特許第6473152号(P6473152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーションの特許一覧

特許6473152がん関連悪液質を抑制するためのHDAC阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473152
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】がん関連悪液質を抑制するためのHDAC阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20190207BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20190207BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   A61K31/167
   A61P3/00
   A61P43/00 105
【請求項の数】15
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-530241(P2016-530241)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-537356(P2016-537356A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014066435
(87)【国際公開番号】WO2015077353
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/906,738
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/547,771
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193437
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 義和
(72)【発明者】
【氏名】チン シー チェン
(72)【発明者】
【氏名】タニオス ベカイー サーブ
(72)【発明者】
【氏名】デニス ガットリッジ
(72)【発明者】
【氏名】グイド マルクッチ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル カルプ
(72)【発明者】
【氏名】ユ チョウ ツェン
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/147868(WO,A1)
【文献】 特開2006−290863(JP,A)
【文献】 PLos ONE,2010年,Vol.5, No.6, e10941,p.1-10
【文献】 Journal of Clinical Oncology,2009年,Vol.27, No.32,p.5459-5468
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/167
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ん哺乳動物の重量を、HDAC阻害剤AR-42を与えない哺乳動物と比較し実質的に維持するのに効果的な量の、がん哺乳動物の悪液質を抑制する医薬の製造のためのHDAC阻害剤AR-42の使用。
【請求項2】
前記哺乳動物の重量が、AR-42での処置後最初の約15日後に約6%超減少することはない、請求項1に記載の使用
【請求項3】
前記がんが、膵臓、結腸、頭部、頸部、胃、および食道からなる群より選択される、請求項1に記載の使用
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の使用
【請求項5】
AR-42を前記哺乳動物の約1mg/kg〜約100mg/kgの量で投与する、請求項1に記載の使用
【請求項6】
AR-42を一日に少なくとも1回投与する、請求項5に記載の使用
【請求項7】
AR-42を前記哺乳動物の約50mg/kgの量で一日に2回投与する、請求項6に記載の使用
【請求項8】
IL-6レベルがAR-42を与えない哺乳動物と比較し約56%低減する、請求項1に記載の使用
【請求項9】
LIFレベルがAR-42を与えない哺乳動物と比較し約88%低減する、請求項1に記載の使用
【請求項10】
Atrogin-1 mRNAの発現がAR-42を与えない哺乳動物と比較し基礎値まで回復する、請求項1に記載の使用
【請求項11】
MuRF1 mRNAの発現がAR-42を与えない哺乳動物と比較し基礎レベルまで回復する、請求項1に記載の使用
【請求項12】
悪液質が誘発するIL-6Ra mRNAレベルの増加が、AR-42を与えない哺乳動物と比較し約85%減少する、請求項1に記載の使用
【請求項13】
悪液質が誘発する脂肪組織の減少が、AR-42を与えない哺乳動物と比較し実質的に回復する、請求項1に記載の使用
【請求項14】
悪液質が誘発する骨格筋線維サイズの縮小が、AR-42を与えない哺乳動物と比較し実質的に回復する、請求項1に記載の使用
【請求項15】
なくとも15日という期間で、HDAC阻害剤AR-42を与えない哺乳動物と比較しがん哺乳動物の骨格筋重量の少なくとも約90%を維持するのに効果的な量の、がん哺乳動物の骨格筋重量を維持する医薬の製造のためのHDAC阻害剤AR-42の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年11月20日出願の米国仮特許出願第61/906,738号の優先権を主張する。上記参考出願は、全体を再記述するかのように、参考として本明細書に組み込まれる。特許および特許出願を含むが、それに限定されない本明細書で引用する全ての参考文献は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がん関連悪液質とは、がん患者における筋量の低下、疲労、衰弱、および食欲の低下に関連した消耗状態のことである。悪液質は筋衰弱を含む重篤な臨床結果にも関連し、これは歩行困難および肺合併症を招き得る。悪液質はがん患者の死の主な要因である。
【0003】
悪液質は骨格筋量の減少を特徴とし、これは標準的な栄養補給で食い止めることはできず、患者の罹患率および死亡率に深刻な影響を与える、顕著な体重低下につながる。それは、胃がん、膵臓がん、および食道がんの患者の80%に、頭頸部がんの患者の70%に、ならびに、肺がん、大腸がん、および前立腺がんの60%に起きる。例えば、Muscle (2012) 3, 245-51を参照のこと。悪液質のがん患者の死亡率への影響力をよそに、悪液質の進行を防ぐ、または、遅らせる効果的な治療は開発されてこなかった。例えば、初期段階の患者を含む膵臓がん患者の85%超は、病前の体重の平均14%が減ると推測されている。例えば、BMC Cancer. 2010 Jul 8;10:363を参照のこと。悪液質の膵臓がん患者はしばしば衰弱し、疲れ、治療に対する耐性はより低く、手術に対する転帰はより悪い。その結果として、悪液質は膵臓がんにおける死の主なドライバとなる。悲しいことに、膵臓がんの5年生存率はここ40年の間6%のままであり、これは全ての悪性腫瘍のうち最も低い。
【0004】
悪液質の要因およびその骨格筋に対する影響を特定するための新しいツールの出現で、悪液質の分野は最近、がんおよび他の慢性疾患での筋委縮を調節する発症機序を理解することにおいて大きく進歩した。結果として、我々は現在、サイトカインおよび全身性炎症が、筋原線維の内部から機能する主要なシグナル伝達経路に作用することにより、如何にして筋委縮を調節するかについて理解している。しかしながら、これらの発見を効果的な療法に変換することは難しく、本明細書に記載の態様以前に悪液質に対する効果的な処置はなかった。
【0005】
骨格筋量は部分的に、タンパク質調節に対するタンパク質合成の相対比率により調節される。Alamdari, Nら(Acetylation and deacetylation - novel factors in muscle wasting, Metabolism. Jan 2013; 62(1): 1-11)を参照のこと。骨格筋量の減少は、タンパク質分解の速度がタンパク質合成より速い場合に起きる(同書)。タンパク質のアセチル化およびデアセチル化は転写因子と遺伝子転写を調整し、これはタンパク質を分解しやすくする、または、分解しにくくすることにより、筋量に影響を及ぼし得る(同書)。ヒストンアセチラーゼ(HAT)およびヒストンデアチラーゼ(HDAC)は、タンパク質のアセチル化およびデアセチル化の調節において役割を果たす。
【0006】
しかしながら、筋消耗および悪液質に対するこれらの分子の影響は、相反することが分かっている。証拠が、例えば、HDAC阻害剤(例えば、トリコスタチンA(TSA))の使用は、筋消耗および悪液質の増大につながるタンパク質分解を増大し得る、高アセチル化をまねくことを示唆する。相反する結果がNarverら(Sustained improvement of spinal muscular atrophy mice treated with trichostatin A plus nutrition. Ann Neurol. 2008;64:465-70)により発見されたが、これらの結果は、TSAでの処置は積極的な栄養補給も伴うことから疑問がもたれている。[0005]のAlamdariらを参照のこと。したがって、HDAC阻害剤は、悪液質を低減するより増大すると考えられていたか、または、その使用は矛盾し相反する結果をもたらしていた。
【0007】
がん悪液質の発症と進行は、筋組織の腫瘍に対する複雑で多元的な病態生理学的反応により引き起こされる。これまで、悪液質の患者における筋消耗の進行を防ぐ、または、阻むのに使用可能であるFDAに認証された治療はない。これまで、悪液質の病因の種々の態様を標的にしたいくつかの被験薬が人体試験を受けたが、臨床転帰は異なった。例えば、Novartis社のBYM38(bimagrumab)、つまり、ミオスタチンとアクチビンがタイプIIアクチビン受容体へ結合することをブロックするmAbは、FDAの画期的治療薬指定を受けたが、GTx社の筋消耗薬であるenobosarm、つまり、選択的アンドロゲン受容体モジュレータは後期臨床試験で落ちた。
【0008】
コアヒストンのアセチル化は、DNAのヌクレオソームパッケージングを制御することで、遺伝子転写の調節において重要な役割を果たす。ヒストンのデアセチル化は、転写因子のDNA標的に対するアクセスを制限することにより、ヌクレオソームの密なパッケージングおよび転写抑制をもたらす。ヒストンのアセチル化はヌクレオソーム構造を緩和し、転写因子へのより多量のアクセスを可能にする。ヒストンのデアセチル化とアセチル化のバランスは、ヒストンデアセチルトランスフェラーゼ(HDAC)およびヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)により調節される。これらの要因の異常なバランスは、本明細書にその全体が参考に組み込まれる米国特許第8,318,808号明細書に記載のように、異常な細胞成長およびいくつかのがん形態と相関性がある。HDAC阻害剤は特に、アセチル化とデアセチル化のバランスを変え、多くの腫瘍細胞タイプで成長停止、分化、およびアポトーシスをまねく。例えば、前掲米国特許第8,318,808号明細書を参照のこと。
【0009】
18個のHDACがヒトで確認されており、亜鉛依存性またはニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)依存性であることを特徴とし(Discov Med 10(54):462-470, November 2010)、以下のclass、つまりclass I (HDAC 1、2、3、および8); class II (HDAC 4、5、6、7、9、および10); class III (サーチュイン1-7 (SIRT)); ならびにclass IV(HDAC 11)に関連付けられている(同書)。
【0010】
本明細書で特に関係するのは、HDAC阻害剤であり、これは、米国特許第8,318,808号明細書に記載され、例えば、芳香族Ω-アミノ酸リンカーを介してZn2+-キレートモチーフと結合した脂肪酸を基にする。種々の態様において、HDAC阻害剤は以下の化学式であり得る。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、XはHおよびCH3から選択し、Yはnが0〜2である(CH2)nであり、Zはmが0〜3である(CH2)mおよび(CH)2から選択し、Aはヒドロカルビル基であり、Bはo-アミノフェニル基またはヒドロキシル基であり、Qはハロゲン、水素、またはメチルである。特定の(N-ヒドロキシ-4-(3-メチル-2-フェニル-ブチリルアミノ)-ベンズアミド)というHDAC阻害剤は、AR-42としても知られている。一態様において、AR-42の構造は以下である。
【0013】
【化2】
【0014】
AR-42は、ボリノスタット(つまり、SAHA)と比較すると、固形腫瘍および血液悪性腫瘍においてより高い効力と活性を示す、ヒストンタンパク質および非ヒストンタンパク質の両方の広域デアセチラーゼ阻害剤である。例えば、Lu YSら(Efficacy of a novel histone deacetylase inhibitor in murine models of hepatocellular carcinoma, Hepatology. 2007 Oct;46(4):1119-30)、Kulp SKら(Antitumor effects of a novel phenylbutyrate-based histone deacetylase inhibitor, (S)-HDAC-42, in prostate cancer, Clin Cancer Res. 2006 Sep 1;12(17):5199-206)を参照のこと。
【0015】
AR-42は追加のヒストン独立機構も有し、これはその治療プロファイルに寄与する。例えば、Chen MCら(Novel mechanism by which histone deacetylase inhibitors facilitate topoisomerase IIα degradation in hepatocellular carcinoma cells, Hepatology. 2011 Jan;53(1):148-59)、Chen CSら(Histone acetylation-independent effect of histone deacetylase inhibitors on Akt through the reshuffling of protein phosphatase 1 complexes, J Biol Chem. 2005 Nov 18;280(46):38879-87)、Yoo CBら(Epigenetic therapy of cancer: past, present and future, Nat Rev Drug Discov. 2006 Jan;5(1):37-50)を参照のこと。
【0016】
AR-42は腫瘍において阻害効果を示し、該腫瘍には乳房、前立腺、卵巣、血液細胞(例えば、リンパ腫、骨髄腫、および白血病)、肝臓、ならびに脳を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、Mims Aら(Increased anti-leukemic activity of decitabine via AR-42-induced upregulation of miR-29b: a novel epigenetic-targeting approach in acute myeloid leukemia, Leukemia. 2012 Nov 26. doi: 10.1038/leu.2012.342. [Epub ahead of print])、Burns SSら(Histone deacetylase inhibitor AR-42 differentially affects cell-cycle transit in meningeal and meningioma cells, potently inhibiting NF2-deficient meningioma growth, Cancer Res. 2013 Jan 15;73(2):792-803)、Lu YSら(Radiosensitizing effect of a phenylbutyrate-derived histone deacetylase inhibitor in hepatocellular carcinoma, Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2012 Jun 1;83(2))、Zimmerman Bら(Efficacy of novel histone deacetylase inhibitor, AR42, in a mouse model of, human T-lymphotropic virus type 1 adult T cell lymphoma, Leuk Res. 2011 Nov;35(11):1491-7)、Zhang Sら(The novel histone deacetylase inhibitor, AR-42, inhibits gp130/Stat3 pathway and induces apoptosis and cell cycle arrest in multiple myeloma cells, Int J Cancer. 2011 Jul 1;129(1):204-13)を参照のこと。
【発明の概要】
【0017】
本明細書に記載の態様は、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤をがん哺乳動物に投与するステップを含む、がん哺乳動物の悪液質を抑制する方法を提供する。一態様は、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与して、該がん哺乳動物の重量を、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較し実質的に維持することにより、がん哺乳動物の悪液質を抑制する方法を提供する。別の態様では、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与し、少なくとも15日という期間で前記哺乳動物の重量の少なくとも約90%を実質的に維持する。別の態様では、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤はAR-42である。さらに別の態様では、がん哺乳動物は少なくとも1つの腫瘍があり、該腫瘍体積はAR-42での処置後最初の約15日間で6%超減少することはない。
【0018】
本明細書に記載の他の態様は、AR-42をがん哺乳動物に投与することにより悪液質を抑制する方法を提供し、がん悪液質での筋委縮の複数のメディエータ(例えば、IL-6、IL-6Rα、LIF、MuRF1、Atrogin-Iなどの悪液質促進ドライバ)の発現を、AR-42で処置していないがん哺乳動物と比較し減少させる。
【0019】
さらなる態様は、AR-42をがん哺乳動物に投与することにより悪液質を抑制する方法を提供し、悪液質が誘発する脂肪組織の減少および骨格筋線維サイズの縮小を、AR-42を与えない哺乳動物と比較し実質的に回復させる。
【0020】
本明細書に記載の態様は、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与し、少なくとも15日という期間で、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較し、前記がん哺乳動物の骨格筋重量の少なくとも約90%を維持することによりがん哺乳動物の骨格筋重量を維持する方法を提供する。
【0021】
さらなる態様は、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与し、がん哺乳動物の生存期間を、HDAC class 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較し実質的に延長することにより、がん哺乳動物の生存期間を延長する方法を提供する。
【0022】
本明細書に記載するように、AR-42は、筋消耗を抑制、低減、またはブロックし、がん悪液質の動物モデルの生存期間を延長することに対し、in vivoで有効性を示す。加えて、AR-42のがん関連悪液質に対する効果は、AR-42の腫瘍負荷を低減することに対する効果とは無関係である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】媒体処置腫瘍なしマウス(対照)と、媒体(媒体)または一日おきに50mg/kgの経口AR-42(AR-42)で処置する腫瘍ありマウスを比較した15日間の研究における、C-26腫瘍ありマウスでがんが誘発する悪液質の典型的な抑制を示す図であり、総重量(左、腫瘍含む)および体重(中央、腫瘍含まず)の変化を描く。矢印はAR-42の処置時点を示す。右は、C-26腫瘍ありマウスにおいて、腫瘍成長に対するAR-42の抑制効果はないことを示す。データは平均±標準偏差で示す。P値:a, 0.045; b, 0.0027; c, 0.049; d, 0.0048
図1B】腫瘍量を有する、各群の代表マウスの写真であり、がん悪液質に対するAR-42の治療効果を示す。
図1C】研究過程における、3つの処置群の典型的な一日の平均摂餌量を示す図である。データは平均±標準偏差(n = 8)で示す。
図1D】腫瘍なしマウスおよび腫瘍ありマウスの両方における、腓腹筋、前脛骨筋、および大腿四頭筋(P値:a, < 0.001; b, 0.0042; c, 0.0046)を含む後肢筋の重量に対するAR-42の典型的な効果を、媒体処置腫瘍ありマウスおよび媒体処置腫瘍なしマウスのそれと比較して示す図である(n = 8)。
図1E】腫瘍なしマウスおよび腫瘍ありマウスの両方における、心臓、脂肪組織、および脾臓(P値:a, < 0.001; b, 0.0059; c, 0.001; d, 0.009)に対するAR-42の典型的な効果を、媒体処置腫瘍ありマウスおよび媒体処置腫瘍なしマウスのそれと比較した図である(n = 8)。
図2A】C-26腫瘍ありマウスの筋線維サイズの典型的な維持を示す図である。左には、媒体またはAR-42で処置した、腫瘍なし対照マウスと腫瘍ありマウスの腓腹筋の、H&E染色セクションの顕微鏡写真を示す。スケールバーは100μmである。右には、腓腹筋の筋線維の断面積を、有意性が(P < 0.001)である頻度ヒストグラムで表す。データは平均±標準偏差で示す。
図2B】媒体、ボリノスタット(50mg/kg、経口投与、毎日)、ロミデプシン(0.6mg/kg、腹腔内投与、週2回)、またはAR-42(50mg/kg、経口投与、一日おき)で処置した腫瘍ありマウスの、典型的なカプラン・マイヤー生存率曲線を示す図である。生存期間は、体重減少(腫瘍を除く)が開始時の体重の20%に達した時点と定義し、これは研究から除く人道的な終点となる(*,P < 0.001、媒体対AR-42;n = 8)。
図2C】各群の代表マウスの典型的な写真であり、姿勢、被毛、および身体状態により明らかな、腫瘍ありマウスのがん悪液質に対するAR-42の治療効果を、ボリノスタットおよびロミデプシンと比較して示す。
図2D】腫瘍細胞注入後15日目に、媒体処置腫瘍なしマウス(n = 6)、および、AR-42(n = 8)、ボリノスタット(n = 8)、またはロミデプシン(n = 5)で処置した腫瘍ありマウスの骨格筋における、Atrogin-1//MAFbxおよびMuRF1の典型的なmRNA相対発現レベルを、媒体処置腫瘍ありマウス(n = 8)のそれと比較して示す図である。データは平均±標準偏差で示す。P値:a, < 0.001; b, 0.016; c, 0.0063
図3A】グルコース代謝の解糖および代替経路と関連する中間体レベルに対する、典型的な効果を示す図である。
図3B】腫瘍なしマウスおよび腫瘍ありマウス(各群につきn = 8)の腓腹筋における、グリコーゲン代謝に対するAR-42の典型的な効果を示す図である。腫瘍ありマウスの媒体またはAR-42での処置(50mg/kg、経口投与、一日おき)を、腫瘍細胞注入後6日目で開始し、17日目で終えた。腫瘍なし対照マウスを、並行して媒体またはAR-42で処置した。データは箱髭図で示す。箱の上下はそれぞれ第一四分位および第三四分位を表し、箱内の「+」記号および帯はそれぞれ平均値と中央値を意味する。髭の終端は各群の最大値および最小値を表す。
図4】C-26腫瘍ありマウスの筋において、悪液質が誘発する、神経伝達に関わる遊離アミノ酸およびアミノ酸の代謝物のレベルと、インスリン抵抗性バイオマーカのレベルの変化を、AR-42がブロックすることを示す図である。分析用試料は図3Aおよび3Bに関して記載した実験より生成した。データは図3Aおよび3Bに関して記載した箱髭図で示す。
図5A】腫瘍なしマウスの血清における、悪液質促進サイトカインであるIL-6レベル(左)およびLIFレベル(右)に対するAR-42の典型的な効果を、C-26腫瘍ありマウスと比較して示す図(上側)と、腫瘍なしマウスの骨格筋におけるIL-6RaのmRNA発現に対するAR-42の効果を、C-26腫瘍ありマウスと比較したqPCR分析を示す図(下側)である。データは平均±標準偏差で示す。P値:a,< 0.001; b, 0.006; c, 0.012(n = 3)。マウスは図3に関連して記載したように処置した。
図5B】RNA-seqデータの典型的な主成分分析を示す図(左)と、4つの処置群の間で異なって発現する遺伝子を示すベン図(右)である。TFは腫瘍なし、Tは腫瘍あり、vehは媒体での処置、ARはAR-42での処置である。マウスは図3に関して記載したように処置した。
図5C】6つの主要な悪液質促進ドライバの転写レベルに対するAR-42の効果についての、RNA-seqによる典型的な分析を示す図である。(P値:a, 0.024; b, 0.028; c, 0.015; d, 0.007; e, 0.024; f, 0.026; g, 0.01; h, 0.012; i, < 0.001; j, 0.014; n = 3)マウスは図3に関して記載したように処置した。
図5D】4つの処置群のマウスの骨格筋における、6つの主要な悪液質促進ドライバの転写レベルに対するAR-42の効果についての、qPCRによる典型的な分析を示す図である(*, P < 0.001; n = 6)。データは平均±標準偏差で示す。マウスは図3に関して記載したように処置した。
図6A】AR-42での処置を腫瘍および悪液質の後期まで遅らせることによる、C-26腫瘍ありマウスにおけるがん悪液質の抑制を示す図である。媒体処置腫瘍なし対照マウス(T/F、Veh)および媒体処置腫瘍ありマウス(T、Veh)の、18日間の研究過程における体重(腫瘍を除く)の変化を、経口AR-42での処置を6日目(T、AR42/D6)、10日目(T、AR42/D10)、または12日目(T、AR42/D12)で開始したマウスと比較する(左に示す)。P値:a, 0.0015; b, 0.023 (n = 8)。矢印はAR-42処置を開始した時点を示す。データは平均を示す。明確に表示するため、各データ点の標準偏差バーは示していない。右には、処置を遅らせた実験において、C-26腫瘍ありマウスの腫瘍成長に対するAR-42の抑制効果はないことを示す結果がある。データは平均±標準偏差で示す(n = 8)。
図6B】処置が遅いにも関わらず、AR-42は腫瘍ありマウスのがん悪液質に対し治療効果があることを示す典型的な写真である。これは、大きい腫瘍量にも関わらず、正常な姿勢、滑らかな被毛、および、より良い身体状態を有することから明らかである。
図6C図6Aに記載のように疾患進行の異なるステージで開始したAR-42処置の、C-26腫瘍ありマウスの腓腹筋、前脛骨筋、および大腿四頭筋を含む後肢筋の重量に対する典型的な効果を示す図である。データは平均±標準偏差で示す(n = 8; *, P < 0.001)。
図6D】15日目と16日目において、媒体処置腫瘍なし対照および媒体処置腫瘍あり対照と比較した、腫瘍ありマウスの握力に対するAR-42の効果を示す図である。データは平均±標準偏差で示す(n = 8; P値: a, 0.01; b, 0.022; c, < 0.001; d, 0.0019)。Nはニュートンである。
図7】AR-42は、LLCマウス悪液質モデルにおけるがん誘発筋消耗を防ぐことを示す図である。腫瘍なしマウスと腫瘍ありマウス両方の、腓腹筋、前脛骨筋、および大腿四頭筋を含む後肢筋の質量を、媒体処置腫瘍ありマウスのそれと比較し、媒体と比較したAR-42の典型的な効果を示す。マウスは、腫瘍細胞注入後20日目で殺処分した点を除き、図1Aで記載したのと同じ方法で処置した。データは平均±標準偏差で示す(n = 8)。
図8】リアルタイムRT-PCRに使用するプライマーの典型的なシーケンスを示す図である。
図9】AR-42処置C-26腫瘍ありマウスと媒体処置C-26腫瘍ありマウスの間で異なって(≧4倍)発現する筋疾患または筋機能に関連した遺伝子についての、典型的なIngenuity Pathway Analysis(IPA)(QIAGEN社)を示す図である(n = 6)。
図10】媒体又はAR-42で処置した、腫瘍なしマウスおよびC-26腫瘍ありマウスの血清試料についての、典型的なサイトカインプロファイル分析を示す図である(平均±標準偏差、各群につきn = 3)。
図11】AR-42処置C-26腫瘍ありマウスの筋において、媒体処置C-26腫瘍ありマウスと比較し異なって(≧ 4倍)発現する遺伝子についての、典型的なRNA-seq分析を示す図である(n = 3)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載のいくつかの典型的な態様を記載する前に、本発明は以下の記載に明記した構成またはプロセス段階の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。本明細書に記載の態様は、種々の方法で実践または実行することが可能である。
【0025】
本明細書に記載の態様は、がん悪液質のCD2F1マウス結腸(colon)26(C-26)腫瘍モデルにおいて、悪液質が誘発する体重減少および骨格筋の委縮を減じ、生存期間を延長する経口AR-42の効果を開示する。マウスCD2F1悪液質モデルは、例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれるBMC Cancer. 2010 Jul 8;10:363に記載されている。観察された抗悪液質効果は、細胞代謝を再プログラムする、ならびに、罹患筋組織においてIL-6レベルを下方制御して筋消耗および他の悪液質に関連する影響を抑制するという、腫瘍負荷を減少させることに対するAR-42の効果とは無関係のAR-42の機能に関連するものであった。
【0026】
本明細書に記載の態様は、がん悪液質のルイス肺がん(Lewis Lung Carcinoma、LLC)腫瘍モデルにおいて、悪液質が誘発する体重減少および骨格筋の委縮を減じ、生存期間を延長する経口AR-42の効果を開示する。例えば、Expert Opin Drug Discov. Nov 1, 2009; 4(11): 1145-1155を参照のこと。
【0027】
米国特許第8,318,808号明細書に記載のHDAC阻害剤は、本明細書に記載の種々の方法で使用することが可能である。このHDAC阻害剤は、例えば、芳香族Ω-アミノ酸リンカーを介してZn2+-キレートモチーフと結合した脂肪酸を基にする。種々の態様において、HDAC阻害剤は以下の化学式であり得る。
【0028】
【化3】
【0029】
式中、XはHおよびCH3から選択し、Yはnが0〜2である(CH2)nであり、Zはmが0〜3である(CH2)mおよび(CH)2から選択し、Aはヒドロカルビル基であり、Bはo-アミノフェニル基またはヒドロキシル基であり、Qはハロゲン、水素、またはメチルである。
【0030】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、以下の化学構造を持つ、(S)-N-ヒドロキシ-4-(3-メチル-2-フェニルブタンアミド)ベンズアミドとしても知られる、AR-42を利用する。
【0031】
【化4】
【0032】
さらに別の態様では、AR-42は塩、溶媒化合物、水和物、無水物、共結晶、および他の結晶形および組み合わせを含む。AR-42は、安定性を増した、バイオアベイラビリティ、徐放性、および他の特性を増した種々の剤形に配合することが可能である。
【0033】
一態様において、HDAC阻害剤は亜鉛依存性またはニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)依存性であること(Discov Med 10(54):462-470, November 2010)を特徴として分類し、そのHDAC基質に基づいて18個のファミリーサブタイプを持つ4つのclassに分ける。つまり、class I(HDAC 1、2、3、および8)、class II(HDAC 4、5、6、7、9、および10)、class III(サーチュイン1-7(SIRT))、ならびにclass IV(HDAC 11)である(同書)。別の態様では、HDAC阻害剤は、ボリノスタット(SAHA)(class Iおよびclass II阻害剤)、デプシペプチドclass I阻害剤、およびAR-42(class Iおよびclass IIb阻害剤)を含むが、これらに限定されるものではない。例えば、Strahl, B.D.およびAllis, C.D.(2000)(Nature 403:41-45)を参照のこと。他のHDAC阻害剤(例えば、トリコスタチンA、つまりTSA)はclass 1およびclass 2のHDACを阻害する。HDAC阻害剤用基質は、classおよびサブタイプで異なる。
【0034】
別の態様では、HDAC阻害剤はclass 1およびclass 2bのHDACを阻害する。さらに別の態様では、HDAC阻害剤はAR-42である。
【0035】
がん悪液質の結腸26(C-26)腫瘍モデルにおいて、C26腫瘍の断片を同質遺伝子型のBALB/cマウスに移植すると、該マウスは未分化がんを発症する。骨格筋委縮(筋力および疲労に対する抵抗性により測定する)は観察される生化学的変化と相関性があり、該モデルは「がん悪液質についての研究用に、十分に標準化された実験用モデル」と呼ぶ。BMC Cancer. 2010 Jul 8;10:363
【0036】
一態様において、HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与し、該哺乳動物の重量を、HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較して実質的に維持することにより該哺乳動物の悪液質を抑制する方法を提供する。別の態様では、HDAC阻害剤はAR-42である。
【0037】
さらに別の態様では、哺乳動物の重量は、AR-42での処置後最初の約15日後に6%超減少することはない。
【0038】
別の態様では、がんは、膵臓、結腸、頭部、頸部、胃、および食道からなる群より選択する。別の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0039】
AR-42は哺乳動物の約1mg/kg〜約100mg/kgの量で投与することが可能であり、少なくとも一日に1回投与することが可能である。別の態様では、AR-42は哺乳動物の重量の約50mg/kgの量で一日に2回投与する。
【0040】
さらに別の態様では、IL-6レベルは、AR-42を与えない哺乳動物と比較し約56%低減する。別の態様では、白血病抑制因子(LIF)レベルは、AR-42を与えない哺乳動物と比較し約88%低減する。別の態様では、Atrogin-1のmRNA発現は、AR-42を与えない哺乳動物と比較し基礎値まで回復する。
【0041】
一態様において、MuRF1のmRNA発現は、AR-42を与えない哺乳動物と比較し基礎レベルまで回復する。別の態様では、悪液質が誘発するIL-6RαのmRNAレベルの増加は、AR-42を与えない哺乳動物と比較し約85%減少する。
【0042】
さらに別の態様では、悪液質が誘発する脂肪組織の減少は、AR-42を与えない哺乳動物と比較し実質的に回復する。別の態様では、悪液質が誘発する骨格筋線維サイズの縮小は、AR-42を与えない哺乳動物と比較し、AR-42により回復する。
【0043】
HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与して、少なくとも15日という期間で、HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較し前記哺乳動物の骨格筋重量の少なくとも約90%を維持するステップを含む、がん哺乳動物の骨格筋重量維持方法も提供する。
【0044】
別の態様では、HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を効果的な量でがん哺乳動物に投与して、HDACのclass 1およびclass 2b阻害剤を与えない哺乳動物と比較し前記哺乳動物の生存期間を実質的に延長するステップを含む、がん哺乳動物の生存期間延長方法を提供する。さらに別の態様では、哺乳動物は該哺乳動物にAR-42を投与後、少なくとも約21日間は生存する。
【0045】
別の態様では、AR-42の投与は哺乳動物において悪液質が誘発する体重減少および骨格筋委縮を減じ、生存期間を延長した。理論に縛られることなく、抗悪液質効果は、細胞代謝を再プログラムする、ならびに、罹患筋組織におけるIL-6レベルを下方制御して筋消耗および他の悪液質に関連する影響を抑制するという、腫瘍負荷を減少させることに対するAR-42の効果とは無関係のAR-42の機能と関連すると考えられる。
【0046】
一態様において、AR-42の抗悪液質効果は種々の技法により測定され、該技法には、がんの筋委縮について実証されたメディエータの発現に関するqRT-PCT分析(例えば、Cancer Cell. 2008 Nov 4;14(5):369-81)、血清および腓腹筋組織における抗炎症サイトカインレベルの測定(Am J Pathol. 2011 Mar;178(3):1059-68)、メタボロームプロファイリング分析(J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2013 Jun;4(2):145-55)、筋組織における遊離アミノ酸レベル測定(J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2013 Jun;4(2):145-55; Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Feb;292(2):E501-12)、解糖経路に関連した生化学レベル測定による悪液質筋の「糖分解特徴」測定(Cachexia Sarcopenia Muscle. 2013 Jun;4(2):145-55)、悪液質筋組織におけるグリコーゲン貯蔵レベル測定(Cell Death Differ. 2012 Oct;19(10):1698-708)、悪液質筋における分枝鎖アミノ酸代謝分析(Int J Biochem Cell Biol. 2013 Oct;45(10):2163-72)、ならびに、悪液質性筋における2-ヒドロキシブチレートおよびオフタルミン酸のレベル測定(PLoS One. 2010 May 28;5(5):e10883; Int J Cancer. 2010 Feb 1;126(3):756-63)が含まれる。
【0047】
本明細書に記載のHDAC阻害剤は、処置を必要とする患者(例えば、がんがあり、悪液質の症状を呈する患者)に投与することが可能である。一態様において、ある特定のがんは特に悪液質と関連し、該がんには膵臓、胃、頭部、頸部、および食道を含むが、これらに限定されるものではない(「悪液質関連がん」)。別の態様では、class 1、class 2bのHDAC阻害剤(例えば、AR-42)を、処置を必要とする患者に投与する。
【0048】
本明細書で使用する「実質的」という用語は、例えばがんのない哺乳動物の重量または総量の「多く」、「大部分」、つまり、少なくとも50%、60%、70%、80%、および90%を意味する。
【0049】
本明細書で使用する「処置する」、「低減する」、「抑制する」、「阻害する」、「防止する」、または同様の用語は、100%の、または、完全な、処置または防止を必ずしも意味するわけではない。むしろこれらの用語は、当技術分野で有益であると認められる、特定の疾患の種々の程度の処置または防止(例えば、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%)を意味する。
【0050】
「処置」または「防止」という用語はまた、しばらくの間疾患の開始を遅らせること、または、無期限に開始を遅らせることを意味する。「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」という用語は、患者に薬物または処置を施すこと、もしくは、薬物を(例えば、医師、看護師、または他の医療専門家が)患者に処方し、該患者または第三者(例えば、介護者、家族、またはヘルスケア専門家)が該薬物または処置を施すことを意味する。「効果的な量」という用語は、疾患または病気(例えば悪液質)を処置し、低減し、抑制し、阻害し、防止する薬物または処置の量、もしくは、疾患または病気の哺乳動物の生存期間を延長する薬物または処置の量を意味する。
【0051】
本明細書で使用する「延長する(prolong)」または「延長すること(prolonging)」という用語は、処置を受けない哺乳動物と比較して、処置を受けた哺乳動物の生存期間の時間が延びることを意味する。この面において、「延長された生存期間」は、哺乳動物の寿命が、例えば、がんのない哺乳動物の寿命の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%延びることを意味し得る。
【0052】
本明細書に記載のHDAC阻害剤のいずれも、経口的に、非経口的に(IV、IM、デポ-IM、SQ、およびデポ-SQ)、舌下に、鼻腔内に(吸入)、髄腔内に、局所的に、または直腸に、投与することが可能である。当業者に知られた剤形は、本明細書に記載のHDAC阻害剤の送達に適切である。
【0053】
一態様において、典型的なHDAC阻害剤を経口剤形(ピル、カプセル、カプレット、または錠剤など)で悪液質に関連するがん(例えば、膵臓、膀胱、胃、頭頸部)と診断された患者に投与する。
【0054】
HDAC阻害剤は、経口投与に適切な、錠剤、カプセル、もしくはエリキシル剤などの医薬品、または、非経口投与に適切な、滅菌溶液または懸濁液に配合することが可能である。本明細書に記載のHDAC阻害剤は、当技術分野で周知の技法および手順を用いて医薬組成物に配合することが可能である。
【0055】
一態様において、約0.1〜1000mg、約5〜約100mg、もしくは約10〜約50mgのHDAC阻害剤(例えば、AR-42)、または、生理学的に容認可能な塩、もしくはエステルは、生理学的に容認可能な媒体、担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、着香料などと共に、容認された薬務により要求される単位剤形に混合することが可能である。HDAC阻害剤を含む組成物または製剤における有効成分の量は、指示範囲の適切な投薬量が得られる量である。
【0056】
別の態様では、組成物は単位剤形に配合し、各投薬量は約1〜約500mg、または、約10〜約100mgの有効成分を含むことが可能である。「単位剤形」という用語は、ヒト対象または他の哺乳動物の単位投薬量として適切な、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、適切な医薬品賦形剤と共同して望ましい治療効果を生むように計算された所定量の活物質を含む。
【0057】
一態様において、1つ以上のHDAC阻害剤を、適切で医薬的に容認可能な担体と混ぜて組成物を形成する。化合物を混ぜる、または、追加して結果として生じる混合物は、溶液、懸濁液等であってよい。リポソーム懸濁液またはその他のナノ粒子送達システムも、医薬的に容認可能な担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法により調製することができる。結果として生じる混合物の形態は、意図する投与方式、および、選択した担体または媒体における化合物の溶解度などの因子の数に左右される。一態様において、有効濃度は、処置する疾患、不調、病気の少なくとも1つの症状を軽くする、または、改善するのに十分であり、経験的に決めることができる。
【0058】
さらに別の態様において、AR-42はC-26およびLLC腫瘍の悪液質モデルで見られるような、悪液質での筋消耗を抑制する。炎症性サイトカインであるIL-6およびTNFは、2つのモデルにおける悪液質促進因子を表す(31、32)。サイトカインプロファイル分析は、AR-42はC-26腫瘍ありマウスの血清TNFレベルに対しては効果がないが、血清IL-6レベルおよび筋内IL-6RαのmRNA発現レベルを減らすことを示した。それでもなお、AR-42で処置したこれらのC-26腫瘍ありマウスはまだ、腫瘍なしマウスと比較して血清IL-6レベルおよびIL-6RαのmRNA発現の上昇を示し、これは、IL-6シグナル伝達の減少が、AR-42が媒介する筋消耗抑制の唯一の原因ではないことを示唆する。
【0059】
機構的に、AR-42の抗悪液質効果は独特である。これは、HDAC阻害剤であるバルプロ酸およびトリコスタチン-Aが、ミオスタチン/フォリスタチン軸を調節する機能を持つにも関わらず、C-26腫瘍ありマウスの筋力低下を食い止めることができなかったためである(33)。同様に当社の発見は、ボリノスタットおよびロミデプシンは、AR-42と異なり、C-26モデルで悪液質が誘発する体重減少を減じることに無効であったことを示す。この相違は、腫瘍ありマウスの筋においてE3リガーゼであるAtrogin-1およびMuRF1のmRNA発現を抑制するという、AR-42のより優れた機能に起因するものであり、これは、骨格筋における全遺伝子発現を調節する各々の機能の違いを反映する。最新の知見は、悪液質関連遺伝子の機能不全発現をまねく、罹患筋での異常なアセチル化/転写因子の発現と筋消耗の間の機構的関連性を示唆する[レビュー:(34)]。p300/CBPのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性が骨格筋においてFoxoファミリー転写因子の転写活性および核局在性を異なって調節すること(35)、および、class IのHDAC類、特にHDAC1は、Foxoおよびその標的であるAtrogin-1およびMuRF1の発現を調節することにより、栄養枯渇または筋の不使用が誘発する筋委縮の媒介に重要な役割を果たすこと(22)が報告された。
【0060】
RNA-seq分析により、遺伝子発現において腫瘍が誘発するシフトを食い止めるというAR-42の機能が明らかになった。合計677個の遺伝子が、AR-42処置腫瘍ありマウスと媒体処置腫瘍ありマウスの間で4倍以上異なって発現することが確認された。この多数の、異なって発現する遺伝子は、転写活性、および/または、複数の転写因子/制御因子の発現に対するAR-42の効果から生じると考えられる。Foxo1に加え、AR-42はまた、C/EBPδ、Fos、Jun-b、DAXX、ERN1、HIF3α、MAFF、MAFK、およびMef2cなど他の多くの転写因子/制御の発現を調節する(図11)。これらの転写因子のうち、骨格筋、心筋、および平滑筋の発達におけるMef2cの重要性は十分に裏付けられており(36)、AP-1シグナル伝達カスケードはがんに関連した筋消耗に関与している(37)。
【0061】
C-26腫瘍ありマウスの悪液質筋は、高い解糖率を特徴とするワールブルグ腫瘍生理機能を示すことが提案された(38)。当社のメタボロームデータは、C-26腫瘍ありマウスにおける骨格筋代謝の明白な再プログラミングを明らかにし、これはAR-42により完全に食い止められた。さらに、インスリン抵抗性用バイオマーカ(17)および酸化ストレス用バイオマーカ(18)である、2-ヒドロキシブチレートおよびオフタルム酸の生成に対するAR-42の抑制効果は、注目に値する。これは、実質的証拠により、インスリン抵抗性(39、40)と酸化ストレス(41)が悪液質と関連付けられたからである。
【0062】
機構的に、腫瘍ありマウスにおいて骨格筋の完全性を維持するというAR-42の機能は、複数の転写プログラムおよび代謝表現型において腫瘍が誘発する変化に対する、その様々な累積的効果より生じる。腫瘍成長末期でのAR-42の経口投与が、依然として、C-26腫瘍ありマウスの筋消耗の進行を減速するのに効果的であることは治療的に重要である。総合すると、これらの発見は、HDAC阻害剤(例えば、AR-42)は、本明細書に記載するようにがん悪液質の包括的治療方針の一部として使用することが可能であることを示す。
【0063】
本明細書に記載の、HDAC阻害剤の投与に適切な医薬担体または媒体には、特定の投与方式に適切な担体を含む。加えて、活物質は、望ましい作用を弱めない他の活物質と、または、望ましい作用を補う、もしくは、他の作用を有する物質と混ぜることも可能である。化合物は、単独の医薬的有効成分として組成物に配合するか、または、他の有効成分と組み合わせることができる。
【0064】
別の態様では、HDAC阻害剤が十分な溶解度を示さない場合、溶解する方法を用いることができる。該方法は既知であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒を用いること、TWEENなどの界面活性剤を用いること、および、含水重炭酸ナトリウムに溶解することを含むが、これらに限定されるものではない。塩またはプロドラッグなど、化合物の誘導体も、効力のある医薬組成物を配合するのに用いることができる。
【0065】
化合物の濃縮は、化合物を投与する不調の少なくとも1つの症状を軽くする、または、改善する投与量を送達するのに有効である。典型的に、組成物は、1回の用量投薬向けに配合する。
【0066】
別の態様では、本明細書に記載のHDAC阻害剤は、時限放出製剤またはコーティングなど、それが身体から迅速に除去されることを防ぐ担体と共に調製することができる。該担体には、マイクロカプセル化送達システムなどの制御放出製剤を含むが、これらに限定されるものではない。活性化合物は、処置する患者において望ましくない副作用がない場合、治療的に有用な効果を示すのに十分な量で、医薬的に容認可能な担体に含めることが可能である。治療的に効果的な濃度は、処置する不調について既知のin vitroおよびin vivoモデルシステムで該化合物をテストすることにより、経験的に求めることができる。
【0067】
別の態様では、本明細書に記載のHDAC阻害剤および組成物は、複数回投与用容器または一回投与用容器に封入することが可能である。封入した化合物および組成物は、例えば、使用のために組み立てることが可能な成分を含むキットで提供することが可能である。例えば、凍結乾燥形状のAR-42および適切な希釈剤を、使用前に組み合わせる別個の成分として提供することができる。キットは、同時投与用に、AR-42と第2の治療薬を含むことができる。AR-42および第2の治療薬は、別個の成分として提供することが可能である。キットは複数の容器を含み得、各容器は本明細書に記載の化合物を1以上の単位容量で収容する。一態様では、該容器は望ましい投与方式に適応させることが可能である。該投与方式には、経口投与向けの、錠剤、ゲルカプセル、徐放性カプセル剤等、および、非経口投与向けの、デポ製品、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアル等、および、局所投与向けの、パッチ、メディパッド、クリーム等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0068】
医薬組成物における典型的なHDAC阻害剤の濃度は、当業者に既知の要因のみならず、活性化合物の吸収、不活化、および排出速度、投与スケジュール、ならびに投与量に左右されよう。
【0069】
別の態様では、有効成分は一度で投与するか、または、多くの、より小さい用量に分け、間隔を空けて投与することができる。正確な投薬量および処置期間は処置する疾患に応じて異なり、既知のテストプロトコルを用いて、または、in vivoまたはin vitroのテストデータからの推測により経験的に求めることができると理解される。濃度値および投薬量値はまた、軽減すべき病気の重症度により異なることに注意すべきである。さらに、任意の特定の対象に対し、個別の投薬計画は、個々の要求、および、組成物を投与する、または、組成物の投与を管理する人間の専門的な判断に応じて経時的に調節すべきであること、ならびに、本明細書で述べる濃度範囲はただの例示であり、特許請求する組成物の範囲または実施を限定することを意図しているわけではないことを理解すべきである。
【0070】
経口投与を望む場合、化合物は、胃の酸性環境からそれを守る組成物で提供することが可能である。例えば、組成物は、胃においてその完全性を維持し、活性化合物を腸に放出する腸溶性コーティングに配合することが可能である。組成物はまた、制酸剤または他のそのような成分と組み合わせて配合してよい。
【0071】
経口組成物は、概して不活性希釈剤または食用担体を含み、錠剤に圧縮する、または、ゼラチンカプセルに封入することができる。経口治療投与を目的に、活性化合物または化合物を賦形剤と組み合わせ、錠剤、カプセル、またはトローチ剤の形態で使用することが可能である。医薬的に相溶性のある結合剤および補助物質を組成物の一部として含むことが可能である。
【0072】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ剤等は、同様の性質を持つ以下の成分または化合物、つまり、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤、着香剤のいずれかを含むことが可能である。該結合剤は、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンなどであるが、これらに限定されるものではない。該賦形剤は微結晶性セルロース、デンプン、または乳糖などである。該崩壊剤はアルギン酸およびコーンスターチなどであるが、これらに限定されるものではない。該潤滑剤はステアリン酸マグネシウムなどであるが、これに限定されるものではない。該流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素などであるが、これに限定されるものではない。該甘味剤はスクロースまたはサッカリンなどである。該着香剤はペパーミント、サリチル酸メチル、またはフルーツ香料などである。
【0073】
投薬量単位の形態がカプセルである場合、それは、上記のタイプの物質に加え、脂肪油などの液体担体を含むことが可能である。加えて、投薬量単位形態は、種々の他の物質を含むことが可能であり、これは投薬量単位の物理的形態、例えば、糖衣および他の腸溶性コーティングを調整する。化合物はまた、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の成分として投与することが可能である。シロップは、活性化合物に加え、甘味剤およびある程度の防腐剤としてのスクロース、染料および着色剤、ならびに、香料を含んでよい。
【0074】
活物質はまた、望ましい作用を損ねない他の活物質と、または、望ましい作用を補う物質と混ぜることが可能である。HDAC阻害剤は、例えば、抗腫瘍剤、ホルモン、ステロイド、またはレチノイドと組み合わせて使用することが可能である。抗腫瘍剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、抗生物質、コルヒチン、ビンカアルカロイド、L-アスパラギナーゼ、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、ニトロソウレアまたはイミダゾールカルボキサミドなど多数の化学療法剤の1つであってよい。適切な薬剤には、チューブリンの脱分極を促進する薬剤を含む。例には、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのコルヒチンおよびビンカアルカロイドが含まれる。
【0075】
別の態様では、本明細書に記載のHDAC阻害剤をワクチンと共に投与する、または、ワクチンを予防接種する前後で投与して、ワクチンに対する免疫反応を高めることが可能である。一態様において、該ワクチンはDNAワクチン、例えば、HPVワクチンである。
【0076】
一態様において、非経口適用、皮内適用、皮下適用、または局所適用向けに使用する溶液または懸濁液は、以下の成分のいずれかを含むことが可能である。該成分とは、注射用水などの殺菌希釈剤か、食塩液か、固定油か、ごま油、ココナッツ油、ピーナッツ油、および綿実油等などの天然由来の植物油か、オレイン酸エチル等などの合成脂肪媒体か、ポリエチレングリコールか、グリセリンか、プロピレングリコールか、または他の合成溶媒;ベンジルアルコールおよびメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩などの緩衝液;ならびに、塩化ナトリウムおよびデキストロースなどの張性を調整するための薬剤である。非経口製剤は、ガラス、プラスチック、または他の適切な物質でできた、アンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与バイアルに封入することが可能である。緩衝液、防腐剤、抗酸化剤等は必要に応じて組み込むことが可能である。
【0077】
静脈内に投与する場合、適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに、グルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの増粘剤および可溶化剤を含む溶液と、その混合物を含むが、これらに限定されるものではない。組織標的化リポソームを含む、リポソーム懸濁液またはその他のナノ粒子送達システムも、医薬的に容認可能な担体として適切である。これらは当技術分野で既知の方法で調製することができる。
【0078】
別の態様では、HDAC阻害剤は、時限放出製剤またはコーティングなど、化合物が身体から迅速に除去されることを防ぐ担体と共に調製することができる。そのような担体は制御放出製剤および生分解可能で生体適合性のあるポリマーを含む。該制御放出製剤は、インプラント送達システムおよびマイクロカプセル化送達システムなどであるが、これらに限定されるものではなく、該生分解可能で生体適合性のあるポリマーは、コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等である。そのような製剤の調製方法は当業者に既知である。
【0079】
さらに別の態様では、開示の方法で用いる化合物は経腸的に、または、非経口的に投与することができる。経口的に投与する場合、開示の方法で用いる化合物は、当業者には周知である経口投与向けの通常剤形で投与することが可能である。これらの剤形には、溶液、懸濁液、およびエリキシル剤などの液体剤形ばかりでなく、タブレット錠およびカプセルという通常の固形単位剤形が含まれる。固形剤形を用いる場合、それらは、本明細書に記載の方法で使用する化合物が毎日1度か2度投与する必要があるように、徐放性タイプとすることが可能である。
【0080】
経口剤形は、毎日1回、2回、3回、または4回、患者に投与することが可能である。本明細書に記載のHDAC阻害剤は、3回またはより少ない回数で、つまり毎日1回または2回のいずれかで投与することさえ可能である。従って、開示の方法で用いるHDAC阻害剤化合物は、経口剤形で投与する。いかなる経口剤形を用いても、それは、本明細書に記載の方法で用いる化合物を胃の酸性環境から守るように設計することが可能である。腸溶性コーティングタブレット錠は当業者に周知である。加えて、小さい小球を充填したカプセルで、各々コーティングして酸性胃から守るようにしたものも、当業者には周知である。
【0081】
「治療的に効果のある量」および「治療的に効果のある期間」という用語は、腫瘍性細胞の成長を低減するのに効果のある投薬量および期間での処置を意味するのに使用する。上述したように、このような投与は、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、または直腸内とすることが可能である。一態様において、全身的に投与する場合、治療組成物は、約0.1μM〜約100mMという血中化合物濃度を達成するのに十分な投薬量で投与することが可能である。局所投与の場合、これよりはるかに低い濃度で効果的であり得、はるかに高い濃度も許容し得る。当業者は、このような、HDAC阻害剤またはAR-42の有効濃度がより低い治療の効果は、処置する組織、器官、または、特定の動物もしくは患者に応じてかなり異なり得ることを理解しよう。また、患者は1回分の用量で開始してよいが、該用量は患者の病気の変化につれ変わり得ることも理解されよう。
【0082】
正確な投与量および投与の頻度が、開示した投与方法で用いる特定の化合物、処置する特定の病気、処置する病気の重症度、年齢、体重、特定の患者の通常の体調、および、個人が服用している場合がある、当業者である投与する医師は周知の他の薬物に左右されることは、当業者に明らかなはずである。
【実施例】
【0083】
以下の非限定実施例は本明細書に記載の態様を示すものである。
【0084】
(実施例1)
がん悪液質モデル
C-26モデル
一態様において、腫瘍を、C-26細胞(0.1mL中0.5×106細胞)をオスのCD2F1マウス(生後約6週間、Harlan Laboratories社、インディアナ州インディアナポリス)の右脇腹に皮下注入することにより設けた(11)。非悪液質対照となる腫瘍なしマウスと同様に、腫瘍ありマウスを無作為にグループに分け、AR-42(50mg/kg、胃管栄養法による経口投与、一日おき、Arno Therapeutics社、ニュージャージー州フレミントン)、または、媒体(滅菌水に溶解した0.5%メチルセルロース(w/v)および0.1%Tween-80(v/v))のいずれかでの処置を、細胞注入後6日目に開始した。遅延処置の効果を調べるため、薬物および/または媒体での処置をがん細胞注入後6日目、10日目、および12日目に開始した。
【0085】
別の態様では、AR-42の効果を他のHDAC阻害剤と比較した。この態様では、C-26腫瘍ありマウスの追加グループをボリノスタット(50 mg/kg、経口投与、毎日1回)とロミデプシン(0.6 mg/kg、腹腔内投与、週2回)で処置した(ChemieTek社(インディアナ州インディアナポリス))。
【0086】
LLCモデル
別の態様では、皮下腫瘍を、0.5×106LLC細胞を右脇腹に注入することによりオスのC57BL/6マウス(生後約6週間、Harlan社)に設けた。AR-42および媒体での処置をC-26モデルについて行い、該処置は細胞注入後6日目に開始した。両モデルにおいて、体重および摂餌量を毎日監視し、腫瘍のサイズを2日ごと以上の頻度で測定した。マウスは殺処分する前の2時間は絶食させ、殺処分時に後肢筋、心臓、脾臓、精巣上体脂肪、および血液を回収し、固形組織の重量を測定した。筋試料は、液体窒素で冷却した2-メチルブタンで凍らせ、それから分析まで-80℃で保管した。
【0087】
(実施例2)
握力測定
マウスの前肢の握力を、デジタル握力メータ(Digital Grip Strength Meter)(Columbus Instruments社、オハイオ州コロンバス)を用いて測定した。各マウスから5個の測定値をとり、その平均を該マウスの握力とした。
【0088】
筋線維サイズの形態学的分析
10mMのセクションを凍結した骨格筋試料よりcryostat(Leica社)を用いて切り取り、その後、H&Eで染色した。画像を、オリンパスBX51顕微鏡(Olympus America社)を用いて撮り、筋線維の断面積をオリンパスCellSens 1.11ソフトウェアを用いて求めた。測定値は、各グループの5匹のマウスそれぞれの筋の、5つの異なるセクションより得た。
【0089】
RNA分離、qRT-PCRおよびRNA-seq分析
全RNAを均質化腓腹筋(n = 3/群)よりTRIzol(登録商標)reagent(Life Technologies社、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて分離し、その後RNAeasy Mini Kit(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて精製した。qRT-PCRを、上述のように、iQ SYBR(登録商標)Green Supermix付きBio-Rad CFX96リアルタイムPCR解析システム(Bio-Rad社、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いることで行った(42)。プライマーシーケンスを図8に列記する。RNA-seqライブラリの生成とデータ分析を、オハイオ州立大学総合がんセンター(The Ohio State University Comprehensive Cancer Center、OSUCCC)Nucleic Acid Shared Resourceで行った。
【0090】
メタボロームファイリングおよびサイトカインプロファイリング
腓腹筋および血清を、細胞注入後17日目に各処置グループ(n = 8/群)より回収した。筋は、270個の代謝中間体を専用の質量分析プラットフォームによりメタボローム解析するため、Metabolon社(ノースカロライナ州ダーラム)に提出した。血清は、32個のサイトカインをマウスサイトカインアレイ(mouse cytokine array)(32-plexパネル)を用いて分析するため、Eve Technologies社(カナダ国アルバータ州)に提出した。
【0091】
統計分析
データ分析を、SAS 9.3ソフトウェア(SAS社、ノースカロライナ州ケーリー)を用いて行った。複数の測定を行った実験については、データを混合効果モデルにより分析し、各対象に観測依存性を組み込んだ。独立群を含む他の実験については、データをANOVAにより分析した。時間事象実験(図2B)では、生存期間関数における違いをログランク検定により比較した。多重性をホルムの方法により調整し、全体のファミリーワイズエラー率を0.05に制御した。RNA-seqデータをIngenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェア(Ingenuity Systems社、カリフォルニア州レッドウッドシティ)を用いて分析した。>4倍変化およびP<0.05の遺伝子のみ経路解析(pathway analysis)用に選択した。
【0092】
(実施例3)
AR-42はC-26結腸がんモデルにおけるがん悪液質を抑制する
一態様において、マウスは、C-26細胞を注入し触診できる腫瘍が形成された6日後より、胃管栄養法により、一日おきに、AR-42(50mg/kg)または媒体で経口処置した。媒体群は、体重の大幅な減少が12日目に始まったが、AR-42処置マウスは腫瘍なし対照と同等のレベルで体重を維持した(図1A、左)。研究終点(15日目)までに、腫瘍の質量を差し引いた後の体重減少の大きさ(体積1cm3= 質量1グラム)は、媒体処置群で>20%、AR-42処置マウスで6%に達した(中)。この効果が腫瘍量の減少に起因するはずはない。これは、一日の平均摂餌量はAR-42処置群と媒体処置群で同等かつ腫瘍なしマウスの一日の平均摂餌量未満であったことから(図1C)、AR-42は、媒体(右)または摂餌量増と相関して腫瘍成長を変えることはなかったためである。AR-42処置マウスはその大きな腫瘍量にも関わらず機敏で反応が速く、活発で、この研究の終点までに媒体処置対照で観察された猫背の姿勢および荒れた被毛は見られなかった(図1B)。
【0093】
(実施例4)
AR-42は悪液質が誘発する委縮に対し筋を保護する
体重の維持と同じく、AR-42処置腫瘍ありマウスにおいて骨格筋量は維持された。媒体処置腫瘍あり(腫瘍あり/媒体)マウスは悪液質の兆候を示し、その腓腹筋、前脛骨筋、および大腿四頭筋の重量は、腫瘍なし対照マウスの対応する筋と比較して各々20.6%、10.5%、および18.1%減少したが、AR-42処置腫瘍ありマウス(腫瘍あり/AR-42)のそれらは各々9.6%、0.8%、および5.8%減少した(図1D)。
【0094】
腫瘍あり/媒体マウスは、心臓、および、特に脂肪組織の質量の著しい減少(腫瘍なし対照の29.3±6.0%)など、悪液質の他の際立った特徴を示したが、これは、AR-42の処置により改善した(図1E、上)。興味深いことに、AR-42は、腫瘍なしマウスにおいて脂肪組織の質量を約50%減少させたが、腫瘍ありマウスの脂肪組織質量の減少は腫瘍なし/AR-42マウスのそれと同等のレベルまで回復させた。二分された結果は、脂質ホメオスタシスを維持するというそれの機能を示唆する。
【0095】
別の態様では、C-26腫瘍ありマウスは、腫瘍なし対照マウスと比較し著しく肥大した脾臓を呈したが(11)、これはAR-42で改善されなかった(図1E、下)。C-26腫瘍ありマウスにおける脾腫は、脾臓にある骨髄由来抑制細胞および他の免疫細胞の増殖に起因することから(12)、この発見は、AR-42は免疫学的機序を介してというより主に筋に作用していることを示唆する。
【0096】
筋消耗に対するAR-42の予防効果は、悪液質が誘発する骨格筋線維サイズの減少の抑止により明らかになった。腫瘍あり/媒体マウスの筋線維の平均断面積は、15日目に腫瘍なし対照と比較して48.2%の減少を示し(1297.6±638.8対2503.5±917.5μm2)、これはAR-42により回復した(2146.3±923.4μm2)(図2A、左)。腫瘍あり/媒体マウスの悪液質筋における、線維サイズ分布のより小さい断面積への顕著な移行は、AR-42により食い止められた(図2A、右)。
【0097】
AR-42はC-26腫瘍ありマウスの生存期間を延長する
AR-42の効果を、C-26腫瘍ありマウスにおいて他のHDAC阻害剤(つまり、ボリノスタットおよびロミデプシン)と比較した。腫瘍細胞注入後6日目に開始し、毎日の体重測定および腫瘍質量の減算により求める体重減少が開始時の重量の20%に達するまで、マウスを、AR-42(50mg/kg、一日おき、経口投与)、ボリノスタット[50mg/kg、一日に1回、経口(13)]、ロミデプシン[0.6mg/kg、週2回、腹腔内投与(14)]、または媒体で継続して処置した。図のように、経口AR-42はこれらのマウスを腫瘍関連消耗から守るのに効果的で、腫瘍体積が安楽死のしきい値に達した21日目の累積生存率は100%だった(図2B)。対照的に、ボリノスタットおよびロミデプシンは、体重に対する防止効果が限定的だったか、または、目に見えるほどの防止効果を見せなかった。さらに、腫瘍あり/AR-42マウスは、腫瘍細胞注入後21日目において、媒体(15日目)、ロミデプシン(16日目)、およびヴォリノスタット(18日目)で処置したマウスとは対照的に機敏で反応が速く、活発で、健康そうに見えた(図2C)。
【0098】
実施例3
骨格筋タンパク質代謝回転の調節における異なる効果
骨格筋量は、タンパク質の合成と分解の間のバランスにより調節される。理論に縛られることなく、ボリノスタットおよびロミデプシンに対し異なるAR-42の抗悪液質効果は、タンパク質代謝回転を支配する経路を調節する機能の差に起因し得る。これは、Atrogin-1/MAFbxおよびMuRF1という、ユビキチンが媒介する骨格筋タンパク質分解に関与する、2つのE3リガーゼのmRNA発現に対するAR-42の抑制効果により立証される(15、16)(図2D)。
【0099】
腓腹筋のqPCR分析により、悪液質筋(腫瘍あり/媒体;n = 8)において、腫瘍なし/媒体対照(n = 6)と比較し、Atrogin-1およびMuRF1のmRNAレベルが著しく増加することが明らかになった(それぞれ、29.4±3.5倍および25.8±3.9倍)。AR-42は、Atrogin-1(2.7±0.7倍)およびMuRF1(1.1±0.2倍)のmRNA発現を基礎レベルまで回復させることができた(n = 8)。ボリノスタット(n = 8)およびロミデプシン(n = 5)も悪液質筋においてこれら2つのE3リガーゼのmRNA発現を著しく減少させたが、AR-42よりも小幅だった(Atrogin-1/MuRF1:ボリノスタット、9.6±1.8/5.5±1.1倍;ロミデプシン、19.6±3.1/14.6±3.3倍)(図2D)。
【0100】
AR-42の抗悪液質活性はC-26モデルに限定されるものではないことを確認するため、LLCモデルにおいても評価した。皮下にLLC腫瘍のあるC57BL/6マウスをAR-42で処置した(50mg/kg、経口投与、一日おき)。該処置は腫瘍細胞注入後6日目に開始し、後肢筋を殺処分時に摘出する20日目まで続けた。図7に示すように、AR-42はLLC腫瘍ありC57Bl/6マウスを、筋量の減少から守った(腓腹筋:媒体、非悪液質対照の81.7±3.7%;AR-42、92.2±3.5%;前脛骨筋:媒体、80.3±4.0%;AR-42、93.4±3.9%;大腿四頭筋:媒体、84.4±4.6%;AR-42、93.4±4.8%;全P値<0.05、n = 8)。
【0101】
実施例4
AR-42は腫瘍ありマウスの筋の代謝完全性を維持する
悪液質がある場合、骨格筋は、腫瘍/宿主に由来する炎症ストレッサーおよび神経内分泌ストレッサーに反応して複雑な代謝変化を起こす(1)。従って、当社は代謝プロファイリング分析を行い、骨格筋の代謝表現型で悪液質が誘発する、移行に対するAR-42の効果を調べた。腫瘍なしマウスおよびC-26腫瘍ありマウスを、上述のように媒体またはAr-42で処置し、腓腹筋を17日目にメタボローム解析用に回収した。4群(n = 8/群)間の筋の生化学的プロファイル比較は、骨格筋で悪液質が誘発する代謝変化を回復させるというAR-42の機能を明らかにした。これを以下のようにまとめる。
【0102】
解糖
腫瘍あり/媒体マウスの悪液質筋は、グルコースレベルと主要な糖分解中間体のレベルが、腫瘍なし対照より著しく低いことを示した(図3A)。AR-42はこれらの代謝変化を食い止め、筋内のグルコースレベルおよび中間体レベルを腫瘍なし/媒体マウスで見られる基礎線レベルまで、または、該基礎線レベルを上回るまで回復させた。さらに、増加したグルコースは、ソルビトール−フルクトース生合成およびペントースリン酸経路に分流し、ソルビトール、フルクトース、および、ペントースリン酸経路に由来する代謝物であるリボースの生成の増加につながった。
【0103】
グリコーゲン貯蔵
腫瘍あり/媒体マウスの筋は、短鎖マルトオリゴ糖およびグルコース-1-リン酸における著しい減少を示し(図3B)、悪液質筋におけるグリコーゲン貯蔵の枯渇を示唆した。AR-42処置は、これらのグリコーゲン代謝中間体を著しく補充した。
【0104】
遊離アミノ酸
筋消耗の特徴であるタンパク質分解の増加に合わせ、多くの遊離アミノ酸が、腫瘍あり/媒体マウスの悪液質筋において腫瘍なし/媒体マウスのそれと比較して著しく上昇し(図4)、悪液質の表現型であることを示した。同様に、神経伝達物質として機能する、キヌレニン、N-アセチル-アスパルチル-グルタメート、及びγ-アミノブチラートなどのいくつかのアミノ酸誘導体/代謝物が上昇した。対照的に、筋から放出され肝臓の糖新生を補助するアラニンは、悪液質筋では減少した。この悪液質表現型はAR-42処置により食い止められ、筋のタンパク質分解をブロックするというその機能を示した。
【0105】
有機酸
アミノ酸代謝物である2-ヒドロキシブチレートおよびオフタルム酸は、それぞれインスリン抵抗性用バイオマーカ(17)および酸化ストレス(18)用バイオマーカである。腫瘍あり/媒体マウスの筋におけるこれら2つの有機酸の増加(図4)は、悪液質はインスリン抵抗性と酸化ストレスを促進することを示唆し、これは次に、筋消耗を悪化させる。AR-42は2つのバイオマーカを、腫瘍なしマウスで測定されたのと同等のレベルまで劇的に減少させた。
【0106】
実施例5
AR-42は、複数の悪液質促進ドライバを標的にすることによりがん悪液質を抑制する
AR-42がその抗悪液質効果を媒介する機序を明らかにするため、媒体処置の、または、AR-42処置の、腫瘍なしマウスおよびC-26腫瘍ありマウスの血清および腓腹筋を、サイトカインプロファイリング分析およびホールショットガン配列決定法(RNA-seq)でそれぞれ使用した。
【0107】
サイトカインプロファイル
調べた32個のサイトカインのうち(図10)、2つのよく知られた悪液質ドライバであるIL-6および白血病阻止因子(LIF)(19)は、腫瘍あり/媒体マウスの血清において腫瘍なし/媒体マウスのそれと比較し著しく増加したが(IL-6;230±105対2.9±1.3pg/ml;LIF、19.7±9.3対1.7±1.5pg/ml)(図5A、上)、他のサイトカインについて著しい差は見られなかった。AR-42は、腫瘍ありマウス(IL-6、102±38pg/ml;LIF、3.8±1.6pg/ml)において、媒体処置対照と比較しIL-6レベルおよびLIFレベルをそれぞれ56%、88%低減した。悪液質に関連したIL-6の増加を鈍くするという、AR-42の機能を鑑みて、当社は、AR-42の、IL-6受容体α鎖(IL-6Rα)の筋内mRNAレベルに対する効果を調べた。IL-6RαのmRNAは、腫瘍あり/媒体マウス(n = 9)の筋において、腫瘍なしマウス(n = 6)のそれと比較し著しく上昇した(13±1.4倍)。AR-42は、この、悪液質が誘発する増加を85%低減した(2.0±0.2倍;n = 10)(図5、下)。これらの発見は、AR-42は、IL-6シグナル伝達をブロックすることにより筋消耗をある程度抑えることを示唆する。
【0108】
RNA-seq分析
RNA-seqデータの主成分分析により、腫瘍なし/媒体対照と比較した、腫瘍あり/媒体マウスの筋の全般的遺伝子発現パターンに対するC-26腫瘍の顕著な効果が明らかになった(図5B、左)。AR-42は、腫瘍なしマウスの非悪液質筋における遺伝子発現パターンに対しては目に見えるほどの効果はなかったが、悪液質筋の遺伝子発現で腫瘍が誘発する移行は、腫瘍なしマウスのそれに近い状態まで食い止めた。これに従い、当社は、腫瘍あり/媒体マウスと他の3つの処置群の間で異なって発現する遺伝子を一対分析し、この結果をベン図に表した(図5B、右)。対にした分析間で大きく重なる領域は、AR-42は、全般的遺伝子発現で腫瘍が誘発する変化をかなり回復することを示唆する。
【0109】
媒体処置腫瘍ありマウスおよびAR-42処置腫瘍ありマウスの筋における遺伝子発現の一対比較により、全部で677個の遺伝子の発現は4倍以上異なることが明らかになった(376個は上方制御され、301個は下方制御された)(図10)。Ingenuity Pathway Analysis(IPA)を用いた、これらの遺伝子データの機能および疾病関連性についての分析は、異なって発現するこれらの遺伝子のうち66個は、委縮、収縮、発達、および筋形態、および骨格筋細胞サイズ、筋細胞死、およびタンパク質異化のカテゴリーに注釈を付けることを明らかにした(図11)。
【0110】
これらの筋機能―および疾病関連遺伝子のうち以下の6つの遺伝子に対するAR-42の効果は、これらが示すがん誘発悪液質との関連を鑑みると注目に値する。これらには、(Forkhead box protein O1をコード化する)Foxo1(20〜23)ならびにその標的遺伝子であるTrim63(MuRF1)およびFbxo32(Atrogin-1)(24、25)と、PNPLA2[脂肪組織トリグリセリドリパーゼ(adipose triglyceride lipase、ATGL)](26、27)と、UCP3(脱共役タンパク質3)(28、29)と、Mef2c[筋原性転写因子(myogenic transcription factor)筋細胞増強因子(myocyte enhancer factor)](30)が含まれる(図5C)。これら6つの遺伝子に関するRNA-seqデータのqRT-PCRによる検証は、4つの処置群において、相対的mRNA発現レベルについてのデータセット間に相関関係があることを示した(図5D)。
【0111】
実施例6
AR-42での遅延処理は、筋消耗を抑制するのに依然として効果的である
上述の発見は、骨格筋の代謝プロファイルおよび遺伝子発現プロファイルを回復させることによりがん関連筋消耗を抑制する際、経口AR-42が有効であることを示す。これらの実験において、処置は、消耗の明らかな兆候が見られない場合は悪液質の進行初期に開始した。AR-42処置をより遅く開始することが悪液質を依然として防ぐか否かを調べるため、AR-42でのC-26腫瘍ありマウスの処置(50mg/kg、経口投与、一日おき)を腫瘍細胞注入後6日目、10日目、および12日目に開始した。
【0112】
当社の先のデータ(図1)と同じく、腫瘍あり/媒体マウスは17日目までに体重を19%減少させた(腫瘍を除く)。対照的に、6日目(D6)、10日目(D10)、または12日目(D12)で開始したAR-42での処置は、腫瘍成長に目に見えるほどの影響を与えることなく(図6A、右)、重量減少をそれぞれ6%、11%、および12%に抑えた(n = 8)(図6A、左)。さらに、AE-42処置マウスは、その媒体処置対照よりより健康であるという兆候を示した(図6B)。AR-42のこの予防効果は腓腹筋重量の維持に反映され、前脛骨筋および大腿四頭筋の重量の維持には、より少ない程度で反映された(図6C)。筋量に対する予防効果と同じく、握力測定は、AR-42は15日目と16日目において、全ての薬物処置群で媒体処置対照と比較し前肢の筋力維持に役立つことを示した(図6D)。
【0113】
実施例7
腫瘍あり/媒体マウスは、心臓、および、特に脂肪組織の質量の著しい減少(腫瘍なし対照の29.3±6.0%)などの、悪液質の他の際立った特徴を示したが、これは、AR-42の処置により改善した(図1E、上)。興味深いことに、AR-42は腫瘍なしマウスにおいて脂肪組織の質量を約50%減少させたが、腫瘍ありマウスの脂肪組織質量の減少は腫瘍なし/AR-42マウスのそれと同等のレベルまで回復させた。二分された結果は、脂質ホメオスタシスを維持するというAR-42の機能を示す。
【0114】
C-26腫瘍ありマウスは、腫瘍なし対照マウスと比較し著しく肥大した脾臓を呈したが(11)、これはAR-42で改善されなかった(図1E、下)。C-26腫瘍ありマウスにおける脾腫は、脾臓にある骨髄由来抑制細胞および他の免疫細胞の増殖に起因することから(12)、この発見は、AR-42は免疫学的機序を介してというより主に筋に作用していることを示唆する。
【0115】
筋消耗に対するAR-42の予防効果は、悪液質が誘発する骨格筋線維サイズの減少の抑止により明らかになった。腫瘍あり/媒体マウスの筋線維の平均断面積は、15日目に腫瘍なし対照と比較して48.2%の減少を示し(1297.6±638.8対2503.5±917.5μm2)、これはAR-42により回復した(2146.3±923.4μm2)(図2A、左)。腫瘍あり/媒体マウスの悪液質筋における、線維サイズ分布のより小さい断面積への顕著な移行は、AR-42により食い止められた(図2A、右)。
【0116】
実施例8
骨格筋タンパク質代謝回転の調節における異なる効果
骨格筋量は、タンパク質の合成と分解の間のバランスにより調節されるため、ボリノスタットおよびロミデプシンに対するAR-42の特異的な抗悪液質効果は、タンパク質代謝回転を支配する経路を調節する機能の差に起因し得る。これは、Atrogin-1/MAFbxおよびMuRF1という、ユビキチンが媒介する骨格筋タンパク質分解に関与する2つのE3リガーゼの、mRNA発現に対するAR-42の抑制効果により立証される(15、16)(図2D)。予想通り、腓腹筋のqPCR分析により、悪液質筋(腫瘍あり/媒体;n = 8)において、腫瘍なし/媒体対照(n = 6)と比較し、Atrogin-1およびMuRF1のmRNAレベルが著しく増加すること(それぞれ、29.4±3.5倍および25.8±3.9倍)が明らかになった。AR-42は、Atrogin-1(2.7±0.7倍)およびMuRF1(1.1±0.2倍)のmRNA発現を基礎レベルまで回復させることができた(n = 8)。ボリノスタット(n = 8)およびロミデプシン(n = 5)も、悪液質筋においてこれら2つのE3リガーゼのmRNA発現を著しく減少させたが、AR-42よりも小幅だった(Atrogin-1/MuRF1:ボリノスタット、9.6±1.8/5.5±1.1倍;ロミデプシン、19.6±3.1/14.6±3.3倍)(図2D)。
【0117】
実施例9
細胞
培養したC-26細胞およびLLC細胞を、37℃、5%CO2の加湿インキュベータ内で、ウシ胎児血清(FBS)-追加(10%)RPMI1640培地およびDMEM培地(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)それぞれに維持した。がん悪液質モデル用マウスに注入するため、細胞をトリプシン処理し、FBS-追加培養基においてペレット状にし、その後、5×106細胞/mLの濃度で無菌PBSに再懸濁することにより収集した。
【0118】
マウス
CD2F1マウスおよびC57BL/6マウスを、光周期(12時間明/12時間暗)、温度、および湿度が一定という条件下で、水と通常の食餌には自由にアクセスできるようにして集団飼育した。マウスは、経口胃管栄養法により薬物(AR-42、ボリノスタット、媒体)を投与する間、一時的に麻酔した。摂餌量は、各ケージの餌を毎日検量し、ケージにいるマウスの数で毎日の餌の減少を除算することにより推定した。腫瘍体積は、キャリパー測定により基準式(長さ×幅2×π/6)を用いて算出した。
【0119】
握力測定
前肢の握力を測定するため、各マウスをその尾の付け根でつかみ、その前肢でプルバーをつかむまで装置の上で下降させた。マウスをその後、該マウスがバーを放すまで握力計から真っ直ぐ並行にそっと引き離し、得られる最大力を記録した。5回の測定を各マウスで行い、その平均をマウスの握力と指定した。
【0120】
RNA-seqライブラリ作成およびデータ分析パイプライン
RNAの質を、ピコRNAチップを用いてAgilent 2100 Bバイオアナライザで評価し、RNAの総投入量をAgilent社のQubit(登録商標)RNAアッセイを用いて評価した。トランスクリプトームライブラリをIllumina社のTruSeq RNA Sample Preparation Kit V2を用いて作成した。結果として生じるライブラリの量と質を、Agilent社のQubit(登録商標)DNAアッセイおよびPerkinElmer社のLabchip(登録商標)DNA GX分析をそれぞれ用いて評価した。全ライブラリを均等な割合で混ぜ合わせ、Illumina社のHiSeq 2500シーケンサで配列決定する際、約4000万個のフィルタ通過リードを生む試料のプールを生成した。Illumina社のHiSeq CASAVAパイプラインの生シーケンスデータの質を、FastQC、RNASeQC、およびRSeQCソフトウェアを用いて評価した。それに続く分析は次の通りだった。デマルチプレックスした(demultiplexed)フィルタ通過シーケンスリードをTopHat 2 (v2.0.7) RNAseqアライナを用いてGRCm38/mm10に整列させ、整列させたリードをUCSCのmm10遺伝子アノテーションにアセンブルするためにCuffLinks 2 (c2.1.1)を使用し、CuffCompareおよびCuffMergeを使用して整列させたリードをmm10遺伝子にコンパイルし、アセンブルした転写をまとめてカスタム遺伝子アノテーションにし、CuffDiffを使用して、各処置群に関連する異なる遺伝子発現を比較した。
【0121】
実施例10
AR-42の抗悪液質活性はC-26モデルに特異的なものではないことを確認するため、LLCモデルにおいても評価した。皮下に11個のLLC腫瘍があるC57BL/6マウスを、AR-42で処置した(50mg/kg、経口投与、一日おき)。該処置は腫瘍細胞注入後6日目に開始し、後肢筋を殺処分時に摘出する20日目まで続けた。
【0122】
図7に示すように、AR-42はLLCマウス悪液質モデルでがんが誘発する筋消耗を防ぐ。腫瘍なしマウスと腫瘍ありマウス両方の、腓腹筋、前脛骨筋、および大腿四頭筋を含む後肢筋の質量を、媒体処置腫瘍ありマウスのそれと比較し、媒体と比較したAR-42の効果。マウスは、腫瘍細胞注入後20日目で殺処分した点を除き、図1Aで記載したのと同じ方法で処置した。データは平均±標準偏差で示す(n = 8)(腓腹筋:媒体、非悪液質対照の81.7±3.7%;AR-42、92.2±3.5%;前脛骨筋:媒体、80.3±4.0%;AR-42、93.4±3.9%;大腿四頭筋:媒体、84.4±4.6%;AR-42、93.4±4.8%;全P値<0.05、n = 8)。
【0123】
〔参考文献〕
1. Fearon KC, Glass DJ, Guttridge DC. Cancer cachexia: mediators, signaling, and metabolic pathways. Cell Metab 2012; 16: 153-66.
2. Tisdale MJ. Cachexia in cancer patients. Nat Rev Cancer 2002; 2: 862-71.
3. von Haehling S, Anker SD. Cachexia as a major underestimated and unmet medical need: facts and numbers. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2010; 1: 1-5.
4. Tisdale MJ. Mechanisms of cancer cachexia. Physiol Rev 2009; 89: 381-410.
5. Lee SJ, Glass DJ. Treating cancer cachexia to treat cancer. Skelet Muscle 2011; 1: 2.
6. Maccio A, Madeddu C, Mantovani G. Current pharmacotherapy options for cancer anorexia and cachexia. Expert Opin Pharmacother 2012; 13: 2453-72.
7. Kulp SK, Chen CS, Wang DS, Chen CY, Chen CS. Antitumor effects of a novel phenylbutyrate-based histone deacetylase inhibitor, (S)-HDAC-42, in prostate cancer. Clin Cancer Res 2006; 12: 5199-206.
8. Lu YS, Kashida Y, Kulp SK, Wang YC, Wang D, Hung JH, et al. Efficacy of a novel histone deacetylase inhibitor in murine models of hepatocellular carcinoma. Hepatology 2007; 46: 1119-30.
9. Sargeant AM, Rengel RC, Kulp SK, Klein RD, Clinton SK, Wang YC, et al. OSU-HDAC42, a histone deacetylase inhibitor, blocks prostate tumor progression in the transgenic adenocarcinoma of the mouse prostate model. Cancer Res 2008; 68: 3999-4009.
10. Yang YT, Balch C, Kulp SK, Mand MR, Nephew KP, Chen CS. A rationally designed histone deacetylase inhibitor with distinct antitumor activity against ovarian cancer. Neoplasia 2009; 11: 552-63, 3 p following 63.
11. Acharyya S, Ladner KJ, Nelsen LL, Damrauer J, Reiser PJ, Swoap S, et al. Cancer cachexia is regulated by selective targeting of skeletal muscle gene products. J Clin Invest 2004; 114: 370-8.
12. Mundy-Bosse BL, Lesinski GB, Jaime-Ramirez AC, Benninger K, Khan M, Kuppusamy P, et al. Myeloid-derived suppressor cell inhibition of the IFN response in tumor-bearing mice. Cancer Res 2011; 71: 5101-10.
13. Lucas DM, Alinari L, West DA, Davis ME, Edwards RB, Johnson AJ, et al. The novel deacetylase inhibitor AR-42 demonstrates pre-clinical activity in B-cell malignancies in vitro and in vivo. PLoS One 2010; 5: e10941.
14. Sasakawa Y, Naoe Y, Inoue T, Sasakawa T, Matsuo M, Manda T, et al. Effects of FK228, a novel histone deacetylase inhibitor, on human lymphoma U-937 cells in vitro and in vivo. Biochem Pharmacol 2002; 64: 1079-90.
15. Bodine SC, Latres E, Baumhueter S, Lai VK, Nunez L, Clarke BA, et al. Identification of ubiquitin ligases required for skeletal muscle atrophy. Science 2001; 294: 1704-8.
16. Lecker SH, Jagoe RT, Gilbert A, Gomes M, Baracos V, Bailey J, et al. Multiple types of skeletal muscle atrophy involve a common program of changes in gene expression. FASEB J 2004; 18: 39-51.
17. Gall WE, Beebe K, Lawton KA, Adam KP, Mitchell MW, Nakhle PJ, et al. alpha-hydroxybutyrate is an early biomarker of insulin resistance and glucose intolerance in a nondiabetic population. PLoS One 2010; 5: e10883.
18. Soga T, Baran R, Suematsu M, Ueno Y, Ikeda S, Sakurakawa T, et al. Differential metabolomics reveals ophthalmic acid as an oxidative stress biomarker indicating hepatic glutathione consumption. J Biol Chem 2006; 281: 16768-76.
19. Tisdale MJ. Biology of cachexia. J Natl Cancer Inst 1997; 89: 1763-73.
20. Kamei Y, Miura S, Suzuki M, Kai Y, Mizukami J, Taniguchi T, et al. Skeletal muscle FOXO1 (FKHR) transgenic mice have less skeletal muscle mass, down-regulated Type I (slow twitch/red muscle) fiber genes, and impaired glycemic control. J Biol Chem 2004; 279: 41114-23.
21. Reed SA, Sandesara PB, Senf SM, Judge AR. Inhibition of FoxO transcriptional activity prevents muscle fiber atrophy during cachexia and induces hypertrophy. FASEB J 2012; 26: 987-1000.
22. Beharry AW, Sandesara PB, Roberts BM, Ferreira LF, Senf SM, Judge AR. HDAC1 activates FoxO and is both sufficient and required for skeletal muscle atrophy. J Cell Sci 2014; 127: 1441-53.
23. Sandri M, Sandri C, Gilbert A, Skurk C, Calabria E, Picard A, et al. Foxo transcription factors induce the atrophy-related ubiquitin ligase atrogin-1 and cause skeletal muscle atrophy. Cell 2004; 117: 399-412.
24. Gumucio JP, Mendias CL. Atrogin-1, MuRF-1, and sarcopenia. Endocrine 2013; 43: 12-21.
25. Bonaldo P, Sandri M. Cellular and molecular mechanisms of muscle atrophy. Dis Model Mech 2013; 6: 25-39.
26. Das SK, Hoefler G. The role of triglyceride lipases in cancer associated cachexia. Trends Mol Med 2013; 19: 292-301.
27. Young SG, Zechner R. Biochemistry and pathophysiology of intravascular and intracellular lipolysis. Genes Dev 2013; 27: 459-84.
28. Collins P, Bing C, McCulloch P, Williams G. Muscle UCP-3 mRNA levels are elevated in weight loss associated with gastrointestinal adenocarcinoma in humans. Br J Cancer 2002; 86: 372-5.
29. Constantinou C, Fontes de Oliveira CC, Mintzopoulos D, Busquets S, He J, Kesarwani M, et al. Nuclear magnetic resonance in conjunction with functional genomics suggests mitochondrial dysfunction in a murine model of cancer cachexia. Int J Mol Med 2011; 27: 15-24.
30. Shum AM, Mahendradatta T, Taylor RJ, Painter AB, Moore MM, Tsoli M, et al. Disruption of MEF2C signaling and loss of sarcomeric and mitochondrial integrity in cancer-induced skeletal muscle wasting. Aging (Albany NY) 2012; 4: 133-43.
31. Sherry BA, Gelin J, Fong Y, Marano M, Wei H, Cerami A, et al. Anticachectin/tumor necrosis factor-alpha antibodies attenuate development of cachexia in tumor models. FASEB J 1989; 3: 1956-62.
32. Strassmann G, Fong M, Kenney JS, Jacob CO. Evidence for the involvement of interleukin 6 in experimental cancer cachexia. J Clin Invest 1992; 89: 1681-4.
33. Bonetto A, Penna F, Minero VG, Reffo P, Bonelli G, Baccino FM, et al. Deacetylase inhibitors modulate the myostatin/follistatin axis without improving cachexia in tumor-bearing mice. Curr Cancer Drug Targets 2009; 9: 608-16.
34. Alamdari N, Aversa Z, Castillero E, Hasselgren PO. Acetylation and deacetylation--novel factors in muscle wasting. Metabolism 2013; 62: 1-11.
35. Senf SM, Sandesara PB, Reed SA, Judge AR. p300 Acetyltransferase activity differentially regulates the localization and activity of the FOXO homologues in skeletal muscle. Am J Physiol Cell Physiol 2011; 300: C1490-501.
36. Black BL, Olson EN. Transcriptional control of muscle development by myocyte enhancer factor-2 (MEF2) proteins. Annu Rev Cell Dev Biol 1998; 14: 167-96.
37. Moore-Carrasco R, Garcia-Martinez C, Busquets S, Ametller E, Barreiro E, Lopez-Soriano FJ, et al. The AP-1/CJUN signaling cascade is involved in muscle differentiation: implications in muscle wasting during cancer cachexia. FEBS Lett 2006; 580: 691-6.
38. Der-Torossian H, Wysong A, Shadfar S, Willis MS, McDunn J, Couch ME. Metabolic derangements in the gastrocnemius and the effect of Compound A therapy in a murine model of cancer cachexia. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2013; 4: 145-55.
39. Asp ML, Tian M, Wendel AA, Belury MA. Evidence for the contribution of insulin resistance to the development of cachexia in tumor-bearing mice. Int J Cancer 2010; 126: 756-63.
40. Honors MA, Kinzig KP. The role of insulin resistance in the development of muscle wasting during cancer cachexia. J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012; 3: 5-11.
41. Moylan JS, Reid MB. Oxidative stress, chronic disease, and muscle wasting. Muscle Nerve 2007; 35: 411-29.
42. Chu PC, Kulp SK, Chen CS. Insulin-like growth factor-I receptor is suppressed through transcriptional repression and mRNA destabilization by a novel energy restriction-mimetic agent. Carcinogenesis 2013; 34: 2694-705.
【0124】
上記記載は特定の態様について言及するが、これらの態様は単に例示であることを理解すべきである。種々の修正および変形を本明細書に記載の方法に施すことが可能であることは、当業者には明白であろう。従って、本明細書は、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内の修正および変形を含むことが意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図11-5】
図11-6】
図11-7】
図11-8】
図11-9】
図11-10】
図11-11】
図11-12】
図11-13】
図11-14】