(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防音箱内を2室に仕切る仕切壁を設け,前記仕切壁により仕切られた一方の室を前記作業機と前記エンジンを収容するエンジン室,他方の室を通気路とし,前記エンジン室と前記通気路を前記仕切壁に設けた連通口を介して連通すると共に,
前記エンジン室内の空気を前記通気路に向かって吹き出し,又は,前記通気路内の空気を前記エンジン室に向かって吸引する冷却風の流れを生じさせるファンを設け,
前記排気ガス後処理装置を,前記通気路内に配置したことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型作業機。
前記仕切壁を上下方向に配置し,前記通気路の上部に前記開口部を形成すると共に,前記電子部品を,前記処理装置本体に対し高所に配置し,前記ダクトを,前記仕切壁と対向する防音箱の側壁に設けると共に,前記ダクトの前記一端を,前記処理装置本体の上端位置よりも上方で,前記電子部品よりも下方において開口することを特徴とする請求項2記載のエンジン駆動型作業機。
前記電子部品の上部を覆い且つ冷却風を案内する導風板を,前記防音箱の内部に,前記開口部より離間して設けたことを特徴とする請求項3記載のエンジン駆動型作業機。
前記排気ガス後処理装置の側方における防音箱の側壁の全部又は一部を着脱又は開閉可能として点検扉としたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のエンジン駆動型作業機。
【背景技術】
【0002】
発電機や圧縮機等の作業機と,この作業機を駆動するエンジンを共に防音箱内に収容したエンジン駆動型作業機では,ランニングコストを抑える目的から,作業機を駆動するエンジンとして,ガソリンに比較して安価な軽油を燃料とするディーゼルエンジンを採用するのが一般的である。
【0003】
このディーゼルエンジンは,その構造上,燃料の燃焼と共に,大気汚染や健康被害の原因となる粒子状物質(パティキュレート・マター,以下「PM」という。)を発生することから,ディーゼルエンジンの排気路中にDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)と呼ばれる排気ガス後処理装置(以下,単に「DPF」という。)を設け,PMを捕集した後の排気ガスを排出することで,PMの排出基準値以下での排気を実現している(特許文献1)。
【0004】
このDPFは,内蔵するフィルタによって排気ガス中に含まれるPMを捕集することでPMの排出量を減少しようというものであるが,DPF内の排気ガス温度がPMの燃焼温度よりも低い状態で使用されていると,フィルタに対するPMの堆積が進行し,フィルタはやがて目詰まりを起こし,このフィルタの目詰まりによって排気抵抗が高まると,エンジンの出力低下や燃費の悪化を招く。
【0005】
そのため,ディーゼルエンジンの排気路中に設けられるDPF本体内に,フィルタの他に酸化触媒やヒータ,助燃剤噴射手段等を収容すると共に,DPF本体の外周や排気路中に取り付けられた温度センサや圧力センサ等の電子部品から成る検出手段を設け,前記検出手段からの検知信号に基づいてDPF本体内の温度や圧力を監視して前述のヒータや助燃剤噴射手段を制御することにより,DPF本体内の温度を酸化触媒の活性化温度以上とすることで,フィルタに捕集されたPMを燃焼させフィルタを再生できるようにしたものが提案されている(特許文献1[0032]欄他)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディーゼルエンジンの排気路中に設けられたDPF本体は,ディーゼルエンジンからの高温の排気ガスが導入されることにより,また,フィルタに堆積したPMがDPF本体内で燃焼等することにより高温となっている。
【0008】
そのため,前述のようにDPF本体の外周や外周近傍に電子部品が設けられている場合,DPF本体の放射熱によって高温に加熱されるためにこれらの電子部品が破損するおそれがある。
【0009】
前掲の特許文献1に記載の発明では,DPF本体に取り付けたセンサ等の電子部品が加熱により破損することを防止するために,防音箱内に収容されたファンによって発生した冷却風を防音箱外に誘導,放出するための通気路内にDPF本体を配置することにより,ファンによる送風中,排風の一部がDPFの外周を流れるようにしてDPF本体の外周に取り付けた制御機器を冷却できるようにしている。
【0010】
しかし,この構成では,エンジン駆動型作業機が停止すると,エンジンによって駆動されていたファンも停止することから,DPF本体の外周や外周近傍に配置されている電子部品に対する送風も停止する。
【0011】
その一方で,DPF本体はエンジンの停止によってもすぐには冷却されず,停止後しばらくの間は依然として高温の状態にある。
【0012】
そのため,DPF本体の外周や外周近傍に設けられた電子部品は,DPF本体の余熱によって依然として破損の危険にさらされることとなる。
【0013】
特に,前掲の特許文献1に記載されているエンジン駆動型作業機では,DPF本体内の温度が過度に低下するとフィルタに捕集されたPMの燃焼・分解効率が低下することに鑑み,ファンによって発生した排風がDPF本体に直接当たらないようにするために,DPF本体を,エンジン室と通気路間を仕切る仕切板と防音箱の天板とが交叉する角部の内側に配置していることから,エンジンの停止によりファンからの排風が停止すると,DPF本体からの放射熱がこの角部に籠もってなかなか発散されないため,DPF本体の外周や外周近傍に配置されている電子部品は,エンジンの停止後においても比較的長時間,高温に晒されることとなる。
【0014】
なお,前掲の特許文献1では,DPFに設けたヒータや助燃剤噴射手段の動作を制御するための制御部品として設けられた温度センサや圧力センサ等を冷却対象としているが,これらの制御部品に限定されず,DPFの外周や外周近傍に電子部品やその付属機器が設けられている場合,これらについてもDPF本体の熱により破損するおそれがあることから,冷却の必要がある。
【0015】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,エンジン駆動型作業機の作動時はもとより,エンジン駆動型作業機が停止した後であっても,未だDPF本体が高温の状態にある間,DPF本体の外周や外周近傍に配置された電子部品に対する冷却風の導入を行うことができる構造を備えたエンジン駆動型作業機を提供することにより,DPF本体の放射熱による電子部品の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0017】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型作業機1は,
圧縮機や発電機等の作業機3と,前記作業機3を駆動するエンジン5と,前記エンジン5の排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を除去する排気ガス後処理装置(DPF)7を防音箱9内に収容したエンジン駆動型作業機1において,
前記排気ガス後処理装置(DPF)7を,前記エンジン5の排気路51中に設けられた,フィルタを内蔵する処理装置本体(DPF本体)71と,前記処理装置本体71の外周,及び/又は外周近傍に配置された電子部品72を備えた構成とし,
前記防音箱9に,一端6aを前記電子部品72に近接して開口すると共に,他端6bを前記防音箱9外と連通したダクト6を設けると共に,
前記ダクト6の前記一端6aよりも高所における前記防音箱9の上面を含む外壁面いずれかの位置に,前記防音箱9の内外を連通する開口部91を設け,
前記エンジン駆動型作業機1の停止時,前記防音箱9内に収容されている機器の余熱によって暖められた前記防音箱9内の空気が上昇して前記開口部91を介して放出するため,前記ダクト6の前記一端6aと前記開口部91を,前記防音箱9内の空間を介して連通
し,負圧となった前記防音箱9内に前記ダクト6を介して機外の空気が吸い込まれるように構成したことを特徴とし(請求項1),これにより,エンジン駆動型作業機1の停止後,防音箱9内に収容された機器が冷却される迄の間,前記ダクト6の前記他端6bから前記電子部品72の周辺を通り,前記開口部91に至る冷却風の流れを生じさせるようにした。
【0018】
上記構成のエンジン駆動型作業機1において,前記防音箱9内を2室に仕切る仕切壁92を設け,前記仕切壁92により仕切られた一方の室を前記作業機3と前記エンジン5を収容するエンジン室9a,他方の室を通気路9bとし,前記エンジン室9aと前記通気路9bを前記仕切壁92に設けた連通口93を介して連通すると共に,
前記エンジン室9a内の空気を前記通気路9bに向かって吹き出し,又は,前記通気路9b内の空気を前記エンジン室9aに向かって吸引する冷却風の流れを生じさせるファン52を設け,
前記排気ガス後処理装置(DPF)7を,前記通気路9b内に配置するものとしても良い(請求項2)。
【0019】
この場合,仕切壁92を上下方向に配置し,前記通気路9bの上部に前記開口部91を形成すると共に,前記電子部品72を,前記処理装置本体(DPF本体)71に対し高所に配置し,前記ダクト6を,前記仕切壁92と対向する防音箱9の側壁に設けると共に,前記ダクト6の前記一端6aを,前記処理装置本体(DPF本体)71の上端位置よりも上方で,前記電子部品72よりも下方において開口することが好ましい(請求項3)。
【0020】
更に,好ましくは,前記電子部品72の上部を覆い且つ冷却風を案内する導風板20を,前記防音箱9の内部に,前記開口部91より離間して設けることができる(請求項4)。
【0021】
なお,前記排気ガス後処理装置(DPF)の側方における防音箱9の側壁の全部又は一部を着脱又は開閉可能として点検扉とするものとしても良く(請求項5),この場合,前記ダクト6を,前記点検扉の内面に形成するものとしても良い(請求項6)。
【発明の効果】
【0022】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動型作業機1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0023】
一端6aを冷却対象とする電子部品72に近接して開口すると共に,他端6bを防音箱9の外部と連通するダクト6を設けると共に,前記ダクト6の前記一端6aよりも高所において前記防音箱9の内外を連通する開口部91を設けたことにより,エンジン駆動型作業機1の停止後においても,DPF本体71の余熱により電子部品72が破損する危険がある間,ダクト6から電子部品72の周辺を通り開口部91に至る冷却風の流れを生じさせることができ,電子部品72に対する冷却風の導入を継続することができた。
【0024】
すなわち,エンジン駆動型作業機1を停止した場合であっても,防音箱9内に収容されている作業機3やエンジン5,DPF7,熱交換器53(ラジエータやオイルクーラ)等が余熱を持っている間,防音箱9内の空気は暖められ,この暖められた空気が防音箱9内を上昇する結果,開口部91を介して防音箱9外に放出される。
【0025】
このようにして,開口部91を介して防音箱9内の空気が機外に放出されると,防音箱9内は負圧となることから,防音箱9内外を連通しているダクト6を介して防音箱9外の冷たい空気が吸い込まれる(所謂,煙突効果)。
【0026】
このダクト6の一端6aは,前述したように電子部品72の近傍で開口していることから,防音箱9外の比較的冷たい空気を,電子部品72の近傍に導入して電子部品72を冷却することができる。
【0027】
このように,本発明の構成による電子部品72の冷却は,空気の温度差により生じる自然対流を利用していることから,動力が不要で,防音箱9内に収容された機器が外気温度と同等の温度に冷却される迄,従って,DPF本体71の余熱によって電子部品72が熱による破損のおそれが無くなる迄,確実に継続される。
【0028】
具体的には,後掲の実施形態の構成において,冷却対象とした電子部品72の周囲温度を120℃以下の温度に保つことができた。
【0029】
DPF7を,ファンの回転によって発生した冷却風が通過する前述の通気路9b内に設けた構成にあっては,エンジン駆動型作業機1の停止時に電子部品72を好適に冷却することができるだけでなく,エンジン駆動型作業機1の作動時には,ファン52によって発生した冷却風によって,電子部品72を好適に冷却することができた。
【0030】
このように,DPF7を通気路9b内に配置した構成において,更に仕切壁92を上下方向に配置し,前記通気路9bの上部に前記開口部91を形成すると共に,電子部品72をDPF本体71に対し高所に配置し,ダクト6を仕切壁92と対向する防音箱9の側壁に設けると共に,ダクト6の一端6aを,DPF本体71の上端位置よりも上方で,電子部品72よりも下方で開口させた構成にあっては,ファン52による冷却風の発生時,電子部品72に向かう冷却風量の流れを確保しつつ,DPF本体71に対する冷却風の導入を制限することができ,DPF本体71が過度に冷却されることにより生じるPMの分解能力や燃焼能力の低下が発生することを防止することができた。
【0031】
更に,前記電子部品72の上部を覆う導風板20を,前記防音箱9の内部に,前記開口部91より離間して設けた構成にあっては,開口部91を介して防音箱9内に雨水が入り込んだ場合であっても,電子部品72が濡れることを防止できるだけでなく,ダクト6を介して導入された冷たい空気が通気路9b内の上昇気流により直ぐに開口部91に向かうことなく,導風板20の下面に沿って流れる間,電子部品72を冷却することができ,更に,エンジン駆動型作業機1の駆動時には,ファン52によって発生した冷却風の流れの一部を誘導し,電子部品72に対する冷却風の導入を行いつつ,DPF本体71に対する冷却風の導入を制限することができた。
【0032】
なお,前記排気ガス後処理装置(DPF)7の側方における防音箱9の側壁の全部又は一部を着脱又は開閉可能として点検扉とした構成では,防音箱9内に収容したDPF7の点検やメンテナンスが容易であると共に,前記ダクト6を,この開閉扉の内面に取り付けた構成では,ダクトの点検についても容易に行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動型作業機1について説明する。
【0035】
〔全体構成〕
本発明のエンジン駆動型作業機1の全体構造を
図4,5に示す。
【0036】
図4,5に示すように,本発明のエンジン駆動型作業機1は,圧縮機や発電機等の作業機3と,この作業機3を駆動するエンジン(ディーゼルエンジン)5,前記エンジン5の排気路(排気管)51中に設けられた排気ガス後処理装置(DPF)7,その他の必要な機器を,防音箱9内に収容して構成されている。
【0037】
図示の実施形態にあっては,防音箱9内を上下方向に配置された仕切壁92によって2室に仕切り,一方の室を作業機3やエンジン5を収容するエンジン室9a,他方の室を通気路9bと成すと共に,前記仕切壁92に設けた連通口93に対向してエンジン5や作業機3を冷却するためのラジエータやオイルクーラ等の熱交換器53を配置すると共に,連通口93及び熱交換器53を通過する冷却風を発生させるファン52を前記熱交換器53に対し対向して配置し,エンジン5の作動時,このファン52の回転によって熱交換器53と連通口93を通過する冷却風を発生させることができるようにしている。
【0038】
図4に示す実施形態では,エンジン5の作動時,ファン52によってエンジン室9a側から通気路9b側に向かう冷却風の流れを発生させ,通気路9bの上方において防音箱9の天板に形成した開口部91を介して防音箱9内の空気を放出する,所謂「吹き出し式」の構成を採用しているが,これとは逆に,ファン52の回転によって通気路9bからエンジン室9aに向かう冷却風の流れを生じさせることで,開口部91及び通気路9bを介して防音箱9内に導入された外気を,熱交換器53を通過させた後,エンジン室9a内に導入できるようにした,所謂「吸い込み式」として構成しても良い(
図3参照)。
【0039】
なお,図示の実施形態では,前述した開口部91を通気路9bの上方における防音箱9の天板に開口しているが,開口部91は,後述するダクト6の一端6aよりも上方に設けられていれば,防音箱9の天板に限らず側壁に設けるものとしても良く,また,エンジン室9a部分の天板や側壁に設けても良く,ファン52の停止時,防音箱9内に収容された機器の余熱によって暖められて上昇する防音箱9内の空気を防音箱9外に放出し得るものであれば,いずれの位置に設けるものとしても良い。
【0040】
図1〜4に示す実施形態において,DPF7は前述の通気路9b内に,好ましくは,通気路9bの高さ方向における中間位置より低い位置に設けられる。
【0041】
図示の実施形態では,通気路9b中に設けられた載置台94上にDPF本体71を載置して,熱交換器53の高さ方向における略中心位置にDPF本体71を配置している。
【0042】
なお,
図1〜4に示すようにDPF7を通風路9b内に配置する構成に限定されず,DPF7はこれをエンジン室9a内に配置するものとしても良く,
図5に示す例ではエンジン室9a内のエンジンフライホイールハウジング上部にDPF7を配置している。
【0043】
DPF7は,エンジン(ディーゼルエンジン)5の排気中よりPMを除去することによりPMの排出量を減少させる装置であり,エンジン5の排気路(排気管)51中に設けられた,フィルタ等を内蔵するDPF本体71と,前記DPF本体内の外周や外周近傍に配置され,例えばDPF本体内の温度や圧力等を検出すると共に,図示せざるエンジン運転制御手段(ECU)等に対して出力する,電子部品72を備えている。
【0044】
この電子部品72としては,一例としてDPF本体71内や,DPF本体71に連通する排気路内の温度や圧力を検出する,圧力センサや温度センサ等のセンサ類,前記センサ類の検知信号を変換する信号変換器等の電子部品,及びこれら各機器間を連通する配線やコネクタ,その他必要な付属機器を挙げることができるが,DPF本体の熱により破損するおそれのある電子部品及びその付属機器であれば上記制御用の部品に限定されず,その他の電子部品も本願における冷却対象に含めるものとしても良い。
【0045】
図示の実施形態にあっては,冷却対象を,このような電子部品72のうち,DPF本体71の外周近傍の上方に配置した電子部品72,例えば信号変換器を対象としているが,冷却対象は,温度センサや圧力センサ等の検出手段のようにDPF本体71の外周に取り付けられた電子部品であっても良く,または,これらの双方を同時に冷却対象としても良い。
【0046】
このようにDPF7が収容された防音箱9には,一端6aをDPF7の電子部品72の近傍で開口し,他端6bを防音箱9外と連通するダクト6が設けられており,エンジン5の停止によってファン52による送風が停止した際,このダクト6の他端6bを介して電子部品72の近傍に防音箱9外の冷たい空気を冷却風として導入すると共に,前記開口部91に至り防音箱9外へ放出される冷却風の流れが形成される。
【0047】
図4に示す実施形態では,通気路9bを画成する防音箱9の側壁のうち,仕切壁92と対向する側壁に矩形の開口61を形成し,この側壁の内面と対向する対向板62a,前記対向板62aの底辺より突出した底板62b,及び,前記対向板62aの高さ方向の2辺より突出した側板62c,62dを備えた誘導板62を,前記開口61の形成位置における側壁内面に取り付けることにより前述のダクト6を形成している。
【0048】
なお,ダクト6の構成は,
図4に示した構成に限定されず,例えば
図5に示したように,ダクト6と成る円筒あるいは角筒状の管材の一端を電子部品72の近傍に配置すると共に,他端を防音箱9の側壁あるいは底壁に形成した開口と連通することにより構成するものとしても良い。
【0049】
このダクト6を介して行われる冷却風の導入は,後述するように,熱せられた防音箱9内の空気が開口部91を介して防音箱9外に放出されることにより防音箱9内が負圧となることを利用して行うものであることから,冷却対象とする電子部品72と前記ダクト6の一端6a(電子部品側),他端6b(吸気口側)の高さ方向における位置関係は特に限定されず,例えば,電子部品72,ダクト6の一端6a,及びダクト6の他端6bをいずれも同一高さで配置することも可能である。
【0050】
もっとも,ダクト6を介して防音箱9内に雨水が浸入すること,また,侵入した雨水が電子部品72を濡らすことを防止するためには,電子部品72に対しダクト6の一端6aを低い位置に,ダクト6の一端6aに対し他端6bを更に低い位置に配置することが好ましい。
【0051】
また,防音箱9の側壁のうち,DPF7に隣接する側壁の全部又は一部を着脱可能,あるいは開閉可能に構成して点検扉とするものとしても良く,この場合,この着脱可能とした側壁(点検扉)に前述したダクト6を形成あるいは取り付けるものとしても良い。
【0052】
このように構成した場合,前記側壁の全部又は一部を取り外し,あるいは開放することにより,DPF本体71およびDPF本体71の外周及び外周近傍に配置された電子部品72のメンテナンスや部品交換作業,ダクト6の点検等を容易に行うことが可能となる。
【0053】
〔作業機等の停止時における冷却作用〕
・通気路内にDPFを配置した構成(
図1〜4)
以上のように構成されたエンジン駆動型作業機1のうち,通気路9b内にDPF7を配置した構成を採用するエンジン駆動型作業機1における,停止時の冷却作用を,
図1を参照して説明する。
【0054】
なお,
図1のエンジン駆動型作業機は,吹き出し式のエンジン駆動型作業機において通気路9b中にDPF7を配置した構成を採用したものであるが,ファン52が停止した状態での冷却作用は,吹き出し式と吸い込み式で変わるところがなく,以下の説明は,吸い込み式のエンジン駆動型作業機において通気路9b中にDPF7を配置した構成を採用した場合の説明を兼ねる。
【0055】
また,吹き出し式,吸い込み式のいずれの構成においても,
図1〜4に示すように,上部に開口部91が形成された通気路9b内にDPF7を配置する場合,電子部品72の上部を覆う導風板20を,開口部91を塞がないよう開口部91より離間した位置,図示の実施形態にあっては電子部品72と開口部91間の高さ方向における略中間位置に取り付けるものとしても良く,これにより開口部91を介して防音箱9内に侵入した雨水によって電子部品72が濡れないようにすると共に,冷却風の流れを誘導することができる。
【0056】
このような導風板20を設ける場合,その大きさ(平面視における面積)は,DPF本体71の大きさと略同一とすることが好ましいが,その上方に設けた開口部91に向かって通気路9b内を流れる上昇気流の流れを妨げないよう,通気路9bの流路面積(紙面水平方向の断面積)に対し十分に小さなものとする。
【0057】
以上のように構成されたエンジン駆動型作業機1においてエンジン5を停止すると,エンジン5によって駆動されていたファン52も回転を停止し,ファン52の回転によってエンジン室9aから通気路9bに至り,開口部91を介して機外に放出されていた冷却風の発生も停止する。
【0058】
一方,エンジン5や作業機3の運転によって高温となっているDPF本体71や熱交換器53は,エンジン5や作業機3の停止によっても直ぐには冷却されず,依然として高温の状態にあることから,これらの機器からの放熱によって通気路9b内の空気の温度は外気に比較して高くなっている。
【0059】
そのため,通気路9b内の外気に比較して高温の空気は通気路9b内を上昇して,防音箱9の天板に設けた開口部91より防音箱9外に放出されて上方に拡散する上昇気流となり,この上昇気流によって通風路9b内の空気が放出されることにより,通風路9b内が負圧となる。
【0060】
その結果,通風路9b内で一端6aを開口し,他端6bを防音箱9外と連通する前述のダクト6を介して,防音箱9外の冷たい空気が通気路9b内に導入される(所謂,煙突効果)。
【0061】
このダクト6の一端6aは,電子部品72の近傍において開口していることから,ダクト6を介して導入された外気は,電子部品72の近傍に導入されて電子部品72を効果的に冷却することができ,その結果,電子部品72がDPF本体71からの放射熱によって高温となり破損することを防止できる。
【0062】
特に,
図1〜4に示したように電子部品72の上方を覆う導風板20を設けた構成では,電子部品72に対する雨水の付着を防止できるだけでなく,ダクト6を介して導入された低温の外気が通気路9b内の上昇気流により直ぐに開口部91に向かうことなく,DPF本体71と導風板20の間を導風板20の下面に沿って流れる間,電子部品72を冷却することができ,冷却効果の向上を図ることもできる。
【0063】
このような煙突効果を利用した冷却風の導入を有効に行うために,通気路9b内におけるDPF本体71の配置は,通気路9bの高さ方向における中央付近よりも低い位置に配置することが好ましい。
【0064】
・エンジン室にDPFを配置した構成(
図5)
図5に示したように,エンジン室9a内にDPF7を配置した構成では,熱交換器53の余熱によって暖められた通気路9b内の空気が上昇して,開口部91を介して機外へ放出され,通気路9b内が負圧となる。
【0065】
一方,エンジン室9a内の空気も,DPF本体71,作業機3,エンジン5の余熱によって暖められて上昇するが,このエンジン室9a内を上昇する空気は前述のとおり負圧となっている通気路9b側に引かれて仕切壁92に設けた連通口93を介して通気路9b内に至り,開口部91を介して防音箱9外に放出される空気の流れが発生する。
【0066】
その結果,エンジン室9a内も負圧となり,エンジン室9aと防音箱9外を連通するダクト6を介して防音箱9外の空気が電子部品72の近傍でエンジン室9a内に導入されることで,電子部品72の冷却が好適に行われる。
【0067】
なお,
図5に示した実施形態では,ファン52の停止時における熱対流による防音箱9内の空気の放出を,通気路9b及び通気路9b上方に形成した開口部91を介して行うものとしたが,この構成に代え,エンジン室9a内で生じた上昇気流を機外に放出するための開口部を,エンジン室9aを画成する防音箱の壁面,例えばエンジン室9aの天板に形成するものとしても良い。
【0068】
このようにエンジン室9aの天板に開口部91を形成した場合であって,この開口部91の下方に電子部品72を配置する場合には,電子部品72上に導風板を配置する構成を採用しても良い。
【0069】
〔作業機の運転時における動作〕
以上で説明したエンジン駆動型作業機1の停止時における冷却作用に対し,エンジン駆動型作業機1の作動時,すなわち,ファン52の回転時における冷却作用は,それぞれ下記の通りとなる。
【0070】
・吹き出し型の構成(
図2)
図2を参照して,通気路9b内にDPF7を配置した構成のエンジン駆動型作業機1を吹き出し型として構成した場合におけるファン52回転時の冷却作用を説明する。
【0071】
ファン52によって,エンジン室9a内の空気を仕切壁92に形成した連通口93を介して通気路9bに向かって吹き出すと,通気路9b内に導入された冷却風の多くは,通気路9bの上方に設けた開口部91を介して機外に放出される。
【0072】
一方,ファン52によって通気路9b内に導入されたエンジン室9a内の空気の一部は,水平方向に移動して電子部品72を冷却する流れとなり,電子部品72を冷却すると共にDPF本体71の放射熱と共に,電子部品72の近傍で開口するダクト6を介して防音箱9外に放出される。
【0073】
特に,前述した導風板20を設けた構成では,電子部品72の上方を覆う導風板20は,電子部品72が雨水で濡れることを防止するだけでなく,ファン52により発生した冷却風の流れを電子部品72及びダクト6に向かって水平方向に誘導する機能を発揮する。
【0074】
このようにして,作業機の駆動時,従ってエンジン5によってファン52が回転されている際,電子部品72の周囲は常に冷却風が流れて冷却されているため,エンジン5の運転中に高温となっているDPF本体71の外周近傍に配置されているにも拘わらず,電子部品72が高温となることが防止されると共に,発生した冷却風の主流は開口部91を介して放出するものとしながら,冷却風の一部のみをDPF本体71側に導入するものとしているため,DPF本体71を必要以上に冷却することがなく,DPF本体71内の温度が低下することに伴い生じる,PMの分解能力や燃焼能力の低下が発生することを好適に防止することができる。
【0075】
特に,ダクト6を仕切壁92と対向する側壁に設けると共に,ダクト6の一端6a(電子部品側)をDPF本体71の上端よりも高く,電子部品72よりも低い位置で開口した構成では,電子部品72を通過した冷却風の流れはダクト6の一端6aを介して円滑に機外に放出されるものの,DPF本体71部分を通過しようとする冷却風の流れは行き先が無く抑制されることとなるため,DPF本体71に対する冷却風の導入抑制効果をより一層高めることができる。
【0076】
・吸い込み型の構成(
図3)
図2を参照して説明した吹き出し型のエンジン駆動型作業機に対し,
図3に示す吸い込み型のエンジン駆動型作業機にあっては,作業機3の駆動時における冷却風の流れは逆向きとなり,作業機3を駆動するエンジン5の始動によってファン52の回転が始まると,開口部91を介して通気路9b内に導入された外気が,仕切壁92に設けた熱交換器53及び連通口93を介してエンジン室9a内に導入されると共に,エンジン室9a内に導入された冷却風は,エンジン5や作業機3等を冷却した後,エンジン室9aを画成する防音箱の壁面に形成された排風口(図示せず)を介して機外に放出できるように構成されている。
【0077】
このようにして,ファン52の回転によって,通気路9b内の空気がエンジン室9a内に吸引されると,通気路9b内には開口部91を介して防音箱9外の空気が導入されるだけでなく,ダクト6を介しても外気が導入される。
【0078】
このダクト6は,前述したように一端6aを冷却対象とする電子部品72の近傍で開口していることから,ダクト6を介して通気路9b内に導入された冷却風によって,電子部品72が好適に冷却できるようになっている。
【0079】
この吸い込み式の構成において,電子部品72の上方を覆う導風板20が設けられている場合,この導風板20は,電子部品72に対する雨水の付着や,ダクト6を介して導入された冷却風の誘導を行うだけでなく,開口部91を介して通気路9b内に導入された冷却風を,仕切壁92に設けた連通口93に向けて誘導する誘導板としても機能する。
【0080】
その結果,開口部91を介して通気路9b内に導入された外気が,直接,DPF本体71と接触し難くすることができ,DPF本体71の温度が必要以上に低下することが防止される。
【0081】
また,ダクト6の一端6aを,電子部品72の下方であってDPF本体71の上端に対し高い位置で開口することで,ダクト6を介して導入された冷却風が,DPF本体71に直接接触し難い構成となっている。
【0082】
従って,
図3に示した吸い込み式のエンジン駆動型作業機の構成にあっても,作業機3の運転時,DPF本体71が必要以上に冷却されることによりPMの分解性能や燃焼性能が低下することを防止できるものとなっている。
【0083】
・DPFをエンジン室に配置した構成(
図5)
図5に示したように吹き出し式のエンジン駆動型作業機においてエンジン室9a内にDPF7を配置した構成では,ファン52によってエンジン室9a内の空気が通気路9b内に導入されることでエンジン室9a内には負圧が生じ,この負圧によってダクト6を介して電子部品72に向かって冷却風が導入されることから,防音箱9内に生じる冷却風の流れは,ファン52の停止時における冷却風の流れと同様であり,
図5中に矢印で示したようになる。
【0084】
なお,
図5に示す構成では,吹き出し式の構成において,エンジン室9a内にDPF7を配置する構成を採用しているが,吸い込み式のエンジン駆動型圧縮機の構成においてエンジン室9a内にDPFを配置する構成を採用しても良く,この場合,ファン52の回転時における冷却風の流れは,
図5に示した矢印とは逆向きの流れとなる。