(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473314
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】パラフィンブロック作成具
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20190207BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/28 F
G01N33/48 R
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-211539(P2014-211539)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-129739(P2015-129739A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-250730(P2013-250730)
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591242450
【氏名又は名称】村角工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】村角 英彦
【審査官】
西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】
特表昭61−502560(JP,A)
【文献】
特開昭55−142237(JP,A)
【文献】
特開2008−157835(JP,A)
【文献】
特開平08−035921(JP,A)
【文献】
米国特許第05817032(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセット本体と蓋体とからなる医療検査用カセットと、
パラフィン収容部とその周縁に設けられたカセット本体載置部とからなり、検体をパラフィンで包埋したパラフィンブロックを作成するためのトレイと、
前記パラフィンの液化温度で溶融せず且つ薄切可能な柱状体と、
前記柱状体を前記トレイのパラフィン収容部内に立設する手段とを含み、
前記柱状体をパラフィン収容部内に立設する手段が、前記トレイの底部に設けられた支持部であることを特徴とするパラフィンブロック作成具。
【請求項2】
柱状体がクレヨン、クレパス、着色されたパラフィン、ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャクから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のパラフィンブロック作成具。
【請求項3】
柱状体が着色されたパラフィンからなり、その融点がパラフィンブロック本体のパラフィンの融点よりも高いことを特徴とする請求項2に記載のパラフィンブロック作成具。
【請求項4】
柱状体が識別可能な断面形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパラフィンブロック作成具。
【請求項5】
識別可能な断面形状が、文字、数字、記号、模様から選ばれることを特徴とする請求項4に記載のパラフィンブロック作成具。
【請求項6】
トレイの上縁部が斜め又は垂直方向に立設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパラフィンブロック作成具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィンブロック作成具に関し、更に詳しくは、顕微鏡標本の取り違えを防止して検査の信頼性を高めるための顕微鏡標本を提供するためのパラフィンブロック作成具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の顕微鏡標本の作成に用いられる医療検査用カセット(以下、単にカセットと称することがある)11は、
図13および
図14に示すように、耐薬品性合成樹脂からなるカセット本体12と蓋体13とを具備してなる。カセット本体12は、上面を開放した方形の容器で、底面部に多数の透孔14を有し、短辺側の一側壁の外側に底面部に向かって末広がり状に傾斜した板状の記録部12aを設けている。蓋体13は、着脱可能な板状体で、板面に多数の透孔14を有している。15は蓋体13とカセット本体12との係止部である。
【0003】
上記カセット11を使用して顕微鏡標本を作製するには、まず、
図14に示すように、採取した検体Sをカセット本体12内に収容して蓋体13を取り付け、記録部12aに被検者を特定するための氏名や記号等を記録しておく。
【0004】
続いて、蓋体13の透孔14を通じて、検体Sを水洗し、アルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより検体Sの脂肪分を除去するとともに後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
【0005】
次に、
図15に示すようなステンレス製のトレイT内に液状パラフィンPを入れ、検体Sをカセット本体12から取り出して前記トレイTの中に移し替え、トレイTの中で検体Sに液状パラフィンを浸透させ検体Sを仮固定する。続いて、
図16に示すように、トレイTのカセット載置部T2にカセット本体12を載せ、更に、カセット本体12が液状パラフィンPに浸るまで、更に液状パラフィンPを検体S上に注ぎ足す。
【0006】
次いで、
図17に示すように、液状パラフィンPが固化した後トレイTを取り去ることにより、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体12の底面部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。
【0007】
次に、図示しないが、ミクロトーム上にパラフィンブロックBを裏返して載せて、ミクロトームに設置されたアダプターをパラフィンブロックBに係合することにより、パラフィンブロックBをミクロトームに固定する。続いて、パラフィンPの検体Sを包埋した部分をスライスし、得られた薄片に染色、その他の所定の処理を施すことにより、
図18に示すような顕微鏡標本Hを得る。
【0008】
ところで、上記のように、カセット本体12の記録部12aには、被検者の氏名や記号等を記録されているが、得られた標本Hはカセット本体12とは完全に分離されるため、しばしば、被検者を取り違えるといった深刻なトラブルが発生する。
【0009】
このようなトラブルを解消するために、カセットの蓋の表面に番号、アルファベット等の識別表示を突設したカセットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この蓋も標本とは完全に分離されるため、検体を取り違えるといったトラブルは解消されない。
【0010】
本発明はかかる実情に鑑み、従来の顕微鏡標本作成における上記課題を解消するためのパラフィンブロック作成具を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4402265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は上記従来技術の課題を解消せんとして鋭意検討の結果、標本自体に識別表示を設ければ、標本(検体)と識別表示とは不離一体となり、取り違えのトラブルが根絶されることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明の特徴は、カセット本体と蓋体とからなる医療検査用カセットと、パラフィン収容部とその周縁に設けられたカセット本体載置部とからなり、検体をパラフィンで包埋したパラフィンブロックを作成するためのトレイと、前記パラフィンの液化温度で溶融せず且つ薄切可能な柱状体と、前記柱状体を前記トレイのパラフィン収容部内に立設する手段とを含み、前記柱状体をパラフィン収容部内に立設する手段が、前記トレイの
底部に設けられた支持部であることを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【0016】
本発明の他の特徴は、柱状体がクレヨン、クレパス、着色されたパラフィン、ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャクから選ばれることを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【0017】
本発明の他の特徴は、柱状体が着色されたパラフィンからなり、その融点がパラフィンブロック本体のパラフィンの融点よりも高いことを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【0018】
本発明の他の特徴は、柱状体が識別可能な断面形状を有することを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【0019】
本発明の他の特徴は、識別可能な断面形状が、文字、数字、記号、模様から選ばれることを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【0020】
本発明の他の特徴は、トレイの上縁部が斜め又は垂直方向に立設されていることを特徴とするパラフィンブロック作成具である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパラフィンブロック作成具によれば、色や、識別可能な断面形状を有する柱状体が、検体を包埋するパラフィンブロック中に残留し、前記柱状体の色や、断面形状の異なる識別表示が形成される。かくして、パラフィンブロックをスライスすれば、薄切された検体を含むパラフィンの薄片の中に、薄切された柱状体の薄片の色や断面形状の異なる識別表示が形成される。この結果、これを染色等の処理をして得られる標本は検体とともに識別表示を内包し不離一体であるため識別表示が分離することがなく、標本を取り違えるといったトラブルが解消される。
【0022】
また、上記柱状体をパラフィン収容部内に立設する手段としては、該パラフィン収容部に設けられた支持部又はカセット本体の底部裏面に設けられた支持部が好適である。
【0023】
また、柱状体はクレヨン、クレパス、着色されたパラフィン、ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャクが好ましく、特にクレヨンやクレパスは12色とか24色等に着色されているので、その色を識別表示として利用できるので好ましい。これらの中でも、柱状体が着色されたパラフィンからなり、その融点がパラフィンブロック本体のパラフィンの融点よりも高いものが特に好ましい。
【0024】
また、必要に応じ、識別可能な断面形状として識別表示としてもよく、更に、色と断面形状とを組み合わせて識別表示とすることもできる。ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャクについても同様に、色、断面形状、これらの組み合わせを識別表示とすることができる。
【0025】
また、識別可能な断面形状としては、文字、数字、記号、模様が好適である。
【0026】
また、立設される柱状体がパラフィンブロック中に残留しやすいようにテーパー状とすることにより、パラフィンが固化した後のトレイの除去が容易である。
【0027】
また、トレイの上縁部を斜め又は垂直方向に立設することにより、実質的にパラフィンが滞留する水平部分がないので、パラフィンブロックに所謂バリ(パラフィンブロックに付着した余分のパラフィン部分)が発生しにくく、バリ取り作業が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明において、柱状体を立設したトレイの一例を示すもので、(a)は断面図、(b)は上面図、(c)は要部拡大断面図である。
【
図3】柱状体の他の断面形状の例を示す概略図である。
【
図4】柱状体を立設したトレイの他の例を示す概略断面図である。
【
図5】(a)、(b)は、それぞれ柱状体をカセット本体の底部裏面に立設した例を示す概略断面図である。
【
図6】
図1の、柱状体を立設したトレイを用いてパラフィンブロックを作成する状態を示す概略断面図である。
【
図7】
図6で得られるパラフィンブロックを示す概略断面図である。
【
図8】
図7のパラフィンブロックをスライスして得られる顕微鏡標本を示す上面図である。
【
図9】
図5(a)の、柱状体を立設したカセット本体を用いてパラフィンブロックを作成する状況を示す概略断面図である。
【
図10】
図9で得られるパラフィンブロックを示す概略断面図である。
【
図11】
図10のパラフィンブロックをスライスして得られる顕微鏡標本を示す概略断面図である。
【
図12】本発明に用いられるトレイの他の例を示す概略断面図である。
【
図13】医療検査用カセットの一例を示す斜視図である。
【
図14】
図13の医療検査用カセット検体を収容した状態を示す概略断面図である。
【
図16】
図15のトレイを用いてパラフィンブロックを作成する状態を示す概略断面図である。
【
図17】
図16で得られるパラフィンブロックを示す概略断面図である。
【
図18】
図17のパラフィンブロックをスライスして得られる顕微鏡標本を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のパラフィンブロック作成具は、カセット本体と蓋体とからなる医療検査用カセットと、パラフィン収容部とその周縁に設けられたカセット本体載置部とからなり、検体をパラフィンで包埋したパラフィンブロックを作成するためのトレイと、前記パラフィンの液化温度で溶融せず且つ薄切可能な柱状体と、前記柱状体を前記トレイのパラフィン収容部内に立設する手段とを含むことを特徴とする。
本発明に用いられるカセットは、カセット本体12と蓋体13とからなる従来のカセットが含まれ、その典型的なものとしては上記
図13、
図14で示したカセットが挙げられる。
本発明において、パラフィンの液化温度で溶融せず且つ薄切可能な柱状体が、トレイのパラフィン収容部に立設される。
図1(a)、(b)、(c)は、柱状体5がパラフィン収容部2に設けられた支持部6により立設されたトレイ1の例を示す。これらの図に示すように、容器状のパラフィン収容部2と、その周縁に設けられたカセット載置部3とからなるトレイ1のパラフィン収容部2に、柱状体5を立設する手段として支持部6が含まれている。図中、4は額縁部で、把持部の役割も果たす。
【0030】
本発明において、柱状体5はパラフィンの液化温度(約60℃)で液化せず且つ薄切可能であり、識別可能に着色されているか、又は、識別可能な断面形状を有するもので、例えば、クレヨン、クレパス、着色されたパラフィン、ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャク等が挙げられる。特に、クレヨン、クレパスは12色、24色等に着色されているので、これらの色を識別表示として利用することができるので好都合である。
【0031】
着色されたパラフィンとしては特に限定されず、通常パラフィンブロックを作成するために用いられるパラフィンに所定の染料や顔料を配合したものが、全て好適に使用できる。尚、パラフィンブロックBには、通常の場合、白色パラフィンが使用されるので、着色流動パラフィンBの色はこの白色パラフィンと比較したコントラストが高くなるようにしたほうが識別表示5aが見やすくなる。このため、明度は低く彩度が高くなるように染料、顔料を選択するのが好ましい。
【0032】
ところで、柱状体として使用するパラフィンの融点が低い場合には、高温の溶融パラフィンをトレイに注いだ際に柱状体が柔らかくなりすぎて変形する恐れがある。このような不都合を避けるためには、着色されたパラフィンに使用するパラフィンとしては、パラフィンブロック本体に用いるパラフィンと融点が同程度かやや高いものを用いるほうが好ましく、より好ましくは、5℃以上高いパラフィンが用いられる。
【0033】
ゴムとしては特に制限されず、天然ゴム、合成ゴムのいずれでもよく、合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエン−アクリロニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、シリコーンゴム等が挙げられる。また、エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、軟質樹脂としては、ポリエチレン、軟質塩化ビニル樹脂等が挙げられる。ゴム、エラストマー、軟質樹脂、コンニャクについても、着色を施して、これらの色を識別表示として用いることができる。
【0034】
また、柱状体5は、識別可能な断面形状として、これらの断面形状を識別表示として用いることができる。
図1では断面形状として方形が示されているが、これに限定されず、識別(区別)可能な断面形状であればよい。例えば、
図2、
図3に示すように、○、△、×等の記号、A、B、C(a、b、c)等のアルファベット、イ、ロ、ハ(い、ろ、は)等の片仮名や平仮名、1、2、3等の数字、星形、ハート、ダイヤ、クローバー等の模様のように、文字、数字、記号、模様等が挙げられる。
更に、色と断面形状とを組み合わせて識別表示とすることも可能である。
【0035】
柱状体5は、トレイ1のパラフィン収容部2内に液状パラフィンを注ぎ入れ、液状パラフィンが固化した後にトレイ1を取り外した際に、得られるパラフィンブロック中に残留して該柱状体5の色、又は断面形状、又はその両方からなる識別表示が形成される。
【0036】
柱状体5はトレイ1のパラフィン収容部2に立設されるが、このような立設手段としては、トレイ1のパラフィン収容部2又はカセット本体12に設けられた支持部が好ましい。
前者については、例えば、
図1に示すように、トレイ1の底部裏面に突設した支持部6(6a)としたり、
図4に示すように、底部表面に突設した支持部6(6b)としてもよい。この場合、支持部6(6a)の内側に、柱状体5を係止するための係止爪7を設けてもよい(
図1(c)参照)。
図4の支持部6(6b)においても同様に係止爪7を設けることができる。
また、後者については、例えば、
図5に示すように、カセット本体12の底部裏面に支持部6を設けることができる。
図5(a)では、底部裏面にカセット本体12の内方向に突設した支持部6(6c)の例を示し、
図5(b)では、底部裏面に外方向に突設した支持部6(6d)の例を示す。これらの支持部6(6c)、6(6d)においても、上記した係止爪7を設けることができる。
更に、他の立設手段としては、トレイ1のパラフィン収容部2、又は、カセット本体12の底部裏面に設けた突き刺し突起を支持部とし、これに柱状体5を突き刺して立設することも可能である。
【0037】
柱状体5は、トレイ1のカセット載置部3にカセット11(カセット本体12)を載置した際に、柱状体5がカセット11(カセット本体12)の底部裏面とトレイ1の底面との間に収まるように立設される。また、液状パラフィンが固化した後にトレイ1が取り外されるが、その際に、柱状体5が固化したパラフィン中に残留しやすいようにテーパー状に形成することが望ましい(
図1(a)、
図4、
図5(a)、(b)参照)。
【0038】
トレイ1は方形状等の容器からなるパラフィン収容部2と、その周縁に設けられたカセット載置部3とからなり、必要に応じ、額縁部4が設けられる。トレイ1の素材としては、ステンレス、銅、アルミ等の金属、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0039】
図6は、
図1に示した、柱状体5を立設したトレイ1を用いてカセットブロックを作成する状態を示している。
即ち、背景技術で記載したのと同様にして、水洗、薬液処理等を施した検体Sをカセット本体12からトレイ1のパラフィン収容部2に移し替え、トレイ1のカセット載置部3にカセット本体12を載せ、カセット本体12の上部まで液状パラフィンPを注ぐ。
【0040】
次いで、
図7に示すように、液状パラフィンPが固化した後、トレイ1を取り去るが、柱状体5は固化したパラフィンP中に残留し、その結果、検体Sを包埋し、柱状体5を含むパラフィンブロック8が得られる。
【0041】
次いで、背景技術で記載した如く、ミクロトーム上にパラフィンブロック8を裏返して固定し、検体Sを包埋し柱状体5を含むパラフィンPの部分をスライスすると、
図8に示すように、検体Sと柱状体5の断面形状からなる識別表示5aを包埋した薄片が得られ、これに染色等の処理を施すことにより顕微鏡標本Hが得られる。
【0042】
得られた顕微鏡標本Hは、検体Sと識別表示5aとは不離一体であり、互いに分離することがないので、他の顕微鏡標本と取り違えることはない。
【0043】
図9は、
図5(a)に示した、柱状体5を立設したカセット11(カセット本体12)を用いてカセットブロックを作成する状態を示している。
図10は、液状パラフィンPが固化した後トレイ1を取り去った状態で、柱状体5は固化したパラフィンP中に残留し、検体Sを包埋し、柱状体5を含むパラフィンブロック8が得られ、
図11は、該パラフィンブロック8からスライスして得られた顕微鏡標本Hで、検体Sと識別表示5aを包埋している。
【0044】
ところで、上記トレイ1はカセット載置部3や上縁の額縁部4が水平状であるので、
図6に示すように、この水平状の部分でパラフィンPが盛り上がった状態で固化するため、
図7に示すように、この部分がバリ9となってパラフィンブロック8に残留する。このバリ9は、パラフィンブロック8をアダプターに係合しミクロトーム上に固定する際に支障を来すのでカッター等で削り取る必要があり、作業性を低下させる。
【0045】
このようなバリ9の発生を防止するには、
図12に示すように、トレイ1の上縁部を斜め又は垂直方向立設してカセット載置部3としたトレイが、バリ9の発生を引き起こす水平状部分が存在しないので好適である。この場合、このトレイ1の上縁部であるカセット載置部3にカセット本体12を載置するだけでもよいが、図示したように、カセット本体12の底部裏側に、トレイ1のカセット載置部3と嵌合する溝を設けたカセット本体12を使用すれば、液状パラフィンは嵌合したカセット本体12の溝とトレイ1のカセット載置部3とにより外部への流出が遮断されるのでバリ9の発生が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
叙上のとおり、本発明のパラフィンブロック作成具によれば、検体と不離一体の識別表示を含む顕微鏡標本が得られるので、顕微鏡標本を取り違えるといった深刻なトラブルが防止され、検体の信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0047】
1 トレイ
2 パラフィン収容部
3 カセット載置部
4 額縁部
5 柱状体
5a 識別表示
6(6a)、(6b)、(6c)、(6d) 支持部
7 係止爪
8 パラフィンブロック
9 バリ
S 検体
H 顕微鏡標本
11 医療検査用カセット
12 カセット本体
12a 記録部
13 蓋体
14 透孔
15 係止部
T 従来のトレイ
T1 額縁部
T2 カセット載置部
P パラフィン
B パラフィンブロック