(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、内燃機関の燃焼に伴い発生するイオン電流値をより精度良く検出する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の態様として実現することが可能である。
第1の態様は、内燃機関の着火補助装置を提供する。第1の態様に係る内燃機関の着火補助装置は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され先端部が前記ハウジングから露出しているセラミック体と、互いに電気的に絶縁された状態で前記セラミック体内に埋設されている発熱体およびイオン検出用電極とを備え、前記イオン検出用電極にイオン検出用電圧を印加するためのイオン検出用端子部と、前記内燃機関と接触しない位置に配置され、前記発熱体に通電するための2つの発熱体用端子部と、を備える。
【0007】
第1の態様に係る着火補助装置によれば、内燃機関と接触しない位置に配置されている、発熱体に通電するための2つの発熱体用端子部を備えるので、内燃機関の燃焼に伴い発生するイオン電流値をより精度良く検出することができる。
【0008】
第1の態様に係る着火補助装置はさらに、一端が前記イオン検出用電極の一端に電気的に接続され、他端が前記イオン検出用端子部に電気的に接続されているイオン検出用導電路と、一端が前記発熱体の2つの端部の一方に電気的に接続され、他端が前記2つの発熱体用端子部の一方に電気的に接続されている第1の発熱体用導電路と、一端が前記発熱体の前記2つの端部の他方に電気的に接続され、他端が前記2つの発熱体用端子部の他方に電気的に接続されている第2の発熱体用導電路と、を備えても良い。この場合には、イオン検出用電極と発熱体とは、互いに、電気的に絶縁された状態でイオン検出用端子部および2つの発熱体用端子部と接続される。
【0009】
第1の態様に係る着火補助装置において、前記着火補助装置は、前記先端部とは反対側に位置する基端部を有し、前記イオン検出用端子部および前記2つの発熱体用端子部は、前記基端部に配置されていても良い。この場合には、イオン検出用端子部および2つの発熱体用端子部に対する接続が容易になり、また、2つの発熱体用端子部と内燃機関との接触を防止することができる。
【0010】
第1の態様に係る着火補助装置において、前記基端部は、前記着火補助装置が前記内燃機関に装着された際に前記内燃機関から露出する前記着火補助装置の部分であっても良い。この場合には、イオン検出用端子部および2つの発熱体用端子部に対する接続が容易になり、また、2つの発熱体用端子部は内燃機関から露出しており、内燃機関との接触を防止することができる。
【0011】
第2の態様は、内燃機関の燃焼室内におけるイオンの発生に伴い流れる電流を検出するためのイオン電流検出システムを提供する。第2の態様に係るイオン電流検出システムは、前記内燃機関に装着して用いられる内燃機関の着火補助装置であって、互いに電気的に絶縁された状態でセラミック体に埋設されているイオン検出用電極、および発熱体と、前記イオン検出用電極にイオン検出用電圧を印加するためのイオン検出用端子部と、前記内燃機関と接触しない位置に配置され、前記発熱体に通電するための2つ発熱体用端子部と、を備えている着火補助装置と、
イオン電流検出用回路であって、前記イオン検出用端子部電気的にと接続されている第1の端子と、前記内燃機関に電気的に接続されている第2の端子と、を備える、イオン電流検出用回路と、
発熱体用回路であって、前記2つの発熱体用端子部の一方に電気的に接続されている第1の端子と、前記2つの発熱体用端子部の他方に電気的に接続されている第2の端子と、を備える、発熱体用回路と、を備える。
【0012】
第2の態様に係るイオン電流検出システムによれば、内燃機関と接触しない位置に配置されている、発熱体に通電するための2つの発熱体用端子部を備えるので、内燃機関の燃焼に伴い発生するイオン電流値をより精度良く検出することができる。
【0013】
第2の態様に係るイオン電流検出システムにおいて、前記イオン電流検出用回路および前記発熱体用回路はそれぞれ独立した電源を有し、前記イオン電流検出用回路と前記発熱体用回路とは電気的に独立した回路であっても良い。この場合には、イオン電流検出用回路は、常に、発熱体用回路に起因する電気的な影響を受けることなく、イオン電流を検出することができる。
【0014】
第2の態様に係るイオン電流検出システムはさらに、前記発熱体用回路の第2の端子と、前記内燃機関とを電気的に接続または電気的に切り離す切り替え部を備え、前記切り替え部は、少なくとも、前記イオン電流検出用回路によってイオン電流が検出される際には、前記内燃機関と前記発熱体用回路の第2の端子とを電気的に切り離しても良い。この場合には、内燃機関と発熱体用回路の第2の端子とが電気的に切り離されるので、イオン電流検出用回路は、発熱体用回路に起因する電気的な影響を受けることなく、イオン電流を検出することができる。
【0015】
第2の態様に係るイオン電流検出システムにおいて、前記着火補助装置は前記内燃機関の前記燃焼室側に位置する先端部と、前記先端部とは反対側に位置する基端部とを有し、前記イオン検出用端子部および前記2つの発熱体用端子部は、前記基端部に配置されていても良い。この場合には、イオン検出用端子部および2つの発熱体用端子部に対する接続が容易になり、また、2つの発熱体用端子部と内燃機関との接触を防止することができる。
【0016】
第2の態様に係るイオン電流検出システムにおいて、前記基端部は、前記着火補助装置が前記内燃機関に装着された際に前記内燃機関から露出する前記着火補助装置の部分であっても良い。この場合には、イオン検出用端子部および2つの発熱体用端子部に対する接続が容易になり、また、2つの発熱体用端子部は内燃機関から露出しており、内燃機関との接触を防止することができる。
【0017】
本発明は、この他に、イオン電流検出方法、イオン電流検出プログラム、イオン電流検出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能媒体としても実現され得る。なお、コンピュータ読み取り可能媒体としては、用途に応じて、CDR等の光学式記録媒体、ハードディスク等の磁気式記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体記録媒体を適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る着火補助装置の一態様として、ディーゼルエンジン(内燃機関)の点火補助装置として用いられるグロープラグを例にとって以下説明する。
図1は各実施形態において共通に用いられるグロープラグの外観を概略的に示す説明図である。
図2は
図1に示すグロープラグの内部構成のうち主要な構成について概略的に示す説明図である。
【0020】
グロープラグの構成:
本実施形態に係るグロープラグ10は、セラミック体11と、ハウジング12、第1および第2発熱体用端子部21、22、およびイオン検出用端子部31を備えている。グロープラグ10は、内燃機関に装着して用いられる。
【0021】
セラミック体11は、先端部11aが半球状の略棒状の形状を有し、先端部11aが露出するようにハウジング12内に配置される。セラミック体11は、支持体111と、支持体111の内部に埋設されている、発熱抵抗体20およびイオン検出用のイオン検出用電極30を有する。支持体111と、発熱抵抗体20およびイオン検出用電極30は、同時に焼結形成される。支持体111、発熱抵抗体20、およびイオン検出用電極30は、いずれも窒化ケイ素(Si
3N
4)を含有する耐熱性セラミック組成物からなり、その目的に応じて導電性セラミック組成物等の他の組成物が適宜混合される。なお、セラミック体11は、セラミックヒータとも呼ばれる。
【0022】
支持体111は、十分な電気絶縁性を有することが求められ、絶縁性セラミック組成物である窒化ケイ素を主成分として含有し、導電性セラミック組成物として、金属窒化物(例えば、チタニウム(Ti)窒化物)、金属炭化物(例えば、ジルコニア(Zr)窒化物)、焼結助剤として、希土類酸化物(例えば、イッテルビウム(Yb)酸化物、エルビウム(Er)酸化物など)とアルミニウム(Al)酸化物とを含有してもよい。
【0023】
発熱抵抗体20およびイオン検出用電極30は、導電性セラミック組成物を主成分として含有することによって導電性を得ている。例えば、55〜70質量%の炭化タングステンと、28〜35質量%の窒化ケイ素とを含有し、残りの2〜10質量%として酸化エルビウム(Er
2O
3)および酸化ケイ素(SiO
2)を含有してもよい。なお、発熱抵抗体20とイオン検出用電極30とは、同一の組成物から形成されても良く、異なる組成物から形成されても良い。また、発熱抵抗体20およびイオン検出用電極30とは、支持体111によって相互に電気的に絶縁されている。
【0024】
発熱抵抗体20は略U字形状をなし、接地される第1の端部201および電源に接続される第2の端部202とを有している。本実施形態における発熱抵抗体20は、リード部を含めてセラミック組成物によって形成されており、例えば、略U字状の曲線部分におけるセラミック組成物の抵抗値を上げて発熱部とし、残りの部分についてはセラミック組成物の抵抗値を抑えて導電部としている。なお、一般的に、内燃機関を備える車両における接地はボディアースを意味し、従来、発熱抵抗体の一方の端部は、ハウジング12を介して内燃機関のシリンダヘッドに電気的に接続されていた。発熱抵抗体は発熱体と言うこともできる。
【0025】
イオン検出用電極30は、セラミック体11の先端部11aに向けられている開放端である第1の端部301と、イオン電流検出回路に接続される第2の端部302とを備えている。本実施形態におけるイオン検出用電極30は、リード部を含めて抵抗値の低いセラミック組成物によって形成されている。なお、リード部は、例えば、タングステン金属線等の金属線によって形成されても良い。
【0026】
ハウジング12は、ネジ部121、および工具係合部122を備えている。ハウジング12は、導電性を有する金属材料によって略円筒形状に形成されており、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼といった任意の種類の金属材料によって形成され得る。ハウジング12は主体金具とも呼ばれる。
【0027】
ネジ部121は、雄ネジ部であり、内燃機関のシリンダヘッドにおけるグロープラグ取り付け孔に形成されている雌ネジ部と螺合することで、グロープラグ10が内燃機関に対して取り付られる。工具係合部122は、グロープラグ10を内燃機関に装着する際、あるいは、グロープラグ10を内燃機関から取り外す際に、プラグレンチが係合される部位である。工具係合部122にプラグレンチが係合されることにより、グロープラグ10に回転力が与えられ、グロープラグ10の脱着が可能となる。工具係合部122は、一般的には、六角形状を有しているが、その他の形状を有していても良い。
【0028】
ハウジング12の基端部12b、すなわち、セラミック体11の先端部11aが露出している側とは逆側の端部には、第1の内部導電路211および第2の内部導電路221を介して発熱抵抗体20の第1の端部201および第2の端部202と、それぞれ電気的に接続されている第1および第2発熱体用端子部21、22、第3の内部導電路311を介してイオン検出用電極30の第2の端部302と電気的に接続されているイオン検出用端子部31がそれぞれ備えられている。基端部12bは、第1および第2発熱体用端子部21、22、並びにイオン検出用端子部31と外部回路とを電気的に接続するプラグコネクタが装着されるコネクタ装着部と呼ぶこともでき、グロープラグ10が内燃機関(シリンダヘッド)に装着された状態において、内燃機関から露出している。したがって、第1および第2発熱体用端子部21、22、並びにイオン検出用端子部31は、内燃機関と接触しない位置に配置されている。第1、第2および第3の内部導電路211、221および311は、例えば、金属タングステン線によって構成され、また、それぞれ、第1の発熱体用導電路、第2の発熱体用導電路、イオン検出用導電路と言うこともできる。
【0029】
本実施形態に係るグロープラグ10においては、発熱抵抗体20の第1の端部201は、ハウジング12を介してシリンダブロックに対して電気的に接続されることなく、シリンダブロック(内燃機関)とは電気的に絶縁されている。
【0030】
内燃機関へのグロープラグ10の装着:
本実施形態に係るグロープラグ10が内燃機関に装着された状態について説明する。
図3は本実施形態に係るグロープラグが内燃機関に装着された状態を模式的に示す説明図である。
図3には、理解を容易にするために、内燃機関を構成する構成要素の内、グロープラグ10に関係するシリンダヘッド50およびシリンダヘッド50とシリンダブロック(図示しない)とによって区画形成される燃焼室51のみを示している。内燃機関としては、この他に、燃料噴射装置、吸気・排気バルブ、ピストン等が備えられ、アクセルペダルから入力される負荷要求、気温、エンジンオイル温度等の運転環境に基づいてエンジン制御ユニットによって、燃料噴射装置による燃料噴射のタイミング、グロープラグ10の作動(加熱)タイミング等が制御される。
【0031】
本実施形態に係るグロープラグ10は、シリンダヘッド50におけるグロープラグ取り付け部501に形成されているネジ部502に対して、ネジ部121が螺合されることによって装着、固定される。なお、
図3においてはネジ部121のおよびネジ部502のネジ山・谷は略図されている。シリンダヘッド50に装着された状態において、グロープラグ10のセラミック体11の先端部11aは燃焼室51に露出している。したがって、通電により発熱抵抗体20が発熱すると、発生した熱は燃焼室51内に容易に伝達され、燃焼室51内が加熱され、あるいは、燃料噴射装置から噴射された燃料が加熱されることよって、燃料着火が補助される。
【0032】
燃料の燃焼によって燃焼室51内には大量のイオンが発生する。イオン検出用電極30とシリンダヘッド50との間にイオン電流検出用の電圧が印加されると、イオン検出用電極30にはマイナスイオンが捕獲され、シリンダヘッド50にはプラスイオンが捕獲され、この結果、イオン検出用電極30とシリンダヘッド50との間には電流経路が形成される。この電流経路を流れる電流量によって燃焼室51内に発生したイオン量を得ることができる。イオン電流の検出の詳細については後述する。
【0033】
図3に示されているグロープラグ10の詳細な構成について説明する。セラミック体11は、金属製の環状リング123を介してハウジング12の先端部によって支持されている。発熱抵抗体20の第1の端部201は導電端子212を介してセラミック体11外部の第1の内部導電路211と電気的に接続され、発熱抵抗体20の第2の端部202は導電端子222を介してセラミック体11外部の第2の内部導電路221と電気的に接続されている。イオン検出用電極30の第2の端部302は導電端子312を介してセラミック体11外部の第3の内部導電路311と電気的に接続されている。第1の内部導電路211は第1発熱体用端子部21と、第2の内部導電路221は第2発熱体用端子部22と、第3の内部導電路311はイオン検出用端子部31と、それぞれ電気的に接続されている。なお、第1および第2発熱体用端子部21、22、イオン検出用端子部31を備えるハウジング12の基端部12bは、グロープラグ10がシリンダヘッド50(内燃機関)に装着された際に、シリンダヘッド50から露出しているグロープラグ10の部位に該当する。また、
図3の記載から明らかなように、本実施形態に係るグロープラグ10においては、発熱抵抗体20の第1の端部201は、第1発熱体用端子部21と接続されており、シリンダヘッド50に対しては電気的に接続されていない(絶縁されている)。なお、既述のように、内燃機関を備える車両における接地は、一般的に、ボディアースを意味し、内燃機関のシリンダヘッドもまた、ボディに接地されている。したがって、内燃機関に対する接地とボディに対する接地は電気的は同様の意味を有する。
【0034】
イオン電流の検出:
本実施形態に係るグロープラグ10を用いたイオン電流の検出について以下に説明する。
図4は本実施形態に係るグロープラグを用いた第1の態様に係るイオン電流検出システム80を示す説明図である。
図5は従来のイオン電流検出回路の一例を示す説明図である。
図6は第1の態様に係るイオン電流検出システム80におけるイオン電流の検出結果と従来のイオン電流検出回路におけるイオン電流の検出結果の相違を示す説明図である。
【0035】
第1の態様に係るイオン電流検出システム80の構成:
第1の態様に係るイオン電流検出システム80は、イオン電流検出回路60およびグロープラグ回路70を備えている。第1の態様に係るイオン電流検出システム80は、内燃機関と共に車両に搭載されて用いられる。イオン電流検出回路60は、イオン電流検出制御部61、イオン電流検出用電圧計62、イオン電流検出用抵抗63、イオン電流検出用電源64、接地遮断スイッチ65、イオン電流検出用スイッチ66並びに外部接続端子601、602を備えている。グロープラグ回路70は、グロープラグ制御部71、点灯スイッチ72、並びに外部接続端子701および702を備えている。
図4には、この他に、アースとしてのボディ54および車両用電源56が示されている。ボディ54に対しては、接地配線を介してシリンダヘッド50が接地されている。グロープラグ回路70は、発熱体用回路と呼ぶこともできる。
【0036】
グロープラグ回路70は、グロープラグ10に発熱用の電圧を印加するための制御回路であり、外部接続端子701および702を介して、グロープラグ10の第1および第2発熱体用端子部21、22に接続されている。外部接続端子701は接地配線703を介してボディ54に接地されており、外部接続端子702はバッテリ配線704を介して車両用電源56の+端子に接続されている。車両用電源56は、例えば、12Vまたは24Vの鉛蓄電池であり、その−端子はボディ54に接地されている。点灯スイッチ72は、バッテリ配線704上に配置されており、グロープラグ制御部71からの制御信号に従いグロープラグ回路70を開閉する。すなわち、グロープラグ制御部71は、車両の各種センサから入力された条件に基づいて、グロープラグ10の点灯(発熱動作)が必要であると判断すると、点灯スイッチ72に対して回路閉信号を送り、車両用電源56からの電圧を発熱抵抗体20に印加する。この結果、グロープラグ回路70は閉じられ、発熱抵抗体20は発熱し、燃焼室51は加熱され、燃焼室内に噴射供給された燃料の着火を補助することができる。なお、燃料着火の補助、すなわち、点灯スイッチ72を閉じるタイミングは、内燃機関始動時等の冷間時に止まらず、内燃機関の運転環境に応じて、最適な燃焼を実現するために内燃機関の稼働中にも適宜実行され得る。なお、本実施形態においては、説明を明確にするために、グロープラグ制御部71を用いているが、燃料噴射等を含むエンジンの稼働状態を総合的に制御するエンジン制御部によってグロープラグ制御が実行されても良い。
【0037】
イオン電流検出回路60は、燃料の燃焼に伴い燃焼室51内に発生するイオン量を電流値として検出するための回路であり、外部接続端子601および602を介して、イオン検出用端子部31およびシリンダヘッド50にそれぞれ接続されている。外部接続端子601および602を電気的に接続する内部配線上には、イオン電流検出用抵抗63、イオン電流検出用電源64およびイオン電流検出用スイッチ66が配置されている。イオン電流検出用スイッチ66は、イオン電流検出制御部61によってその開閉が制御される。イオン電流を検出しない状態(通常時)においては、イオン電流検出用スイッチ66は、イオン電流検出制御部61からの開信号を受けて開かれており、イオン電流検出回路60には電流は流れない。イオン電流検出時には、イオン電流検出用スイッチ66は、イオン電流検出制御部61からの閉信号により閉じられ、イオン電流検出回路60に電流が流れ、イオン電流検出用抵抗63の両端には電位差が生じる。イオン電流検出用抵抗63の両端にはイオン電流検出用電圧計62が接続されており、イオン電流検出用電圧計62により得られたイオン電流検出用抵抗63の両端の電位差はイオン電流検出制御部61に送られる。イオン電流検出制御部61は、得られた電位差と、イオン電流検出用抵抗63の抵抗値(例えば、500kΩ)とに基づいて、イオン電流を算出(検出)することができる。イオン電流検出用電源64は、例えば、150〜500V程度の直流高圧電圧源であることが望ましく、車両用電源56とは別に備えられている直流電源としてのバッテリ、例えば、12Vの鉛蓄電池の電圧を昇圧することによって、あるいは車両の走行に伴いオルタネータにより発生される交流電流を交流−直流変換および電圧変換を行うことによって実現され得る。
【0038】
第1の態様に係るイオン電流検出システム80においては、イオン電流検出回路60は、グロープラグ10の第1発熱体用端子部21に接続されている接地配線703上に接地遮断スイッチ65を備えている。接地遮断スイッチ65は、イオン電流検出制御部61によってその開閉が制御される。接地遮断スイッチ65が開かれると、グロープラグ10の第1発熱体用端子部21、すなわち、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50との間の電気的な接続(接地)が遮断される。
【0039】
イオン電流検出回路60を用いたイオン電流の検出処理について説明する。上述したグロープラグ制御部71によりグロープラグ10に電圧印加(通電)される際には、イオン電流検出制御部61は、接地遮断スイッチ65に対して閉信号を送り、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50との間の電気的な接続を形成する。この結果、グロープラグ回路70は閉じられ、発熱抵抗体20の発熱が実現される。
【0040】
燃焼に伴うセラミック体11の温度は300〜800℃程度であり、この温度における支持体111の伝導性はイオン電流の検出に十分ではない。そこで、イオン電流の検出に際しては、支持体111がイオン電流の検出に十分な伝導性を示す温度、例えば、1200℃程度までセラミック体11の温度を昇温し、当該温度に維持するために、イオン電流検出制御部61は、グロープラグ10(発熱抵抗体20)に対して通電を行いセラミック体11を加熱するための処理を実行する。イオン電流検出制御部61は、例えば、PWM制御によりグロープラグ10に対して通電を実行し、セラミック体11の温度を1200℃に維持する。グロープラグ10に対する電圧印加が終了すると、イオン電流検出制御部61は、接地遮断65に対して開信号を送り、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50との間の電気的な接続を遮断する。本実施形態においては、接地遮断65は、閉じている状態が通常状態である。イオン電流検出制御部61におけるグロープラグ回路70の開処理は、例えば、グロープラグ制御部71からのグロープラグ10に対する電圧印加の終了を示す終了信号、あるいは、グロープラグ回路70を開いてもよい旨の回路開許可信号を受け取ることによって実行されて良い。内燃機関が十分に暖機された後は、一般的に、グロープラグ10による着火補助は不要であり、この条件下において、イオン電流検出制御部61は、グロープラグ制御部71から回路開許可信号を受信し得る。なお、開いている状態を接地遮断スイッチ65の通常状態とし、イオン電流検出制御部61がグロープラグ制御部71から回路閉信号を受信すると、接地遮断スイッチ65に対して閉信号を送り、接地遮断スイッチ65がグロープラグ回路70を閉じても良い。例えば、グロープラグ10の点灯を頻繁に要しない環境下においては、開いている状態を接地遮断スイッチ65の通常状態とすることによって、接地遮断スイッチ65の固着等を防止または抑制することができる。
【0041】
イオン電流検出制御部61は、接地遮断スイッチ65を開いた後に、イオン電流検出用スイッチ66に閉信号を送り、イオン電流検出回路60にイオン電流検出用の電流を流してイオン電流の検出を開始する。グロープラグ10による着火補助により、あるいは、圧縮自然着火により燃料の燃焼が開始されると、燃焼室51内には大量のイオンが発生する。この状態において、イオン検出用電極30とシリンダヘッド50との間にイオン電流検出用の電圧が印加されると、イオン検出用電極30にはマイナスイオンが捕獲され、シリンダヘッド50にはプラスイオンが捕獲される。この結果、イオン検出用電極30とシリンダヘッド50との間には電流経路R1が形成される。電流経路R1の形成によって、外部接続端子601、イオン検出用電極30、電流経路R1、外部接続端子602をつなぐ電流回路が形成され、燃焼室51内に発生したイオン量に応じた電流がイオン電流検出用抵抗63を流れ、イオン電流検出用抵抗63の両端に電位差をもたらす。イオン電流検出用抵抗63の両端に発生した電位差は、イオン電流検出用電圧計62によって計測され、イオン電流検出制御部61によって取得される。
【0042】
本実施形態に係るグロープラグ10および第1の態様に係るイオン電流検出システム80の利点について、
図5および
図6を用いて詳述する。なお、
図5においては、説明に関わる主要な構成部材について詳細に符号を付し、その他の構成については包括的な符号を付す。
図5に示す従来のグロープラグ910においては、発熱抵抗体920の接地側端部921は、シリンダヘッド50を介してボディ54に接地されている。すなわち、従来のグロープラグ回路では、グロープラグ制御部71によってグロープラグ回路が開かれた状態においても、発熱抵抗体920とボディ54とは常時電気的に接続された状態にある。この結果、イオン電流検出回路900によって、イオン検出用電極930に電圧を印加すると、イオン検出用電極930と発熱抵抗体920との間に電流経路R2が形成され、漏れ電流が発生する。すなわち、点灯後のグロープラグ910の温度領域では、セラミック体の導電性が高まるため、接地されている発熱抵抗体920とイオン検出用電極930との間には電流が流れ得る。
【0043】
燃焼室51内にはイオンの発生に伴い、イオン電流検出回路900によって、イオン検出用電極930に電圧が印加されると電流経路R3が形成され、発生したイオン量に伴う電流がイオン電流検出回路900によって検出される。
【0044】
一般的に、例えば、セラミック体の温度が1200℃の場合、電流経路R3を介して流れるイオン電流の電流値は、ピーク値で数十μA程度である。一方、イオン検出用電極930と発熱抵抗体920との間に形成される電流経路R2を流れる漏れ電流は6mA程度であり、漏れ電流は2桁程度大きな値を採るため、イオン電流の電流値を検出することが容易でなかった。
【0045】
すなわち、イオン電流検出回路900によって検出される電流波形は、
図6における波形Aであり、イオン電流の電流波形は、漏れ電流の電流波形に重畳される微少波形として出現するため、イオン電流の値を検出することは容易でなかった。特に、後段の電流波形の解析処理を伴わない場合には、イオン電流を識別することすら容易でないことがあり、また、イオン電流の正確に抽出することも容易でなかった。
【0046】
これに対して、本実施形態にかかるグロープラグ10は、発熱抵抗体20の接地側の端部である第1の端部201は、シリンダヘッド50に電気的に接地されておらず、基端部12bの第1発熱体用端子部21を介してグロープラグ回路70に接続されている。また、グロープラグ回路70とボディ54(シリンダヘッド50)とを電気的に接続する接地配線703上には、グロープラグ回路70とボディ54、すなわち、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とを電気的に遮断または接続可能な接地遮断スイッチ65が配置されている。この結果、接地遮断スイッチ65を開き、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とを電気的に遮断した状態にて、イオン電流の検出を実行すると、
図6に波形Bとして示されるイオン電流の検出波形を得ることができる。
【0047】
波形Bにおいては、漏れ電流に起因するイオン電流の重畳は発生しないので、後段の電流波形の解析処理を伴うことなく、イオン電流の出現を識別できると共に、イオン電流値を正確に検出(抽出)することができる。
【0048】
以上述べたように、本実施形態に係るグロープラグ10においては、発熱抵抗体20の第1の端部201は、第1発熱体用端子部21と接続されており、シリンダヘッド50に対しては電気的に接続されておらず、絶縁されている。したがって、イオン電流検出時に、発熱抵抗体20がシリンダヘッド50と電気的に接続されていることに起因するイオン検出用電極30と発熱抵抗体20との間における電流経路の形成を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るグロープラグ10を用いた第1の態様に係るイオン電流検出システム80によれば、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とを電気的に接続する接地配線703上に接地遮断スイッチ65を配置し、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とを電気的に遮断可能としている。なお、車両においては、接地はボディアースによって実現されているため、内燃機関もまたボディ54に接地されている。したがって、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50との電気的な遮断は、内燃機関のみならず、ボディ54からの電気的な遮断を意味し、如何なる電気的経路においても発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とが電気的に遮断されていることを意味する。
【0050】
したがって、本実施形態に係るグロープラグ10および本実施形態に係るグロープラグ10を用いた第1の態様に係るイオン電流検出システム80によれば、イオン電流を正確に検出することが可能となり、燃焼に伴い燃焼室51内に発生するイオン量を正確に検出することができる。この結果、正確なイオン量に基づいて燃焼室内における燃焼状態をより正確に把握、推測することが可能となり、内燃機関の燃焼効率の向上、内燃機関の燃焼状態の改善、および内燃機関から排出される排気ガスの含有成分の制御をより高い精度で実現することができる。
【0051】
さらに、第1の態様に係るイオン電流検出システム80によれば、接地配線703上に接地遮断スイッチ65を備えるだけで、グロープラグ回路70とイオン電流検出回路60とを電気的に絶縁することが可能となるので、グロープラグ回路70とイオン電流検出回路60とにそれぞれ独立した電源を備えることなく、共通電源である車両用電源56を用いてグロープラグ10に対する電圧印加を実行することができる。また、イオン電流検出回路60においても、イオン電流検出用電源64を別に備えることなく、車両用電源56から得られた電圧を昇圧器によって昇圧してイオン検出用電極30に印加しても良い。
【0052】
第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bの構成:
図7は本実施形態に係るグロープラグ10を用いた第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bを示す説明図である。第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bは、内燃機関と共に車両に搭載されて用いられる。第1の態様に係るイオン電流検出システム80においては、イオン電流検出回路60が接地遮断スイッチ65を備え、接地遮断スイッチ65を開制御することによって、イオン検出用電極30と発熱抵抗体20との間における電流経路R2の形成を防止した。これに対して、第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bは、グロープラグ回路70Bをイオン電流検出回路60と電気的に独立した回路とすることによって、上述した正確なイオン電流の検出を実現する。なお、第1の態様に係るイオン電流検出システム80の説明において用いた構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に以下説明を行う。
【0053】
第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bにおいて用いられる本実施形態に係るグロープラグ10では、既述のように、発熱抵抗体20の第1の端部201は第1発熱体用端子部21を介して外部回路と接続される構成を備えており、シリンダヘッド50に対しては電気的に接続されておらず、絶縁されている。また、第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bにおけるグロープラグ回路70Bは、その回路内に直流の専用電源73を備えている。グロープラグ回路70Bにおいて、発熱抵抗体20の第1の端部201は、第1発熱体用端子部21、外部接続端子701を介して専用電源73の−極と接続され、第2の端部202は、第2発熱体用端子部22、外部接続端子702を介して専用電源73の+極と接続されている。したがって、グロープラグ回路70Bにおいては、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とを電気的に接続する経路は形成されておらず、発熱抵抗体20とシリンダヘッド50とは常に電気的に絶縁された状態にある。
【0054】
一方、イオン電流検出回路60は、接地遮断スイッチ65を備えていない点を除いて、第1の態様に係るイオン電流検出システム80におけるイオン電流検出回路60と同様の構成を備えている。
【0055】
したがって、第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bにおいても、イオン電流検出時に、発熱抵抗体20がシリンダヘッド50と電気的に接続されていることに起因するイオン検出用電極30と発熱抵抗体20との間における電流経路の形成を防止することができる。この結果、イオン電流を正確に検出することが可能となり、燃焼に伴い燃焼室51内に発生するイオン量を正確に検出することができる。
【0056】
また、第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bにおいては、グロープラグ回路70Bがイオン電流検出回路60と電気的に絶縁されているので、接地遮断スイッチ65を用いた切り替えを行うことなく、イオン電流を正確に検出することができる。なお、第2の態様に係るイオン電流検出用システム80Bにおいても、支持体111がイオン電流の検出に十分な伝導性を示す温度、例えば、1200℃程度までセラミック体11の温度を昇温し、当該温度に維持するために、グロープラグ10(発熱抵抗体20)に対する通電を行いセラミック体11を加熱するための処理が実行され得る。
【0057】
変形例:
(1)上記実施形態では、ハウジング12の基端部12bに、発熱抵抗体20に通電するための第1および第2発熱体用端子部21、22と、イオン検出用電極30にイオン検出用電圧を印加するためのイオン検出用端子部31とを備えているが、これら端子部に代えて、リード線が備えられても良い。また、リード線の先端には、外部回路と接続するためのコネクタが備えられていても良い。
【0058】
(2)上記実施形態においては、イオン電流検出回路60は、イオン電流検出用電源64とイオン検出用電極30とを電気的に切り離すスイッチを備えているか否かについて明記していないが、第1の態様に係るイオン電流検出システム80においては、当該スイッチは備えられることが望ましい。すなわち、接地遮断スイッチ65を開いた後に、イオン電流を検出することによってイオン電流値を正確に検出することができるからである。一方、第2の態様に係るイオン電流検出システム80Bでは、イオン電流検出回路60とグロープラグ回路70Bとは常に電気的に絶縁されているので、当該スイッチを備えることなく、常時、イオン電流が検出されてもよい。
【0059】
(3)上記実施形態においては、直流電源として、鉛蓄電池を例にとって説明したが、この他にもニッケル水素電池、リチウムイオン電池といった種々の電池を用いることが可能である。また、第1の態様に係るイオン電流検出システム80においては、車両用電源56とイオン電流検出用電源64とを別々に備えているが、車両用電源56のみを用いてイオン電流検出処理が実行されても良い。この場合には、イオン電流検出に要する電圧を得るために昇圧器を備えれば良い。
【0060】
(4)上記実施形態においては、第1および第2発熱体用端子部21、22、およびイオン検出用端子部31の平面視の配置について言及していないが、これら3つの端子部は、例えば、一列に配置されていても良く、あるいは、第1および第2発熱体用端子部21、22とを並列配置され、イオン検出用端子部31については任意の位置に配置されていても良い。また、これら3つの端子部に対して接続される、外部回路と電気的に接続するためのコネクタは、3つの端子部の配置に合わせた接続部を備える一体型であっても良く、第1および第2発熱体用端子部21、22については一体型とし、イオン検出用端子部31については独立型、あるいは、個々の端子部にそれぞれ接続される独立型であっても良い。
【0061】
(5)上記実施形態においては、イオン電流検出制御部61およびグロープラグ制御部71とをそれぞれ別の制御部として説明したが、これら制御部により実行される機能は、例えば、単一の車両用制御部によって実行されても良い。
【0062】
(6)上記実施形態においては、基端部12bに、発熱抵抗体20に通電するための第1および第2発熱体用端子部21、22と、イオン検出用電極30にイオン検出用電圧を印加するためのイオン検出用端子部31と、をそれぞれ備えるグロープラグ10を用いて説明したが、上記実施形態における利点は、イオン電流検出時に、発熱抵抗体20がシリンダヘッド50と電気的に接続されていなければ得られる利点である。例えば、基端部12bには、イオン検出用端子部31と第2発熱体用端子部22とが備えられ、第1発熱体用端子部は、シリンダヘッド50と接触するハウジング12に接続される従来のグロープラグにおいて、ハウジング12に対して第1発熱体用端子部と接する限定的な領域を規定し、当該限定的な領域に対応するシリンダヘッド50の領域を他のシリンダヘッド50の領域と電気的に接続または絶縁可能な領域とすることによって実現されても良い。
【0063】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。