(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、より高深度で、かつ高温高圧高腐食の高負荷環境の油井が増加していることから、管体と管継手との接続部でのシール性を高めるために、管体に対する管継手の高い締め付けトルクと締付けトルク精度が求められている。管体に対する管継手の高い締め付けトルクを得るためには、管体に対して管継手を締め付ける際のチャッキング装置による管体および管継手の把持力を高める必要がある。特許文献1に開示のチャッキング装置で管体や管継手を把持する構成では、該チャッキング装置での把持力を高めるために管体や管継手の外周面に対するチャッキング爪の当接圧を増大させると、該爪の当接部分に力が集中することで爪跡等の表面傷が付き易くなる問題を招く。高負荷環境で用いられる油井管では、表面傷からクラックが発生し易くなることから、管体や管継手に表面傷を付けることなく管継手の締め付けトルクを高めることが求められているが、従来のチャッキング装置では対応し得ないのが実情である。
【0006】
また、管体や管継手の曲がりや変形等に起因して、管継手を内リング内に位置決めした際に、該管継手の軸心と内リングの軸心とが一致していない場合がある。従来のチャッキング装置では、外リングと内リングとの相対的な回転によって全てのドッグが均等に傾動するため、管継手の軸心と内リングの軸心とがずれている場合には、管継手の外周面に対する各ドッグの当接圧にバラツキが生じ、周方向に均一な圧力で管継手を把持できず、管体に対する管継手の締め付けトルクを高めることができない原因となっていた。そこで、全てのドッグの当接圧が高くなるように設定すると、ドッグがもともと強く当っている部位においてはドッグが過度に強く当ることで爪跡等の表面傷が更に付き易くなったり、管継手自体を変形させるおそれがあった。
【0007】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、管体や管継手の外周面に傷が付くのを抑制すると共に高い締付けトルクが得られる管継手締付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る管継手締付機は、
管体(11)を保持する支持装置(16)と、該支持装置(16)に保持された管体(11)の端部に管継手(12)をねじ込み装着するねじ込み装置(14)とを備えた管継手締付機において、
前記支持装置(16)およびねじ込み装置(14)は、対応する管体(11)または管継手(12)を把持するチャッキング装置(13,17)を備え、
前記チャッキング装置(13,17)は、
前記管体(11)または管継手(12)が挿通される支持ユニット(22)と、
前記支持ユニット(22)に挿通された管体(11)または管継手(12)の周囲に位置するように該支持ユニット(22)に周方向に一定間隔で配置されると共に径方向に移動自在に支持され、前記管体(11)または管継手(12)の外周面を向く径方向の内側に該管体(11)または管継手(12)の外周面に
当接可能なチャック面(21a)が形成された複数の把持部材(21)と
、
前記把持部材(21)の夫々に対応して設けられ、対応する把持部材(21)
を径方向に移動させ
る移動手段(23)と、
前
記把持部材(21)の移動量を検出する位置検出手段(28)と、
前
記把持部材(21)のチャック面が前記管体(11)または管継手(12)に当接した際の当接圧を個別に検出する圧力検出手段(29)と、
前記位置検出手段(28)で検出される移動量に基づいて前
記移動手段(23)を制御すると共に、
前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧に基づいて
該圧力検出手段(29)に対応する前
記移動手段(23)を独立して制御する制御装置(20)とを備え、
前記制御装置(20)は、
前記位置検出手段(28)で検出される移動量に基づいて前記全ての把持部材(21)を径方向に所定の移動量だけ移動させた後に、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧が予め設定された規定当接圧とな
るまで該圧力検出手段(29)に対応する把持部材(21)を移動させて、
規定当接圧となった把持部材(21)に対応する前
記移動手段(23)を停
止するよう構成されたことを要旨とする。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、複数の把持部材を位置検出手段で検出される移動量に基づいて移動させることで、全ての把持部材をチャッキング装置の軸心に対して均等に幅寄せし得る。また、各把持部材を独立して移動して、各把持部材の管体や管継手に対する当接圧が規定当接圧となった場合に各把持部材を停止することで、管体や管継手に対する全ての把持部材の当接圧を一定にして把持することができる。すなわち、複数の把持部材の当接圧を一定とすることで、管体や管継手に対する把持力が向上し、高い締め付けトルクで管体および管継手をねじ込み装着することができる。また、複数の把持部材の当接圧を一定とし得るので、管体や管継手に対する把持部材の当接圧のバラツキを回避するために当接圧を過度に高める必要はなく、管体や管継手の外周面に傷が付くのを抑制し得る。
【0010】
本願には、次のような技術的思想が含まれている。
前
記移動手段(23)は、前記各把持部材(21)と支持ユニット(22)との間に設けられた共通の油圧シリンダ(23)で構成され、各油圧シリンダ(23)を作動することで各把持部材(21)を径方向に移動するよう構成されたことを要旨とする。
この構成によれば、複数の把持部材の幅寄せおよび各把持部材による管体および管継手の把持の両方を共通の油圧シリンダで行うよう構成したので、構成が簡単となる。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項2の発明に係る管継手締付機は、
管体(11)を保持する支持装置(16)と、該支持装置(16)に保持された管体(11)の端部に管継手(12)をねじ込み装着するねじ込み装置(14)とを備えた管継手締付機において、
前記支持装置(16)およびねじ込み装置(14)は、対応する管体(11)または管継手(12)を把持するチャッキング装置(40)を備え、
前記チャッキング装置(40)は、
前記管体(11)または管継手(12)が挿通される支持ユニット(22)と、
前記支持ユニット(22)に挿通された管体(11)または管継手(12)の周囲に位置するように該支持ユニット(22)に周方向に一定間隔で配置されると共に径方向に移動自在に支持され、前記管体(11)または管継手(12)の外周面を向く径方向の内側に該管体(11)または管継手(12)の外周面に当接可能なチャック面(21a)が形成された複数の把持部材(21)と、
前記複数の把持部材(21)を径方向に移動させる第1移動手段(41,43,44)と、
前記各把持部材(21)を独立して径方向に移動させる第2移動手段(48,49)と、
前記第1移動手段(41,43,44)で移動される把持部材(21)の移動量を検出する位置検出手段(28)と、
前記各把持部材(21)のチャック面(21a)が前記管体(11)または管継手(12)に当接した際の当接圧を個別に検出する圧力検出手段(29)と、
前記位置検出手段(28)で検出される移動量に基づいて前記第1移動手段(41,43,44)を制御すると共に、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧に基づいて該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(48,49)を独立して制御する制御装置(20)とを備え、
前記制御装置(20)は、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧が予め設定された規定当接圧となった場合に、該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(48,49)を停止制御するよう構成され、
前記第1移動手段(41,43,44)は、
前記支持ユニット(22)に軸方向に移動自在に支持され、前記把持部材(21)を向く内面に軸方向の一方から他方に向かうにつれて径方向に変位する傾斜面(42a)が形成された楔環部材(41)と、
前記支持ユニット(22)に配設され、前記楔環部材(41)を軸方向に往復移動させる駆動手段(43)と、
前記楔環部材(41)の傾斜面(42a)と各把持部材(21)との間で径方向に移動自在に前記支持ユニット(22)に支持され、前記駆動手段(43)によって軸方向に往復移動される前記楔環部材(41)の楔作用によって径方向に移動される楔部材(44)とを備え、
前記第2移動手段(45)は
、
前記各把持部材(21)と対応する楔部材(44)とに連結された油圧シリンダ(45)を備え、
前記各油圧シリンダ(45)を独立して作動することで前記楔部材(44)に対して把持部材(21)を夫々径方向に近接・離間移動させるよう構成されたことを要旨とする。
請求項
2に係る発明によれば、
複数の把持部材を位置検出手段で検出される移動量に基づいて移動させることで、全ての把持部材をチャッキング装置の軸心に対して均等に幅寄せし得る。また、各把持部材を独立して移動して、各把持部材の管体や管継手に対する当接圧が規定当接圧となった場合に各把持部材を停止することで、管体や管継手に対する全ての把持部材の当接圧を一定にして把持することができる。すなわち、複数の把持部材の当接圧を一定とすることで、管体や管継手に対する把持力が向上し、高い締め付けトルクで管体および管継手をねじ込み装着することができる。また、複数の把持部材の当接圧を一定とし得るので、管体や管継手に対する把持部材の当接圧のバラツキを回避するために当接圧を過度に高める必要はなく、管体や管継手の外周面に傷が付くのを抑制し得る。
また、全ての把持部材を単一の楔環部材で幅寄せするよう構成したので、第1移動手段の制御系を簡略化することができる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項3の発明に係る管継手締付機は、
管体(11)を保持する支持装置(16)と、該支持装置(16)に保持された管体(11)の端部に管継手(12)をねじ込み装着するねじ込み装置(14)とを備えた管継手締付機において、
前記支持装置(16)およびねじ込み装置(14)は、対応する管体(11)または管継手(12)を把持するチャッキング装置(46)を備え、
前記チャッキング装置(46)は、
前記管体(11)または管継手(12)が挿通される支持ユニット(22)と、
前記支持ユニット(22)に挿通された管体(11)または管継手(12)の周囲に位置するように該支持ユニット(22)に周方向に一定間隔で配置されると共に径方向に移動自在に支持され、前記管体(11)または管継手(12)の外周面を向く径方向の内側に該管体(11)または管継手(12)の外周面に当接可能なチャック面(21a)が形成された複数の把持部材(21)と、
前記複数の把持部材(21)を径方向に移動させる第1移動手段(41,43,48)と、
前記各把持部材(21)を独立して径方向に移動させる第2移動手段(48,49)と、
前記第1移動手段(41,43,48)で移動される把持部材(21)の移動量を検出する位置検出手段(28)と、
前記各把持部材(21)のチャック面(21a)が前記管体(11)または管継手(12)に当接した際の当接圧を個別に検出する圧力検出手段(29)と、
前記位置検出手段(28)で検出される移動量に基づいて前記第1移動手段(41,43,48)を制御すると共に、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧に基づいて該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(48,49)を独立して制御する制御装置(20)とを備え、
前記制御装置(20)は、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧が予め設定された規定当接圧となった場合に、該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(48,49)を停止制御するよう構成され、
前記第1移動手段(41,43,48)は、
前記支持ユニット(22)に軸方向に移動自在に支持され、前記把持部材(21)を向く内面に軸方向の一方から他方に向かうにつれて径方向に変位する傾斜面(42a)が形成された楔環部材(41)と、
前記支持ユニット(22)に配設され、前記楔環部材(41)を軸方向に往復移動させる第1駆動手段(43)と、
前記楔環部材(41)の傾斜面(42a)と各把持部材(21)との間で径方向に移動自在に前記支持ユニット(22)に支持され、前記第1駆動手段(43)によって軸方向に往復移動される前記楔環部材(41)の楔作用によって径方向に移動される楔部材(48)とを備え、
前記第2移動手段(48,49)は、
前記各把持部材(21)に配設され、対応する前記楔部材(48)を軸方向に往復移動する第2駆動手段(49)を備え、
前記各第2駆動手段(49)を独立して駆動することによって軸方向に往復移動される楔部材(48)の楔作用によって、該楔部材(48)と共に対応する把持部材(21)を径方向に移動させるよう構成されたことを要旨とする。
請求項
3に係る発明によれば、
複数の把持部材を位置検出手段で検出される移動量に基づいて移動させることで、全ての把持部材をチャッキング装置の軸心に対して均等に幅寄せし得る。また、各把持部材を独立して移動して、各把持部材の管体や管継手に対する当接圧が規定当接圧となった場合に各把持部材を停止することで、管体や管継手に対する全ての把持部材の当接圧を一定にして把持することができる。すなわち、複数の把持部材の当接圧を一定とすることで、管体や管継手に対する把持力が向上し、高い締め付けトルクで管体および管継手をねじ込み装着することができる。また、複数の把持部材の当接圧を一定とし得るので、管体や管継手に対する把持部材の当接圧のバラツキを回避するために当接圧を過度に高める必要はなく、管体や管継手の外周面に傷が付くのを抑制し得る。
また、全ての把持部材を単一の楔環部材で幅寄せするよう構成したので、第1移動手段の制御系を簡略化することができる。また、把持部材を楔環部材および楔部材による楔作用によって径方向に移動するよう構成したので、把持部材による管体や管継手の把持状態を安定的に維持することができる。
【0013】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項4の発明に係る管継手締付機は、
管体(11)を保持する支持装置(16)と、該支持装置(16)に保持された管体(11)の端部に管継手(12)をねじ込み装着するねじ込み装置(14)とを備えた管継手締付機において、
前記支持装置(16)およびねじ込み装置(14)は、対応する管体(11)または管継手(12)を把持するチャッキング装置(50)を備え、
前記チャッキング装置(50)は、
前記管体(11)または管継手(12)が挿通される支持ユニット(22)と、
前記支持ユニット(22)に挿通された管体(11)または管継手(12)の周囲に位置するように該支持ユニット(22)に周方向に一定間隔で配置されると共に径方向に移動自在に支持され、前記管体(11)または管継手(12)の外周面を向く径方向の内側に該管体(11)または管継手(12)の外周面に当接可能なチャック面(21a)が形成された複数の把持部材(21)と、
前記複数の把持部材(21)を径方向に移動させる第1移動手段(51,52,53,54)と、
前記各把持部材(21)を独立して径方向に移動させる第2移動手段(56,57)と、
前記第1移動手段(51,52,53,54)で移動される把持部材(21)の移動量を検出する位置検出手段(28)と、
前記各把持部材(21)のチャック面(21a)が前記管体(11)または管継手(12)に当接した際の当接圧を個別に検出する圧力検出手段(29)と、
前記位置検出手段(28)で検出される移動量に基づいて前記第1移動手段(51,52,53,54)を制御すると共に、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧に基づいて該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(56,57)を独立して制御する制御装置(20)とを備え、
前記制御装置(20)は、前記圧力検出手段(29)で検出される当接圧が予め設定された規定当接圧となった場合に、該圧力検出手段(29)に対応する前記第2移動手段(56,57)を停止制御するよう構成され、
前記第1移動手段(51,52,53,54)は、
前記支持ユニット(22)に軸方向に移動自在に支持されたスライド環(51)と、
前記スライド環(51)と各把持部材(21)との間に位置し、前記支持ユニット(22)に軸方向への移動が規制された状態で径方向に移動自在に支持され、前記スライド環(51)にリンク機構(53)を介して連繋された可動体(52)と、
前記支持ユニット(22)に配設され、前記スライド環(51)を軸方向に往復移動させる第1駆動手段(54)とを備え、
前記第1駆動手段(54)によってスライド環(51)を軸方向に往復移動することで、前記可動体(52)をリンク機構(53)によって径方向に移動させるよう構成され、
前記第2移動手段(56,57)は、
前記支持ユニット(22)における各可動体(52)および対応する把持部材(21)の間に軸方向に移動自在に支持された楔部材(56)と、
前記各
移動体(
52)に配設され、前記楔部材(56)を軸方向に往復移動させる第2駆動手段(57)とを備え、
前記各第2駆動手段(57)を独立して駆動することによって軸方向に往復移動される楔部材(56)の楔作用によって、前記可動体(52)に対して把持部材(21)を径方向に近接・離間移動させるよう構成されたことを要旨とする。
請求項
4に係る発明によれば、
複数の把持部材を位置検出手段で検出される移動量に基づいて移動させることで、全ての把持部材をチャッキング装置の軸心に対して均等に幅寄せし得る。また、各把持部材を独立して移動して、各把持部材の管体や管継手に対する当接圧が規定当接圧となった場合に各把持部材を停止することで、管体や管継手に対する全ての把持部材の当接圧を一定にして把持することができる。すなわち、複数の把持部材の当接圧を一定とすることで、管体や管継手に対する把持力が向上し、高い締め付けトルクで管体および管継手をねじ込み装着することができる。また、複数の把持部材の当接圧を一定とし得るので、管体や管継手に対する把持部材の当接圧のバラツキを回避するために当接圧を過度に高める必要はなく、管体や管継手の外周面に傷が付くのを抑制し得る。
また、リンク機構(トグル機構)によって把持部材を径方向に移動するよう構成したので、小さなストロークで高い当接圧を得ることができる。
【0014】
請求項
5に係る発明では、前記把持部材(21)におけるチャック面(21a)
は、前記管体(11)または管継手(12)の外周面に倣う弧状に形成されると共に、該チャック面(21a)の周長は、全ての把持部材(21)のチャック面(21a)を管体(11)または管継手(12)の外周面に当接した状態で、該管体(11)または管継手(12)の外周面の略全長に亘って当接するよう設定されることを要旨とする。
請求項
5に係る発明によれば、管体や管継手に対するチャック面の当接面積を広くすることで、管体や管継手を安定して把持することができる。
【0015】
請求項
6に係る発明では、
前記ねじ込み装置(14)が備える前記チャッキング装置(13,40,46,50)は、該ねじ込み装置(13,40,46,50)に対して回転が可能で径方向への変位が規制された状態で支持され、
前記支持装置(16)
が備える前記チャッキング装置(17)は、該支持装置(16)に対し
て回転が規制され
ると共に、
前記管継手(12)が前記ねじ込み装置(14)のチャッキング装置(13,40,46,50)で把持される際には支持装置(16)に対して径方向へ変位し得るよう支持されたことを要旨とする。
請求項
6に係る発明によれば、ねじ込み装置のチャッキング装置により管継手を把持した際に、該管継手や管体の曲がり等に起因して生ずる管体の径方向の変位は、該管体を把持しているチャッキング装置が支持装置に対して変位することで許容され、管体や管継手に対する当接圧にバラツキが発生するのを防止し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る管継手締付機によれば、管体や管継手の外周面に対する傷付きを抑制しつつ高い締め付けトルクで管体および管継手をねじ込み装着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る管継手締付機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係る管継手締付機10は、端部外周に雄ねじが螺刻された油井管等の管体11の端部に、内周に雌ねじが螺刻された管継手12をねじ込み装着するものであって、
図1に示す如く、管継手12を把持する管継手用のチャッキング装置(第1チャッキング装置)13を備えたねじ込み装置14が、ベッド15の上面に配設されている。また、ベッド15の上面には、ねじ込み装置14における管継手用のチャッキング装置13の配設端部(前端部)に対向して支持装置16が配設されている。この支持装置16は、前記管体11を把持する管体用のチャッキング装置(第1チャッキング装置)17を備え、該管体用のチャッキング装置17で把持した管体11を回転が規制された状態で保持し得るよう構成される。また、支持装置16は、ねじ込み装置14に対して後述する主軸19の軸方向に沿って近接・離間移動自在にベッド15の上面に配設されており、後述するように管継手用のチャッキング装置13で把持した管継手12を回転した際に、雄ねじと雌ねじとの螺合作用により軸方向(長手方向)に移動する管体11と共に支持装置16が移動し得るようになっている。
【0020】
前記ねじ込み装置14には、駆動モータ18により回転駆動される主軸19が回転自在に支持されている。この主軸19に、該主軸19と一体的に回転するように前記管継手用のチャッキング装置13が連結されている。駆動モータ18は、制御装置20に電気的に接続されており(
図5参照)、該制御装置20により駆動モータ18が駆動制御されるよう構成される。
【0021】
(チャッキング装置13,17について)
前記ねじ込み装置14に配設される管継手用のチャッキング装置13と、前記支持装置16に配設される管体用のチャッキング装置17の構成は同じであるので、管継手用のチャッキング装置13の構成を説明し、管体用のチャッキング装置17については、管継手用のチャッキング装置13と同一部材に同じ符号を付して詳細説明は省略する。また、以後、管継手用のチャッキング装置13について、単にチャッキング装置13という場合もある。
【0022】
前記チャッキング装置13は、
図2に示す如く、前記管継手12を把持する複数(実施例1では6つ)の把持部材21が配設された支持ユニット22と、各把持部材21を支持ユニット22の径方向に移動して管継手12を把持させる移動手段23とを備える。前記支持ユニット22は、
図3に示す如く、円筒状のスペーサ24と、該スペーサ24を挟んで配設されて支持ユニット22の軸方向(主軸19の軸方向と平行な方向)に離間する一対の円盤25,26とを備え、一方の円盤25が前記主軸19に連結されている。なお、円盤25,26に関して、主軸19に連結された円盤25を後円盤25と指称すると共に、他方の円盤26を前円盤26と指称する場合もある。スペーサ24は、両円盤25,26の外周端側に位置して、両円盤25,26およびスペーサ24により把持部材21の収容空間が画成される。また、前円盤26には、管継手12を軸方向に挿脱自在な通孔26aが軸中心に形成されており、該通孔26aを介して管体11の端部に仮装着された管継手12が収容空間内に挿通されるようになっている。
【0023】
前記両円盤25,26の間に、
図2に示す如く、正面視で略二等辺三角形状をした複数(実施例1では、6個)のガイド部材27が、周方向に沿って一定間隔をおいて配置されている。各ガイド部材27は、頂点を支持ユニット22の軸心(機械軸心ともいう)を通る軸線に向けた姿勢で両円盤25,26の間に配設されて、周方向に隣り合う一対のガイド部材27,27の周方向に対向する辺は平行になっている。そして、周方向に隣り合う一対のガイド部材27,27の間に、前記把持部材21が夫々支持ユニット22の軸方向への移動が規制された状態で径方向に移動自在に支持されている。すなわち、実施例1では、両円盤25,26の間に、6個の把持部材21が支持ユニット22の軸心から放射状に配設されて、これら6個の把持部材21が、前記通孔26aを介して収容空間に挿通された管継手12の周囲に位置するよう構成される。なお、把持部材21に関して、支持ユニット22の軸心側を向く端部を内端部と指称すると共に、支持ユニット22の軸心側とは反対側を向く端部を外端部と指称する場合もある。
【0024】
(把持部材21について)
前記把持部材21の内端部(管継手12の外周面を向く径方向の内側)に、
図2に示す如く、前記管継手12の外周面に倣う円弧状のチャック面21aが形成されており、該チャック面21aが管継手12に対して周方向に所定長さで隙間なく当接可能に構成されている。また、6個の把持部材21のチャック面21aの夫々を管継手12の外周面に当接した状態で、該6個の把持部材21のチャック面21aで合成される円の周長は、管継手12の外周面の周長より僅かに大きく設定されており、6個の把持部材21のチャック面21aで管継手12を略全周に亘って把持し得るようになっている。言い替えれば、各把持部材21のチャック面21aの周長は、全ての把持部材21のチャック面21aを管継手12の外周面に当接するように径方向に移動する際に、周方向に隣り合う把持部材21,21が干渉することなく管継手12の略全周に亘ってチャック面21aが当接可能な寸法に設定されている。
【0025】
前記各把持部材21の外端部に、移動手段としての油圧シリンダ23が配設されている。この油圧シリンダ23は、
図2,
図3に示す如く、把持部材21に配設固定されたシリンダ本体23aと、該シリンダ本体23aに移動自在に支持されて径方向外端から延出するロッド部分が支持ユニット22の径方向に伸縮動作するピストンロッド23bとを備え、該ピストンロッド23bの延出端が前記スペーサ24に連結されている。すなわち、油圧シリンダ23のピストンロッド23bを伸縮動作することにより、シリンダ本体23aおよび把持部材21が支持ユニット22に対して径方向に往復移動するよう構成される。油圧シリンダ23は、ピストンロッド23bのスペーサ24に対する連結部およびシリンダ本体23aの把持部材21に対する配設部において、支持ユニット22の径方向と直交する断面積は、シリンダ本体23aの方がピストンロッド23bの方より大きく構成されており、管継手12を把持部材21で把持する際に作用する当接反力を広い面積で受け得るようになっている。
【0026】
(位置検出器について)
前記支持ユニット22には、
図2に示す如く、各把持部材21の配設位置に対応して位置検出器(位置検出手段)28が設けられている。この位置検出器28は、把持部材21に配設された前記シリンダ本体23aとピストンロッド23bとの相対的な移動量を検出するリニアゲージであって、位置検出器28で検出された移動量(検出信号)が前記制御装置20に入力されるよう構成される。すなわち、制御装置20は、各位置検出器28で検出された移動量から、対応する各把持部材21におけるチャック面21aの現在位置を把握し得るよう構成されている。なお、実施例1では、1つの把持部材21に対して2つの位置検出器28を備えるよう構成しているが、位置検出器28は1つであってもよい。1つの把持部材21に対して複数の位置検出器28を備える実施例1では、制御装置20は複数の位置検出器28で検出された検出値の平均値を移動量として、対応する油圧シリンダ23を制御するよう構成される。また、位置検出器28は、シリンダ本体23aとピストンロッド23bとの相対的な移動量を検出可能な位置であれば、その配設位置は任意に設定できる。なお、
図5では、各把持部材21が備える2つの位置検出器28の一方のみを図示している。
【0027】
(圧力検出器について)
前記各油圧シリンダ23には、該油圧シリンダ23に作動油を供給する油圧ポンプと、作動油の供給路に配設されて開閉制御される制御弁とを備える油圧回路(図示せず)が接続されており、前記制御装置20により油圧ポンプおよび制御弁を制御することで、油圧シリンダ23におけるピストンロッド23bの伸縮動作が制御されるようになっている。油圧回路には、油圧シリンダ23に作用する圧力、具体的には管継手12にチャック面21aが当接した際を把持部材21に作用する当接圧を検出する圧力検出器(圧力検出手段)29が設けられ(
図5参照)、該圧力検出器29で検出された当接圧(検出信号)は前記制御装置20に入力されるよう構成される。前記油圧回路は、各油圧シリンダ23毎に独立して設けられており、各油圧シリンダ23は夫々独立してピストンロッド23bを伸縮動作することで、各把持部材21を独立して径方向に移動し得るよう構成される。すなわち、各把持部材21の位置および当接圧を対応する位置検出器28および圧力検出器29で確認することで、複数の把持部材21を相互の位置を調節しつつ径方向に移動し得るよう構成される。実施例1では、把持部材21を径方向に移動させる油圧シリンダ23が、第1移動手段および第2移動手段を兼用するよう構成される。
【0028】
(フローティング構造について)
前記支持装置16には、前記管体11を把持する前記管体用のチャッキング装置17を構成する支持ユニット22が、フローティング構造によって該支持ユニット22(チャッキング装置17)の中心(軸心)を通る軸線回りの回転が規制された状態で、該軸線と交差する方向への変位が可能に支持されている。
【0029】
前記支持装置16の支持台30に、
図4に示す如く、前記支持ユニット22の軸心を通る水平線上に配置された左右一対の第1軸受部31,31によって外環体32が左右方向への移動が許容された状態で水平軸回りに回動可能に支持されている。また、外環体32の内側に、前記支持ユニット22の軸心を通る垂直線上に配置された上下一対の第2軸受部33,33によって内環体34が上下方向への移動が許容された状態で垂直軸回りに回動可能に支持されており、該内環体34の内側に支持ユニット22が支持されている。すなわち、内環体34の内側に配設された管体用のチャッキング装置17は、内環体34と外環体32および支持台30の連結構造によって、支持ユニット22の軸心を中心に回転することなく軸心と交差する方向への移動が可能に支持されて、管継手12を管継手用のチャッキング装置13で把持する際に、管継手12や管体11の曲りや変形等に起因する管体11の変位を許容し得るよう構成される。
【0030】
ここで、
図4に示す如く、前記支持ユニット22に、径方向の外方に向けて突出する一対の第1腕部35,35が周方向に離間して設けられると共に、前記内環体34に、径方向の外方に向けて突出する一対の第2腕部36,36が周方向に離間して設けられている。各第1腕部35に対して対応する第2腕部36が周方向に離間して位置するよう設定されると共に、対をなす第1腕部35と第2腕部36とがロードセル等のトルク検出器37を介して連結されている。そして、管体11に対する管継手12のねじ込みが進行し、管体11を把持している管体用のチャッキング装置17を介して内環体34の第1腕部35をトルク検出器37に押付ける方向の回転力が作用した際の荷重を、該トルク検出器37によって検出することで、管体11に対する管継手12の締付トルクを検出し得るように構成されている。なお、
図5ではトルク検出器37を1つのみ示している。
【0031】
(制御装置20について)
前記制御装置20は、前記管継手12をチャッキング装置13で把持する把持工程に際し、先ず前記位置検出器28から入力される移動量に基づき、各油圧シリンダ23を作動制御(具体的には油圧ポンプおよび制御弁を制御)して、支持ユニット22の軸心に対する把持部材21の移動量が監視され、該移動量が、予め設定された停止移動量となった場合に、各油圧シリンダ23の作動を停止するよう制御することで、全ての把持部材21を軸心に対して均等に幅寄せし得るよう構成される。なお、制御装置20では、油圧シリンダ23のピストンロッド23bを最も縮めた状態(把持部材21が支持ユニット22の軸心から最も離間した待機位置の状態)を原点として、該原点からの移動量によって、支持ユニット22の軸心からのチャック面21aの位置を把握し得るようになっている。また、制御装置20は、管継手12に対する各把持部材21の当接圧を対応する圧力検出器29から入力される当接圧によって監視し、該当接圧が予め設定された規定当接圧となった場合に、対応する油圧シリンダ23を個別に停止制御するよう構成される。また、制御装置20は、管継手12を把持したチャッキング装置13を駆動モータ18の駆動によって回転して管体11に対して管継手12をねじ込む作業では、前記トルク検出器37で検出される締付けトルクが、予め設定された停止締付けトルクとなった場合に駆動モータ18を停止制御するよう構成されている。
【0032】
〔実施例1の作用〕
次に、前述のように構成された実施例1の管継手締付機10の作用について説明する。なお、前記把持部材21は、
図2に示す如く、前記前円盤26の通孔26aに対する管継手12の挿通を許容する待機位置に位置している。
【0033】
端部に管継手12を仮装着した管体11を、該管継手12がねじ込み装置14側に突出する状態で前記支持装置16の管体用のチャッキング装置17で把持する。なお、管体用のチャッキング装置17による管体11の把持工程は、後述する管継手用のチャッキング装置13による管継手12の把持工程と同じであるので、説明は省略する。そして、前記支持装置16をねじ込み装置14に対して近接移動して管継手12を前記管継手用のチャッキング装置13の支持ユニット22における前円盤26の通孔26aに挿通し、該管継手12が把持部材群の内側に位置するように位置決めする。
【0034】
前述したように把持部材群の内側に管継手12を位置決めした状態で、把持部材21による把持工程が開始される。この把持工程では、前記制御装置20によって各油圧シリンダ23が、ピストンロッド23bの伸長方向に作動される。各油圧シリンダ23のピストンロッド23bが伸長することで、シリンダ本体23aおよび把持部材21が支持ユニット22の軸心に向けて移動する。このとき、各油圧シリンダ23に対応して配設されている位置検出器28で検出された移動量が制御装置20に入力され、該制御装置20は各位置検出器28で検出される移動量に基づいて各油圧シリンダ23を作動制御することで、全ての把持部材21のチャック面21aを軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に幅寄せする。すなわち、各位置検出器28で検出される移動量が予め設定された停止移動量になった場合に、対応する油圧シリンダ23を停止することで、全ての把持部材21のチャック面21aが軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に位置決めされる。従って、把持部材群の内側に位置する管継手12の軸心が、前記支持ユニット22の軸心(機械軸心)とずれていた場合は、同じ移動量だけ移動する把持部材21によって管継手12の軸心を機械軸心に一致させるように該管継手12をセンタリングし得る。
【0035】
次に、前記制御装置20は、各油圧シリンダ23を、ピストンロッド23bの伸長方向に作動し、各把持部材21を更に支持ユニット22の軸心に向けて移動する。各把持部材21のチャック面21aが管継手12の外周面に当接すると、前記圧力検出器29で検出される当接圧の値が変化し、制御装置20は、検出される当接圧が予め設定された規定当接圧となった場合に、対応する油圧シリンダ23の作動を停止する。全ての圧力検出器29で検出される当接圧が規定当接圧となり、制御装置20が全ての油圧シリンダ23の作動を停止することで、把持部材21による管継手12の把持工程が完了する。
【0036】
ここで、前記管継手12や管体11に曲がりや変形等がある場合には、管継手用のチャッキング装置13によって管継手12を把持する際に、該管体11における前記管体用のチャッキング装置17で把持されている部位が径方向に変位しようとする。管体用のチャッキング装置17で拘束されている管体11が変位しようとする力が、管継手12に作用すると、該管継手12と把持部材21との当接圧に影響を及ぼし、該管継手12に対する把持部材21での当接圧が部分的に変化するおそれがある。しかるに、実施例1の管継手締付機10では、管体用のチャッキング装置17の支持ユニット22は、前記支持装置16(支持台30)に対して該支持ユニット22の軸線と交差する方向の変位が可能に支持されているので、曲がりや変形等に起因する管体11の変位が許容され、管継手用のチャッキング装置13での管継手12に対する当接圧が変化するのは防止され、管継手12を略全周に亘って均一な当接圧で把持する状態を維持し得る。
【0037】
前記管継手用のチャッキング装置13で管継手12が把持された状態で、前記駆動モータ18の駆動を開始すると、前記主軸19が回転することで把持部材群で把持されている管継手12も一体的に回転し、これにより雄ねじと雌ねじとの螺合作用下に管継手12が管体11にねじ込まれていく。この場合に、前記支持装置16に対して管体11は回転が規制された状態で保持されているので、管継手12の回転に伴って管体11と共に支持装置16がねじ込み装置14に対して近接移動する。そして、前記トルク検出器37で検出される締付けトルクが、予め設定された停止締付けトルクとなった場合に、前記制御装置20は駆動モータ18を停止制御する。これにより、管体11に対して適正な締付けトルクで管継手12がねじ込み装着される。
【0038】
前記管体11に対する管継手12のねじ込み装着が終了すると、前記全ての油圧シリンダ23がピストンロッド23bの収縮方向に作動され、全ての把持部材21のチャック面21aが管継手12の外周面から離間することで、管継手12が端部に装着された管体11を管継手用のチャッキング装置13から抜き外すことができる。
【0039】
実施例1の管継手締付機10では、複数の把持部材21の夫々を位置検出器28で検出される移動量に基づいて支持ユニット22の軸心に対する同一離間位置に移動させ得るので、管継手12の軸心を機械軸心に揃えることができる。また、各把持部材21を、対応する圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて夫々独立して移動して、各把持部材21による管継手12の当接圧が均一(規定当接圧)となる位置で各把持部材21を停止するよう構成したので、該管継手12を略全周に亘って均一な当接圧で把持することができる。すなわち、管継手12と把持部材21との当接圧が部分的に大きくなったり小さくなるのを防止することができ、チャッキング装置13による管継手12の把持力を高めることができる。従って、管継手12の外周面に爪痕等の表面傷を付けることなく高い当接圧で管継手12を把持することができ、管継手12を管体11に高い締付けトルクでねじ込み装着できる。
【0040】
前記チャッキング装置13では、複数の把持部材21のチャック面21aが管継手12の略全周に亘って当接するよう構成されているので、管継手12を安定して把持することができ、高い締付けトルクでのねじ込み装着に寄与し得る。また、前記油圧シリンダ23は、径方向に移動する把持部材21にシリンダ本体23aを配設すると共に、支持ユニット22のスペーサ24にピストンロッド23bを連結するよう構成しているので、把持部材21を管継手12に当接した際に該把持部材21が受ける当接反力をシリンダ本体23aの広い面積で受けることができる。すなわち、把持部材21の管継手12に対する当接圧を高く設定しても把持部材21を定位置に安定して保持することができ、当接圧の変動を防止し得る。
【0041】
また、前記管体11を把持する管体用のチャッキング装置17は、前記支持装置16に対してフローティング構造によって支持ユニット22の軸線と交差する方向への変位を許容し得るように支持されているので、管継手12や管体11の曲がりや変形等に起因して把持部材21の管継手12に対する当接圧が不均一となるのを防止することができる。すなわち、管継手12を複数の把持部材21で均一な当接圧で把持したもとでねじ込み装着することができ、高い締付けトルクでのねじ込み装着が達成されて品質の高い製品を製造し得る。
【0042】
前記管体用のチャッキング装置17で把持される管体11は、管継手用のチャッキング装置13で把持される管継手12の場合と同様に、複数の把持部材21によって略全周に亘って均一な当接圧で把持されるので、当接圧を高めた際に当接圧が部分的に過度に高くなることで管体11の外周面に傷が付くのは抑制される。また、その他、管体用のチャッキング装置17によって得られる作用効果は、管継手用のチャッキング装置13で得られる前記作用効果と同様である。
【0043】
図6および
図7は、実施例2に係る第2チャッキング装置40を示し、
図8および
図9は、実施例3に係る第3チャッキング装置46を示し、
図10は、実施例4に係る第4チャッキング装置50を示している。第2〜第4チャッキング装置40,46,50は、管継手用および管体用の何れにも用いられるものであるが、管継手用の場合で説明する。また、第2〜第4チャッキング装置40,46,50において、前記実施例1のチャッキング装置13と同一または同じ機能の部材については、同じ符号を付して詳細説明は省略するものとする。
【実施例2】
【0044】
図6,
図7に示す実施例2に係る第2チャッキング装置40は、前記支持ユニット22に、円筒状の楔環部材41が前記スペーサ24の内側において軸方向に移動自在に支持されている。この楔環部材41は、内周面に、周方向に離間する複数箇所(実施例2では把持部材21の配設数と同数の6箇所)に径方向内側(機械軸心側)に突出する楔部42が設けられている。各楔部42は、内側の面(把持部材21を向く内面)が、軸方向の一方から他方に向かうにつれて径方向に変位する傾斜面42aとして形成されている。すなわち、楔環部材41には、各把持部材21に対応する位置の夫々に楔部42(傾斜面42a)が一体に形成されて、これら複数の楔部42(傾斜面42a)が一体で移動するようになっている。実施例2では、
図7に示す如く、楔部42の傾斜面42aは、前端(支持装置16側)から後側に向かうにつれて径方向外側に変位するよう設定され、該楔環部材41を後側(支持装置16から離間する側)に移動することで後述する第1の楔部材44が径方向内側へ移動し、該楔環部材41を前側(支持装置16に近接する側)に移動することで第1の楔部材44が径方向外側へ移動するよう構成されている。また、支持ユニット22の後円盤25に、周方向に離間して複数(実施例2では6個)の第1油圧シリンダ(駆動手段,第1駆動手段)43が配設されており、各第1油圧シリンダ43のピストンロッド43aが楔環部材41に連結されている。そして、全ての第1油圧シリンダ43を、ピストンロッド43aが同一方向に移動するように同期して作動することで、該ピストンロッド43aの伸縮動作によって楔環部材41が支持ユニット22内において軸方向に往復移動するよう構成される。
【0045】
前記複数の第1油圧シリンダ43は、油圧ポンプおよび制御弁を備える共通の油圧回路に接続されており、1つの油圧ポンプを制御装置20が作動制御することで、全ての第1油圧シリンダ43が同期して作動するよう構成される。
【0046】
前記支持ユニット22における両円盤25,26の間には、
図6に示す如く、前記楔環部材41の内側で周方向に隣り合う一対の楔部42,42の間にガイド部材27が夫々配設されている。そして、周方向に隣り合う一対のガイド部材27,27の間に、
図7に示す如く、楔部42の傾斜面42aと対応する傾斜面44aが外端面に形成された第1の楔部材(楔部材)44が支持ユニット22の径方向に移動自在に支持されている。なお、第1の楔部材44は、図示しない付勢手段によって、常に傾斜面44aが楔部42の傾斜面42aに当接する方向(実施例2では径方向外方)に向けて付勢されている。すなわち、第1の楔部材44は、軸方向への移動が規制された状態で径方向の移動が許容されるように支持ユニット22に支持されており、楔環部材41が軸方向に移動することで、楔部42と第1の楔部材44との楔作用によって該第1の楔部材44が径方向に移動するよう構成される。
【0047】
図6に示す如く、周方向に隣り合う一対のガイド部材27,27の間における各第1の楔部材44より内側に、前記把持部材21が支持ユニット22の軸方向への移動が規制された状態で径方向に移動自在に支持されている。内端部にチャック面21aが形成された各把持部材21の外端部に、第2油圧シリンダ(油圧シリンダ)45のシリンダ本体45aが配設されると共に、該シリンダ本体45aから径方向外方に延出するピストンロッド45bの延出端が第1の楔部材44に連結されている。すなわち、把持部材21および該把持部材21を第1の楔部材44に連結する第2油圧シリンダ45は、第1油圧シリンダ43を作動して楔環部材41を軸方向に移動する際の楔作用によって径方向に移動する第1の楔部材44と一体的に径方向に移動するよう構成される。そして、第2油圧シリンダ45のピストンロッド45bを伸縮動作することにより、第1の楔部材44に対して把持部材21を近接・離間移動し得るよう構成される。すなわち、各第2油圧シリンダ45を作動することで、各把持部材21を独立して支持ユニット22の径方向に移動し得るよう構成されている。実施例2では、楔環部材41、第1の楔部材44および第1油圧シリンダ43によって、複数の把持部材21を径方向に移動する第1移動手段が構成されると共に、第2油圧シリンダ45が、各把持部材21を第1の楔部材44に対して近接・離間移動させる第2移動手段として機能するよう構成される。また各第2油圧シリンダ45は、制御装置20によって独立して制御されるよう構成されている。
【0048】
なお、実施例1では各油圧シリンダ23に対応して位置検出器28を設けているが、実施例2では全ての把持部材21が単一の楔環部材41の移動によって径方向に移動するよう構成されているので、位置検出器28は何れか1つの把持部材21の径方向への移動量を検出し得る位置に設けられていればよい。但し、圧力検出器29は、各第2油圧シリンダ45に対応して夫々設けられて、各把持部材21の管継手12に対する当接圧を個々に検出し得るよう構成されることは、実施例1と同じである。また、実施例2においては、位置検出器28で検出される移動量に基づいて制御装置20が第1油圧シリンダ43を制御すると共に、各圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて制御装置20が対応する第2油圧シリンダ45を個々に制御するよう構成される。
【0049】
実施例2の第2チャッキング装置40では、把持部材群の内側に管継手12を位置決めした状態で、前記複数の第1油圧シリンダ43を同時に作動して楔環部材41を軸方向の後側に移動することで、前記楔部42と第1の楔部材44との楔作用によって該第1の楔部材44および把持部材21が径方向内側へ移動する。このとき、位置検出器28で検出された移動量が制御装置20に入力され、該制御装置20は位置検出器28で検出される移動量に基づいて第1油圧シリンダ43を作動制御することで、全ての把持部材21のチャック面21aを軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に幅寄せすることができる。実施例2では、単一の楔環部材41を軸方向へ移動するだけで、全ての把持部材21のチャック面21aを軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に位置決めし得るので、構成を簡略化することができる。すなわち、複数の第1油圧シリンダ43を単一の油圧回路に接続して作動し得るので、第1油圧シリンダ(第1移動手段)43の制御系を簡略化することができる。
【0050】
次に、前記各第2油圧シリンダ45を、ピストンロッド45bの伸長方向に作動し、各把持部材21を支持ユニット22の軸心に向けて移動する。そして、各把持部材21に対応する圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて制御装置20が各第2油圧シリンダ45を作動制御することで、実施例1と同様に各把持部材21の管継手12に対する当接圧が均一となる状態で該管継手12を把持することができる。
【0051】
実施例2では、全ての第2油圧シリンダ45がピストンロッド45bの収縮方向に作動されると、全ての把持部材21のチャック面21aが管継手12の外周面から離間する。そして、全ての第1油圧シリンダ43を作動して楔環部材41を軸方向の前側に向けて移動させると、付勢部材によって傾斜面同士が当接する方向に付勢されている第1の楔部材44が楔環部材41の移動に伴って径方向外側へ移動することで、把持部材21は待機位置に戻る。全ての把持部材21が待機位置に戻ることで、管継手12が端部に装着された管体11を第2チャッキング装置40から抜き外すことができる。
【実施例3】
【0052】
図8および
図9に示す第3チャッキング装置46は、前記第2チャッキング装置40における各把持部材21を独立して径方向に移動する第2移動手段(第2油圧シリンダ45)として、第2の楔部材48を用いた手段としたものであって、楔環部材41および該楔環部材41を移動させる機構は同一であるので、異なる部分についてのみ説明し、同一部材については同じ符号を付して詳細説明は省略する。
【0053】
前記各把持部材21の後端部に、可動ブロック47が一体的に径方向に移動自在に配設される。前記楔環部材41における各楔部42と、該楔部42に対応する可動ブロック47との間に、軸方向に移動自在に第2の楔部材48が配設されている。この第2の楔部材48は、対応する楔部42の傾斜面42aと対応する傾斜面48aが外端面に形成された部材であって、楔部42との楔作用によって径方向に移動自在に構成される。なお、可動ブロック47は、図示しない付勢手段によって径方向外方に向けて付勢されており、第2の楔部材48は、可動ブロック47を径方向外側に向けて付勢する付勢手段の付勢力によって常に傾斜面48aが楔部42の傾斜面42aに当接する状態に維持されるようになっている。
【0054】
前記各可動ブロック47に、
図9に示す如く、第3油圧シリンダ(第2駆動手段)49が一体的に移動し得るように配設されると共に、該第3油圧シリンダ49のピストンロッド49aが第2の楔部材48に連結されている。そして、各第3油圧シリンダ49を作動してピストンロッド49aを伸縮動作することで、第2の楔部材48が前記楔環部材41の楔部42と可動ブロック47との間を軸方向に往復移動するよう構成される。すなわち、定位置に位置する楔環部材41に対して第2の楔部材48を軸方向に移動することで、該第2の楔部材48と楔部42との楔作用によって第2の楔部材48と共に可動ブロック47および把持部材21が一体的に径方向に移動するよう構成される。実施例3では、楔環部材41、第2の楔部材48および第1油圧シリンダ(第1駆動手段)43によって、複数の把持部材21を径方向に移動させる第1移動手段が構成され、第2の楔部材48および第3油圧シリンダ49によって、各把持部材21を独立して径方向に移動させる第2移動手段が構成されている。また実施例3では、第2の楔部材48が、第1移動手段および第2移動手段の構成部材として共通に用いられている。なお、支持ユニット22の後円盤25には、第3油圧シリンダ49が径方向へ移動するのを許容する通孔25aが、各第3油圧シリンダ49の配設位置に対応して形成されている。
【0055】
実施例3の第3チャッキング装置46は、実施例2の第2チャッキング装置40と同じく、1つの把持部材21の移動量を検出する位置検出器28と、各第3油圧シリンダ49の夫々に対応して把持部材21の管継手12に対する当接圧を検出する圧力検出器29とを備える。そして、実施例3においては、位置検出器28で検出される移動量に基づいて制御装置20が第1油圧シリンダ43を制御すると共に、各圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて制御装置20が対応する第3油圧シリンダ49を個々に制御するよう構成される。
【0056】
実施例3では、前記楔環部材41を軸方向に移動して全ての把持部材21を軸心に対する一定位置に幅寄せした後、各第3油圧シリンダ49を作動することで、第2の楔部材48と楔部42との楔作用によって各把持部材21が夫々独立して前記管継手12に当接される。すなわち、実施例3においても、1つの楔環部材41を移動することで、全ての把持部材21を軸心に対する一定位置に幅寄せすることができる。また、実施例3では、把持部材21が可動ブロック47、第2の楔部材48および楔環部材41を介して支持ユニット22のスペーサ24に機械的に当接しているので、管継手12に把持部材21を当接した際に作用する当接反力を安定して受けることできる。言い替えると、把持部材21とスペーサ24との間に、圧力によって体積が変化する流体(油や空気)が介在していないので、当接反力によって把持部材21の位置が変位するのは防止され、管継手12を高い当接圧で安定して把持した状態を維持し得る。
【実施例4】
【0057】
図10に示す実施例4に係る第4チャッキング装置50は、前記支持ユニット22に、円筒状のスライド環51が、前記スペーサ24の内側において軸方向に移動自在に支持されている。また、支持ユニット22におけるスライド環51の内側に、周方向に離間して複数のガイド部材27が配設されると共に、周方向に隣り合う一対のガイド部材27,27の間に可動体52が径方向に移動自在に支持されている。実施例4では、6個の可動体52が周方向に離間して配設されている。そして、各可動体52は、スライド環51に対して複数のリンク杆からなるリンク機構53を介して連結されている。実施例4では、リンク機構53として平行リンク機構が用いられている。
【0058】
前記支持ユニット22の後円盤25に、周方向に離間して複数(実施例4では6個)の第4油圧シリンダ(第1駆動手段)54が配設されており、各第4油圧シリンダ54のピストンロッド54aが前記スライド環51に連結されている。そして、全ての第4油圧シリンダ54を作動してピストンロッド54aを伸縮動作することで、スライド環51が支持ユニット22内において軸方向に往復移動するよう構成される。実施例4では、前記可動体52の軸方向の移動が前後の円盤25,26によって規制されており、スライド環51が軸方向に移動することでリンク機構53を介して可動体52は径方向へのみ移動するようになっている。すなわち、実施例4では、スライド環51、リンク機構53および可動体52からトグル機構が構成されており、リンク機構53を構成するリンク杆におけるスライド環51に対する枢支点と可動体52に対する枢支点とが径方向に整列する位置(以後、スライド環51の作動位置という)において最も大きな力が発現されるよう設定されている。また、支持ユニット22における前円盤26に、スライド環51と軸方向で対向する位置にストッパ55が設けられており、スライド環51は該ストッパ55に前端が当接して作動位置に位置決めされるようになっている。なお、複数の第4油圧シリンダ54は共通の油圧回路に接続されており、制御装置20によって全ての第4油圧シリンダ54が同時に作動制御されるよう構成される。
【0059】
前記各可動体52の内側には、周方向に隣り合う一対の前記ガイド部材27,27の間に第3の楔部材(楔部材)56が軸方向へ移動自在に支持されている。第3の楔部材56は、
図10に示す如く、内側の面が、軸方向の一端側から他端側に向かうにつれて径方向に変位する傾斜面56aとして形成されている。また、各第3の楔部材56の内側には、周方向に隣り合う一対の前記ガイド部材27,27の間に、把持部材21が支持ユニット22の軸方向への移動が規制された状態で径方向に移動自在に支持されている。この把持部材21における第3の楔部材56の傾斜面56aと対向する外端面には、該傾斜面56aと対応する傾斜面21bが形成されている。なお、把持部材21は、可動体52に対して径方向に近接・離間移動可能で、かつ図示しない付勢手段によって常に可動体52に近接する方向(径方向外側)に向けて付勢されている。そして、第3の楔部材56は、付勢手段の付勢力によって把持部材21と可動体52とで挟持されて、該第3の楔部材56の傾斜面56aと把持部材21の傾斜面21bとが付勢手段の付勢力によって常に当接する状態に維持されるようになっている。
【0060】
前記各可動体52に、第5油圧シリンダ(第2駆動手段)57が一体的に移動し得るように配設されると共に、該第5油圧シリンダ57のピストンロッド57aが第3の楔部材56に連結されている。そして、各第5油圧シリンダ57を作動してピストンロッド57aを伸縮動作することで、第3の楔部材56が前記可動体52と把持部材21との間を軸方向に往復移動するよう構成される。すなわち、軸方向の移動が規制された把持部材21に対して第3の楔部材56を軸方向に移動することで、該第3の楔部材56と把持部材21との楔作用によって把持部材21が径方向に移動するよう構成される。なお、第5油圧シリンダ57は、後円盤25に形成された通孔25aに挿通されて径方向への移動は許容されるようになっている。実施例4では、スライド環51、リンク機構53、可動体52および第4油圧シリンダ(第1駆動手段)54によって、複数の把持部材21を径方向に移動させる第1移動手段が構成され、第3の楔部材56および第5油圧シリンダ(第2駆動手段)57によって、各把持部材21を独立して径方向に移動させる第2移動手段が構成されている。
【0061】
実施例4の第4チャッキング装置50は、実施例2,3のチャッキング装置40,46と同じく、1つの把持部材21の移動量を検出する位置検出器28と、各第5油圧シリンダ57の夫々に対応して把持部材21の管継手12に対する当接圧を検出する圧力検出器29を備える。そして、実施例4においては、位置検出器28で検出される移動量に基づいて制御装置20が第4油圧シリンダ54を制御すると共に、各圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて制御装置20が対応する第5油圧シリンダ57を個々に制御するよう構成される。
【0062】
実施例4の第4チャッキング装置50では、把持部材群の内側に管継手12を位置決めした状態で、前記複数の第4油圧シリンダ54を同時に作動して前記スライド環51を軸方向に移動することで、前記リンク機構53によって可動体52が径方向内側へ移動する。前記把持部材21は、可動体52に対して第3の楔部材56を挟んだ状態で径方向に一体的に移動可能に構成されているので、該把持部材21および第3の楔部材56は可動体52と一体的に径方向内側へ移動する。このとき、位置検出器28で検出された移動量が制御装置20に入力され、該制御装置20は位置検出器28で検出される移動量に基づいて第4油圧シリンダ54を作動制御することで、全ての把持部材21のチャック面21aを軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に幅寄せすることができる。なお、実施例4では、位置検出器28で検出される移動量に基づいて移動される把持部材21の停止位置は、前記スライド環51が作動位置に至る手前の幅寄せ位置に設定されている。実施例4では、実施例2,3と同様に、スライド環51を軸方向へ移動するだけで、全ての把持部材21のチャック面21aを軸心に対して同じ距離だけ離間した位置に位置決めし得るので、構成を簡略化することができる。すなわち、複数の第4油圧シリンダ54を単一の油圧回路に接続して作動し得るので、第4油圧シリンダ(第1移動手段)54の制御系を簡略化することができる。
【0063】
次に、前記各第5油圧シリンダ57を作動し、定位置に位置する可動体52に対して第3の楔部材56を軸方向に移動することで、該第3の楔部材56と把持部材21との楔作用によって該把持部材21が径方向内側に移動し、前記チャック面21aが管継手12の外周面に当接する。そして、各把持部材21に対応する圧力検出器29で検出される当接圧に基づいて制御装置20が各第5油圧シリンダ57を作動制御することで、実施例1と同様に各把持部材21の管継手12に対する当接圧が均一となる状態で該管継手12を把持することができる。また実施例4では、更に前記第4油圧シリンダ54を作動し、前記リンク機構53によって可動体52および第3の楔部材56を介して把持部材21を径方向の内側に更に移動し、前記スライド環51が前記ストッパ55に当接した位置で制御装置20が第4油圧シリンダ54を停止する。これにより、トグル機構によって最も大きな力が発現される位置で全ての把持部材21を保持することができ、管継手12を高い当接力で把持することができる。
【0064】
実施例4では、トグル機機を用いて把持部材21を移動するよう構成したので、前記スライド環51を移動させるストロークを小さく抑えたもとで、把持部材21による管継手12の当接圧を高めることができ、管継手12と管体11との高い締付けトルクでのねじ込み装着に寄与し得る。また、スライド環51の移動ストロークを小さくし得るので、装置の小型化を図ることができる。更に、実施例4においても、把持部材21が第3の楔部材56、可動体52、リンク機構53およびスライド環51を介して支持ユニット22のスペーサ24に機械的に当接しているので、管継手12を高い当接圧で安定して把持した状態を維持し得る。
【0065】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例1〜4の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例1〜4では、支持ユニットに6つの把持部材を配設したが、該把持部材の数は6つに限られるものでなく、円筒状の管継手または管体を安定して把持し得る数であれば、少なくとも3つ以上であればよい。
(2) 実施例2〜4では、楔環部材またはスライド環を6つ(複数)の油圧シリンダで軸方向に移動するよう構成したが、該楔環部材またはスライド環を移動させる油圧シリンダは1つであっても、6個以外の複数であってもよい。
(3) 実施例2〜4では、楔環部材またはスライド環を油圧シリンダで軸方向に移動するよう構成したが、該楔環部材またはスライド環を移動する手段は、モータ等のロータリーアクチュエータとリンク機構とを組み合わせた機構、ロータリーアクチュエータとボールネジとを組み合わせた機構等、その他各種公知の機構を採用し得る。
(4) 実施例3〜4では、第2の楔部材または第3の楔部材を油圧シリンダで軸方向に移動するよう構成したが、各楔部材を移動する手段は、モータ等のロータリーアクチュエータとリンク機構とを組み合わせた機構、ロータリーアクチュエータとボールネジとを組み合わせた機構等、その他各種公知の機構を採用し得る。
(5) 実施例1では、各把持部材と支持ユニットとの間に設けた油圧シリンダについて、シリンダ本体を把持部材に配設して、ピストンロッドを支持ユニット(スペーサ)に連結するよう構成したが、シリンダ本体を支持ユニット(スペーサ)に配設して、ピストンロッドを把持部材に連結する構成を採用し得る。
【0066】
(6) 実施例1では、位置検出器で検出される移動量に基づいて油圧シリンダを制御して、把持部材を支持ユニットの軸心に幅寄せした後に該油圧シリンダを一旦停止し、次いで圧力検出器で検出される当接圧に基づいて油圧シリンダを制御して把持部材で管継手を把持するよう構成したが、油圧シリンダを一旦停止することなく連続的に幅寄せと把持とを行わせる構成を採用し得る。
(7) 実施例4において、スライド環51が作動位置に至る前に該スライド環51を検出する位置センサ58(
図10参照)を支持ユニット22に配設し、複数の把持部材21を支持ユニット22の軸心に幅寄せする工程において、位置センサ58からの検出信号によって制御装置20で第4油圧シリンダ54を停止制御する構成を採用し得る。そして、第5油圧シリンダ57で各把持部材21を個々に均一な当接圧となるまで該把持部材21を移動した後に、再び第4油圧シリンダ54を作動してスライド環51を作動位置まで移動するようにしてもよい。
(8) 実施例4において採用した第3の楔部材と第5油圧シリンダとによる把持部材の第2移動手段に代えて、実施例2において採用した第2油圧シリンダによる把持部材の第2移動手段を用いることができる。すなわち、可動体と把持部材との間に油圧シリンダを配設し、該油圧シリンダの作動によって可動体に対して把持部材を近接・離間移動させる構成とすることができる。この場合に、油圧シリンダのシリンダ本体は、把持部材および可動体の何れの側に配設する構成であってもよい。
(9) 実施例4において採用したトグル機構による把持部材の第1移動手段に代えて、油圧シリンダを用いることができる。すなわち、支持ユニット(スペーサ)と可動体との間に油圧シリンダを配設し、該油圧シリンダの作動によって支持ユニット(スペーサ)に対して可動体を近接・離間移動させる構成とすることができる。この場合に、油圧シリンダのシリンダ本体は、支持ユニット(スペーサ)および可動体の何れの側に配設する構成であってもよい。
(10) 実施例1のように各把持部材の夫々を油圧シリンダで独立して幅寄せし得るよう構成されたチャッキング装置に、管継手や管体の外径を計測する計測手段を設け、該計測手段で計測された管継手や管体の外径に応じた位置まで各把持部材を油圧シリンダで幅寄せした後、圧力検出器で検出される当接圧に基づいて各把持部材を油圧シリンダで独立して移動することで、把持対象となる管継手や管体を適切な当接圧で把持する構成を採用し得る。なお、管継手や管体の外径は、把持対象となる管継手や管体の外径を予め制御装置に入力するようにしてもよい。
(11) 実施例1のように各把持部材の夫々を油圧シリンダで独立して幅寄せし得るよう構成されたチャッキング装置において、管継手や管体の外径に応じて該管継手や管体を把持する把持部材の数を異ならせるようにしてもよい。すなわち、前記計測手段で計測された管継手や管体の外径情報や予め制御装置に入力されている管継手や管体の外径情報を基に、該外径に見合った数の把持部材を選択して幅寄せおよび把持する構成を採用し得る。
(12) 実施例1のように各把持部材の夫々を独立して幅寄せし得るよう構成されたチャッキング装置において、位置検出器については全ての把持部材に設けることなく、一部の把持部材のみに対応して設け、位置検出器が設けられた把持部材を用いて管継手や管体をセンタリングし、その後に全ての把持部材を用いて管継手や管体を把持する構成を採用し得る。このように、一部の把持部材を用いて管継手や管体をセンタリングする構成によれば、位置検出器による位置制御を全ての把持部材について行う必要がないので、制御系を簡略化してコストを低減し得る。