(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、情報化社会の進展に伴って、商品等に貼付されるラベルやタグに情報を記録し、このラベルやタグを用いて商品等の管理が行われている。ラベルやタグを用いた情報管理においては、ラベルやタグに対して非接触通信によって情報の書き込みや読み出しを行うことが可能なICチップが搭載された非接触型ICラベルや非接触型ICタグ等のRFIDメディアがその優れた利便性から急速な普及が進みつつある。このようなRFIDメディアは、リーダライタと呼ばれる非接触通信装置において所定の周波数帯域の信号を用いた非接触通信によって情報の書き込みや読み出しが行われる。
【0003】
リーダライタにおける非接触通信に用いられる周波数帯域としては、0.3GHz〜3GHzの極超短波帯であるUHF(Ultra High Frequency)帯や、3MHz〜30MHzの短波帯であるHF(High Frequency)帯が用いられている。このうち、UHF帯を用いたものにおいては、長距離通信が可能であることや、複数のRFIDメディアに対するアクセスを短時間でできること等から、主に、在庫管理等といった、一度に大量のRFIDメディアに対して情報の書き込みや読み出しを行う環境において使用されている。
【0004】
上述したようなRFIDメディアと非接触通信を行うリーダライタにおいては、まず、RFIDメディアを検知するための検知用信号を送信し、その検知用信号に対する応答信号を受信できるかどうかによって、通信範囲に存在するRFIDメディアを認識する、いわゆるポーリングを行い、その後、このポーリングによって検知されたRFIDメディアと非接触通信を行うこととなる。その際、リーダライタの通信範囲に複数のRFIDメディアが存在する場合、これら複数のRFIDメディアとリーダライタのアンテナとの距離は互いに異なっている場合が多い。
【0005】
ところで、UHF帯を用いたRFIDメディアは、アンテナにて受信した電波からRFIDメディア内で動作電力の生成を行うため、受信電力値が大きいほど、RFIDメディア内の動作電力を生成しやすくなるが、アンテナから送信される電波の強さ、つまり電界強度は、発信源となるリーダライタから距離が離れるほど小さくなり、RFIDメディアが動作可能な電力を生成することが難しくなる。
【0006】
一方、リーダライタから送信される通信コマンドは、搬送波に変調信号が付加されて送信されるため、RFIDメディアがリーダライタの近くに存在することによって、受信する電界強度が大きすぎる場合、変調信号が飽和してRFIDメディアが通信コマンドを認識できない虞れがある。
【0007】
そのため、上述したように、1つのリーダライタの通信範囲に、リーダライタからの距離が互いに異なる複数のRFIDメディアが存在する場合、リーダライタからの検知用信号を特定のRFIDメディアが優位に受信する場合があり、ポーリングにおいてこれら複数のRFIDメディアを一定以上の均一な確率で検知することができなくなってしまう。
【0008】
ここで、通信範囲内に存在するRFIDメディアとの距離を検出し、その距離に応じた出力でRFIDメディアと通信を行う通信装置が、例えば、特許文献1,2に開示されている。この技術によれば、通信装置の通信範囲内に存在するRFIDメディアは、通信装置との距離がいかなるものであっても通信装置と安定して通信を行うことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたものにおいては、非接触通信を行う前に、通信範囲内に存在するRFIDメディアとの距離を検出するという、ポーリングとは別の処理を行う必要が生じ、そのための新たな構成を付加しなければならないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、通信範囲内に複数のRFIDメディアが存在する場合であっても、新たな構成を付加することなく、複数のRFIDメディアを一定以上の均一な確率で検知することができる非接触通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
所定の周波数帯域の信号を用いてRFIDメディアを検知して該検知したRFIDメディアと非接触通信を行う非接触通信装置であって、
RFIDメディアを検知するための検知用信号を送信し、また、検知したRFIDメディアに対して非接触通信を行うための通信用信号を送信する送信部と、
前記検知用信号及び前記通信用信号に対するRFIDメディアからの応答信号を受信する受信部と、
前記送信部における送信レベルを調整
し、前記送信部における前記検知用信号の送信レベルを複数段に切り替える送信レベル調整部とを有し、
前記送信レベル調整部は、前記検知用信号に対する前記応答信号が前記受信部にて同一のRFIDメディアから所定回数受信される度ごとに、前記送信部における前記検知用信号の送信レベルを切り替える。
【0013】
上記のように構成された本発明においては、RFIDメディアを検知するための検知用信号が送信部から送信され、この検知用信号に対してRFIDメディアから送信された応答信号が受信部にて受信されることで、通信範囲に存在するRFIDメディアが検知され、その後、検知されたRFIDメディアに対して通信用信号が送信部から送信され、この通信用信号に対してRFIDメディアから送信された応答信号が受信部にて受信されることで、RFIDメディアとの間にて非接触通信が行われる。このように通信範囲に存在するRFIDメディアを検知するために、いわゆるポーリングが行われた後、ポーリングによって検知されたRFIDメディアとの間にて非接触通信が行われることになるが、送信部における送信レベルを調整する送信レベル調整部において、ポーリングを行う際に、送信部における検知用信号の送信レベルが複数段に切り替えられるので、通信範囲内に複数のRFIDメディアが存在する場合であっても、複数のRFIDメディア毎に非接触通信装置から距離に適した送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信されることとなり、複数のRFIDメディアが一定以上の均一な確率で検知されることとなる。
【0014】
また、検知用信号に対する応答信号が受信部にて同一のRFIDメディアから所定回数受信される度ごとに、送信部における検知用信号の送信レベルが切り替えられ
ることで、複数のRFIDメディアにとって最適な送信レベルを認識することができ、その送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信され、また、通信用信号が送信されることとなる。
【0015】
また、送信レベル調整部において、検知用信号によって検知された全てのRFIDメディアからの検知用信号に対する応答信号が受信部にてそれぞれ前記所定回数受信された場合、送信レベルの切り替えを終了すれば、送信レベル1つあたりのポーリングのために割り当てる時間を長くしたり、ポーリング全体にかかる時間を短縮したりすることができる。
【0016】
また、検知用信号によって検知された全てのRFIDメディアのそれぞれについて、検知用信号に対する応答信号が受信部にて受信された回数を、切り替えられた複数段の送信レベル毎に記憶しておき、送信レベル調整部において、送信部における通信用信号の送信レベルを、その通信用信号の送信先となるRFIDメディアについて記憶された回数が最も多い送信レベルとすれば、RFIDメディアに対して安定した通信が行われることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポーリングを行う際に、RFIDメディアを検知するための検知用信号の送信レベルが複数段切り替えられるため、通信範囲内に複数のRFIDメディアが存在する場合であっても、複数のRFIDメディア毎に非接触通信装置から距離に適した送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信されることとなり、新たな構成を付加することなく、複数のRFIDメディアを一定以上の均一な確率で検知することができる。
【0018】
また、送信レベル調整部が、検知用信号に対する応答信号が受信部にて同一のRFIDメディアから所定回数受信される度ごとに、検知用信号の送信レベルを切り替える
ことにより、複数のRFIDメディアにとって最適な送信レベルを認識することができ、その送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信され、また、通信用信号が送信されることとなる。
【0019】
また、送信レベル調整部が、検知用信号によって検知された全てのRFIDメディアからの検知用信号に対する応答信号が受信部にてそれぞれ前記所定回数受信された場合、送信レベルの切り替えを終了するものにおいては、送信レベル1つあたりのポーリングのために割り当てる時間を長くしたり、ポーリング全体にかかる時間を短縮したりすることができる。
【0020】
また、検知用信号によって検知された全てのRFIDメディアのそれぞれについて、検知用信号に対する応答信号が受信部にて受信された回数を、切り替えられた複数段の送信レベル毎に記憶しておき、送信レベル調整部において、送信部における通信用信号の送信レベルを、その通信用信号の送信先となるRFIDメディアについて記憶された回数が最も多い送信レベルとするものにおいては、RFIDメディアに対して安定した通信を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の非接触通信装置の第1の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0024】
本形態における非接触通信装置は
図1に示すように、送受信アンテナ部10と、共用器11と、RF送信部12と、RF受信部13と、受信感度検知部14と、タグデータ送信処理部15と、デジタル信号変換部16と、タグデータ受信処理部17と、送信レベル調整部18と、増加係数発生器19と、記憶部20と、制御部21とを有するリーダライタ1である。
【0025】
送受信アンテナ部10は、電波信号を送受信するためのものである。
【0026】
共用器11は、RF送信部12から出力された信号を、送受信アンテナ部10を介して電波信号として送信するとともに、送受信アンテナ部10にて受信された電波信号をRF受信部13や受信感度検知部14に出力する。
【0027】
タグデータ送信処理部15は、ポーリングにおいてRFIDメディアを検知するための検知用信号を出力し、また、RFIDメディアと非接触通信を行うための通信用信号を出力する。
【0028】
デジタル信号変換部16は、タグデータ送信処理部15から出力された検知用信号や通信用信号をアナログ信号に変換して送信レベル調整部18に出力し、また、RF受信部13にて受信された信号や受信感度検知部14から出力された値をデジタル信号に変換してタグデータ受信処理部17に出力する。
【0029】
送信レベル調整部18は、デジタル信号変換部16にてアナログ信号に変換された検知用信号や通信用信号のRF送信部12からの送信レベルを、制御部21から出力された命令に従ってその電力レベルを調整することで切り替える。
【0030】
RF送信部12は、送信レベル調整部18にて送信レベルが調整された検知用信号や通信用信号を搬送波に乗せて共用器11及び送受信アンテナ部10を介して送信する。
【0031】
RF受信部13は、RF送信部12から送信された検知用信号や通信用信号に対するRFIDメディアからの応答信号を送受信アンテナ部10及び共用器11を介して受信する。
【0032】
タグデータ受信処理部17は、デジタル信号変換部16から出力された信号に基づいて所定の処理を行う。
【0033】
受信感度検知部14は、通信を行うための周波数チャネルの受信感度を検知する。
【0034】
増加係数発生器19は、送信レベル調整部18にて調整される送信レベルを段階的に増加させていくための増加係数を発生させる。
【0035】
記憶部20は、RF受信部13にて応答信号が受信された回数や、その応答信号に含まれるRFIDメディアのIDとなるEPCコード、さらにはその際に送信レベル調整部18にて調整された送信レベルを記憶する。
【0036】
制御部21は、増加係数発生器19にて発生した係数を取得し、また、RF送信部12、RF受信部13、受信感度検知部14、デジタル信号変換部16及び送信レベル調整部18との間にて信号のやりとりを行うことで、これらを制御する。
【0037】
以下に、上記のように構成されたリーダライタ1のポーリング時の動作について説明する。
【0038】
図2は、
図1に示したリーダライタ1のポーリング時の動作を説明するためのフローチャートである。
【0039】
図1に示したリーダライタ1においては、ポーリングを開始すると、まず、制御部21において、増加係数発生器19から増加係数が取得される(ステップ1)。増加係数発生器19においては、上述したように、送信レベル調整部18にて調整される送信レベルを段階的に増加させていくための増加係数がシーケンシャルに発生するため、制御部21においては、増加係数発生器19にて発生した増加係数が取得されることとなる。
【0040】
次に、制御部21において、増加係数発生器19から取得された増加係数と、記憶部20に記憶された送信レベル表とに基づいて、送信レベル調整部18にて調整される検出用信号の送信レベルが算出される(ステップ2)。記憶部20には、RF送信部12における検知用信号や通信用信号の送信に用いられる送信レベルが送信レベル表として段階的に複数段記憶されているため、制御部21においてこの送信レベル表が参照され、送信レベル表に設定された送信レベルの中から、増加係数に従って小さなものから送信レベルとして用いられることとなる。なお、この送信レベル表においては、ポーリング開始時においては、送信レベル表に設定されている送信レベルの全てについて、送信レベル調整部18にて調整される検出用信号の送信レベルとして設定可能となっている。
【0041】
上記のようにして送信レベルが算出されると、制御部21において、算出された送信レベルが送信レベル調整部18にて設定される。そして、通信可能な範囲に存在するタグを検知するための検知用信号がタグデータ送信処理部17から出力され、デジタル信号変換部16にてアナログ信号に変換された後、送信レベル調整部18において設定された送信レベルに調整され、RF送信部12、共用器11及び送受信アンテナ部10を介して送信される(ステップ3)。
【0042】
この検知用信号に対して、通信可能な範囲に存在するタグから応答信号が送信され、送受信アンテナ部10、共用器11及びRF受信部13にて受信されると(ステップ4)、制御部21によって応答信号の受信回数が記憶部20に記憶される(ステップ5)。この際、応答信号の受信回数は、その応答信号を送信したタグのIDとなるEPCコード等を用いてタグが識別可能に記憶されることとなる。
【0043】
制御部21においては、記憶部20に記憶された応答信号の受信回数が監視されており、応答信号を送信したタグのうち、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信された同一のタグから送信された応答信号の受信回数が予め決められた所定回数受信された場合(ステップ6)、その際の送信レベルについて、応答信号を送信した各タグの応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録される(ステップ7)。
【0044】
一方、リーダライタ1から送信された検知用信号に対する応答信号が受信されない場合や、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信された同一のタグから送信された応答信号の受信回数が予め決められた所定回数受信されていない場合は、予め決められた所定時間が経過するまで(ステップ8)、ステップ3における処置に戻って上記同様の処理が繰り返される。なお、所定時間が経過しているかどうかは、制御部21内に設けられたタイマー(不図示)を用いて制御部21にて判断される。
【0045】
そして、制御部21において、増加係数発生器19にて発生する増加係数の全てについて上記一連の処理が行われたかどうかが判断され(ステップ9)、増加係数発生器19にて発生する増加係数の全てについて上記一連の処理が行われた場合は、ポーリングが終了する。
【0046】
また、増加係数発生器19にて発生する増加係数のうち上記一連の処理が行われていない増加係数がある場合は、ステップ1における処理に戻り、制御部21において増加係数発生器19から新たな増加係数が取得され、上記同様の動作が行われることで、送信レベル調整部18において検知用信号の送信レベルが新たな増加係数に応じて切り替えられる。
【0047】
このように、送信レベル調整部18によって、RF送信部12における検知用信号の送信レベルが、検知用信号に対する応答信号がRF受信部13にて同一のタグから所定回数受信される度ごとに切り替えられることとなる。
【0048】
以下に、上述した一連の動作について具体的に説明する。
【0049】
図3は、
図1に示したリーダライタ1の周囲の環境の一例を示す図である。
【0050】
図3に示すように本例においては、
図1に示したリーダライタ1の通信範囲に、RFIDメディアとなる4つのタグ2a〜2dが存在しているものとする。リーダライタ1は、UHF帯の信号を用いてタグ2a〜2dと非接触通信を行う。また、タグ2a〜2dは、リーダライタ1との距離が互いに異なるものとなっている。
【0051】
図4は、
図3に示した環境における
図1に示したリーダライタ1のポーリング時の具体的な動作の一例を説明するための図である。なお、本例においては、記憶部20における送信レベル表に設定された送信レベルの段数が8段階、ステップ6における判断に用いる所定回数が16回であるとする。また、
図4に示す送信レベル1〜8は、送信レベル1が最も小さく、送信レベル2〜8と順番に大きくなっていくものとする。
【0052】
図4に示すように、まず、送信レベル調整部18によって検知用信号の送信レベルが送信レベル1に設定された場合において、この検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから12回、タグ2bから3回受信され、タグ2c,2dからが受信されていないものとする。その状態では、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信されているタグはタグ2aとなるが、タグ2aから送信された応答信号の受信回数は、所定回数である16回に達していないため、ステップ8にて所定時間が経過した時点で、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル1から送信レベル2に切り替えられる。
【0053】
送信レベル2においては、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから16回、タグ2bから6回、タグ2cから3回、タグ2dから1回受信された時点で、タグ2aからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル2について、応答信号を送信したタグ2a〜2dそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル2から送信レベル3に切り替えられる。
【0054】
送信レベル3において、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから12回、タグ2bから10回、タグ2cから5回、タグ2dから3回それぞれ受信されているものとする。その状態では、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信されているタグはタグ2aとなるが、タグ2aから送信された応答信号の受信回数は、所定回数である16回に達していないため、ステップ8にて所定時間が経過した時点で、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル3から送信レベル4に切り替えられる。
【0055】
送信レベル4においては、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから8回、タグ2bから16回、タグ2cから7回、タグ2dから7回受信された時点で、タグ2bからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル4について、応答信号を送信したタグ2a〜2dそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル4から送信レベル5に切り替えられる。
【0056】
送信レベル5において、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから7回、タグ2bから12回、タグ2cから9回、タグ2dから8回それぞれ受信されているものとする。その状態では、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信されているタグはタグ2bとなるが、タグ2bから送信された応答信号の受信回数は、所定回数である16回に達していないため、ステップ8にて所定時間が経過した時点で、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル5から送信レベル6に切り替えられる。
【0057】
送信レベル6においては、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから6回、タグ2bから8回、タグ2cから16回、タグ2dから12回受信された時点で、タグ2cからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル6について、応答信号を送信したタグ2a〜2dそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル6から送信レベル7に切り替えられる。
【0058】
送信レベル7においては、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから5回、タグ2bから6回、タグ2cから11回、タグ2dから16回受信された時点で、タグ2dからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル7について、応答信号を送信したタグ2a〜2dそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部18による検知用信号の送信レベルが送信レベル7から送信レベル8に切り替えられる。
【0059】
送信レベル8において、検知用信号に対する応答信号が、タグ2aから4回、タグ2bから5回、タグ2cから7回、タグ2dから10回それぞれ受信されているものとする。その状態では、応答信号がリーダライタ1にて最も多く受信されているタグはタグ2dとなるが、タグ2dから送信された応答信号の受信回数は、所定回数である16回に達していないため、ステップ8にて所定時間が経過した時点で、増加係数発生器19にて発生する増加係数の全てについて上記一連の処理が行われたことで、ポーリングが終了する。
【0060】
このようにして本例においては、送信レベル2,4,6,7について、応答信号を送信したタグ2a〜2dそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ1における受信回数が記憶部20にて送信レベル表として記録されることとなる。
【0061】
図5は、
図1に示したリーダライタにおけるタグ2a〜2dからの応答信号の受信回数が
図4に示したものである場合のタグ2a〜2d毎の合計受信回数を示す図である。
【0062】
図1に示したリーダライタにおけるタグ2a〜2dからの応答信号の受信回数が
図4に示したものである場合は、
図5に示すように、記憶部20にて送信レベル表として記録された送信レベル2,4,6,7についての応答信号のリーダライタ1における受信回数をタグ2a〜2d毎に合計すると、タグ2a〜2dのそれぞれについて受信回数はほぼ同等のものとなる。
【0063】
そのため、送信レベル2,4,6,7によってリーダライタ1から検知用信号が送信された場合、送信レベル2,4,6,7のそれぞれが最も適したタグ2a〜2dのそれぞれにて検知用信号が一定以上の確率で検知されるとともに、リーダライタ1の通信範囲に存在するタグ2a〜2dが均一に検知されることとなる。
【0064】
このように本形態においては、ポーリングを行う際に、検知用信号の送信レベルが複数段に切り替えられるため、通信範囲内に複数のタグが存在する場合であっても、複数のタグ毎にリーダライタから距離に適した送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信されることとなり、新たな構成を付加することなく、複数のタグを一定以上の均一な確率で検知することができる。また、この送信レベルの切り替えが、検知用信号に対する応答信号がRF受信部13にて同一のタグから所定回数受信される度ごとに行われることにより、複数のタグ毎にリーダライタから距離に最適な送信レベルでポーリングにおける検知用信号が送信されることとなる。
【0065】
その後、リーダライタ1において検出用信号に対する応答信号を送信したタグ2a〜2bとの間にて非接触通信が行われることになるが、上記のようにポーリングが終了した場合に、送信レベル2,4,6,7のみが記憶部20にて送信レベル表として記録されているため、非接触通信の際にリーダライタ1のRF送信部12から送信される通信用信号は、送信レベル調整部18によってその送信レベルが、ポーリングにて記憶部20に送信レベル表として記録された送信レベル2,4,6,7に切り替えられながら送信される。その際、記憶部20には、タグ2a〜2dのそれぞれについて、応答信号がリーダライタ1にて受信された回数が送信レベル毎に記憶されているため、リーダライタ1において特定のタグに対して非接触通信を行う場合は、そのタグについて記憶された回数のうち最も多い回数の送信レベルで通信用信号を送信することで、タグに対して安定した通信を行うことができる。
【0066】
また、リーダライタ1においては、送信レベル2,4,6,7を用いて次回のポーリングが行われることとなる。
【0067】
なお、本形態においては、増加係数発生器19にて、送信レベル調整部18にて調整される送信レベルを段階的に増加させていくための増加係数が発生し、それにより、送信レベル調整部18にて調整される検知用信号の送信レベルが段階的に増加していくが、検知用信号の送信レベルを段階的に減少させていくものや、乱数を発生させ、検知用信号の送信レベルをランダムに変化させていくものでもよい。さらには、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0068】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の非接触通信装置の第2の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0069】
本形態は
図6に示すように、第1の実施の形態にて示したものに対して、増加係数発生器19の代わりに、二分係数発生器119が設けられている点が異なるものである。二分係数発生器119においては、送信レベル調整部118にて調整される送信レベルを、二分法を利用して変化させていくための二分係数が発生する。
【0070】
図7は、
図6に示したリーダライタ101のポーリング時の動作を説明するためのフローチャートである。
【0071】
図6に示したリーダライタ1においては、ポーリングを開始すると、まず、制御部121において、二分係数発生器119から、送信レベル調整部118にて調整される送信レベルを、二分法を利用して変化させていくための二分係数が取得される(ステップ101)。
【0072】
次に、制御部121において、二分係数発生器119から取得された二分係数と、記憶部120に記憶された送信レベル表とに基づいて、送信レベル調整部118にて調整される検出用信号の送信レベルが算出される(ステップ102)。
【0073】
上記のようにして送信レベルが算出されると、制御部121において、算出された送信レベルが送信レベル調整部118にて設定される。そして、通信可能な範囲に存在するタグを検知するための検知用信号がタグデータ送信処理部117から出力され、デジタル信号変換部116にてアナログ信号に変換された後、送信レベル調整部118において設定された送信レベルに調整され、RF送信部112、共用器111及び送受信アンテナ部110を介して送信される(ステップ103)。
【0074】
この検知用信号に対して、通信可能な範囲に存在するタグから応答信号が送信され、送受信アンテナ部110、共用器111及びRF受信部113にて受信されると(ステップ104)、制御部121によって応答信号の受信回数が記憶部120に記憶される(ステップ105)。この際、応答信号の受信回数は、その応答信号を送信したタグのIDとなるEPCコード等を用いてタグが識別可能に記憶されることとなる。
【0075】
制御部121においては、記憶部120に記憶された応答信号の受信回数が監視されており、応答信号を送信したタグのうち、応答信号がリーダライタ101にて最も多く受信された同一のタグから送信された応答信号の受信回数が予め決められた所定回数受信された場合(ステップ106)、その際の送信レベルについて、応答信号を送信した各タグの応答信号のリーダライタ101における受信回数が記憶部120にて送信レベル表として記録される(ステップ107)。
【0076】
一方、リーダライタ101から送信された検知用信号に対する応答信号が受信されない場合や、応答信号がリーダライタ101にて最も多く受信された同一のタグから送信された応答信号の受信回数が予め決められた所定回数受信されていない場合は、予め決められた所定時間が経過するまで(ステップ108)、ステップ103における処置に戻って上記同様の処理が繰り返される。
【0077】
そして、制御部121において、検知用信号に対する応答信号を送信してきた全てのタグから送信された応答信号の受信回数がそれぞれ所定回数に達したかどうかが判断され(ステップ109)、全てのから送信された応答信号の受信回数がそれぞれ所定回数に達した場合は、ポーリングが終了する。
【0078】
また、検知用信号に対する応答信号を送信してきたタグのうち、応答信号の受信回数が所定回数に達していないタグが存在する場合は、ステップ1における処理に戻り、二分係数発生器119から新たな増加係数が取得され、上記同様の動作が行われることで、送信レベル調整部118において検知用信号の送信レベルが新たな二分係数に応じて切り替えられる。
【0079】
このように、本形態においても、送信レベル調整部118によって、RF送信部112における検知用信号の送信レベルが、検知用信号に対する応答信号がRF受信部113にて同一のタグから所定回数受信される度ごとに切り替えられることとなる。
【0080】
図8は、
図6に示したリーダライタ101のポーリング時の具体的な動作の一例を説明するための図である。なお、本例においては、ステップ106における判断に用いる所定回数が16回であるとする。
【0081】
図8に示すように、まず、送信レベルの範囲のうち最も小さな送信レベル1が送信レベル調整部118によって検知用信号の送信レベルとして設定された場合において、検知用信号に対する応答信号が、タグAから16回、タグBから11回、タグCから7回受信された時点で、タグAからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル1について、応答信号を送信したタグA〜Cそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ101における受信回数が記憶部120にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部118による検知用信号の送信レベルが、送信レベル1から、送信レベルの範囲のうち最も大きな送信レベル5に切り替えられる。
【0082】
送信レベル5においては、検知用信号に対する応答信号が、タグAから5回、タグBから8回、タグCから16回受信された時点で、タグCからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル5について、応答信号を送信したタグA〜Cそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ101における受信回数が記憶部120にて送信レベル表として記録され、送信レベル調整部118における検知用信号の送信レベルが、送信レベル5から、送信レベル1と送信レベル5との中間値である送信レベル3に切り替えられる。
【0083】
送信レベル3において、検知用信号に対する応答信号が、タグAから12回、タグBから13回、タグCから10回それぞれ受信されているものとする。その状態では、応答信号がリーダライタ101にて最も多く受信されているタグはタグBとなるが、タグBから送信された応答信号の受信回数は、所定回数である16回に達していないため、ステップ108にて所定時間が経過した時点で、送信レベル調整部118による検知用信号の送信レベルが、送信レベル3から、送信レベル1と送信レベル3との中間値である送信レベル2に切り替えられる。
【0084】
送信レベル2においては、検知用信号に対する応答信号が、タグAから14回、タグBから16回、タグCから9回受信された時点で、タグBからの応答信号の受信回数が所定回数である16回に達したため、送信レベル2について、応答信号を送信したタグA〜Cそれぞれから送信された応答信号のリーダライタ101における受信回数が記憶部120にて送信レベル表として記録される。
【0085】
そして、リーダライタ101にて応答信号が受信された全てのタグA〜Cから送信された応答信号の受信回数がそれぞれ所定回数の16回に達したため、送信レベル調整部118による検知用信号の送信レベルが、送信レベル2から、送信レベル3と送信レベル5との中間値である送信レベル4に切り替えられることなく、ポーリングが終了する。
【0086】
このように本形態においては、送信レベル調整部118において、検知用信号によって検知された全てのタグA〜Cからの検知用信号に対する応答信号がRF受信部13にてそれぞれ所定回数である16回受信された場合、送信レベルが切り替えられることなくポーリングが終了するので、送信レベル1つあたりのポーリングのために割り当てる時間を長くしたり、ポーリング全体にかかる時間を短縮したりすることができる。