(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る船外機1の側面図である。船外機1は、エンジンカバー2と、エンジン3と、動力伝達機構4と、アッパーケース5と、ロワーケース6とを含む。エンジンカバー2は、エンジン3を覆っている。エンジン3は、クランクシャフト11を含む。クランクシャフト11は、鉛直方向に延びている。
【0015】
動力伝達機構4は、エンジン3からの駆動力をプロペラ12に伝達する。動力伝達機構4は、ドライブシャフト13と、プロペラシャフト14と、シフト機構15とを含む。ドライブシャフト13は、鉛直方向に延びている。ドライブシャフト13は、クランクシャフト11に連結されており、エンジン3によって回転する。
【0016】
プロペラシャフト14は、シフト機構15を介してドライブシャフト13の下部に連結されている。プロペラシャフト14は、前後方向に延びている。プロペラシャフト14は、ドライブシャフト13に対して垂直に延びる。プロペラシャフト14の後端にはプロペラ12が取り付けられる。プロペラシャフト14は、ドライブシャフト13からの駆動力をプロペラ12に伝達する。
【0017】
プロペラ12は、船外機1の下部に配置されている。プロペラ12は、エンジン3からの駆動力により回転駆動される。シフト機構15は、ドライブシャフト13からプロペラシャフト14へ伝達される動力の回転方向を切り換える。
【0018】
アッパーケース5は、エンジンカバー2の下方に配置される。アッパーケース5は、ドライブシャフト13を覆っている。ロワーケース6は、アッパーケース5の下方に配置される。ロワーケース6は、プロペラシャフト14を覆っている。
【0019】
次に、エンジン3について詳細に説明する。
図2は、エンジン3の平面図である。
図3は、エンジン3の構成を示す模式図である。エンジン3は、複数の気筒C1−C8を有する多気筒エンジンである。エンジン3は、第1バンク21と第2バンク22とを含む。
図3に示すように、第1バンク21は、4つの気筒C1,C3,C5,C7を有する。第2バンク22は、4つの気筒C2,C4,C6,C8を有し、第1バンク21とV字型に並んで配置される。すなわち、エンジン3は、V型8気筒エンジンである。
【0020】
第1バンク21は、第1気筒C1と第3気筒C3と第5気筒C5と第7気筒C7とを有する。第1バンク21において、第1気筒C1と第3気筒C3と第5気筒C5と第7気筒C7との順に並んで配置されている。第2バンク22は、第2気筒C2と第4気筒C4と第6気筒C6と第8気筒C8とを有する。第2バンク22において、第2気筒C2と第4気筒C4と第6気筒C6と第8気筒C8との順にならんで配置されている。
【0021】
これら8つの気筒C1−C8間の点火間隔は90度である。従って、上述したクランクシャフト11は、
図4に示すようなクロスプレーン型のクランクシャフトであり、4つのクランクピン111−114が90度間隔で配置されている。
【0022】
図2に示すように、各気筒C1―C8は、燃焼室23と吸気ポート24と排気ポート25とを含む。吸気ポート24と排気ポート25とは、燃焼室23に接続されている。吸気ポート24は、吸気バルブ18によって開閉される。排気ポート25は、排気バルブ19によって開閉される。
【0023】
図3に示すように、エンジン3は、排気通路26を含む。排気通路26は、第1集合部27と第2集合部28とを含む。第1集合部27は、第1バンク21の4つの気筒C1,C3,C5,C7の排気ポート25に接続されている。第1集合部27は、第1バンク21の4つの気筒C1,C3,C5,C7からの排気を合流させる。第2集合部28は、第2バンク22の4つの気筒C2,C4,C6,C8の排気ポート25に接続されている。第2集合部28は、第2バンク22の4つの気筒C2,C4,C6,C8からの排気を合流させる。第1集合部27と第2集合部28とは、第1バンク21と第2バンク22との間に配置されている。
【0024】
排気通路26は、第3集合部29を含む。第3集合部29は、第1集合部27と第2集合部28とに接続されている。第3集合部29は、第1集合部27と第2集合部28とを合流させる。第3集合部29は、第1バンク21と第2バンク22との間に配置される。第3集合部29内には触媒31が配置されている。触媒31は、排気通路26を通る排気を浄化する。
【0025】
次に、エンジン3の燃料供給系について説明する。
図5は、エンジン3の燃料供給系を示す模式図である。
図5に示すように、エンジン3は、複数の燃料噴射装置41−48と、燃料供給管32と、燃料ポンプ33とを含む。
【0026】
複数の燃料噴射装置41−48は、複数の気筒C1−C8ごとに設けられている。複数の燃料噴射装置41−48は、各気筒C1−C8の燃焼室23に燃料を直接的に噴射する。すなわち、エンジン3は、燃料直噴射式のエンジン3である。複数の燃料噴射装置41−48は、第1〜第8燃料噴射装置41−48を有する。第1〜第8燃料噴射装置41−48は、それぞれ第1〜第8気筒C1−C8に設けられている。
【0027】
燃料供給管32は、第1〜第8燃料噴射装置41−48に燃料を供給する。燃料供給管32は、第1バンクの4つの気筒C1,C3,C5,C7に接続される第1供給管34と、第2バンクの4つの気筒C2,C4,C6,C8に接続される第2供給管35と、を含む。第1供給管34と第2供給管35とは、第1バンク21と第2バンク22との間に配置される。
【0028】
第1供給管34と第2供給管35とは互いに接続されていない。これにより、第1供給管34と第2供給管35との配置の自由度を向上させることができる。例えば、第1供給管34と第2供給管35とを互いに離して配置することで、これらの間に上述した触媒31を含む第3集合部29を配置することができる。
【0029】
燃料ポンプ33は、燃料供給管32に燃料を供給する。燃料ポンプ33は、第1供給管34に接続される第1ポンプ36と、第2供給管35に接続される第2ポンプ37と、を含む。第1ポンプ36は、燃料を昇圧して第1供給管34に吐出する。第2ポンプ37は、燃料を昇圧して第2供給管35に吐出する。このように、2つのポンプが設けられることにより、ポンプが1つのみである場合と比べて、各ポンプ36,37を小型化することができる。
【0030】
第1ポンプ36及び第2ポンプ37は、ベーパーセパレータータンク38及び燃料フィルタ39を介して、図示しない燃料タンクに接続されている。燃料は、燃料タンクから燃料フィルタ39及びベーパーセパレータータンク38を通って第1ポンプ36と第2ポンプ37とに吸い込まれる。第1ポンプ36に吸い込まれた燃料は、第1ポンプ36によって昇圧されて第1供給管34に供給される。第2ポンプ37に吸い込まれた燃料は、第2ポンプ37によって昇圧されて第2供給管35に供給される。
【0031】
第1ポンプ36と第2ポンプ37とは、リターンレス方式のポンプである。すなわち、第1ポンプ36から吐出された燃料の全量が、第1供給管34に供給される。第2ポンプ37から吐出された燃料の全量が、第2供給管35に供給される。第1ポンプ36と第2ポンプ37とがリターンレス方式のポンプであることにより、必要な燃料を吐出する分だけの仕事量で済むので、エンジン効率を向上することができる。
【0032】
次に、燃料ポンプ33の構造について説明する。
図6は、第1ポンプ36の構造を示す模式図である。第1ポンプ36は、ポンプ本体51と、プランジャ52と、電磁バルブ53と、ワンウェイバルブ54と、カム55と、を有する。ポンプ本体51は、吸入口56と、加圧室57と、吐出口58とを含む。
【0033】
プランジャ52は、カム55によって駆動されることで、加圧室57内の燃料の圧力を変動させる。電磁バルブ53は、吸入口56と加圧室57との間の通路を開閉する。電磁バルブ53は、駆動電流が入力されると、吸入口56と加圧室57との間の通路を閉じる。ワンウェイバルブ54は、加圧室57から吐出口58に向かう方向への燃料の流出を許容する。ワンウェイバルブ54は、吐出口58から加圧室57に向かう方向への燃料の流出を禁止する。
【0034】
カム55は、プランジャ52を駆動する複数のカム山59を含む。カム山59は周方向に等間隔に配置されている。プランジャ52は、カム山59によって押圧されることで加圧位置に移動する(
図7(C)参照)。プランジャ52が加圧位置に移動することによって、加圧室57内の燃料が圧縮される。それにより、燃料の圧力が昇圧される。プランジャ52は、カム山59によって押圧されていない状態では、弾性部材60の弾性力によって待機位置に移動する(
図7(A)参照)。
【0035】
カム山59の数は、第1ポンプ36に接続されている燃料噴射装置41,43,45,47の数と同じである。従って、本実施形態において、カム山59の数は4つであり、4つのカム山59が90度間隔で配置されている。ただし、カム山59の数は、4つに限らない。すなわち、カム山59の数は、第1ポンプ36に接続されている燃料噴射装置41,43,45,47の数と異なってもよい。
【0036】
カム55は、図示しない伝達機構を介して上述したクランクシャフト11に接続されており、クランクシャフト11の回転によって回転駆動される。従って、カム55の回転速度は、エンジン回転速度に応じて変化する。
【0037】
次に、第1ポンプ36の動作について説明する。
図7(A)では、プランジャ52は、カム山59によって押圧されておらず、加圧位置から待機位置に移動する。また、この状態では、電磁バルブ53に駆動電流が入力されていない。そのため、吸入口56から流入する燃料と加圧室57内の燃料との差圧によって、電磁バルブ53が開かれ、燃料が加圧室57に流入する。
【0038】
次に、
図7(B)に示すように、電磁バルブ53に駆動電流が入力されると、電磁バルブ53は、吸入口56と加圧室57との間の通路を閉じる。そして、
図7(C)に示すように、カム山59がプランジャ52を押圧して加圧位置に移動させる。これにより、加圧室57内の燃料がプランジャ52によって圧縮されることで昇圧する。所定の圧力まで昇圧した燃料は、ワンウェイバルブ54及び吐出口58を通って第1ポンプ36から吐出され、第1供給管34に供給される。
【0039】
第2ポンプ37の構造は第1ポンプ36の構造と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
次に、エンジン3の制御について説明する。
図5に示すように、エンジン3は、制御部61を含む。制御部61は、燃料噴射装置41−48による燃料噴射のタイミングと、燃料ポンプ33の駆動タイミングとを制御する。詳細には、制御部61は、ECU(Engine Control Unit)62と、第1EDU(Electric Driver Unit)63と、第2EDU64とを含む。
【0041】
第1EDU63と第2EDU64とは、各気筒C1−C8の燃料噴射装置41−48に駆動電流を出力する。ECU62は、燃料噴射装置41−48の駆動タイミング信号を第1EDU63と第2EDU64とに出力する。第1EDU63と第2EDU64とは、ECU62からの駆動タイミング信号を受けたときに、燃料噴射装置41−48に駆動電流を出力する。これにより、燃料噴射装置41−48による燃料噴射のタイミングが制御される。
【0042】
図8は、ECU62から出力される燃料噴射装置41−48の駆動タイミング信号(INJ駆動パルス)のタイミングチャートである。燃料噴射装置41−48による燃料噴射は、各気筒C1−C8での点火タイミングに合わせて行われる。従って、
図8は、各気筒C1−C8での点火タイミングを示している。
【0043】
図8に示すように、本実施形態において、エンジン3における点火順序は、第1気筒C1、第8気筒C8、第4気筒C4、第3気筒C3、第6気筒C6、第5気筒C5、第7気筒C7、第2気筒C2の順である。
【0044】
従って、第1バンク21において、第1気筒C1と第3気筒C3との点火間隔は270度である。第3気筒C3と第5気筒C5との点火間隔は180度である。第5気筒C5と第7気筒C7との点火間隔は90度である。第7気筒C7と第1気筒C1との点火間隔は180度である。このように、第1バンク21において、4つの気筒C1,C3,C5,C7間の点火間隔は、第1気筒C1の点火から見て、270度、180度、90度、180度の順であり、不等間隔である。
【0045】
第2バンク22においては、第6気筒C6と第2気筒C2との点火間隔は270度である。第2気筒C2と第8気筒C8との点火間隔は180度である。第8気筒C8と第4気筒C4との点火間隔は90度である。第4気筒C4と第6気筒C6との点火間隔は180度である。このように、第2バンク22において、4つの気筒C2,C4,C6,C8間の点火間隔は、第6気筒C6の点火から見て、270度、180度、90度、180度の順であり、不等間隔である。
【0046】
なお、
図5に示すように、第1EDU63は、第1気筒C1と第4気筒C4と第6気筒C6と第7気筒C7との燃料噴射装置41,44,46,47に駆動電流を出力する。これにより、上述した点火順序において、第1EDU63からの駆動電流の出力間隔が180度で一定となる。また、第2EDU64は、第2気筒C2と第3気筒C3と第5気筒C5と第8気筒C8との燃料噴射装置42,43,45,48に駆動電流を出力する。これにより、上述した点火順序において、第2EDU64からの駆動電流の出力間隔が180度で一定となる。
【0047】
次に、燃料ポンプ33の駆動タイミングの制御について説明する。第1EDU63は、第1ポンプ36の電磁バルブ53に駆動電流を出力する。第2EDU64は、第2ポンプ37の電磁バルブに駆動電流を出力する。ECU62は、燃料ポンプ33の駆動タイミング信号を第1EDU63と第2EDU64とに出力する。第1EDU63は、ECU62から燃料ポンプ33の駆動タイミング信号を受けたときに、第1ポンプ36の電磁バルブ53に駆動電流を出力する。これにより、第1ポンプ36からの燃料の吐出タイミングが制御される。第2EDU64は、ECU62から燃料ポンプ33の駆動タイミング信号を受けたときに、第2ポンプ37の電磁バルブに駆動電流を出力する。これにより、第2ポンプ37からの燃料の吐出タイミングが制御される。
【0048】
図9は、ECU62から出力される第1バンク21の燃料噴射装置41,43,45,47への駆動タイミング信号(INJ駆動パルス)と、第1ポンプ36への駆動タイミング信号(Pump駆動パルス)と、カムプロフィールと、燃料圧力の変化を示すタイミングチャートである。カムプロフィールは、プランジャ52の位置に対応しており、第1ポンプ36の吸い込み状態と加圧状態とを示している。燃料圧力は、第1供給管34における燃料の圧力である。燃料圧力は、第1供給管34に設けられた圧力センサからの出力値により得られる。
【0049】
図9において、Si1,Si3,Si5,Si7は、本実施形態における燃料噴射装置41,43,45,47への駆動タイミング信号を示している。駆動タイミング信号Si1によって、第1気筒C1の燃料噴射装置41が駆動される。駆動タイミング信号Si3によって、第3気筒の燃料噴射装置43が駆動される。駆動タイミング信号Si5によって、第5気筒の燃料噴射装置45が駆動される。駆動タイミング信号Si7によって、第1気筒C1の燃料噴射装置47が駆動される。
【0050】
また、
図9において、Sp1,Sp2,Sp3,Sp4は、本実施形態における第1ポンプ36への駆動タイミング信号を示している。すなわち、Sp1,Sp2,Sp3,Sp4が出力された時点で電磁バルブ53が閉じられる。Sp2’,Sp3’は、比較例における第1ポンプ36への駆動タイミング信号を示している。比較例では、駆動タイミング信号Sp1,Sp2’,Sp3’,Sp4が180度ごとに等間隔で出力される。
【0051】
例えば、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp1が出力されることにより、第1ポンプ36の電磁バルブ53が閉じられる。これにより、昇圧された燃料が第1ポンプ36から吐出される。このとき、燃料噴射装置41への駆動タイミング信号Si1によって第1気筒C1の燃料噴射装置41から燃料が噴射される。その後、プランジャ52が待機位置に向けて移動すると(
図9の吸い込み状態)加圧室内が負圧となるため、電磁バルブ53が開方向へ移動する。
【0052】
ただし、
図9に示すように、燃料噴射装置41,43,45,47への駆動タイミング信号Si1,Si3,Si5,Si7は、不等間隔で出力される。そのため、比較例に係る第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2’が出力されたときには、第3気筒C3の燃料噴射装置43への駆動タイミング信号Si3が出力されない。すなわち、第1ポンプ36が加圧状態で、第1ポンプ36の電磁バルブ53が閉じられているにも関らず、第3気筒C3での燃料噴射が行われない。このため、
図9においてPf1’で示すように、第1供給管34における燃料圧力に大きな脈動が生じる。従って、第3気筒C3の燃料噴射装置43への駆動タイミング信号Si3が出力されたときには、第1供給管34における燃料圧力が高くなっている。そのため、第3気筒C3での燃料噴射圧が、第1気筒C1での燃料噴射圧よりも高くなってしまう。
【0053】
同様に、比較例に係る第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp3’が出力されたときには、第5気筒C5の燃料噴射装置45への駆動タイミング信号Si5が出力されない。すなわち、第1ポンプ36が加圧状態で、第1ポンプ36の電磁バルブ53が閉じられているにも関らず、第5気筒C5での燃料噴射が行われない。このため、
図9においてPf2’で示すように、第1供給管34における燃料圧力に大きな脈動が生じる。従って、第5気筒C5の燃料噴射装置45への駆動タイミング信号Si5が出力されたときには、第1供給管34における燃料圧力が高くなっているため、第5気筒C5での燃料噴射圧が、第1気筒C1での燃料噴射圧よりも高くなってしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態では、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2は、比較例に係る第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2’と比べてリタードされている。すなわち、比較例に係る第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2’の発生時点は、カムリフト量が最小となる時点と概ね一致しているが、本実施形態では、カムリフト量が最小となる時点よりも、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2の発生時点を遅らせている。言い換えれば、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp1及びSp2の発生間隔を、カムリフト量が最小となる時間間隔よりも長くしている。
【0055】
それにより、本実施形態では、電磁バルブ53の閉弁タイミングが遅れるため、
図9のOv1のように、第1ポンプ36が加圧状態となっているタイミングと、第1ポンプ36の電磁バルブ53が開いているタイミングとがオーバーラップする。このため、加圧室57内の燃料の一部が吸込口56へ戻ることで、第1ポンプ36からの燃料の吐出量が低減される。
【0056】
このように、本実施形態では、第1ポンプ36の電磁バルブ53を閉じるタイミングを制御することにより、第1ポンプ36からの燃料の吐出量を制御することができる。それにより、
図9においてPf1で示すように燃料圧力の上昇が抑えられることで、第3気筒C3での燃料噴射圧が、第1気筒C1での燃料噴射圧よりも高くなることが抑えられる。
【0057】
同様に、本実施形態では、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp3は、比較例に係る第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp3’と比べてリタードされている。そのため、電磁バルブ53の閉弁タイミングが遅れ、
図9のOv2のように、第1ポンプ36が加圧状態となっているタイミングと、第1ポンプ36の電磁バルブ53が開いているタイミングとがオーバーラップする。それにより、第1ポンプ36からの燃料の吐出量が低減されることで、
図9においてPf2で示すように燃料圧力の上昇が抑えられる。その結果、第5気筒C5での燃料噴射圧が、第1気筒C1での燃料噴射圧よりも高くなることが抑えられる。
【0058】
以上のように、本実施形態に係る多気筒エンジン3では、270度の点火間隔(Si1とSi3との間)において、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp2をリタードさせる。また、180度の点火間隔(Si3とSi5との間)において、第1ポンプ36への駆動タイミング信号Sp3をリタードさせる。このように、大きな脈動が生じ易い270度と180度の点火間隔において、燃料噴射圧の増大が抑えられる。そのため、不等間隔点火による燃料圧力の差異を低減することができる。
【0059】
なお、上記の説明では、第1バンク21の燃料噴射装置41,43,45,47と第1ポンプ36の制御について説明したが、第2バンク22の燃料噴射装置42,44,46,48と第2ポンプ37についても同様の制御が行われてもよい。すなわち、270度の点火間隔(第6気筒C6と第2気筒C2との点火間隔との間)において、第2ポンプ37への駆動タイミング信号をリタードさせてもよい。また、180度の点火間隔(第2気筒C2と第8気筒C8との点火間隔)において、第2ポンプ37への駆動タイミング信号をリタードさせてもよい。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
エンジン3は、V型8気筒エンジンに限られない。エンジン3は、直列型や水平対向型などであってもよい。エンジン3の気筒数は、7つ以下であってもよく、9つ以上であってもよい。気筒の点火順序及び点火間隔は、上述したものに限らず、変更されてもよい。
【0062】
プランジャ52による加圧室57内の加圧タイミングと電磁バルブ53が開いているタイミングとのオーバーラップは、駆動タイミング信号のリタード以外の手段によって行われてもよい。
【0063】
プランジャ52による加圧室57内の加圧タイミングと電磁バルブ53が開いているタイミングとのオーバーラップは、上述した270度及び180度の点火間隔に限られず、他の点火間隔で行われてもよい。
【0064】
制御部61は、電磁バルブ53が開かれているタイミングをエンジン回転速度に応じて変更してもよい。すなわち、制御部61は、第1ポンプ36への駆動タイミング信号のリタード量をエンジン3の回転速度に応じて変更してもよい。例えば、制御部61は、エンジン3の回転速度が高くなるほど、リタード量を大きくしてもよい。制御部61は、エンジン3の回転速度とリタード量との関係を規定するマップ等の情報を記憶していてもよい。制御部61は、この情報に基づいて、駆動タイミング信号のリタード量を決定してもよい。
【0065】
或いは、制御部61は、第1ポンプ36への駆動タイミング信号のリタード量を燃料圧力に応じて変更してもよい。例えば、制御部61は、燃料圧力が大きくなるほど、リタード量を大きくしてもよい。制御部61は、燃料圧力とリタード量との関係を規定するマップ等の情報を記憶していてもよい。制御部61は、この情報に基づいて、駆動タイミング信号のリタード量を決定してもよい。