【実施例1】
【0025】
本実施例1は、フィルターの取付方法とこの方法の実施に用いられる請求項
2及び
3に記載した
フィルター取付部形成用熱加工チップ
22及び
フィルター取付用熱溶着チップ
2に関するものである。
【0026】
先づ、フィルター取付用熱溶着チップについて
図3、
図4を用いて説明すると、
フィルター取付用熱溶着チップ2は、その先端3に逃し孔4をとり囲むように発熱押圧面6が形成されていると共に、この発熱押圧面6の内側にはリング状の熱加工リブ5が突設され、更に発熱押圧面6の外周縁にはゲートリブ7が突設されている。
【0027】
因に、前記熱加工リブ5の高さは、前記ゲートリブ7より0.5mm(0.1mm以上であれば形状に応じて任意の寸法)高い。
【0028】
8、8aは発熱押圧面6の裏側において、対称位置に形成された冷却エアーの流出窓、9、9aは
フィルター取付用熱
溶着チップ2の両側面において対称位置に形成されたスリット、10は冷却エアーパイプ、11、11aは電圧印加用のリード線、12は絶縁体、、13は熱可塑性樹脂成形品、14はフィルター取り付面、15はフィルター固定リブ、16は熱可塑性樹脂成形品13に形成された通気孔、17は前記冷却エアーパイプ10から吹き出された冷却エアー、18は取付対象となる撥液フィルターである。
【0029】
なお、
フィルター取付用熱
溶着チップ2の先端の中央に逃し孔4を設けることによって、発熱押圧面6の熱がフィルター18に影響しない構成となっている。
【0030】
図4において、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口と出口にはフィルター取付面14と、フィルター取付面14の周囲にフィルター固定リブ15が形成されていて、
図6aのようにフィルター18はフィルター取付面14に手作業または自動ローディング機によって落し込んでセットされる。
【0031】
因に、本実施例1におけるフィルター18は、フッ素樹脂(PTFE)多孔質体メンブレンでt=0.1mm φ11.0mmである。
【0032】
また、
フィルター取付用熱
溶着チップ2の熱加工リブ5は、外径φ10.0mm、内径φ9.0mm、ゲートリブ7の外径φ17.0mm、熱加工リブ5の先端と発熱押圧面6との段差は0.8mm、熱加工リブ5の先端とゲートリブ7の先端の段差は0.5mmである。
【0033】
フィルター18を溶着する熱可塑性樹脂成形品13はABS樹脂製で、φ4.0mmの通気孔16が設けられている。
【0034】
次に、
図6a〜
図6fに基づいてフィルター18の取付方法を説明する。
【0035】
図6aは、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口に形成されたフィルター取付面14内にフィルター18を落し込み、この上方に熱加工装置1の
フィルター取付用熱溶着チップ2が移動して来てスタンバイしている状態である。
【0036】
図6bは、
フィルター取付用熱溶着チップ2が降下して来て
フィルター取付用熱溶着チップ2の押圧発熱面6とフィルター固定リブ15が接触し、同時に熱加工リブ5の先端部がフィルター18に接触した状態である。ここで電源装置(図示せず)からリード線11,11aに電圧を印加すると電気抵抗により
フィルター取付用熱溶着チップ2の先端に形成した押圧発熱面6が発熱する。
【0037】
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は電源装置で制御されるが、
フィルター取付用熱溶着チップ2の先端に取り付けた熱電対(図示せず)によってフィードバック制御することも有効である。
【0038】
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は、フィルター18と熱可塑性樹脂成形品13の材質によって適宜設定可能であるが、
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は熱可塑性樹脂成形品13の融点より50℃以上高く、フィルター18の融点よりは、低いことが必要である。
【0039】
実施例1において、熱可塑性樹脂成形品13の材質はABS樹脂で融点は110℃、フィルター18はポリテトラフルオロエチレンの多孔質材で融点は327℃、
フィルター取付用熱溶着チップ2の加熱温度は260℃である。
【0040】
同時に、
フィルター取付用熱溶着チップ2は、図示しない駆動装置により成形品13に対して適宜な押し圧で押し付けられる。
【0041】
次に、
図6cに示すように
フィルター取付用熱溶着チップ2の押圧発熱面6に押圧されながら加熱されたフィルター固定リブ15は、上部から溶融を開始して押圧発熱面6に沿って左右に広がり、これにつれて
フィルター取付用熱溶着チップ2が更に下降する。
【0042】
次に、
図6dに示すように下降した
フィルター取付用熱溶着チップ2の熱加工リブ5がフィルター18に接触する。熱加工リブ5はフィルター18を押圧しながら周囲を加熱する。この時、熱加工リブ5は、下降時(沈み込み時)にフィルター18に対してその中心から外周方向に押し広げるような力を加えることになるため、フィルター18にシワがよることはない。
【0043】
フィルター18は熱加工リブ5により熱可塑性樹脂成形品13のフィルター取付面14に凹状に変形しながら沈み込み、同時に溶融した熱加工リブ5の樹脂がフィルター18の肉厚内に染み込む。
【0044】
なお、この段階で加熱されて溶融したフィルター固定リブ15は、押圧発熱面6沿って左右に広がっているが、フィルター18の周縁には達していない。
【0045】
さらに
フィルター取付用熱溶着チップ2が下がると、
図6eに示すように溶融した樹脂はフィルター固定リブ15の外側15aからゲートリブ7に達するが、ゲートリブ7の先端は熱可塑性樹脂成形品13に接しているため、ゲートリブ7で堰き止められ、ゲートリブ7の外側に流れ出ることは無い。
【0046】
このため、溶融したフィルター固定リブ15の内側15bが熱加工リブ5に沿って下方に流れ、やがてフィルター18の周縁部を覆う。
【0047】
因に、
フィルター取付用熱溶着チップ2の降下位置は、事前に設定してあり、本実施例1においては、その降下位置は熱加工リブ5がフィルター18の厚み(0.1mm)に接し、この厚さが半分(0.05mm)まで潰れる位置とした。
【0048】
また、この降下位置でゲートリブ7は熱可塑性樹脂成形品13に0.3mm食い込んだ状態とした。これにより溶融したフィルター固定リブ15の外側15aがはみ出すのを防止すると同時に、フィルター取付面14の周囲には、ゲートリブ7の先端により深さ0.3mmの見切り溝7aが形成されるため加工後の美観も向上する(
図6e,
図6f参照)。
【0049】
フィルター固定リブ15の体積(断面積)は、加工前の体積に対して加工後が小さくなるように設定することで、
フィルター取付用熱溶着チップ2の降下位置において溶融したフィルター固定リブ15は熱加工リブ5とゲートリブ7の間で圧力がかかり、溶融した樹脂がフィルター18に染みこむ。フィルター固定リブ15の加工後/加工前の体積比は90〜99%の範囲で適宜選択されるが、本実施例1では95%とした。
【0050】
フィルター18に溶融した樹脂が染み込み、かつ溶融した樹脂がフィルター18の周縁上を覆っている状態を
図2に示す。
【0051】
設定した下降位置で設定した加熱時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に
図6eに示すように
フィルター取付用熱溶着チップ2に設けた冷却エアーパイプ10から冷却エアー17を供給することにより、この冷却エアー17は発熱押圧面6の裏側に噴出し、この噴出したエアー圧で
フィルター取付用熱
溶着チップ2の押圧発熱面6を含む
フィルター取付用熱溶着チップ2の先端3は内部から冷却される。
【0052】
その後、冷却エアー17は流出窓8,8a及びスリット9,9aから
フィルター取付用熱溶着チップ2の外に放出される。
【0053】
このようにして、あらかじめ設定した時間で
フィルター取付用熱溶着チップ2の先端3を冷却することで熱加工リブ5、押圧発熱面6、ゲートリブ7が冷却され、溶融したフィルター固定リブ15の外側15a及び内側15bが固化する。更にフィルター18内に染み込んだ樹脂18aが冷却されることにより固化し、フィルター18はこの染み込んだ樹脂の固化の作用でも熱可塑性樹脂成形品13に固定される。
【0054】
その後、冷却エアー17の供給を止め、
フィルター取付用熱溶着チップ2を上昇させてフィルター18から上方に逃がす。
【0055】
この結果、フィルター18は、
図6fのように熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口に固定される。
【0056】
図1はフィルター取り付け後の断面図である。
【0057】
本実施例は
図5aのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面より低い取付位置であったが、
図5aのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面と同一高さ、または
図5bのようにフィルター取付面14が熱可塑性樹脂成形品13の面より高い場合も同じようにフィルターの取付が可能である。
【0058】
また、フィルター18の形状およびフィルター取付部の通気孔16の形状は丸穴に限らず、多角形の場合も本発明は実施可能であり、また
図10aに示すように通気孔16が複数ある場合および10b通気孔16が略矩形で十字型の梁がある形状も実施化は可能であり、この例から明らかなように、本発明は多様な形態の通気孔16、フィルター18に実施化が可能である。
【実施例2】
【0059】
本実施例2は、請求項2に記載したフィルターの取付部形成用熱加工チップと、このチップを用いて行うフィルター取付部の形成方法に関する実施例であって、
図7及び
図8に熱加工チップの構造を示し、
図9a〜
図9eに請求項
2に記載したフィルター取付部の形成方法を示す。
【0060】
なお、ここで
フィルター取付部形成用熱加工チップ22は、フィルター取付部14、フィルター固定部リブ15の形成用である。
【0061】
図7はフィルター取付部形成用の熱加工装置の斜視図、
図8は熱加工装置の中央縦断面図、
図9a〜
図9eは形成方法の説明図であって、符号の21は熱加工装置全体を示し、22は
フィルター取付部形成用熱加工チップである。
【0062】
この
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端の発熱面23には円筒状で中央が空洞のガイド部24が突設され、ガイド部24の先端より後退した周囲に面取り部25aに続いてフィルター取付面形成部25bが形成されていると共に、前記発熱面23の外周26であってフィルター取付面形成部25bより後退した位置にフランジ27が形成されている。
【0063】
前記ガイド部24の先端にはR0.3、外周には2°のテーパーが設けられ、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22を熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16内にスムーズに挿入して簡単に
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の位置決めが可能なようにしている。
【0064】
符号の8、8aは発熱面23の裏側において、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の側面の対称位置に形成された冷却エアーの流出窓、9、9aは
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の側面において、対称位置に形成された縦割りのスリット、10は冷却エアーパイプ、11、11aは電圧印加用のリード線、12は絶縁体、13は熱可塑性樹脂成形品、16は熱可塑性樹脂成形品13に形成された通気孔、17は前記
図9dにおいて、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22でフィルター取付部を溶融して形成したのち、この溶融した部分に冷風を吹き付けて冷却固化するために冷却エアーパイプ10から吹き出された冷却エアーである。
【0065】
次に、
図9a〜
図9eに基づいてフィルター取付部の加工方法を説明する。
【0066】
図9aは、熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16に
フィルター取付部形成用熱加工チップ22のガイド部24を挿入した状態である。ここで電源装置(図示せず)からリード線11,11aに電圧を印加すると電気抵抗により
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端に形成した発熱面23が発熱する。
【0067】
同時に、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22は、図示しない駆動装置により成形製品13に対して適宜な押し圧で押し付けられる。
【0068】
ガイド部24のテーパ部の根元で面取り部25aとの境界部の直径は、通気孔16と同じ直径になっている。さらにガイド部24は先端に向かうほど発熱面23から離れるため温度が上昇しない。
【0069】
このため、面取り部25aに接した通気孔16のリブの周縁部分は、溶融が始まると面取り部25aの勾配に沿ってフィルター取付面形成部25b側に押し流され、さらに加熱が進んでフィルター取付面形成部25bに接した部分は溶融するが、ガイド部24の先端方向には樹脂が流動せず、
図9bに示すようにフィルター取付面形成部25bの外側へ押し出される。
【0070】
このため、通気孔16にはバリが発生せず、バリに起因する通気孔16内への異物混入を防止出来る。
【0071】
さらに
フィルター取付部形成用熱加工チップ22が下降すると、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22のフィルター取付面成形部25bが通気孔16の入口の周囲において成形品13の表面に沈み込み、加熱溶融された樹脂は
図9cに示すように外周26側に押し出されて盛り上がり、やがて
図9dに示すように盛り上がった樹脂の先端はフランジ27に達する。
【0072】
こうして通気孔16の周囲に沈み込んだ
フィルター取付部形成用熱加工チップ22は、その沈み量の樹脂を溶融しながら周囲に押し出し、フィルター取付面形成部25bを形成すると同時に、外周26およびフランジ27によって通気孔16の入口にフィルター取付部(フィルター落し込み段部)14とフィルター固定リブ15を形成する。
【0073】
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の降下位置は、事前に設定してあり、本実施例2においては、その降下位置はフィルター取付面形成部25bとフィルター固定リブ15が設計寸法に形成される位置とした。
【0074】
設定した下降位置で加熱時間が経過した後、電圧の印加を止めると同時に
図9dに示すように
フィルター取付部形成用熱加工チップ22内に設けた冷却パイプ10に冷却エアー17を供給することにより、この冷却エアー17は発熱面23の裏側に噴出し、この噴出したエアー圧で
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の発熱面23の裏側を含む
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の先端は内部から冷却される。
【0075】
その後、冷却エアー17は流出窓8,8a及びスリット9,9a及びガイド24の孔から
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の外に放出される。
【0076】
このようにして、あらかじめ設定した時間で
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の発熱面23を冷却することでガイド24、面取り部25a、フィルター取付面形成部25b、外周26、フランジ27が冷却され、溶融して盛り上がった樹脂は平面視で輪状のフィルター固定リブ15となって固化する。その後、冷却エアー17の供給を止め、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22を上昇させて熱可塑性樹脂成形品13から
フィルター取付部形成用熱加工チップ22を逃がす。
【0077】
この結果、
図9eのように熱可塑性樹脂成形品13の通気孔16の入口の周囲にフィルター取付面14とフィルター固定リブ15が形成される。
【0078】
以上がフィルター取付部を成形する
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の構成とフィルター取付部の成形方法である。
【0079】
このようにして形成したフィルター取付部に対して、実施例1に記載した
フィルター取付用熱溶着チップ2を用いてフィルター18が取り付けられる。
【0080】
因に、本実施例2において、熱可塑性樹脂成形品13の材質はABS樹脂で、
フィルター取付部形成用熱加工チップ22の温度は260℃に設定した。
【0081】
図10aは、通気孔16が成形品13に複数設けられている場合に、この複数の通気孔16を一枚のフィルター18で一括して覆い、かつフィルター固定リブ15で固定する例、のイメージを描いた図、
図10bは、通気孔16が成形品13において格子状に形成されている場合の実施例のイメージを描いた図である。