特許第6472953号(P6472953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6472953需給調整システム、需給調整装置、需給調整方法及び需給調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472953
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】需給調整システム、需給調整装置、需給調整方法及び需給調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20190207BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20190207BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   H02J3/00
   H02J13/00 301A
   H02J13/00 311R
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-131362(P2014-131362)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-9438(P2016-9438A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年2月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】富水 律人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 祥之
【審査官】 衣川 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−230051(JP,A)
【文献】 特開2013−005574(JP,A)
【文献】 特開2015−226434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0062195(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015802(US,A1)
【文献】 田路 龍太郎,グローバルスタンダード最前線,NTT技術ジャーナル,一般社団法人電気通信協会,2013年10月 1日,第25巻, 第10号,pp.38-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整ユースケースを実行する需給調整システムであって、
事業者ごとに割り当てられた複数の需給調整装置を備えており、
前記需給調整装置は、
需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、送受信するメッセージに関する情報と状態遷移の情報を含むユースケース定義情報を生成してユースケース定義蓄積手段に格納するユースケース定義生成手段と、
前記ユースケース定義蓄積手段から前記ユースケース定義情報を読み出し、当該ユースケース定義情報に従って動作し、メッセージを送信する際には、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成するユースケース実行手段と、を有し、
事業者ごとに割り当てられた前記需給調整装置には、前記需給調整ユースケースで定義されている各事業者のユースケースがそれぞれ入力され、需給調整の依頼を受けるユースケースと需給調整を依頼するユースケースが入力された前記需給調整装置は、当該ユースケース同士を連携させて動作することを特徴とする需給調整システム。
【請求項2】
デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整を行う需給調整装置であって、当該需給調整装置は、上位の需給調整装置から需給調整の依頼を受けるとともに、下位の需給調整装置へ需給調整を依頼するものであり、
ユースケース定義情報は送受信するメッセージに関する情報と前記メッセージの送受信シーケンスに従う状態遷移の情報を含み、
需給調整の依頼を受ける第1のユースケース定義情報と需給調整を依頼する第2のユースケース定義情報を関連付けて格納したユースケース定義蓄積手段と、
需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、前記ユースケース定義情報を生成して前記ユースケース定義蓄積手段に格納するユースケース定義生成手段と、
需給調整の依頼を受けたときに前記ユースケース定義蓄積手段から前記第1のユースケース定義情報と当該第1のユースケース定義情報に関連付けられた前記第2のユースケース定義情報を読み出し、前記第1のユースケース定義情報に従って動作するとともに、前記第1のユースケース定義情報と連携させて前記第2のユースケース定義情報に従って動作し、メッセージを送信する際には、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成するユースケース実行手段と、
を有することを特徴とする需給調整装置。
【請求項3】
前記ユースケース実行手段への指示及び前記ユースケース実行手段の状態を取得するインタフェースを提供するインタフェース提供手段を有することを特徴とする請求項2に記載の需給調整装置。
【請求項4】
デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整を行う需給調整装置により実行される需給調整方法であって、当該需給調整装置は、上位の需給調整装置から需給調整の依頼を受けるとともに、下位の需給調整装置へ需給調整を依頼するものであり、
ユースケース定義情報は送受信するメッセージに関する情報と前記メッセージの送受信シーケンスに従う状態遷移の情報を含み、
前記需給調整装置は、需給調整の依頼を受ける第1のユースケース定義情報と需給調整を依頼する第2のユースケース定義情報を関連付けて格納したユースケース定義蓄積手段を備え、
需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、前記ユースケース定義情報を生成して前記ユースケース定義蓄積手段に格納するステップと、
需給調整の依頼を受けたときに前記ユースケース定義蓄積手段から前記第1のユースケース定義情報と当該第1のユースケース定義情報に関連付けられた前記第2のユースケース定義情報を読み出し、前記第1のユースケース定義情報に従って動作するとともに、前記第1のユースケース定義情報と連携させて前記第2のユースケース定義情報に従って動作するステップと、
メッセージを送信する際に、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成するステップと、
を有することを特徴とする需給調整方法。
【請求項5】
デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整を行う需給調整装置としてコンピュータを動作させるための需給調整プログラムであって、当該需給調整装置は、上位の需給調整装置から需給調整の依頼を受けるとともに、下位の需給調整装置へ需給調整を依頼するものであり、
ユースケース定義情報は送受信するメッセージに関する情報と前記メッセージの送受信シーケンスに従う状態遷移の情報を含み、
前記需給調整装置は、需給調整の依頼を受ける第1のユースケース定義情報と需給調整を依頼する第2のユースケース定義情報を関連付けて格納したユースケース定義蓄積手段を備え、
需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、前記ユースケース定義情報を生成して前記ユースケース定義蓄積手段に格納する処理と、
需給調整の依頼を受けたときに前記ユースケース定義蓄積手段から前記第1のユースケース定義情報と当該第1のユースケース定義情報に関連付けられた前記第2のユースケース定義情報を読み出し、前記第1のユースケース定義情報に従って動作するとともに、前記第1のユースケース定義情報と連携させて前記第2のユースケース定義情報に従って動作する処理と、
メッセージを送信する際に、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成する処理と、
前記コンピュータに実行させることを特徴とする需給調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の需給調整を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給は、発電方式の多様化に伴い、供給と需要のアンバランスが発生し、発電量不足による停電や再生可能エネルギーの発電量過多による系統不安定が問題になっている。供給事業者は電力の供給量を天気予報等から予測し発電計画を立てるが、気温の急激な変化や需要家の生産計画の変動、また発電設備のトラブルなど、不測の事態に備え予備力を持つ必要がある。
【0003】
従来の需給バランスを均等にする方法は、電力の需要量に応じて発電量を調整する電力供給事業者による供給側調整のみであったが、需要家側調整をすることで発電の供給不足・過多をより効率的に調整できることが検証されている。
【0004】
そのため、供給量が不足する場合、需要家側で電力消費量を削減するピークカットやピークシフトに協力してもらい、協力に応じた分をインセンティブとして支払う需給調整ビジネスが欧米では行われている。需給調整には、需要家をまとめて一定量の電力調整を実施する事業者(以下、アグリゲータという)が供給事業者の要求に応え、需要家を調整する役目を担っている。
【0005】
従来、アグリゲータは個々の需要家と電話やメールを使い需給調整を行っていたが、需要家の即応性や調整量の精度に欠けるものであったため、システム化による自動化が求められている。そこで、これらの需給調整をシステム化するための手順を標準プロトコル化(OASIS OpenADR2.0, ZigBee Alliance SEP2.0等、以下、デマンドレスポンスプロトコルという)が提案されて標準の策定が行われている。
【0006】
需要調整をシステム化してデマンドレスポンスプロトコルにより通信する場合、以下のような問題がある。
【0007】
まず、需給調整を行う方法を決めた様々なユースケースがあり、予め供給側と需要家側で調整する必要がある(ジェネリックなユースケースを定義する団体には、Energy Information Standards(EIS) Alliance, North American Energy Standards Board(NAESB), IEC TC57 WG21, JSCA DR-TF等がある)。例えば、需給調整を依頼する方法としては、目標削減量を通知して依頼する、削減量に対するインセンティブ価格を通知して依頼する、特定の需要家設備の制御通知を依頼するなどがある。また、事前に通知する日時、通知する回数、調整の対応可否に応じるか否か、対応可能なスケジュールの調整など、様々な組み合わせがある。
【0008】
さらに、需給調整の実施時間帯が朝、昼、夕のケース、調整時間が季節に応じて変わる、などユースケースの変更や新たなユースケースに対応する必要がある。これらのユースケースは需要家に依存するため需要家毎に定義する必要がある。
【0009】
加えて、従来の需要家側システム(xEMS等)に新たなデマンドレスポンスプロトコルを実装しなければならないという問題がある。機器を自動制御する場合、デマンドレスポンスプロトコルと従来プロトコル(BACnet, EchonetLite, Multispeak等)の変換も必要となる場合も多い。
【0010】
ユースケース毎にアプリケーションを実装する従来手法でデマンドレスポンスプロトコルを用いた需給調整システムを実現するためには、まず、需給調整方法のユースケースをビジネスフロー等の一般的な表現方法で定義し、一般的な定義に基づいてデマンドレスポンスプロトコルで実装可能な範囲を抽出し、本ユースケースを実現するためのメッセージフローの設計、キャンセルや受諾可否など要件定義の後、プロトコル規定に従ったメッセージ(OpenADR では EiEvent, EiOpt等)に置換し、各々のメッセージのペイロード(OpenADR では SignalName, SignalType等)の値を決定する。これらの設計に基づき、アグリゲータ側システム、需要家側システムの双方にデマンドレスポンスプロトコル自体を実装し本ユースケースを動作させるためのアプリケーションを設計・実装し、当初のユースケースが実現できているか検証するといった過程を経て実現される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「OpenADRの標準化動向」、NTT技術ジャーナル、日本電信電話株式会社、2013年10月、第25巻、第10号、pp.38-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
デマンドレスポンスプロトコルを用いて需給調整システムをシステム化することで相互接続性の向上が期待できる一方で、需給調整方法(ユースケース)の多様な特性に対応するシステム化が実現できて需給量のインバランスを高い精度で改善することが可能となる。しかしながら、デマンドレスポンスプロトコルの深い理解が必須で、多様性を求めるとシステム化が複雑になり、変更・追加に対応できない問題が生じる。ユースケースが需要家毎に異なることや、効果を最大化・維持するためには事前計画段階のユースケースの実施後の再調整が不可欠であるため、ユースケース毎にアプリケーションを実装する従来手法には問題がある。また、アグリゲータと需要家間のユースケースにとどまらず、供給事業者、送配電系統運用事業者、マーケット市場運用機関といった様々な事業者(以下、アクタという)間をデマンドレスポンスプロトコルで情報伝達する需給調整ユースケースが必要となり、さらに複雑性が増している。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、需給調整のためのユースケースの修正・追加に容易に対応可能な需給調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明に係る需給調整システムは、デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整ユースケースを実行する需給調整システムであって、事業者ごとに割り当てられた複数の需給調整装置を備えており、前記需給調整装置は、需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、送受信するメッセージに関する情報と状態遷移の情報を含むユースケース定義情報を生成してユースケース定義蓄積手段に格納するユースケース定義生成手段と、前記ユースケース定義蓄積手段から前記ユースケース定義情報を読み出し、当該ユースケース定義情報に従って動作し、メッセージを送信する際には、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成するユースケース実行手段と、を有し、事業者ごとに割り当てられた前記需給調整装置には、前記需給調整ユースケースで定義されている各事業者のユースケースがそれぞれ入力され、需給調整の依頼を受けるユースケースと需給調整を依頼するユースケースが入力された前記需給調整装置は、当該ユースケース同士を連携させて動作することを特徴とする。
【0015】
第2の本発明に係る需給調整装置は、デマンドレスポンスプロトコルを用いて電力の需給調整を行う需給調整装置であって、当該需給調整装置は、上位の需給調整装置から需給調整の依頼を受けるとともに、下位の需給調整装置へ需給調整を依頼するものであり、ユースケース定義情報は送受信するメッセージに関する情報と前記メッセージの送受信シーケンスに従う状態遷移の情報を含み、需給調整の依頼を受ける第1のユースケース定義情報と需給調整を依頼する第2のユースケース定義情報を関連付けて格納したユースケース定義蓄積手段と、需給調整に必要なパラメータとメッセージの情報を受け付けて、前記ユースケース定義情報を生成して前記ユースケース定義蓄積手段に格納するユースケース定義生成手段と、需給調整の依頼を受けたときに前記ユースケース定義蓄積手段から前記第1のユースケース定義情報と当該第1のユースケース定義情報に関連付けられた前記第2のユースケース定義情報を読み出し、前記第1のユースケース定義情報に従って動作するとともに、前記第1のユースケース定義情報と連携させて前記第2のユースケース定義情報に従って動作し、メッセージを送信する際には、当該メッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成するユースケース実行手段と、を有することを特徴とする。
【0017】
上記需給調整装置において、前記ユースケース実行手段への指示及び前記ユースケース実行手段が起動したインスタンスの状態を取得するインタフェースを提供するインタフェース提供手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、需給調整のためのユースケースの修正・追加に容易に対応可能な需給調整システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施の形態における需給調整システムの全体構成図である。
図2】本実施の形態における需給調整システムで実行する需給調整ユースケースを示すシーケンス図である。
図3】需給調整ゲートウェイの構成を示す機能ブロック図である。
図4】イベントのユースケースを登録するための情報を入力する画面の例を示す図である。
図5】あるユースケースのシーケンスを示すシーケンス図である。
図6】別のユースケースのシーケンスを示すシーケンス図である。
図7】レポートのユースケースを登録するための情報を入力する画面の例を示す図である。
図8図5のユースケースを需給調整ゲートウェイが実行する例を示したシーケンス図である。
図9】需給調整ゲートウェイが提供するAPIの例を示す図である。
図10】アグリゲータの需給調整ゲートウェイが実行するユースケースの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、複数の需給調整ゲートウェイ(需給調整装置)で構成された本実施の形態における需給調整システムの全体構成図である。
【0022】
図1に示す例では、アクタとして1つの供給事業者、複数のアグリゲータ、複数の需要家が存在し、アクタ毎に需給調整ゲートウェイ1を持つ。各アクタの需給調整ゲートウェイ1は、クラウド上に配置される。需給調整ゲートウェイ1は、多段構成および隣接する複数の需給調整ゲートウェイ1で構成することができる。需給調整ゲートウェイ1間は、デマンドレスポンスプロトコルを用いて通信する。デマンドレスポンスプロトコルを実装していない各アクタ固有のシステム(xEMS等)と需給調整ゲートウェイ1とは需給調整ゲートウェイ1のAPI(Application Programming Interface)を介して連携する。
【0023】
図1に示す需給調整システムを用いて、例えば図2に示すような、複数のアクタが関係する需給調整ユースケースを実行する。アクタごとに割り当てられた需給調整ゲートウェイ1のそれぞれに、需給調整ユースケースで定義されている各アクタのユースケースを入力する。例えば、図2の例では、DR(Demand Response)イベントに関するユースケースとして、供給事業者とアグリゲータの間で発動予告・依頼の送受信及び確認を行うユースケース、アグリゲータと需要家の間で発動依頼を送受信するユースケースが含まれている。また、レポートに関するユースケースとして、需要家とアグリゲータの間でDR実行により抑制できた量を送受信するユースケース、アグリゲータと供給事業者との間で実績を報告するユースケースが含まれている。なお、ここでは需給調整全体のユースケースを需給調整ユースケースと称し、アクタそれぞれのユースケースを単にユースケースと称した。
【0024】
図2のアグリゲータは、供給事業者から需給調整の依頼を受けるとともに、需要家に対して需給調整を依頼する。アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1には、需給調整の依頼を受けるユースケースと需給調整を依頼するユースケースが入力される。アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1に入力されたこれらのユースケース同士は関連付けられ、連携して動作する。具体的には、アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1が供給事業者から発動予告・依頼を受信すると、供給事業者とアグリゲータ間のユースケースに従って発動予告・依頼の確認を返信するとともに、アグリゲータと需要家間のユースケースに従って発動依頼を送信する。
【0025】
次に、需給調整ゲートウェイについて説明する。図3は、需給調整ゲートウェイの構成を示す機能ブロック図である。
【0026】
図3に示す需給調整ゲートウェイ1は、ユースケーステンプレートエンジン11、ユースケースフローエンジン12、プロトコルフレームワーク13、およびAPI処理部14を備える。需給調整ゲートウェイ1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは需給調整ゲートウェイ1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0027】
ユースケーステンプレートエンジン11は、ユースケース入力画面を提示して需給調整に必要なパラメータ群とメッセージの情報などを入力し、送受信されるメッセージに関する情報と状態遷移の情報などで構成されるユースケース定義情報を生成してユースケース定義データベース111に格納する。ユースケースの入力と生成されるユースケース定義情報については後述する。
【0028】
ユースケースフローエンジン12は、ユースケース定義データベース111からユースケース定義情報を読み出して実行オブジェクトのインスタンスを作成して起動し、ユースケース実行データベース121で状態を管理する。ユースケースフローエンジン12は、ユースケース定義情報に基づいて動作し、デマンドレスポンスプロトコルの処理をプロトコルフレームワーク13に依頼し、他の需給調整ゲートウェイ1とのデータフローを開始する。例えば、ユースケース定義情報に事前予告のメッセージを送信することが含まれていた場合、事前予告のメッセージに対応するデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを生成し、必要な情報をユースケース定義情報から取得して生成したメッセージに載せてプロトコルフレームワーク13に渡す。また、ユースケースフローエンジン12は、API処理部14からの要求に応じて状態遷移したり、状態情報等をAPI処理部14に返す。
【0029】
プロトコルフレームワーク13は、イベント処理部131及びレポート処理部132を備え、対向する需給調整ゲートウェイ1との間でデマンドレスポンスプロトコルの処理を行う。イベント処理部131は、需給調整の要請などのイベントに関する処理を行い、レポート処理部132は、計量などのレポートに関する処理を行う。
【0030】
API処理部14は、ユースケースフローエンジン12を制御するためのAPIを外部アプリケーション(xEMS等)に提供し、APIに従ってユースケースフローエンジン12を制御する。本実施の形態では、APIをWebAPIとして提供し、クラウド上に需給調整ゲートウェイ1を配置することで、外部アプリケーションはユースケースに依存するアプリケーション処理の実装と、デマンドレスポンスプロトコルの実装から解放される。
【0031】
次に、ユースケースの入力と生成されるユースケース定義情報について説明する。
【0032】
ユースケーステンプレートエンジン11に入力するユースケースの種類は、需給調整の発動に関するイベントとエネルギーの使用量や抑制量の報告に関するレポートの2種類に大別される。
【0033】
図4に、イベントのユースケースを登録するための情報を入力する画面の例を示す。同図の画面では、開始・終了日時、依頼先、種別(図4ではイベント)などの情報と、需給調整を依頼するメッセージに関する情報を入力することが可能である。依頼先のグループとは、複数のアクタをまとめたものであり、複数のアクタに対してまとめて需給調整を依頼するときに指定する。
【0034】
需給調整を依頼するメッセージに関する情報として、イベント種別(抑制量や価格など需給調整を依頼する方法の種別)、イベント種別に応じた必要な情報、および受諾応答要求の有無を入力することができる。受諾応答要求の有無は、応答メッセージが返信されるか否かを示す。
【0035】
また、需給調整を依頼するメッセージに先立って送信する事前予告のメッセージに関する情報もここで入力できる。
【0036】
需給調整を依頼するメッセージや事前予告のメッセージは画面右側の追加ボタン、削除ボタンで増減できる。例えば、アグリゲータと需要家との間で、需給調整の依頼の前に2回以上事前予告を送信する契約をしていた場合は、事前予告のメッセージの追加ボタンを操作し、送信される事前予告のメッセージを増やす。あるいは、事前予告が不要の契約をしていた場合は、事前予告のメッセージの削除ボタンを操作して事前予告のメッセージを削除する。
【0037】
図4で必要な情報を入力し、画面下側の登録ボタンを操作することで、ユースケーステンプレートエンジン11は、ユースケース定義情報を生成してユースケース定義データベース111に格納する。ユースケースフローエンジン12がこのユースケース定義情報を読み出して実行オブジェクトのインスタンスを作成して起動することで、デマンドレスポンスプロトコルを用いた需給調整の依頼が行われる。
【0038】
図4の画面を利用して入力されたユースケースの具体例について説明する。
【0039】
例えば、需給調整を依頼するメッセージについて、受諾応答要求を「あり」、前日に事前予告のメッセージが必要で、事前予告のメッセージについても受諾応答要求を「あり」とした場合、図5に示すような、需給調整の発動の前日に事前予告のメッセージと応答メッセージが送受信され、需給調整の発動当日に需給調整を依頼するメッセージと応答メッセージが送受信されるシーケンスに従って状態遷移するユースケース定義情報が生成され、ユースケース定義データベース111に格納される。ユースケース定義情報には、各メッセージに記載されるパラメータも含まれる。なお、ここでのメッセージはデマンドレスポンスプロトコルで規定されたメッセージではなく、事前予告のメッセージ、需給調整依頼のメッセージなどより一般的に表現したメッセージである。
【0040】
別の例として、需給調整を依頼するメッセージについて、受諾応答要求を「なし」、事前予告のメッセージを不要とした場合、図6に示すような、需給調整の発動当日に需給調整を依頼するメッセージを送信するだけのユースケース定義情報が生成されて、ユースケース定義データベース111に格納される。
【0041】
レポートのユースケースもイベントのユースケースと同様に情報を入力して登録する。図7に、レポートのユースケースを登録するための情報を入力する画面の例を示す。同図の画面では、開始・終了日時、依頼先、種別(図7ではレポート)、収集周期などの情報と、レポートを送信するメッセージに関する情報を入力することが可能である。レポートを送信するメッセージに関する情報として、レポートを送信する形式(例えば、抑制電力量、電力使用量など)を指定するレポート種別を入力することができる。送信するメッセージは、追加ボタン、削除ボタンで増減できる。
【0042】
図7で必要な情報を入力し、画面下側の登録ボタンを操作することで、ユースケーステンプレートエンジン11は、ユースケース定義情報を生成してユースケース定義データベース111に格納する。ユースケースフローエンジン12がこのユースケース定義情報を読み出して実行オブジェクトのインスタンスを作成して起動することで、デマンドレスポンスプロトコルを用いたレポートの送信が行われる。
【0043】
次に、需給調整ゲートウェイ1の動作について説明する。
【0044】
図8は、図5で示したユースケースを需給調整ゲートウェイ1が実行する例を示したシーケンス図である。
【0045】
まず、アグリゲータ、需要家のxEMSがAPIにより自身の需給調整ゲートウェイ1A,1Bにユースケースの実行を指示する(ステップS101,S301)。アグリゲータ、需要家のxEMSと需給調整ゲートウェイ1A,1B間は需給調整ゲートウェイ1A,1Bが提供するAPIによるAPI通信で行われる。図9に、APIの例を示す。APIは、需給調整を指示する側(TN)、指示を受ける側(EN)に大別される。APIのパラメータにはユースケースを指定するパラメータが含まれる。また、APIのパラメータはユースケースの定義内容に依存しない。
【0046】
需給調整ゲートウェイ1A,1Bのユースケースフローエンジン12は、ユースケース定義情報の実行オブジェクトのインスタンスを作成して起動すると、需要家の需給調整ゲートウェイ1Bは、アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1Aに登録要求を送信し、登録要求受諾応答を受信する(S201)。これ以降、需給調整ゲートウェイ1A,1B間ではデマンドレスポンスプロトコルに従った通信が行われる。
【0047】
需給調整の発動依頼の前日になると、需給調整ゲートウェイ1Aは、ユースケース定義情報に基づき、デマンドレスポンスプロトコルを用いて発動予告を需要家の需給調整ゲートウェイ1Bに送信する(ステップS202)。図8のステップS202では、需給調整ゲートウェイ1BがoadrPollメッセージを需給調整ゲートウェイ1Aに送信し、需給調整ゲートウェイ1Aから発動予告の内容を含むoadrDistributeEventメッセージを受信している。需給調整ゲートウェイ1A,1B間で送受信するメッセージの内容や条件等は、ユースケース定義情報内において定義されている。例えば、図8の例では、需給調整ゲートウェイ1BがoadrPollメッセージにより需給調整ゲートウェイ1Aに定期的にメッセージを問い合わせることがユースケース定義情報内に定義されている。ユースケースフローエンジン12は、ユースケース定義情報に基づいてデマンドレスポンスプロトコルのメッセージを作成し、プロトコルフレームワーク13にデマンドレスポンスプロトコルの処理を依頼する。ユースケースフローエンジン12は、メッセージの送受信やタイマーなどに応じて状態を遷移させる。
【0048】
需要家のxEMSはAPIを用いて自身の需給調整ゲートウェイ1Bから発動予告を取得し(ステップS302)、需給調整を受諾する旨を示す応答をAPIにより需給調整ゲートウェイ1Bに通知する(ステップS303)。
【0049】
需給調整ゲートウェイ1Bは、需給調整ゲートウェイ1Aに発動予告への応答を需給調整ゲートウェイ1Aに送信する(ステップS203)。アグリゲータのxEMSはAPIを用いて需給調整ゲートウェイ1Aから発動予告に対する応答を取得する(ステップS102)。
【0050】
発動日当日になると、需給調整ゲートウェイ1Aは、発動依頼を需給調整ゲートウェイ1Bに送信する(ステップS204)。
【0051】
需要家のxEMSは需給調整ゲートウェイ1Bから発動依頼を取得して応答を返す(ステップS304,S305)。需給調整ゲートウェイ1Bは、発動依頼への応答を需給調整ゲートウェイ1Aに送信する(ステップS205)。アグリゲータのxEMSは需給調整ゲートウェイ1Aから発動依頼に対する応答を取得する(ステップS103)。
【0052】
以上の処理により、需給調整が開始される。
【0053】
需給調整開始後は、アグリゲータと需要家のxEMSは状態取得APIを用いて需給調整の状態を取得し(ステップS104,S306)、需給調整が終了すると、メッセージ履歴APIを用いてメッセージの履歴を取得する(ステップS105,S307)。
【0054】
なお、図8では、アグリゲータと需要家のxEMSが需給調整ゲートウェイ1A,1BのAPIを利用して需給調整を行ったが、オペレータが需給調整ゲートウェイ1Aにアクセスして需給調整を依頼するユースケースを起動し、オペレータが需給調整ゲートウェイ1Bにアクセスして依頼内容を確認してxEMSに依頼内容に応じた需給調整を指示してもよい。
【0055】
次に、アグリゲータの需給調整ゲートウェイのユースケースについて説明する。
【0056】
アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1は、上位の需給調整ゲートウェイ1から需給調整の依頼を受ける処理と、下位の需給調整ゲートウェイ1に対して需給調整を依頼する処理を行う。アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1において、上位の需給調整ゲートウェイ1からメッセージを受信した際に、下位の需給調整ゲートウェイ1との間のメッセージの送受信のために起動するユースケース定義情報を指定しておく。
【0057】
図10に示す例では、アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1において、ユースケース100にユースケース200を指定しておく。アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1がユースケース100のメッセージを受信したときには、ユースケース200を実行する。アグリゲータの需給調整ゲートウェイ1は、ユースケース100とユースケース200を連携させて動作させて、上位の供給事業者の需給調整ゲートウェイ1から受信したメッセージを下位の需要家の需給調整ゲートウェイ1に転送し、下位の需要家の需給調整ゲートウェイ1から受信したメッセージを上位の供給事業者の需給調整ゲートウェイ1に転送する。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、需給調整ゲートウェイ1がユースケーステンプレートエンジン11、ユースケースフローエンジン12、プロトコルフレームワーク13を備え、ユースケーステンプレートエンジン11が、ユースケース入力画面で入力された情報から、送受信されるメッセージに関する情報と状態遷移の情報などで構成されるユースケース定義情報を生成してユースケース定義データベース111に格納し、ユースケースフローエンジン12が、ユースケース定義データベース111からユースケース定義情報を読み出して、ユースケース定義情報に従って動作するインスタンスを生成して起動し、プロトコルフレームワーク13が、ユースケースフローエンジン12からの制御によりデマンドレスポンスプロトコルを処理することで、ユースケーステンプレートエンジン11のユースケース入力画面に情報を入力するだけで、デマンドレスポンスプロトコルによる需給調整を行うことができ、需給調整ゲートウェイ1の提供するAPIをアクタが持つ既存のxEMSが利用することで、需給調整の機能を取り込むことが可能となる。ユースケースの修正・追加は、ユースケーステンプレートエンジン11のユースケース入力画面に情報を入力するだけでよいので、ユースケースの修正・追加に対するシステムの修正の最小化でき、デマンドレスポンスプロトコルの依存性を最小化できる。
【0059】
また、デマンドレスポンスプロトコルの標準仕様を需給調整ゲートウェイ1により担保するため、非機能要件の検討・実装を最小化できる。
【符号の説明】
【0060】
1…需給調整ゲートウェイ
11…ユースケーステンプレートエンジン
111…ユースケース定義データベース
12…ユースケースフローエンジン
121…ユースケース実行データベース
13…プロトコルフレームワーク
131…イベント処理部
132…レポート処理部
14…API処理部
100,200…ユースケース
図1
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図10