(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ストップランプ点灯時に、前記第1発光部のみでストップランプに要求される光度を満足し、前記第1発光部と前記第2発光部の発光範囲を組み合わせてストップランプに要求される発光面積を満足するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
前記第2発光部の点灯中に有機EL素子の順方向電圧を測定し、その値に基づき有機EL素子の温度を推定する温度推定部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のような手法のみでは、有機EL素子の発熱抑制には限界があり、車両用灯具の光源として適切な光束維持率を確保することが困難である。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光ダイオード等を光源とする発光部と有機EL素子を光源とする発光部とを備える車両用灯具において、有機EL素子の光束維持率の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、第1発光部と、有機EL素子を光源とする第2発光部と、を備える車両用灯具である。テールランプオン時に第2発光部が点灯し、ストップランプオン時に第1発光部および第2発光部がともに点灯するように構成される。車両用灯具は、ストップランプオン時の第2発光部の光度をテールランプオン時よりも小さくする減光部をさらに備えている。
【0008】
この態様によると、第2発光部の有機EL素子の光束維持率の低下を抑制することができ、有機EL素子の長寿命化が実現される。
【0009】
減光部は、ストップランプオン時の第2発光部の光度を、昼間よりも夜間で小さくしてもよい。これによると、光束維持率をさらに高くすることができる。
【0010】
ストップランプ点灯時に、第1発光部のみでストップランプに要求される光度を満足し、第1発光部と第2発光部の発光範囲を組み合わせてストップランプに要求される発光面積を満足するように構成されてもよい。これによると、第2発光部をいかように減光しようとも、ストップランプに要求される仕様(光度および発光範囲)を常に満足することができる。
【0011】
減光部は、有機EL素子の温度が所定値以上の場合に有機EL素子に流れる電流を制限してもよい。これによると、有機EL素子の光束維持率の低下が大きい高温時に、第2発光部の減光を行うことで、光束維持率の低下を抑制することができる。
【0012】
第2発光部の点灯中に有機EL素子の順方向電圧を測定し、その値に基づき有機EL素子の温度を推定する温度推定部をさらに備えてもよい。これによると、有機EL素子の近傍に温度計を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光ダイオード等を光源とする発光部と有機EL素子を光源とする発光部とを備える車両用灯具において、有機EL素子の光束維持率の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具10の概略正面図である。車両用灯具10は、自動車の後端部の左側に搭載される灯具であり、右側に搭載される灯具と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、左側の車両用灯具10について詳述し、左右の車両用灯具については説明を省略する。
【0017】
車両用灯具10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ11を備えており、その開口が赤色透明な前面カバー16によって覆われて灯室が形成されている。灯室内には、第1発光部12と第2発光部14とが上下に並んだ状態で収容されている。
【0018】
第1発光部12は、一つまたは複数の発光ダイオードを光源とする。第1発光部12は、リフレクタ、導光体、凸レンズなどの、光源から発せられる光を反射または拡散する光学素子と組み合わされてもよいし、一つまたは複数の発光ダイオードのみで構成されてもよい。
図1では、長方形の導光体を有する第1発光部12が示されているが、第1発光部12の灯室内での位置および形状に制限はない。また、第1発光部12は、半導体レーザー、ハロゲンバルブ等の他の光源を使用してもよい。
【0019】
第2発光部14は、有機ELパネルを含む平板状の面状発光体50と、面状発光体50を灯室内で固定するブラケット52とで、構成される。
図1では、長方形の面状発光体50が第1発光部12の下方に配置されているが、面状発光体50は、第1発光部12の周囲に配置されていれば、その位置および形状に制限はない。例えば、面状発光体50が第1発光部12の上側や左右に配置されてもよいし、第1発光部12を包囲するような形状であってもよい。
【0020】
有機ELパネルはその両面がガラス基板で構成されているのに対し、ブラケット52は通常樹脂製であり、両者の熱膨張率は大きく異なる。そのため、車両用灯具に有機ELパネルを含む面状発光体を取り付ける場合には、熱膨張率差による長さ変化の影響を考慮する必要がある。従来では、パッキンなどの緩衝剤をブラケットと面状発光体との間に挟んだり、両面テープを用いた接着を行っていることが多い。しかしながら、このような固定方法はコストアップの要因となるうえ、組立作業性も悪い。また、パッキンには硫黄成分が含まれることが多く、車両用灯具の電子部品に影響を与えたり、灯具のカバーを曇らせたりするおそれがある。
【0021】
図2(a)は、本実施形態に係る車両用灯具10の灯室内に設けられる、面状発光体50を固定するブラケット52を上方(
図1中の矢印Aの方向)から見た図である。図示するように、ブラケット52は、左右の端にそれぞれ立設された左側凹形部52a、右側凹形部52bを有している。左側凹形部52a、右側凹形部52bは互いに底面を向かい合わせるように配置されており、底面間の間隔は、面状発光体50の左右方向の幅よりも若干長くされている。左側凹形部52aの内側の一箇所または複数の箇所には、弾性接触部54が配置されている。弾性接触部54は、例えばバネ状に形成された金属であるが、ゴムやパッキン等の弾性のある他の素材であってもよい。なお、弾性接触部54は、右側凹形部52bの内側に配置されていてもよい
【0022】
図2(b)は、ブラケット52に面状発光体50を組み付ける方法を示す図である。まず、面状発光体50の左側端部をブラケット52の左側凹形部52aの内側に差し込む。このとき、面状発光体50の左側端部が、左側凹形部52aの内側に設けられた弾性接触部54を押しつぶす。これにより、面状発光体50の左側端部が左側凹形部52aの奧まで押し込まれて、面状発光体50の右側端部を右側凹形部52bの内側に差し込むことができるようになる。
【0023】
このように、ブラケット内に設けた弾性接触部を使用することで、パッキンなどの緩衝材や両面テープを使用せずに面状発光体を固定することができる。したがって、コストダウンになるうえ、組み付け作業性も向上する。また、パッキンを使用しないことで硫黄ガスが発生することがない。また、ブラケットと面状発光体の熱膨張率差による長さの変化を、弾性接触部の伸縮で吸収することができる。また、弾性接触部により面状発光体を付勢しつつ保持することで、車両の振動や衝撃の影響を緩和することができる。
【0024】
有機ELパネルは、発光ダイオードとは異なり高温での光束維持率の低下が大きいだけでなく、有機ELパネルの温度がガラス転移温度を超えると、不灯などの不具合が発生するおそれがある。また、有機ELパネルの温度が均一でないと、輝度ムラが発生するという問題もある。そのため、有機ELパネルの温度を均一化することは、有機ELパネルの長寿命化および高信頼性化にとって重要である。
【0025】
図3は、面状発光体50の構造を示す分解斜視図である。面状発光体50は、有機ELパネル56と、取付用の裏板62と、を含む。
図3の例では、有機ELパネル56は片面発光である。有機ELパネル56の発光側、すなわち車両用灯具のカバー16側には、高伝熱性の透明フィルム58が貼付される。また、有機ELパネル56の裏側と裏板62とは、高伝熱性の両面テープ60で貼り付けられる。
【0026】
一般に、有機ELパネル56の両面のガラス基板の熱伝導率は0.55〜0.75W/mKである。したがって、高伝熱性の透明フィルム58は、熱伝導率が1W/mK以上であることが好ましく、例えばカーボングラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンなどで作成したものであってもよい。また、高伝熱性の両面テープ60も、熱伝導率が1W/mK以上であることが好ましく、例えばアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの樹脂材料に、黒鉛、銅、炭化ケイ素などの高熱伝導率を持つフィラーを含有させたものであってもよい。
【0027】
図3の例では、有機ELパネル56は片面発光であるが、有機ELパネルの背面にミラー等を配置し反射光を利用したミラートンネルを見せる場合には、両面発光かつ透明の有機ELパネルを使用する場合もある。
【0028】
図4は、そのような場合に使用される面状発光体50’の構造を示す分解斜視図である。面状発光体50’では、有機ELパネル56’の両面に、高伝熱性の透明フィルム58が貼付される。
【0029】
図3、4に示したように、有機ELパネルの両面に高伝熱性の透明フィルムや両面テープを貼付することによって、有機ELパネルの均熱化を実現することができ、輝度ムラが低減される。また、透明フィルムを介した大気への熱伝導や、両面テープを介した裏板への熱伝導が促進されるため、有機ELパネル自体の放熱性も向上するので、有機ELパネルの長寿命化も実現される。
【0030】
図1を再び参照して、車両用灯具10は、ストップランプとテールランプの両方の機能を有している。車両のドライバーがブレーキペダルを踏んだとき、すなわちストップランプオンの信号に応じて、第1発光部12と第2発光部14とがともに点灯する(
図5(a)参照)。車両のドライバーがテールランプスイッチをオンにしたとき、その信号に応じて第2発光部14のみが点灯する(
図5(b)参照)。
【0031】
第1発光部12は、点灯時に第1発光部12のみでストップランプに要求される光度を満足するように構成されている。また、第1発光部12と第2発光部14のそれぞれの発光範囲を組み合わせることで、ストップランプに要求される発光面積を満足するように構成されている。第2発光部14は、単独でテールランプに要求される光度を満足するように構成される。このように構成すると、第2発光部14の光度によらず、ストップランプに要求される仕様(光度および発光範囲)を常に満足することができる。
【0032】
上述したように、有機ELパネルは、高温での光束維持率の低下が大きいだけでなく、有機ELパネルの温度がガラス転移温度を超えた場合には不灯に至るという問題がある。したがって、有機ELパネルを用いた第2発光部14は、できるだけ高温にしないように制御することが望ましい。以下、そのような制御装置100について説明する。
【0033】
図6は、車両用灯具10の制御装置100の概略回路図である。車両のドライバーがテールランプスイッチをオンにすると、テールランプ入力電圧30が印加され、DC/DCコンバータ22を介して第2発光部14の有機ELパネルが点灯する。
【0034】
車両のドライバーがブレーキペダルを踏むと、ストップランプ入力電圧32が印加され、抵抗回路28を介して第1発光部12のLEDが点灯する。同時に、DC/DCコンバータ22を介して第2発光部14の有機ELパネルが点灯する。
【0035】
さらに、ストップランプ入力電圧32は、減光部24にも入力される(34)。テールランプ点灯中にストップランプ入力電圧32が印加された場合には、AND回路38を介して減光部24に入力される(36)。一般に、テールランプは夜間のみに点灯されるものであるから、入力34は昼間時ストップランプ入力、入力36は夜間時ストップランプ入力と考えることができる。
【0036】
減光部24は、ストップランプオン時の第2発光部14の光度を、テールランプオン時よりも小さくするように構成される。上述したように、車両用灯具10は、第1発光部12のみでストップランプに要求される光度を満足するように構成されている。第2発光部14は、ストップランプの発光面積を満たすことができれば(言い換えると、視認することができれば)、光度を低下させても問題はない。そのため、ストップランプオン時には、テールランプオン時よりも第2発光部14の光度を小さくすることで、第2発光部の有機ELパネルの発熱を抑えて長寿命化を図ることができる。
【0037】
具体的に第2発光部14の光度をどの程度まで小さくするかは、実機による検証やシミュレーションを通して決定すればよい。以下、その例を示す。
【0038】
図7は、テールランプのみを点灯したときの第2発光部の光度を100%とした場合に、ストップランプ信号オン時に第2発光部をどの程度の光度で点灯させるかを示している。ストップランプ信号オン時には、第1発光部が点灯しているので、テールランプを点灯させない昼間であれば、第2発光部の光度を20%まで低下させても、第2発光部が点灯していることを視認できることが確認された。テールランプを点灯する夜間時には、ストップランプ信号オン時に、第2発光部の光度を10%まで低下させても、第2発光部が点灯していることを視認できる。しかしながら、ストップランプ信号オン時に、第1発光部を点灯するとともに第2発光部を大きく減光させると、車両用灯具の観察者からは不自然に感じられる。このような場合、第2発光部の光度を55%程度にすることで、第1発光部を点灯するとともに第2発光部を減光しても、観察者が第2発光部の減光に気づかないことが確認された。
【0039】
第2発光部の有機ELパネルが高温になっているときは、
図7の例よりも光度を下げることによって有機ELパネルを保護することが望ましい。
図8は、有機ELパネルが高温であるときに、ストップランプ信号オン時に第2発光部をどの程度の光度で点灯させるかを示している。高温時には、テールランプを単独で点灯する場合に、第2発光部の光度比率が50〜100%の範囲になるように減光する。こうすることで、有機ELパネルがさらに高温化するのを防止できる。
【0040】
減光部24は、有機ELパネルの近傍に温度センサを設置して、有機ELパネルが高温であるか否かを判断してもよい。代替的に、有機ELパネルに掛かる電圧に基づき、その温度を推定する温度推定部26を備えてもよい。
【0041】
一般に、有機EL素子は、順方向電圧が雰囲気温度によって変化するという特徴がある。例えば、
図9に示すように、有機EL素子の雰囲気温度が85℃、25℃、−30℃のときで、順方向電圧は大きく変動することが分かる。そこで、温度推定部26は、第2発光部14に定格電流を流しているときの有機ELパネルの順方向電圧を測定する。そして、予め記録してあるマップを参照して、有機ELパネルの温度を推定する。
【0042】
減光部24は、推定された有機ELパネルの温度に基づき、有機ELパネルに流れる電流を制限して、第2発光部14の光度を低下させる。
図10は、その一例を示す表である。有機ELパネルの推定温度が50℃以下の場合は、光度比率は100%のままにする。推定温度が50〜60℃の範囲では、減光部24は、光度比率83%になるまで有機ELパネルに流れる電流を制限する。推定温度が60〜70℃の範囲では、減光部24は、光度比率67%になるまで有機ELパネルに流れる電流を制限する。推定温度が70℃以上では、減光部24は、光度比率50%になるまで有機ELパネルに流れる電流を制限する。
【0043】
なお、減光部24は、有機ELパネルの推定温度が所定値以上の場合、一律の光度比率になるように有機ELパネルに流れる電流を制限してもよい。
【0044】
図11は、第2発光部14の有機ELパネルの温度が70℃であるときに、光度比率100%を維持した場合と、光度比率を50%に低下させた場合の光束維持率を比較したグラフである。横軸が有機ELパネルの稼働時間を、縦軸が光束維持率を表している。図から明らかなように、光度比率100%を維持した場合、光束維持率が元の50%にまで低下してしまうのに対し、光度比率を50%に低下させることによって、光束維持率を70%以上に維持できることが分かる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、発光ダイオード等を光源とする第1発光部と有機EL素子を光源とする第2発光部とを備える車両用灯具において、ストップランプの一部として第2発光部を使用する場合、テールランプとして点灯するときよりも光度を下げるようにした。これによって、第2発光部の有機EL素子の光束維持率の低下を抑制することができ、有機EL素子の長寿命化が実現される。
【0046】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0047】
上記で説明した第2発光部の光度比率は一例に過ぎず、車両用灯具における第1発光部と第2発光部の各発光素子の輝度、灯数、位置関係、要求寿命、車両用灯具の冷却効率等の種々の条件に応じて、適宜設定されるものである。本発明は、第2発光部の光度比率を、テールランプ時よりもストップランプ時に低下させるように制御される車両用灯具をその範囲内に含む。