特許第6472927号(P6472927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472927地盤沈下量測定方法及び地盤沈下量測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6472927
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】地盤沈下量測定方法及び地盤沈下量測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20190207BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20190207BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G01D21/00 D
   E02D1/00
   G01C13/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-242753(P2018-242753)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2018年12月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−147735(JP,A)
【文献】 特開2014−40743(JP,A)
【文献】 特開2018−31231(JP,A)
【文献】 特開2018−40742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00
E02D 1/00
G01C 13/00
G01B 17/00
G01B 21/00
G01L 5/00
G01L 7/00
G01C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域埋立の現場における地盤沈下量測定方法であって、
原地盤の上面に、透水性を有するフィルタ材で覆われた間隙水圧計を配置する第1の工程と、
透水性を有するドレーン材を、第1の端部が前記フィルタ材に挿入され、前記フィルタ材から直上方向に延伸するように配置して、前記間隙水圧計に静水圧のみが作用する状態とする第2の工程と、
前記現場において、土質材料を水中に投入する第3の工程と、
前記間隙水圧計により測定される水圧に基づき前記間隙水圧計が配置された位置における原地盤の沈下量を算定する第4の工程と
を備える地盤沈下量測定方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、浮体に連結された前記ドレーン材の第2の端部が前記土質材料の投入天端より高い位置で維持されるように、前記浮体を配置する工程を含む
請求項1に記載の地盤沈下量測定方法。
【請求項3】
水域埋立の現場において、特定位置で測定された水圧に基づき当該特定位置における原地盤の沈下量を算定する地盤沈下量測定システムであって、
原地盤の上面に配置された間隙水圧計と、
前記間隙水圧計を覆うように配置された透水性を有するフィルタ材と、
透水性を有するドレーン材であって、第1の端部が前記フィルタ材に挿入され、前記フィルタ材から直上方向に延伸し、前記間隙水圧計に静水圧のみが作用する状態とするドレーン材と、
前記ドレーン材と連結され、前記ドレーン材の第2の端部を前記現場において投入される土質材料の投入天端より高い位置で維持するように配置された浮体と、
前記間隙水圧計の測定データを水上の中継装置へ送信するための通信ケーブルと、
前記間隙水圧計の測定データを前記中継装置からデータ処理装置へ送信する無線装置と
を備える地盤沈下量測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域埋立の現場における地盤沈下量測定方法及び地盤沈下量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水域埋立において、原地盤が軟弱である場合、埋立材の荷重により原地盤が沈下する。埋立地の出来形を設計された出来形にするためには、埋立が行われる領域の原地盤の沈下量を測定する必要がある。
【0003】
水域における原地盤の沈下量を測定する方法として、例えば特許文献1に開示された方法がある。この方法においては、埋立工事において捨石等の埋立材が配置される原地盤の上に、原地盤の沈下形状に追従して変形可能な可撓性の網状体が布設され、間隙水圧計を収容する保護管が網状体の下に取り付けられる。保護管は、両端が開口したフレキシブルあるいは剛体の管である。保護管は内部に間隙水圧計と、間隙水圧計を覆うように充填された砂を収容する。保護管の一端には、フレキシブルな二重の保護管が接続される。二重の保護管のうち内側の保護管内に、間隙水圧計に一端が接続された通信ケーブルが配置される。二重の保護管は、埋立材が配置されない領域まで到達するように、網状体に沿って水平方向に配置される。間隙水圧計に一端が接続された通信ケーブルは、二重の保護管の他端の開口部から水中に出た後、上方に延伸して、水上のフロートに接続される。フロートは、通信ケーブルを介して間隙水圧計から送信される計測値を無線又は有線で船上や陸上の管理装置に発信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−147735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水域埋立における原地盤が粘土やシルト等の透水性が低い地盤である場合、埋立材の荷重が原地盤に作用して原地盤内に過剰な水圧(過剰間隙水圧)が発生する。ただし、埋立材が礫や砂等の透水性が高い土質材料であれば、原地盤内に発生した過剰間隙水圧は容易に消散する。一方、埋立材が粘土やシルト等の透水性が低い土質材料であれば、埋立材及び原地盤内に発生した過剰間隙水圧は、例えば数年間といった長期にわたり消散しない。従って、特定位置における原地盤の沈下量を算定したい場合、単に間隙水圧計をその特定位置に配置しただけでは、埋立材が原地盤上に堆積すると間隙水圧計に過剰間隙水圧が作用する。その結果、間隙水圧計が静水圧のみを測定できないため、正確な沈下量を算定できない、という問題がある。
【0006】
特許文献1に記載の発明による場合、間隙水圧計は、水平方向に延伸する保護管を介して埋立領域外の水底部に通じる水の移動経路に接しており、静水圧のみを測定するようになっている。一般に、埋立工事は水底に基礎マウンド等を築造する工事とは異なり、特許文献1に記載の発明における保護管を設置すべき領域(埋立領域全体)が広範囲にわたる場合が多い。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、保護管が間隙水圧計から埋立領域外に到達するまで水平方向に延伸して配置されるため、間隙水圧計1箇所当たりの保護管の設置延長が長くなる。埋立領域内に水平に延びる保護管の設置延長が長くなると、保護管内面の摩擦抵抗と保護管内に充填された砂の抵抗が大きくなる。その結果、過剰間隙水圧の消散に多大な時間を要するため、正確な沈下量を測定することができない。また、間隙水圧計が複数配置される場合は、保護管の設置総延長は極めて長くなり、工事中のメンテナンスも煩雑となる。さらに、埋設された保護管を撤去することは困難であるため、埋立工事の完了後に埋立領域内に大量の不要物を残置することになり、工事発注者等から保護管設置の承諾を得られない場合もある。従って、一般的な埋立工事において特許文献1に記載の発明を採用することは必ずしも現実的ではない。
【0008】
上述の背景に鑑み、本発明は、水域埋立において、原地盤及び埋立材の透水性が低い場合であっても、原地盤の上面に配置された間隙水圧計の測定値に基づき原地盤の正確な沈下量を測定可能とする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、水域埋立の現場における地盤沈下量測定方法であって、原地盤の上面に、透水性を有するフィルタ材で覆われた間隙水圧計を配置する第1の工程と、透水性を有するドレーン材を、第1の端部が前記フィルタ材に挿入され、前記フィルタ材から直上方向に延伸するように配置して、前記間隙水圧計に静水圧のみが作用する状態とする第2の工程と、前記現場において、土質材料を水中に投入する第3の工程と、前記間隙水圧計により測定される水圧に基づき前記間隙水圧計が配置された位置における原地盤の沈下量を算定する第4の工程とを備える地盤沈下量測定方法を第1の態様として提供する。
【0010】
第1の態様の測定方法によれば、広範囲にわたる水域埋立において、原地盤及び埋立料の透水性が低い場合であっても、原地盤の上面に配置された間隙水圧計の測定値に基づき正確な地盤沈下量を算定することができる。
【0011】
第1の態様の地盤沈下量測定方法において、前記第2の工程は、浮体に連結された前記ドレーン材の第2の端部が前記土質材料の投入天端より高い位置で維持されるように、前記浮体を配置する工程を含む、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0012】
第2の態様の地盤沈下量測定方法によれば、浮体を用いることで、ドレーン材を、フィルタ材から直上方向に延伸し土質材料の投入天端より高い位置に達した状態にすることができる。
【0013】
また、本発明は、水域埋立の現場において、特定位置で測定された水圧に基づき当該特定位置における原地盤の沈下量を算定する地盤沈下量測定システムであって、原地盤の上面に配置された間隙水圧計と、前記間隙水圧計を覆うように配置された透水性を有するフィルタ材と、透水性を有するドレーン材であって、第1の端部が前記フィルタ材に挿入され、前記フィルタ材から直上方向に延伸し、前記間隙水圧計に静水圧のみが作用する状態とするドレーン材と、前記ドレーン材と連結され、前記ドレーン材の第2の端部を前記現場において投入される土質材料の投入天端より高い位置で維持するように配置された浮体と、前記間隙水圧計の測定データを水上の中継装置へ送信するための通信ケーブルと、前記間隙水圧計の測定データを前記中継装置からデータ処理装置へ送信する無線装置とを備える地盤沈下量測定システムを第3の態様として提供する。
【0014】
第3の態様の地盤沈下量測定システムによれば、広範囲にわたる水域埋立において、原地盤と埋め立てられる土質材料の透水性が低い場合であっても、原地盤上に配置された間隙水圧計の測定値に基づき原地盤の正確な沈下量を算定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムの構成を示した図。
図2】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムが備えるドレーン材の一例の構造を示した図。
図3】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムの配置方法を説明するための図。
図4】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムの配置方法を説明するための図。
図5】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムの配置方法を説明するための図。
図6】一実施形態に係る地盤沈下量測定システムの配置方法を説明するための図。
図7】変形例に係る地盤沈下量測定システムを示した図。
図8】変形例に係る地盤沈下量測定システムを示した図。
図9】変形例に係る地盤沈下量計測システムのドレーン材が延長される様子を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下で本発明の一実施形態に係る地盤沈下量測定システム1を説明する。地盤沈下量測定システム1は、例えば、水域埋立の現場における地盤沈下量の測定に用いられる。
【0017】
図1は、地盤沈下量測定システム1の構成を示した図である。地盤沈下量測定システム1は、内部に間隙水圧計11とフィルタ材12を収容する土嚢10、通信ケーブル21、ドレーン材22、内部に処理装置31とバッテリー32を収容するブイ30、及び、ブイ40を備えている。なお、図1においては、図面が煩雑になるのを防ぐため、地盤沈下量測定システム1は埋立領域内の1箇所のみに配置されているが、埋立領域内の複数箇所の各々に地盤沈下量測定システム1を配置し、それらの複数箇所の各々における原地盤Gの沈下量測定が行われてもよい。
【0018】
土嚢10は、原地盤Gの上面に配置される。
【0019】
土嚢10は、内部に間隙水圧計11と、透水性を有するフィルタ材12を収容する。フィルタ材12は、例えば、砂又は砕石、もしくは砂と砕石の混合物である。ただし、後述する過剰間隙水圧を速やかに消散可能な高い透水性を有する限り、フィルタ材の種類は限定されない。間隙水圧計11はフィルタ材12で周りを覆われ、フィルタ材12の間隙水圧を測定する測定機器である。間隙水圧計11は、測定を指示するコマンドを取得すると、間隙水圧を測定し、測定結果を出力する。
【0020】
土嚢10内のフィルタ材12には、透水性を有するドレーン材22の一端(第1の端部)が挿入されている。一般に、ドレーン材は、帯状又は紐状の部材であり、内部に水の移動経路を有し、側面から土質材料(泥土等)の浸入は阻止しつつ水の浸入は許容する構造を有している。そのため、ドレーン材は、地盤に一部が埋設され、一部が水中又は空中に配置されると、地盤中の過剰な水圧(過剰間隙水圧)が作用した水を水中又は空中に排水する機能を有する。
【0021】
ドレーン材にはプラスチック製ドレーン材、ファイバー製ドレーン材、砂を用いたサンドドレーン等のいくつかの種類がある。地盤沈下量測定システム1が備えるドレーン材22は、一端(第1の端部)がフィルタ材12に挿入された状態で、ドレーン材22に連結されたブイ40の浮力によって、フィルタ材12から直上方向に延伸する程に軽量である必要がある。従って、例えばサンドドレーン等はドレーン材22には適さない。
【0022】
図2は、ドレーン材22の一例(プラスチック製ドレーン)の構造を示した図である。図2に示す構造を備えるドレーン材22は、長手方向(図2のX方向)に垂直な断面が格子形状の芯材221と、芯材221の両側面(図2において、芯材221の上面及び下面)を覆うフィルタシート222を備える。芯材221は、例えば合成樹脂であり、ドレーン材22内に水の移動経路を形成する役割を果たす。ドレーン材22の長手方向(図2のX方向)における透水係数は、例えば、1×10-2m/秒程度である。フィルタシート222は、例えば不織布であり、土質材料が内部に侵入することを阻止するとともに、水が内部に侵入することを実質的に妨げない。ドレーン材22の長手方向に垂直な方向(図2のY方向)における透水係数は、例えば、1×10-3m/秒程度である。
【0023】
ドレーン材22は通常、埋立工事の完了後、埋立領域内に残置されるため、ドレーン材22の素材は生分解性の高いものが望ましい。例えば、芯材221及びフィルタシート222には、生分解性プラスチックを素材とするものが用いられることが望ましい。また、ドレーン材22として、芯材にヤシロープ等の天然ファイバーを用い、フィルタシートに黄麻の布等の天然布帛を用いたファイバー製ドレーン材が用いられてもよい。
【0024】
なお、ドレーン材22は、一般的には地盤改良の際に圧密促進を行う資材であるが、本実施形態においては、土嚢10の内部に発生する過剰間隙水圧を速やかに消散させる手段として用いられる。
【0025】
ドレーン材22の両端部のうち、フィルタ材12に挿入されている端部(第1の端部)ではない側の端部(第2の端部)の近傍には、ブイ40が連結されている。ブイ40の浮力により、ドレーン材22は、図1に示すように、土嚢10から直上方向に延伸する。図1の例においては、ドレーン材22の第2の端部は水中に位置しているが、ドレーン材22の第2の端部は水面Wより上に出ていてもよい。
【0026】
ブイ30は、水面Wに浮かぶ浮体であり、内部に処理装置31及びバッテリー32を収容している。バッテリー32は、処理装置31の電源である。処理装置31は、土嚢10内から直上方向に延伸する通信ケーブル21で間隙水圧計11に接続されている。通信ケーブル21の長さは、満潮時の水面Wから原地盤Gまでの距離を超える長さとなっている。処理装置31は、無線通信機能を備えた無線通信装置であり、間隙水圧計11の測定結果を取得し、取得した測定結果を無線通信により船50に設置された外部装置100へ送信する。なお、処理装置31は、例えば移動体通信網を介して、陸上に設置された外部装置100へ無線通信で測定結果を送信してもよい。
【0027】
例えば、処理装置31は、予め定められた日時になると、測定を指示するコマンドを間隙水圧計11へ送信する。処理装置31は、送信したコマンドに応じて間隙水圧計11から送信される測定結果を取得する。処理装置31は、取得した測定結果を無線通信により外部装置100へ送信する。
【0028】
次に、地盤沈下量測定システム1を配置する方法と、原地盤Gの沈下量の測定方法について説明する。図3図5は、地盤沈下量測定システム1の配置方法を説明するための図である。
【0029】
まず、作業者は、通信ケーブル21の一端に接続されている間隙水圧計11を土嚢10の内部に入れた後、土嚢10の内部にフィルタ材12を入れて、フィルタ材12で間隙水圧計11が覆われた状態にする。作業者は、通信ケーブル21の他端を上方へ引き上げて他端をブイ30内にある処理装置31へ接続する。作業者は、間隙水圧計11とフィルタ材12を収容している土嚢10を、図3に示したように原地盤G上面に配置し、ブイ30を水面Wに浮かべる。
【0030】
作業者は、原地盤Gの上面に配置された土嚢10に対して、ドレーン材22の一端(第1の端部)を挿入し、他端(第2の端部)を直上方向へ引き上げて、他端の近傍にブイ40を連結する。ドレーン材22の他端の近傍にブイ40を連結することにより、図4に示したように、ドレーン材22は、土嚢10内から直上方向に延伸し、他端が水中で維持される状態となる。
【0031】
図4の状態において、間隙水圧計11の周りの水はフィルタ材12内に形成される水の移動経路を介して土嚢10の周りの水に通じている。従って、間隙水圧計11には静水圧のみが作用する状態となっている。
【0032】
次に作業者は、埋立工事の現場において、水中に土質材料Eを投入する。土質材料Eは、例えば粘性土である。土質材料Eを水中に投入することにより、図5に示したように、土嚢10は土質材料Eで覆われる。仮にドレーン材22がなければ、土質材料Eの荷重によって土嚢10内に過剰な水圧(過剰間隙水圧)が発生する。しかしながら、地盤沈下量測定システム1においては、フィルタ材12と、土質材料Eの上方の水との間に水の移動経路を形成するドレーン材22が配置されているため、過剰間隙水圧が作用した土嚢10内の水は速やかにドレーン材22を通して排水され、土嚢10内の過剰間隙水圧は速やかに消散する。従って、実質的に間隙水圧計11に静水圧のみが作用する状態が維持され、間隙水圧計11は配置された位置における静水圧を測定できる。
【0033】
処理装置31は、予め定められた日時になると、測定を指示するコマンドを間隙水圧計11へ送信する。間隙水圧計11は、処理装置31から送信されたコマンドに応じて間隙水圧を測定し、測定結果を処理装置31へ送信する。処理装置31は、間隙水圧計11から送信された測定結果を受信し、受信した測定結果を無線通信により船50上の外部装置100へ送信する。
【0034】
外部装置100は、処理装置31が送信した測定結果を受信すると、原地盤Gの沈下量を算出する。図6は、外部装置100が原地盤Gの沈下量を算出する手順を説明するための図である。例えば、外部装置100は、処理装置31が送信した測定結果を受信すると、間隙水圧計11が測定を行った日時における潮位に基づいて、原地盤Gの沈下開始前の時点の原地盤Gから水面Wまでの距離d1を算出する。また、外部装置100は、受信した測定結果が示す水圧に基づいて、間隙水圧計11が配置された位置におけるその時点の原地盤Gから水面Wまでの距離d2を算出する。外部装置100は、距離d2から距離d1を減算した結果を、間隙水圧計11が配置された位置におけるその時点の原地盤Gの沈下量として算出する。
【0035】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態及び以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0036】
(1)ブイ30のみでは通信ケーブル21を水面Wまで引き上げた状態で維持することが困難な場合等には、通信ケーブル21に1以上の中間ブイを連結し、それらの中間ブイを水面W上又は水中に配置してもよい。また、ブイ40のみではドレーン材22の第2の端部を土質材料Eの投入天端より高い位置に維持できない場合等には、ドレーン材22に1以上の中間ブイを連結し、それらの中間ブイを水面W上又は水中に配置してもよい。図8に、通信ケーブル21に複数の中間ブイ33を連結し、ドレーン材22に複数の中間ブイ41を連結した例を示す。
【0037】
(2)ブイ40を設けずに、通信ケーブル21を介して、もしくは通信ケーブル21を介さず直接、ドレーン材22がブイ30に連結されてもよい。図7は、ドレーン材22の第2の端部の近傍において、連結具23を介して通信ケーブル21とドレーン材22が連結され、ドレーン材22が間接的にブイ30に連結された構成を示している。図7に示される構成が採用されてもよい。
【0038】
(3)上述した実施形態においては、通信ケーブル21は、ドレーン材22の外部に位置しているが、ドレーン材22の内部に通信ケーブル21が配置されてもよい。
【0039】
(4)上述した実施形態においては、処理装置31は、間隙水圧計11の測定結果を無線通信により外部装置100へ送信するが、処理装置31と外部装置100を通信ケーブルで接続し、通信ケーブルを介して測定結果を外部装置100へ送信してもよい。
【0040】
(5)上述した実施形態においては、処理装置31は、間隙水圧計11の測定結果を外部装置100へ送信するが、処理装置31は必ずしも間隙水圧計11の測定結果を外部装置100へ送信しなくてもよい。例えば、処理装置31が着脱可能な不揮発性メモリ(SDメモリカード等)を備え、間隙水圧の測定結果を不揮発性メモリに蓄積する構成が採用されてもよい。この場合、例えば、作業者が定期的に処理装置31から不揮発性メモリを取り外し、コンピュータに接続されたカードリーダライタによって不揮発性メモリに蓄積されている間隙水圧計11の測定結果をコンピュータに移動することで、作業者は間隙水圧計11の測定結果をコンピュータにおいて利用することができる。
【0041】
(6)通信ケーブル21の巻き取りと巻き出しを自動で行う機構をブイ30に設け、潮位の変化に応じて通信ケーブル21の長さを自動で調整する構成としてもよい。この構成によれば、潮位の変化に応じて通信ケーブル21の長さが自動的に調整される。
【0042】
(7)ドレーン材22は埋立工事の進行に応じて延長されてもよい。図9は、ドレーン材22が埋立工事の途中において延長される様子を示した図である。なお、図9において、地盤沈下量測定システム1が備える間隙水圧計11、処理装置31、及び、バッテリー32は省略されている。図9(A)は、水中への土質材料Eの投入が開始される前の状態を示している。図9(A)の例では、ドレーン材22の上端部(第2の端部)の高さは、埋立工事の完了時の計画天端より低いものとする。
【0043】
図9(B)は、水中に土質材料Eが投入され、原地盤Gの上方に土質材料Eの第1層E1が形成された状態を示している。図9(B)の状態において、ドレーン材22の上端部は土質材料投入天端よりも高い位置に維持されているため、間隙水圧計11は正確な静水圧を測定できる。ただし、このまま水中への土質材料Eの投入が継続されると、ドレーン材22の上端部が土質材料Eに埋まってしまい、間隙水圧計11が正確な静水圧を測定できなくなる。
【0044】
そこで、作業者は、既存のドレーン材に新たな同種のドレーン材を継ぎ足して、ドレーン材22を延長する。図9(C)は、ドレーン材22の延長された状態を示している。図9(D)は、その後、水中に土質材料Eが投入され、先に形成されていた第1層E1の上方に土質材料Eの第2層E2が形成された状態を示している。
【0045】
上記のように、ドレーン材22の第2の端部の位置は、土質材料投入天端より高い位置で維持される限り、埋立工事中に適宜変更されてもよい。
【0046】
(8)上述した実施形態においては、土嚢10内のフィルタ材12にドレーン材22を挿入する作業は水中で行われるものとした。これに代えて、土嚢10を水中に投入する前にドレーン材22を土嚢10内のフィルタ材12に挿入し、ドレーン材22と連結された状態の土嚢10を原地盤Gに配置してもよい。
【0047】
(9)上述した実施形態においては、外部装置100が原地盤Gの地盤沈下量を算出している。これに代えて、処理装置31が地盤沈下量を算出し、算出した地盤沈下量を外部装置100へ送信してもよい。
【0048】
(10)上述した実施形態においては、処理装置31は、通信ケーブル21を介して測定結果を間隙水圧計11から取得している。これに代えて、間隙水圧計11の測定結果を音響通信により取得してもよい。この構成の場合、土嚢10は間隙水圧計11、音響通信ユニット、及び、バッテリーを備えた測定ユニットを収容する。また、音響通信ユニットが外部装置100にも設けられる。土嚢10内の音響通信ユニットは外部装置100に設けられた音響通信ユニットとの間で音響信号による通信を行い、間隙水圧計11の測定結果を外部装置100へ送信する。
【符号の説明】
【0049】
1…地盤沈下量測定システム、10…土嚢、11…間隙水圧計、12…フィルタ材、21…通信ケーブル、22…ドレーン材、23…連結具、30…ブイ、31…処理装置、32…バッテリー、40…ブイ、50…船、100…外部装置、221…芯材、222…フィルタシート。
【要約】
【課題】水域埋立において、原地盤及び埋立材の透水性が低い場合であっても、原地盤の上面に配置された間隙水圧計の測定値に基づき地盤沈下量を測定できるようにする。
【解決手段】土嚢10は、内部に間隙水圧計11と砂又は砕石であるフィルタ材12を収容する。土嚢10は原地盤G上に配置される。水面Wにあるブイ30は、内部に処理装置31を収容する。処理装置31は、通信ケーブル21で間隙水圧計11に接続される。ドレーン材22は、一端が土嚢10内に挿入され、他端が水中に位置する。間隙水圧計11は、間隙水圧を測定し、測定結果を処理装置31へ送信する。処理装置31は、測定結果を無線通信により外部装置100へ送信する。外部装置100は、処理装置31から送信された測定結果に基づいて原地盤Gの沈下量を算出する。
【選択図】図1
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