特許第6472989号(P6472989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社の特許一覧 ▶ 日本ゴア株式会社の特許一覧

特許6472989熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。
<>
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000002
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000003
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000004
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000005
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000006
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000007
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000008
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000009
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000010
  • 特許6472989-熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472989
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法及びフィルター取付部成形用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップ。
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20190207BHJP
   B29C 65/38 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B29C65/20
   B29C65/38
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-244031(P2014-244031)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-107412(P2016-107412A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509294922
【氏名又は名称】ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107387
【氏名又は名称】日本ゴア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 寿彦
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 浩司
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−111381(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/031628(WO,A1)
【文献】 特開2001−001404(JP,A)
【文献】 特開2007−144863(JP,A)
【文献】 特開平03−043235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口の周縁部に熱加工チップの先端を沈み込ませながら加熱して溶融することにより、通気孔の入口又は出口部に一段低くなったフィルター取付面を形成すると共に前記沈み込みにより溶融した樹脂を周囲に盛り上げてフィルター固定リブを形成する成形品の通気孔の入口又は出口部分にフィルターの取付部を形成するフィルター取付部形成方法。
【請求項2】
チップ本体の先端面の中央に熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口内に挿入するセンターリブを形成すると共にこのセンターリブの基部の周囲に発熱面を形成し、更にこの発熱面の周囲から垂直方向に垂直壁面を形成し、更にこの垂直壁面から後退した位置に位置決めフランジを形成して成るフィルター取付部形成用熱加工チップ。
【請求項3】
チップ本体の先端面に熱加工リブを形成すると共に前記先端面の周囲に前記熱加工リブよりも突出量を小さくしたゲートリブを形成し、このゲートリブと前記熱加工リブ間に押圧発熱面を形成して成るフィルター取付用熱溶着チップ。
【請求項4】
前記フィルター取付部形成用熱加工チップ及びフィルター取付用熱溶着チップは、インパルス加熱方式であること、を特徴とする請求項2又は3に記載の熱加工又は熱溶着チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性を確保しながら撥水性を有するフィルターを熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口に対する撥水性フィルターの取付部形成方法と、この形成方法の実施に際して用いられる熱加工チップ及び熱溶着チップ並びに成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や自動車用電子部品の高機能化に伴い、これらの部品は熱可塑性樹脂ケース内に収納されている。
【0003】
そして、前記ケースには、温度変化や気圧の変化により電子部品に悪影響が出ないように、ケース内と外気との間に通気孔が設けられている。
【0004】
しかし、この通気孔をそのままにしておくと、通気孔から雨水がケース内に侵入してトラブルを引き起こすことがあるため、通気孔には通気性は確保し、雨水の侵入は阻止するフィルターが取り付けられている。
【0005】
また、前記ケースの場合、小型軽量化の要求が強いため、フィルターには年々薄手のものが使用されるようになっている。
【0006】
以上のような観点から、ケースに設けた通気孔に対するフィルタの取り付け方法として、特許文献1には、熱板によって熱可塑性樹脂成形品に凹部を形成し、この凹部内にフィルターを引き込んで固定する熱溶着方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、インクをろ過するためのフィルターを熱可塑性樹脂成形品へ溶着する方法として、フィルター固定部に複数の固定リブを設け、フィルター外周部をフィルター固定部に固定し、さらに溶着リブをスエージングによりフィルターの外周を包み込んで固定する方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、はっ水フィルターを防水用樹脂製品へ溶着固定する方法として、はっ水フィルター取付部の周囲に熱カシメ用リブを設け、このリブを熱変形して内側に丸めてはっ水フィルターの周縁部に盛り、同時に溶着ホーンより、はっ水フィルターの周縁部分をはっ水フィルター取付部に溶着して固定する熱カシメ方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−231139号公報
【特許文献2】特開平08−118672号公報
【特許文献3】特開平11−111381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1の方法の場合、熱板によって形成された凹部にフィルターは固定されるが、フィルターの外周部は固定されないままであるため、フィルターの使用時に固定されていない外縁部がめくれ上がって破断、剥離することがあり、作業には慎重さが求められるという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献2の方法の場合、溶着ヘッドによってフィルターを二重の凸溶着リブで固定し、外周リブのスウェージング(倒しこみ)によってフィルター外周が固定されるが、凸溶着リブ先端が熱変形するに従ってフィルターの高さも変化するため、フィルター面とフィルターの外周にシワが発生することがある。さらに、溶着用、スウェージング用、リブ潰しフラット仕上げ用の3つの溶着装置が必要であり、工程数の増加と共に3工程の移行時に位置ずれが発生するという問題がある。
【0012】
また、上記特許文献3の方法の場合、外周リブが変形してフィルターの外周縁に被さるため、特許文献1のような外縁部の剥離や剥がれの心配は無い。しかし、外周リブを熱変形して内側に丸めてはっ水フィルターの周縁部に盛り、同時に溶着ホーンにより、はっ水フィルターの周縁部分をはっ水フィルタ取付部に溶着する工法ため、フィルターにある程度の剛性(厚み)が必要で、軟質な素材や膜厚が薄い(0.3mm以下 特に0.1mm以下のフッ素系多孔質膜メンブレン)フィルターの場合、容易に位置ずれやシワが発生して水密性が確保できないことがある。
【0013】
また、この場合、最終的にはフィルター自体が溶融性を有することが前提のため、溶融性の無い材質、あるいは取付対象となる成形品より溶融温度の高いフィルターには適用できないという問題がある。
【0014】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂成形品の通気孔にフィルターを取り付ける際に、特に膜厚が0.3mm以下の柔軟なフィルター、例えばコシがなくてヒラヒラする、静電気であちこちに張り付き易い等の物性を有するフィルターにおいて、位置ずれやシワが寄らずフィルターをその取付部に正確に固定することができると同時に、経時的に剥離したりすることがないフィルターの取り付けを能率的に行うことができるフィルター取付部の形成方法及びこのフィルター取付部形成用熱加工チップとフィルター取付用熱溶着チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、フィルター取付部形成方法において、熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口の周縁部に熱加工チップの先端を沈み込ませながら加熱して溶融することにより、通気孔の入口又は出口部に一段低くなったフィルター取付面を形成すると共に前記沈み込みにより溶融した樹脂を周囲に盛り上げてフィルター固定リブを形成する成形品の通気孔の入口又は出口部分にフィルターの取付部を形成することを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、フィルター取付部形成用熱加工チップにおいて、チップ本体の先端面の中央に熱可塑性樹脂成形品に形成された通気孔の入口又は出口内に挿入するセンターリブを形成すると共にこのセンターリブの基部の周囲に発熱面を形成し、更にこの発熱面の周囲から垂直方向に垂直壁面を形成し、更にこの垂直壁面から後退した位置に位置決めフランジを形成して成ることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、フィルター取付用熱溶着チップにおいて、チップ本体の先端面に熱加工リブを形成すると共に前記先端面の周囲に前記熱加工リブよりも突出量を小さくしたゲートリブを形成し、このゲートリブと前記熱加工リブ間に押圧発熱面を形成して成ることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の熱加工又は熱溶着チップは、インパルス加熱方式であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項に記載の発明によると、フィルターの大きさに合わせて、生産現場においてフィルター取付部の加工を行うことができる。
【0020】
次に、請求項に記載の発明によると、フィルター取付部をワンタッチ操作で簡単に形成できる。
【0021】
次に、請求項に記載の発明によると、フィルターを簡単に取り付けることができると共に押圧発熱面の周囲に形成されたゲートリブは、熱加工チップが沈むに従って熱可塑性樹脂成形品に接触するため、溶融した樹脂が外周にはみ出す事が防止され、フィルターの外縁部を確実に固定することができる。
【0022】
次に、請求項に記載の発明によると、チップを効率良く加熱することができると共に制御がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】通気孔にフィルターを取り付けた熱可塑性樹脂成形品
図2】フィルターを取り付部の拡大図
図3】通気孔に対するフィルター取付用熱加工チップの外観図。
図4】実施例1の通気孔に対するフィルター取付用熱加工チップ及びフィルターと樹脂成形品の通気孔部分の断面図。
図5】(a) フィルター取付面と熱可塑性樹脂成形品面が同一面の断面図。(b) フィルター取付面が熱可塑性樹脂成形品面より高い断面図。
図6】(a)〜(f) 請求項1に記載したフィルターの取付工程の説明図。
図7】フィルター取付部形成用熱加工チップの外観図。
図8】フィルター取付部形成用熱加工チップ及び樹脂成形品の通気孔部分の断面図。
図9】(a)〜(e) 請求項2に記載したフィルター取付部の形成工程方法の説明図。
図10】(a)、(b) 複数の通気孔にフィルターを取り付けるイメージの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、熱溶着チップは、熱可塑性樹脂成形品に設けた通気孔の入口又は出口に対してフィルターの取付部を形成する際に用いられるものと、前記形成した取付部にフィルターを取り付ける際に用いられるものとの2種類がある。
【実施例1】
【0025】
本実施例1は、フィルターの取付方法とこの方法の実施に用いられる請求項及びに記載したフィルター取付部形成用熱加工チップ22及びフィルター取付用熱溶着チップに関するものである。
【0026】
先づ、フィルター取付用熱溶着チップについて図3図4を用いて説明すると、フィルター取付用熱溶着チップ2は、その先端3に逃し孔4をとり囲むように発熱押圧面6が形成されていると共に、この発熱押圧面6の内側にはリング状の熱加工リブ5が突設され、更に発熱押圧面6の外周縁にはゲートリブ7が突設されている。
【0027】
因に、前記熱加工リブ5の高さは、前記ゲートリブ7より0.5mm(0.1mm以上であれば形状に応じて任意の寸法)高い。
【0028】
8、8aは発熱押圧面6の裏側において、対称位置に形成された冷却エアーの流出窓、9、9aはフィルター取付用溶着チップ2の両側面において対称位置に形成されたスリット、10は冷却エアーパイプ、11、11aは電圧印加用のリード線、12は絶縁体、、13は熱可塑性樹脂成形品、14はフィルター取り付面、15はフィルター固定リブ、16は熱可塑性樹脂成形品13に形成された通気孔、17は前記冷却エアーパイプ10から吹き出された冷却エアー、18は取付対象となる撥液フィルターである。
【0029】
なお、フィルター取付用溶着チップ2の先端の中央に逃し孔4を設けることによって、発熱押圧面6の熱がフィルター18に影響しない構成となっている。
【0030】
図4において、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口と出口にはフィルター取付面14と、フィルター取付面14の周囲にフィルター固定リブ15が形成されていて、図6aのようにフィルター18はフィルター取付面14に手作業または自動ローディング機によって落し込んでセットされる。
【0031】
因に、本実施例1におけるフィルター18は、フッ素樹脂(PTFE)多孔質体メンブレンでt=0.1mm φ11.0mmである。
【0032】
また、フィルター取付用溶着チップ2の熱加工リブ5は、外径φ10.0mm、内径φ9.0mm、ゲートリブ7の外径φ17.0mm、熱加工リブ5の先端と発熱押圧面6との段差は0.8mm、熱加工リブ5の先端とゲートリブ7の先端の段差は0.5mmである。
【0033】
フィルター18を溶着する熱可塑性樹脂成形品13はABS樹脂製で、φ4.0mmの通気孔16が設けられている。
【0034】
次に、図6a〜図6fに基づいてフィルター18の取付方法を説明する。
【0035】
図6aは、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口に形成されたフィルター取付面14内にフィルター18を落し込み、この上方に熱加工装置1のフィルター取付用熱溶着チップ2が移動して来てスタンバイしている状態である。
【0036】
図6bは、フィルター取付用熱溶着チップ2が降下して来てフィルター取付用熱溶着チップ2の押圧発熱面6とフィルター固定リブ15が接触し、同時に熱加工リブ5の先端部がフィルター18に接触した状態である。ここで電源装置(図示せず)からリード線11,11aに電圧を印加すると電気抵抗によりフィルター取付用熱溶着チップ2の先端に形成した押圧発熱面6が発熱する。
【0037】
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は電源装置で制御されるが、フィルター取付用熱溶着チップ2の先端に取り付けた熱電対(図示せず)によってフィードバック制御することも有効である。
【0038】
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は、フィルター18と熱可塑性樹脂成形品13の材質によって適宜設定可能であるが、フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は熱可塑性樹脂成形品13の融点より50℃以上高く、フィルター18の融点よりは、低いことが必要である。
【0039】
実施例1において、熱可塑性樹脂成形品13の材質はABS樹脂で融点は110℃、フィルター18はポリテトラフルオロエチレンの多孔質材で融点は327℃、フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は260℃である。
【0040】
同時に、フィルター取付用熱溶着チップ2は、図示しない駆動装置により成形品13に対して適宜な押し圧で押し付けられる。
【0041】
次に、図6cに示すようにフィルター取付用熱溶着チップ2の押圧発熱面6に押圧されながら加熱されたフィルター固定リブ15は、上部から溶融を開始して押圧発熱面6に沿って左右に広がり、これにつれてフィルター取付用熱溶着チップ2が更に下降する。
【0042】
次に、図6dに示すように下降したフィルター取付用熱溶着チップ2の熱加工リブ5がフィルター18に接触する。熱加工リブ5はフィルター18を押圧しながら周囲を加熱する。この時、熱加工リブ5は、下降時(沈み込み時)にフィルター18に対してその中心から外周方向に押し広げるような力を加えることになるため、フィルター18にシワがよることはない。
【0043】
フィルター18は熱加工リブ5により熱可塑性樹脂成形品13のフィルター取付面14に凹状に変形しながら沈み込み、同時に溶融した熱加工リブ5の樹脂がフィルター18の肉厚内に染み込む。
【0044】
なお、この段階で加熱されて溶融したフィルター固定リブ15は、押圧発熱面6沿って左右に広がっているが、フィルター18の周縁には達していない。
【0045】
さらにフィルター取付用熱溶着チップ2が下がると、図6eに示すように溶融した樹脂はフィルター固定リブ15の外側15aからゲートリブ7に達するが、ゲートリブ7の先端は熱可塑性樹脂成形品13に接しているため、ゲートリブ7で堰き止められ、ゲートリブ7の外側に流れ出ることは無い。
【0046】
このため、溶融したフィルター固定リブ15の内側15bが熱加工リブ5に沿って下方に流れ、やがてフィルター18の周縁部を覆う。
【0047】
因に、フィルター取付用熱溶着チップ2の降下位置は、事前に設定してあり、本実施例1においては、その降下位置は熱加工リブ5がフィルター18の厚み(0.1mm)に接し、この厚さが半分(0.05mm)まで潰れる位置とした。
【0048】
また、この降下位置でゲートリブ7は熱可塑性樹脂成形品13に0.3mm食い込んだ状態とした。これにより溶融したフィルター固定リブ15の外側15aがはみ出すのを防止すると同時に、フィルター取付面14の周囲には、ゲートリブ7の先端により深さ0.3mmの見切り溝7aが形成されるため加工後の美観も向上する(図6e,図6f参照)。
【0049】
フィルター固定リブ15の体積(断面積)は、加工前の体積に対して加工後が小さくなるように設定することで、フィルター取付用熱溶着チップ2の降下位置において溶融したフィルター固定リブ15は熱加工リブ5とゲートリブ7の間で圧力がかかり、溶融した樹脂がフィルター18に染みこむ。フィルター固定リブ15の加工後/加工前の体積比は90〜99%の範囲で適宜選択されるが、本実施例1では95%とした。
【0050】
フィルター18に溶融した樹脂が染み込み、かつ溶融した樹脂がフィルター18の周縁上を覆っている状態を図2に示す。
【0051】
設定した下降位置で設定した加熱時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に図6eに示すようにフィルター取付用熱溶着チップ2に設けた冷却エアーパイプ10から冷却エアー17を供給することにより、この冷却エアー17は発熱押圧面6の裏側に噴出し、この噴出したエアー圧でフィルター取付用溶着チップ2の押圧発熱面6を含むフィルター取付用熱溶着チップ2の先端3は内部から冷却される。
【0052】
その後、冷却エアー17は流出窓8,8a及びスリット9,9aからフィルター取付用熱溶着チップ2の外に放出される。
【0053】
このようにして、あらかじめ設定した時間でフィルター取付用熱溶着チップ2の先端3を冷却することで熱加工リブ5、押圧発熱面6、ゲートリブ7が冷却され、溶融したフィルター固定リブ15の外側15a及び内側15bが固化する。更にフィルター18内に染み込んだ樹脂18aが冷却されることにより固化し、フィルター18はこの染み込んだ樹脂の固化の作用でも熱可塑性樹脂成形品13に固定される。
【0054】
その後、冷却エアー17の供給を止め、フィルター取付用熱溶着チップ2を上昇させてフィルター18から上方に逃がす。
【0055】
この結果、フィルター18は、図6fのように熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口に固定される。
【0056】
図1はフィルター取り付け後の断面図である。
【0057】
本実施例は図5aのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面より低い取付位置であったが、図5aのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面と同一高さ、または図5bのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面より高い場合も同じようにフィルターの取付が可能である。
【0058】
また、フィルター18の形状およびフィルター取付部の通気孔16の形状は丸穴に限らず、多角形の場合も本発明は実施可能であり、また図10aに示すように通気孔16が複数ある場合および10b通気孔16が略矩形で十字型の梁がある形状も実施化は可能であり、この例から明らかなように、本発明は多様な形態の通気孔16、フィルター18に実施化が可能である。
【実施例2】
【0059】
本実施例2は、請求項2に記載したフィルターの取付部形成用熱加工チップと、このチップを用いて行うフィルター取付部の形成方法に関する実施例であって、図7及び図8に熱加工チップの構造を示し、図9a〜図9eに請求項に記載したフィルター取付部の形成方法を示す。
【0060】
なお、ここでフィルター取付部形成用熱加工チップ22は、フィルター取付部14、フィルター固定部リブ15の形成用である。
【0061】
図7はフィルター取付部形成用の熱加工装置の斜視図、図8は熱加工装置の中央縦断面図、図9a〜図9eは形成方法の説明図であって、符号の21は熱加工装置全体を示し、22はフィルター取付部形成用熱加工チップである。
【0062】
このフィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端の発熱面23には円筒状で中央が空洞のガイド部24が突設され、ガイド部24の先端より後退した周囲に面取り部25aに続いてフィルター取付面形成部25bが形成されていると共に、前記発熱面23の外周26であってフィルター取付面形成部25bより後退した位置にフランジ27が形成されている。
【0063】
前記ガイド部24の先端にはR0.3、外周には2°のテーパーが設けられ、フィルター取付部形成用熱加工チップ22を熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16内にスムーズに挿入して簡単にフィルター取付部形成用熱加工チップ22の位置決めが可能なようにしている。
【0064】
符号の8、8aは発熱面23の裏側において、フィルター取付部形成用熱加工チップ22の側面の対称位置に形成された冷却エアーの流出窓、9、9aはフィルター取付部形成用熱加工チップ22の側面において、対称位置に形成された縦割りのスリット、10は冷却エアーパイプ、11、11aは電圧印加用のリード線、12は絶縁体、13は熱可塑性樹脂成形品、16は熱可塑性樹脂成形品13に形成された通気孔、17は前記図9dにおいて、フィルター取付部形成用熱加工チップ22でフィルター取付部を溶融して形成したのち、この溶融した部分に冷風を吹き付けて冷却固化するために冷却エアーパイプ10から吹き出された冷却エアーである。
【0065】
次に、図9a〜図9eに基づいてフィルター取付部の加工方法を説明する。
【0066】
図9aは、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16にフィルター取付部形成用熱加工チップ22のガイド部24を挿入した状態である。ここで電源装置(図示せず)からリード線11,11aに電圧を印加すると電気抵抗によりフィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端に形成した発熱面23が発熱する。
【0067】
同時に、フィルター取付部形成用熱加工チップ22は、図示しない駆動装置により成形製品13に対して適宜な押し圧で押し付けられる。
【0068】
ガイド部24のテーパ部の根元で面取り部25aとの境界部の直径は、通気孔16と同じ直径になっている。さらにガイド部24は先端に向かうほど発熱面23から離れるため温度が上昇しない。
【0069】
このため、面取り部25aに接した通気孔16のリブの周縁部分は、溶融が始まると面取り部25aの勾配に沿ってフィルター取付面形成部25b側に押し流され、さらに加熱が進んでフィルター取付面形成部25bに接した部分は溶融するが、ガイド部24の先端方向には樹脂が流動せず、図9bに示すようにフィルター取付面形成部25bの外側へ押し出される。
【0070】
このため、通気孔16にはバリが発生せず、バリに起因する通気孔16内への異物混入を防止出来る。
【0071】
さらにフィルター取付部形成用熱加工チップ22が下降すると、フィルター取付部形成用熱加工チップ22のフィルター取付面成形部25bが通気孔16の入口の周囲において成形品13の表面に沈み込み、加熱溶融された樹脂は図9cに示すように外周26側に押し出されて盛り上がり、やがて図9dに示すように盛り上がった樹脂の先端はフランジ27に達する。
【0072】
こうして通気孔16の周囲に沈み込んだフィルター取付部形成用熱加工チップ22は、その沈み量の樹脂を溶融しながら周囲に押し出し、フィルター取付面形成部25bを形成すると同時に、外周26およびフランジ27によって通気孔16の入口にフィルター取付部(フィルター落し込み段部)14とフィルター固定リブ15を形成する。
【0073】
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の降下位置は、事前に設定してあり、本実施例2においては、その降下位置はフィルター取付面形成部25bとフィルター固定リブ15が設計寸法に形成される位置とした。
【0074】
設定した下降位置で加熱時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に図9dに示すようにフィルター取付部形成用熱加工チップ22内に設けた冷却パイプ10に冷却エアー17を供給することにより、この冷却エアー17は発熱面23の裏側に噴出し、この噴出したエアー圧でフィルター取付部形成用熱加工チップ22の発熱面23の裏側を含むフィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端は内部から冷却される。
【0075】
その後、冷却エアー17は流出窓8,8a及びスリット9,9a及びガイド24の孔からフィルター取付部形成用熱加工チップ22の外に放出される。
【0076】
このようにして、あらかじめ設定した時間でフィルター取付部形成用熱加工チップ22の発熱面23を冷却することでガイド24、面取り部25a、フィルター取付面形成部25b、外周26、フランジ27が冷却され、溶融して盛り上がった樹脂は平面視で輪状のフィルター固定リブ15となって固化する。その後、冷却エアー17の供給を止め、フィルター取付部形成用熱加工チップ22を上昇させて熱可塑性樹脂成形品13からフィルター取付部形成用熱加工チップ22を逃がす。
【0077】
この結果、図9eのように熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口の周囲にフィルター取付面14とフィルター固定リブ15が形成される。
【0078】
以上がフィルター取付部を成形するフィルター取付部形成用熱加工チップ22の構成とフィルター取付部の成形方法である。
【0079】
このようにして形成したフィルター取付部に対して、実施例1に記載したフィルター取付用熱溶着チップ2を用いてフィルター18が取り付けられる。
【0080】
因に、本実施例2において、熱可塑性樹脂成形品13の材質はABS樹脂で、フィルター取付部形成用熱加工チップ22の温度は260℃に設定した。
【0081】
図10aは、通気孔16が成形品13に複数設けられている場合に、この複数の通気孔16を一枚のフィルター18で一括して覆い、かつフィルター固定リブ15で固定する例、のイメージを描いた図、図10bは、通気孔16が成形品13において格子状に形成されている場合の実施例のイメージを描いた図である。
【符号の説明】
【0082】
1 熱加工装置
フィルター取付用熱溶着チップ
3 先端
4 逃し孔
5 熱加工リブ
6 押圧発熱面
7 ゲートリブ
8 冷却エアーの流出窓
9 スリット
10 冷却パイプ
11、11a リード線
12 絶縁体
13 熱可塑性樹脂成形品
14 フィルター取付面
15 フィルター固定リブ
16 通気孔
17 冷却エアー
18 フィルター
18a フィルターに染み込んだ樹脂
21 熱加工装置
22 フィルター取付部形成用熱加工チップ
23 発熱面
24 ガイド部
25a 面取り部
25b フィルター取付面形成部
26 外周
27 フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10