特許第6472950号(P6472950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472950
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】診断用システム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20190207BHJP
   G09G 5/36 20060101ALI20190207BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20190207BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20190207BHJP
【FI】
   G09G5/00 510V
   G09G5/00 510A
   G09G5/00 510H
   G09G5/00 555D
   G09G5/36 520P
   G06T1/00 295
   H04N21/431
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-63147(P2014-63147)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-184612(P2015-184612A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月6日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】515313745
【氏名又は名称】一般社団法人白亜会
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
【審査官】 斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−210414(JP,A)
【文献】 特開2002−055808(JP,A)
【文献】 特開2012−215779(JP,A)
【文献】 特開2010−020329(JP,A)
【文献】 特開2002−185902(JP,A)
【文献】 特開2009−094775(JP,A)
【文献】 特開2005−165987(JP,A)
【文献】 特開2013−174726(JP,A)
【文献】 特開2014−4357(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0141366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 − 5/42
G06T 1/00
H04N 21/431
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病理標本を撮影した画像データを記憶する記憶部と、
外部装置との通信を行うサーバ通信部と
を備えるサーバと、
複数のディスプレイを配列して構成され、複数の前記ディスプレイを用いて前記病理標本の前記画像データの所定の領域を表示し、複数の前記ディスプレイはそれぞれ異なるコンピュータに接続されるマルチディスプレイと、
前記コンピュータのそれぞれに設けられ、前記コンピュータのそれぞれに接続された前記ディスプレイの表示制御を行う複数の表示制御部と、
複数の前記ディスプレイのそれぞれに対応して設けられた通信部と、
前記病理標本の前記画像データに基づき前記マルチディスプレイに表示される画像の所定部分を指定する操作部と、
を備える診断用表示装置と、
前記マルチディスプレイに表示される画像の一部を拡大して表示する表示端末と
を備える診断用システムにおいて、
前記操作部を用いて前記マルチディスプレイに表示された前記画像の前記所定部分が指定されると、前記所定部分の表示制御を行う前記コンピュータの前記表示制御部は、前記ディスプレイに表示された前記画像をそのまま表示した状態で該コンピュータの前記通信部を介して前記サーバに、前記表示端末に前記所定部分の画像を表示させるための画像表示指示信号を送信し、
前記サーバは、前記サーバ通信部を介して前記画像表示指示信号を受信すると、前記表示端末に前記所定部分の画像を拡大して表示させるための分割画像データを生成し、前記サーバ通信部を介して前記表示端末に前記分割画像データを送信し、
前記表示端末は前記分割画像データに基づいて前記所定部分の拡大画像を表示することを特徴とする診断用システム。
【請求項2】
前記操作部は、前記ディスプレイ上に積層して配置されるタッチセンサであることを特徴とする請求項1記載の診断用システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、パーソナルコンピュータであって、
前記マルチディスプレイは、前記ディスプレイとしてHD、フルHD、4K、8K及び16Kのうちの少なくとも1つのディスプレイを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の診断用システム。
【請求項4】
前記表示端末は、タブレットであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の診断用システム。
【請求項5】
前記画像データは、ホールスライドイメージの画像データであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の診断用システム。
【請求項6】
前記操作部による操作指示に基づいて、前記表示制御部は、前記表示端末に表示される画像の表示領域を変更することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の診断用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理標本についての病理診断を行うための診断用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病理学の分野等において、光学顕微鏡によって観察される画像をデジタルデータ化し、ディスプレイ上で観察する装置が用いられている。このような装置としては、デジタルカメラを介して病理標本をディスプレイで観察する光学顕微鏡であるデジタル顕微鏡、従来の光学顕微鏡にデジタルカメラと電動ステージを追加し、遠隔操作で顕微鏡観察を行う遠隔顕微鏡、及び病理標本全体を撮影し、デジタル画像データを生成するホールスライドイメージ作成装置が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、病理標本を載置した可動フレームを順次移動させながら複数の画像を高倍率で撮影するホールスライドイメージ作成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−20329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、病理診断を行う際にホールスライドイメージを高精度に観察するためにマルチディスプレイを用いることが検討されているが、通常、ホールスライドイメージの画像データが記録されたパーソナルコンピュータ(以下、PCという。)に複数のグラフィックカードまたは複数台のディスプレイを接続することができるグラフィックカードを接続することにより、マルチディスプレイを構成するそれぞれのディスプレイに画像を表示させている。しかし、この方法では、PCにおける処理にかかる負荷が大きくなるため、高性能のPCが必要となっていた。
本発明の目的は、高性能な機器を必要とせずに、マルチディスプレイを用いて病理診断を行うための診断用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の診断用システムは、病理標本を撮影した画像データを記憶する記憶部と、外部装置との通信を行うサーバ通信部とを備えるサーバと、複数のディスプレイを配列して構成され、複数の前記ディスプレイを用いて前記病理標本の前記画像データの所定の領域を表示し、複数の前記ディスプレイはそれぞれ異なるコンピュータに接続されるマルチディスプレイと、前記コンピュータのそれぞれに設けられ、前記コンピュータのそれぞれに接続された前記ディスプレイの表示制御を行う複数の表示制御部と、複数の前記ディスプレイのそれぞれに対応して設けられた通信部と、前記病理標本の前記画像データに基づき前記マルチディスプレイに表示される画像の所定部分を指定する操作部と、を備える診断用表示装置と、前記マルチディスプレイに表示される画像の一部を拡大して表示する表示端末とを備える診断用システムにおいて、前記操作部を用いて前記マルチディスプレイに表示された前記画像の前記所定部分が指定されると、前記所定部分の表示制御を行う前記コンピュータの前記表示制御部は、記ディスプレイに表示された前記画像をそのまま表示した状態で該コンピュータの前記通信部を介して前記サーバに、前記表示端末に前記所定部分の画像を表示させるための画像表示指示信号を送信し、前記サーバは、前記サーバ通信部を介して前記画像表示指示信号を受信すると、前記表示端末に前記所定部分の画像を拡大して表示させるための分割画像データを生成し、前記サーバ通信部を介して前記表示端末に前記分割画像データを送信し、前記表示端末は前記分割画像データに基づいて前記所定部分の拡大画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の診断用システムによれば、高性能な機器を必要とせずに、マルチディスプレイを用いて病理診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る診断用システムのシステム構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る診断用システムにおけるプレパラートの画像データ作成処理を示すフローチャートである。
図3】実施の形態に係る診断用システムを用いた画像の表示開始処理を示すフローチャートである。
図4】実施の形態に係る診断用表示装置及び表示端末に表示される画像の一例を示す図である。
図5】他の実施の形態に係るマルチディスプレイにおける各ディスプレイの配置を示す図である。
図6】他の実施の形態に係る診断用表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る診断用システム及び診断用表示装置について説明する。図1は、実施の形態に係る診断用システムのシステム構成を示すブロック図である。診断用システム2は、WSI(ホールスライドイメージ)作成装置4、サーバ6、診断用表示装置8及び表示端末10を備えている。
【0022】
WSI作成装置4は、病院または診療所等の診療機関に備えられ、WSI作成装置4の各部を統括的に制御する制御部12を備えている。制御部12には、プレパラート14を載置するためのステージ16を移動させるステージ制御部18、プレパラート14を観察するための対物レンズ20の駆動制御を行うレンズ駆動部22、CCD等により構成され、対物レンズ20により撮像面上に結像された被写体像を撮像する撮像素子24、プレパラート14の全領域を含む全体画像を撮影するデジタルカメラ26、撮像素子24及びデジタルカメラ26により撮像された画像データを一時的に記憶する画像記憶部28、撮像素子24により撮像された画像データに基づく画像を表示する表示部30、一連の撮影動作を開始するための開始ボタン(不図示)を含む操作部32、インターネット等のネットワークを介してサーバ6に対する画像データの送信等を行う通信部34、画像記憶部28に記憶された複数の画像データをつなぎあわせることにより一つの画像の画像データを生成する画像合成部36が接続されている。ここで、対物レンズ20は、少なくとも基本倍率(例えば対物10倍)でプレパラート14に貼付された切片を観察する対物レンズ20を備えている。ここで切片は、手術により摘出された手術摘出材料をパラフィン包埋処理した後に、パラフィン包埋処理で得られたそれぞれのブロックを、ミクロトームを用いて数μmの厚さに薄切することにより得られる。
【0023】
サーバ6は制御部38を備え、制御部38にはインターネット等のネットワークを介してWSI作成装置4、診断用表示装置8及び表示端末10との間で画像データや操作指示を示す信号等の送受信を行う通信部40、WSI(ホールスライドイメージ)の画像データ等を記憶するデータベース42、WSIの画像データに基づいて診断用表示装置8及び表示端末10に送信するための画像データを生成する画像生成部43を備えている。
【0024】
診断用表示装置8は、病理医師が病理診断を行う検査室に備えられている。診断用表示装置8は画像データに基づく画像を表示するマルチディスプレイ44、第1PC46、第2PC48、第3PC50及び第4PC52及びマルチディスプレイ44に表示される画像の表示範囲の移動指示、表示倍率の変更指示、プレパラート14の画像データに基づく画像の観察を開始指示等を行うためのマウス(図示せず)及びタッチセンサ54a〜54d(以下、マウス及びタッチセンサ54a〜54dを総称して「診断用表示装置8の操作部」ということがある。)を備えている。
【0025】
マルチディスプレイ44は、4枚のディスプレイ(第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62)から構成され、第1PC46は第1ディスプレイ56の表示制御を行い、第2PC48は第2ディスプレイ58の表示制御を行い、第3PC50は第3ディスプレイ60の表示制御を行い、第4PC52は第4ディスプレイ62の表示制御をそれぞれ行う。ここで、4枚のディスプレイ(第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62)は、それぞれHDの解像度を有するHDディスプレイ、フルHDの解像度を有するフルHDディスプレイ、4K解像度を有する4Kディスプレイ、8Kの解像度を有する8Kディスプレイまたは16Kの解像度を有する16Kディスプレイのうちのいずれかであることが好ましく、4Kディスプレイまたは8Kディスプレイのうちのいずれかであることがより好ましい。なお、第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62のサイズはそれぞれ異なっていてもよいが、本実施の形態においては、それぞれ同一のサイズを有するものとして説明する。
【0026】
また、タッチセンサ54a〜54dは、マルチディスプレイ44を構成する4枚のディスプレイ(第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62)のそれぞれに積層して配置されている。なお、以下において、第1ディスプレイ56上に積層して配置されたタッチセンサをタッチセンサ54a、第2ディスプレイ58上に積層して配置されたタッチセンサを54b、第3ディスプレイ60上に積層して配置されたタッチセンサをタッチセンサ54c、第4ディスプレイ62上に積層して配置されたタッチセンサをタッチセンサ54dという。
【0027】
また、第1PC46は制御部64を備え、制御部64には、タッチセンサ54a、第1ディスプレイ56の表示制御を行う表示制御部66、サーバ6から画像データを受信し、タッチセンサ54aを介して入力された操作指示を示す信号をサーバ6に送信する通信部68が接続されている。また、第2PC48は制御部70を備え、制御部70には、タッチセンサ54b、第2ディスプレイ58の表示制御を行う表示制御部72、サーバ6から画像データを受信し、タッチセンサ54bを介して入力された操作指示を示す信号をサーバ6に送信する通信部74が接続されている。また、第3PC50は制御部76を備え、制御部76には、タッチセンサ54c、第3ディスプレイ60の表示制御を行う表示制御部78、サーバ6から画像データを受信し、タッチセンサ54cを介して入力された操作指示を示す信号をサーバ6に送信する通信部80が接続されている。また、第4PC52は制御部82を備え、制御部82には、タッチセンサ54d、第4ディスプレイ62の表示制御を行う表示制御部84、サーバ6から画像データを受信し、タッチセンサ54dを介して入力された操作指示を示す信号をサーバ6に送信する通信部86が接続されている。
【0028】
また、表示端末10は、診断用表示装置8が設けられた検査室に備えられ、マルチディスプレイ44に表示されたWSIの画像をさらに拡大表示させる等の表示を行うタブレット等の携帯型の端末である。表示端末10は制御部88を備え、制御部88には、サーバ6から画像データ等を受信する通信部90、画像データに基づく画像を表示する表示部92の表示制御を行う表示制御部94、表示部92に積層して配置されたタッチセンサ96が接続されている。
【0029】
次に、図2に示すフローチャートを参照して実施の形態に係る診断用データ管理システムのWSI作成装置4におけるプレパラートの画像データ作成処理について説明する。まず、手術摘出材料に対して上述のように所定の処理をして得られる切片を用いて作製されたプレパラート14がステージ16上の所定の位置にセットされ(ステップS1)、開始ボタンが操作されると、制御部22は、撮影処理を開始する(ステップS2)。即ち、制御部12は、ステージ制御部18を制御し、プレパラート14がデジタルカメラ26の直下に位置するようにステージ16を移動させる。
【0030】
次に、制御部12は、デジタルカメラ26によりプレパラート14の全領域を含む準備用画像を撮影させ、準備用画像の準備用画像データを画像記憶部28に記憶させる。
【0031】
次に、制御部12は、画像記憶部28から準備用画像データを読み出し、画像データに基づいて、プレパラート14において切片が貼り付けられた領域(以下、標本領域という。)を特定する(ステップS3)。
【0032】
次に、制御部12は、対物レンズ20を用いて基本倍率で切片の撮影を行う前に予め、標本領域を複数の正方形の格子状の領域(以下、区分領域という。)に区分し、標本領域における各区分領域の位置を認識する。例えば、標本領域の上側縁部の最左端に位置する区分領域の位置を位置「1,1」として認識し、標本領域の上側縁部の最左端の右隣に位置する区分領域の位置を位置「1,2」として認識する。そして、標本領域の下側縁部の最右端に位置する区分領域の位置を位置「M,N」として認識するまで同様の処理を繰り返す。
【0033】
次に、制御部12は、対物レンズ20を用いて基本倍率で切片を撮影する。まず、制御部12はステージ制御部18を制御し、標本領域において最初に撮影する位置「1,1」の区分領域が対物レンズ20の直下に位置するようにステージ16を移動させ、更にステージ16を垂直方向に移動させて位置「1,1」の区分領域における所定の焦点位置(以下、基準面という。)に焦点を合わせる。次に、位置「1,1」の区分領域について対物10倍の基本倍率で撮影し(ステップS4)、画像データに位置情報を付加して画像記憶部28記憶させる。同様にして、制御部12は、順次ステージ16を移動させて位置「1,2」から位置「M,N」までの区分領域を基本倍率で撮影し、区分領域の画像の画像データに位置情報を付加して画像記憶部28に記憶させる。
【0034】
次に、制御部12は、画像記憶部28から基本倍率で撮影した各区分領域の画像の画像データを読み出し、画像合成部36においてプレパラート14について全ての区分領域をつなぎ合わせた切片の全体の画像データを生成する(ステップS5)。このとき、画像合成部36は、各区分領域の画像データに付加された位置情報に基づいて各区分領域をつなぎ合わせ、画像記憶部28に記憶させる。
【0035】
そして、制御部12は通信部34を介して撮影を行ったプレパラート14についての画像データをインターネット等のネットワークを介してサーバ6に送信し(ステップS6)、図2のフローチャートに示す画像データ作成処理を終了する。
【0036】
このとき、サーバ6は通信部40を介してプレパラート14についての画像データを受信すると、制御部40はデータベース42に受信した画像データを記憶させる。
【0037】
なお、1の手術摘出材料を例えば、厚さ4mm前後に切り出すことにより複数のプレパラート14が作製された場合には、1の手術摘出材料から作製されたプレパラート14の全てについてステップS1〜S6に示す処理を行う。この場合には、後述する病理診断において、2次元だけでなく、3次元における診断が可能となる。
【0038】
次に、図3に示すフローチャートを参照して実施の形態に係る診断用システムを用いた画像の表示開始処理について説明する。病理医師はプレパラートの観察を行う際に、診断用表示装置8の操作部を用いた所定の操作により所定のプレパラート14の画像の表示指示を行うと、制御部64,70,76,82は、それぞれサーバ6に対して画像データの送信要求を送信する(ステップS11)。
【0039】
ここで、第1PC46の制御部64、第2PC48の制御部70、第3PC50の制御部76及び第4PC52の制御部82は、それぞれマルチディスプレイ44における第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置を示す座標の情報をサーバ6に対してそれぞれ送信する。即ち、図4(a)に示すように、第1ディスプレイ56の座標が(0,0)〜(X1,Y1)の範囲であり、第2ディスプレイ58の座標が(X1,0)〜(2X1,Y1)の範囲であり、第3ディスプレイ60の座標が(0,Y1)〜(X1,2Y1)の範囲であり、第4ディスプレイ62の座標が(X1,Y1)〜(2X1,2Y1)の範囲であることを送信する。また、表示させる倍率を送信してもよい。なお、X1は、第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62のX軸方向(横軸方向)の長さを示しY1は第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62のY軸方向(縦軸方向)の長さを示す。また、診断用表示装置8の操作部により操作が行われた座標(マウスポインタ座標)は、このXY平面における座標として表すことができる。
【0040】
送信要求を受信すると、サーバ6の制御部38は、データベース42から指定されたプレパラート14の画像データを読み出す。そして、制御部38は、画像生成部43を制御して、第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置及び指定された倍率C1に応じて、読み出した画像データを切り出した分割画像データを生成する(ステップS12)。ここで、倍率C1は予め設定されていてもよいし、第1PC46、第2PC48、第3PC50及び第4PC52からの画像データの送信要求の際に受信する情報に含まれていてもよい。
【0041】
次に、制御部38は、通信部40を介して第1PC46、第2PC48、第3PC50及び第4PC52に対して、それぞれ第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置に応じた分割画像データを送信する(ステップS13)。ここで、図4(b)は、サーバ6のデータベース42に記憶されている画像データの画像を示す図である。図4(b)に示すように制御部38は、WSIの画像データから所定の領域97を切り出して、さらに、この領域97を第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置に応じて分割することにより分割画像データを生成する。
【0042】
診断用表示装置8において指定されたプレパラート14についての各分割画像データを受信すると(ステップS14)、図4(a)に示すように第1PC46の制御部64、第2PC48の制御部70、第3PC50の制御部76及び第4PC52の制御部82は、それぞれに接続された表示制御部66,72,78,84を制御して、第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62に受信した分割画像データの画像を表示させる(ステップS15)。即ち、マルチディスプレイ44にプレパラート14の画像データに基づく画像を表示させ、画像表示開始処理を終了する。
【0043】
このとき、第1PC46の制御部64、第2PC48の制御部70、第3PC50の制御部76及び第4PC52の制御部82の何れかは、それぞれに接続された表示制御部66,72,78,84を制御して、マウスにより操作を行うためのマウスカーソル95をマルチディスプレイ44にさらに表示させる。
次に、マルチディスプレイ44にプレパラート14の画像データに基づく画像を表示させた後の操作について説明する。
【0044】
マルチディスプレイ44に画像が表示されると、病理医師はタッチセンサ54a〜54dをタッチすること、またはマウスを用いて左クリックを行うことにより、タッチまたはクリックが行われた部分について拡大された画像を表示端末10に表示させる。即ち、タッチまたはクリックが行われた部分の表示制御を行うPCの制御部は、サーバ6に対して表示端末10に画像を表示させるための画像表示指示を示す信号を送信する。また、このとき、表示端末10に表示させる倍率を送信してもよい。
【0045】
即ち、(0,0)〜(X1,Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A,B)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチまたはクリックが行われると、第1PC46の制御部64は、通信部68を介してサーバ6に対して表示端末10への画像表示指示を示す信号を送信する。また、この場合には、制御部64は表示制御部66を制御して、第1ディスプレイ56のタッチまたはクリックが行われた部分に記号98を表示させる。また、(X1,0)〜(2X1,Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A+X1,B)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチまたはクリックが行われると、第2PC48の制御部70は、通信部74を介してサーバ6に対して表示端末10への画像表示指示を示す信号を送信する。また、この場合には、制御部70は表示制御部72を制御して、第2ディスプレイ58のタッチまたはクリックが行われた部分に記号98を表示させる。また、(0,Y1)〜(X1,2Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A,B+Y1)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチまたはクリックが行われると、第3PC50の制御部76は、通信部80を介してサーバ6に対して表示端末10への画像表示指示を示す信号を送信する。また、この場合には、制御部76は表示制御部78を制御して、第3ディスプレイ60のタッチまたはクリックが行われた部分に記号98を表示させる。また、(X1,Y1)〜(2X1,2Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A+X1,B+Y1)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチまたはクリックが行われると、第4PC52の制御部82は、通信部86を介してサーバ6に対して表示端末10への画像表示指示を示す信号を送信する。また、この場合には、制御部82は表示制御部84を制御して、第4ディスプレイ62のタッチまたはクリックが行われた部分に記号98を表示させる。
【0046】
表示端末10への画像表示指示を示す信号を受信すると、サーバ6の制御部38は画像生成部43に指定された倍率C’に応じて、タッチまたはクリックが行われた部分についてプレパラート14の画像データを切り出し、拡大することにより表示端末用分割画像データを生成させる。ここで、倍率C’は予め設定されていてもよいし、受信した表示端末10への画像表示指示を示す信号に含まれていてもよい。
次に、制御部38は、通信部40を介して表示端末10に対して、表示端末用分割画像データを送信する。
【0047】
図4(c)に示すように、表示端末10において表示端末用分割画像データを受信すると、制御部88は表示制御部94を制御して表示部92に受信した表示端末用分割画像データの画像を表示させる。
【0048】
次に、表示端末10に画像が表示されると、病理医師はマルチディスプレイ44に積層して配置されたタッチセンサ54a〜54dを用いて所定の操作を行うことにより、表示端末10に表示させる画像の表示範囲及び表示倍率を変更させることができる。たとえば、マルチディスプレイ44に表示された記号98を指で長押しする操作がされると、記号98が表示された部分について表示端末10に拡大表示させるための表示端末用拡大表示指示とすることができる。また、マルチディスプレイ44に表示された記号98をタップする操作がされると、記号98が表示された部分を中心に表示端末10に縮小表示させるための表示端末用縮小表示指示とすることができる。また、マルチディスプレイ44に表示された記号98を移動させるフリック操作がされると、表示端末10に表示させる画像の表示範囲の変更(視野中心の変更)を行う表示端末用表示範囲変更指示とすることができる。
【0049】
表示端末用表示範囲変更指示または表示端末用表示倍率変更指示(表示端末用拡大表示指示または表示端末用縮小表示指示)の操作が行われると、操作が行われた領域の表示制御を行うPCの制御部は、サーバ6に対して表示端末用表示範囲変更指示または表示端末用表示倍率変更指示を示す信号を送信する。例えば、図4(a)に示すように(0,0)〜(A+X1,B+Y1)の範囲でタッチセンサ54aまたはマウスにより表示端末用表示範囲変更指示または表示端末用表示倍率変更指示の操作が行われると、第1PC46の制御部64は、通信部68を介してサーバ6に対して表示端末用表示範囲変更指示または表示端末用表示倍率変更指示を示す信号を送信する。
【0050】
表示端末用表示範囲変更指示または表示端末用表示倍率変更指示を示す信号を受信すると、サーバ6の制御部38は画像生成部43に指定された部分及び/または指定された倍率C”に応じてプレパラート14の画像データを切り出し、拡大することにより表示端末用分割画像データを生成させ、通信部40を介して表示端末10に対して表示端末用分割画像データを送信する。
【0051】
表示端末10において表示端末用分割画像データを受信すると、制御部88は表示制御部94を制御して表示部92に受信した表示端末用分割画像データの画像を表示させる。
【0052】
次に、記号98が表示された領域以外において操作が行われた場合について説明する。マルチディスプレイ44に画像が表示されると、病理医師はタッチセンサ54a〜54dまたはマウスを用いて所定の操作を行うことにより診断用表示装置8のマルチディスプレイ44に表示させる画像の表示範囲及び表示倍率を変更させることができる。たとえば、記号98が表示された領域以外において、タッチセンサ54a〜54dを用いて2本の指を広げるピンチアウト操作がされると、操作がされた領域を拡大表示させるための拡大表示指示とすることができる。また、記号98が表示され領域以外において、タッチセンサ54a〜54dを用いて2本の指を狭めるピンチイン操作がされると、操作がされた領域を中心に縮小表示させるための縮小表示指示とすることができる。また、記号98が表示された領域以外において、タッチセンサ54a〜54dを用いてフリック操作がされると、タッチセンサ54a〜54d上での病理医師の指の移動距離に応じて表示範囲の変更を行う表示範囲変更指示とすることができる。
【0053】
また、記号98が表示された領域以外において、マウスの左ボタンが長押しされると、操作がされた領域を拡大表示させるための拡大表示指示とすることができる。また、記号98が表示された領域以外において、マウスの右ボタンが長押しがされると、操作がされた領域を中心に縮小表示させるための縮小表示指示とすることができる。また、記号98が表示された以外の領域で、マウスの左ボタンを押した状態で移動させるドラッグ操作がされると、移動距離に応じて表示範囲の変更を行う表示範囲変更指示とすることができる。
【0054】
表示範囲変更指示または表示倍率変更指示の操作が行われると、操作が行われた領域の表示制御を行うPCの制御部は、サーバ6に対して表示範囲変更指示または表示倍率変更指示を示す信号を送信する。即ち、(0,0)〜(X1,Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A,B)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチセンサ54aまたはマウスにより表示範囲変更指示または表示倍率変更指示の操作が行われると、第1PC46の制御部64は、通信部68を介してサーバ6に対して表示範囲変更指示または表示倍率変更指示を示す信号を送信する。また、(X1,0)〜(2X1,Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A+X1,B)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチセンサ54bまたはマウスにより表示範囲変更指示または表示倍率変更指示の操作が行われると、第2PC48の制御部70は、通信部74を介してサーバ6に対して表示範囲変更指示または表示倍率変更指示を示す信号を送信する。また、(0,Y1)〜(X1,2Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A,B+Y1)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチセンサ54cまたはマウスにより表示範囲変更指示または表示倍率変更指示の操作が行われると、第3PC50の制御部76は、通信部80を介してサーバ6に対して表示範囲変更指示または表示倍率変更指示を示す信号を送信する。また、(X1,Y1)〜(2X1,2Y1)の範囲(マウスポインタ座標としての(A+X1,B+Y1)(Aは0以上X1以下、かつ、Bは0以上Y1以下))でタッチセンサ54dまたはマウスにより表示範囲変更指示または表示倍率変更指示の操作が行われると、第4PC52の制御部82は、通信部86を介してサーバ6に対して指示を示す信号を送信する。
【0055】
変更操作を示す信号を受信すると、サーバ6の制御部38は画像生成部43に第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置または/及び指定された倍率Cに応じて、指定されたプレパラート14の画像データを切り出した分割画像データを生成させ、通信部40を介して第1PC46、第2PC48、第3PC50及び第4PC52に対して、それぞれ第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62の物理的な配置に応じた分割画像データを送信する
【0056】
診断用表示装置8において指定されたプレパラート14についての各分割画像データを受信すると、第1PC46の制御部64、第2PC48の制御部70、第3PC50の制御部76及び第4PC52の制御部82は、それぞれ第1PC46の制御部64、第2PC48の制御部70、第3PC50の制御部76及び第4PC52の制御部82は、それぞれ第1ディスプレイ56、第2ディスプレイ58、第3ディスプレイ60及び第4ディスプレイ62に受信した分割画像データの画像を表示させる。即ち、マルチディスプレイ44にプレパラート14の画像データに基づく画像を表示させる。
【0057】
また、1の手術摘出材料を例えば、厚さ4mm前後に切り出すことにより複数のプレパラート14が作製された場合には、診断用表示装置8の操作部を介した所定の操作によりマルチディスプレイ44に表示された平面についてのX,Y方向への移動だけでなく、Z軸方向(図4における紙面に対して垂直方向)について移動させるための表示範囲変更指示を受け付ける構成としてもよい。即ち、3次元における病理診断が可能な構成としてもよい。
【0058】
病理医師はマルチディスプレイ44または表示端末10に表示された画像を観察し、病変部については診断用表示装置8の操作部または表示端末10のタッチセンサ96を介した所定の操作を行うことによりデジタルトレーシングを行ってもよい。
【0059】
本実施の形態に係る診断用システム及び診断用表示装置によれば、高性能な機器を必要とせずに、マルチディスプレイを用いて病理診断を行うことができる。即ち、1台のPCに複数のグラフィックカードまたは複数台のディスプレイが接続可能なグラフィックカードを接続する必要がないため、PCに高いスペックは求められない。また、PCの台数は増えるが、小型PCを用いることができる。
また、マルチディスプレイを構成するディスプレイとして、4K、8K等の高画質ディスプレイを用いることにより高精細観察を行うことができる。
【0060】
また、サーバは複数台のPCからの操作を受けるが、WSIの画像データに比して各PCや表示端末に対して送信するために作成される画像データの容量は小さいため、サーバへの負荷は小さいものとすることができる。
【0061】
なお、上述の実施の形態においては、マルチディスプレイ44の構成としてディスプレイを縦に2枚、横に2枚配置する構成としたが、マルチディスプレイの構成はこれに限られるものではない。例えば、ディスプレイを縦に2〜3枚、横に3〜4枚並べて配置させて構成してもよいし、図5に示すようにHDディスプレイ4枚と、4Kディスプレイ2枚、8Kまたは16Kディスプレイ1枚によりマルチディスプレイを構成してもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態において、診断用表示装置8は、複数のPCと複数のディスプレイを含む構成としたが、図6に示すように複数のタブレットにより構成してもよい。
【0063】
また、親タブレット及び複数の子タブレットからなる複数のタブレットによる表示を行ってもよい。この場合には、親タブレットに広い領域のプレパラートの画像を表示させ、親タブレットにおいて、タッチされた部分をn枚の子タブレットに拡大表示させる。また、子タブレットにおいてさらに注目すべき部分を2本の指を広げるピンチアウト操作がされると、その部分について、m枚の子タブレットに拡大表示させる。
【0064】
また、上述の実施の形態において3次元における病理診断を行う場合には、マルチディスプレイを複数用意してもよい。この場合には、Z軸方向(図4における紙面に対して垂直方向)が異なる画像を複数のマルチディスプレイにそれぞれ表示させ、病理診断を行うことができる。この方法は、3次元での構造観察が必要な内膜細胞診等において有用である。
【符号の説明】
【0065】
2…診断用システム、4…WSI作成装置、6…サーバ、8…診断用表示装置、10…表示端末、44…マルチディスプレイ、46…第1PC、48…第2PC、50…第3PC、52…第4PC、54a〜54d…タッチセンサ、56…第1ディスプレイ、58…第2ディスプレイ、60…第3ディスプレイ、62…第4ディスプレイ、66,72,78,84…表示制御部、68,74,80,86…通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6