(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記1つ又はそれ以上の電極は少なくとも1つのペーシング電極を含んでおり、前記ICDは徐脈ペーシングと抗頻拍(ATP)ペーシングのうちの一方を前記患者の前記胸骨下場所から前記心臓へ前記少なくとも1つのペーシング電極を介して提供するように構成されている、請求項1及び請求項2の何れか一項に記載のICDシステム。
前記ICDは2ミリ秒より大きいパルス幅及び大凡1ボルトから20ボルトの間のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように構成されている、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のICDシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0020]
図1A−
図1Cは患者12内に植え込まれている植え込み型カーディオバータ除細動器(ICD)システム10の概念図である。
図1Aは患者12内に植え込まれているICDシステム10の前面図である。
図1Bは患者12内に植え込まれているICDシステム10の側面図である。
図1Cは患者12内に植え込まれているICDシステム10の横断面図である。ICDシステム10は医用電気リード16へ接続されているICD14を含んでいる。
図1A−
図1Cは、除細動ショック及び/又はカーディオバージョンショック及び場合によりペーシングパルスを提供できるICDシステムの観点から説明されている。しかしながら、本開示の技法は、更に、患者12の身体の他の部分を刺激する電気刺激パルスを提供するように構成されている他の植え込み型医療装置の観点で使用することもできる。
【0013】
[0021]ICD14は、ICD14の構成要素を保護する密封シールを形成しているハウジングを含んでいてもよい。ICD14のハウジングは、ハウジング電極として機能するものであって、チタンの様な導電性材料で形成されていてもよい。ICD14は、更に、電気的フィードスルーを含むコネクタ組立体(コネクタブロック又はヘッダとも呼称される)を含んでいてもよく、当該電気的フィードスルーを通して電気的接続がリード16とハウジング内に含まれる電子的構成要素の間に作られる。ここに更に詳細に説明されてゆく様に、ハウジングは、1つ又はそれ以上のプロセッサ、メモリ、送信器、受信器、センサ、感知回路機構、療法回路機構、パワー源、及び他の適切な構成要素、を収納することができる。ハウジングは患者12の様な患者に植え込まれるように構成されている。ICD14は皮下的に患者12の左中腋窩へ植え込まれる。ICD14は、患者12の左側、胸郭の上側にある。ICD14は場合により患者12の左後腋窩線と左前腋窩線の間に植え込まれることもある。また一方、ICD14は後段に説明されている様に患者12の他の皮下場所に植え込まれていてもよい。
【0014】
[0022]リード16は、ICD14へ接続されるように構成されているコネクタ(図示せず)を含んでいる近位端と、電極24、電極28、及び電極30を含んでいる遠位部分と、を有する細長リード本体を含んでいる。リード16は皮下的に胸郭の上側をICD14から患者12の体幹部の中心に向かって、例えば患者12の剣状突起20に向かって延びている。体幹部の中心付近の場所で、リード16は曲がり又は向きを変え、胸骨22の下/下側で前縦隔36内を上方へ延びている。前縦隔36は、側方を胸膜40によって、後方を心膜38によって、前方を胸骨22によって、境界されているものと見ることができる。一部の事例では、前縦隔36の前壁は更に胸横筋及び1つ又はそれ以上の肋軟骨によって形成されている。前縦隔36は、或る量の疎性結合組織(例えば疎性組織など)、幾つかのリンパ管、リンパ腺、胸骨下筋肉組織(例えば胸横筋)、内胸動脈の分枝、及び内胸静脈を含んでいる。1つの実施例では、リード16の遠位部分は実質的に前縦隔36の疎性結合組織内及び/又は胸骨下筋肉組織内に植え込まれている。実質的に前縦隔36内に植え込まれているリードをここでは胸骨下リードと呼称することにする。更に、実質的に前縦隔36内に植え込まれているリード16によって提供されるペーシング、カーディオバージョン、又は除細動の様な電気刺激を、ここでは胸骨下電気刺激、胸骨下ペーシング、胸骨下カーディオバージョン、又は胸骨下除細動と呼称することにする。
【0015】
[0023]リード16の遠位部分はここでは実質的に前縦隔36内に植え込まれているものと説明されている。而して、リード16の遠位部分に沿った点は前縦隔36を出て延びていているかもしれないが遠位部分の大半は前縦隔36内にある。他の実施形態では、リード16の遠位部分は、心膜又は心臓26の他部分の周界周りにあって又は心膜又は心臓26の他部分に隣接していて且つ胸骨22又は胸郭の上側ではない間隙、組織、又は他の解剖学的特徴を含む他の非脈管心膜外場所に、但し心膜又は心臓26の他部分へ付着させずに、植え込むことができる。そいうものとして、リード16は、胸骨及び/又は胸郭と身体腔部の間に下面によって画定される「胸骨下空間(substernal space)」であって但し心膜又は心臓26の他部分を含まない空間内の何処に植え込まれてもよい。胸骨下空間は、代わりに、当業者に知られている通り前縦隔36を含めての「胸骨後方空間」又は「縦隔」又は「胸骨下(infrasternal)」という用語で呼称される場合もある。胸骨下空間は、更に、ボードワン,Y.P.らの「上腹壁動脈はLarrey’s space(胸肋三角)を通っていない」という表題の論文、Surg.Radiol.Anat.25.3−4(2003年)259−262(Baudoin, Y. P., et al., entitled“The superior epigastric artery does not pass through Larrey's space (trigonum sternocostale).” Surg.Radiol.Anat. 25.3-4 (2003): 259-62)に、Larrey’s spaceとして記載されている解剖学的領域を含み得る。言い換えれば、リード16の遠位部分は、心臓26の外面の周りの領域に、但し心臓へ付着させずに、植え込むことができる。
【0016】
[0024]リード16の遠位部分は、電極24、電極28、及び電極30が心臓26の心室付近に位置付けられるようにして実質的に前縦隔36内に植え込まれる。例えば、リード16は、電極24が心臓26の前後方向(AP)蛍光透視図を介し観測して一方又は両方の心室の心陰影の上に位置付けられるような具合に、前縦隔36内に植え込まれてもよい。1つの実施例では、リード16は、電極24からICD14のハウジング電極への療法ベクトルが実質的に心臓26のそれら心室を横切るような具合に植え込まれてもよい。療法ベクトルは、電極24上の或る点、例えば電極24の中心から、ICD14のハウジング電極上の或る点、例えばハウジング電極の中心へ延びている線として見ることができる。しかしながら、リード16は、電極24とハウジング電極の間の療法ベクトルが心臓26を細動除去できる限りにおいて他の場所に位置決めされてもよい。
【0017】
[0025]
図1A−
図1Cに描かれている実施例では、リード16は実質的に胸骨22の下で中心に位置付けられている。しかしながら、他の場合には、リード16は、胸骨22の中心から側方にオフセットして植え込まれることもある。一部の事例では、リード16は、リード16の全部又は一部が、胸骨22に加えて又は胸骨22の代わりに、胸郭の下/下側に来るほど側方に延びていることもある。
【0018】
[0026]リード16の細長リード本体は、リード本体内を近位リード端のコネクタからリード16の遠位部分に沿って配置されている電極24、電極28、及び電極30へ延びている1つ又はそれ以上の細長電気伝導体(描かれていない)を収容している。細長リード本体は、リード本体の長さに沿って略均一な形状を有していてもよい。1つの実施例では、細長リード本体はリード本体の長さに沿って略管状又は略円筒状の形状を有している。細長リード本体は、一部の事例では、3フレンチ(Fr)から9フレンチの間の直径を有していてもよい。但し、同様に3Frより小さいリード本体及び9Frより大きいリード本体が利用されることもある。別の実施例では、細長リード本体の遠位部分(又は細長リード本体の全部)は、平坦なリボンはパドルの形状を有している。この事例では、平坦リボン又はパドル形状の平坦部分を横切る幅は、1mmから3.5mmの間であってもよい。本開示の範囲から逸脱すること無く他のリード本体設計が使用されてもよい。リード16のリード本体は、シリコン、ポリウレタン、フルオロポリマー、それらの混合物、及び他の適切な材料を含む非伝導性材料から形成することができ、リード本体は1つ又はそれ以上の伝導体が内部を延びる1つ又はそれ以上のルーメンを形成するように整形することができる。しかしながら技法はその様な構築に限定されない。
【0019】
[0027]リード16のリード本体内に収容されている1つ又はそれ以上の細長電気伝導体は、電極24、電極28、及び電極30それぞれと係合している。1つの実施例では、電極24、電極28、及び電極30のそれぞれはリード本体内の各伝導体へ電気的に連結されている。各伝導体は、ICD14の療法モジュール又は感知モジュールの様な回路機構へ、関連付けられているフィードスルーを含むコネクタ組立体の接続部を介して、電気的に連結している。電気伝導体は、ICD14内の療法モジュールからの療法を電極24、電極28、及び電極30の1つ又はそれ以上へ伝送し、電極24、電極28、及び電極30の1つ又はそれ以上からの感知された電気信号をICD14内の感知モジュールへ伝送する。
【0020】
[0028]除細動電極24は
図1には細長コイル電極であるものとして描かれている。除細動電極24は、数々の変数に依存して長さが変えられてもよい。除細動電極24は、1つの実施例では、大凡5−10センチメートル(cm)の間の長さを有していよう。また一方、除細動電極24は他の実施形態では5cmより小さい長さ及び10cmより大きい長さを有していることもある。別の実施例、除細動電極24は大凡2−16cmの間の長さを有していることもある。
【0021】
[0029]また一方、他の実施形態では、除細動電極24は、細長コイル電極の他に、平坦なリボン電極、パドル電極、編組電極又は織電極、メッシュ電極、分割電極、指向性電極、パッチ電極、又は他の型式の電極であってもよい。1つの実施例では、除細動電極24は或る距離だけ隔てられた第1区分と第2区分で形成されていて、電極又は電極対(例えば以下に説明されている電極28及び/又は電極30など)を第1除細動電極区分と第2除細動電極区分の間に配して形成されていてもよい。1つの実施例では、それら区分は、第1区分と第2区分が単一の除細動電極として機能するようにリード本体内の同じ伝導体へ連結されている。他の実施形態では、除細動リード16は除細動電極を1つより多く含んでいてもよい。例えば上述の第1区分及び第2区分は、第1区分と第2区分がリード16の遠位部分に沿って別々の除細動電極として機能するようにリード本体内の異なる伝導体へ連結されていてもよい。別の実施例では、除細動リード16は、リード16の近位端付近又はリード16の中間部分付近に第2の除細動電極(例えば第2の細長コイル電極)を含んでいてもよい。
【0022】
[0030]リード16は、更に、リード16の遠位部分に沿って配置されている電極28及び電極30を含んでいる。
図1A−
図1Cに示されている実施例では、電極28と電極30は除細動電極24によって互いから隔てられている。また一方、他の実施例では、電極28と電極30はどちらもが除細動電極24の遠位になっていることもあれば、どちらもが除細動電極24の近位になっていることもある。除細動電極24が2つの除細動区分を有する分割電極である事例では、電極28及び電極30は2つの区分の間に配置されていてもよい。代わりに、電極28と電極30のうち一方が2つの区分の間に配置され、他方の電極は除細動電極24の近位又は遠位に配置されている、というのであってもよい。電極28及び電極30は、リング電極、短いコイル電極、半球状電極、分割電極、指向性電極、など、を備えていてもよい。リード16の電極28及び電極30はリード本体と実質的に同じ外径を有していてもよい。1つの実施例では、電極28及び電極30は1.6−55mm
2の間の表面積を有している。電極28と電極30は一部の事例では相対的に同じ表面積を有していることもあれば異なる表面積を有していることもある。リード16の構成に依存して、電極28及び電極30は、除細動電極24の長さ足す除細動電極の各側での或る程度の絶縁長さだけ離間されており、例えば大凡2−16cmだけ離間されていてもよい。除細動28及び除細動30が分割除細動電極の間にある様な他の事例では、電極の間隔取りはより小さくてもよく、例えば2cm未満又は1cm未満であってもよい。以上に提供されている一例としての寸法は本質的に例示であり、ここに説明されている実施形態を限定するものと考えられてはならない。他の実施例では、リード16は、単一のペーシング/感知電極を含んでいることもあれば、2つより多いペーシング/感知電極を含んでいることもある。
【0023】
[0031]一部の事例ではリード16の電極28及び電極30は、心外刺激を低減する形状、配置向き、設計であるか、若しくはそうするように別のやり方で構成されていてもよい。例えば、リード16の電極28及び電極30は、電極28及び電極30を心臓26に向かって集束させる、方向決めする、又は向ける形状、配置向き、又は設計であってもよいし、若しくはそうするように別のやり方で構成されていてもよい。この方式では、リード16を介して送達されるペーシングパルスは、心臓26に向かって方向決めされ、外向きに骨格筋に向かって方向決めされない。例えば、リード16の電極28及び電極30は、ペーシング信号を心臓26に向かって方向決めし外向きに骨格筋に向かって方向決めしないように、一方の面又は異なる領域をポリマー(例えばポリウレタン)又は別の被覆材料(例えば五酸化タンタル)で部分的に被覆又はマスクされていてもよい。
【0024】
[0032]ICD14は、心臓26の電気的活動と一致する感知電気信号を、電極28及び/又は電極30とICD14のハウジング電極の組合せを含んでいる感知ベクトルの組合せを介して取得することができる。例えば、ICD14は、電極28と電極30の間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を取得していてもよいし、電極28とICD14の導電性ハウジング電極の間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を取得していてもよいし、電極30とICD14の導電性ハウジング電極の間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を取得していてもよいし、又はそれらの組合せを使用して感知される電気信号を取得していてもよい。一部の事例では、ICD14は感知電気信号を除細動電極24を含んでいる感知ベクトルを使用して取得することさえある。
【0025】
[0033]ICD14は、心室頻拍又は心室細動の様な頻拍性不整脈について監視するために、リード16の感知ベクトルの1つ又はそれ以上から取得される感知電気信号を分析する。ICD14は、頻拍性不整脈について監視するために心拍数及び/又は感知電気信号の形態学を当技術で知られている数々の技法の何れかに従って分析してもよい。頻拍性不整脈を検出するための1つの例としての技法は、ガネムら(Ghanem et al.)への「医療装置での不整脈を検出するための方法及び装置」という名称の米国特許第7,761,150号に記載されている。ガネムらに記載されている頻拍性不整脈検出アルゴリズムの内容全体を参考文献としてここにそっくりそのまま援用する。胸骨下リード16を使用して感知される電気信号は、ガネムらの皮下感知電気信号と同じやり方で分析されてもよい。
【0026】
[0034]ICD14は、頻拍(例えばVT又はVF)を検出したことに応えて胸骨下電気刺激療法を生成し、送達する。頻拍を検出したことに応えて、ICD14は頻拍を除細動ショックを送達すること無しに終止させようとの試みから1つ又はそれ以上のATPシーケンスをリード16の1つ又はそれ以上の療法ベクトル、例えば、単極療法ベクトル、双極ペーシングベクトル、又は多極ペーシングベクトル(例えば電極28及び電極30を一体にアノード又はカソードとすることによる)、を介して送達することができる。例えば、ICD14はATPを電極28と電極30の間の双極療法ベクトルを使用して送達してもよい。別の実施例では、ICD14はATPを単極療法ベクトル(例えば、電極28とICD14の導電性ハウジング電極の間又は電極30とICD14の導電性ハウジング電極の間)を使用して送達してもよい。更なる実施例では、ICD14は、ATPを、電極28と電極30が一体に療法ベクトルのカソード(又はアノード)を形成していてICD14のハウジング電極が療法ベクトルのアノード(又はカソード)として機能している療法ベクトルを介して送達してもよい。更に別の実施例では、ICD14はATPを除細動電極24を含んでいる療法ベクトルを使用して送達してもよい。
【0027】
[0035]1つ又はそれ以上のATPシーケンスが功を奏しなければ、又はATPが所望でないと判定されれば(例えばVFの場合)、ICD14は1つ又はそれ以上のカーディオバージョンショック又は除細動ショックをリード16の除細動電極24を介して送達してもよい。ICD14は、ショック後ペーシング、徐脈ペーシング、又は他の電気刺激を含め、ATP及びカーディオバージョンショック又は除細動ショック以外の電気刺激療法を生成し送達してもよい。この方式で、ICD14は皮下ICDシステムと比べてエネルギーの低減された胸骨下電気刺激を送達することができ、しかもリードを脈管構造に進入させたり、心臓26内に植え込んだり、心臓26へ付着させたりする必要もない。
【0028】
[0036]リード16は、更に、遠位端に、又はリード本体の長さに沿って、又は切開部位/進入部位付近に、配置されている1つ又はそれ以上の定着(anchoring)機構を含んでいてもよい。定着機構はリード16がその所望される胸骨下場所から動くのを抑制するためにリード16を固着するものであってもよい。例えば、リード16は、遠位端と胸骨22の下を剣状突起から上方へ延びるリード本体部分の長さに沿った或る点との間に位置する1つ又はそれ以上の箇所で定着されていてもよい。1つ又はそれ以上の定着機構は、過度の運動若しくは押し退けを予防するようにリードを固着するに当たり、患者12の筋膜、筋肉、又は組織に係合するか又は単にそこに楔止めされるかのどちらかであってもよい。定着機構はリード本体へ一体化されていてもよい。代わりの実施形態では、定着機構はリード本体と一列に並んで形成されている個別要素であってもよく、例えば、螺旋、剛性尖叉、プロング、逆棘、クリップ、ねじ、及び/又は他の突出要素、又はフランジ、円盤、曲げやすい尖叉、フラップ、係合のための組織成長を促進するメッシュ様要素の様な多孔質構造体、生体接着性面、及び/又は何れかの他の非穿刺要素、などであってもよい。追加的又は代替的に、リードは患者の剣状突起進入部位の筋肉組織、組織、又は骨へリードを固定的に留め付ける縫合糸を通じて(例えば定着用スリーブを使用して)定着されてもよい。幾つかの実施形態では、縫合糸は事前に形成されている縫合糸孔を通して患者へ縫い付けられてもよい。
【0029】
[0037]
図1A−
図1Cに示されている実施例は、本質的に例示であり、本開示に記載されている技法を限定するものと考えられてはならない。他の実施例では、ICD14及びリード16は他の場所に植え込まれてもよい。例えば、ICD14は右胸筋領域の皮下嚢部に植え込まれてもよい。この実施例では除細動リード16は皮下的に装置から胸骨22の胸骨柄に向かって延び、曲がるか又は向きを変え、胸骨下/下側を胸骨柄から下方へ所望場所まで延びることになる。更に別の実施例では、ICD14は腹部設置されることもある。
【0030】
[0038]
図1に示されている実施例では、システム10はカーディオバージョン/除細動及びペーシング療法を提供するICDシステムである。また一方、これらの技法は、心臓再同期療法除細動器(CRT−D)システム又は他の心刺激療法又はそれらの組合せを含む他の心臓関連システムへ応用可能であろう。例えば、ICD14は、一例として様々な神経心臓関連用途及び/又は無呼吸療法又は呼吸療法につき、神経、骨格筋、横隔膜筋を刺激する電気刺激パルスを提供するように構成されていてもよい。別の実施例として、リード16は除細動電極24が実質的に心臓26の心房の上に設置されるように更に上方に設置されてもよい。この場合にはシステム10は心房細動(AF)を終止させるためのショック又はパルスを提供するように使用されることになる。
【0031】
[0039]加えて、留意するべきこととして、システム10はヒト患者の治療に限定されるものではない。代わりの実施例では、システム10は、ヒト以外の患者、例えば、霊長類、イヌ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシ、及びネコに実施することができる。これらの他の動物には本開示の主題から恩恵を受ける臨床学的又は研究的な療法が施されることもあろう。
【0032】
[0040]
図2は、一例としてのICD14の電子的構成要素の構成例の機能ブロック線図である。ICD14は、制御モジュール60、感知モジュール62、療法モジュール64、通信モジュール68、及びメモリ70を含んでいる。電子的構成要素は、充電式又は非充電式のバッテリであってもよいパワー源66からパワーを受け取ることができる。他の実施形態ではICD14はより多い又はより少ない電子的構成要素を含んでいることもある。説明されているモジュールは、共通のハードウェア構成要素上にまとめて実装されていてもよいし、個別ではあるが相互動作できるハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素として別々に実装されていてもよい。異なる機構をモジュールとして描写しているのは、異なる機能的態様を強調表示することを意図したものであり、必ずしもその様なモジュールが別々のハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを示唆するものではない。そうではなく1つ又はそれ以上のモジュールと関連付けられている機能性は、別々のハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素によって遂行されていてもよいし、共通の又は別々のハードウェア構成要素又はソフトウェア構成要素内に統合されていてもよい。
【0033】
[0041]感知モジュール62は、電極24、電極28、及び電極30の幾つか又は全てへリード16の伝導体及び1つ又はそれ以上の電気的フィードスルーを介して電気的に連結されているか、又はハウジング電極へICD14のハウジングの内在伝導体を介して電気的に連結されている。感知モジュール62は、電極24、電極28、及び電極30とICD14のハウジング電極の1つ又はそれ以上の組合せを介して感知される信号を取得するように、及び取得された信号を処理するように、構成されている。
【0034】
[0042]感知モジュール62の構成要素は、アナログ構成要素、デジタル構成要素、又はそれらの組合せとすることができる。感知モジュール62は、例えば、1つ又はそれ以上の感知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、アナログ対デジタル変換器(ADC)、など、を含んでいてもよい。感知モジュール62は、感知信号をデジタル形式ヘ変換し、デジタル信号を処理又は分析のために制御モジュール60へ提供することができる。例えば、感知モジュール62は、感知電極からの信号を増幅し、増幅された信号をADCによってマルチビットデジタル信号へ変換するようになっていてもよい。感知モジュール62は、更に、処理された信号を閾値と比較して心房脱分極又は心室脱分極(例えばP波又はR波)の存在を検出し、心房脱分極(例えばP波)の存在又は心室脱分極(例えばR波)の存在を制御モジュール60へ指し示すようになっていてもよい。
【0035】
[0043]制御モジュール60は、患者12の心臓26の電気的活動を監視するため感知モジュール62からの信号を処理することができる。制御モジュール60は、感知モジュール62によって取得された信号はもとより、何れかの生成されたEGM波形、マーカーチャネルデータ、又は感知信号に基づいて導出された他のデータを、メモリ70に記憶することができる。制御モジュール60は、EGM波形及び/又はマーカーチャネルデータを分析して心臓事象(例えば頻拍)を検出することもある。心臓事象を検出したことに応えて、制御モジュール60は療法モジュール64を制御して当該心臓事象を治療するための所望の療法、例えば、除細動ショック、カーディオバージョンショック、ATP、ショック後ペーシング、徐脈ペーシング、を送達させることができる。
【0036】
[0044]療法モジュール64は、電気刺激療法を生成し心臓26へ送達するように構成されている。療法モジュール64は、1つ又はそれ以上のパルス生成器、コンデンサ、及び/又はペーシング療法、除細動療法、カーディオバージョン療法、心臓再同期療法、他の療法、又はそれら療法の組合せ、として送達するためのエネルギーを生成及び/又は保存する能力のある他の構成要素、を含んでいてもよい。幾つかの事例では、療法モジュール64は、ペーシング療法を提供するように構成されている構成要素の第1のセットと、除細動療法を提供するように構成されている構成要素の第2のセットと、を含むことができる。他の事例では、療法モジュール64は構成要素の同じセットを利用してペーシング療法と除細動療法の両方を提供するようになっていてもよい。更に他の事例では、療法モジュール64は、除細動療法構成要素とペーシング療法構成要素の一部を共有し、一方で他の構成要素は除細動専用又はペーシング専用として使用していてもよい。
【0037】
[0045]制御モジュール60は、療法モジュール64を制御して、メモリ70に記憶されている1つ又はそれ以上の療法モジュールに従って電極24、電極28、及び電極30とICD14のハウジング電極の1つ又はそれ以上の組合せを介して、生成された療法を心臓26へ送達させることができる。制御モジュール60は、療法モジュール64を制御して、選択された療法プログラムによって指定される振幅、パルス幅、タイミング、周波数、電極組合せ、又は電極構成を用いて電気刺激療法を生成させる。
【0038】
[0046]ペーシング療法、例えば、ATP、ショック後ペーシング、及び/又は徐脈ペーシングがリード16の電極28及び/又は電極30を介して提供される場合に、制御モジュール60は療法モジュール64を制御して、数々の形状、振幅、パルス幅、又は心臓26を捕捉するための他の特性のうちの何れかを有するペーシングパルスを生成させ送達させる。例えば、ペーシングパルスは、単相性、二相性、又は多相性(例えば三相以上)であってもよい。ペーシングパルスを胸骨下空間から送達する場合、例えば実質的に前縦隔36内の電極28及び/又は電極30から送達する場合の心臓26のペーシング閾値は、電極28及び電極30の場所、型式、サイズ、配置向き、及び/又は間隔取り、電極28及び電極30に対するICD14の場所、心臓26の物理的異常(例えば心膜癒着又は心筋梗塞)、又は他の(単数又は複数の)要因、を含む数多くの要因に依存することになろう。
【0039】
[0047]リード16の電極28及び/又は電極30から心臓組織までの距離が増加すれば、結果的に心臓26は経静脈ペーシング閾値に比べて増加したペーシング閾値を有することになる。このため、療法モジュール64は、従来式に心臓内に植え込まれたリード(例えば経静脈リード)又は心臓26へ直接付着されたリードを介して捕捉を取得するのに必要とされるより大きい振幅及び/又はパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。1つの実施例では、療法モジュール64は、8ボルト以下の振幅及び0.5−3.0ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達することができる。別の実施例では、療法モジュール64は、5ボルトから10ボルトの間の振幅及び大凡3.0ミリ秒から10.0ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達することができる。別の実施例では、療法モジュール64は、大凡2.0ミリ秒から8.0ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達することができる。更なる実施例では、療法モジュール64は、大凡0.5ミリ秒から20.0ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達することができる。別の実施例では、療法モジュール64は、大凡1.5ミリ秒から20.0ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達することができる。
【0040】
[0048]従来の経静脈ペーシングパルスより長いパルス持続時間を有するペーシングパルスは、より低いエネルギー消費量をもたらすことができる。そいうものとして療法モジュール64は2ミリ秒より大きいパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。別の実施例では、療法モジュール64は2ミリ秒より大きく且つ3ミリ秒以下のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。別の実施例では、療法モジュール64は3ミリ秒以上のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。別の実施例では、療法モジュール64は5ミリ秒以上のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。別の実施例では、療法モジュール64は10ミリ秒以上のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。更なる実施例では、療法モジュール64は大凡3−10ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。更なる実施例では、療法モジュール64は15ミリ秒以上のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。更に別の実施例では、療法モジュール64は20ミリ秒以上のパルス幅又は持続時間を有するペーシングパルスを生成し送達するように構成されていてもよい。
【0041】
[0049]パルス幅に依存して、ICD14は、20ボルト以下のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように、10ボルト以下のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように、5ボルト以下のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように、2.5ボルト以下のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように、1ボルト以下のパルス振幅を有するペーシングパルスを送達するように、構成されていてもよい。他の実施例では、ペーシングパルス振幅は20ボルトより大きいこともある。実験結果に示されている様に、典型的に、より低い振幅はより長いペーシング幅を必要とする。ICD14によって送達されるペーシングパルスの振幅の縮小は、心外刺激の公算及びパワー源66の低エネルギー消費を引き下げる。ペーシングの振幅及び幅の幾つかの例としての組合せを描いている幾つかの実験結果が後段に提供されている。
【0042】
[0050]カーディオバージョン療法又は除細動療法である例えばカーディオバージョンショック又は除細動ショックがリード16の除細動電極24によって提供される場合に、制御モジュール60は療法モジュール64を制御して、リーディングエッジ電圧、チルト、送達エネルギー、パルス位相、など、を含む数多くの波形特性のうちの何れかを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成させる。療法モジュール64は、例えば、単相性、二相性、又は多相性の波形を生成するようになっていてもよい。追加的に、療法モジュール64は、異なるエネルギー量を有するカーディオバージョン波形又は除細動波形を生成するようになっていてもよい。ペーシングの場合と同じく、カーディオバージョンショック又は除細動ショックを胸骨下空間から送達すること、例えば実質的に前縦隔36内の電極24から送達することで、心臓26を細動除去するのに送達する必要のあるエネルギー量を軽減することができる。1つの例として、療法モジュール64は80J未満のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。別の例として、療法モジュール64は65J未満のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。1つの例として、療法モジュール64は60ジュール(J)未満のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。幾つかの事例では、療法モジュール64は40−50Jの間のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。他の事例では、療法モジュール64は35−60Jの間のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。更に他の事例では、療法モジュール64は35J未満のエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達することができる。他方、皮下ICDシステムは、約80Jのエネルギーを有するカーディオバージョンショック又は除細動ショックを生成し送達する。除細動リード16を胸骨下空間内に例えば遠位部分が実質的に前縦隔36内に来るようにして設置することは、エネルギー消費量軽減化をもたらし、ひいてはより小型の装置及び/又は増加した寿命を有する装置をもたらすことになる。
【0043】
[0051]療法モジュール64は、更に、異なるチルトを有する除細動波形を生成してもよい。二相性の除細動波形の場合には、療法モジュール64は65/65チルト、50/50チルト、又は他のチルト組合せを使用することができる。二相性又は多相性の波形の各位相へのチルトは幾つかの事例では同じであり、例えば65/65チルトであってもよい。また一方、他の事例では、二相性又は多相性の波形の各位相へのチルトは異なっており、例えば、第1の位相は65チルトで第2の位相は55チルトであってもよい。一例としての送達エネルギー、リーディングエッジ電圧、位相、チルト、などは、例示のみを目的に提供されており、除細動電極24を介した胸骨下除細動を提供するのに利用され得る波形特性の型式を限定するものと考えられてはならない。
【0044】
[0052]通信モジュール68は、臨床医プログラマ、患者監視装置、など、の様な別の装置と通信するための何れかの適したハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの何れかの組合せ、を含んでいる。例えば、通信モジュール68は、アンテナ72の支援を受けてデータを送信及び受信するのに適切な変調部構成要素、復調部構成要素、周波数変換部構成要素、フィルタ処理部構成要素、及び増幅器構成要素を含んでいてもよい。アンテナ72はICD14のコネクタブロック内又はハウジングICD14内に配置させることができる。
【0045】
[0053]ICD14の各種モジュールは、何れかの1つ又はそれ以上のプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はアナログ回路機構又はデジタル回路機構又は論理回路機構を含む同等の離散型又は集積型回路機構、を含んでいてもよい。メモリ70は、制御モジュール60又はICD14の他の構成要素によって実行されるとICD14の1つ又はそれ以上の構成要素に本開示でのそれら構成要素に帰属する様々な機能を遂行させるコンピュータ可読命令を含んでいてもよい。メモリ70は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、スタティック不揮発性RAM(SRAM)、電子的消去可能プログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、又は何れかの他の非一時的コンピュータ可読記憶媒体の様な、何れの揮発性、不揮発性、磁気式、光学式、又は電気式の記憶媒体を含んでいてもよい。
【0046】
[0054]
図3は、
図1A−
図1CのICDシステム10の様な胸骨下ICDシステムの一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、ICD14は、リード16の電極28及び/又は電極30を使用して形成される1つ又はそれ以上の感知ベクトルからの感知電気信号を分析して、心室頻拍又は心室細動の様な頻拍を検出する(90)。
【0047】
[0055]ICD14は、ATPペーシングパルスのシーケンスを、実質的に前縦隔36内に植え込まれている遠位部分を有するリード16の電極28又は電極30の少なくとも1つを含んでいる療法ベクトルを介して送達する(92)。ICD14は、当該ATPペーシングパルスのシーケンスを心臓26へ、電極28と電極30のうちの一方又は両方とICD14のハウジング電極との何れかの組合せを含むペーシングベクトルを介し、例えば二相性又は単相性のペーシングベクトルを介して、送達することができる。上述されている様に、ICD14によって提供されるペーシングパルスは、従来のペーシングパルスより長いパルス幅を有することができる。例えばICD14は2ミリ秒より大きいパルス幅を有するペーシングパルスを送達するように構成されていてもよい。他の事例では、ICD14は3ミリ秒から10ミリ秒の間のパルス幅を有するペーシングパルスを送達するように構成されていてもよい。パルス幅、また同様にペーシング振幅、頻度、パルスの数、など、並びに特性の様々な組合せ、の他の範囲がここに更に詳細に説明されている。
【0048】
[0056]幾つかの事例では、ICD14は特定の型式の頻拍に対してのみATPを送達するように構成されていてもよい。ICD14は、例えば、当技術で知られている数々の技法の何れかを使用してVTとVFを見分け、頻拍がVTである場合にのみATPを提供するようになっていてもよい。頻拍がVFであるなら、ICD14はATPを提供せず代わりに除細動療法又はカーディオバージョン療法だけを送達するように構成されていてもよい。
【0049】
[0057]当該ATPペーシングパルスのシーケンスの送達後、ICD14は頻拍が終止したかどうかを判定する(94)。ICD14は、例えば、直近に感知された心臓の活動を分析して、当該ATPペーシングパルスのシーケンスが頻拍を終止させたかどうかを判定する。ICD14が頻拍は終止したと判定した場合(ブロック94の「イエス」分枝)、ICD14は頻拍療法を終了し、感知電気信号を分析する段階へ戻る(96)。
【0050】
[0058]ICD14が頻拍は終止していないと判定した場合(ブロック94の「ノー」分枝)、ICD14はATPペーシングパルスの追加のシーケンスを提供してゆくかどうかを判定する(98)。ICD14は、例えば、ATPペーシングパルスの2つ又はそれ以上のシーケンスから成るATP療法を送達するように構成されている。ICD14がATPペーシングパルスの追加のシーケンスを提供しようと判定した場合(ブロック98の「イエス」分枝)、ICD14は、ATPペーシングパルスの第2のシーケンスを実質的に前縦隔36内に植え込まれている遠位部分を有するリード16の電極28又は電極30の少なくとも一方を介して送達する(92)。ペーシングパルスの第2のシーケンスは第1のシーケンスと同じであってもよい。代わりに、ペーシングパルスの第2のシーケンスは第1のシーケンスと異なっていてもよい。例えば、第1のパルスシーケンス及び第2のパルスシーケンスのATPパルスは、限定するわけではないが、異なるペーシング振幅、パルス幅、頻度、療法ベクトル、及び/又はペーシングパルス間のばらつき、を含む1つ又はそれ以上の異なる特性を有していてもよい。
【0051】
[0059]ICD14がATPペーシングパルスの追加のシーケンスは提供しないと判定した場合(ブロック98の「ノー」分枝)、ICD14は、除細動ショック又はカーディオバージョンショックを、前縦隔36内に少なくとも部分的に植え込まれているリード16の除細動電極24を含んでいる療法ベクトルを介して送達する(99)。
【0052】
実験
[0060]ブタを使い動物を背殿位にして3通りの急性処置を遂行した。切開を剣状突起付近に作り、型番4194リードを胸骨下/胸骨後方空間へ6996Tトンネリング用具及びシースを使用して送達した。能動的缶型エミュレータ(ACE:active can emulator)を右胸(第1の急性実験)又は左中腋窩(第2及び第3の急性実験)の何れかの皮下嚢部に設置した。様々なペーシング構成を試し、異なった機種を刺激供給源として使用した。ペーシングパルス送達には複数のパルス幅を使用した。それら実験に亘って、幾通りかの異なる胸骨下/胸骨後方リード電極場所を利用した。
【0053】
[0061]第2の実験及び第3の実験では、リードを胸骨の下の幾つかの場所へ移し、データを収集して各場所の強度−持続時間曲線を生成することによって、リード場所の電気的性能への影響力を調べた。
【0054】
[0062]全3通りの急性実験では、胸骨下/胸骨後方リードを設置し、電気的データを収集した。低いペーシング閾値での心臓捕捉に最も適している場所をより深く理解するために複数の実験に亘ってリードを意図的に何度も動かし、異なる場所及び異なるパラメータをペーシング能力が得られそして失われるまで試していった。場所及びペーシング構成に基づく閾値範囲を記録した。こういう訳で、各急性実験についての最も低い閾値結果を報告しており、強度−持続時間曲線は適するペーシング場所から取得されたペーシング値の範囲を示している。全ての事例で、胸骨下/胸骨後方ペーシング電極を心陰影の心室のほぼ上に位置決めすることが最良の結果をもたらす、ということが突き止められた。
【0055】
実験1
[0063]第1の急性研究では、メドトロニック・アテイン(MEDTRONIC ATTAIN)双極OTW4194リードを胸骨下/胸骨後方に植え込み、2つの能動缶型エミュレータを右背外側領域(ACE1)に1つと右中腋窩(ACE2)に1つ位置決めした。4194リードは、リード先端及びリード本体を胸骨の長さに平行に走らせた状態で、胸骨の下側、縦隔に直接植え込んだ。様々なペーシング構成を試し、電気的データを収集した。
【0056】
[0064]最も小さい閾値は、胸骨下/胸骨後方4194リードの先端からACE1へのペーシング(10msパルス幅及び刺激供給源としてフレデリックヘア(Frederick Heir)機器)の場合に観測された0.8ボルトであった。より小さいパルス幅を使用して捕捉することも可能であったが閾値はパルス幅が短くなるにつれて増加した(bpアイソレータを用いたこの同じ構成の2msでの1.5Vはここに「フレデリックヘア刺激装置」と呼称されているFHC製品#74−65−7によって出されている)。多くの追加の低閾値(1−2ボルト)が、異なるペーシング構成及びパルス持続時間を用いて取得された。
【0057】
[0065]
図4は、第1の急性研究中に様々なパルス幅で取得された捕捉閾値を示す強度−持続時間曲線を描いている。全ての構成は胸骨下/胸骨後方に植え込まれた4194リードの先端か又はリングの何れか(−)から2つの能動缶型エミュレータの1つ(+)へのペーシングであったことに留意されたい。1つの事例では、
図4の凡例に注記されている様に大型スペード電極を(型番4194リードに代えて)胸骨下/胸骨後方電極として使用した。
【0058】
[0066]示されている様に、幾通りかのペーシング構成及びペーシングパラメータを試した。上記グラフに報告されているそれら構成に亘って、閾値数値は0.8ボルトから5.0ボルトの範囲にあり、閾値は概してパルス幅が短くなるにつれ増加した。2〜3の事例で1.5msパルス幅での閾値が2.0msでの閾値より小さかった。1.5msで取得された閾値は常にメドトロニック2290分析器を刺激供給源として使用して記録されたものであるのに対し、第1の急性実験についての(パルス幅2ms、10ms、15ms、及び20msでの)全ての他の閾値測定値はフレデリックヘア機器を刺激供給源として使用して取得されたものであることに注目されたい。これらの2つの機器の相違が同様のパルス幅(1.5ms及び2ms)での閾値数値の差の主な原因であろう。
【0059】
[0067]全般に、第1の急性実験は胸骨下/胸骨後方ペーシングの実現可能性を、数通りの異なるペーシング構成及びパラメータを使用しながら小さい捕捉閾値(平均=2.5±1.2ボルト)を現出させることによって実証した。
【0060】
実験2
[0068]第2の急性実験を行った。但し、第2の急性では、動物は心膜が胸骨へ癒着した状態を呈した。心膜癒着に因り心陰影の心室面が胸骨から離れて回転―解剖学的差異がこの実験全体を通してより高い閾値を生じさせたのかもしれない。
【0061】
[0069]先の急性実験と同じく型番4194リードを胸骨の下に設置した。能動缶型エミュレータを左中腋窩に設置した。4194の先端乃至リング部分を、蛍光透視法によって観測しながら、心室の心陰影の上に位置決めし、この位置を
図5に示されている強度−持続時間グラフ上に「位置A」と表記した。最終的にはリードは刺激中に(なおも胸骨の下で)極僅かな距離だけ剣状突起寄りに移動し「位置B」に至り、同様にこの位置からも追加の電気的測定値を取得するのに成功した。
【0062】
[0070]第2の急性実験で観測された最も小さい閾値は、第1のリード位置での胸骨下/胸骨後方4194リング電極(−)から左中腋窩のACE(+)へのペーシング(5ms、15ms、及び20msのパルス幅、フレデリックヘア刺激装置)の場合に取得された7Vであった。加えて、リードを第2の解剖学的位置に配した状態で、4194先端からACEへの(単極)構成及び4194先端からリングへの(双極)構成の両方について、複数のパルス幅で、8ボルト及び9ボルトという閾値が取得された。チャートからはみ出している様に見える2つの線は無捕捉の事例であった。
【0063】
[0071]
図5に報告されている電気的数値全ては、フレデリックヘア機器を刺激供給源として用いて収集した。単極ペーシング構成での取得された電気的測定値の多くで心外刺激が観測された。双極構成(4194先端からリングへ)でのペーシング時には顕著な心外刺激は何も観測されなかったが、動物の胸部に手を当てた状態で低レベルの刺激を感じることができた。
【0064】
実験3
[0072]胸骨下/胸骨後方ペーシングの実現可能性を実証する第3の最終的な急性実験を行なった。先の2つの急性実験と同じく4194リードを胸骨の下に設置した。能動缶型エミュレータを左中腋窩へ設置した。この実験では胸骨下/胸骨後方4194リードを意図的にリード先端が当初は心室の心陰影のはるか上方、第2肋骨付近に来るように位置決めした。次いでリード先端を(剣状突起に向かって)一度に肋骨空間1つ分ずつ引き戻し、各位置で電気的データを収集していった。先の実験と同じく、低い捕捉閾値は、ペーシング電極を蛍光透視法により観測して心陰影の心室面のほぼ上に位置決めしたときに取得された。リード先端が心陰影の心室面の上になっていないときは多くの場合「無捕捉」となった。
【0065】
[0073]先の実験と同じくペーシングを胸骨下/胸骨後方4194リードの先端か又はリングの何れか(−)から左中腋窩のACE(+)へ遂行した。但し、この急性実験では、更に皮下ICDリードを(
図1A−
図1Cに描かれ説明されている)その皮下配列に位置決めした。幾つかの事例では、ペーシング構成を胸骨下/胸骨後方4194リードの先端か又はリングの何れか(−)から皮下ICDリードのリングか又はコイルの何れか(+)へとし、よってACEではなくICDリードを不関電極とした。
【0066】
[0074]実験に亘って観測された最も小さい閾値は、リードをリード先端電極が大凡第6肋骨の下となるように位置決めしたときの胸骨下/胸骨後方4194先端電極(−)から左中腋窩のACE(+)へのペーシング(20msパルス幅、フレデリックヘア刺激装置)時に取得された0.8Vであった。多くの追加の低閾値が、異なるペーシング構成、より短いパルス持続時間、及び異なるリード位置を用いて取得されており、これらの場合も同様に胸骨下/胸骨後方ペーシングの実現可能性が実証された。顕著な心外刺激は概して低い閾値測定値(長いパルス持続時間)では観測されなかったが、高い閾値で観測された。
【0067】
[0075]リードの位置3−位置5についての強度−持続時間曲線を各場所についての収集された電気的データの全幅に因る個別のグラフで
図5−
図7に提示している。2290分析器を刺激の供給源に用いて行った測定に注目したい。他の電気的測定はフレデリックヘア機器を刺激供給源に用いて行った。
【0068】
[0076]
図6は、4194リード先端を胸骨の下の第4肋骨の場所付近に位置決めした場合の第3の急性実験からの電気的データの強度−持続時間曲線を描いている。幾つかの療法ベクトルは概してパルス幅がかなり長い場合に低いペーシング閾値をもたらした。より短いパルス幅では閾値は増加した。
【0069】
[0077]
図7は、4194リード先端を胸骨の下の第5肋骨の場所付近に位置決めした場合の第3の急性実験からの電気的データの強度−持続時間曲線を描いている。0.2msでチャートからはみ出している様に見える2つの線は無捕捉の事例であった。
図7は胸骨下/胸骨後方リードの位置依存性を実証している。閾値はこの解剖学的場所(リード先端が第5肋骨付近)では全体として高目であったが捕捉はなお可能であり、また閾値は4194リング(−)からACE(+)への構成ではどちらかというと低かった(20msで2ボルト)。概して有意な心外刺激は観測されなかったが、但し4194先端(−)からACE(+)への構成での0.2ms及び0.5msのパルス幅の場合及び4194リード(−)から皮下ICDリードのコイルへ進む単極構成での1.5ms及びそれより短いパルス幅の場合を別にしてということであり、それらの場合は何れもこのリード位置での最も高い記録閾値示度を生じさせた。
【0070】
[0078]
図8は、4194リード先端が胸骨の下の第6肋骨の場所付近に位置決めされた場合の第3の急性実験からの電気的データの強度−持続時間曲線を示している。
図8は、胸骨下/胸骨後方電極の位置依存性を示している。ペーシング電極を蛍光透視法を介し観測しながら最適にも心陰影の心室面の上に位置付けた場合、ペーシング閾値は低くなっている。低い閾値は、この解剖学的場所では、より短いパルス持続時間であっても多くの異なるペーシング構成で再現性が非常に良かった。心外刺激は概してこの実験全体を通して低い閾値及びより長いパルス持続時間では顕在しなかった。
【0071】
[0079]全3つの急性実験は、胸骨下/胸骨後方電極場所からのペーシングの実現可能性を実証した。3つの急性処置に亘る最も低い閾値結果は、それぞれ0.8ボルト、7ボルト、及び0.8ボルトであり、第2の急性処置には解剖学的差異(心膜癒着)が関与しており、それが心臓の心室面を胸骨に関するその正常な配置向きから離れて傾かせ、結果的にペーシング閾値を高くしてしまった。しかしながら、抗頻拍ペーシング目的では、従来の装置はATP療法送達について極大出力(1.5msで8ボルト)へデフォルトするのが典型である。このことを考慮すると、第2の急性実験で取得された7V閾値でさえATP療法にとっては満足のゆくものではなかろうか。
【0072】
[0080]心臓を低いペーシング閾値で捕捉できるという能力は電極位置に依存していた。これらの実験を通して観測された様に、胸骨下/胸骨後方ペーシング電極は、蛍光透視法を介して容易に観測されリード設置にとって合理的に広い標的面積を包含する心陰影の心室面のほぼ上に位置決めされたときに最良の成果を提供する。第3の急性実験では、例えば、捕捉は3通りの別々の位置でリード先端を大凡第4肋骨、第5肋骨、及び第6肋骨に配して実現されており、それら位置はどれも心陰影の心室面付近であった。
【0073】
[0081]ペーシング閾値は、より短いパルス持続時間で増加した。また一方、多くの事例では、低いペーシング閾値は短いパルス幅のときでさえ取得されており、特に胸骨下/胸骨後方ペーシング電極が心陰影の心室面の上に位置決めされた場合に取得されている。他の事例では、捕捉を取得する又はより低い捕捉閾値を実現するには、より長いパルス持続時間(10−20ms)が必須であった。
【0074】
[0082]実験に亘って、胸骨下/胸骨後方リードから動物の横腹付近に位置決めされた能動缶型エミュレータへペーシングすること(単極)、また同様に胸骨下/胸骨後方リードから皮下ICDリードへペーシングすること(単極)が可能であった。皮下ICDシステムが、抗頻拍ペーシングの目的で胸骨下/胸骨後方に設置されるペーシングリードを組み込んだなら、上記単極ペーシング構成の両方が医師にとっての選択肢として利用可能となろう。
【0075】
[0083]これらの実験は、更に、全体が胸骨の下になっている双極構成で(胸骨下的/胸骨後方的に4194先端(−)から4194リング(+)へ)ペーシングすることが可能であることを実証しており、胸骨の下に位置決めされたどちらかの双極リードを抗頻拍ペーシング目的に使用でき得ることが指し示された。
【0076】
[0084]総じて、これらの急性実験の結果は、リードを脈管構造又は心膜空間へ進入させもせず心臓と密接に接触させもせずに胸骨下/胸骨後方の場所から心臓をペーシングすることが可能であることを実証した。これらの急性実験での胸骨下/胸骨後方リード場所からのペーシング時に取得された低い閾値は、皮下ICDシステムでの抗頻拍ペーシングを目的とした無痛ペーシングが達成可能範囲にあることを示唆している。
【0077】
[0085]様々な実施例を説明してきた。これら及び他の実施例は付随の特許請求の範囲の内にある。