(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の識別体の第1の実施の形態における一構成例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図、(c)は(a)に示したA−A’断面図、(d)は(a)に示したB−B’断面図である。なお、
図1(b)の裏面図は、
図1(a)の表面図との位置関係が明確になるように表面側から見た裏面の構成を示す。
【0017】
本例の識別体は
図1に示すように、ベース基材10に8つのアンテナ形成領域20a〜20hを有するIDタグ1である。IDタグ1は、ベース基材10の表面においては、アンテナ形成領域20a〜20hのうちアンテナ形成領域20a〜20d,20f〜20hにそれぞれアンテナ31a〜31d,31f〜31hが形成されており、また、ベース基材10の裏面においては、アンテナ形成領域20a〜20hのうちアンテナ形成領域20b,20d,20f,20gにそれぞれアンテナ32b,32d,32f,32gが形成されている。
【0018】
アンテナ形成領域20a〜20hに形成されるアンテナは、アンテナ形成領域20a〜20h毎にベース基材10の表裏のそれぞれで同一形状を有し、それにより、同一の共振周波数を有している。また、アンテナ形成領域20a〜20hに形成されるアンテナは、その形状がアンテナ形成領域20a〜20hどうしで互いに異なり、それにより、互いに異なる共振周波数を有している。
【0019】
具体的には、アンテナ形成領域20aに形成されたアンテナ31aは正方形からなるものであるのに対して、アンテナ形成領域20b〜20dにそれぞれ形成されたアンテナ31b,32b,31c,31d,32dは、アンテナ31aよりも一辺の長さが短い正方形に2本のスタブが設けられて構成されている。また、アンテナ形成領域20f〜20hにそれぞれ形成されたアンテナ31f,32f,31g,32g,31hは、アンテナ31b,32b,31c,31d,32dよりも一辺の長さがさらに短い正方形に2本のスタブが設けられて構成されている。また、アンテナ31b,32bと、アンテナ31cと、アンテナ31d,32dと、アンテナ31f,32fと、アンテナ31g,32gと、アンテナ31hとは、スタブの長さや位置が異なり、それにより、共振周波数が互いに異なっている。なお、スタブの線幅を異ならせることによっても共振周波数を異ならせることができる。
【0020】
一般に、アンテナは、その大きさが大きくなるほど共振周波数が低くなり、スタブの長さが長くなるほど共振周波数が低くなる。本例のIDタグ1においては、アンテナ形成領域20aに形成されたアンテナ31aの共振周波数が最も低く、次いで、アンテナ形成領域20bに形成されたアンテナ31b,32b、次いで、アンテナ形成領域20cに形成されたアンテナ31c、次いで、アンテナ形成領域20dに形成されたアンテナ31d,32d、次いで、アンテナ形成領域20fに形成されたアンテナ31f,32f、次いで、アンテナ形成領域20gに形成されたアンテナ31g,32g、次いで、アンテナ形成領域20hに形成されたアンテナ31hの順で、共振周波数が高くなっている。そして、共振周波数が最も低いアンテナ31aが基準アンテナとして設定されている。
【0021】
図2は、本発明の識別体の第1の実施の形態における他の構成例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は裏面図、(c)は(a)に示したA−A’断面図、(d)は(a)に示したB−B’断面図である。なお、
図2(b)の裏面図においても、
図1と同様に、
図2(a)の表面図との位置関係が明確になるように表面側から見た裏面の構成を示す。
【0022】
本例の識別体は
図2に示すように、
図1に示したIDタグ1と同様にベース基材110に8つのアンテナ形成領域120a〜120hを有するIDタグ101である。IDタグ101は、ベース基材110の表面においては、アンテナ形成領域120a〜120hのうちアンテナ形成領域120a〜120d,120f〜120hにアンテナ131a〜131d,131f〜131hが形成されており、また、ベース基材110の裏面においては、アンテナ形成領域120a〜120hのうちアンテナ形成領域120c,120hにアンテナ132c,132hが形成されている。
【0023】
ここで、本例におけるIDタグ101においては、アンテナ形成領域120a〜120hに形成されるアンテナは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20a〜20hに形成されるアンテナとそれぞれ同一形状を有し、それにより、共振周波数が同一のものとなっている。具体的には、アンテナ形成領域120aに形成されたアンテナ131aは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20aに形成されたアンテナ31aと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120bに形成されたアンテナ131bは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20bに形成されたアンテナ31b,32bと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120cに形成されたアンテナ131c,132cは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20cに形成されたアンテナ31cと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120dに形成されたアンテナ131dは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20dに形成されたアンテナ31d,32dと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120fに形成されたアンテナ131fは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20fに形成されたアンテナ31f,32fと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120gに形成されたアンテナ131gは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20gに形成されたアンテナ31g,32gと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっており、アンテナ形成領域120hに形成されたアンテナ131h,132hは、
図1に示したIDタグ1におけるアンテナ形成領域20hに形成されたアンテナ31hと同一形状を有して共振周波数が同一のものとなっている。すなわち、本例におけるIDタグ101は、ベース基材110の表面の構成が、
図1に示したIDタグ1と同一のものとなっている。これにより、本例におけるIDタグ101においては、共振周波数が最も低いアンテナ131aが基準アンテナとして設定されている。
【0024】
以下に、上記のように構成されたIDタグ1,101を用いたID判別方法について説明する。
【0025】
図3は、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101のIDを判別するID判別システムの一例を示す図である。
【0026】
本例におけるID判別システムは
図3に示すように、アンテナ41と、放射手段となる電磁波放射部42と、検知手段となる反射波検知部43と、判別手段となるID判別部44とを有している。
【0027】
電磁波放射部42は、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をアンテナ41を介して放射する。なお、電磁波放射部42においては、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープするのではなく、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数の電磁波を同時に放射する構成としてもよい。すなわち、電磁波放射部42は、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む複数の周波数の電磁波をアンテナ41を介して放射するものである。
【0028】
反射波検知部43は、電磁波放射部42から放射された電磁波に対する反射波をアンテナ41を介して検知する。
図1及び
図2に示したIDタグ1,101に対して電磁波放射部42からアンテナ41を介して電磁波が放射された場合、IDタグ1,101のアンテナ31a〜31d,31f〜31h,32b,32d,32f,32g,131a〜131d,131f〜131h,132c,132hからの反射波をアンテナ41を介して検知する。
【0029】
ID判別部44は、反射波検知部43にて検知された反射波のうち基準アンテナ20a,120aからの反射波のピーク値及び該ピーク値の周波数を基準とし、反射波検知部43にて検知された他のアンテナからの反射波のピーク値と該ピーク値の周波数とに基づいてIDタグ1,101のIDを判別する。
【0030】
図1及び
図2に示したIDタグ1,101においては、上述したように、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナ毎に共振周波数が異なる。そこで、電磁波放射部42において、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をアンテナ41を介して放射し、その反射波を反射波検知部43にて検知すれば、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hのうちアンテナが形成されている領域においては、そのアンテナ形成領域に形成されたアンテナの共振周波数にて反射波のピーク値が存在し、アンテナが形成されていない領域においては、そのアンテナ形成領域に形成されるアンテナの共振周波数にて反射波のピーク値が存在しない。
【0031】
そのため、
図1に示したIDタグ1と
図2に示したIDタグ101とでは、ベース基材10,110の表面の構成のみでは、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hの構成が互いに同一であることから、電磁波放射部42において、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をアンテナ41を介して放射し、その反射波を反射波検知部43にて検知した場合、同一の共振周波数でピーク値が存在することとなり、互いに区別することができない。
【0032】
ここで、
図1に示したIDタグ1と
図2に示したIDタグ101とでは、ベース基材10,110の裏面の構成が互いに異なっている。
図1に示したIDタグ1においては、アンテナ形成領域20bにおいてベース基材10の表裏にアンテナ31b,32bが形成されている一方、
図2に示したIDタグ101においては、アンテナ形成領域120bにおいてベース基材110の表面にしかアンテナ131bが形成されていない。また、
図1に示したIDタグ1においては、アンテナ形成領域20cにおいてベース基材10の表面にしかアンテナ31cが形成されていない一方、
図2に示したIDタグ101においては、アンテナ形成領域120cにおいてベース基材110の表裏にアンテナ131c,132cが形成されている。また、
図1に示したIDタグ1においては、アンテナ形成領域20dにおいてベース基材10の表裏にアンテナ31d,32dが形成されている一方、
図2に示したIDタグ101においては、アンテナ形成領域120cにおいてベース基材110の表面にしかアンテナ131dが形成されていない。また、
図1に示したIDタグ1においては、アンテナ形成領域20gにおいてベース基材10の表裏にアンテナ31g,32gが形成されている一方、
図2に示したIDタグ101においては、アンテナ形成領域120gにおいてベース基材110の表面にしかアンテナ131gが形成されていない。
【0033】
このようにベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合とベース基材10,110の表面のみにアンテナが形成されている場合とでは、そのアンテナの共振周波数における反射波のピーク値が異なるものとなる。これは、ベース基材10,110の表面のみにアンテナが形成されている場合に限らず、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合についても同様である。
【0034】
図4は、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101のIDを判別する方法を説明するための図であり、(a)はIDタグ1,101からの基本的な反射波の特性を示す図、(b)はIDタグ1,101からの実際の反射波の特性を示す図である。
【0035】
上述したように、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合とベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合とでは、そのアンテナの共振周波数における反射波のピーク値が異なるものとなる。具体的には
図4(a)に示すように、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合の反射波は実線で示すようなものとなり、また、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合の反射波は破線で示すようなものとなり、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合の反射波のピーク値が、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合の反射波のピーク値よりもそのロスが小さなものとなる。これは、ベース基材10,110の表裏に形成されたアンテナどうしでブースター機能を果たし、反射波を強め合っていることによる。
【0036】
そこで、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合の反射波のピーク値と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合の反射波のピーク値との間のロス値に判別ラインAを設けることにより、ピーク値が存在する共振周波数のアンテナが形成されるアンテナ形成領域において、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されているのか、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されているのかを区別することができる。すなわち、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成されている場合とベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合とで、1つの共振周波数を用いて2つの情報を持たせることができる。また、アンテナが形成されていないアンテナ形成領域においては、そのアンテナの共振周波数においてピーク値が存在しないため、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成されている場合の反射波のピーク値よりも大きなロス値に判別ラインBを設けることにより、その共振周波数を有するアンテナが形成されるアンテナ形成領域にアンテナが形成されていない旨も判別することができる。これにより、互いに異なる共振周波数毎に、放射された電磁波に対する反射波のピーク値が異なる2つの情報と、放射された電磁波に対する反射波が検知されない1つの情報との3つの情報を持たせることができる。
【0037】
図1及び
図2に示したIDタグ1,101において、アンテナ形成領域20a,120aに形成されるアンテナの共振周波数がf
0であり、アンテナ形成領域20b,120bに形成されるアンテナの共振周波数がf
1であり、アンテナ形成領域20c,120cに形成されるアンテナの共振周波数がf
2であり、アンテナ形成領域20d,120dに形成されるアンテナの共振周波数がf
3であり、アンテナ形成領域20e,120eに形成されるアンテナの共振周波数がf
4であり、アンテナ形成領域20f,120fに形成されるアンテナの共振周波数がf
5であり、アンテナ形成領域20g,120gに形成されるアンテナの共振周波数がf
6であり、アンテナ形成領域20h,120hに形成されるアンテナの共振周波数がf
7であるとする。すると、電磁波放射部42において、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をアンテナ41を介して放射した場合、IDタグ1においては、
図4(b)の実線で示すように、アンテナ形成領域20aに形成されるアンテナの共振周波数f
0における反射波のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域20bに形成されるアンテナの共振周波数f
1における反射波のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなり、アンテナ形成領域20cに形成されるアンテナの共振周波数f
2における反射波のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域20dに形成されるアンテナの共振周波数f
3における反射波のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなり、アンテナ形成領域20eに形成されるアンテナの共振周波数f
4における反射波のピーク値は存在せずにロスが判別ラインBよりも大きなものとなり、アンテナ形成領域20fに形成されるアンテナの共振周波数f
5における反射波のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなり、アンテナ形成領域20gに形成されるアンテナの共振周波数f
6における反射波のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなり、アンテナ形成領域20hに形成されるアンテナの共振周波数f
7における反射波のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在することになる。一方、IDタグ101においては、
図4(b)の破線で示すように、アンテナ形成領域120aに形成されるアンテナの共振周波数f
0のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域120bに形成されるアンテナの共振周波数f
1のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域120cに形成されるアンテナの共振周波数f
2のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなり、アンテナ形成領域120dに形成されるアンテナの共振周波数f
3のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域120eに形成されるアンテナの共振周波数f
4のピーク値は存在せずにロスが判別ラインBよりも大きなものとなり、アンテナ形成領域120fに形成されるアンテナの共振周波数f
5のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域120gに形成されるアンテナの共振周波数f
6のピーク値は判別ラインAとBとの間に存在し、アンテナ形成領域120hに形成されるアンテナの共振周波数f
7のピーク値は判別ラインAよりも小さなものとなる。
【0038】
このように、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hのそれぞれが、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成とのいずれかであることにより、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hのそれぞれに互いに共振周波数が異なるように形成されるアンテナの共振周波数毎に3つの情報を持たせることができ、この3つの情報を用いてIDを構成することができる。そして、アンテナ形成領域の数をN個とした場合、基準アンテナが形成されたアンテナ形成領域については1つの情報が固定されるため、3
N-1個のIDを構成することができるようになる。
【0039】
図5は、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101について
図3に示したID判別部44にて判別したIDを示す図である。
【0040】
上述した特性を利用して、ID判別部44においては、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数毎に、その共振周波数における反射波のピーク値が判別ラインAよりも小さなものを“2”とし、判別ラインAとBとの間に存在するものを“1”とし、判別ラインBよりも大きなものを“0”としてIDタグ1,101のIDを判別する。
【0041】
共振周波数が低い方からの並び順とした場合、
図5に示すように、IDタグ1については、“12120221”となり、IDタグ101については、“11210112”となり、ベース基材10,110の表面の構成が同一であるIDタグ1とIDタグ101とを区別することができるようになる。なお、共振周波数が最も低い反射波は、基準アンテナ20a,120aからの反射波であるためIDとしては使用せず、IDタグ1のIDは、“2120221”となり、IDタグ101のIDは、“1210112”となる。
【0042】
このように、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101は、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成とのいずれかが、IDタグ1,101のIDに応じて選択されていることになる。これにより、1つの共振周波数毎に3つの情報を持たせることができ、共振周波数が互いに異なる複数のアンテナの組み合わせでIDを識別可能とするものにおいて、その大きさを大きくすることなく、識別可能とするIDの数を増やすことができる。
【0043】
以下に、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101において、基準アンテナ31a,131aを設ける理由について説明する。
【0044】
図6は、基準アンテナ31a,131aを用いた判別基準の設定方法を説明するための図であり、(a)はピーク値の判別基準の設定方法を示す図、(b)は共振周波数のずれを補正する方法を示す図である。
【0045】
図1及び
図2に示したIDタグ1,101は、
図3に示した反射検知部43にて反射波を検知する場合、IDタグ1,101とアンテナ41との距離によってそのピーク値が異なることになる。そのため、上述したような判別ラインを設定していたとしても、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成との区別ができなくなってしまう虞れがある。
【0046】
そこで、基準アンテナ31a,131aの共振周波数における反射波のピーク値を基準として判別ラインを設定する。
【0047】
例えば、基準アンテナ31a,131aからの反射波の周波数特性が
図6(a)の実線で示すようなものの場合は、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成とを区別するための判別ラインA
1を設定するとともに、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成とを区別するための判別ラインB
1を設定する。また、基準アンテナ31a,131aからの反射波の周波数特性が
図6(a)の破線で示すようなものの場合は、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成とを区別するための判別ラインA
2を設定するとともに、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成とを区別するための判別ラインB
2を設定する。
【0048】
これにより、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101について、
図3に示した反射検知部43にて検知する反射波のピーク値が、IDタグ1,101とアンテナ41との距離によって異なった場合においても、ベース基材10,110の表裏にアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれかにアンテナが形成された構成と、ベース基材10,110の表裏のいずれにもアンテナが形成されていない構成とを区別することができるようになる。
【0049】
また、
図1及び
図2に示したIDタグ1,101においては、商品等に貼付された場合に、アンテナそれぞれの共振周波数がシフトすることになる。そのため、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数における反射波のピーク値を正確に検知することができなくなってしまう。
【0050】
そこで、共振周波数が最も低いアンテナ20a,120aを基準アンテナとし、この基準アンテナのシフト量に基づいて、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数をそれぞれシフトさせることにより、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数における反射波のピーク値を正確に検知することができるようになる。
【0051】
例えば
図6(b)の実線で示すように、基準アンテナ20a,120aの共振周波数f
0が低周波数側のf
1にシフトした場合、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数をそれぞれ(f
0−f
1)に所定の係数を掛けた周波数だけ低周波数側にシフトさせる。また、
図6(b)の破線で示すように、基準アンテナ20a,120aの共振周波数f
0が低周波数側のf
2にシフトした場合、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数をそれぞれ(f
0−f
2)に所定の係数を掛けた周波数だけ低周波数側にシフトさせる。なお、所定の係数は、事前の計測値に基づいて予め算出されている。
【0052】
これにより、IDタグ1,101が商品等に貼付されることによってアンテナそれぞれの共振周波数がシフトした場合であっても、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数における反射波のピーク値を正確に検知することができるようになる。
【0053】
なお、共振周波数が最も低いアンテナ20a,120aを基準アンテナとするのは、上述したように、IDタグ1,101が商品等に貼付された場合に、アンテナそれぞれの共振周波数がシフトすることになるため、共振周波数が最も低いアンテナ20a,120aを基準アンテナとしておけば、検知した反射波のピーク値の共振周波数が最も低いものを基準アンテナと認識し、周波数特性がどのようにシフトしたかを把握することができるようになるためである。
【0054】
また、IDタグ1,101は、商品等に貼付された場合に一般的にアンテナそれぞれの共振周波数が低い周波数にシフトするが、IDタグ1,101の近傍に金属が存在すると、複共振によって共振周波数が高い周波数にシフトする場合もある。そのため、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数が、最も高い共振周波数が最も低い共振周波数の倍以上となるブロードバンドの場合は、反射波のピークと複共振したピークとの区別がつかなくなるため、共振周波数が最も低いアンテナ20a,120aを基準アンテナとする必要があるが、アンテナ形成領域20a〜20h,120a〜120hに形成されるアンテナの共振周波数が、複共振が生じない程度の狭い周波数帯域のナローバンドの場合は、共振周波数が最も低いアンテナに限らず、共振周波数が最も高いアンテナを基準アンテナとして設定することができる。このように、アンテナが形成される複数の領域の1つに、複数の領域に形成されるアンテナの共振周波数の幅に応じて、識別体のIDによらずに共振周波数が最も低いまたは高い基準アンテナを形成しておくことにより、この基準アンテナからの反射波のピーク値とそのピーク値の周波数を基準として他のアンテナからの反射波を用いて識別体のIDを正確に判別することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の識別体の第2の実施の形態における一構成例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(a)に示したB−B’断面図である。
【0056】
本例の識別体は
図7に示すように、
図1及び
図2に示したものと同様にベース基材210に8つのアンテナ形成領域220a〜220hを有するIDタグ201である。8つのアンテナ形成領域220a〜220hのそれぞれには、ベース基材210の表面にアンテナ230a〜230hが形成されている。
【0057】
アンテナ形成領域220a〜220hに形成されたアンテナ230a〜230hは、銀を材料として形成され、その形状がアンテナ形成領域220a〜220hどうしで互いに異なり、それにより、互いに異なる共振周波数を有している。
【0058】
具体的には、アンテナ形成領域220a〜220hに形成されたアンテナ230a〜230hは、それぞれコイル形状であり、その外形が互いに同一であるものの、そのターン数が、アンテナ形成領域220aに形成されたアンテナ230aが最も多く、次いで、アンテナ形成領域220bに形成されたアンテナ230b、次いで、アンテナ形成領域220cに形成されたアンテナ230c、次いで、アンテナ形成領域220dに形成されたアンテナ230d、次いで、アンテナ形成領域220eに形成されたアンテナ230e、次いで、アンテナ形成領域220fに形成されたアンテナ230f、次いで、アンテナ形成領域220gに形成されたアンテナ230gの順にターン数が少なくなっていき、アンテナ形成領域220hに形成されたアンテナ230hのターン数が最も少なくなっている。それにより、共振周波数が互いに異なっており、本例のIDタグ201においては、アンテナ形成領域220aに形成されたアンテナ230aの共振周波数が最も低く、次いで、アンテナ形成領域220bに形成されたアンテナ230b、次いで、アンテナ形成領域220cに形成されたアンテナ230c、次いで、アンテナ形成領域220dに形成されたアンテナ230d、次いで、アンテナ形成領域220eに形成されたアンテナ230e、次いで、アンテナ形成領域220fに形成されたアンテナ230f、次いで、アンテナ形成領域220gに形成されたアンテナ230g、次いで、アンテナ形成領域220hに形成されたアンテナ230hの順で、共振周波数が高くなっている。そして、共振周波数が最も低いアンテナ230aが基準アンテナとして設定されている。
【0059】
図8は、本発明の識別体の第2の実施の形態における他の構成例を示す図であり、(a)は表面図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(a)に示したB−B’断面図である。
【0060】
本例の識別体は
図8に示すように、その構成は
図7に示したものと同様であるが、アンテナ形成領域320a〜320hに形成されたアンテナ330a〜330hが、カーボンを材料として形成されている点で
図7に示したものとは異なるIDタグ301である。
【0061】
このように、本形態においては、
図7に示したIDタグ201と
図8に示したIDタグ301とでは、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されたアンテナ230a〜230h,330a〜330hが、抵抗値が互いに異なる材料から形成されている。アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されたアンテナ230a〜230h,330a〜330hが、抵抗値が互いに異なる材料から形成されている場合、共振周波数における反射波のピーク値が互いに異なるものとなる。
【0062】
図9は、
図7及び
図8に示したIDタグ201,301のIDを判別する方法を説明するための図であり、(a)はIDタグ201,301からの基本的な反射波の特性を示す図、(b)はIDタグ201,301からの実際の反射波の特性を示す図である。
【0063】
上述したように、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されたアンテナ230a〜230h,330a〜330hが、抵抗値が互いに異なる材料から形成されている場合、共振周波数における反射波のピーク値が異なるものとなる。具体的には
図9(a)に示すように、アンテナ形成領域220a〜220hに銀を材料として形成されたアンテナ230a〜230hの反射波が実線で示すようなものとなり、また、アンテナ形成領域320a〜320hにカーボンを材料として形成されたアンテナ330a〜330hの反射波が破線で示すようなものとなり、アンテナ形成領域220a〜220hに銀を材料として形成されたアンテナ230a〜230hの反射波のピーク値が、アンテナ形成領域320a〜320hにカーボンを材料として形成されたアンテナ330a〜330hの反射波のピーク値よりもそのロスが小さなものとなる。これは、銀の抵抗値がカーボンの抵抗値よりも小さなことによる。
【0064】
そこで、アンテナ形成領域220a〜220hに銀を材料として形成されたアンテナ230a〜230hの反射波のピーク値と、アンテナ形成領域320a〜320hにカーボンを材料として形成されたアンテナ330a〜330hの反射波のピーク値との間のロス値に判別ラインAを設けることにより、ピーク値が存在する共振周波数を有するアンテナが形成されるアンテナ形成領域において、銀を材料としてアンテナが形成されているのか、カーボンを材料としてアンテナが形成されているのかを区別することができる。すなわち、選択的に銀とカーボンを材料としてアンテナを形成することで、1つの共振周波数を用いて2つの情報を持たせることができる。また、アンテナが形成されていないアンテナ形成領域においては、そのアンテナの共振周波数においてピーク値が存在しないため、アンテナ形成領域320a〜320hにカーボンを材料として形成されたアンテナ330a〜330hの反射波のピーク値よりも大きなロス値に判別ラインBを設けることにより、その共振周波数を有するアンテナが形成されるアンテナ形成領域にアンテナが形成されていない旨も判別することができる。これにより、互いに異なる共振周波数毎に、放射された電磁波に対する反射波のピーク値が異なる2つの情報と、放射された電磁波に対する反射波が検知されない1つの情報との3つの情報を持たせることができる。なお、共振周波数を変化させずに抵抗値を変える方法としては、コイル状のアンテナの線幅や線間、厚みを変える方法もある。
【0065】
図7及び
図8に示したIDタグ201,301において、アンテナ形成領域220a,320aに形成されるアンテナの共振周波数がf
0であり、アンテナ形成領域220b,320bに形成されるアンテナの共振周波数がf
1であり、アンテナ形成領域220c,320cに形成されるアンテナの共振周波数がf
2であり、アンテナ形成領域220d,320dに形成されるアンテナの共振周波数がf
3であり、アンテナ形成領域220e,320eに形成されるアンテナの共振周波数がf
4であり、アンテナ形成領域220f,320fに形成されるアンテナの共振周波数がf
5であり、アンテナ形成領域220g,320gに形成されるアンテナの共振周波数がf
6であり、アンテナ形成領域220h,320hに形成されるアンテナの共振周波数がf
7であるとする。すると、
図3に示した電磁波放射部42において、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されるアンテナの共振周波数を含む周波数帯をスイープしながら当該周波数帯の電磁波をアンテナ41を介して放射した場合、IDタグ201においては、
図9(b)の実線で示すように、アンテナ形成領域220a〜220hに形成されるアンテナの共振周波数f
0〜f
7における反射波のそれぞれのピーク値が、判別ラインAよりも小さなものとなる。一方、IDタグ301においては、
図9(b)の破線で示すように、アンテナ形成領域320a〜320hに形成されるアンテナの共振周波数f
0〜f
7における反射波のそれぞれのピーク値が、判別ラインAとBとの間に存在することとなる。
【0066】
このように、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されるアンテナの材料を、抵抗値が互いに異なるものとすることにより、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hのそれぞれに互いに共振周波数が異なるように形成されるアンテナの共振周波数毎に2つの情報を持たせることができ、さらには、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hにアンテナが形成されていない場合も含めて3つの情報を用いてIDを構成することができるようになる。
【0067】
図10は、
図7及び
図8に示したIDタグ201,301について
図3に示したID判別部44にて判別したIDを示す図である。
【0068】
上述した特性を利用して、ID判別部44においては、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されるアンテナの共振周波数毎に、その共振周波数における反射波のピーク値が判別ラインAよりも小さなものを“2”とし、判別ラインAとBとの間に存在するものを“1”とし、判別ラインBよりも大きなものを“0”としてIDタグ201,301のIDを判別する。
【0069】
共振周波数が低い方からの並び順とした場合、
図10に示すように、IDタグ201については、“22222222”となり、IDタグ301については、“11111111”となり、ベース基材210,310の表面の構成が同一であるIDタグ201とIDタグ301とを区別することができるようになる。なお、共振周波数が最も低い反射波は、基準アンテナ220a,320aからの反射波であるためIDとしては使用せず、IDタグ201のIDは、“2222222”となり、IDタグ301のIDは、“1111111”となる。
【0070】
なお、本形態においては、IDタグ201についてはアンテナ形成領域220a〜220hの全てにアンテナ230a〜230hが形成され、さらに、これらのアンテナ230a〜230hの全てが銀を用いて形成されており、また、IDタグ301についてはアンテナ形成領域320a〜320hの全てにアンテナ330a〜330hが形成され、さらに、これらのアンテナ330a〜330hの全てがカーボンを用いて形成されているが、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320h毎に、アンテナを形成する材料を選択し、さらにアンテナが形成されない領域を設けることで、第1の実施の形態に示したようなIDを構成することができる。すなわち、本形態は、アンテナ230a〜230h,330a〜330hが、銀とカーボンのうちいずれかがIDタグ201,301のIDに応じてアンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320h毎に独立して選択され、選択された材料を用いて形成されているものである。例えば、IDタグ201において、アンテナ形成領域220bには銀を用いてアンテナ230bが形成され、アンテナ形成領域220cにはカーボンを用いてアンテナ230cが形成され、アンテナ形成領域220dにはアンテナが形成されないというように、1つのIDタグにおいて、銀を用いて形成されるアンテナとカーボンを用いて形成されるアンテナが混在するものであり、その中で、
図7や
図8に示したように、構成するIDによっては、1つのIDタグにおいて、全てのアンテナが銀で形成されたり、カーボンで形成されたりする場合が生じるものである。
【0071】
また、アンテナを形成する材料は、銀やカーボンに限らず、抵抗値が互いに異なるものであればよく、その数も2種類よりも増やせば、1つの共振周波数についてより多くの情報を持たせることができる。また、アンテナの形状を互いに異ならせることによっても、さらに多くの情報を持たせることができる。
【0072】
また、本形態においては、アンテナ形成領域220a〜220hに形成されたアンテナ230a〜230hのターン数を互いに異ならせることにより、アンテナ230a〜230hの共振周波数を異ならせているが、コイル状のアンテナ230a〜230hの線幅や線間、厚みを互いに異ならせることにより、共振周波数を異ならせてもよい。
【0073】
このように、本形態においては、アンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320hに形成されたアンテナ230a〜230h,330a〜330hを、抵抗値が互いに異なる複数の材料から1つの材料をアンテナ形成領域220a〜220h,320a〜320h毎にIDタグ201,301のIDに応じて選択してその材料を用いて形成することで、1つの共振周波数毎に3つ以上の情報を持たせることができ、共振周波数が互いに異なる複数のアンテナの組み合わせでIDを識別可能とするものにおいて、その大きさを大きくすることなく、識別可能とするIDの数を増やすことができる。
【0074】
なお、上述した実施の形態においては、アンテナとして正方形や正方形にスタブが設けられた形状のものやコイル状のものを例に挙げて説明したが、アンテナとしては円形や長方形、スリット形状のもの等、適宜選択することができる。