(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6472990
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】カテーテルシステムをパージするための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20190207BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
A61M5/315 500
A61M25/00
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-245301(P2014-245301)
(22)【出願日】2014年12月3日
(62)【分割の表示】特願2012-510873(P2012-510873)の分割
【原出願日】2010年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-42360(P2015-42360A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年12月3日
【審判番号】不服2017-9677(P2017-9677/J1)
【審判請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】12/387,937
(32)【優先日】2009年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ダブリュ.ハウレット
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ブイ.マーサー
(72)【発明者】
【氏名】アメリオ パオルッチ
【合議体】
【審判長】
林 茂樹
【審判官】
高木 彰
【審判官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5059181(US,A)
【文献】
特表2005−515847(JP,A)
【文献】
独国実用新案第2005004079(DE,U1)
【文献】
特表平8−504352(JP,A)
【文献】
米国特許第5891052(US,A)
【文献】
特表2008−539843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側の開口と、その近位側の開口に配置された保持リングと、を含んだバレルと、
前記バレル内で摺動可能に変位するために前記バレル内に配置されたプランジャロッドであって、そのプランジャロッドは、ステムとそのステムに沿って配置された複数の作動幾何要素を含み、前記保持リングを過ぎる前記複数の作動幾何要素の変位が前記バレル内での加速や速度を生み出し、前記加速や速度が前記バレルから排出される液体を乱れたフラッシュ液体とするように、前記複数の作動幾何要素が前記保持リングによって遮られている、プランジャロッドと、
前記複数の作動幾何要素に対して近位に配置された注意喚起リングであって、前記注意喚起リングは、前記保持リングを過ぎて前記注意喚起リングを移動する力が必要であるよう形状が定められ、前記移動する力は、前記保持リングを過ぎて前記複数の作動幾何要素を移動するために必要な力よりも大きく、前記注意喚起リングは、前記バレル内での前記加速や速度が前記バレル内での最後の加速や速度であるという触知の兆候を提供する、注意喚起リングと、
を具えることを特徴とするフラッシングシリンジ。
【請求項2】
前記プランジャロッドの前記ステムは、前記バレル内で前記プランジャロッドが遠位へ変位するときに前記バレル内での加速や速度を防ぐ、前記複数の作動幾何要素間の空間を備えていることを特徴とする請求項1に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項3】
前記複数の作動幾何要素は複数のリングを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項4】
前記複数のリングは、前記保持リングを通って近位に変位するよりも、前記保持リングを通って遠位に変位する方がより容易である形状とサイズであることを特徴とする請求項3に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項5】
前記複数のリングは、前記保持リングを通って遠位に変位するよりも、前記保持リングを通って近位に変位する方がより容易である形状とサイズであることを特徴とする請求項3に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項6】
前記複数の作動幾何要素は、複数のナブを備えていることを特徴とする請求項1に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項7】
近位の開口と、エラストマー製の制限器の選択されたデュロメータを有するエラストマー製の制限器であって、前記近位の開口に配置され制限器入口を作る、エラストマー製の制限器と、を含むバレルと、
前記バレル内で摺動可能に変位するために前記バレル内に配置されたプランジャロッドであって、前記プランジャロッドは、複数の延伸された側面部材を含んだステムを具え、前記延伸された側面部材は、衝突の幾何要素を有する複数の高いポイントを有する隆起する外側縁を具え、前記複数の高いポイントは、前記バレル内において前記プランジャロッドが前記制限器を通って遠位に変位するための所定の力を必要とする制限器と衝突し、前記複数の高いポイントが前記制限器を通って変位する度に、取り付けられたカテーテルシステムをパージするための乱流が発生する、プランジャロッドと、
を具えていることを特徴とするフラッシングシリンジ。
【請求項8】
前記バレルはある量の液体を具え、前記制限器は、高いポイントが制限器入口を通って変位されるとき、液体に乱流を生じさせる選択されたデュロメーターを持った弾性体を具えていることを特徴とする請求項7に記載のフラッシングシリンジ。
【請求項9】
取り付けられるシリンジのプランジャと組み合わされてシリンジのバレル内の液体を移送するのに用いられるプランジャロッドであって、前記シリンジの前記バレルが近位に配置された保持リングを有し、前記プランジャロッドが、自らの近位端と前記プランジャとの間に延伸されて配置されたステムと、前記保持リングと相互作用するために、前記ステムに付加された前記プランジャに対して近位に配置された進入ディスクと、を有し、前記進入ディスクは触知により識別可能な係止部を備え、前記進入ディスクおよび該保持リングは前記識別可能な係止部の触知指示を行うための機会を提供して、前記識別可能な係止部は前記バレル内の前記プランジャおよび前記プランジャロッドの近位側への変位の限界を示すようにされている前記プランジャロッドが、
前記ステムに沿って配置された複数の作動幾何要素であって、前記保持リングを過ぎる前記複数の作動幾何要素の変位が前記シリンジの前記バレル内での加速や速度を生み出し、前記加速や速度が前記バレルから排出される液体を乱れたフラッシュ液体とするように、前記複数の作動幾何要素が前記保持リングによって遮られている、複数の作動幾何要素と、
前記複数の作動幾何要素に対して近位に配置された注意喚起リングであって、前記注意喚起リングは、前記保持リングを過ぎて前記注意喚起リングを移動する力が必要であるよう形状が定められ、前記移動する力は、前記保持リングを過ぎて前記複数の作動幾何要素を移動するために必要な力よりも大きく、前記注意喚起リングは、前記注意喚起リングを用いる作動の結果もたらされる前記シリンジの前記バレル内での前記加速や速度が前記シリンジの前記バレル内での最後の加速や速度であるという触知の兆候を提供する、注意喚起リングと、
を具えていることを特徴とするプランジャロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルシステム(例えばIVライン)内で、制御され且つ一貫性のある乱れたフラッシング圧力(controlled and consistent turbulent flushing pressure)および流れを生成することによりカテーテルシステムを浄化し、ライン内の好ましくない残渣(residue)をパージする装置および方法に関するものである。そして、本発明は特に、臨床技術から独立して、かかる乱れた洗浄圧力および流れを生成する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IV治療分野においては、IVカテーテル(例えば中心静脈カテーテル)に対し乱流の「発停(start-stop)」ないしは「プッシュ−ポーズ(push-pause)」フラッシングを行うことでカテーテルから物質をパージし、カテーテル内に血液、血液残渣およびIV薬物の付着物が堆積(build-up)されないようにする方法が受け入れられるようになってきていることがよく知られている。これらが堆積されると、カテーテルシステムの流体通路を部分的もしくは完全に閉塞してしまい、カテーテルをパージするのに高価で危険性のある方法を要することになるか、あるいはカテーテル全体を交換する必要が生じる。しばしば、かかる閉塞は、患者のケアを危うくし得る治療(例えばIV治療)の中断をもたらすものとなる。さらに、カテーテル内の残渣の堆積物は、微生物類の繁殖培地(breeding medium)となることによって、感染症の危険性を高めるものともなり得る。この理由により、プッシュ−ポーズ式のフラッシングを行うことが伝統的に、多かれ少なかれ、広く健康管理作業者に教えられてきたのである。
【0003】
プッシュ−ポーズ式(すなわち乱流による)フラッシングでは、その際に臨床医が単に関連する輸液速度(associated infusion rate)を交互に増加および減少させることを要するだけである。しかしながら、プッシュ−ポーズ式を用いて効果的且つ首尾よくカテーテルのパージを行うことは、個々の認識、コンプライアンスおよび技術に基づいて周知ではあるものの、しばしば不完全で問題となっている。この理由により、多くのユーザはかかる乱流フラッシングその他を効果的に使用することができず、価値の認識や知識の不足により、これを多少なりとも活用できないでいた。
【0004】
また、カテーテルのクリアランスに対して乱流を用いる以外にも、IV輸液に関連付けられたシリンジ、ポンプおよびその他の流体圧送機構(fluid forcing mechanisms)を層流領域において実質的に作動させるようにするものもある。脈流(pulsatile flow)が用いられる場合、圧力および流れの特性は、カテーテルの効果的なパージを行うのに要する乱流の特性および流量レベルを大きく下回る。
【0005】
広範なシリンジ設計においては、様々な形式および種類のシリンジのプランジャに対し周期的な停止を提供する技術を見出そうとすることが通常である。概して、かかる停止は、シリンジ充填量の部分を正確に測定し、投与する目的で用いられることが多い。かかる停止状態に至ると、次の停止状態まで、制御された実質的な層流が許容されるよう、プランジャが解放されるようにすることが通常である。換言すれば、かかる停止状態は、計算された計画的な力なしに解除され、カテーテルのパージを行うのに十分な力でストッパを推進する。その他の停止は、通常、シリンジを単回使用に制限するために用いられる。概して、単回使用の皮下注射シリンジに一般的なものであるので、これらの停止は困難であり、合理的なものではあり得ない。
【0006】
シリンジからの流体注入を制限するためのプランジャ停止部の一例は、1987年2月10日に発行された、Hirofumi Ohmoriによる特許文献1に見出される。特許文献1は、プランジャに関連付けられたプランジャロッド内の複数の凹部に係合することでシリンジからの排出を阻止する複数の係止部を開示している。各係止部の後ろでプランジャロッドが完全に係止され、プランジャロッドをさらに駆動することができる過度な力が生じないようにされている。同様に、1991年6月18日に発行された、Harry Wenderによる特許文献2は、プランジャロッドに沿って複数の凹部を有する単回使用のシリンジを開示している。
【0007】
1994年6月7日に発行された、John Drypenらによる特許文献3は、複数の係止面を含んだプランジャロッドを有する計量式(metering)シリンジを開示している。係止面は離隔しており、所定用量の容積を定めている。プランジャロッドの回転によって各係止部からの解放が生じ、さらなる投与が許容される。
【0008】
1991年10月22日に発行された、Robert B. Agranによる特許文献4もまた、プランジャロッド内に複数の凹部を有するシリンジアセンブリを開示しており、複数の凹部は、シリンジアセンブリの2回目の使用に関連したプランジャロッドの後方への変位を抑制するために用いられる。同様に、1992年1月28日に発行された、John Maffetoneによる特許文献5はノッチ付きのプランジャロッドを有する単回仕様シリンジを開示している。特許文献5のシリンジは滑らかに作動することを教示しているが、単回使用サイクルの完了後にそれ自体をどうするかについては開示していない。
【0009】
1993年10月5日に発行された、Cesar G. Corsichらによる特許文献6は、いくつかの条件下での再充填および再使用を防止することのできるブロック可能なピストンを有する皮下注射用シリンジを開示している。
【0010】
1994年7月12日に発行された、James Bidwellによる特許文献7は、単回使用の皮下注射用シリンジ装置を開示している。関連付けられたプランジャロッド内の複数のラチェット溝がロック部材として用いられ、プランジャがケーシング内に挿入または再挿入されたときには、プランジャがケーシングに対して引き抜くことができないようにされている。
【0011】
2001年9月4日に発行された、Joel Schoenfeldらによる特許文献8は、複数のビーズ状ラチェット歯を有するロッド状シリンジプランジャを開示している。特許文献8はまた、単回使用シリンジを開示を開示している。特別な注意として、「本発明のさらなる目的は、最大の工業規格(industry maximum standard)より小さい、プランジャ後退力および円滑な機械的操作を有する単回使用シリンジを提供することにある。」と宣明されている。かかる目的は、プランジャロッドを操作するためのシリンジ分野において一般的であると考えられるものである。
【0012】
1999年4月6日に発行された、Paul L, Simmonsによる特許文献9は、プランジャのサボ(sabot)と、シリンジ本体内に配設されたサボロック部とを教示し、サボロック部機構がロック位置と非ロック位置とに選択的に移動可能であることを教示している。それにより係合が行われ、シリンジ本体内に物質を引き出す真空が生成される。
【0013】
2002年12月3日に発行された、David Paul Morrisらによる特許文献10は、混合シリンジ(mixing syringe)を開示しており、これは、より近位側にあるチャンバ内の物質に混合させるべき物質を連通させるためのバレル内の流れを許容している。その他の複数の円筒状バリアがチャンバ内に設けられ、プランジャロッドの移動によって選択的に変位する空間を画成する。流体力学的な抵抗および摩擦(および静摩擦)以外には、何らの抑制力も教示されていない。
【0014】
2003年6月17日に発行された、Gennady I. Kleymanによる特許文献11は、用量測定シリンジを開示している。特許文献11に教示されるようなプランジャロッドは、プランジャロッドの変位に対する抵抗を増し、測定された用量に関する所定容積に対応した可聴音を発生する構成を有している。そのようにしても、特許文献11には、カテーテル内の所定量の乱流を生成する絶え間のない係止部を備えることについては何らの開示もない。
【0015】
1997年11月11日に発行された、Laurence M. Shanleyらによる特許文献12は、接続部位への排出を行うのではなく、逆に吸引を行うべく操作される吸引シリンジデバイスを開示している。関連付けられたプランジャに対し直角であるステムが間隔を置いたフランジに備えられる。シリンジバレルの内部には少なくとも1つの係止部が備えられる。フランジが係止部に接触すると、プランジャの前進が抑制される。プランジャの回転によって、さらなる前進が許容される。
【0016】
1991年2月16日に発行された、Martin McCarthyによる特許文献13は、単回使用の皮下注射用シリンジを開示している。特許文献13に係るシリンジバレルは内側起伏面を有し、その上を基端側に向く手動力によってスカート部がその方向に後退するように乗り越えて行く。起伏部は患者用の針を介して流体を排出する間に脈流を生じさせるものと考えられるが、特許文献13には、カテーテル内で乱流を再生することに関連した教示はなく、課題にも触れられていない。
【0017】
上述した従来技術を要約すれば、概ね、例えば複数のスロット、溝およびラチェット歯を有するプランジャが、所定容量の注入流体を測定するのに用いられる閉塞部(obstructions)、あるいは単回使用のシリンジに関連付けられる係止部が開示されている。臨床医とは独立してプッシュ−ポーズ流を発生させることが困難であると同時に、上記分野のすべては、関連付けて取り付けられたカテーテルシステムを浄化するための乱流を効果的に発生させるための具体的な教示を欠いている。乱流の効果的な発生が本発明の特有且つ明確な目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4.642,102号明細書
【特許文献2】米国特許第5,024,661号明細書
【特許文献3】米国特許第5,318,544号明細書
【特許文献4】米国特許第5,059,181号明細書
【特許文献5】米国特許第5,084,017号明細書
【特許文献6】米国特許第5,280,030号明細書
【特許文献7】米国特許第5,328,476号明細書
【特許文献8】米国特許第6,283,941号明細書
【特許文献9】米国特許第5,891 ,052号明細書
【特許文献10】米国特許第6,488,651号明細書
【特許文献11】米国特許第6,579,269号明細書
【特許文献12】米国特許第5,685,864号明細書
【特許文献13】米国特許第4,995,869号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
概説すれば、この新規な発明は、制御された所定のプッシュ−ポーズ圧力および流れに関連する公知のすべての問題を解決することにより、カテーテルシステム内に位置する物質のパージに有効な、制御され且つ一貫性のある乱流を提供するものである。本発明は、所定の力による動的な解放の結果得られる圧力を発生させるように定められ、設計された方法および装置を含み、制御され且つこれと反しないサージを提供する期間のそれぞれでは、カテーテルシステム内で問題となる部位において乱れたパージ用流体流が効果的に発生するようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
概して、かかる流れは、所要の圧力パルスに要求される流体の容量に合致した液体の容量を保持するべく寸法付けられたコンテナからのフラッシュ液体の源からカテーテルシステムに提供される。各場合において、アクチュエータが所定圧力で弁機構を開放し、所要の液体パルス圧力を生じさせることにより、液体が流れるようにする。検知用アクチュエータは作動ヒステリシス(operating hysteresis)を有し、これが最終的に流れを止め、圧力パルスを終了させる。当然のことであるが、例えばポンプあるいはピストンとすることのできる器具が、弁機構を作動させるのに十分な圧力を提供するための装置の重要な部品となる。パルスの全体にわたって適切な圧力を保つために、メモリエレメントが上記器具から受容したエネルギの保存源(source of stored energy)を提供し、弁機構の開放に応じて保存されたエネルギをを解放し、所要のパルス期間、乱れたフラッシング流体圧および流れを保持する。
【0021】
装置の一実施形態は、シリンジに対する、より詳細にはシリンジのプランジャロッドに対する本発明の適用である。かかる場合、シリンジのバレルがコンテナである。バレル内でのプランジャロッド(および関連付けられるプランジャ)の変位が器具に作用してシリンジから液体を供給させる。従来のシリンジの近位端に通常見られるものは、シリンジバレルの残部(rest)に比較して減少された径ををもって形成された保持リングである。この保持リングは、プランジャロッドに付加されたプランジャから最も近位側にある、プランジャロッドのステム上に配置された進入ディスク(entry disk)との間での触知可能なインジケータとして用いられ、シリンジバレルからプランジャロッド(およびプランジャ)が引き出されるのに打ち勝つべきインピーダンスを提供する。
【0022】
保持リングを過ぎて変位するための所定の力を要するように寸法付けられ、形状が定められた少なくとも1つの作動用幾何要素(actuating geometry)が、進入ディスクに関連してステムの近くに配置される。保持リングを過ぎて作動用幾何要素を押しやることで、所要の乱れたフラッシング流体圧が提供され、流れが生じる。かかる幾何要素はプランジャ上のディスクであってもよいし、あるいはプランジャロッドのシャフトの外側縁に対するインターフェースナブ(interfacing nub)であってもよい。保持リングを過ぎて作動用ディスクを押しやることに関連した再帰的な運動(reflexive motion)は、強制的な流れの継続を確実化するのに必要な、メモリをベースに保存されたエネルギを提供し、これによって圧力パルスが提供される。圧力パルス長は、シリンジバレルを空にするべく変位させられるプランジャと、保持リングを通って押しやられる作動用ディスクに対して近位に配置される触知識別可能な係止部(tactilely determinable stop)を提供する第2の作動用ディスクとのいずれかにより決定される。シリンジプランジャロッドを変位させるために加えられる再帰的なエネルギに対するこの係止部の抵抗により、上述したヒステリシスが提供されることに注意されたい。このように、従来のシリンジバレルは、本発明の使用に従って作製されたプランジャロッドとの組み合わせにおいて、シリンジのユーザから実質的に独立して、シリンジから所要のパルス−ポーズ(pulse-pause)圧力を提供することができる。作動用幾何要素のないプランジャロッドのセグメントを備え、生じ得る閉塞のチェックおよび血液の戻りの点検を従来のフラッシュ技術で可能とするよう、「パルス無し(no-pulse)」セグメントを提供することも好適であり得る。
【0023】
他の実施形態では、パルス−ポーズ圧力のパルスがインライン装置によって提供される。流体源は、コンテナ(ここから圧力パルスが発生する)を満たすのに十分な容量を有する容器(receptacle)からのものであり、コンテナは一方向弁を通る容器からの液体を受容する中空の円筒状ベッセルである。カテーテルシステムに液体を供給するための連通は他の一方向弁を通して行われる。
【0024】
弁機構はプランジャであり、ベッセル内の流体を一方向弁を通してカテーテルシステムに移送するよう寸法付けられ、形状が定められている。さらに、ベッセルは、従来のシリンジのバレルの保持リングと同様の保持リングを有している。プランジャに関連付けられた弁作動ディスクは、カテーテルシステムに向かう所要パルスを発生するのに必要な所定の力を要するよう寸法付けられ、形状が定められている。ベッセルの容量はパルスボリュームを決定する。また、シリンジの場合のように、作動用ディスクが保持リングを過ぎるよう駆動されたときに力が解放されることによる再帰的な動作は、適切なパルス圧力を確実なものにする。プランジャを駆動するための実際の器具は、プランジャに添えられたボタンおよび関連するロッドによって得られ、これによりプランジャはベッセルを通して手動で駆動される。圧力パルスが発生したときに圧縮されるよう配置されたばねは、プランジャを戻し、続くパルス−ポーズサイクルのためにベッセルを再充填するエネルギを蓄える。
【0025】
本発明の他の実施形態はアクチュエータを有する圧力検知スイッチを含み、このアクチュエータは高い所定圧力で解放され、低い所定圧力で閉鎖される。概して、源は圧力提供装置から上流にある流体容器であり、圧力提供装置は所定圧力および流量で供給される流体を提供する。ベッセルは、流れの流量制限器(flow restrictor)を介して圧力提供装置と連通するコンテナとして作用する。さらに、ベッセルは圧力検知弁を介してカテーテルシステムと連通する。圧力検知弁は、所要の乱流特性を有する流体パルスを提供する開放圧力を有するとともに、所要の流量が得られてベッセル内の圧力が低い所定圧力未満に減少した後には閉鎖されるように選択される。
【0026】
これらの他の実施形態の1つにおいては、ポンプが圧力源を提供する。ばね式(spring loaded)のピストンチャンバは、ポンプの出力部に添えられた流れの流量制限器を通し、高い所定圧力よりも低い圧力で充填する圧力パルスのために容量を集める機会を提供するが、圧力は低い所定圧力よりも高いものである。従って、チャンバが充填されたときにのみ、高い所定圧力に到達する。チャンバが充填されると、アクチュエータによって弁が開放され、制御された圧力パルスが生じる。チャンバが空になると、ベッセル内の圧力が低い所定圧力未満に降下し、アクチュエータは弁を閉鎖する。この実施形態がカテーテルシステムに加えられているままである場合、続く圧力パルスは自動的に発生する。
【0027】
他の実施形態のその他の1つは、圧搾可能な(squeezable)チューブを含んでいる。この場合、チューブは、先に開示したような弁アクチュエータ開放特性を有する圧力検知弁を介してカテーテルシステムに連通する。チューブの上流は一方向弁を介して源に連通する。源からの圧力は、高い所定圧力に到達することないしはそれを超えることはないが、チューブを充填するには十分なものである。従って、上流の源からの圧力およびチューブ内の弾性メモリ(elastic memory)により、上流の一方向弁を介してチューブの充填が行われる。チューブが適切に充填されると、それが選択的に圧搾されることで、少なくとも高い所定圧力への圧力上昇が生じる。チューブ内の圧力が高い所定圧力以上となると、弁が開放され、圧力パルスが生じる。弁開放に続く再帰的動作により、圧力パルスが継続される。チューブからの液体の排出は、最終的に弁を閉鎖して圧力パルスの終了をもたらす。チューブが実質的に空になるまでは、圧力パルスは持続し得る。
【0028】
本発明の実施形態を用いるための方法は、そこから液体のパルスが供給される所定寸法のチャンバないしはベッセルを充填することと、チャンバないしはベッセル内の圧力が所定圧力を超えるようにすることと、その圧力が得られたときにのみカテーテルシステムへの通路を選択的に開放することと、を含む。そのようにすることで、ユーザの能力とは無関係に、所要のパルス−ポーズ圧力のパルスが実現され、提供される。
【0029】
従って、ユーザとは無関係に制御される、十分に乱れたフラッシング圧力および流量のパルス−ポーズ脈流をカテーテルシステム内に提供し、一連の好ましくない残渣を実質的にパージする装置を備えることが主要な目的である。
【0030】
かかる装置を従来シリンジのバレル内で用いることが主要な目的である。
【0031】
流体源とカテーテルシステムとの間のインライン操作を提供するかかる装置を備えることは、他の主要な目的である。
【0032】
手動で発生するパルス−ポーズ圧力の一連のパルスを提供するかかる装置を備えることは、1つの目的である。
【0033】
ポンプを器具として用いるかかる装置を備えることは、重要な目的である。
【0034】
圧力検知弁の開閉によりもたらされる、制御された圧力パルスを提供するかかる装置を備えることは、他の目的である。
【0035】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面を参照する詳細な説明から明らかとなる。
【0036】
明細書において用いられるいくつかの擁護の定義
カテーテルシステム(名詞):例えば医療用カテーテル(例えばIVカテーテル)、供給チューブ(例えば送給チューブ)および関連するコネクタなど、流体を患者に供給するのに用いられるチューブおよびその他のデバイスの組み合わせ。
【0037】
流体(名詞):気体または液体。
【0038】
IV(形容詞):患者に流体を供給するモードであり、この場合は静脈。
【0039】
層流(名詞):比較的滑らかで一様な流線の流れ(streamline flow)であり、固体境界(solid boundary)近傍の流れなど、乱流と対称されるものである。
【0040】
乱流(名詞):与えられたポイントでの速度の大きさおよび方向が時間とともに不規則に変化し、従ってパターンが本質的に変化する流体流であり、層流と対称されるものである。
【0041】
弁機構(名詞):流体制御デバイスであり、ここでは一般に、開放時に圧力パルスを開始させ、閉鎖時に圧力パルスを終了させるデバイスとして定義される。この一般的な定義において、圧力パルスを作動させるべき変位させられるシリンジプランジャロッドのパルス−圧力発生動作は弁機構によるものとして考察される。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、制御された所定のプッシュ−ポーズ圧力および流れに関連する問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明に従って作製されたシリンジおよびプランジャロッドの斜視図であり、プランジャロッドのステムがその長さ方向に配置された複数のディスクを有しているものが示されている。
【
図2】
図1に示されたシリンジおよびプランジャロッドの断面図である。
【
図2A】
図2のシリンジおよびプランジャロッドと同様のシリンジおよびプランジャロッドの断面図であるが、シリンジ内でのプランジャロッドの変位と、そのように変位した際バレルからのプランジャロッドの取り外しの防止とが容易に行われるよう、ディスクの縁の形状を定めたものが示されている。
【
図2B】
図2のシリンジおよびプランジャロッドと同様のシリンジおよびプランジャロッドの断面図であるが、シリンジ内で変位した際のシリンジからのプランジャロッドの変位が容易に行われるよう、ディスクの縁の形状を定めたものが示されている。
【
図2C】
図2、
図2Aおよび
図2Bのシリンジおよびプランジャロッドと同様のシリンジおよびプランジャロッドの断面図であるが、ディスクの代わりにプランジャのシャフトに沿ってナブを有したものが示されている。
【
図3】
図1に示されたプランジャロッドの斜視図である。
【
図4】
図1のプランジャロッドと同様のシリンジおよびプランジャロッドの斜視図であるが、プランジャロッドのステムのまわりに複数の分離(breakaway)リングを有して作製されたものが示されている。
【
図5】
図4に示されたプランジャロッドの斜視図である。
【
図6】
図4に示されたプランジャロッドおよびシリンジの斜視図であり、プランジャロッドのステムに垂直な少なくとも1つの分離リングを有したものが示されている。
【
図7】
図1のプランジャロッドと同様のシリンジおよびプランジャロッドの斜視図であるが、ステム上に起伏パターンおよび近位側シリンジバレル開口のまわりに制限用弾性リングを有したものが示されている。
【
図8】
図7に示されたシリンジ、プランジャロッドおよび弾性リングの断面図である。
【
図9】本発明に従って作製された自動インライン型パルシングデバイスの斜視図である。
【
図10】
図9に示された自動インライン型パルシングデバイスの断面図であり、パルスの終了時におけるデバイスの状態を示している。
【
図11】
図9に示された自動パルシングデバイスの断面図であり、パルスの作動前にチャージされたデバイスの状態を示している。
【
図12】
図9に示された自動パルシングデバイスの断面図であり、パルスの発生過程におけるデバイスの状態を示している。
【
図13】
図9に示された自動パルシングデバイスの断面図であり、流体圧力源を提供するべくデバイスにシリンジを加えた状態を示している。
【
図14】
図9のデバイスのためのポンプ式(pumped)流体源を用いるシステムの模式図である。
【
図15】本発明に係る制御された圧力パルスを提供するための圧搾可能なデバイスを示す斜視図である。
【
図17】
図14に示したデバイスの断面図であり、制御された解放圧力パルスの終端において圧搾された医療部位(medical section)をもつものが示されている。
【
図18】本発明に従って作製された、手動操作型の制御された圧力パルスデバイスの斜視図である。
【
図19】
図18に示されたデバイスの断面図であり、制御された圧力パルスを開始するに先立って充填されたものを示している。
【
図20】
図18に示されたデバイスの断面図であり、圧力パルスの終端の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本記載において、近位(proximal)という用語は、その位置を表すセンテンスの対象の通常最も近くにあるデバイスのセグメントを示すために用いられる。遠位(distal)という用語は近位セクションの反対側の部位として参照される。以下、
図1〜
図20に例示される実施形態が参照されるが、全体的に同様の部分を示すために同様の番号が用いられる。
【0045】
図1を参照するに、本発明のシリンジ/プランジャロッドの連結体(combination)10の好適実施形態が示されている。連結体10は従来のシリンジバレル20およびプランジャロッド30を含む。連結体10の顕著な特徴は
図2によりよく示されており、近位のバレル穴開口42に配置された保持リング40を有するバレル20と、ステム60自体に沿って配置された複数の作動用幾何要素、インターフェースまたはリング(概して番号50が付されている)を備えるプランジャロッド30とが含まれている。加えて、従来のシリンジのプランジャロッドには普通にあることであるが、プランジャロッド30はステム60の遠位端80に付加されたプランジャ70を有している。遠位端80はねじ山付きの幾何学的部分90を有し、これにより、バレル20が概して液体72として参照される液体で満たされた後にプランジャロッド30をプランジャ70に添えることができるようになることがわかるであろう。プランジャロッド30は単独で
図3に示されており、
図3はねじ山付き部分90をより明確に表している。
【0046】
さらに、プランジャロッド30は第1のリング92を有し、これは、プランジャ70およびステム60がバレル20内に挿入される際に、保持リング40を過ぎて押しやることが可能である。第1のリング92は、保持リング40を通して強制的に変位させることができるように寸法付けられ、形状が定められているが、触知により識別可能な係止部を備え、不注意によってプランジャ70がバレル20の外に変位しないようにしている。
【0047】
アクチュエータリング50の各々は、保持リング40によって遮られるよう寸法付けられ、形状が定められている。さらに、アクチュエータリング50の各々は、接触式アクチュエータ幾何要素(例えば保持リングインターフェース50)の保持リング40を過ぎる変位を生じさせる以上であるべき所定の力を要するように寸法付けられ、形状が定められている。この理由により、バレル20内の液体は、接触式リング50が保持リング40を通り解放可能に変位する際の所定の力によりもたらされる加速度および速度で移送される。概して、結果的にもたらされる加速度および速度は、シリンジバレル20から排出される液体を、関連付けられたカテーテルシステムを通る乱れたフラッシュ液体72とする。このようにして、接触式リング50が保持リング40を過ぎて変位する度に、加圧された液体72のパルスがカテーテルシステム内にパージされ、そこを通る乱れたフラッシングパルスの液体72が提供される。
【0048】
その上、リング50のもう1つの近位リング94がさらに、より遠位にあるリング50よりも大きい力を要するよう形状が定められ、寸法付けられていてもよく、これによりリング94を用いる作動の結果もたらされるパルスが連結体10からの液体72によって提供される最後のパルスであるという注意喚起がなされるようにすることができる。この理由により、以下リング94を注意喚起リング94として参照されることもある。プランジャロッド30がバレル20内で十分に遠くまで変位しないまま、注意喚起リング94が保持リング40を過ぎて変位するような場合には、関連付けられたカテーテルシステム内で逆流(back flow)ないしは還流(reflux)が生じないようにするべきであることに注意されたい。ステム60の近位端98を凸状あるいはドーム状とすることで、プランジャロッド30に対しデジタル式の力の適用が容易になることに注意されたい。
【0049】
その上、リング50は均一な間隔を置いている必要がないことにも注意されたい。一例として、第1リング92と、隣接するより近位のリング50との間隔99は、概して番号50で参照される他のリング間の間隔に比して比較的大である。これは、カテーテル血流の従来のサンプリングに使用され得る「パルス無し」セグメントに対して備えられ、適切なカテーテル操作を確実にするものである。
【0050】
図2Aに注意を向けると、従来のシリンジバレル20およびプランジャロッド30’の連結体20’が示されている。プランジャロッド30’はプランジャロッド30と同様であり、その長さ方向に沿って配置された一連のアクチュエータリング50’を有している。しかしながら、連結体10’の場合、
図2Aに示すように、リング50’は、バレル20内で保持リングを通って変位するよりも、バレル20内でより容易に(保持リング40を通って遠位に)変位するよう形状が定められ、寸法付けられている。これは、一旦単回使用の適用が進められた後には、プランジャロッド30’がバレル20から容易に取り外せないようにするという条件を満たすものである。
【0051】
一方、かかる連結体の再充填および再使用が望まれることもある。かかる場合には、連結体10’’のプランジャロッド30’’を遠位方向よりも近位方向に容易に変位させることが望まれる。かかる場合においては、ステム60に沿って配置される作動用リング50’’の形状は
図2Bに示すように定められる。
【0052】
図2に示したリング20を、
図2Cの連結体12に示すように、プランジャロッド32上のナブ(突起;nub)52に置換することができる。リング50をナブ52によって置換することは、ナブ52の寸法付けおよび形状付けによる所要の乱流の発生効果を低下させることなく、保持リング40を過ぎるリング50の変位に要するものと同等の力を要するようにすることによって行うことができる。
【0053】
連結体110として示される本発明の他の実施形態が
図4〜
図6に示されている。連結体10のように、連結体110は従来のシリンジバレル20を含んでいる。シリンジバレル20は保持リング40と一体になった近位進入穴(proximal entry hole)122を有していることに注意されたい。
図4および
図5に示すように、連結されるプランジャロッド30もまた、概して番号150で参照される一連のアクチュエータリングを備えており、これらはプランジャロッド130のステム60に沿って配置されている。しかしながら、所要の圧力パルスを生成するべくバレル20の保持リング40を通って押しやられるように寸法付けられ、形状が定められるのではなく、リング150は、バレル進入穴42内を変位することができるよう、各作動用リング150がステム60から剪断される(shear)ことを許容するような方法で、ステム60に付加されている。
【0054】
分離した作動用リング150をステム60から剪断する力は、保持リング40を過ぎる変位力と同等であり、所要の乱流を伝えることで好ましくない汚染物質をカテーテルシステムの下流からパージおよび排出する所定の加速度および速度が提供されるよう、幾何学的および機械的に設計される。
図6においては、第1の、より遠位に配置されたアクチュエータリング150が、
図6において穴の外側にある第2の、より遠位に配置されたアクチュエータリング150に捕捉されていることに注意されたい。剪断された作動用リング150の堆積によって、シリンジの完全な脱落(evacuate)が防止されることに注意されたい。
【0055】
従来のシリンジバレル20を用いることができる連結体210として示される本発明のさらなる実施形態が
図7および
図8に示されている。バレル20に加え、連結体210はエラストマー系流量制限器(elastomeric restrictor)230、ステム242をもつプランジャロッド240を含んでいる。ステム242は複数の延伸された側面部材(elongated side member)を備えており、それぞれに番号244が付されている。各側面部材は、起伏する外側縁を有し、これには番号246が付されている。起伏の高いポイントには、概して番号248が付されている。
【0056】
流量制限器230は、バレルの進入穴42(
図1および
図2参照)のまわりにポートを提供するよう形状が定められて構成されている。流量制限器の進入穴250は、流量制限器230と各高ポイント248との衝突に応じてプランジャロッド240の内方変位を妨げるよう寸法付けられ、形状が定められている。エラストマー製の流量制限器230の選択されたデュロメータと、幾何学的に高ポイント248および穴250の衝突とを組み合わせることが、プランジャロッド240をさらに変位させるために要する所定の力を合成する。この所定の力は、保持リング40(
図1〜
図3参照)を過ぎるプランジャロッド30の変位に要する力と見合うものである。このようにして、高いポイント248が流量制限器230を通って変位する度に、取り付けられたカテーテルシステムをパージするための乱流が発生する。
【0057】
図9〜
図12を参照するに、本発明に従って作製されたインライン型の自動パルシングデバイス310が示されている。
図9に示されるように、デバイス310は上流側すなわち近位側の接続部320を備え、その内部に液体源から液体が提供される。さらに、デバイス310は出力ポートおよび接続部330を備え、これを下流側のカテーテルシステムに接続することができる。適正な動作を行うために、源から得ることのできる液体圧力は、デバイス310が排出するパージ用液体パルスの所要圧力よりも大でなければならない。
【0058】
図10に示されるように、圧力検知弁340が配設され、圧力が所要圧力未満となったときに出力ポートおよび接続部330を閉鎖する。近位側の接続部320の直ぐ遠位側には一方向弁(check valve)350があり、逆流を遮断するとともに、所定レベルの流れに対する流入を遅らせるようにしている。圧力検知弁340と一方向弁350との間には、パルスリザーバチャンバ360が配設されている。チャンバ360内には、ピストン370およびばね380が配置されており、ばね380は、弁330が閉鎖されたときにチャンバ360内ある容量の液体を貯蔵するべく作用する。
【0059】
圧力検知弁340を選ぶ際には、後述する目的で、閉鎖圧力と開放圧力とに所定の圧力差を持つヒステリシスを有する弁が選択されるべきである。圧力差は、解放される高圧力と低い閉鎖圧力との差として定義される。その高圧力は、組み合わされたカテーテルシステムから所要量の物質をパージする下流側乱流を生じさせるのに十分な力および流量を有する圧力パルスを生成する圧力である。低圧力は、液室360の浄化後にデバイス310内の圧力が低減されるようになる圧力である。デバイス310内の圧力を低圧力に降下させるために、源からの流入は、出力ポートおよび接続部330を通る流出よりも低い流速に制限されるべきであることに注意されたい。
【0060】
デバイス310の作動ステップは、
図10に示される開始状態を具現化するように示され、この状態ではチャンバ360は空であり、ばね380は圧縮されておらず、弁350は閉鎖されている。続くチャンバ360の充填は
図11に示されている。ばね380が完全に圧縮されたときに弁340が開放され、これによりデバイス310から液体が排出される。弁350が閉鎖されると、パルスサイクルが繰り返されるのは勿論である。
【0061】
デバイス310のための加圧流体源が
図13および
図14に示されている。
図13において、従来のシリンジ390が近位接続部320に付加されている。源の圧力は組み合わされたプランジャロッド392を変位させる力によって提供される。弁350を作動させるに先立って、チャンバ360を完全に充填するのに十分な圧力を要することに注意されたい。
【0062】
図14には、もう1つの精巧な圧力提供源システム(sophisticated pressure providing source system)が示されており、これは生理食塩水(saline)バッグ304、ポンプ396および液量可変式流量制限器(variable liquid flow restrictor)398を含んでいる。液体は源であるバッグ394から引き出され、ポンプ396によって圧送されることで、弁350を開放するのに必要な高圧力以上の圧力が提供される。可変流量制限器は、ポンプ396がデバイス310による液体の移送レートを決定してデバイス310による出力パルスレートを決定するためにセットされる。
【0063】
図15〜
図17を参照するに、本発明に従って作製された、インライン型の締め付け(pinch)すなわち圧搾(squeeze)ポンプが示されている。
図16に示されるように、デバイス410は上流側すなわち近位側の接続部420を備えており、ここに液体源から液体が提供される。さらに、デバイス410は出力ポートおよびコネクタ430を備え、下流側のカテーテルシステムに接続することができる。適切な動作を行うために、源から得ることのできる液体圧力は、膨張可能なチューブ440の充填圧力より大であることを要するのみであり、このチューブは、容易に充填され、且つ圧搾によってパージを行うよう寸法付けられ、形状が定められている。
【0064】
図16に示されるように、圧力検知弁340(先に開示したデバイス310の
図11〜
図13も参照されたい)は、圧力が所定圧力未満となったときに、出力ポートおよびコネクタ430を閉鎖するべく配置されている。近位側の接続部420の遠位側にはチェック弁450があり、逆流を遮断するようにしている。チューブ440は、デバイス410が作動したときに、パルス流の数量を規定する貯蔵媒体(storage medium)を提供する。動作させるために、弁340が開放されて本発明に従って圧力パルスが提供されるまで、チューブ440が圧搾される。再帰的な(reflexive)圧搾を継続することで、弁340を通して液体が供給され、取り付けられたカテーテルシステムのパージを行うのに十分な乱流および圧力を持つ液体の脈流が生成される。液体源の圧力はチューブ440への充填を行うのに十分な高圧力であることのみを要し、および、充填用に幾分かの負圧を提供するのに十分な構造記憶性(structural memory)をチューブ440が本来的に有することができることに注意されたい。当該記憶性はチューブ440内部の液体圧力を低減し、パルス発生サイクルの終わりで弁340の閉鎖を生じさせる。
【0065】
図18〜
図20には、カテーテルシステムをパージするための本発明に係る他のデバイス510が示されており、これは、手動でデジタル式に発生する制御された圧力パルスを提供するものである。
図19に示されるように、デバイス510は上流側すなわち近位側の接続部420を備えており、ここに液体源から液体が提供される。さらに、デバイス510は出力ポートおよびコネクタ530を備え、下流側のカテーテルシステムに接続することができる。適切な動作を行うために、源から得ることのできる液体圧力は、ばねピストン連結体540の充填圧力より大であることを要するのみである。連結体540は、押下可能なボタンおよびロッド550、圧縮可能なばね560およびプランジャ570を含んでいる。プランジャ570は、中空の鉛直チャンバ580から液体を排出するよう寸法付けられ、形状が定められている。チャンバ580は、近位側接続部520と出力ポート530との間で液体連通を行わせるための中空液体流チャンバ590に対し、直交する方向で連通している。鉛直チャンバ580に貯蔵され、プランジャ570の変位時に解放される液体の量が、下流側のカテーテルシステムに供給されるパルス量を決定する。
【0066】
図19に示されるように、圧力検知弁340(先に開示したデバイス310の
図11〜
図13も参照されたい)は、圧力が所定圧力未満となったときに、出力ポートおよびコネクタ530を閉鎖するべく配置されている。近位側の接続部520の遠位側にはチェック弁450があり、逆流を遮断するようにしている。デバイス510を動作させるために、弁340が開放されるようボタン550を押下することで、本発明に従った圧力パルスが提供される。再帰的に(reflexively)ボタン550の押下を継続することで、弁340を通して液体が供給され、取り付けられたカテーテルシステムのパージを行うのに十分な乱流および圧力を持つ液体の脈流が生成される。液体源の圧力はチャンバ580への充填を行うのに十分な高圧力であることのみを要すること、および、ばね560をもつ連結体540が充填用に幾分かの負圧をチャンバ590内に提供するのに十分な構造記憶性(structural memory)を本来的に有するべきことに注意されたい。当該記憶性はチャンバ590内部の液体圧力を低減し、パルス発生サイクルの終わりで弁340の閉鎖を生じさせる。
【0067】
デバイス510を動作させるために、チャンバ580にはコネクタ520を通って提供される液体を充填することが許容される。ボタン550が押下されることで弁340を解放するのに十分な力が提供され、その後、
図20に示すように、チャンバ580から液体がパージされるまで押下を再帰的に継続することで、所要のパージ用圧力パルスが生成される。連結体540が完全に押下されると、ボタン550に加えられる力が除去され、続く圧力パルスの発生のためにチャンバ580への再充填が許容される。
【0068】
本発明は、その精神および本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において実施可能である。よって、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであって限定のためのものではないと考察されるべきであり、本発明の範囲は、上述した記載によってではなく添付の特許請求の範囲によって示されるものである。そして、特許請求の範囲の意味するところと、これに等価な範囲とに至るすべての変更は、従ってそれらに包含され得るものである。
【符号の説明】
【0069】
10 連結体
20 シリンジバレル
30 プランジャロッド
40 保持リング
50 アクチュエータリング