(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コアと前記シェル(シェルが複数層ある場合は全シェルの合計)の質量比が、コア/シェル(質量比)=75/25〜25/75である、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
前記重合体粒子のガラス転移温度Tgが−40℃以上40℃以下であり、前記重合体粒子の最も外側に位置するシェルのガラス転移温度Tgがコアのガラス転移温度Tgより5℃以上低い、請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【背景技術】
【0002】
水に重合体粒子を分散させた水性エマルジョンにイソシアネート系化合物を配合した接着剤は、従来のアミノ・ユリア系接着剤とは異なりホルムアルデヒドの発生がなく、常温あるいは加温下で短時間で圧縮するだけで、極めて高い接着強さが得られる。この接着剤は常態の接着性能ばかりでなく、耐水性、耐熱性などの2次性能も良好であり、特に木材接着用に優れた性能を示す。
【0003】
従来この接着剤に使用される水性エマルジョンとしては、ポリビニルアルコールを分散剤とする酢酸ビニルエマルジョンやエチレン−酢酸ビニルエマルジョンなどが知られている。
しかしながら、接着した木材の使用環境が過酷な方向に向かっていることと、近年接着する木材種が多様化してきていることから、現在はより高度な性能が要求されてきている。
【0004】
例えば、使用環境の過酷さについて、更なる耐煮沸接着性の向上、及び長期高温放置下での接着性保持が必要とされている。また、木材種の多様化については、例えばヤニ等の接着阻害成分を含む木材に対しても良好な接着性を発現することが求められている。これに対し、従来から使用されている酢酸ビニルエマルジョンやエチレン−酢酸ビニルエマルジョンでは、常態接着性、初期接着性は良好であるものの、耐煮沸接着性が十分でないという問題を有している。これは、酢酸ビニルエマルジョン及びエチレン−酢酸ビニルエマルジョンの耐水性不良に起因していると言われている。
【0005】
これに対して、先の水性エマルジョンに比較して耐水性が良好である合成ゴム系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系またはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンを使用した接着剤も知られているが、酢酸ビニルエマルジョンやエチレン−酢酸ビニルエマルジョンに比べ初期接着性が十分でない。
【0006】
また、合成ゴム系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系、またはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンに、酢酸ビニルエマルジョン、またはエチレン−酢酸ビニルエマルジョンをブレンドすることにより、初期接着性と耐煮沸性をバランスすることが試みられているが、その接着性能はそれぞれのエマルジョンの中間となり、十分ではない。
【0007】
更に、ブレンドによってではなく、水性エマルジョン中の重合体粒子の組成を改良する方法による解決が試みられている。
芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、及び、不飽和カルボン酸含有単量体を含む単量体組成物を、界面活性剤を用いて乳化重合して得られる平均粒子径が100〜400nmの水性エマルジョンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、不飽和カルボン酸含有単量体及び架橋性単量体を含む単量体組成物を、界面活性剤を用いて乳化重合して得られる平均粒子径が200〜600nmの水性エマルジョンが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体及び不飽和カルボン酸含有単量体を含む単量体組成物を、反応性界面活性剤を用いて乳化重合して得られる平均粒子径が200〜600nmの水性エマルジョンが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
また、(a)芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、及び、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体を含む単量体組成物を乳化重合して得られるガラス転移温度が5℃以上30℃以下の水性エマルジョンと、(b)芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体から選ばれる1種以上の単量体、及び、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体を含む単量体組成物を乳化重合して得られるガラス転移温度が−30℃以上5℃未満の水性エマルジョンと含んでなる接着剤用水性エマルジョンが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0017】
まず、水性エマルジョンについて説明する。
本実施形態の水性エマルジョンは、一つのコアと該コアを取り囲む少なくとも一層以上のシェルとからなるコアシェル構造を有する重合体粒子を水中に分散させた水性エマルジョンであって、前記重合体粒子のコアが、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選ばれ、ヒドロキシル基を含有しない1種以上の単量体に由来する構造単位、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体に由来する構造単位、及び、架橋性単量体に由来する構造単位を含み、前記重合体粒子のシェルのうち最も外側に位置するシェルが、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選ばれ、ヒドロキシル基を含有しない1種以上の単量体に由来する構造単位及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体に由来する構造単位を含み、かつ、架橋性単量体に由来する構造単位を含まないものである。
【0018】
本実施形態の水性エマルジョンにおいて芳香族ビニル系単量体の具体例としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
【0019】
本実施形態の水性エマルジョンにおいて(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートである。
【0020】
本実施形態の水性エマルジョンにおいて、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体の具体例としては、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。好ましくはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0021】
さらに本実施形態の水性エマルジョンにおいて、架橋性単量体としては、ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体や、または重合中、重合後に自己架橋構造を与える官能基を有している単量体が挙げられる。
ラジカル重合性の二重結合を2個以上有している単量体の具体例としては、例えばジビニルベンゼン等のラジカル重合性の二重結合を2個以上有している芳香族化合物、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート等のポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート等のジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のトリオールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等のテトラオール(メタ)アクリレート等の2個以上の(メタ)アクリル酸とのエステル化合物等を挙げることができる。
重合中、重合後に架橋構造を与える官能基を有する単量体の具体例としては、例えばアルコキシシラン基含有単量体、エポキシ基含有ビニル単量体を挙げることができる。アルコキシシラン基含有重合性単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基含有ビニル単量体として、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0022】
また、本実施形態の水性エマルジョンにおける重合体粒子のコア及びシェルは、さらに、不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位を含有していても良い。不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びそのモノエステル、フマル酸及びそのモノエステル、イタコン酸及びそのモノエステルなどが挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリ酸、イタコン酸の不飽和カルボン酸単量体であり、さらに好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
【0023】
本実施形態の水性エマルジョンにおける重合体粒子のコア及びシェルは、要求される様々な品質・物性を改良するために、上記以外の単量体成分に由来する構造単位をさらに有していてもよい。上記以外の単量体の具体例として、例えば、アミド基含有ビニル単量体、シアノ基含有ビニル単量体、その他のエチレン性不飽和単量体等を挙げることができる。
アミド基含有ビニル単量体の具体例としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等を挙げることができる。
シアノ基含有ビニル単量体の具体例としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
さらに、その他の単量体に由来する構造単位も有することができる。例えば、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基などの官能性基を有する各種のビニル単量体、さらには酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどを所望に応じて使用できる。
【0024】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子中の芳香族ビニル系単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)に由来する構造単位の含有量は、コア、シェルいずれにおいても、重合体に対して5〜80質量%であることが好ましい。芳香族ビニル系単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)に由来する構造単位が5質量%以上であると耐煮沸接着性をより良好とすることでき、80質量%以下であると耐熱接着性をより良好とすることができる。より好ましくは、15〜65質量%、さらに好ましくは30〜50質量%、である。
【0025】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)に由来する構造単位の含有量は、コア、シェルいずれにおいても、重合体に対して5〜80質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)に由来する構造単位が5質量%以上であることで常態接着性をより良好とすることができ、80質量%以下で耐煮沸接着性をより良好とすることができる。より好ましくは、20〜75質量%、さらに好ましくは45〜70質量%である。
【0026】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子中のヒドロキシル基含有ビニル系単量体に由来する構造単位の含有量は、コア、シェルいずれにおいても、重合体に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。0.5質量%以上であることで常態接着性をより良好とすることができ、且つポットライフ、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好とすることができ、且つ初期接着性もより良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着性が優れるため好ましい。また、5質量%以下であることで、ポットライフをより良好とすることができ、常態接着性、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性もより良好であり、且つ初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着性が優れるため好ましい。より好ましくは1〜4質量%、さらに好ましくは1.5〜3質量%である。
【0027】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子のコア中の架橋性単量体に由来する構造単位の含有量は、コアを形成する重合体に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。0.01質量%以上であることで耐煮沸接着性をより良好とすることができ、5質量%以下で常態接着性をより良好とすることができる。より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0028】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子中の不飽和カルボン酸単量体に由来する構造単位の含有量は、コア、シェルいずれにおいても、重合体に対して0〜4質量%であることが好ましい。4質量%以下で耐煮沸接着性をより良好とすることができる。より好ましくは0〜3質量%である。
【0029】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子は、コアシェル構造を有する。ここで、コアシェル構造とは、重合体により形成される核(コア)と、該核(コア)の周囲を取り囲み、核(コア)とは異なる組成の重合体により形成される殻(シェル)とを有する構造のことをいう。なお本実施形態において、コアシェル構造は、一つのコアと少なくとも一層のシェルを有していればよく、シェルは複数層であってもよい。
【0030】
また本実施形態において、コアにはその製造工程で使用されるシード粒子に由来する微細な(具体的には、平均粒子径100nm以下程度、より具体的には平均粒子径20nm〜60nm程度)粒子が含まれていてもよく、このような微細粒子はコア中の不純物とみなし、コアには該当しない。
さらに、前述の各単量体に由来する構造単位の含有量(質量%)は、コア又はシェルを形成する重合体全量に対して定義されるものであるが、コアにシード粒子が含まれる場合、この重合体全量にシード粒子の質量分は含まないものとする。
【0031】
本実施形態の水性エマルジョンにおいては、重合体粒子に架橋性単量体に由来する構造単位を含有する。このことで、接着剤として利用したときの耐煮沸接着強さを良好にすることができる。
そして、この耐煮沸接着強さ向上効果は、架橋性単量体に由来する構造単位を、重合体粒子の最も外側に位置するシェルに含有させない方が効果的である。
この機序は明らかではないが、架橋性単量体を含有させることにより、重合体粒子中のポリマーが架橋され、ポリマーが強固になるため、耐煮沸接着強さが向上すると考えられる。また、塗膜が重合体粒子間の融着により形成される際に、シェルには架橋性単量体を含まないことで、粒子間の融着をより強固とすることができ、耐煮沸接着強さが向上すると推定される。
【0032】
さらに、重合体粒子の表層に架橋性単量体に由来する構造単位が含まれると、初期接着強さや低温接着強さが低下する傾向にある。そのため、本実施形態においては、重合体粒子をコアシェル構造にして、重合体粒子のもっとも外側に位置するシェルには架橋性単量体に由来する構造単位を含有させないことにより、耐煮沸接着強さと、初期接着強さ/低温接着強さとの両立が可能となる。
【0033】
本実施形態の水性エマルジョンのコア/シェル(シェルが複数層である場合、シェルの合計)の質量比は、75/25〜25/75であることが好ましい。当該質量比が75/25以下であることで低温接着性をより良好とすることができ、25/75以上であることで、耐煮沸接着性をより良好とすることができる。より好ましくは70/30〜30/70である。
【0034】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子の全体のガラス転移温度に限定はないが、−40℃以上40℃以下であることが接着特性の観点からは好ましい。−40℃以上であることで耐煮沸接着性をより良好とすることができ、40℃以下で常態接着性をより良好とすることができる。より好ましくは−30℃〜30℃、さらに好ましくは0〜30℃である。
【0035】
更に、最も外側に位置するシェルのガラス転移温度がコアのガラス転移温度より5℃以上低いことが接着特性の観点からは好ましい。シェルのガラス転移温度がコアのガラス転移温度より5℃以上低いことで、低温時の接着性がより良好になる。シェルのガラス転移温度は、コアのガラス転移温度より10℃以上低いことがより好ましく、20℃以上低いことがさらに好ましい。
【0036】
なお、ここで言う重合体粒子、コア及びシェルのガラス転移温度Tgとは、各単量体のホモ重合体のガラス転移温度Tgnと、重合体粒子、コア又はシェル中の各単量体に由来する構造単位の質量分率Wnより次式によって定義することが可能である。
1/Tg=W1/Tg1 +W2/Tg2 +・・・Wn/Tgn
Tg:単量体1、2・・・nに由来する構造単位よりなる共重合体又はその混合物から構成される重合体粒子、コア、シェルのガラス転移温度(゜K)
W1、W2・・Wn:単量体1、単量体2、・・単量体nに由来する構造単位の質量分率(ここでW1+W2+・・Wn=1)
Tg1、Tg2・・Tgn:単量体1、単量体2、・・・・単量体nのホモ重合体のガラス転移温度(゜K)
【0037】
計算に使用する単量体のホモ重合体のTg(゜K)は、例えばポリマーハンドブック(Jhon Willey & Sons)に記載されている。
本実施形態において用いた数値を例示する。カッコ内の値がホモ重合体のTgを示す。ポリスチレン(373゜K)、ポリメチルメタクリレート(378゜K)、ポリブチルアクリレート(219゜K)、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート(205゜K)、ポリアクリル酸(379゜K)、ポリメタクリル酸(403゜K)、ポリアクリロニトリル(373゜K)、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート(258゜K)、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(328゜K)である。
【0038】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子の平均粒子径に限定はないが、200〜600nmであると接着特性の観点から好ましい。平均粒子径が200nm以上であることでポットライフに問題がなくかつ常態接着性、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好となり、さらに初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。また、600nm以下であると、初期接着性に問題がなく、且つポットライフ、常態接着性、耐煮沸接着性及び耐熱接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着が優れるため好ましい。より好ましくは平均粒子径が300〜500nm、さらに好ましくは300〜400nmである。
【0039】
本実施形態の水性エマルジョンに含まれる重合体粒子の粒子径コントロール方法は特に限定されない。例えば、シード粒子、界面活性剤の使用割合などによって調整することができ、一般にそれらの使用割合を高くするほど生成するエマルジョンの平均粒子径は小さくなり、その逆は平均粒子径が大きくなる傾向がある。なお、シード粒子の重合は、本実施形態の水性エマルジョンの重合に先だって同一反応容器で行っても、異なる反応容器で予め重合したシード粒子を用いても良い。
【0040】
本実施形態の水性エマルジョンには、pH調整のために塩基性化合物を含有させてもよい。塩基性化合物としては、例えば塩基性アルカリ金属化合物、アミン類が挙げられる。塩基性アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、有機カルボン酸塩などが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。また炭酸水素塩、炭酸塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。またアルカリ金属の有機カルボン酸塩として、例えば酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。アミン類としては、例えばアンモニア、ジメチルアミノエタノールなどが挙げられる。
塩基性化合物の含有量は、水性エマルジョンのpHが4〜12の範囲に調整されるものであることが好ましく、さらに好ましくは水性重合体分散体のpHが5〜10の範囲に調整されるものである 。
【0041】
本実施形態の水性エマルジョン中の重合体粒子の割合は、30〜70質量%であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の水性エマルジョンの製造方法に限定はないが、例えば、2段以上の多段乳化重合法により達成することができる。具体的には、本実施形態の製造方法によって製造することができる。以下に本実施形態の製造方法について説明する。
本実施形態の水性エマルジョンの製造方法は、少なくとも、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選ばれ、ヒドロキシル基を含有しない1種以上の単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、及び、架橋性単量体を含む単量体組成物を、乳化重合させてコアを形成する第一の乳化重合工程と、芳香族ビニル系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選ばれ、ヒドロキシル基を含有しない1種以上の単量体、及び、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体を含み、かつ、架橋性単量体を含まない単量体組成物を、乳化重合させて前記コアの周囲にシェルを形成する第二の乳化重合工程を含む。
【0043】
本実施形態において、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体、及び、架橋性単量体の具体例は、前述の水性エマルジョンの説明のところで述べたものと同様である。
【0044】
また、本実施形態の第一及び第二の乳化重合における単量体組成物は、さらに、不飽和カルボン酸単量体、アミド基含有ビニル単量体、シアノ基含有ビニル単量体、その他のエチレン性不飽和単量体や、その他の単量体を含有してもよい。これらの具体例は、前述の水性エマルジョンの説明のところで述べたものと同様である。
【0045】
本実施形態において、第一及び第二の乳化重合工程において使用する単量体組成物中の芳香族ビニル系単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)の含有量は、全単量体の合計に対して5〜80質量%であることが好ましい。芳香族ビニル系単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)の含有量が5質量%以上であると耐煮沸接着性をより良好とすることでき、80質量%以下であると耐熱接着性をより良好とすることができる。より好ましくは、15〜65質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0046】
本実施形態において、第一及び第二の乳化重合工程において使用する単量体組成物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)の含有量は、全単量体の合計に対して5〜80質量%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(ただし、ヒドロキシル基を含有しないもの)の含有量が5質量%以上であることで常態接着性をより良好とすることができ、80質量%以下で耐煮沸接着性をより良好とすることができる。より好ましくは、20〜75質量%、さらに好ましくは45〜70質量%である。
【0047】
本実施形態において、第一及び第二の乳化重合工程において使用する単量体組成物中のヒドロキシル基含有ビニル系単量体の含有量は、全単量体の合計に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。ヒドロキシル基含有ビニル系単量体の含有量が0.5質量%以上であることで常態接着性をより良好とすることができ、且つポットライフ、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性も良好とすることができ、且つ初期接着性もより良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着性が優れるため好ましい。また、5質量%以下であることで、ポットライフをより良好とすることができ、常態接着性、耐煮沸接着性、及び耐熱接着性もより良好であり、且つ初期接着性も良好であり、ヤニ等の接着阻害成分を含有する木材への接着性が優れるため好ましい。より好ましくは1〜4質量%、さらに好ましくは1.5〜3質量%である。
【0048】
本実施形態において、第一の乳化重合工程において使用する単量体組成物中の架橋性単量体の含有量は、全単量体の合計に対して0.01〜5質量%であることが好ましい。架橋性単量体の含有量が0.01質量%以上であることで耐煮沸接着性をより良好とすることができ、5質量%以下で常態接着性をより良好とすることができる。より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0049】
本実施形態において、第一及び第二の乳化重合工程において使用する単量体組成物中の不飽和カルボン酸単量体の含有量は、全単量体の合計に対して0〜4質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体の含有量が4質量%以下で耐煮沸接着性をより良好とすることができる。より好ましくは0〜3質量%である。
【0050】
本実施形態の第一及び/又は第二の乳化重合工程においては、乳化重合を界面活性剤の存在下にて行うことができる。この場合に用いられる界面活性剤とは、一分子中に少なくとも一つ以上の親水基と一つ以上の親油基を有する化合物を指す。界面活性剤としては、例えば脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン界面活性剤が挙げられる。これらのほかに親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中のエチレン性二重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。
界面活性剤の使用方法は特に限定されず、例えば乳化重合時に全量使用しても、また乳化重合後にさらに必要量を添加してもよい。
【0051】
重合開始剤としては、例えば、熱または還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものを用いることができ、無機系開始剤および有機系開始剤のいずれも使用できる。このようなものとしては、水溶性、油溶性の重合開始剤が使用できる。水溶性の重合開始剤としては例えばペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物−還元剤のレドックス系などが挙げられ、ペルオキソ二硫酸塩としては例えばペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NPS)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)などが挙げられ、過酸化物としては例えば過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、過酸化ベンゾイルなどが挙げられ、水溶性アゾビス化合物としては、例えば2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩化水素、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などが挙げられ、過酸化物−還元剤のレドックス系としては、例えば先の過酸化物にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いることもできる。
【0052】
第一及び第二の乳化重合工程において、単量体の添加方法については限定はなく、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込法や、単量体を連続して滴下する単量体滴下法、単量体と水と界面活性剤を予め混合乳化しておき、これらを滴下するプレエマルション化、あるいはこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。
また、重合開始剤の使用方法についても特に限定されるものではない。
【0053】
第一及び/又は第二の乳化重合工程の乳化重合における重合温度に制限はなく、通常60〜100℃の範囲で選ばれるが、前記レドックス系重合開始剤を用いるレドックス重合法等により、より低い温度で重合を行っても良い。また、例えば第一の乳化重合工程と、第二の乳化重合工程の重合温度は同じでも異なっていても良い。
【0054】
本実施形態において、第一の乳化重合工程と第二の乳化重合工程の間に、さらに、別の乳化重合工程を設けてもよい。この場合、製造される水性エマルジョンの重合体粒子は複数層のシェルを有することとなる。
この場合に使用される単量体組成物の組成に制限はなく、例えば、第一の乳化重合工程及び/又は第二の乳化重合工程において使用できるものとして先に例示したのと同様の単量体及び組成を採用することができる。
【0055】
次に、接着剤組成物について説明する。本実施形態の接着剤組成物は、上記水性エマルジョンとイソシアネート系化合物とを含む。
本実施形態に用いられるイソシアネート系化合物とは一分子中にイソシアネート基を2個以上含むものであれば特に限定されず、例えばトリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート、水素化メチレンビスジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、水、多価アルコール、水酸基含有ポリエーテル、または水酸基含有ポリエステル等と、過剰のイソシアネート系化合物とを予め反応させて得られるイソシアネート系重合物であってもよい。好ましくは疎水性のイソシアネート系化合物であり、より好ましくはトリレンジイソシアネート、メチレンビスジフェニルジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート、及びそれらの重合物である。
【0056】
本実施形態の接着剤組成物において、水性エマルジョン中の重合体粒子100質量部に対して、イソシアネート系化合物は1〜150質量部であることが好ましい。1質量部以上で接着性能が良好となり、150質量部以下でポットライフに問題がない。より好ましくは2〜100質量部である。
【0057】
本実施形態の水性エマルジョン、及び接着剤組成物には性能を向上させるために、以下の材料を配合してもよい。例えば、水溶性樹脂、溶剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤、無機顔料、有機顔料、界面活性剤、イソシアネート系化合物以外の架橋剤、例えばエポキシ系化合物、多価金属化合物などが挙げられる。
【0058】
本実施形態に用いられる水溶性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール、エチレン性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、セルロース系樹脂(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシセルロース等)、キチン、キトサン、デンプン類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、ゼラチン、カゼイン類、シクロデキストリン類、水性硝化綿等を挙げることができる。ポリビニルアルコールは完全けん化、部分けん化でも良い。特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0059】
無機または有機の顔料としては、例えば無機顔料ではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛などの各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩または珪酸化合物などが挙げられる。 具体的には例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイトなどである。有機顔料ではポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの固体高分子微粉末などが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例等により本実施形態を更に具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例等により何ら限定されるものではない。なお、例中の部数はすべて有り姿での部数(即ち、水性エマルジョンの場合、重合体粒子と水とを含有した液体全体の部数である)を示した。また、「部」及び「%」は、特に断らない限り、各々「質量部」及び「質量%」を示すものである。
【0061】
各特性は次のようにして求めた。
(1)粒子径:
光散乱法により測定を行った。
測定装置は粒子径測定装置(LEEDS&NORTHRUP社製、MICROTRAC UPA150)を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0062】
(2)ポットライフ:
下記に示す配合組成の主剤100部に、イソシアネート化合物としてMR−100(日本ポリウレタン(株)製、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート)を15部、20℃下で配合し、激しく5分間攪拌を行った。
その後、20℃に放置し、ゲル化するまでの時間を観測した。90分以上を合格とする。なお、ゲル化の判定は、15分毎にスパチュラで軽く攪拌を行い、攪拌できなくなった時点とした。
主剤の配合組成 水性エマルジョン(固形分50%) 60質量部
ポリビニルアルコール(固形分15%)20質量部
炭酸カルシウム 20質量部
ポリビニルアルコールは(株)クラレ製PVA217を用いた。
なお、主剤の製法は以下の通りとした。
先ず、水性エマルジョンを攪拌しながら炭酸カルシウムを投入し、10分間攪拌を行った。次いで、ポリビニルアルコールを攪拌下に添加し、さらに10分間攪拌を行った。
【0063】
(3)接着性試験:
a.初期接着強さ/常態接着強さ
(2)のポットライフ試験に用いた配合品(イソシアネート混合後10分以内に使用)を接着剤として使用した。試験片の作製条件はJISK6806:2003 5.11.1に準拠した。
初期接着強さは、除圧後速やかに測定を行い、常態接着強さは除圧後14日静値後測定を行った。
b.耐煮沸接着強さ
(2)のポットライフ試験に用いた配合品(イソシアネート混合後10分以内に使用)を接着剤として使用した。試験片の作製条件はJISK6806:2003 5.11.1に準拠した。但し、沸騰水浸漬は次の条件とした。
試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60±3℃の空気中で20時間乾燥し、更に沸騰水に4時間浸漬した。その後再度60±3℃の空気中で20時間乾燥し、更に沸騰水に4時間浸漬し、その後濡れたままの状態で試験を行った。
c.低温接着強さ
(2)のポットライフ試験に使用した主剤、イソシアネート化合物及び試験片を5℃環境下に1晩放置した。そして、5℃環境下で混合した配合物(イソシアネート混合後10分以内に使用)を接着剤として使用した。試験片の作製条件はJISK6806:2003 5.11.1に準拠した。接着強さは除圧後7日静値後測定を行った。
【0064】
水性エマルジョンの製造
[製造例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に、水45部及びシード粒子(平均粒子径50nm;メチルメタクリレート/ブチルアクリレート=50/45(質量比)の共重合体)を含むシード粒子水性分散体(水性分散体中のシード粒子の質量%:35%)6部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、上記シード粒子水性分散体に、過硫酸カリウムの5%水溶液を1部添加した。
その5分後に、単量体としてスチレン27.3部、メタクリル酸メチル7部、アクリル酸n−ブチル34.3部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート1.4部及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:SZ6030、東レダウコーニング(株)製)0.2部;界面活性剤としてアニオン性界面活性剤(製品名:エマールD−3−D、花王(株)製)の26%水溶液2部及びノニオン性界面活性剤(製品名:エマルゲン150、花王(株)製)の20%水溶液2.6部;過硫酸カリウムの5%の水溶液6.4部;及び水23部からなる1段目乳化混合液を滴下槽より135分かけて流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に保った。
流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして30分保った(第一の乳化重合工程)。
次に、単量体としてスチレン11.7部、メタクリル酸メチル3部、アクリル酸n−ブチル14.7部及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート0.6部;界面活性剤としてエマールD−3−Dの26%水溶液0.9部及びエマルゲン150の20%水溶液を1.2部;過硫酸カリウムの5%の水溶液2.8部;及び水11部からなる2段目乳化混合液を60分かけて流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に保った。
流入が終了してから、水7.5部を加え、反応容器の温度を80℃にして60分保った(第二の乳化重合工程)。
室温まで冷却後、希釈水と10%苛性ソーダ水溶液を添加してpH6、固形分50%に調整してから100メッシュの金網でろ過し、表1に示す物性を有する水性エマルジョンを得た。
【0065】
[製造例2〜12、14〜16]
1段目および2段目の乳化混合液に用いる各成分の種類や量、及び各乳化混合液のフィード時間を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様の方法にて、水性エマルジョンを得た。
使用した各成分の量、その他重合条件、及び、得られた水性エマルジョンの各種特性を表1に示す。
【0066】
[製造例13]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に、水45部及びシード粒子(平均粒子径50nm;メチルメタクリレート/ブチルアクリレート=50/45(質量比)の共重合体)を含むシード粒子水性分散体(水性分散体中のシード粒子の質量%:35%)6部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、上記シード粒子水性分散体に、過硫酸カリウムの5%水溶液を1部添加した。
その5分後に、単量体としてスチレン19.5部、メタクリル酸メチル5部、アクリル酸n−ブチル20.5部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート1部及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.2部;界面活性剤としてエマールD−3−Dの26%水溶液を1.45部及びエマルゲン150の20%水溶液を1.9部;過硫酸カリウムの5%の水溶液4.6部;及び水17部からなる1段目乳化混合液を滴下槽より90分かけて流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に保った。
流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして30分保った(第一の乳化重合工程)。
次に、単量体としてスチレン7.8部、メタクリル酸メチル2部、アクリル酸n−ブチル9.8部及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート0.4部;界面活性剤としてエマールD−3−Dの26%水溶液を0.58部及びエマルゲン150の20%水溶液を0.76部;過硫酸カリウムの5%の水溶液1.84部;及び水6.8部からなる2段目乳化混合液を40分かけて流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に保った。
流入が終了してから反応容器の温度を80℃にして30分保った(追加の乳化重合工程)。
次に、単量体としてスチレン11.7部、メタクリル酸メチル3部、アクリル酸n−ブチル14.7部及び2−ヒドロキシエチルメタアクリレート0.6部;界面活性剤としてエマールD−3−Dの26%水溶液を0.87部及びエマルゲン150の20%水溶液を1.14部;過硫酸カリウムの5%の水溶液2.76部;及び水10.2部からなる3段目乳化混合液を50分かけて流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に保った。
流入が終了してから、水7.5部を加え、反応容器の温度を80℃にして60分保った(第二の乳化重合工程)。
室温まで冷却後、希釈水と10%苛性ソーダ水溶液を添加してpH6、固形分50%に調整してから100メッシュの金網でろ過し、表1に示す物性を有する水性エマルジョンを得た。
【0067】
なお上記製造例及び表1において、各成分の量は、製造中に使用したすべての単量体成分の合計量を100質量部として、これに対する比率で示した。
【0068】
[実施例1〜13]
製造例1〜13で製造された水性エマルジョン1〜13を用いて、上記(2)ポットライフ、(3)接着性試験を行った。その評価結果を表2に示す。
【0069】
[比較例1〜3]
製造例14〜16で製造された水性エマルジョン14〜16を用いて、上記(2)ポットライフ、(3)接着性試験を行った。その評価結果を表2に示す。
比較例1では架橋性単量体を使用していないので、耐煮沸接着強さが不十分であった。一方、比較例2、3ではシェルに架橋性単量体を使用しているため、初期接着強さ、低温接着強さが不十分であった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】