又は盛土高さが設計どおりになるように、投入する土砂の量、投入時期、投入頻度を予測された沈下量を用いて決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−348837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投入する埋立材を粘性土とした場合、圧密が生じ、原地盤に加えて投入した埋立材も時間の経過とともに沈下する。このため、投入する埋立材の量を原地盤の沈下量の推定値のみに基づき決定してしまうと、出来形(堆積高さ)と設計した高さに差異が生じてしまう。特許文献1に記載の発明においては、投入する埋立材の沈下量は考慮されない。
【0005】
上述の背景に鑑み、本発明は、原地盤と投入する埋立材の沈下量をそれぞれ推定できる手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、埋立前の埋立領域における原地盤の物性を測定する工程と、測定した前記原地盤の物性に応じた圧密沈下特性を特定する工程と、埋立前の前記埋立領域における原地盤表面の3次元形状を測定する工程と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎に当該埋立材の物性を測定する工程と、前記原地盤表面の3次元形状と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の、当該埋立材の物性と、当該埋立材の投入日時と、当該埋立材の投入位置と、当該埋立材の投入量とに基づき、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状を推定する工程と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の、測定した当該埋立材の物性に応じた圧密沈下特性を特定する工程と、前記原地盤表面の3次元形状と、前記原地盤の圧密沈下特性と、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状と、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の圧密沈下特性とに基づき、指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の沈下量を推定する工程とを備える埋立管理方法を第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様の埋立管理方法によれば、原地盤と投入する埋立材の沈下量をそれぞれ推定することができる。
【0008】
第1の態様の埋立管理方法において、指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の推定された沈下量に基づき、前記埋立領域内に新たに投入する埋立材の投入位置を決定する工程を備える構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様の埋立管理方法によれば、沈下に伴う出来形(堆積高さ)不足が生じないように埋立材を投入することができる。
【0010】
第1の態様又は第2の態様の埋立管理方法において、埋立材の投入後の前記埋立領域における埋立材表面の3次元形状の測定を行い、測定された埋立材表面の3次元形状を用いて、推定した埋立材の堆積形状を修正する工程を備える構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様の埋立管理方法によれば、沈下量の推定の精度を向上させることができる。
【0012】
第1の態様又は第2の態様の埋立管理方法において、前記埋立領域内の既知位置に沈下計を設置する工程と、前記沈下計により計測された沈下量を用いて、推定された沈下量の精度を検証し、圧密沈下特性に関する入力パラメータを修正する工程を備える構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様の埋立管理方法によれば、沈下量の推定の精度を向上させることができる。
【0014】
第1の態様又は第2の態様の埋立管理方法において、埋立材の投入後の前記埋立領域における埋立材表面の3次元形状を複数時点で測定する工程と、測定された埋立材表面の3次元形状を用いて、推定された沈下量の精度を検証し、圧密沈下特性に関する入力パラメータを修正する工程を備える構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様の埋立管理方法によれば、沈下量の推定の精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明は、埋立材の投入前の埋立領域における原地盤の物性の測定値を示す原地盤物性データと、埋立材の投入前の前記埋立領域における原地盤表面の3次元形状の測定値を示す原地盤形状データと、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の物性の測定値を示す埋立材物性データと、前記埋立領域に対する埋立材の投入毎の当該埋立材の投入日時と投入位置と投入量とを示す埋立材投入データとを取得する取得手段と、前記原地盤形状データが示す原地盤表面の3次元形状と、前記埋立材物性データが示す投入毎の埋立材の物性と、前記埋立材投入データが示す投入毎の埋立材の投入日時と投入位置と投入量とに基づき、前記埋立領域における埋立材の堆積状態及び形状を推定する形状推定手段と、前記原地盤物性データが示す物性に基づき原地盤の圧密沈下特性を特定し、前記埋立材物性データが示す物性に基づき投入毎の埋立材の圧密沈下特性を特定する圧密沈下特性特定手段と、前記原地盤形状データが示す原地盤表面の3次元形状と、前記形状推定手段により推定された埋立材の堆積状態及び形状と、前記圧密沈下特性特定手段により特定された原地盤及び投入毎の埋立材の圧密沈下特性とに基づき、指定された将来日時における前記埋立領域内の指定された位置の原地盤及び当該原地盤の上に堆積している埋立材の沈下量を推定する沈下量推定手段とを備える埋立管理システムを第6の態様として提供する。
【0017】
第6の態様の埋立管理システムによれば、投入する埋立材の沈下量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】埋立管理システム1の構成の全体を示す図。
図2】埋立材モデルによる沈下量の推定結果の一例を示した図。
図3】端末装置100のハードウェア構成を示す図。
図4】埋立材2の沈下量の推定の流れを示すフローチャート。
図5】堆積形状の表示画面の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態]
以下で本発明の一実施形態に係る埋立管理システム1を説明する。埋立管理システム1は、例えば、埋立に用いられる埋立材の沈下量の推定に用いられる。
【0020】
図1は、埋立管理システム1の構成の全体を示す図である。埋立領域Aは、海中において埋立材2により埋立が行われる領域である。埋立領域Aは、区画a1〜区画anの複数領域に区分けされ、各区画は、例えば10m×10mの領域となっている。なお、各区画のサイズは、前述のサイズに限定されるものではなく、他のサイズであってもよい。埋立領域Aを埋め立てる埋立材2は、例えば、砂質土や粘性土である。埋立材2は、土運船10により運搬され、埋立領域Aに投入される。
【0021】
土運船10は、コンピュータ20及び衛星測位装置40を備える。衛星測位装置40は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の航法衛星から受信した信号を用いて自装置の位置(緯度及び経度)を測位する。コンピュータ20は、所謂パーソナルコンピュータであり、通信ネットワーク3に接続し、通信ネットワーク3を介したデータ通信を行う。コンピュータ20(取得手段)は、電子コンパスで測定された土運船10の方位、衛星測位装置40が算出した位置、土運船10上で測定された埋立材2の物性情報(土質、密度、含水比、圧縮指数、圧密係数)などを取得し、取得した情報をデータベース110へ送信する。
【0022】
測量船11は、コンピュータ21、ナローマルチビーム測深機30及び衛星測位装置41を備える。ナローマルチビーム測深機30は、音響ビームを海底に照射し、海底の3次元形状を計測する計測器である。測量船11に設置されたコンピュータ21は、通信ネットワーク3に接続し、通信ネットワーク3を介したデータ通信を行う。コンピュータ21(取得手段)は、衛星測位装置41が算出した位置、ナローマルチビーム測深機30の計測結果を取得し、取得した情報をデータベース110へ送信する。
【0023】
データベース110は、原地盤Gと埋立材2の沈下量の推定に使用する情報を格納するデータベースである。データベース110は、原地盤Gの沈下量を推定するための情報として、例えば、区画a1〜区画anの原地盤Gの物性情報(原地盤物性データ)、区画a1〜区画anの原地盤Gの沈下推定モデル(以下、原地盤Gの沈下推定モデルを「原地盤モデル」という)、ナローマルチビーム測深機30により計測された区画a1〜区画anの原地盤G表面の3次元形状(原地盤形状データ)などの情報を格納する。原地盤モデルは、本発明に係る圧密沈下推定手法の一例である。原地盤モデルは、原地盤Gの圧密による沈下量を推定する圧密沈下特性に対応し、埋立開始からの経過時間に応じた原地盤Gの沈下量の推定に使用される。原地盤モデルを構築する方法としては、例えば、周知のCc法、Terzaghi理論、双曲線法、浅岡方等のいずれか、又はそれらの2以上を組み合わせたものが採用されてもよい。
【0024】
また、データベース110は、埋立材2の沈下量を推定するための情報として、まず、埋立材2の沈下推定モデル(以下、埋立材2の沈下推定モデルを「埋立材モデル」という)を記憶する。図2は、埋立材モデルによる沈下量の推定結果の一例を示した図である。図2の縦軸は沈下量であり、横軸は埋立開始からの経過時間となっている。埋立材モデルは、本発明に係る圧密沈下推定手法の一例である。埋立材モデルは、埋立材2の圧密による沈下量を推定する圧密沈下特性に対応し、埋立開始からの経過時間に応じた埋立材2の沈下量の推定に使用される。埋立材モデルを構築する方法としては、原地盤モデルと同様に、例えば、周知のCc法、Terzaghi理論、双曲線法、浅岡方等のいずれか、又はそれらの2以上を組み合わせたものが採用されてもよい。なお、本実施形態においては、原地盤モデルの構築と埋立材モデルの構築には同じ方法が採用されるものとする。
【0025】
埋立材モデルは、埋立に使用され得る土質材料について、土質試験により圧密沈下特性を測定することにより構築される。土質材料の圧密沈下特性は、土質、密度、含水比によって異なり、埋立材2は投入単位毎にその土質、密度、含水比等が異なる。従って、埋立管理システム1においては、埋立材2の投入単位毎に形成される埋立土層毎に、埋立材2の土質、密度、含水比等の組み合わせに応じた埋立材モデルが構築され、それらの複数の埋立材モデルが組み合わされて、埋立材2の沈下量の推定が行われる。
【0026】
また、データベース110は、埋立材2の沈下量を推定するための情報として、海中に投入した埋立材2の堆積形状モデルを記憶する。堆積形状モデルは、水中に投入された埋立材2の堆積形状を推定するためのモデルである。堆積形状モデルは、例えば、水中に埋立材2を投入し、堆積形状を測定する実験により構築される。
【0027】
また、データベース110は、投入した埋立材2に関する情報として投入情報を格納する。投入情報には、埋立材2の投入日時、埋立材2の投入位置、埋立材2を投入した土運船10の方位、投入した埋立材2の投入量(体積)(以上、埋立材投入データ)、投入した埋立材2の物性情報(埋立材物性データ)が含まれる。
【0028】
図3は、端末装置100のハードウェア構成を示す図である。端末装置100は、制御部101、記憶部102、操作部103、表示部104及び通信部105を備える。操作部103は、端末装置100を操作するキーボードやマウスを備える。表示部104は、液晶ディスプレイである。表示部104は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムが生成する画面を表示する。通信部105は、通信ネットワーク3を介したデータ通信を行う通信インターフェースである。
【0029】
記憶部102は、オペレーティングシステムを記憶する。また、記憶部102は、アプリケーションプログラムとして、原地盤Gと埋立材2の沈下量を推定するプログラムを記憶している。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。ROMには、端末装置100の各部の初期化やオペレーティングシステムを起動するファームウェアが記憶される。RAMは、CPUが演算を実行するときに使用するデータの記憶に用いられる。
【0030】
次に、埋立材2及び原地盤Gの沈下量の推定の流れについて説明する。図4は、埋立材2及び原地盤Gの沈下量の推定の流れを示すフローチャートである。
【0031】
埋立に先立ち、埋立領域Aの原地盤G表面の3次元形状をナローマルチビーム測深機30で計測する(ステップS1)。端末装置100のオペレータは、埋立領域Aの原地盤Gの3次元形状の計測結果を、測量船11のコンピュータ21からデータベース110に格納する(ステップS2)。端末装置100のオペレータは、データベース110に格納された原地盤Gの3次元形状を、複数の区画a1〜区画anに対応して分割する(ステップS3)。
【0032】
オペレータは、ボーリング調査により得られている埋立領域Aにおける原地盤Gの物性を示す物性情報を区画a1〜区画an毎にデータベース110へ格納する(ステップS4)。原地盤Gの物性には、例えば、土質、密度、含水比、圧縮指数、圧密係数等が含まれる。
【0033】
オペレータは、端末装置100において、原地盤Gの沈下推定モデル(原地盤モデル)の生成を指示する操作を行う。原地盤モデルは、埋立材2の荷重による原地盤Gの埋立開始からの経過時間に応じた原地盤Gの沈下量を推定するモデルである。この操作が行われると、端末装置100(圧密沈下特性特定手段)は、格納された区画a1〜区画anの各々に関し、その区画の物性情報に応じた原地盤モデルを構築する(ステップS5)。なお、予め原地盤に関する様々な物性情報に応じた原地盤モデルを事前に構築しておき、ステップS5において、それらの原地盤モデルから対象の区画の物性情報に応じた原地盤モデルを選択してもよい。
【0034】
次に、土運船10において、投入する埋立材2の物性として、例えば、土質、密度、含水比を埋立材2の投入前に測定する(ステップS6)。土運船10から埋立材2を投入すると、投入情報として、埋立材2の水中への投入日時、埋立材2の投入位置、埋立材2を投入したときの土運船10の方位、埋立材2の投入量、測定した埋立材2の物性情報を、コンピュータ20を操作してデータベース110に格納する(ステップS7)。即ち、埋立材2の堆積の履歴として、いつ、どこに、どの厚さで、どのような材料が投入されたかを表す情報がデータベース110に格納される。
【0035】
次に端末装置100は、データベース110に格納されている埋立領域Aの原地盤Gの3次元形状、埋立材2の投入情報、堆積形状モデルに基づいて、区画a1〜区画an毎に埋立材2の堆積形状を推定する(ステップS8)。図5(a)は、1回目に投入された埋立材2の堆積形状の推定結果の一例を示した図であり、埋立材2の堆積形状の断面SE1を示している。端末装置100(形状推定手段)において、埋立材2が投入された区画について、堆積形状の表示を指示する操作が行われると、図5(a)に示した推定結果が表示される(ステップS9)。なお、推定した堆積形状は、計測した埋立領域Aの3次元形状を用いて修正してもよい。
【0036】
オペレータは、埋立領域Aについて、将来の沈下量を推定する場合、端末装置100において将来日時を指定し、沈下量の推定を指示する操作を行う。この操作が行われると、端末装置100(圧密沈下特性特定手段)は、データベース110に格納された埋立材2の投入情報が示す土質、密度、含水比に応じた埋立材2の沈下推定モデル(埋立材モデル)を構築する(ステップS10)。なお、予め埋立材に関する様々な物性情報に応じた埋立材モデルを事前に構築しておき、ステップS10において、それらの埋立材モデルから対象の埋立材2の物性情報に応じた埋立材モデルを選択してもよい。
【0037】
次に端末装置100(沈下量推定手段)は、データベース110を参照し、指定された日時での区画a1〜区画anにおける原地盤Gの沈下量を、区画a1〜区画anの原地盤Gの3次元形状と、区画a1〜区画anの原地盤Gに作用する埋立材2の荷重、区画a1〜区画anの原地盤Gの原地盤モデル(沈下推定モデル)に基づいて算出し、区画a1〜区画anに堆積した埋立材2の沈下量を、区画a1〜区画anにおける埋立材2の堆積形状と、区画a1〜区画anにおける埋立材2の堆積の履歴(堆積状態:いつ、どこに、どの厚さで、どのような材料が投入されたかを表す情報)と、区画a1〜区画anに投入された埋立材2の埋立材モデル(沈下推定モデル)に基づいて算出する(ステップS11)。端末装置100は、原地盤Gの沈下量と埋立材2の沈下量の算出を終えると、算出した沈下量を表示する(ステップS12)。
【0038】
オペレータは、埋立材2が新たに投入される際には、ステップS6以降の処理を繰り返す。具体的には、土運船10において、新たに投入する埋立材2の物性情報を測定する(ステップS6)。土運船10から新たに埋立材2を投入すると、新たな埋立材2の水中への投入日時、新たな埋立材2の投入位置、新たな埋立材2を投入したときの土運船10の方位、新たな埋立材2の投入量、測定した新たな埋立材2の物性情報を、コンピュータ20を操作してデータベース110に格納する(ステップS7)。
【0039】
次に端末装置100は、データベース110に格納されている埋立領域Aの原地盤Gの3次元形状、これまでに投入された埋立材2の投入情報、堆積形状モデルに基づいて、区画a1〜区画an毎に埋立材2の堆積形状を推定する(ステップS8)。図5(b)は、これまでに投入された埋立材2の堆積形状の推定結果の一例を示した図であり、1回目に投入された埋立材2の堆積形状の断面SE1と、2回目に投入された埋立材2の堆積形状の断面SE2を示している。端末装置100において、埋立材2が投入された区画について、堆積形状の表示を指示する操作が行われると、図5(b)に示した推定結果が表示される(ステップS9)。
【0040】
オペレータは、新たに埋立材2が投入された後の埋立領域Aについて、将来の沈下量を推定する場合、端末装置100において日時を指定し、沈下量の推定を指示する操作を行う。この操作が行われると、端末装置100は、これまでにデータベース110に格納された埋立材2の投入情報が示す土質、密度、含水比に応じた埋立材2の沈下推定モデル(埋立材モデル)を構築する(ステップS10)。
【0041】
次に端末装置100は、データベース110を参照し、指定された日時での区画a1〜区画anにおける原地盤Gの沈下量を、区画a1〜区画anの原地盤Gの3次元形状と区画a1〜区画anの原地盤Gに作用する埋立材2の荷重、区画a1〜区画anの原地盤Gの原地盤モデルに基づいて算出し、これまでに区画a1〜区画anに堆積した埋立材2の沈下量を、これまでの区画a1〜区画anにおける埋立材2の堆積形状と、区画a1〜区画anにおける埋立材2の堆積の履歴(堆積状態:いつ、どこに、どの厚さで、どのような材料が投入されたかを表す情報)と、区画a1〜区画anに投入されたこれまでの埋立材2の埋立材モデルに基づいて算出する(ステップS11)。端末装置100は、原地盤Gの沈下量と埋立材2の沈下量の算出を終えると、算出した沈下量を表示する(ステップS12)。
【0042】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態及び以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0043】
(1)本発明においては、端末装置100は、推定した沈下量に基づいて、新たに埋立材2を投入するときの土運船10の位置を決定し、決定した位置を表示してもよい。例えば、推定した沈下量が予め定められた閾値以上となる区画がある場合、当該区画に埋立材2が堆積する位置を、新たに埋立材2を投入するときの土運船10の位置として表示してもよい。
【0044】
(2)本発明においては、例えば、埋立材2が投入される既知位置に沈下計を設置し、原地盤Gや埋立材2の沈下量を計測してもよい。また、沈下計を層別沈下計とし、投入されて積層した埋立材2毎に沈下量を計測してもよい。沈下計で埋立材2の沈下量を計測する構成においては、計測した沈下量を用いて推定した沈下量との差を求め、求めた差を用いて原地盤モデルや埋立材モデルに関する入力パラメータを修正してもよい。
【0045】
(3)本発明においては、埋立材2が投入された後の埋立領域Aの3次元形状を、複数時点(例えば、埋立材2を投入した直後の時点や、任意の時間が経過した時点)で計測し、これらの複数回の計測結果から埋立材2の沈下量を算出してもよい。また、この構成においては、算出した沈下量を用いて沈下推定モデルに関する入力パラメータを修正してもよい。なお、埋立領域Aが広範囲にわたる場合は、必要最小限の区画(範囲)の計測結果から埋立材2の沈下量を算定してもよい。
【0046】
(4)本発明においては、端末装置100において、区画a1〜区画anの平面図を表示し、表示された区画をクリックする操作が行われると、クリックされた区画について、日付の経過に伴う埋立高及び沈下量の変化をグラフで表示してもよい。また、端末装置100は、表示されたグラフにおいて日付をクリックする操作が行われた場合、クリックされた日付における埋立材2の堆積の履歴を表示してもよい。表示する履歴においては、埋立材2の層毎に、投入された日時、投入された埋立材2の物性、堆積した厚さ、水面から埋立材2の層までの深さなどを表示してもよい。
【0047】
(5)本発明においては、推定した堆積形状を、埋立材2が投入された後の埋立領域Aにおける埋立材表面の3次元形状に基づいて更新してもよい。具体的には、埋立材2の投入が複数回終了した後、埋立領域Aにおける埋立材表面の3次元形状をナローマルチビーム測深機30で計測し、計測結果を測量船11のコンピュータ20からデータベース110に格納する。端末装置100のオペレータは、データベース110に格納された埋立領域Aにおける埋立材表面の3次元形状を、複数の区画a1〜区画anに対応して分割する。端末装置100は、推定した埋立領域Aの堆積形状の修正を指示する操作が行われると、データベース110に格納されている推定した堆積形状を、推定した堆積形状における地盤面高さを計測された地盤面高さに一致させる操作を行いながら修正する。この構成によれば、推定した堆積形状を実際の堆積形状に近づけることができる。なお、埋立材2の2回目以降の投入の後、ステップS8で堆積形状を推定する際には、更新された堆積形状を用いて推定してもよい。
【0048】
(6)上述した実施形態においては、原地盤Gの沈下推定モデル(原地盤モデル)の構築と、埋立材2の沈下推定モデル(埋立材モデル)の構築には、同じ方法(例えば、Cc法とTerzaghi理論の組み合わせ等)が採用されるものとしたが、これらのモデルの構築に異なる方法(例えば、原地盤モデルの構築にはCc法とTerzaghi理論の組み合わせ、埋立材モデルの構築には浅岡法、等)が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…埋立管理システム、2…埋立材、3…通信ネットワーク、10…土運船、11…測量船、20・21…コンピュータ、30…ナローマルチビーム測深機、40・41…衛星測位装置、100…端末装置、110…データベース。
【要約】
【課題】原地盤と投入する埋立材の沈下量をそれぞれ推定する。
【解決手段】原地盤Gについて、圧密沈下特性と3次元形状を特定する。埋立領域Aに投入する埋立材2の物性を測定し、測定した物性に対応した圧密沈下特性を特定する。原地盤Gの圧密沈下特性、原地盤Gの表面の3次元形状、埋立領域Aに投入された埋立材2の堆積形状、投入した埋立材2に対応した圧密沈下特性に基づいて、指定された日時における原地盤G及び埋立材2の沈下量を推定する。
【選択図】図1
図1
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図3
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図5