特許第6473295号(P6473295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473295
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20190207BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190207BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190207BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20190207BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190207BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20190207BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/37
   A61K8/35
   A61K8/86
   A61K8/60
   A61Q17/04
   A61K8/81
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-80593(P2014-80593)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-199689(P2015-199689A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】菊田 穣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 行
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−219424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ケイヒ酸誘導体およびジベンゾイルメタン誘導を含有し、かつ前記(A)成分の配合量が10.5〜16.5%であり、(B)アクリル酸系水溶性高分子増粘剤を含有し、かつ前記(B)成分の配合量が0.01〜0.13%であり、(C)アルキルグルコシド誘導体およびポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上を含有し、かつ前記(C)成分の配合量が0.3〜1.5%であり、前記アルキルグルコシド誘導体のHLB値が12.5以上であり、前記ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルのHLB値が11.0以上であることを特徴とする、エアゾールの場合を除く乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物において、べたつきがなく使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ高い紫外線吸収効果を有する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地表に降り注ぐ紫外線の量が増加し、紫外線から皮膚を守ることに関心が高まっており、夏季のみならず一年を通し、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物が使用されるようになっている。しかしながら、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物は、使用感や安定性に問題があり、これらを改善する方法が種々検討されている(特許文献1、特許文献2)。
また、霧状に噴霧可能であることは、塗布しやすいという面で有用であり、霧状に噴霧可能な乳化組成物についても提案がなされている(特許文献3)。更に紫外線吸収効果を持続させるために、塗り直しが必要な場合も多いので、霧状に噴霧可能であることは持ち歩きや塗り直しに便利であり、消費者のニーズが高まっている。
【0003】
しかしながら、紫外線吸収剤の高配合とそれに起因した界面活性剤の高配合により、べたつき等使用感の劣化や噴霧不良等の問題が生じやすく、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−505116号公報
【特許文献2】特開2012−144466号公報
【特許文献3】特開2006−151901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物において、べたつきがなく使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ高い紫外線吸収効果を有する乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる事情に鑑み、本発明者が鋭意検討した結果、分離しており、使用時に容易に均一混合でき、かつ霧状に噴霧可能な乳化組成物であって、下記(A)〜(C)を配合することによりべたつきがなく使用感が優れ、かつ紫外線吸収効果も高いことを見出した。(A)油溶性紫外線吸収剤、(B)水溶性高分子増粘剤、(C)非イオン性界面活性剤。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明は、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物において、べたつきがなく使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ高い紫外線吸収効果を有することを特徴とする乳化組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の乳化組成物は、分離しているが、使用時に容易に均一混合することができる。
【0009】
本発明の乳化組成物は、ディスペンサー等を利用することにより、霧状に噴霧可能である。
なお、本発明において「霧状に噴霧可能」とは、エアゾールの場合を除く。
【0010】
本発明の乳化組成物は前記(A)成分、前記(B)成分および前記(C)成分を含有する。
【0011】
本発明に用いる前記(A)成分は、特に限定されないが、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ケイヒ酸ベンジル、パラメトキシケイヒ酸エトキシエチル、ジパラメトキシケイヒ酸イソプロピル・ジイソプロピルケイヒ酸エステル混合物等のケイヒ酸誘導体およびt−ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体を用いることが好ましい。
【0012】
本発明には、前記(A)成分の他に油溶性紫外線吸収剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、ジヒドロキシプロピルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸誘導体、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸t−ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸誘導体、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸誘導体、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、その他にオクトクリレン、オクチルトリアゾン、ヒドロキシメチルフェニルベンゾトリアゾール等を用いることができる。
【0013】
本発明に用いる前記(A)成分の配合量は、10.5%〜16.5%が好ましい。更に10.5〜14.5%が好ましく、特に10.5〜12.5%が好ましい。10.5%未満であると紫外線吸収効果が低く、16.5%を超えると紫外線吸収効果は高いが、べたつきを生じ、使用感が劣る。
なお、本発明において他の成分についての含有量を示す%数は、特段の断りがない限り重量%数とする。
【0014】
本発明に用いる前記(B)成分は、特に限定されないが、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー等を用いることができる。
【0015】
本発明に用いる前記(B)成分の配合量は、0.01〜0.13%が好ましい。更に0.01〜0.09%が好ましく、特に0.01〜0.05%が好ましい。0.01%未満であると容易に均一混合しにくくなり、0.13%を超えると容易に均一混合しにくくなり、噴霧不良も生じてしまう。
【0016】
本発明に用いる前記(C)成分は、特に限定されないが、セスキステアリン酸PEG−20メチルグルコース 、ジオレイン酸PEG−120メチルグルコース、ジステアリン酸PEG−20メチルグルコース等のアルキルグルコシド誘導体、ステアリン酸PEG−40、ステアリン酸PEG−25、ステアリン酸PEG−10等のポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる前記(C)成分の配合量は0.3〜1.5%が好ましい。更に0.6〜1.2%が好ましく、特に0.8〜1.0%が好ましい。0.3%未満であると容易に均一混合しにくくなり、噴霧不良が生じてしまう。1.5%を超えるとべたつきを生じ、使用感が劣り、噴霧不良も生じてしまう。
【0018】
前記アルキルグルコシド誘導体のHLB値は12.5以上が好ましい。12.5未満の場合は分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じてしまう。
【0019】
なお、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydrophile−Lipophile Balance)を示す指標であり、前記アルキルグルコシド誘導体の場合は「Griffin法」を用いて算出した。「HLB値は12.5以上」とはGriffin法の意味において、25℃におけるHLBが12.5以上である界面活性剤を意味する。Griffin法に従うHLB値は、「J.Soc.Cosm.Chem.1954年(第5巻),249〜256ページ」において定義されている。
【0020】
前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステル誘導体のHLB値は11.0以上が好ましい。11.0未満の場合は、分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じてしまう。
【0021】
なお、前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステル誘導体のHLB値は実測値によるものである。測定の方法は「ハンドブック−化粧品・製剤原料−改定版 日光ケミカルズ株式会社 1977年,854〜855ページ」に記載されている方法を準用した。
【0022】
本発明には、前記(C)成分の他に非イオン性界面活性剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合してもよい。例えば、イソステアリン酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル誘導体、PEG−9ジメチコン、PEG−11メチルエーテルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーン等を用いることができる。
【0023】
本発明の乳化組成物は、その他の化粧料等に通常用いられる原料を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜配合してもよい。例えば、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、高級アルコールなどの油剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、水溶性紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料、ビタミン類、植物抽出液、無機塩等を用いることができる。
【0024】
以下に、実施例をあげて、本発明をより詳細に説明する。本発明はこれにより制限されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例に先立って実施例で採用した評価法を説明する。
【0026】
(紫外線吸収効果)
実施例、比較例に示した乳化組成物を被験者20名に2週間使用させ、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:とても高い 20名が日焼けしたと感じなかった。
○:高い 16〜19名が日焼けしたと感じなかった。
△:普通 10〜15名が日焼けしたと感じなかった
×:低い 1〜9名が日焼けしたと感じなかった
【0027】
(均一混合性)
実施例、比較例に示した乳化組成物を、磯矢硝子工業社製規格NO.5K瓶に35g入れ、一晩放置して分離させ、翌日以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:とても良い 軽く上下に振っただけで均一混合する。
○:良い 軽く上下に数回振り混ぜると均一混合する。
△:普通 強く上下に数回振り混ぜると均一混合する。
×:悪い 強く上下に数回振り混ぜても均一混合しない。
【0028】
(使用感)
実施例、比較例に示した乳化組成物を被験者20名に使用させ、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 15名以上がべたつかないと評価した。
○:良好 10名〜14名がべたつかないと評価した。
△:普通 5名〜9名がべたつかないと評価した。
×:悪い 4名以下がべたつかないと評価した。
【0029】
(噴霧状態)
本発明の乳化組成物を、容器に充填し、吉野工業所製「Y−70(410−20)チップ径0.25mm」ディスペンサーを用い、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:とても良好 霧がとても細かく均一。
○:良好 霧が細かく均一。
△:普通 霧がやや細かく均一。
×:悪い 霧が不均一。
【0030】
(実施例1〜22、比較例1〜14)
実施例1〜22、比較例1〜14に示した乳化組成物を調製し、紫外線吸収効果、均一混合性、使用感および噴霧状態について評価し、その結果を表1〜6に示した。
【0031】
(調製方法)
a相およびb相を80℃以上に熱し、a相にb相を加え均一に混合する。次いでc相を加え均一に混合し、撹拌しながら冷却する。45℃まで冷却し、d相を加え均一に混合し、更に撹拌しながら30℃まで冷却する。なお、c相の配合量はpHが6.3程度になるように適宜調整する。
【0032】
【表1】
比較例1は紫外線吸収効果が低く、比較例2は使用感が劣った。
【0033】
【表2】
比較例3は容易に均一混合しにくかった。比較例4は容易に均一混合しにくく、噴霧不良も生じた。
【0034】
【表3】
比較例5は、使用感が劣った。また比較例6および7は使用感が劣り、噴霧不良も生じた。更に比較例8〜10は、容易に均一混合しにくく、使用感が劣り、噴霧不良も生じた。
【0035】
【表4】
比較例11は分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じた。比較例12は使用感が劣り、噴霧不良も生じた。
【0036】
【表5】
比較例13は分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じた。
【0037】
【表6】
比較例14は分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じた。
【0038】
実施例1〜22から明らかなように、本発明の乳化組成物は、使用時に容易に均一混合でき、使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ紫外線吸収効果も高かった。
【0039】
比較例1のように、前記(A)成分が少ない場合は、べたつかず使用感は優れるが、紫外線吸収効果が低い。比較例2のように、前記(A)成分が多い場合は、紫外線吸収効果は高いが、べたつきを生じ使用感が劣る。比較例3のように、前記(B)成分が少ない場合は、噴霧状態はよいが、容易に均一混合しにくくなる。比較例4のように、前記(B)成分が多い場合は、容易に均一混合しにくく、噴霧不良も生じた。前記(C)成分が比較例5のような場合は、べたつきを生じ使用感が劣る。また、前記(C)成分が比較例6および7のような場合は、べたつきを生じ使用感が劣り、噴霧不良も生じた。更に、前記(C)成分が比較例8〜10のような場合は、容易に均一混合しにくく、べたつきを生じ使用感が劣り、噴霧不良も生じた。比較例11のように前記(C)成分の配合量が少ない場合は、べたつかず使用感に優れるが、分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じた。比較例12のように前記(C)成分の配合量が多い場合は、容易に均一混合しやすいが、べたつきを生じ使用感が劣り、噴霧不良も生じた。比較例13のようにアルキルグルコシド誘導体のHLB値が12.5未満の場合は、分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良も生じた。比較例14のように、前記ポリエチレングリコール脂肪酸エステル誘導体のHLB値が11.0未満の場合は、分離が不安定で、容易に均一混合できず、噴霧不良が生じた。
【0040】
(実施例23〜26)
実施例1〜22の結果より、最適な乳化組成物を調製した。その結果を以下の表7に示す。
【表7】
実施例23〜26の乳化組成物は、べたつきがなく使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ高い紫外線吸収効果を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、紫外線吸収剤が高配合された乳化組成物において、べたつきがなく使用感が優れ、霧状に噴霧可能であり、かつ紫外線吸収効果も高い乳化組成物を提供できる。