(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン(C)が、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、低密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダイシングテープ基材用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物について詳細に説明すると共に、ダイシングテープ基材についても詳述する。
なお、以下、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)を、単に「共重合体(A)」と称することがある。
なお、本明細書中において、数値範囲を表す「〜」の表記は、数値範囲の下限値と上限値の値を含む意味である。
また、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の双方を包含して用いられる表記であり、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を包含して用いられる表記である。
【0018】
<ダイシングテープ基材用樹脂組成物>
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)と、ポリオレフィン(C)と、を含んでいる。
ダイシングテープ基材用樹脂組成物が上記構成であることで、ダイシングによる切屑が生じ難く、耐熱性および拡張性に優れる。そのダイシングテープ基材用樹脂組成物の成形により得られるダイシングテープ基材を切断しても切屑が生じ難い上、高耐熱性および高拡張性も両立する。
なお、以下、「(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)」を「特定多元共重合体」とも称する。
また、「エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、多元共重合体(B)、及びポリオレフィン(C)の全質量に対する(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率」を、単に「G濃度」とも称する。
【0019】
〔エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)〕
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体の少なくとも一種を含む。
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレンと、α,β−不飽和カルボン酸とが共重合した少なくとも二元の共重合体であり、さらに第3の共重合成分が共重合した三元以上の多元共重合体であってもよい。なお、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体は、一種単独で用いてもよく、二種以上のエチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体を併用してもよい。ただし、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)は、多元共重合体(B)〔特定多元共重合体〕とは異なる構造である。
【0020】
エチレン・不飽和カルボン酸二元共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の炭素数4〜8の不飽和カルボン酸などが挙げられる。特に、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0021】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)が三元以上の多元共重合体であるとき、多元共重合体を形成するモノマー(第3の共重合成分)としては、エチレン及び該エチレンと共重合可能な不飽和カルボン酸のほかに、第3の共重合成分として、不飽和カルボン酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、不飽和炭化水素(例えば、プロピレン、ブテン、1,3−ブタジエン、ペンテン、1,3−ペンタジエン、1−ヘキセン等)、ビニル硫酸やビニル硝酸等の酸化物、ハロゲン化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル等)、ビニル基含有1,2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられ、(A)は、これらの群より選択される少なくとも1種の共重合成分で共重合されていてもよい。
中でも、前記第3の共重合成分としては、不飽和カルボン酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1〜4)がより好ましい。
【0022】
共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、二元共重合体、三元共重合体のいずれでもよい。中でも、共重合体としては、グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルとの反応性の点及び工業的に入手可能な点で、二元ランダム共重合体、三元ランダム共重合体、二元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは三元ランダム共重合体のグラフト共重合体が好ましく、より好ましくは二元ランダム共重合体または三元ランダム共重合体である。
また、さらに二元共重合体と三元共重合体を混合して使用してもよい。
【0023】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体などの二元共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体などの三元共重合体が挙げられる。また、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体として上市されている市販品を用いてもよく、該市販品として、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製のニュクレルシリーズ(登録商標)等を使用することができる。
【0024】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体中における、α,β−不飽和カルボン酸に由来の構成単位の含有比率(質量比)は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜20質量%である。α,β−不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有比率が1質量%以上、好ましくは5質量%以上であると、均一な拡張性を確保する点で有利である。また、α,β−不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有比率が、20質量%以下であると、グリシジル化合物との反応が強くなり過ぎず、樹脂粘度の急激な上昇を抑えて成形性を保持でき、また組成物中のゲル発生を防ぐことができる。
【0025】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体中における、α,β−不飽和カルボン酸エステルの共重合比(質量比)は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜15質量%である。α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、拡張性の観点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上であることが好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有比率は、ブロッキング及び融着を防ぐ観点からは、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体のメルトフローレート(MFR)は、2g/10分〜500g/10分の範囲が好ましく、特に2g/10分〜150g/10分、更には2g/10分〜120g/10分が好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であると、フィルム成形性の点で有利である。
なお、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。
【0027】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)の含有量は、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対して、40質量%〜99質量%であることが好ましく、60質量%〜99質量%であることがより好ましい。さらに好ましくは、65質量%〜93.5質量%である。エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)の含有比率が40質量%以上、特に65質量%以上であることは、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)がダイシングテープ基材用樹脂組成物の主成分として含有されていることを示す。また、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)の含有比率が99質量%以下、特に93.5質量%以下であると、ダイシング時の切り屑の発生を抑制しやすい。また、さらに好ましくは、75質量%〜93.5質量%である。
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)のダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対する含有量は、75質量%〜89質量%であることが特に好ましく、75質量%〜85質量%であることが最も好ましい。
【0028】
〔多元共重合体(B)〕
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、多元共重合体(B)の少なくとも一種を含有する。
ダイシングテープ基材用樹脂組成物が多元共重合体(B)を含有することで、切屑抑制に優れるとともに、より優れた耐熱性が得られる。
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)を、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対して、0質量%を超えて20質量%以下で含有することが好ましく、0.5質量%〜7質量%で含有することがさらに好ましい。
【0029】
多元共重合体(B)は、(b1)α−オレフィン(好ましくはエチレン)と、(b2)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルと、を少なくとも共重合させた共重合体であり、(b1)由来の構成単位(i)及び(b2)由来の構成単位(ii)のみを有する場合は、二元共重合体である。
【0030】
多元共重合体(B)は、必要に応じて、本発明の目的が阻害されない範囲で、(b1)と(b2)とのほかに、さらに他の1種または複数種の共重合体成分を共重合させて得られた三元または四元以上の共重合体であってもよい。
多元共重合体(B)が有し得る他の共重合成分は特に制限されず、例えば、(b3)ビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0031】
多元共重合体(B)は、(b1)由来の構成単位(i)及び(b2)由来の構成単位(ii)に加え、さらに(b3)由来の構成単位(iii)、例えばビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルを有する三元共重合体であることが好ましい。
【0032】
多元共重合体(B)の共重合成分である(b1)「α−オレフィン」としては、炭素数2〜10のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−オクテンなど)が挙げられ、中でもエチレン、プロピレンが好ましい。
【0033】
多元共重合体(B)の共重合成分である(b2)「グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテル」としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。この中でもグリシジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0034】
多元共重合体(B)の好ましい共重合成分である(b3)「ビニルエステル」としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0035】
多元共重合体(B)の好ましい共重合成分である(b3)「不飽和カルボン酸エステル」としては、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)におけるα,β−不飽和カルボン酸のエステルが挙げられ、好ましくは前記α,β−不飽和カルボン酸の炭素数2〜5の低級アルキルエステル、更に好ましくは前記α,β−不飽和カルボン酸のイソブチルやn−ブチルなどの炭素数4のアルキルエステルである。
不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等のエステル化合物が挙げられる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチルなどのアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル(炭素数2〜5)が好ましい。更には、アクリル酸又はメタクリル酸のn−ブチルエステルやイソブチルエステルが好ましく、中でも、アクリル酸の炭素数4のアルキルエステルが好ましく、特にイソブチルエステルが好ましい。
【0036】
多元共重合体(B)中における(i)α−オレフィン由来の構成単位の比率(質量比)は、多元共重合体(B)の全質量に対して、40質量%〜99質量%が好ましく、より好ましくは50質量%〜98質量%である。
【0037】
多元共重合体(B)中における(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の比率(質量比)は、多元共重合体(B)の全質量に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜15質量%である。(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテル由来の構成単位の比率が0.5質量%以上であると、耐熱性及び切り屑抑制の改善効果が大きく、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテル由来の構成単位の比率が20質量%以下であると、不飽和カルボン酸との反応が強くなり過ぎず、樹脂粘度の急激な上昇を抑えて成形性を保持でき、また組成物中のゲル発生を防ぐことができる。
【0038】
さらに、本発明においては、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、特定多元共重合体(B)、及びポリオレフィン(C)の全質量に対する(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率(G濃度)が0質量%を超えて1.0質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0質量%を超えて0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.03質量%〜0.36質量%であり、さらに好ましくは0.12質量%〜0.36質量%であり、さらに好ましくは0.14質量%〜0.34質量%であり、特に好ましくは0.14質量%〜0.34質量%であり、最も好ましくは0.18質量%〜0.30質量%である。
G濃度が0質量%を超えると切り屑の発生を抑制する効果が向上し、1.0質量%以下であると、特定多元共重合体(B)と不飽和カルボン酸との反応が適度になり、樹脂粘度が適度に上昇して良好な成形性を維持しやすくなる、または、組成物中でのゲル発生を抑制しやすくなる。
【0039】
多元共重合体(B)中における、(iii)ビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の比率(質量比)は、多元共重合体(B)の全質量に対して、0質量%〜49.5質量%が好ましく、より好ましくは0質量%〜40質量%である。
【0040】
多元共重合体(B)が、(b3)由来の構成単位(iii)を有する三元共重合体であるとき、多元共重合体(B)中における、(iii)ビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の比率(質量比)は、多元共重合体(B)の全質量に対して、1質量%〜40質量%が好ましい。(iii)ビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の比率が40質量%以下であると、適度な柔軟性が得られると共に、ベトツキを抑えて良好なブロッキング性、及び耐融着性が得られる。
【0041】
多元共重合体(B)は、ランダム共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。一般には、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体との反応の均一性からランダム共重合体が好ましい。このようなランダム共重合体は、例えば、高温、高圧下のラジカル共重合によって得られる。
【0042】
多元共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、0.01g/10分〜1000g/10分の範囲が好ましく、特に0.1g/10分〜200g/10分の範囲が好ましい。メルトフローレートが前記範囲内であると、架橋度合が向上し、耐熱性及び切り屑抑制の点で有利である。
なお、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。
多元共重合体(B)の数平均分子量(Mn)は7000〜100000の範囲が好ましく、更に8000〜50000の範囲が好ましく、特に10000〜30000の範囲が好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると加工性及び耐熱性に優れる。
また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters社製、150C/GPC)を用いて下記の条件で測定し、ポリスチレン換算で決定した値である。
・カラム:東ソー社製TSKgel GMHHR−H(S)HT×2本と東ソー社製TSKgel G2000HHR(粒子径20μm)HT×1本を直列に接続
・溶離液:オルトジクロロベンゼン(o−DCB)
・流速 :1.0ml/min
・検出器:RI
・カラム恒温槽温度:135℃
【0043】
多元共重合体(B)の含有量は、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対して、0質量%を超えて20質量%以下であることが好ましく、0質量%を超えて10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%〜7質量%であることがさらに好ましい。(B)の多元共重合体含有比率が、0質量%を超えている、特に0.5質量%以上であると、優れた切屑抑制を発現し、また、耐熱性により優れる。一方、20質量%以下、特に7質量%以下であると、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体との反応を適度に制御し、良好な粘度が維持され、組成物中におけるゲルの発生が抑制する効果により優れたものとなる。さらに好ましくは0.5質量%〜6質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%〜5質量%であり、特に好ましくは1質量%〜5質量%であることが好ましく、2質量%〜5質量%であることが最も好ましい。
【0044】
多元共重合体(B)のダイシングテープ基材用樹脂組成物中における含有量は、1質量%〜7質量%であることが好ましく、2質量%〜6質量%であることがより好ましい。
【0045】
〔ポリオレフィン(C)〕
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、ポリオレフィンの少なくとも1種を含む。ポリオレフィンの含有量においては、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対して1質量%〜40質量%含有することが好ましく、6質量%〜28質量%含有することがさらに好ましい。
ポリオレフィンが含まれることで、他成分の分散性が向上し、耐熱性の良好なダイシングテープ基材用樹脂組成物が得られる。
【0046】
ポリオレフィンとしては、炭素数2〜10のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−オクテンなど)の単独重合体または共重合体などが挙げられ、各種触媒を使用して種々の方法で製造されたものを使用することができる。より具体的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
【0047】
前記ポリエチレンについて、好ましいのは低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であり、線状低密度ポリエチレンの中で特に好ましいのはメタロセン触媒のような均一系触媒で製造された線状低密度ポリエチレンである。また、前記ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとの共重合によるエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数5〜10)とのランダム、ブロック、交互共重合体などが挙げられる。好ましくは、単独共重合体とランダム共重合体が好適である。
【0048】
前記ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、及びプロピレンと他のモノマーとの共重合によるプロピレン系共重合体から選ばれる重合体が挙げられる。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとα−オレフィン(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数4〜8)とのランダム、ブロック、交互共重合体などが挙げられる。好ましくは、単独共重合体とランダム共重合体が好適である。
【0049】
上記の中でも、ポリオレフィンとしては、耐熱性の点で、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0050】
前記ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分〜100g/10分が好ましく、特に好ましくは1g/10分〜80g/10分である。
前記ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分〜100g/10分が好ましく、特に好ましくは1g/10分〜50g/10分であり、更には1g/10分〜20g/10分が好ましい。
なお、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により230℃、荷重2160gにて測定される値である。
【0051】
前記ポリエチレンの密度は、880kg/m
3〜960kg/m
3が好ましく、900kg/m
3〜940kg/m
3がより好ましい。
前記ポリプロピレンの密度は、870kg/m
3〜930kg/m
3が好ましく、880kg/m
3〜920kg/m
3がより好ましい。
【0052】
ポリオレフィン(C)の含有量は、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対して、質量基準で1質量%〜40質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましい。さらに、6質量%〜28質量%であることが好ましい。ポリオレフィン(C)の含有比率が、1質量%以上、特に6質量%以上であると耐熱性がより向上し、40質量%以下、特に28質量%以下であると他成分との分散性がより向上する。さらに含有量として好ましくは6質量%〜28質量%であり、特に6質量%〜27質量%であることが好ましく、最も好ましくは、6質量%〜20質量%である。
【0053】
ポリオレフィン(C)は、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中、7質量%〜28質量%であることが好ましく、8質量%〜27質量%であることがより好ましい。
【0054】
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物として好ましい共重合体の構成と含有量はエチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)40質量%〜99質量%と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)0質量%を超えて20質量%以下と、ポリオレフィン(C)1質量%〜40質量%と、を含み(但し、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、および前記ポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、及び前記ポリオレフィン(C)の全質量に対する前記(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率が0質量%を超えて1.0質量%以下であるダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
さらに好ましくは、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)60質量%〜99質量%と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)0質量%を超えて10質量%以下と、ポリオレフィン(C)1質量%〜30質量%と、を含み(但し、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、および前記ポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、及び前記ポリオレフィン(C)の全質量に対する前記(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率が0質量%を超えて1.0質量%以下であるダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
特に好ましくは、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)65質量%〜93.5質量%と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)0.5質量%〜7質量%と、ポリオレフィン(C)6質量%〜28質量%と、を含み(但し、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、および前記ポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、及び前記ポリオレフィン(C)の全質量に対する前記(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率が0.12質量%〜0.36質量%であるダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
最も好ましくは、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)75質量%〜93.5質量%と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)0.5質量%〜5質量%と、ポリオレフィン(C)6質量%〜20質量%と、を含み(但し、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、および前記ポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)、前記エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、前記多元共重合体(B)、及び前記ポリオレフィン(C)の全質量に対する前記(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率が0.12質量%〜0.36質量%であるダイシングテープ基材用樹脂組成物である。
【0055】
上記の中でも、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)の含有比率が75質量%〜89質量%であり、多元共重合体(B)の含有比率が1質量%〜5質量%であり、ポリオレフィン(C)の含有比率が7質量%〜28質量%である場合がより好ましい(但し共重合体(A)、多元共重合体(B)およびポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)。
【0056】
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、多元共重合体(B)、及びポリオレフィン(C)を溶融混合することによって得ることができる。溶融混合に際しては、スクリュー押出機、ロールミキサー、バンバリミキサー等の通常使用される混合装置を用いることができる。また、溶融混合は、前記(A)〜(C)の3成分を同時に配合して行なってもよい。中でも好ましくは、多元共重合体(B)とポリオレフィン(C)とを予め溶融混合し、この溶融混合により得られた溶融混合物と(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体とを更に溶融混合する方法である。この方法によると、多元共重合体(B)がポリオレフィン(C)に希釈されることにより、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体との反応が局部的に起こらず、均一に進行するため、優れた諸性質を有する組成物を品質安定性よく製造できるという利点がある。一方、はじめに(A)エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と多元共重合体(B)とを溶融混合した後、ポリオレフィン(C)を混合するというような方法によると、反応が局部的に進行して塊状物(ゲル)が発生するおそれがある。
また、前記(A)〜(C)の3成分を同時に溶融混合する場合には、単軸押出機または二軸押出機を用いて溶融混合することが望ましい。
【0057】
前記(A)〜(C)の3成分を含む本願のダイシングテープ基材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分〜3.0g/10分の範囲が好ましく、0.1g/10分〜2.5g/10分の範囲がより好ましく、0.1g/10分〜2.0g/10分の範囲がさらに好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分以上であることで、成形加工性に優れ、3.0g/10分以下であることで、切り屑の発生を抑制性の低下を防止する。またMFRが上記範囲であることで、アイオノマーを含む樹脂組成物と比較して、樹脂組成物をロールにより加工する時に、樹脂組成物がロールから離れる離ロール性が良好である。
なお、MFRは、JIS K7210−1999に準拠した方法により190℃、荷重2160gにて測定される値である。
【0058】
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内において、他の重合体や各種添加剤を含有することができる。
【0059】
[他の樹脂(D)]
前記他の重合体の例として、既述のエチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、多元共重合体(B)、及びポリオレフィン(C)以外に、従来公知の樹脂を用いることができる。
例えば、高密度エチレン系樹脂、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α−オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル共重合体などのオレフィン系樹脂、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α−オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル2元共重合体、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル酸系樹脂、メタアクリル酸系樹脂、環状オレフィン(共)重合体、α−オレフィン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体、エチレン・α−オレフィン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体、スチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・共役ジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・エチレン・α−オレフィン・共役ポリエン・スチレン共重合体、メタアクリル酸・スチレン共重合体、エチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリエステルカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、1,2ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、液晶性ポリエステル、ポリ乳酸などを挙げることができる。
このような他の重合体は、前記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、例えば20質量部以下の割合で配合することができる。
また、このような他の樹脂を混合させて配合させてもよい。
【0060】
ダイシングテープ基材用樹脂組成物に添加する他の共重合体として、上記に挙げた樹脂のアイオノマーも、アイオノマー以外の他の樹脂と共に用いることができる。アイオノマーを含有することにより、加工性や拡張性を維持しつつ、耐熱性や切削屑の糸状化を防ぐ効果が向上する。
エチレン・不飽和カルボン酸2元共重合体のアイオノマー、並びにエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル3元共重合体のアイオノマーは、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%〜35質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、特に好ましくは5質量%〜20質量%の範囲である。不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有割合が1質量%以上であることは、この構成単位を積極的に含むことを意味する。
また、エチレンから導かれる構成単位の含有割合としては、65質量%〜99質量%の範囲が好ましく、より好ましくは80質量%〜95質量%以下の範囲である。
【0061】
前記2元共重合体又は前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどが挙げられ、特に、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0062】
前記3元共重合体を構成する不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル部位の好ましい炭素数は1〜4)がより好ましい。
【0063】
アイオノマーのベースポリマーとなる2元共重合体又は3元共重合体中のカルボキシル基を中和する金属イオンとしては、マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム等のイオンが好ましく、中でも亜鉛イオンがより好ましい。また、これらの金属イオンを混合して中和に用いてもよい。アイオノマーは、2元共重合体中のカルボキシル基の100%以下の範囲で前記金属イオンにより中和され、その中和度は90%以下が好ましく、より好ましくは20%〜85%である。
【0064】
アイオノマーのベースポリマーとなる共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいが、2元ランダム共重合体、3元ランダム共重合体、2元ランダム共重合体のグラフト共重合体あるいは3元ランダム共重合体のグラフト共重合体を使用するのが好ましく、より好ましくは2元ランダム共重合体または3元ランダム共重合体である。
【0065】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましい。
エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル等が好適に挙げられる。
【0066】
ダイシングテープ基材用樹脂組成物としては、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)と、ポリオレフィン(C)と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体のアイオノマー(D’)とを含むことが好ましく、エチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体(A)と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)と、ポリオレフィン(C)と、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー又はエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のアイオノマーと、を含むことがより好ましい。
また、ダイシングテープ基材用樹脂組成物の具体例としては、エチレン・メタクリル酸イソブチル共重合体(A)と、エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸nブチル共重合体(B)と、ホモポリプロピレン(C)と、エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー又はエチレン・アクリル酸共重合体のアイオノマーと、を含む組成物、あるいはエチレン・メタクリル酸共重合体(A)と、エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸nブチル共重合体(B)と、ホモポリプロピレン(C)と、エチレン・メタクリル酸共重合体又はエチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチルエステル共重合体のアイオノマーと、を含む組成物を挙げることができる。
【0067】
アイオノマー(D’)としては、前記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、0質量部を超えて20質量部以下、好ましくは0質量部を超えて15質量部以下、さらに好ましくは1質量部〜15質量部、最も好ましくは3質量部〜7質量部の割合で配合することができる。
また、ダイシングテープ基材用樹脂組成物の(A)〜(C)及び(D’)の含有比率としては、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)65質量%〜93.5質量%と、(i)α−オレフィン由来の構成単位、及び、(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位を少なくとも有する多元共重合体(B)0.5質量%〜7質量%と、ポリオレフィン(C)6質量%〜28質量%と、を含み(但し、共重合体(A)、多元共重合体(B)、およびポリオレフィン(C)の合計を100質量%とする)、かつ、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸系共重合体(A)、多元共重合体(B)、及びポリオレフィン(C)の組成物全質量に対する(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率が0.12質量%〜0.36質量%であり、さらにアイオノマー(D’)を組成物全質量に対して1質量%〜15質量%含むことが好ましい。
【0068】
[各種添加剤]
前記添加剤の一例として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0069】
帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤や高分子型帯電防止剤が挙げられるが、高分子型帯電防止剤が好ましく、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベタイン等が挙げられる。
更に、ポリエーテル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルアミド又はポリエーテルエステルアミドの無機プロトン酸の塩等を挙げることができる。無機プロトン酸の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属、亜鉛塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0070】
ポリエーテルエステルアミドとしては、ポリアミドブロックとポリオキシアルキレングリコールブロックとから構成され、これらブロックがエステル結合されたブロック共重合体が挙げられる。
ポリエーテルエステルアミドにおけるポリアミドブロックは、例えば、ジカルボン酸(例:蓚酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)と、ジアミン(例:エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メチレンビス(4−アミノシクロヘキサン)、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等)との重縮合、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタム等のラクタムの開環重合、6−アミノカプロン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重縮合、あるいは前記ラクタムとジカルボン酸とジアミンとの共重合等により得られるものである。このようなポリアミドセグメントは、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/610、ナイロン66/12、ナイロン6/66/610などであり、特にナイロン11、ナイロン12などが好ましい。ポリアミドブロックの分子量は、例えば400〜5000程度である。
また、ポリエーテルブロックとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールあるいはこれらの混合物などが例示される。これらの分子量は、例えば400〜6000程度、更には600〜5000程度がよい。
【0071】
帯電防止剤は、上市されている市販品を用いてもよく、具体例として、BASFジャパン社製のイルガスタットP−16、同P−18、同P−20、同P−22等、三洋化成工業社製のペレスタット230、ペレスタットHC250、ペレスタット300、ペレスタット2450、ペレクトロンPVH、三井・デュポン ポリケミカル社製のエンティラMK400、MK440、SD100等が挙げられる。
【0072】
前記帯電防止剤は、(A)、(B)及び(C)を溶融混合する際に、所定量を溶融混合する、又は(A)、(B)及び(C)樹脂組成物に、所定量の帯電防止剤をドライブレンドし、これを溶融混合することができる。
【0073】
前記帯電防止剤を含有する場合、前記帯電防止剤のフィルム基材中における含有量としては、前記(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対し、5質量部を越えて30質量部が好ましく、5質量部を越えて20質量部がより好ましい。
【0074】
また、耐熱性向上の観点から、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、必要に応じて、電子線照射を行なうことで架橋反応が促進されてもよい。
【0075】
<ダイシングテープ基材>
本発明のダイシングテープ基材は、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を用いて成形される。本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物は、例えば、従来公知のTダイキャスト成形法、Tダイニップ成形法、インフレーション成形法、押出ラミネート法、カレンダー成形法などの各種成形方法で、本発明のダイシングテープ基材を製造することができる。
本発明のダイシングテープ基材は、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を成形して得られるため、ダイシングによる切屑が生じ難く、耐熱性および拡張性に優れる。
【0076】
ダイシングテープ基材の構成は特に限定されず、単層構成であってもよいし、2層以上となる多層構成であってもよい。ダイシングテープ基材を多層構成とする場合、例えば、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を用いて成形されるシートを複数積層した構成であってもよいし、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を用いて成形されるシートに、他の機能性層(例えば、粘着シート等)を積層した構成であってもよい。
ダイシングテープ基材を用いてダイシングテープを構成する場合は、例えば、接着性樹脂等の接着剤を含む接着層と本発明のダイシングテープ基材とを隣接させた構成とすればよい。このとき、ダイシングテープは、ウエハのダイシング時に切り屑が生じにくいように、本発明のダイシングテープ基材が最表層(露出面)となるように構成することが好ましい。
【0077】
ダイシングテープ基材は、さらに、各種基材との接着性を向上させるために、共押出成形機により接着性樹脂との共押出積層体として形成されてもよい。
ダイシングテープ基材表面の接着力を向上させるために、ダイシングテープ基材表面に、例えばコロナ放電処理などの公知の表面処理を施してもよい。
また、耐熱性向上の観点から、本発明のダイシングテープ基材に、必要に応じて、電子線照射を行なうことで架橋反応が促進されてもよい。
【0078】
本発明のダイシングテープ基材に積層可能な層を構成する接着性樹脂は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸アルキルエステル三元共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸アルキルエステル・一酸化炭素共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸グラフト物から選ばれる、単体もしくは任意の複数からなるブレンド物を代表例として挙げることができる。
【0079】
また、本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物の他の押出成形例として、押出コーティング成形機を用い、他の基材の表面に本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を熱接着させることで重層体を形成する方法が挙げられる。このとき、他の基材とダイシングテープ基材とが重層された多層材料が得られる。
上記のような「他の基材」としては、ポリオレフィンフィルム(またはシート)、ポリ塩化ビニルフィルム(またはシート)等が挙げられる。また、「他の基材」は、単層又は多層のいずれの構造を有するものでもよい。
【0080】
本発明のダイシングテープ基材用樹脂組成物を押出コーティング成形機により他の基材の表面に積層する場合、単層でもよく、また各種他の基材との接着性を向上させるために、共押出コーティング成形機により接着性樹脂層を介して形成されてもよい。このような接着性樹脂としては、前述の各種エチレン共重合体、あるいはこれらの不飽和カルボン酸グラフト物から選ばれる、単体もしくは任意の複数からなるブレンド物を代表例として挙げることができる。
【0081】
本発明のダイシングテープ基材の厚みは、拡張性の観点から、150μm以下が好適であり、また分断性の観点から、80μm以上であることが好ましい。
【0082】
本発明のダイシングテープ基材は、ダイシングテープ基材上に粘着層等の接着性層を積層して、ダイシングテープとすることができる。接着性層には、例えば、裏面研磨加工またはダイシング加工の対象となる半導体ウェハが貼着固定される。接着性層の厚さは、粘着剤の種類にもよるが、3μm〜100μmであることが好ましく、3μm〜50μmであることがさらに好ましい。
以下、粘着層を代表して、接着性層について説明する。
【0083】
粘着層とダイシングテープ基材の密着の方法としては、粘着剤を公知の方法、例えばグラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて直接塗布する方法、あるいは剥離シート上に粘着剤を上記公知の方法で塗布して粘着層を設けた後、ダイシングテープ基材の表面層(本発明の樹脂組成物から成形された層)に貼着し粘着層を転写する方法などを用いることができる。
【0084】
粘着層を構成する粘着剤として、従来公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤の例には、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系の粘着剤;放射線硬化型粘着剤;加熱発泡型粘着剤などが含まれる。なかでも、半導体ウエハからの半導体製造用フィルムの剥離性などを考慮すると、粘着層は紫外線硬化型粘着剤を含むことが好ましい。
【0085】
粘着層を構成しうるアクリル系粘着剤の例には、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、および(メタ)アクリル酸エステルと共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどが含まれる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性モノマーの具体例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが含まれる。
【0087】
粘着層を構成しうる紫外線硬化型粘着剤は、特に限定されないが、上記アクリル系粘着剤と、紫外線硬化成分(アクリル系粘着剤のポリマー側鎖に炭素−炭素二重結合を付加しうる成分)と、光重合開始剤とを含有する。さらに、紫外線硬化型接着剤には、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤などを添加してもよい。
【0088】
紫外線硬化型粘着剤に含まれる紫外線硬化成分とは、例えば分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー、またはポリマーである。紫外線効果成分の具体例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル、またそのオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレートなどが含まれる。
【0089】
紫外線硬化型粘着剤に含まれる光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類などが含まれる。光重合開始剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。粘着層が光重合開始剤を含有することで、硬化反応時間又は放射線照射量を抑えて効率よく硬化反応を進行させることができる。
【0090】
紫外線硬化型粘着剤に含まれる架橋剤の例には、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマーなどが含まれる。
【0091】
粘着層の表面には、剥離シートを貼付けることが好ましい。剥離シートを貼付けることで、粘着層の表面を平滑に保つことができる。また、接着性層が積層されたダイシングテープ基材の取り扱いや運搬が容易になるとともに、剥離シート上にラベル加工することも可能となる。
【0092】
剥離シートは、紙、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムなどでありうる。また、剥離シートの粘着層と接する面には、粘着層からの剥離性を高めるために、必要に応じてシリコーン処理やフッ素処理等の離型処理が施されていてもよい。剥離シートの厚みは、通常10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm程度である。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、エチレン単位含有量はエチレン由来の構成単位の含有比率を、メタクリル酸単位含有量はメタクリル酸由来の構成単位の含有比率を、グリシジルメタクリレート単位含有量はグリシジルメタクリレート由来の構成単位の含有比率を、アクリル酸nブチル単位含有量はアクリル酸nブチル由来の構成単位の含有比率を、それぞれ示す。なお、実施例、比較例に用いた原料の組成と物性および得られたシート、フィルムの物性の測定方法は以下の通りである。
【0094】
下記実施例において、下記原材料のうち、(A1)〜(A8)、(B)、(D1)、(D2)、(R1)、(R3)及び(R4)についてのメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1999に準拠して190℃、荷重2160gで測定し、(C1)〜(C2)及び(R2)についてのメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1999に準拠して230℃、荷重2160gで測定した。
また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Waters社製、150C/GPC)を用いて下記の条件で測定し、標準ポリスチレン換算で決定した。
・カラム:東ソー社製TSKgel GMHHR−H(S)HT×2本と東ソー社製TSKgel G2000HHR(粒子径20μm)HT×1本を直列に接続
・溶離液:オルトジクロロベンゼン(o−DCB)
・流速 :1.0ml/min
・検出器:RI
・カラム恒温槽温度:135℃
【0095】
<1.原材料>
〔(A)エチレン・(メタ)アクリル酸系共重合体〕
−エチレン・メタクリル酸共重合体−
(A1)エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%、MFR(190℃、2160g荷重):60g/10分
(A2)エチレン単位含有量:91質量%、メタクリル酸単位含有量:9質量%、MFR(190℃、2160g荷重):3.0g/10分
(A3)エチレン単位含有量:89質量%、メタクリル酸単位含有量:11質量%、MFR(190℃、2160g荷重):8g/10分
(A4)エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:15質量%、MFR(190℃、2160g荷重):25g/10分
(A5)エチレン単位含有量:90質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、MFR(190℃、2160g荷重):35g/10分
【0096】
−エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体−
(A6)エチレン単位含有量:85質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:5質量%、MFR(190℃、2160g荷重):60 g/10分
(A7)エチレン単位含有量:80質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:10質量%、MFR(190℃、2160g荷重):58 g/10分
(A8)エチレン単位含有量:80質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸イソブチル単位含有量:10質量%、MFR(190℃、2160g荷重):36 g/10分
【0097】
〔(B)多元共重合体〕
(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体
エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸nブチル共重合体(エチレン単位含有量:67重量%、グリシジルメタクリレート単位含有量:5質量%、アクリル酸nブチル単位含有量:28質量%)
MFR(190℃、2160g荷重):12g/10分
数平均分子量(Mn):26400
(B2)α−オレフィン・グリシジル系共重合体
エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(エチレン単位含有量:88質量%、グリシジルメタクリレート単位含有量:12質量%)
MFR(190℃、2160g荷重):3g/10分
数平均分子量(Mn):17000
【0098】
〔(C)ポリオレフィン〕
(C1)ホモポリプロピレン〔プライムポリマー(株)製のプライムポリプロF113G、密度:910kg/m
3、MFR:3.0g/10分〕
(C2)ランダムポリプロピレン〔プライムポリマー(株)製のプライムポリプロF219DA、密度:910kg/m
3、MFR:8.0g/10分〕
(C3)線状低密度ポリエチレン〔プライムポリマー(株)製のエボリューSP2320 、密度:920kg/m
3、MFR:1.9g/10分〕
【0099】
〔(D)他の樹脂〕
(D1)エチレン・メタクリル酸共重合体のアイオノマー
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体〔エチレン単位含有量:90質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%〕、金属カチオン源:亜鉛、中和度:70%
MFR(190℃、2160g荷重):1g/10分
(D2)エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体のアイオノマー
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体〔エチレン単位含有量:80質量%、メタクリル酸単位含有量:10質量%、アクリル酸ブチル:10質量%〕、金属カチオン源:亜鉛、中和度:70%、MFR(190℃、2160g荷重):1g/10分
【0100】
〔(R1)〜(R4)積層用樹脂〕
(R1)エチレン・メタクリル酸共重合体〔=(A2)〕
エチレン単位含有量:91質量%、メタクリル酸単位含有量:9質量%、MFR(190℃、2160g荷重):3.0g/10分
(R2)低密度ポリエチレン(LDPE)
密度:920kg/m
3、MFR:1.6g/10分
(R3)エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)
エチレン単位含有量:81質量%、酢酸ビニル単位含有量:19質量%、MFR(190℃、2160g荷重):2.5g/10分
(R4)アイオノマー
ベースポリマー:エチレン・メタクリル酸共重合体〔エチレン単位含有量:89質量%、メタクリル酸単位含有量:11質量%〕、金属カチオン源:亜鉛、中和度:65%
【0101】
<2.評価方法>
後述する方法で製造した実施例および比較例の各ダイシングテープ基材(キャストフィルム)を使用して、外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。
【0102】
(1)基材の外観評価
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材を、目視観察し、下記評価基準に基づき、評価した。塊状物とは、テープ基材の表面及び内部に生じた凹凸欠陥である。
−評価基準−
A:基材に微小な塊状物が無く、不均一感がない。
B:基材に微小な塊状物が無いが、不均一感がある。
C:基材に微小な塊状物があり、不均一感もあるため、ダイシング時に不具合が生じ得る。
【0103】
(2)切屑性評価(切屑の発生抑制評価)
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材を、ダイシング装置(東京精密社製,AWD−4000B)にセットし、以下の条件でダイシングを行った。
・ワーク(被着体):BGA型パッケージモジュール(京セラケミカル社製、KE−G1250)
・ワークサイズ:550mm×440mm
・厚さ:1.55mm
・ダイシングブレード:ディスコ社製ZllOOLG2S3T
・ブレード回転数:30,000rpm
・ダイシングスピード:100mm/秒
・切り込み深さ:ダイシングテープ基材表面(二層または三層構成のダイシングテープ基材については、表面層の表面)より20μmの深さで切り込み
・ダイシングサイズ:5mm×5mm
【0104】
縦及び横のダイシングラインのうち、それぞれの中央付近における縦(MD方向)の1ラインに発生した糸状屑の個数を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製、VHX−100、倍率:100倍)を用いてカウントした。発見された糸状屑の個数の量から、下記評価基準に基づいて、切屑性を評価した。
−評価基準−
A:糸状屑の数が5本以下である。
B:糸状屑の数が5本を超え、10本未満である。
C:糸状屑の数が10本以上である。
【0105】
(3)耐熱性評価
耐熱性評価は、加熱時のダイシングテープ基材の収縮率およびブロッキングの有無から評価した。収縮性については、後述する方法で製造した100μm厚のTダイフィルムを使用して測定を行なった。
【0106】
(3−1)収縮率
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材を、各々、横5cm×縦10cmに裁断し、評価用フィルムとした。評価用フィルムの横方向中央部において、縦方向に長さ60mmの標線を記入した。なお、ダイシングテープ基材が三層構成である場合は、ダイシングテープ基材を、横5cm×縦15cmに裁断して評価用フィルムとし、フィルムの裏面の横方向中央部において、縦方向に長さ60mmの標線を記入した。
各評価用フィルムを100℃環境下に10分間放置した後、その標線長さを測定し、下記式より収縮率を算出した。得られた収縮率をもとに、下記の評価基準にしたがって評価した。
収縮率[%]=100−(100℃、10分放置後の標線長さ/60mm)×100
−評価基準−
A:収縮率が0.5%未満である。
B:収縮率が0.5%以上2.0%未満である。
C:収縮率が2.0%以上である。
【0107】
(3−2)ブロッキングの有無
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材を、各々、横5cm×縦15cmに裁断し、評価用フィルムとした。評価用フィルムを10枚重ね、その重ねたフィルム上面の中央部に荷重300gを載せ、90℃環境下に30分間放置した。放置後、フィルムのブロッキング枚数(隣接するフィルムと接着しているフィルムの枚数)を測定し、下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:0枚(ブロッキングなし)
B:一部ブロッキング
C:10枚(すべてブロッキング)
なお、ブロッキング評価は、次の2つの観点から行った。
【0108】
a)表/表
評価用フィルムの表層表面同士が接するように重ねたものを1組とした。得られた1組の評価用フィルムを垂直方向に5組(計10枚)重ね、その重ねたフィルム上部の中央部に荷重300gを載せ、90℃環境下に30分間放置した。放置後、フィルムのブロッキング枚数を測定し、上記評価基準にしたがって評価した。
【0109】
b)表/内
評価用フィルムの表層表面と内層表面が接するように重ねたものを1組とした。なお、評価用フィルムの内層表面は、ダイシングテープ基材が、単層構成の場合は表層表面の裏面、二層構成の場合は二層目の表面、三層構成の場合は三層目の表面とした。得られた1組の評価用フィルムを垂直方向に5組(計10枚)重ね、その重ねたフィルム上部の中央部に荷重300gを載せ、90℃環境下に30分間放置した。放置後、フィルムのブロッキング枚数を測定し、上記評価基準にしたがって評価した。
【0110】
(4)加工性評価
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材の表層のメルトフローレート(MFR)を、JIS K7210−1999に準拠して190℃、荷重2160gで測定した。結果を表2に示す。
【0111】
(5)拡張性評価
拡張性評価は、ダイシングテープ基材の拡張率から評価した。
実施例および比較例で作製したダイシングテープ基材を、縦(フィルムのMD方向)300mm×横(フィルムのTD方向)300mmの4角形に裁断し、評価用フィルムとした。得られた評価用フィルム上に、141mm角の正方形を、油性ペンを用いて描いた(以下、測定対象1という)。
8インチウエハ用のウエハ拡張装置(テクノビジョン社製のウエハ拡張装置TEX−218G GR−8)に、測定対象1をセットした。この際、ウエハ拡張装置のステージ中心と測定対象1に描いた正方形の中心が合うようにセットした。次に、ステージを15mm引き上げ、評価用フィルムを拡張した後、60秒間静置し、測定対象1の正方形の各辺の長さ(辺長)を測定した。得られた辺長4点について、それぞれ伸び率(%;=拡張後の辺長/拡張前の辺長×100)を計算し、その平均値を拡張率[%]とした。
拡張率の許容範囲は、103%以上である。
−評価基準−
A:拡張率が105%以上
B:拡張率が103%以上105%未満
C:拡張率が103%未満
【0112】
〔実施例1〕
30mmφ二軸押出機の樹脂投入口に、(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体、(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す割合で投入し、ドライブレンドした。
その後、樹脂投入口に投入して、ダイス温度180℃で溶融混練することで、ダイシングテープ基材用樹脂組成物1を得た。
なお、表1中の「%」は、いずれも質量基準(質量%)である。
【0113】
表1の「(B)」欄における「G濃度」は、実施例または比較例のダイシングテープ基材用樹脂組成物中の(A)、(B)、および(C)の全質量に対する「(ii)グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジル不飽和エーテルに由来の構成単位の含有比率」を表す。具体的には、(A)、(B)、および(C)の全質量に対する(B1)または(B2)のグリシジルメタクリレート由来の構成単位の含有比率を示す。
表1の「(B)」欄における「B量」は、ダイシングテープ基材用樹脂組成物中の共重合体(A)、多元共重合体(B)およびポリオレフィン(C)の合計100質量%に対する組成物中の(B1)エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸nブチル共重合体、または、(B2)エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体の含有量を示す。
【0114】
−単層構成のダイシングテープ基材の作製−
得られたダイシングテープ基材用樹脂組成物1を、40mmφキャストフィルム成形機を用いて加工温度180℃の条件で成形し、100μm厚のキャストフィルムを作製した。得られたキャストフィルムを、実施例1のダイシングテープ基材1とし、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0115】
〔実施例2〜9〕
ダイシングテープ基材用樹脂組成物1の作製において、(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体、(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す材料、および、表1に示す割合に変更したほかは同様にして、実施例2〜9のダイシングテープ基材用樹脂組成物2〜9を得た。
【0116】
次いで、ダイシングテープ基材1の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物1をダイシングテープ基材用樹脂組成物2〜9に変更したほかは同様にして、実施例2〜9のダイシングテープ基材2〜9を作製した。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0117】
〔実施例10〕
30mmφ二軸押出機の樹脂投入口に、(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体、(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す割合で投入し、ドライブレンドした。
その後、樹脂投入口に投入して、ダイス温度180℃で溶融混練することで、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10を得た。
【0118】
−二層構成のダイシングテープ基材の作製−
ダイシングテープ基材用樹脂組成物10と、表1の「2層目」に示す樹脂とを用いて、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10で構成される層を表層とする二層フィルムを作製した。二層フィルムの作製には、40mmφ3種3層キャスト成形機を使用し、ニップ成形法を用いて、ダイス温度を180℃とした。また、表層および2層目の厚みは、表1の「2層目(内層)」欄の「μm」欄に示す厚みとした。
このようにして得られた二層フィルムを、実施例10のダイシングテープ基材10とし、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0119】
〔実施例11〜20〕
ダイシングテープ基材用樹脂組成物10の作製において、(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体、(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す材料、および、表1に示す割合に変更したほかは同様にして、実施例11〜20のダイシングテープ基材用樹脂組成物11〜20を得た。
【0120】
次いで、ダイシングテープ基材10の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10をダイシングテープ基材用樹脂組成物11〜20に変更し、表層と2層目の厚みを表1に示す厚みに変更したほかは同様にして、実施例11〜20のダイシングテープ基材11〜20を作製した。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0121】
〔実施例21〜24〕
ダイシングテープ基材用樹脂組成物10の作製において(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体を、表1に示す(A5)エチレン・メタクリル酸共重合体又は(A8)エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチルエステル共重合体に代え、(B1)α−オレフィン・グリシジル系共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す材料、および、表1に示す割合とし、さらに、(D)他の樹脂を、表1に示す材料、および、表1に示す割合で新たに加えたほかは同様にして、実施例21〜24のダイシングテープ基材用樹脂組成物21〜24を得た。
なお、実施例21〜24において、表1の基本構成(A)〜(D)の含有比率については、括弧内に(A)〜(D)全体を100質量%として換算した値も示す。
【0122】
次いで、ダイシングテープ基材10の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10をダイシングテープ基材用樹脂組成物21〜24に変更したほかは同様にして、実施例21〜24のダイシングテープ基材21〜24を作製した。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0123】
〔実施例25〕
実施例1のダイシングテープ基材用樹脂組成物1の作製と同様にして、実施例25のダイシングテープ基材用樹脂組成物25を得た。
【0124】
−三層構成のダイシングテープ基材の作製−
ダイシングテープ基材用樹脂組成物25と、表1の「2層目(内層)」に示す樹脂と、表1の「3層目(内層)」に示す樹脂とを用いて、ダイシングテープ基材用樹脂組成物19で構成される層を表層とする三層フィルムを作製した。三層フィルムの作製には、40mmφ3種3層キャスト成形機を使用し、ニップ成形法を用いて、ダイス温度を180℃とした。また、表層、2層目および3層目の厚みは、表1の「2層目(内層)」欄または「3層目(内層)」欄の「μm」欄に示す厚みとした。
このようにして得られた三層フィルムを、実施例25のダイシングテープ基材25とし、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0125】
〔実施例26〜実施例30〕
実施例1のダイシングテープ基材用樹脂組成物1の作製と同様にして、実施例26〜実施例30のダイシングテープ基材用樹脂組成物26〜30を得た。
【0126】
実施例25のダイシングテープ基材25の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物25に代えてダイシングテープ基材用樹脂組成物26〜30を用い、2層目および3層目の樹脂を、表1に示す樹脂に変更し、各層の厚みを表1に示す厚みに変更したほかは同様にして、実施例26〜実施例30のダイシングテープ基材26〜30を得た。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0127】
〔比較例1〜比較例3〕
実施例10のダイシングテープ基材10の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10に代えて、表1に示す(A3)、(A4)または(A2)のエチレン・メタクリル酸共重合体を用いたほかは同様にして、比較例1〜3のダイシングテープ基材101〜103を作製した。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0128】
〔比較例4〕
30mmφ二軸押出機の樹脂投入口に、(A4)エチレン・メタクリル酸共重合体、及び(C1)ホモポリプロピレンを、表1に示す割合で投入し、ドライブレンドした。
その後、樹脂投入口に投入して、ダイス温度180℃で溶融混練することで、ダイシングテープ基材用樹脂組成物104を得た。
【0129】
実施例10のダイシングテープ基材10の作製において、ダイシングテープ基材用樹脂組成物10に代えて、ダイシングテープ基材用樹脂組成物104を用いたほかは同様にして、比較例4のダイシングテープ基材104を得た。
得られたダイシングテープ基材について、既述の外観評価、切屑性評価(切屑の発生抑制評価)、耐熱性評価、加工性評価、および拡張性評価を行なった。結果を表2に示す。
【0130】
〔比較例5〕
30mmφ二軸押出機の樹脂投入口に、(A1)エチレン・メタクリル酸共重合体、及び(B)α−オレフィン・グリシジル系共重合体を、表1に示す割合で投入し、ドライブレンドした。
その後、樹脂投入口に投入して、ダイス温度180℃で溶融混練したが、ゲル化し、加工不能となった。従って、比較例5については、評価を行っていない。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表2に示すように、実施例では、切屑の発生を抑制すると共に、耐熱性および拡張性にも優れた。これに対して、比較例では、切屑の発生抑制と、高耐熱性と、高拡張性とを両立することができなかった。