(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473329
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】簡易建築物の屋根板材の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20190207BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
E04D3/36 N
E04H6/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-261926(P2014-261926)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121485(P2016-121485A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 樹
(72)【発明者】
【氏名】三木 大介
【審査官】
兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04486998(US,A)
【文献】
特開2003−105862(JP,A)
【文献】
実開昭57−140526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00−3/40
E04B 1/343
E04H 6/02
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の上部に少なくとも2個の長尺状の屋根受け材が取付けられ、該屋根受け材間に複数の屋根板材が差し渡され、該屋根板材が複数の取付部材を介して前記屋根受け材に取付けられている簡易建築物の屋根板材の取付方法であって、前記屋根板材の前記屋根受け材の長手方向の両端部には折り曲げ溝が設けられてなり、
前記屋根受け材は、その上面に所定の間隔をあけて取付孔が複数設けられ、
前記取付部材は、取付部本体と、該取付部本体の底面から下方に突設され前記取付孔に挿入可能な挿入部と、前記取付部本体の底面端部から下方に向けて突設されると共に屋根受け材の長手方向に長さ寸法を有する板状となされて、屋根受け材の上面の端縁に係止する係止部とを備え、
前記取付部材の挿入部を前記屋根受け材の取付孔に挿入して、複数の前記取付部材を前記屋根受け材の上に取付けた後、前記屋根板材の両端部に設けられた前記折り曲げ溝をそれぞれ前記取付部材に嵌合させて取付けることを特徴とする簡易建築物の屋根板材の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の駐輪場、カーポート等、支柱の上部に屋根受け材が取付けられ、屋根受け材の上に屋根板材が取付けられてなる簡易建築物の屋根板材の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易建築物の屋根板材の取付方法としては、例えば特許文献1には、山部を有する屋根材を前記下地材の上に載置し、前記屋根材を取り付けるための前記固定具が貫通又は挿通される山部と前記下地材との間に形成される空間に長尺の支持部材を配設し、前記固定具が前記屋根材と前記支持部材を順次貫通又は挿通し、前記支持部材は前記屋根材及び前記下地材とそれぞれ略当接するように固定して取り付け、一つの屋根材の左端に形成された山部の上に他の屋根材の右端に形成された山部を一山だけ重ね合わせて、連結されるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−117231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の簡易建築物の屋根板材の取付方法では、屋根材、支持部材、下地材に下穴を開けずにねじ込んで貫通させていくだけで施工が可能なドリルビスが固定具として好適に用いられ、各部材に下穴をあける必要がなく、また屋根材を任意の場所で下地材に取付けることができることから、効率的に施工できる利点はある一方、屋根材を製造する際の誤差等により、屋根材によってその両端に配置された山部間の間隔が本来あるべき所定の間隔と異なっている、例えば本来あるべき所定の間隔より若干短い場合には、特に複数枚の屋根材を連続して設置すると、所定の間隔より短い分、屋根材が片側に寄ってしまい、仕上がりが悪いものとなる懸念があるものであった。
【0005】
そこで本発明は前記問題に鑑み、屋根板材によってその両端に配置された山部間の間隔が本来あるべき所定の間隔と異なっていても、その差を吸収して屋根板材を仕上がりよく取付けることができる簡易建築物の屋根板材の取付方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法は、支柱の上部に少なくとも2個の長尺状の屋根受け材が取付けられ、該屋根受け材間に複数の屋根板材が差し渡され、該屋根板材が複数の取付部材を介して前記屋根受け材に取付けられている簡易建築物の屋根板材の取付方法であって、前記屋根板材の前記屋根受け材の長手方向の両端部には折り曲げ溝が設けられてなり、
前記屋根受け材は、その上面に所定の間隔をあけて取付孔が複数設けられ、前記取付部材は、取付部本体と、該取付部本体の底面から下方に突設され前記取付孔に挿入可能な挿入部と、前記取付部本体の底面端部から下方に向けて突設され屋根受け材に係止する係止部とを備え、前記取付部材の挿入部を前記屋根受け材の取付孔に挿入して、複数の前記取付部材を前記屋根受け材の上に取付けた後、前記屋根板材の両端部に設けられた前記折り曲げ溝をそれぞれ前記取付部材に嵌合させて取付けることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法は、
前記取付部材の係止部は、前記取付部本体の底面端部から下方に向けて突設され、屋根受け材の長手方向に長さ寸法を有する板状となされて、屋根受け材の上面の端縁に係止されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法によれば、前記屋根板材の前記屋根受け材の長手方向の両端部には折り曲げ溝が設けられてなり、複数の前記取付部材を前記屋根受け材の上に取付けた後、前記屋根板材の両端部に設けられた前記折り曲げ溝をそれぞれ前記取付部材に嵌合させて取付けるようになされているので、両端部に設けられた折り曲げ溝間の間隔が屋根板材によって若干異なっている場合であっても、屋根板材を取付ける前に先に取付けている取付部材によって、前記屋根板材の両端部に設けられた折り曲げ溝間の間隔を所定の間隔に保持することができるとともに、前記屋根板材の取付け位置を位置決めすることができ、したがって屋根板材が片側に寄ってしまうのを防ぐことができ、前記折り曲げ溝間の間隔の差を吸収して、屋根板材を仕上がりよく取付けることができる。
【0009】
また本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法によれば、前記屋根板材の一方の折り曲げ溝に別の屋根板材の両端部に設けられたうちの一方の折り曲げ溝を重ね合わせ、別の屋根板材の他方の折り曲げ溝を前記取付部材の隣の取付部材に嵌合させて前記別の屋根板材を取付け、複数の屋根板材を前記屋根受け材の上に順次取付けるようになされているので、前記別の屋根板材を取付けるのに用いる前記取付部材の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法により形成された簡易建築物の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法において、複数の取付部材を屋根受け材上に取付ける状態を説明する一部省略の斜視図である。
【
図3】
図2の円で囲っているA部とB部の拡大図である。
【
図4】本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法において、第一の屋根板材を取付ける状態を示す説明する一部省略の斜視図である。
【
図5】本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法において、第二の屋根板材を取付ける状態を示す説明する一部省略の斜視図である。
【
図6】本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法に用いられる取付部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。
図面において、1は本発明に係る簡易建築物の屋根板材の取付方法により形成された簡易建築物であり、4本の支柱2が平面視で横長長方形の四隅の位置に間隔をあけて立設され、前後2本の前記支柱2の上端に梁材3が架設され、該梁材3の前端部と中央部と後端部とにそれぞれ長尺状の屋根受け材4a、4b、4cが3本左右方向に架設されている。そして、前記屋根受け材4aと4bとの間、及び前記屋根受け材4bと4cの間に屋根板材5がそれぞれ差し渡されて、複数枚の屋根板材5が取付けられている。
【0012】
前記屋根板材5の前記屋根受け材4a、4b、4cの長手方向の両端部には、正面視において頂部が湾曲した砲弾形に曲げられた折り曲げ溝51a、51bが前後方向に設けられ、さらにそれらの間に2個の折り曲げ溝51c、51dが等間隔離れた位置に形成され、合計4個の折り曲げ溝51a、51b、51c、51dが設けられている。そして、4個の前記折り曲げ溝51a、51b、51c、51dの間にはそれぞれ平坦部52が3個設けられている。また、前記屋根板材5は前記折り曲げ溝51が形成されている前後方向にやや湾曲されて形成されている。なお、前記屋根板材5の両端部に設けられている前記折り曲げ溝51a、51bは、それらの間に設けられている前記折り曲げ溝51c、51dより大きい形状に形成されている。
【0013】
そして、前記屋根受け材4a、4b、4cの上面41には所定の間隔をあけて、後述する取付部材6を取付けるための取付孔42が複数設けられている。
【0014】
前記取付部材6は、前記屋根板材5の折り曲げ溝51a、51bの断面形状に適応する形状、すなわち本実施形態においては、正面視において頂部が湾曲した砲弾形となされ、側面視においては横長長方形状となされた取付部材本体61が、前記折り曲げ溝51a、51bに嵌合するようになされている。そして、前記屋根受け材4a、4b、4cに設けられた取付孔42の孔形状に対応して、前記取付孔42に挿入可能な挿入部62が、前記取付部材本体61の底面の中央部から下方に突設されている。また、前記取付部本体61の底面端部から下方に向けて、板状の係止部63が突設されている。
【0015】
前記係止部63は、前記挿入部62を前記取付孔42に挿入し前記取付部材6を前記屋根受け材4a、4b、4cの上面41に取付け、前記屋根板材5を前記取付部材6に嵌合させ取付ける作業を行う際、前記屋根受け材4a、4b、4cの上面41の端縁41aに前記係止部63が係止されることで、前記取付部材6がずれ動かないように設けられている。
【0016】
次に
図2〜5を用いて、前記簡易建築物1の屋根板材5の取付方法について説明する。
まず、2本の前記支柱2間の上端にそれぞれ架設された2本の前記梁材3間に架設された前記屋根受け材4a、4bの上面41に設けられている前記取付孔42に、前記取付部材6の挿入部62を挿入して、所定の個数の前記取付部材6を前記屋根受け材4a、4b上に取付ける。
【0017】
次に、前記簡易建築物1を構成する前記屋根板材5のうち、最端部に位置する屋根板材5aの両端に設けられた前記折り曲げ溝51a、51bをそれぞれ前記取付部材6a、6bに嵌合させて、前記屋根板材5aを前記屋根受け材4a、4bの上面41に載置し、ドリルネジなどの固定具(図示せず)を、前記平坦部52と前記屋根受け材4a、4bとに貫通させて螺着し、前記屋根受け材4a、4bに前記屋根板材5aを取付ける。
【0018】
次に、前記屋根板材5aの一方の折り曲げ溝である左側の折り曲げ溝51bに別の屋根板材5bの両端に設けられたうちの一方の折り曲げ溝である右側の折り曲げ溝51aを重ね合わせ、別の屋根板材の5b他方の折り曲げ溝である右側の折り曲げ溝51bを前記取付部材6bの左隣の取付部材6cに嵌合させて、前記別の屋根板材5bを前記屋根受け材4a、4bの上面41に載置し、タッピングネジなどの固定具(図示せず)を、前記平坦部52と前記屋根受け材4a、4bとに貫通させて螺着し、前記屋根受け材4a、4bに前記第二の屋根板材5bを取付ける。この様にして、所定の枚数の前記屋根板材5を前記屋根受け材4a、4bの上に順次取付けていき、前記簡易建築物1を形成する。なお、前記屋根受け材4b、4cに前記屋根板材5を取付ける際も、前記屋根受け材4a、4bに取付けるのと同様に行われるのは言うまでもない。
【0019】
上述のようにすることによって、両端部に設けられた折り曲げ溝51a、51b間の間隔が屋根板材5によって若干異なっている場合であっても、前記屋根板材5の両端部に設けられた折り曲げ溝51a、51b間の間隔を所定の間隔に保持することができるとともに、前記屋根板材5の取付け位置を位置決めすることができ、したがって屋根板材5が片側に寄ってしまうのを防ぐことができ、前記折り曲げ溝51a、51b間の間隔の差を吸収して、屋根板材5を仕上がりよく取付けることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 簡易建築物
2 支柱
3 梁材
4a、4b、4c 屋根受け材
41 上面
42 取付孔
5 屋根板材
5a 屋根板材
5b 別の屋根板材
51a、51b、51c、51d 折り曲げ溝
52 平坦部
6、6a、6b、6c 取付部材
61 取付部材本体
62 挿入部
63 係止部