(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷台昇降装置は、前記移動機構が、シャシフレーム上に付設されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って前記荷台を自車両前後方向に移動および上下方向に傾斜可能な移動フレームと、前記二つの油圧シリンダとして、各チューブの途中部分が回転可能に支持されたセンタトラニオン構造をもつ前方シリンダおよび後方シリンダとを備え、
前記前方シリンダは、そのロッド先端が前記シャシフレーム前部に回転可能に支持されるとともに、そのチューブの途中部分が前記移動フレームの中間部に回転可能に支持され、
前記後方シリンダは、そのロッド先端が前記荷台の後部に回転可能に支持されるとともに、そのチューブの途中部分が前記移動フレームの後端部に回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の荷台昇降装置。
前記前方シリンダのチューブのボトム側に付設された切換弁室は、当該前方シリンダのロッドの移動による押し力によって自身の弁体が押されている押し位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体がロッドの移動による押し力によって押されていない非押し位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっており、
前記後方シリンダのチューブのボトム側に付設された切換弁室は、当該後方シリンダのロッドの移動による引き力によって自身の弁体が引かれている引き位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体がロッドの移動による引き力によって引かれていない非引き位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっていることを特徴とする請求項2に記載の荷台昇降装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、順次作動制御を行う方策としては、例えば、複数の油圧シリンダとは別個に、スイッチ部を有する切換弁を移動機構に装備し、駆動対象物自体の移動動作によって切換弁のスイッチ部を順次作動のタイミングに合わせて押すように構成することができる。このような構成であれば、駆動対象物が所定位置で切換弁のスイッチ部を押すことにより、複数の油圧シリンダが所定のタイミングで順次に駆動される。よって、駆動対象物への駆動力を順次に切換えて、複数の駆動対象物を所定のタイミングで移動させることができる。
【0005】
しかしながら、油圧シリンダとは別個に設けた切換弁を用いる場合、油圧シリンダと切換弁とを繋ぐための油圧配管や接続部材が別途に必要となるという問題がある。また、駆動対象物自体の移動動作によって切換弁のスイッチ部を動作させる構造であると、所定のタイミングで切換弁の切換えが行われるようにするために、駆動対象物と切換弁のスイッチ部との相互の位置を、組立やメンテナンスの都度調整する必要があるという問題がある。
【0006】
さらに、駆動対象物の軸支部のガタや駆動対象物自体の歪みのために、切換弁のスイッチ部と駆動対象物との離間距離が経時的に変ってしまう場合があり、高精度で安定した動作を行わせることが難しいという問題がある。さらにまた、駆動対象物自体の動作を検出する切換弁のスイッチ部に、ゴミなどの異物が入る可能性があり、特に、冬季において、外部に露出されている切換弁のスイッチ部分が積雪や凍結などによって固着してしまうと、切換弁の動作不良が生じるおそれがあるという問題がある。そのため、油圧シリンダとは別個に設けた切換弁を用いる場合、切換弁のスイッチ部の確認や清掃作業が必要になり、メンテナンスフリーとする上で改善の余地がある。
【0007】
特に、上記特許文献1に開示されるような貨物自動車においては、荷台を自車両の後方に地上まで略水平に降ろすという昇降およびスライド移動動作を伴う。そのため、駆動対象物となる荷台および移動フレームおよび移動機構が比較的大型である上、荷台および移動フレームの動きが複雑かつロングストロークなので、駆動対象物自体の動作によって切換弁のスイッチ部を動作させて駆動圧油を所定のタイミングで切換えて駆動する構成であると、切換弁のスイッチ部を安定して押し続けることが難しい。また、電気的な制御によって切換弁を制御することもできるものの、電気的な制御であると、別途に制御装置や制御用プログラム、電気配線等を用意する必要があるため、コストアップの要因となり、また、メンテナンス性を向上させる上では、必ずしも望ましい方策とはいえない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、メンテナンス性を向上させるとともに、高精度で安定した動作を行わせることができ
る荷台昇降装置
および貨物自動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る荷台昇降装置は、
複動形である二つの油圧シリンダを順次に作動させて荷台をシャシフレーム上に格納した位置から自車両の後方に降ろした位置まで移動させる移動機構を備える荷台昇降装置であって、前記二つの油圧シリンダは、
チューブと、該チューブ内にスライド移動可能に設けられたロッドと、前記チューブのボトム側に付設された切換弁室とをそれぞれに備え、前記切換弁室は、二つのポートと、前記ロッドの移動による押し力または引き力に伴う機械的な力によって駆動される弁体とを有し、当該弁体の駆動により前記二つのポート相互の連通状態を切換えて、前記二つの油圧シリンダのうち自身が付設された油圧シリンダまたは他方の油圧シリンダに供給する駆動圧油の給排状態を切換えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る荷台昇降装置によれば、二つの油圧シリンダ
は、複動形の油圧シリンダのチューブのボトム側に付設した切換弁室を有し、この切換弁室内の弁体を、油圧シリンダのロッドの移動による押し力または引き力に伴う機械的な力によって駆動することにより、二つのポート相互の連通状態を切換えて、一方または他方の油圧シリンダに供給する駆動圧油の給排状態を切換えるので、駆動圧油の給排状態を切換えるための電気的な制御が不要であり、駆動対象物の軸支部のガタの影響や駆動対象物自体の歪みの影響を受けるおそれがない。また、切換弁室にゴミなどの異物が侵入することも防止される。さらに、切換弁室は、外部に露出されている可動部を有しないため、積雪や凍結などによって固着することもない。よって、荷台昇降装置のメンテナンス性を向上させるとともに、高精度で安定した動作を実現することができる。
そして、本発明の一態様に係る荷台昇降装置によれば、二つの油圧シリンダ
の各切換弁室は、弁体の駆動により二つのポート相互の連通状態を切換えて、自身が付設された油圧シリンダまたは他の油圧シリンダに供給する駆動圧油の給排状態を切換えることができる。そのため、二つの油圧シリンダを順次に作動させて荷台をシャシフレーム上に格納した位置から自車両の後方に降ろした位置まで移動させる上で好適である。
【0013】
ここで、本発明の一態様に係る荷台昇降装置において、前記荷台昇降装置は、前記移動機構が、シャシフレーム上に付設されたガイドレールと、該ガイドレールに沿って前記荷台を自車両前後方向に移動および上下方向に傾斜可能な移動フレームと、前記二つの油圧シリンダとして、各チューブの途中部分が回転可能に支持されたセンタトラニオン構造をもつ前方シリンダおよび後方シリンダとを備え、前記前方シリンダは、そのロッド先端が前記シャシフレーム前部に回転可能に支持されるとともに、そのチューブの途中部分が前記移動フレームの中間部に回転可能に支持され、前記後方シリンダは、そのロッド先端が前記荷台の後部に回転可能に支持されるとともに、そのチューブの途中部分が前記移動フレームの後端部に回転可能に支持されることは好ましい。
【0014】
このような構成であれば、二つの油圧シリンダ(前方シリンダおよび後方シリンダ)として、チューブの途中部分を回転可能に支持したセンタトラニオン構造を採用したことにより、ボトム側に切換弁室を設けつつ、前方シリンダおよび後方シリンダの各チューブの後端までロッドストロークとして使うことができる。そのため、荷台をシャシフレーム上に格納した位置から自車両の後方に降ろした位置までスライド移動させる上で必要な移動量(ロッドストローク)を確保しつつ、各油圧シリンダのチューブのボトム側に切換弁室を設ける上でより好適である。
【0015】
また、本発明の一態様に係る荷台昇降装置において、前記前方シリンダのチューブのボトム側に付設された切換弁室は、当該前方シリンダのロッドの移動による押し力によって自身の弁体が押されている押し位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体がロッドの移動による押し力によって押されていない非押し位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっており、前記後方シリンダのチューブのボトム側に付設された切換弁室は、当該後方シリンダのロッドの移動による引き力によって自身の弁体が引かれている引き位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体がロッドの移動による引き力によって引かれていない非引き位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっていることは好ましい。
このような構成であれば、荷台をシャシフレーム上に格納した位置から自車両の後方に降ろした位置まで移動させる移動機構を有する荷台昇降装置に用いて、その移動機構の前方シリンダおよび後方シリンダの順次制御を行なわせるための切換弁室の構成として好適である。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明のうち、本発明の一態様に係る貨物自動車は、荷台昇降装置を備える貨物自動車であって、前記荷台昇降装置として、本発明の一態様に係る荷台昇降装置を備えることを特徴とする。
本発明の一態様に係る貨物自動車によれば、荷台昇降装置として、本発明の一態様に係る荷台昇降装置を備えるので、貨物自動車のメンテナンス性を向上させるとともに、高精度で安定した動作を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、本発明によれば、メンテナンス性を向上させるとともに、高精度で安定した動作を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る貨物自動車の一実施形態の車両運搬車について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この車両運搬車1は、そのシャシフレーム2上に荷台3を備えている。荷台3の前部には、いわゆる鳥居5が一体に設けられ、また、荷台3の後部には、後煽り4が装備されている。後煽り4は、自車両前後方向に回動可能に取付けられ、同図に示す垂直な閉じ位置、および、後方に回動した開き位置(
図6(e)参照)のそれぞれに位置可能になっている。後煽り4は、開き位置において、荷台3が自車両の後方に地上GLまで降ろされたときに、後方に回動して車両を乗り入れるときのスロープとなる。
【0020】
荷台3の後部下側には、可倒式のバンパ装置60が装備されている。バンパ装置60の後方端部にはランプ等の保安部品やバンパ本体100が付設されている。バンパ本体100は、他車両等の後方からの突入を防止するための突入防止部材である。バンパ装置60は、リンクおよびカムから構成された複数の起伏切換機構(符号、70、71a,b、72)を有する。これら起伏切換機構は、荷台3のスライド移動に連動することにより、
図1に示す格納位置Kに荷台3があるときには、バンパ本体100を荷台3の後方下部に張り出させて、バンパ本体100を法規上必要な位置に位置させる。
【0021】
また、バンパ装置60は、荷台3が自車両の後方に地上GLまで降ろされた乗込位置N(
図6(e)参照)では、バンパ装置60全体が折り畳まれて荷台3の裏面と略並行な倒伏姿勢となる。さらに、このバンパ装置60は、荷台3を支持する支持脚ローラ63を有し、荷台3を自車両の後方にスライド移動させるときに、起伏切換機構が、荷台3のスライド移動に連動することにより、所期の姿勢にて支持脚ローラ63を地面に接地させて荷台3を支持可能になっている。
【0022】
そして、この車両運搬車1は、上記荷台3とシャシフレーム2との間に荷台昇降装置10を装備している。以下、荷台昇降装置10について説明する。なお、
図2は、
図1の荷台昇降装置10の部分を分解して示した模式図である。
図2に示すように、荷台3は、その車両幅方向両側に、荷台縦根太6をそれぞれ有する。荷台縦根太6は、溝形鋼状の長尺の部材であり、溝形鋼の凹溝側を幅方向での内側に向けて車両前後方向に沿って対向配置されている。荷台3の後端下部には、荷台接地ローラ50が設けられている。荷台接地ローラ50は、荷台3が自車両の後方に降ろされたときに、地上GLに接触してスライド移動方向(自車両の前後方向でもある)への移動を補助する。また、シャシフレーム2の後端には、荷台受けローラ54が付設されている。荷台受けローラ54は、スライド移動される荷台3を下方から支持する。
【0023】
そして、荷台昇降装置10は、荷台3を移動させる移動機構を備え、この移動機構によって、荷台3を、シャシフレーム2上に格納した格納位置K(
図1参照)、およびその格納位置Kから荷台3を自車両の後方に且つ地上GLと略水平となる位置まで降ろした乗込位置N(
図6(e)参照)までスライド移動可能に構成されている。これにより、この車両運搬車1は、乗込位置Nで車両を荷台3に積載するとともに、その積載した車両を、荷台3を格納位置Kに格納して運搬可能になっている。なお、荷台接地ローラ50が接地した状態であれば、積載自体は可能である。
【0024】
詳しくは、
図2に示すように、荷台昇降装置10は、シャシフレーム2上に、荷台昇降装置10を固定するための基部となるベースフレーム8が固定されている。ベースフレーム8上の車両後方の位置にガイドレール11が付設され、ガイドレール11上に移動フレーム20を介して荷台3が載置されている。ガイドレール11は、車両幅方向両側に一対をなして付設された溝形鋼状の長尺の案内部材であり、案内溝となる溝形鋼の溝側を幅方向での内側に向けて対向配置されている。各ガイドレール11は、その前端部および後端部を下方に向けて湾曲加工されることで、側面視が略「へ」字形をなすように形成され、これにより、その前端側(車両前方側)から順に、前方傾斜部12、水平部14、後方第一傾斜部16および後方第二傾斜部18を有して構成されている。
【0025】
移動フレーム20は、平面視が略梯子状の枠体に形成され、その後方部の両側に、車両前後方向に離間した一対の前側ローラ21および後側ローラ22をそれぞれ備えている。移動フレーム20は、一対の前側ローラ21および後側ローラ22により、ガイドレール11の案内溝にスライド移動可能に嵌合されている。これら前側ローラ21および後側ローラ22は、移動フレーム20の外側面から幅方向外側に向けて張り出しており、車両幅方向を向く支軸を介してその軸まわりに回転可能である。
【0026】
そして、これら前側ローラ21および後側ローラ22は、上述した一対のガイドレール11の略コ字状の各案内溝に嵌合して転動可能に支持されており、ガイドレール11に沿って、移動フレーム20のスライド移動を円滑に案内している。前側ローラ21は、スライド方向での車両前方側に設けられるとともに、車両下方に向けて張り出す腕部の先端に取り付けられている。なお、後側ローラ22は、スライド方向での車両後方側に設けられ、前側ローラ21とは異なり、移動フレーム20部分に直接取り付けられ、これにより、前側ローラ21よりも車両上下方向での上方に位置している。
【0027】
また、移動フレーム20には、その車両幅方向両側に、一対の移動フレームレール24が固定されている。各移動フレームレール24は、溝形鋼状の長尺の案内部材であり、荷台3の前両側に設けられた荷台前側ローラ52が転動可能に支持され、移動フレームレール24に沿って、荷台3のスライド移動を円滑に案内するようになっている。
ここで、この荷台昇降装置10は、荷台3を移動させる移動機構において、上記移動フレーム20および荷台3をスライド移動させる駆動機構として、二つの複動形の油圧シリンダを組として用いている。本実施形態では、二つの複動形の油圧シリンダとして、前方シリンダ30および後方シリンダ40を備えている。前方シリンダ30および後方シリンダ40は、そのチューブの途中部分が回転可能に支持されたセンタトラニオン構造を有する。
【0028】
詳しくは、前方シリンダ30は、そのロッド32の先端がシャシフレーム2の前部8aに回転可能に支持されるとともに、そのチューブ34の途中部分36が移動フレーム20の中間部20b(この例では下方に張り出す前側ローラ21の腕部の基端部)近傍に回転可能に支持されている。また、後方シリンダ40は、そのロッド42の先端が荷台3の後部3a(この例では荷台接地ローラ50の近傍)に回転可能に支持されるとともに、そのチューブ44の途中部分46が移動フレーム20の後部20aに回転可能に支持されている。そして、荷台3ないし移動フレーム20は、前方シリンダ30および後方シリンダ40(以下、単に「油圧シリンダ30、40」ともいう)のロッドの伸縮に応じて自車両の前後方向に沿って移動され、これにより、荷台3をシャシフレーム2上に格納した格納位置Kから自車両の後方に荷台3を降ろした乗込位置Nまで移動可能になっている。
【0029】
ここで、格納位置Kにおいて、上記前側ローラ21は、ガイドレール11の前方傾斜部12に位置し、後側ローラ22はガイドレール11の水平部14に位置している。そのため、格納位置Kにあっては、移動フレーム20がシャシフレーム2上で略水平となり、荷台3の姿勢も水平に支持される。そして、荷台3の移動時は、荷台前側ローラ52が移動フレームレール24に案内されつつ後方に移動する。
【0030】
その後、上述したガイドレール11の各傾斜部等12、14、16および18の形状に倣って前側ローラ21および後側ローラ22がスライド移動する。これにより、荷台昇降装置10は、移動フレーム20上の荷台3を自車両の後方に降ろす上で必要な高さまで下げるように移動および傾斜させつつ支持して、荷台3を地上にほぼ水平状態に降ろすことができるようになっている。本実施形態の例では、油圧シリンダ30、40による駆動対象物は、荷台3および移動フレーム20が対応している。
【0031】
以下、上記油圧シリンダ30、40を連動作動させる油圧回路等の構成について説明する。
油圧シリンダ30、40は、
図3に示すように、車両のエンジンにて駆動される油圧ポンプ92から制御弁80を介して圧油を供給することにより作動するようになっている。制御弁80は、各油圧シリンダ30、40を制御するための4ポート3位置電磁弁であって、不図示のメインスプールと、左右のソレノイドおよびスプリングとを有する。
【0032】
メインスプールは、左右のソレノイドが消磁時には、左右のスプリングで中央位置に保持されて全ポートが閉じた状態となり、左右のソレノイドの励磁に応じて軸方向に移動して制御弁80内部の油路を切り換える。この例では、制御弁80は、荷台3の後退動作においては、一方のソレノイドが励磁されて、同図右側に示すX状態に圧油の流れる方向を切換え、また、荷台3の前進動作においては、他方のソレノイドが励磁されて、同図左側に示す平行状態に圧油の流れる方向を切換えるように構成されている。
【0033】
ここで、各油圧シリンダ30、40は、荷台3のスライド位置に応じて互いに連動するように、それぞれに付設されている切換弁室38、48によって圧油の給排状態が制御される。換言すれば、各切換弁室38、48は、二つの油圧シリンダ30、40を順次作動させるように、圧油の連通状態と遮断状態とを切り替えるシーケンス弁となっている。各切換弁室38、48は、自身が付設された油圧シリンダのロッドに連動して弁体が軸方向に駆動され、弁体が弁座に対し対向方向に移動して駆動圧油の流路を開閉するポペット式構造を有する。
【0034】
詳しくは、
図3に示すように、前方シリンダ30は、前方シリンダ30のチューブ34のボトム側端面に付設された第一の切換弁室38を備えている。また、後方シリンダ40は、後方シリンダ40のチューブ44のボトム側端面に付設された第二の切換弁室48を備えている。各切換弁室38、48は、それぞれ二つのポートを有する。
前方シリンダ30は、ロッド側ポートB4および第一の切換弁室38の第二のポートB2が、制御弁80のサービスポートAに接続されている。また、前方シリンダ30のチューブ側ポートB3は、第二の切換弁室48の第二のポートA3に接続されている。
後方シリンダ40は、チューブ側ポートA2および第二の切換弁室48の第一のポートA1が、制御弁80のサービスポートBに接続されている。また、後方シリンダ40のロッド側ポートA4は、第一の切換弁室38の第一のポートB1に接続されている。なお、制御弁80のサービスポートA、Bと油圧シリンダ30、40との間には、可撓性を有する樹脂配管82が移動フレーム20の傾斜に対応した位置に用いられるとともに、カウンタバランス弁84が介装されている。
【0035】
第一の切換弁室38は、
図4に要部を拡大図示するように、前方シリンダ30のロッド32の移動による押し力で軸方向に押されて駆動する弁体133を有する。第一の切換弁室38は、弁体133のスライド移動により自身が付設された前方シリンダ30または後方シリンダ40に供給する駆動圧油の給排状態を切換えるようになっている。
詳しくは、第一の切換弁室38は、前方シリンダ30のチューブ34のボトム側に端面に、溶接により付設された本体ブロック131を有する。本体ブロック131は、鋼製のブロック状の部材であり、チューブボトムのキャップを兼ねて装着され、本体ブロック131の前面(同図左側の面)には、チューブ34のボトム側の端面にインロー嵌合するインロー部131hが形成されている。
【0036】
本体ブロック131の内部には、前方シリンダ30のロッド32の軸線とは偏心した位置(この例では、ロッド32の軸線よりも上方の位置)に、多段の貫通孔が軸方向に沿って貫通して形成された弁室138を有する。弁室138は、チューブ34のボトム側から順に、小径孔131c、中径孔131d、大径孔131eを有する。小径孔131cは、チューブ34の内部にボトム側から貫通する第一小径部131aと、第一小径部131aに続いて設けられて第一小径部131aよりも径大な第二小径部131bとからなる。大径孔131eの内周面には雌ねじが形成されている。
【0037】
小径孔131cに位置検出軸体137が摺嵌されている。また、中径孔131dには、円筒状の弁座体136が嵌め込まれている。中径孔131dに対し、中径孔131dの軸方向とは直交方向から二つのポートB1、B2が連通するように径方向に沿って形成されている。この例では、第一のポートB1は、中径孔131dのボトム側寄りの位置に連通するように弁座体136の前方に形成されている。また、第二のポートB2は、第一のポートB1とは径方向の反対の側から、ボトム側とは反対側寄りの位置に連通するように弁座体136の後方に形成されている。
【0038】
大径孔131eには、外周面に雄ねじを有するソケット132が、本体ブロック131の後面側から螺着されている。ソケット132の内部には、軸方向に貫通する貫通孔132aが形成され、この貫通孔132aに弁体133が摺嵌されている。
弁体133は、ボトム側の端部が円錐台状をなして弁座体136の弁座と接触する接触面133bとされ、ボトム側とは反対側に有底穴133cが形成されている。弁体133の有底穴133cには、円筒コイルばね134が挿入されている。ソケット132の貫通孔132aには、その後端面側から円筒コイルばね134を押すようにプラグ135が螺着され、弁体133をチューブ34のボトム側端面側に向けて押圧する付勢力を加えている。
【0039】
そして、小径孔131cに摺嵌されている上記位置検出軸体137は、軸方向の前後に、丸棒状の検出軸137aと突起部137bとをそれぞれ有する。位置検出軸体137の前側に延びる検出軸137aは、第一小径部131aからチューブ内部に張り出してロッド基端部のピストン33に押される位置に突出可能に設けられている。さらに、位置検出軸体137の後側に延びる突起部137bは、弁体133の前端面に接触している。
【0040】
このように構成された第一の切換弁室38は、前方シリンダ30のロッド33が最大縮小時以外の位置においては、位置検出軸体137がロッド32に押されていない非押し位置Pfとなる。この非押し位置Pfのときは、円筒コイルばね134が弁体133を弁座体136の弁座に向けて押圧している。このとき、弁体133は、同図に符号Psで示す閉じ位置にある。そのため、非押し位置Pfのときは、弁体133を弁座体136に押圧して流路を閉じて逆止弁としてはたらき、第一のポートB1から第二のポートB2への圧油は通過(但し、所定圧以上の場合)させるものの、第二のポートB2から第一のポートB1への圧油の流れを阻止するようになっている。
【0041】
一方、前方シリンダ30のロッド33が最大縮小時の位置においては、ロッド基端部のピストン33の後端面に位置検出軸体137の検出軸137aが押されている押し位置Ppとなる。この押し位置Ppのときは、位置検出軸体137が後方にスライド移動する。これにより、後側の棒状の突起部137bが弁体133を後方に移動させる。このとき、弁体133は、同図に符号Pkに示す開き位置に移動する。そのため、弁体133と弁座体136との間の流路が開いた状態に移行し、第一のポートB1および第二のポートB2のいずれの方向へも圧油の流れを許容するようになっている。
【0042】
また、第二の切換弁室48は、
図5に示すように、後方シリンダ40のチューブ44のボトム側に端面に付設された本体ブロック141を有する。本体ブロック141は、鋼製のブロック状の部材である。本体ブロック141の内部には、後方シリンダ40のロッド42の軸線と同軸に弁室148が構成されている。弁室148の前側(同図右側)は、チューブ44のボトム側端面のチューブボトムのキャップ側に形成されたインロー部141aにインロー嵌合されるとともに、不図示のボルトによってチューブボトムのキャップに対して着脱可能に固定されている。
【0043】
本体ブロック141の弁室148は、後方シリンダ40のロッド42の軸線と同軸に、インロー部141a側から軸方向に沿って段部を有する有底穴により構成されている。弁室148は、インロー部141a側から順に、大径部148aと小径部148bとを有する。大径部148aと小径部148bに対し、軸方向とは直交方向から二つのポートA1、A3がそれぞれ連通している。
【0044】
第一のポートA1は、小径部148bに連通するように形成されている。また、第二のポートA3は、第一のポートA1とは周方向に離隔した箇所から、大径部148aに連通するように形成されている。なお、この例では、第一のポートA1は、後方シリンダ40のチューブ側ポートA2と本体ブロック141の内部に軸方向に沿って形成した分岐路A1をチューブ側ポートA2に接続することにより、実質的に第一のポートA1を形成しつつ第一のポートA1への接続プラグや配管を不要としている。
【0045】
そして、大径部148aに円筒状の弁体143がスライド移動可能に嵌め込まれている。第二の切換弁室48は、大径部148aと小径部148bの境の円環状の面部が弁座136になっている。弁体143は、後側を向く端部が円錐台状をなして弁座136との接触面になっている。また、弁体143には、段付きの貫通孔143aが形成されている。弁体143の貫通孔143aの段部には、インロー部141aの端面との間に介装される円筒コイルばね144が挿入され、この円筒コイルばね144により、弁体143をチューブ側から本体ブロック141の弁座136に向けて押圧する付勢力を加えている。
【0046】
そして、この後方シリンダ40は、ロッド42に中空円筒状のパイプ材を用いるとともに、ピストン43の中心部に、ロッド42の軸線と同軸に貫通孔が形成され、小径部148bからチューブ44の内部まで貫通して位置検出軸147が摺嵌されている。
位置検出軸147は、中空円筒状をなす長尺なパイプ材であり、位置検出軸147の両端部の外周面には、二つの円筒部材145、146がそれぞれ嵌め込まれている。位置検出軸147の基端部の円筒部材145は、上記小径部148b内に位置しており、軸方向で弁体143よりも後側の位置に設けられて、弁体143と軸方向で対向して接触している。位置検出軸147の先端部の円筒部材146は、チューブ44のロッド42内に位置しており、ロッド42の基端部に設けられたピストン43の内周側の前側端面と軸方向で対向するように装着されて、この先端部の円筒部材146が、ロッド42の最大伸長位置を検出するための係合部となっている。
【0047】
ここで、位置検出軸147は、ロッド42の内径よりも細径かつ長尺な部材である。そのため、チューブ44のロッド42内の必要な位置に位置させる上で、ロッド42との摺接状態や、曲り、錆の発生による摺接部の損傷等が構造的な問題となる。
このような問題に対し、本実施形態の後方シリンダ40では、位置検出軸147を中空円筒状とし、チューブ側ポートA2(第一のポートA1)の圧油を、小径部148bから中空円筒状の位置検出軸147の端部開口に導いて、位置検出軸147の内部および位置検出軸147の外周とロッド42内周との間の空間全体に圧油が満たされるように構成されている。なお、
図5に示す矢印は、位置検出軸147の内部および位置検出軸147の外周とロッド42内周との間の空間全体に圧油が満たされているイメージを示している。
これにより、この後方シリンダ40によれば、位置検出軸147とロッド42との摺接部が常に潤滑される。そのため、錆の発生が防止され、さらに、位置検出軸147がロッド42の内部に満たされた圧油によって全周で支持された状態となる。そのため、細径かつ長尺な部材であっても、位置検出軸147とロッド42との同軸度を保持可能になっている。
【0048】
上記構成において、この第二の切換弁室48は、後方シリンダ40のロッド42が最大伸長時以外の位置では、円筒コイルばね144が弁体143を弁座136に向けて押圧している。そのため、第一のポートA1から第二のポートA3への圧油の流路は閉じた状態となる。ロッド42が伸長されていくと、上記係合部(先端部の円筒部材146)は、ロッド42が最大伸長時よりも僅かに手前の位置にてピストン43の前側端面と当接を開始し、その当接位置からロッド42が伸長方向に所定量だけ移動するように設定されている。
【0049】
これにより、係合部がピストン43の前側端面によってロッド42の伸長方向に引かれる。そのため、位置検出軸147全体がロッド42の伸長方向に所定量だけ移動する。よって、位置検出軸147の基端部の円筒部材145が、円筒コイルばね144の付勢力に抗して弁体143をロッド42の伸長方向にスライド移動させる。これにより、弁体143が弁座136に対し軸方向に所定量だけ駆動され、第一のポートA1から第二のポートA3への圧油の流路を開くようになっている。
【0050】
このように、本実施形態の第二の切換弁室48は、ロッド42の移動による引き力によって弁体143が引かれている引き位置のときは、第一のポートA1および第二のポートA3のいずれの方向へも圧油の流れを許容する。一方、弁体143がロッド42の移動による引き力によって引かれていない非引き位置のときは、逆止弁としてはたらき、第二のポートA3から第一のポートA1への圧油の流れは通過(但し、所定圧以上の場合)させるものの、第一のポートA1から第二のポートA3への圧油の流れを阻止するようになっている。
【0051】
次に、上記荷台昇降装置10の油圧シリンダ30、40による荷台3および移動フレーム20の移動動作について説明する。
この車両運搬車1が走行状態のときには、上記油圧シリンダ30、40は、いずれも最縮小状態にあり、
図1に示すように、荷台3は、シャシフレーム2上に格納された格納位置Kにある。荷台3が格納位置Kのときは、バンパ装置60の本体フレーム86は、
図1に示したように、荷台3に対して下方に直角に張り出した起立姿勢となる。
この車両運搬車1は、荷台昇降装置10を駆動することによって、
図1に示す格納位置Kから、
図6(e)に示す乗込位置Nのように、荷台3を自車両の後方に降ろすことができる。このとき、バンパ装置60は、荷台3のスライド移動に連動する複数の起伏切換機構により、荷台3が自車両の後方に降ろされる際には、支持脚として用いることができる。
【0052】
荷台3の後退または前進動作時は、荷台昇降装置10の各油圧シリンダ30、40は順次に伸縮作動する。本実施形態では、シャシフレーム2上から荷台3を自車両後方に降ろす後退動作のときは、各油圧シリンダ30、40のチューブ側に圧油が順次に供給され、まず、後方シリンダ40のロッド42が伸び、次いで、前方シリンダ30のロッド32が伸びる。各ロッド32,42が順次に伸長する。また、シャシフレーム2上に荷台3を格納する前進動作のときは、各油圧シリンダ30、40のロッド側に圧油が順次に供給され、まず、前方シリンダ30のロッド32が縮小し、次いで、後方シリンダ40のロッド42が縮小する。
【0053】
詳しくは、この車両運搬車1は、荷台3を自車両の後方に降ろして、貨物として、例えば他の車両を積車する際には、
図6(a)に示すように、まず、荷台昇降装置10の後方シリンダ40が駆動されてロッド42を伸長させる。これにより、移動フレーム20に沿って荷台3が案内されて自車両後方にスライド移動を開始する。バンパ装置60は、荷台3のスライド移動に起伏切換機構が連動して支持脚ローラ63が下方に張り出し、荷台3の後端部の荷台接地ローラ50が接地状態となる前に支持脚ローラ63が接地する。そのため、荷台3が自車両の後方に片持ち支持されるときには、バンパ装置60の支持脚ローラ63により荷台3を支持することができる。
【0054】
次いで、荷台昇降装置10は、後方シリンダ40が全伸長後、上記順次作動により、前方シリンダ30の伸長を開始する。これにより、
図6(b)に示すように、前方シリンダ30が移動フレーム20を後方に押すので、移動フレーム20がガイドレール11に沿ってスライド移動を開始する。これにより、移動フレーム20全体としては、ガイドレール11の曲げ形状により前方が持ち上げられて傾斜移動し、これに伴い、移動フレーム20上の荷台3も後傾しつつ後退する。このとき、バンパ装置60は、荷台3が片持ち状態とならないように、支持脚ローラ63が接地した姿勢を維持している。そのため、荷台3のスライド移動を安定した状態で継続することができる。所定のスライド移動後、荷台3の後端部の荷台接地ローラ50が接地状態となる。
【0055】
さらに、前方シリンダ30の伸長作動が継続され、これにより、荷台3が後方に移動するにつれて移動フレーム20がガイドレール11の水平部に移行して支持される。そのため、
図6(c)に示すように、移動フレーム20全体としては、傾斜初期姿勢のまま自車両後方に水平にスライド移動されていく。これとともに荷台3も更に後方に移動し、荷台接地ローラ50が地上GLに接地したことで荷台3の姿勢が安定した状態でスライド移動が継続される。このとき、荷台3の前方部分は、上記荷台前側ローラ52が移動フレームレール24の後側(
図2参照)によって支持され、荷台3は両持ち状態で保持される。よって、バンパ装置60の支持脚ローラ63での支持は、このタイミングに合わせて反時計方向に回動する起伏切換機構の連動作動により、折り畳み動作が開始される。
【0056】
次いで、荷台昇降装置10は、
図6(d)に示すように、前方シリンダ30を更に伸長させていく。これにより、ガイドレール11に沿って移動フレーム20が案内されつつ、荷台3が荷台接地ローラ50を地上GLに接地させながら後方に更にスライド移動していく。バンパ装置60は、起伏切換機構の連動作動により、バンパ本体100とともに地面から離隔する方向に畳み込まれていく。
【0057】
そして、
図6(e)に示すように、前方シリンダ30が全伸長され移動フレーム20を更に後方に押すことにより、移動フレーム20がガイドレール11に沿って車両後方にスライド移動する。このとき、移動フレーム20の前側はガイドレール11の水平部で支持され、後側は後方の傾斜部にて支持される。そのため、移動フレーム20の後側については後方に移動するにつれて次第に後傾する。
【0058】
これにより、移動フレーム20全体としては、後方が下方に向けて更に後傾され、これに伴い、移動フレーム20上の荷台3は地上GL方向に降ろされ、前方シリンダ30が全伸長時には、地上GLに対して略水平な乗込位置Nに位置する。このとき、バンパ装置60は、起伏切換機構の連動作動による折り畳み動作が最大倒伏状態にまで移行し、全体が完全に折り畳まれて荷台3の裏面と略並行な倒伏姿勢となる。なお、荷台3を乗込位置Nから格納位置Kに移動する荷台3の前進動作は、上述とは逆の動作によって行われるので説明を省略する。
【0059】
次に、上記荷台3および移動フレーム20の移動動作時における、荷台昇降装置10の二つの油圧シリンダ30、40を順次制御する油圧回路の動作およびその作用効果について説明する。
上記二つの油圧シリンダ30、40の順次制御は、格納位置Kにある荷台3の後退動作においては、
図3に示した、制御弁80の左側のソレノイドを励磁することにより、右側に図示するX状態に圧油の流れる方向を切換える。これにより、サービスポートBから圧油が供給される。このとき、第一の切換弁室38は、弁体133が、
図4に示したように、開き位置Pkあるため圧油の流れを許容する。一方、第二の切換弁室48は、弁体143が、
図5に示したように、非引き位置にあるため、第一のポートA1から第二のポートA3への圧油の流れを阻止している。
【0060】
そのため、
図7に示すように、後方シリンダ40のチューブ側にサービスポートBからの圧油が供給されるとともに、ロッド側の戻り油は、第一の切換弁室38からカウンタバランス弁84を通って、制御弁80のTポートからタンク90に排出されつつ、後方シリンダ40のロッドが伸長する。このとき、前方シリンダ30は、第二の切換弁室48が閉じた状態となっているので、サービスポートBからの圧油は第二の切換弁室48で遮断され、前方シリンダ30には圧油が供給されないため縮小状態が維持される。なお、
図7において、太い実線で示す油路は、駆動圧油が供給されているイメージを示し、ハッチング状の線で示す油路は、戻り油のイメージを示している(以下、他の油圧回路の動作を説明する図において同じ。)。
【0061】
更に、サービスポートBからの圧油供給が継続され、後方シリンダ40のロッドが伸長し全伸長する。これにより、
図8に示すように、後方シリンダ40の全伸長の位置において、ロッド基端部のピストン43の前端面が、第二の切換弁室48の位置検出軸147先端の円筒部材146を引き上げる。これにより、第二の切換弁室48は、第一のポートA1から第二のポートA3への圧油の流路を開くように弁体143が移動する(
図5も併せて参照)。そのため、前方シリンダ30のチューブ側にサービスポートBからの圧油が供給されるとともに、前方シリンダ30のロッド側の戻り油は、カウンタバランス弁84を通り、制御弁80のTポートからタンク90に排出されつつ、前方シリンダ30のロッド32が伸長を開始する。前方シリンダ30のロッド32が伸長を開始すると、ピストン33の後面による位置検出軸体137への押し圧力が解除される。そのため、弁体133が閉じ位置Psに移動し、第一の切換弁室38は閉じた状態となる(
図4も併せて参照)。以降、
図9に示すように、前方シリンダ30のロッドが伸長を継続して前方シリンダ30は全伸長する。
【0062】
ここで、上述した各ロッド42,32の順次伸長時において、各油圧シリンダ40、30のロッド側の戻り油は、カウンタバランス弁84を通り、制御弁80のTポートからタンク90に排出される。このとき、カウンタバランス弁84は、各油圧シリンダ30、40の不測の伸びを防止する。
【0063】
一方、荷台3の前進動作においては、
図9の状態から、制御弁80の右側のソレノイドを励磁することにより、左側に図示する平行状態に圧油の流れる方向を切換える。これにより、
図10に示すように、前方シリンダ30のロッド側にサービスポートAからの圧油が供給されるとともに、前方シリンダ30のチューブ側の戻り油は、開き位置にある第二の切換弁室48を通り、制御弁80のTポートからタンク90に排出されて前方シリンダ30のロッド32が縮小する。
【0064】
一方、後方シリンダ40は、第一の切換弁室38が閉じた状態となっているので、サービスポートAからの圧油が第一の切換弁室38で遮断され、後方シリンダ40には圧油が供給されないため伸長状態が維持される。このとき、前方シリンダ30のチューブ側背圧で第一の切換弁室38を開こうとする圧力(位置検出軸体137を押す力)に比べてサービスポートAから供給される圧油の圧力は常に高い。そのため、第一の切換弁室38が前方シリンダ30のチューブ側の背圧で開くことはない。
【0065】
更に、サービスポートAからの圧油供給が継続され、前方シリンダ30のロッドが縮小し、ついには全縮小する。これにより、
図11に示すように、前方シリンダ30の全縮小の位置において、ロッド基端部のピストン33の後端面が、第一の切換弁室38の位置検出軸体137を押し込む。そのため、第一の切換弁室38は、弁体133が押し位置Ppに移動していずれの方向へも圧油の流れを許容する。そのため、後方シリンダ40のロッド側にサービスポートAからの圧油の供給が開始されるとともに、後方シリンダ40のチューブ側の戻り油は、制御弁80のTポートからタンク90に排出されて後方シリンダ40のロッドが縮小を開始する。以降、後方シリンダ40のロッドが縮小を継続して全縮小する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の車両運搬車1が装備する荷台昇降装置10によれば、順次に作動させる二つの油圧シリンダ30、40に対し、各油圧シリンダのチューブのボトム側端面に切換弁室38、48を付設し、各切換弁室38、48内の弁体を、各油圧シリンダ30、40のロッドの移動による押し力または引き力によって駆動することにより、自身が付設された油圧シリンダまたは他の油圧シリンダへ供給する駆動圧油の給排状態を切換えるので、荷台3や移動フレーム20などの駆動対象物の軸支部のガタの影響や駆動対象物自体の歪みの影響を受けるおそれがない。また、切換弁室38、48にゴミなどの異物が入るおそれもなく、さらに、各切換弁室38、48は、外部に露出されている可動部を有しないため、積雪や凍結などによって切換弁室38、48内部の可動構造部分が固着してしまうこともない。よって、メンテナンス性を向上させるとともに、高精度で安定した動作を実現することができる。
【0067】
そして、この荷台昇降装置10は、二つの油圧シリンダ30、40のうち、前方シリンダ30のチューブ34のボトム側端面に付設された第一の切換弁室38は、前方シリンダ30のロッド32の移動による押し力によって自身の弁体138が押されている押し位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体138がロッド32の移動による押し力によって押されていない非押し位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっており、後方シリンダ40のチューブ44のボトム側端面に付設された第二の切換弁室48は、後方シリンダ40のロッド42の移動による引き力によって自身の弁体143が引かれている引き位置のときは、自身の二つのポートのいずれの方向へも圧油の流れを許容する一方、自身の弁体143がロッド42の移動による引き力によって引かれていない非引き位置のときは、逆止弁としてはたらくようになっているので、上記荷台3および移動フレーム20の移動動作時における、荷台昇降装置10の二つの油圧シリンダ30、40を所期のタイミングで順次制御する上で好適である。
なお、本発明に係る荷台昇降装置用油圧シリンダおよびこれを備える荷台昇降装置ならびに貨物自動車は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、二つの油圧シリンダを順次に作動させる例で説明したが、これに限らず、本発明に係る荷台昇降装置用油圧シリンダは、3以上の複数の油圧シリンダを順次に作動させる場合に適用できる。
また、複数の油圧シリンダを順次に作動させる場合に、全ての油圧シリンダに本発明に係る荷台昇降装置用油圧シリンダを採用することに限定されず、例えばいずれか一の油圧シリンダに対してのみ本発明に係る荷台昇降装置用油圧シリンダを採用することもできる。
【0069】
また、例えば上記実施形態では、本発明に係る複動形の油圧シリンダとして、各チューブの途中部分が回転可能に支持されたセンタトラニオン構造をもつ前方シリンダ30および後方シリンダ40を備える例で説明したが、これに限らず、センタトラニオン構造以外の支持構造(例えば、フート形、クレビス形、他の支持位置でのトラニオン形等)とすることもできる。しかし、荷台昇降装置用油圧シリンダとして採用する場合に、二つの油圧シリンダを順次に作動させて荷台をシャシフレーム上に格納した位置から自車両の後方に降ろした位置まで移動させる上では、センタトラニオン構造の複動形の油圧シリンダに適用することが好ましい。
【0070】
また、例えば上記実施形態では、二つの油圧シリンダ30、40の切換弁室38、48は、第一の切換弁室38が、押し力によって弁体138が押されている押し位置のときに流路を開き、押されていない非押し位置のときは逆止弁としてはたらき、第二の切換弁室48が、引き力によって弁体143が引かれている引き位置のときに流路を開き、引かれていない非引き位置のときは逆止弁としてはたらく例で説明したが、これに限らず、上記荷台3および移動フレーム20の移動動作時における、荷台昇降装置10の二つの油圧シリンダ30、40を所期のタイミングで順次制御可能であれば、種々の組み合わせや油圧回路の接続を採用することができる。
【0071】
例えば、
図12に油圧回路の変形例を示す。
同図に示すように、この変形例では、前方シリンダ30のロッド側ポートB4および後方シリンダ40のロッド側ポートA4が、制御弁80のサービスポートAに接続されている。そして、前方シリンダ30のチューブ側ポートB3は、第二の切換弁室48の第二のポートA3に接続され、第二の切換弁室48を介し、第二の切換弁室48の第一のポートA1が、制御弁80のサービスポートBに接続されている。また、後方シリンダ40のチューブ側ポートA2は、第一の切換弁室38の第二のポートB2に接続され、第一の切換弁室38を介し、第一の切換弁室38の第一のポートB1が、制御弁80のサービスポートBに接続されている。
【0072】
このような油圧回路の接続を採用した場合であっても、上記荷台3および移動フレーム20の移動動作時における、荷台昇降装置10の二つの油圧シリンダ30、40を所期のタイミングで順次制御させることができる。但し、この変形例の回路構成であると、チューブ側の背圧が高い場合には、背圧の影響で切換弁室内の弁体が移動する可能性があるため、チューブ側背圧の影響を受けない回路とする上では、上記実施形態に示した油圧回路を採用することが好ましい。