特許第6473334号(P6473334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6473334トナー、トナーカートリッジ、現像装置、画像形成装置およびトナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6473334
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】トナー、トナーカートリッジ、現像装置、画像形成装置およびトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20190207BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   G03G9/09
   G03G9/08 381
   G03G9/08 391
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-12208(P2015-12208)
(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-138921(P2016-138921A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平出 麻苗美
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−100468(JP,A)
【文献】 特開昭62−100771(JP,A)
【文献】 特開2014−115471(JP,A)
【文献】 特開2006−039442(JP,A)
【文献】 特開2012−163695(JP,A)
【文献】 特表2009−530673(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0237868(US,A1)
【文献】 特開2014−157188(JP,A)
【文献】 特開平09−049133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と、
前記有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素と
を含む、トナー。
【請求項2】
さらに、結着樹脂をむ、
請求項1記載のトナー。
【請求項3】
前記1以上の光輝性顔料の重量に対する前記赤橙色蛍光色素の重量の比は、前記1以上の光輝性顔料の重量を10として、1.5以上2.5以下であると共に、
前記1以上の光輝性顔料の重量に対する前記黄色蛍光色素の重量の比は、前記1または2以上の光輝性顔料の重量を10として、5以上7以下である、
請求項1または請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記1以上の光輝性顔料は、アルミニウム(Al)およびパール顔料のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記1以上の光輝性顔料の含有量は、15重量%以上20重量%以下である、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
トナーを収納する収納部を備え、
前記トナーは、
有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と、
前記有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素と
を含む、トナーカートリッジ。
【請求項7】
トナーを収納する収納部と、
前記収納部に収納された前記トナーを用いて現像処理する現像部と
を備え、
前記トナーは、
有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と、
前記有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素と
を含む、現像装置。
【請求項8】
トナーを収納する収納部と、
前記収納部に収納された前記トナーを用いて現像処理する現像部と、
前記現像部により現像処理に用いられた前記トナーを用いて転写処理する転写部と
を備え、
前記トナーは、
有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と、
前記有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素と
を含む、画像形成装置。
【請求項9】
溶解懸濁法を用いて、有機溶媒に不溶である1種以上の光輝性顔料と、前記有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素と、を含むトナーを製造する、
トナーの製造方法。
【請求項10】
前記1種以上の光輝性顔料と、前記色素と、結着樹脂と、有機溶媒とを含む油相を調製し、
無機分散剤と、水性媒体とを含む水相を調製し、
前記油槽と前記水相とを混合して造粒物を形成し、
前記造粒物を用いて前記トナーを製造する、
請求項9記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられるトナーおよびその製造方法、ならびにそのトナーを用いたトナーカートリッジ、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置が広く普及している。インクジェット方式などの他の方式の画像形成装置と比較して、高画質な画像が短時間で得られるからである。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置では、現像剤であるトナーを用いて、紙などの媒体の表面に画像が形成される。この画像の形成過程では、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーが付着するため、トナー像が形成されると共に、そのトナー像が媒体の表面に転写されるため、トナーを用いて画像が形成される。
【0004】
最近では、光輝性画像を形成するために、光輝性を有するトナーの開発が行われている。具体的には、金色の光輝性画像を形成する場合において、優れた耐光性を得るために、光輝性顔料とアゾ系黄色顔料とマゼンタ顔料との混合物が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−163695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光輝性を有するトナーの開発が行われているが、光輝性画像に関する要望に応えるためには、未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた光輝性画像を得ることが可能なトナー、トナーカートリッジ、現像装置画像形成装置およびトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトナーは、有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と、その有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む1または2以上の色素とを含むものである。
また、本発明のトナーの製造方法は、溶解懸濁法を用いて、有機溶媒に不溶である1種以上の光輝性顔料と有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素とを含むトナーを製造するようにしたものである。
【0009】
本発明のトナーカートリッジは、トナーを収納する収納部を備え、そのトナーが上記した本発明のトナーと同様の構成を有するものである。
【0010】
本発明の現像装置は、トナーを収納する収納部と、その収納部に収納されたトナーを用いて現像処理する現像部とを備え、そのトナーが上記した本発明のトナーと同様の構成を有するものである。
【0011】
本発明の画像形成装置は、トナーを収納する収納部と、その収納部に収納されたトナーを用いて現像処理する現像部と、その現像部により現像処理に用いられたトナーを用いて転写処理する転写部とを備え、そのトナーが上記した本発明のトナーと同様の構成を有するものである。
【0012】
ここで、「光輝性」とは、金属光沢などの輝きを生じさせる性質である。「光輝性顔料」とは、光輝性を有すると共に有機溶媒に不溶である性質(不溶性)を有する材料である。一方、「色素」とは、着色可能である性質(着色性)を有すると共に有機溶媒に可溶である性質(可溶性)を有する材料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のトナー、トナーカートリッジ、現像装置画像形成装置またはトナーの製造方法によれば、そのトナーが有機溶媒に不溶である以上の光輝性顔料と有機溶媒に可溶であると共に赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含む色素とを含んでいるので、優れた光輝性画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態のトナーを用いた画像形成装置の構成を表す図である。
図2図1に示した画像形成装置の一部(定着部)の構成を拡大して表す図である。
図3図1に示した現像装置の構成を拡大して表す図である。
図4図1に示した画像形成装置の一部の構成を拡大して表す図である。
図5図3に示した現像装置の一部(トナーカートリッジ)の構成を拡大して表す図である。
図6】金色の光輝性画像に関する色味の評価結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.トナー
1−1.構成
1−2.製造方法
1−3.作用および効果
2.画像形成装置
2−1.全体の構成
2−2.現像装置の構成
2−3.トナーカートリッジの構成
2−4.動作
2−5.作用および効果
【0016】
<1.トナー>
まず、本発明の一実施形態のトナーに関して説明する。
【0017】
ここで説明するトナーは、例えば、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。この電子写真方式の画像形成装置は、例えば、レーザプリンタであり、その画像形成装置に用いられるトナーは、いわゆる静電荷現像用トナーである。
【0018】
<1−1.構成>
[概要]
トナーは、画像形成用の媒体(以下、単に「媒体」という。)の表面に光輝性画像を形成するために用いられる。この光輝性画像の色は、例えば、金色、銀色および銅色などである。
【0019】
このトナーは、1または2以上の光輝性顔料と、着色用材料である1または2以上の色素とを含んでいる。優れた光輝性画像が得られるからである。
【0020】
詳細には、光輝性画像を形成する用途では、その光輝性を実現するために、トナーが光輝性顔料を含んでいる。この場合には、トナーが着色用材料として顔料を含んでいると、光輝性顔料が着色用材料(顔料)と凝集しやすくなる。光輝性顔料が凝集すると、光輝性画像では、光輝性が低下しやすくなると共に光輝性がばらつきやすくなるため、その光輝性画像の画質および色味などが低下する。
【0021】
これに対して、トナーが着色用材料として色素を含んでいると、光輝性顔料が着色用材料(色素)と凝集しにくくなる。よって、光輝性画像では、光輝性が低下しにくくなると共に光輝性がばらつきにくくなるため、その光輝性画像の画質および色味などが向上する。
【0022】
[光輝性顔料]
光輝性顔料は、上記したように、金属光沢などの輝きを生じさせる性質(光輝性)を有すると共に有機溶媒に不溶である性質(不溶性)を有する材料である。このため、光輝性顔料は、有機溶媒中において溶解されずに分散される。
【0023】
トナーに含まれている光輝性顔料は、上記したように、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0024】
光輝性顔料の種類は、光輝性および不溶性を有する材料のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。この光輝性顔料の具体例は、アルミニウム(Al)およびパール顔料などであり、そのパール顔料は、二酸化チタン(TiO2 )により薄片状の無機結晶基質が被覆された顔料である。
【0025】
ただし、光輝性顔料は、任意の微量成分を含んでいてもよい。言い替えれば、光輝性顔料がアルミニウムを含んでいる場合を例に挙げると、その光輝性顔料は、アルミニウムを主成分として含んでいればよい。すなわち、光輝性顔料中におけるアルミニウムの含有量(純度)は、必ずしも100%に限られず、100%未満でもよい。光輝性顔料がアルミニウムを主成分として含んでいれば、十分な光輝性が得られるからである。このように純度が100%に限られないことは、色素に関しても同様である。
【0026】
[色素]
色素は、上記したように、着色可能である性質(着色性)を有すると共に有機溶媒に可溶である性質(可溶性)を有する材料である。このため、色素は、光輝性顔料とは異なり、有機溶媒中において溶解される。
【0027】
光輝性画像を形成する色の種類は、主に、トナーに含まれる色素の組成に応じて決定される。この色素の組成とは、例えば、色素の数および色の組み合わせなどである。
【0028】
トナーに含まれている色素は、上記したように、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。この色素の色は、特に限定されないが、例えば、黄色(イエロー)、赤色(マゼンタ)、青色(シアン)、黒色(ブラック)および透明色(クリヤー)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。なお、色素の種類が2種類以上である場合、各色素の色は、同じでもよいし、異なってもよい。もちろん、2種類以上の色素のうち、一部の色素の色が同じでもよい。
【0029】
色素の種類は、着色性および可溶性を有する材料のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。黄色の色素の具体例は、C.I.ピグメントイエロー74およびカドミウムイエローなどである。赤色の色素の具体例は、C.I.ピグメントレッド238などである。青色の色素の具体例は、ピグメントブルー15:3などである。黒色の色素の具体例は、カーボンブラックなどであり、そのカーボンブラックは、例えば、ファーネスブラックおよびチャンネルブラックなどである。透明色の色素の具体例は、蛍光増白剤などである。
【0030】
[組成]
トナーが1または2以上の光輝性顔料と1または2以上の色素とを含んでいれば、そのトナーの組成は特に限定されない。ここで説明する組成とは、例えば、(1)光輝性顔料の種類および数、(2)色素の種類および数、(3)色素の色およびその色の組み合わせ、(4)光輝性顔料の含有量、(5)色素の含有量、(6)光輝性顔料と色素との混合比などである。
【0031】
ここで、一例を挙げると、金色の光輝性画像を形成するために用いられるトナーの組成は、以下の通りである。
【0032】
トナーは、例えば、1種類以上の光輝性顔料を含んでいると共に、2種類の色素(赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素)を含んでいる。光輝性顔料は、例えば、アルミニウムなどを含んでいる。赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素のそれぞれの種類は、特に限定されない。
【0033】
この場合において、光輝性顔料と赤橙色蛍光色素と黄色蛍光色素との混合比は、特に限定されない。上記したように、トナーが光輝性顔料と共に着色用材料として色素(赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素)を含んでいるため、光輝性画像の画質および色味などが向上するからである。
【0034】
中でも、光輝性顔料の重量に対する赤橙色蛍光色素の重量の比は、光輝性顔料の重量を10として、1.5〜2.5であることが好ましく、1.5〜2であることがより好ましい。光輝性顔料と赤橙色蛍光色素との混合比が適正化されるため、赤橙色の色味を確保しつつ、十分な光輝性が得られるからである。
【0035】
また、光輝性顔料の重量に対する黄色蛍光色素の重量の比は、光輝性顔料の重量を10として、5〜7であることが好ましく、5〜6であることがより好ましい。光輝性顔料と黄色蛍光色素との混合比が適正化されるため、黄色の色味を確保しつつ、十分な光輝性が得られるからである。
【0036】
光輝性顔料の重量に対する赤橙色蛍光色素の重量の比を特定するためには、例えば、トナー中に含まれている光輝性顔料の重量および赤橙色蛍光色素の重量を調べたのち、その光輝性顔料の重量に対する赤橙色蛍光色素の重量の比を算出すればよい。このトナー中における光輝性顔料の重量および赤橙色蛍光色素の重量を調べる方法は、例えば、以下の通りである。
【0037】
光輝性顔料の重量を調べる場合には、トルエンなどの有機溶媒を用いてトナーを溶解させる。これにより、トナーは、不溶成分である光輝性顔料と、可溶成分である混合物とに分離される。この混合物では、赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素が有機溶媒により溶解されている。不溶成分である光輝性顔料を秤量して、その光輝性顔料の重量を求める。
【0038】
赤橙色蛍光色素の重量を調べる場合には、トナーを秤量したのち、光輝性顔料の重量を調べた場合と同様の手順により有機溶媒を用いてトナーを溶解させる。これにより、赤橙色蛍光色素を含む混合物が得られる。この混合物の紫外可視吸収スペクトルを測定したのち、ランベルト・ベールの法則を用いて混合物中における赤橙色蛍光色素の濃度を求める。これにより、赤橙色蛍光色素の重量が求められる。
【0039】
なお、ここで紫外可視吸収スペクトルを測定するために用いた混合物は、赤橙色蛍光色素と一緒に黄色蛍光色素を含んでいる。しかしながら、赤橙色蛍光色素の吸収スペクトルの波長と黄色蛍光色素の吸収スペクトルの波長とは異なるため、赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素の双方が混合物中に含有されていても、赤橙色蛍光色素の吸収スペクトルと黄色蛍光色素の吸収スペクトルとを区別できる。よって、上記したように、混合物を用いても、赤橙色蛍光色素の濃度を求めると共に、その濃度に基づいて赤橙色蛍光色素の重量を求めることができる。
【0040】
光輝性顔料の重量に対する黄色蛍光色素の重量の比を調べるためには、例えば、赤橙色蛍光色素の重量に代えて黄色蛍光色素の重量を求めることを除き、光輝性顔料の重量に対する赤橙色蛍光色素の重量の比を調べる場合と同様の方法を用いればよい。
【0041】
トナー中における光輝性顔料の含有量は、特に限定されない。上記したように、トナーが光輝性顔料と共に着色用材料として色素(赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素)を含んでいるため、光輝性画像の画質および色味などが向上するからである。
【0042】
中でも、トナー中における光輝性顔料の含有量は、15重量%〜20重量%であることが好ましい。光輝性顔料の含有量が適正化されるため、その光輝性顔料同士の凝集などを抑制しつつ、十分な光輝性が得られるからである。
【0043】
トナー中における光輝性顔料の含有量を調べるためには、例えば、トナーを秤量したのち、上記した手順により光輝性顔料の重量を求める。これにより、トナーの重量および光輝性顔料の重量が特定されるため、トナー中における光輝性顔料の含有量が求められる。
【0044】
[他の材料]
なお、トナーは、1または2以上の光輝性顔料および1または2以上の色素に加えて、他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の材料の種類および含有量は、特に限定されない。
【0045】
後述する溶解懸濁法を用いて製造されたトナーは、例えば、油相と水相とを混合して形成された造粒物を含んでいる。油相の組成は、特に限定されないが、例えば、1または2以上の光輝性顔料と、1または2以上の色素と、結着樹脂と、有機溶媒とを含んでいる。ただし、油相は、さらに、離型剤および帯電制御剤などを含む場合もある。水相の組成は、特に限定されないが、例えば、無機分散剤と、水性媒体とを含んでいる。
【0046】
これに伴い、溶解懸濁法を用いて製造されたトナーは、例えば、他の材料として、結着樹脂などを含んでいる。ただし、トナーは、さらに、上記した離型剤および帯電制御剤などを含む場合もある。結着樹脂、離型剤および帯電制御剤のそれぞれの詳細に関しては、後述する。
【0047】
<1−2.製造方法>
このトナーの製造方法は、特に限定されない。すなわち、トナーは、例えば、粉砕法を用いて製造されてもよいし、溶解懸濁法を用いて製造されてもよいし、それら以外の方法を用いて製造されてもよい。もちろん、トナーは、上記した製造方法のうちの2種類以上を用いて製造されてもよい。
【0048】
中でも、トナーは、溶解懸濁法を用いて製造されていることが好ましい。粒径制御に優れているため、所望の粒径を有するトナーを容易かつ高精度に製造できるからである。
【0049】
溶解懸濁法を用いてトナーを製造する場合には、主に、油相および水相を調製したのち、その油相と水相とを混合して造粒物を得る。この溶解懸濁法を用いたトナーの製造手順に関する詳細は、例えば、以下の通りである。
【0050】
[油相の調製]
油相を調製する場合には、最初に、塩基性の官能基を有する高分子系分散剤を有機溶媒に溶解させて、分散剤溶液を得る。
【0051】
有機溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、エステル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコールおよびケトンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。エステルの具体例は、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどである。炭化水素の具体例は、トルエンおよびキシレンなどである。ハロゲン化炭化水素の具体例は、塩化メチレン、クロロホルムおよびジクロロエタンなどである。アルコールの具体例は、メタノールおよびエタノールなどである。ケトンの具体例は、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどである。ここで説明した有機溶媒に関する詳細は、以降に登場する有機溶媒に関しても同様である。
【0052】
高分子系分散剤の種類は、特に限定されない。
【0053】
続いて、分散剤溶液に光輝性顔料を分散させて、光輝性分散液を得る。この光輝性顔料の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
【0054】
続いて、光輝性分散液に色素および結着樹脂を溶解させて、光輝性色素含有液を得る。この色素の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。なお、光輝性分散液に色素などを加える場合には、その光輝性分散液を加熱および撹拌してもよい。
【0055】
結着樹脂は、いわゆるバインダであり、例えば、ポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0056】
中でも、結着樹脂は、ポリエステルであることが好ましい。光輝性画像(後述するトナー像)の表面が平滑化しやすいため、光輝性がより低下しにくくなると共に光輝性がよりばらつきにくくなるからである。このポリエステルは、例えば、1または2以上のアルコールと1または2以上のカルボン酸との反応物(縮重合体)である。
【0057】
アルコールの種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のアルコールおよびその誘導体であることが好ましい。2価以上のアルコールの具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド、ビスフェノールAプロピレンオキサイド、ソルビトールおよびグリセリンなどである。
【0058】
カルボン酸の種類は、特に限定されないが、中でも、2価以上のカルボン酸およびその誘導体であることが好ましい。2価以上のカルボン酸の具体例は、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンジカルボン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸およびドデセニル無水コハク酸などである。
【0059】
最後に、光輝性色素含有液に有機溶媒、離型剤および帯電制御剤を加えて、油相を得る。なお、光輝性色素含有液に有機溶媒を加える場合には、その有機溶媒をあらかじめ加熱しておいてもよい。
【0060】
離型剤は、トナーの定着性および耐オフセット性などを向上させるために用いられる。この離型剤は、例えば、石油ワックス、合成ワックスおよびその他のワックスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。石油ワックスの具体例は、パラフィンワックスおよび酸価パラフィンワックスなどである。合成ワックスの具体例は、ポリオレフィンワックスおよび酸価ポリオレフィンワックスなどである。その他のワックスの具体例は、エステルワックスおよびエーテルワックスなどであり、動植物に由来するワックスなどでもよい。
【0061】
帯電制御剤の種類は、特に限定されない。
【0062】
[水相の調製]
水相を調製する場合には、水性媒体に無機分散剤(懸濁安定剤)などを分散または溶解させる。
【0063】
水性媒体は、例えば、純水などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。この水性媒体は、例えば、純水と水溶性溶媒との混合物でもよい。
【0064】
無機分散剤は、例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウムおよびシリカなどの無機材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。このシリカは、例えば、二酸化ケイ素などである。
【0065】
[造粒]
水相に油相を混合したのち、その混合物を撹拌する。水相と油相との混合比は、特に限定されない。これにより、混合物が懸濁すると共に造粒されるため、前駆粒子を含むスラリーが得られる。
【0066】
続いて、スラリーを減圧蒸留して、有機溶媒を揮発除去する。続いて、スラリーにpH調整剤を加えたのち、そのスラリーを撹拌して、無機分散剤を溶解除去する。このpH調整剤は、例えば、硝酸などの酸のうちのいずれか1種類または2種類以上である。続いて、スラリーを脱水して前駆粒子を回収したのち、その前駆粒子を洗浄する。この場合には、例えば、純水に前駆粒子を再分散させたのち、その純水を撹拌する。続いて、前駆粒子を脱水乾燥させたのち、その前駆粒子を分級する。
【0067】
最後に、前駆粒子に疎水性粒子を混合したのち、その混合物を撹拌する。前駆粒子と疎水性粒子との混合比は、特に限定されない。これにより、前駆粒子の表面に疎水性粒子が定着するため、トナーが得られる。
【0068】
<1−3.作用および効果>
このトナーによれば、1または2以上の光輝性顔料と共に、着色用材料として1または2以上の色素を含んでいる。この場合には、上記したように、着色用材料として顔料を用いる場合と比較して、光輝性顔料が凝集しにくくなるため、光輝性が低下しにくくなると共に光輝性がばらつきにくくなる。よって、光輝性画像の画質および色味などが向上するため、優れた光輝性画像を得ることができる。この場合には、光輝性顔料と色素との混合比などを変更すれば、所望の色味となるように光輝性画像の色味を調整できる。
【0069】
特に、トナーが溶解懸濁法により製造されていれば、上記したように、所望の粒径を有するトナーが容易かつ高精度に製造されるため、より高い効果を得ることができる。
【0070】
また、色素が赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素を含んでいれば、優れた金色の光輝性画像を得ることができる。この場合には、光輝性顔料の重量に対する赤橙色蛍光色素の重量の比が光輝性顔料の重量を10とした場合において1.5〜2.5であると共に、光輝性顔料の重量に対する黄色蛍光色素の重量の比が光輝性顔料の重量を10とした場合において5〜7であれば、より高い効果を得ることができる。また、トナー中における光輝性顔料の含有量が15重量%〜20重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
【0071】
<2.画像形成装置>
次に、上記したトナーを用いた画像形成装置に関して説明する。なお、本発明のトナーカートリッジおよび現像装置は、ここで説明する画像形成装置の一部を構成しているため、その本発明のトナーカートリッジおよび現像装置に関しては、以下で併せて説明する。
【0072】
<2−1.全体の構成>
まず、画像形成装置の構成に関して説明する。
【0073】
図1は、画像形成装置1の構成を表している。図2は、図1に示した画像形成装置1の一部(定着部50)の構成を拡大している。
【0074】
ここで説明する画像形成装置1は、電子写真方式のフルカラープリンタであり、媒体Mの表面に光輝性画像を形成する。この媒体Mは、例えば、紙およびフィルムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上であり、その媒体Mの材質は、特に限定されない。なお、図1では、媒体Mが搬送されていない状態を示していると共に、図2では、媒体Mが搬送されている状態を示している。
【0075】
画像形成装置1は、例えば、筐体10の内部に、1または2以上のトレイ20と、転写部30と、1または2以上の現像装置40と、定着部50と、1または2以上の送り出しローラ60と、搬送ローラ71〜77と、搬送路切り替えガイド81,82とを備えている。この筐体10には、光輝性画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ部11が設けられている。なお、破線R1〜R5は、媒体Mの搬送路を示している。
【0076】
トレイ20は、媒体Mを収納しており、例えば、筐体10に対して着脱可能に装着されている。このトレイ20の内部には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されており、その複数の媒体Mは、送り出しローラ60によりトレイ20から1つずつ取り出される。
【0077】
ここでは、例えば、画像形成装置1は、2つのトレイ20(21,22)と、2つの送り出しローラ60(61,62)とを備えている。なお、トレイ21,22は、例えば、互いに重なるように配置されている。
【0078】
転写部30は、中間転写ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ(アイドルローラ)33と、バックアップローラ34と、1または2以上の1次転写ローラ35と、2次転写ローラ36と、クリーニングブレード37とを含んでいる。
【0079】
中間転写ベルト31は、媒体Mの表面にトナー像が転写される前に、そのトナー像が一時的に転写される中間転写媒体であり、例えば、ポリイミドなどの高分子材料を含む無端の弾性ベルトである。この中間転写ベルト31は、駆動ローラ32、従動ローラ33およびバックアップローラ34により支持および張架された状態において、その駆動ローラ32の回転力を利用して時計回りに移動可能である。
【0080】
駆動ローラ32は、モータなどの駆動源を介して時計回りに回転可能である。従動ローラ33およびバックアップローラ34のそれぞれは、駆動ローラ32の回転力を利用して、その駆動ローラ32と同様に時計回りに回転可能である。
【0081】
1次転写ローラ35は、現像装置40により形成されたトナー像を中間転写ベルト31に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ35は、中間転写ベルト31を介して現像装置40(後述する感光体ドラム411)に圧接されている。なお、1次転写ローラ35は、中間転写ベルト31の移動に応じて時計回りに回転可能である。
【0082】
ここでは、例えば、転写部30は、後述する5つの現像装置40(40G,40Y,40M,40C,40K)に対応して、5つの1次転写ローラ35(35G,35Y,35M,35C,35K)を含んでいる。
【0083】
2次転写ローラ36は、中間転写ベルト31の表面に転写されたトナー像を媒体Mの表面に転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ36は、バックアップローラ34に圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ36は、中間転写ベルト31の移動に応じて反時計回りに回転可能である。
【0084】
クリーニングブレード37は、中間転写ベルト31の表面に残留した不要なトナーを掻き取る。
【0085】
現像装置40は、トナー像を形成するために、静電潜像を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像にトナーを付着させる。ここでは、例えば、画像形成装置1は、5つの現像装置40(40G,40Y,40M,40C,40K)を備えている。現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれは、例えば、後述するトナー43G,43Y,43M,43C,43K(図3図5参照)を用いて現像処理する。
【0086】
また、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれは、筐体10に対して着脱可能に装着されていると共に、中間転写ベルト31の移動経路に沿って配列されている。ここでは、例えば、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kは、中間転写ベルト31の移動方向において、上流側(駆動ローラ32に近い側)から下流側(従動ローラ33に近い側)に向かって、この順に配置されている。
【0087】
現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれには、トナー43G,43Y,43M,43C,43Kが収納されている。ここでは、例えば、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれに、互いに異なる色のトナー43G,43Y,43M,43C,43Kが収納されている。具体的には、現像装置40Gには、例えば、金色(ゴールド)のトナー43Gが収納されている。現像装置40Yには、例えば、黄色(イエロー)のトナー43Yが収納されている。現像装置40Mには、例えば、赤色(マゼンタ)のトナー43Mが収納されている。現像装置40Cには、例えば、青色(シアン)のトナー43Cが収納されている。現像装置40Kには、例えば、黒色(ブラック)のトナー43Kが収納されている。
【0088】
なお、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれの詳細な構成に関しては、後述する。
【0089】
定着部50は、加圧処理および加熱処理を用いて、媒体Mの表面にトナー像を定着させる。この定着部50は、例えば、加熱ローラ51と、加圧ローラ52と、ヒータ53と、サーミスタ54とを含んでいる。
【0090】
加熱ローラ51は、例えば、中空円筒状の芯金と、その芯金の外周面を被覆する耐熱弾性層と、その耐熱弾性層の外周面を被覆する樹脂チューブとを含んでいる。芯金は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含んでいる。耐熱弾性層は、例えば、シリコーンゴムなどの高分子材料を含んでいる。樹脂チューブは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)などを含んでいる。なお、加熱ローラ51は、モータなどの駆動源を介して時計回りに回転可能である。
【0091】
加圧ローラ52は、例えば、加熱ローラ51と同様の構成を有している。この加圧ローラ52は、加熱ローラ51に圧接されており、その加熱ローラ51の回転に応じて反時計回りに回転可能である。
【0092】
ヒータ53は、加熱ローラ51(芯金)の内部に設置されており、例えば、ハロゲンランプなどである。
【0093】
サーミスタ54は、加熱ローラ51から離れた位置に配置されており、その加熱ローラ51の表面温度を検出する。このサーミスタ54により検出された温度情報は、例えば、画像形成装置1の温度制御などに利用される。サーミスタ54により検出された温度情報に基づいて、ヒータ53の動作(オン/オフ)が制御されるため、加熱ローラ51の表面温度が制御される。
【0094】
搬送ローラ71〜77は、筐体10の内部において、送り出しローラ60により取り出された媒体Mを搬送させる。媒体Mの片面だけに光輝性画像が形成される場合には、例えば、搬送経路R1,R2に沿って搬送ローラ71〜73により媒体Mが搬送される。媒体Mの両面に光輝性画像が形成される場合には、例えば、搬送経路R1〜R5に沿って搬送ローラ71〜77により媒体Mが搬送される。なお、媒体Mの搬送経路の詳細に関しては、後述する。
【0095】
搬送路切り替えガイド81,82は、媒体Mの片面だけに光輝性画像が形成されるか、媒体Mの両面に光輝性画像が形成されるかなどの条件に応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。
【0096】
<2−2.現像装置の構成>
図3は、図1に示した現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kの構成を拡大していると共に、図4は、図1および図3に示した画像形成装置1の一部の構成を拡大している。
【0097】
なお、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれは、トナーカートリッジ42に収納されているトナー43G,43Y,43M,43C,43Kの種類が異なることを除き、同様の構成を有している。このため、図3では、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kをまとめて示している。
【0098】
現像装置40Gは、例えば、現像部41と、トナーカートリッジ42とを備えている。
【0099】
現像部41は、例えば、感光体ドラム411と、帯電ローラ412と、発光ダイオード(LED)ヘッド413と、現像ローラ414と、クリーニングブレード415と、供給ローラ416と、現像ブレード417とを含んでいる。
【0100】
感光体ドラム411は、例えば、円筒所の導電性支持体と、その導電性支持体の外周面を被覆する光導電層とを含む有機系感光体であり、モータなどの駆動源を介して反時計回りに回転可能である。導電性支持体は、例えば、アルミニウムなどの金属材料を含む金属パイプである。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層などを含む積層体である。
【0101】
帯電ローラ412は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでおり、時計回りに回転可能である。この帯電ローラ412は、感光体ドラム411の表面を帯電させるために、その感光体ドラム411に圧接されている。
【0102】
LEDヘッド413は、感光体ドラム411の表面を露光して、その感光体ドラム411の表面に静電潜像を形成する露光装置であり、例えば、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイは、そのLED素子から出力された光(照射光)が感光体ドラム411の表面において結像するように配置されている。
【0103】
現像ローラ414は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでおり、時計回りに回転可能である。この現像ローラ414は、供給ローラ416から供給されるトナー43Gを担持すると共に、感光体ドラム411の表面に形成された静電潜像にトナー43Gを付着させる。
【0104】
クリーニングブレード415は、感光体ドラム411の表面に残留した不要なトナー43Gを掻き取る。このクリーニングブレード415は、例えば、図3および図4において紙面と交差する方向(感光体ドラム411の回転軸と略並行な方向)に延在しており、その感光体ドラム411に圧接されている。また、クリーニングブレード415は、例えば、ウレタンゴムなどの高分子材料を含んでいる。
【0105】
供給ローラ416は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでおり、反時計回りに回転可能である。この供給ローラ416は、現像ローラ414に摺接しながら、感光体ドラム411の表面にトナー43Gを供給する。
【0106】
現像ブレード417は、供給ローラ416の表面に供給されたトナー43Gの厚さを規制する。この現像ブレード417は、現像ローラ414から所定の間隔を隔てるように配置されており、その間隔に基づいてトナー43Gの厚さが制御される。また、現像ブレード417は、例えば、ステンレスなどの金属材料を含んでいる。
【0107】
トナーカートリッジ42は、例えば、現像部41に対して着脱可能に装着されており、現像剤であるトナー43Gを収納している。このトナー43Gは、上記した本発明のトナーと同様の構成を有しており、光輝性画像を形成するために用いられる。
【0108】
なお、現像装置40Y,40M,40C,40Kのそれぞれの構成は、例えば、上記したように、トナーカートリッジ42にトナー43Y,43M,43C,43Kが収納されていることを除き、現像装置40Gの構成と同様である。すなわち、現像装置40Yでは、トナーカートリッジ42に黄色のトナー43Yが収納されている。現像装置40Mでは、トナーカートリッジ42に赤色のトナー43Mが収納されている。現像装置40Cでは、トナーカートリッジ42に青色のトナー43Cが収納されている。現像装置40Kでは、トナーカートリッジ42に黒色のトナー43Kが収納されている。
【0109】
<2−3.トナーカートリッジの構成>
図5は、図3に示した現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kの一部(トナーカートリッジ42)の構成を拡大している。
【0110】
なお、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれに適用されるトナーカートリッジ42は、収納部425に収納されているトナー43G,43Y,43M,43C,43Kの種類が異なることを除き、同様の構成を有している。このため、図5では、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kのそれぞれに適用されるトナーカートリッジ42をまとめて示している。
【0111】
現像装置40Gに適用されるトナーカートリッジ42は、例えば、カートリッジ本体421の内部(収納部425)にトナー43Gを収納していると共に、その収納部425に撹拌バー422を備えている。このトナーカートリッジ42は、例えば、図5において紙面と交差する方向に延在している。
【0112】
カートリッジ本体421には、トナー43Gを排出するための排出口424が設けられており、そのトナー43Gは、トナーカートリッジ42から供給ローラ416(図4参照)に供給される。この排出口424には、例えば、スライド機構を利用して開閉可能なシャッタ423が設けられている。
【0113】
カートリッジ本体421の内部は、複数の領域に区画されており、その複数の領域のうちの1つは、トナー43Gが収納されている収納部425である。
【0114】
撹拌バー422は、例えば、トナーカートリッジ42と同様に、図5において紙面と交差する方向に延在している。この撹拌バー422は、回転軸を中心として回転可能であり、収納部425に収納されたトナー43Gを撹拌する。
【0115】
なお、現像装置40Y,40M,40C,40Kのそれぞれに適用されるトナーカートリッジ42の構成は、例えば、上記したように、トナーカートリッジ42に収納されているトナー43Y,43M,43C,43Kの種類が異なることを除き、現像装置40Gに適用されるトナーカートリッジ42の構成と同様である。
【0116】
<2−4.動作>
次に、図1図5を参照して、画像形成装置1の動作に関して説明する。
【0117】
この画像形成装置1では、例えば、以下で説明する現像処理、1次転写処理、2次転写処理、定着処理およびクリーニング処理を行いながら、媒体Mの表面に光輝性画像が形成される。以下では、例えば、トレイ21に収納された媒体Mを用いる場合に関して説明する。
【0118】
[現像処理]
トレイ21に収納された媒体Mは、搬送ローラ71,72により、搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送される。この場合には、トレイ21に収納された複数の媒体Mが送り出しローラ61により1つずつ取り出される。
【0119】
現像処理では、現像装置40Gの現像部41において、感光体ドラム411が回転すると、帯電ローラ412が回転しながら感光体ドラム411の表面に直流電圧を印加する。この直流電圧は、例えば、高圧電源から帯電ローラ412に供給される。これにより、感光体ドラム411の表面が均一に帯電する。
【0120】
続いて、画像信号に応じて、LEDヘッド413が感光体ドラム411の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム411の表面では、光の照射部分において表面電位が減衰(光減衰)するため、その感光体ドラム411の表面に静電潜像が形成される。
【0121】
一方、現像装置40Gのトナーカートリッジ42において、シャッタ423がスライドすると、収納部425に収納されているトナー43Gが排出口424を通じて供給ローラ416に放出される。
【0122】
供給ローラ416に電圧が印加されると、その供給ローラ416が回転する。この電圧は、例えば、高圧電源から供給ローラ416に供給される。これにより、トナーカートリッジ42からトナー43Gが供給ローラ416の表面に供給される。
【0123】
現像ローラ414に電圧が印加されると、その現像ローラ414が供給ローラ416に圧接されながら回転する。この電圧は、例えば、高圧電源から現像ローラ414に供給される。これにより、供給ローラ416の表面に供給されたトナー43Gが現像ローラ414の表面に吸着するため、そのトナー43Gが現像ローラ414の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ414の表面に吸着したトナー43Gの一部が現像ブレード417により除去されるため、その現像ローラ414の表面に吸着したトナー43Gの厚さが均一化される。
【0124】
現像ローラ414に圧接されながら感光体ドラム411が回転すると、その現像ローラ414の表面に吸着されていたトナー43Gが感光体ドラム411の表面に移行するため、その感光体ドラム411の表面に金色のトナー像が形成される。
【0125】
詳細には、感光体ドラム411(導電性支持体)と現像ローラ414との間にバイアス電圧が印加されているため、その感光体ドラム411と現像ローラ414との間に、静電潜像に起因する電気力線が発生する。これにより、現像ローラ414の表面において帯電されたトナー43Gは、感光体ドラム411の表面のうち、静電潜像が形成されている部分に静電気力を介して付着する。これにより、感光体ドラム411の表面において静電潜像の形成部分が現像されるため、その感光体ドラム411の表面に金色のトナー像が形成される。
【0126】
[1次転写処理]
転写部30において、駆動ローラ32が回転すると、その駆動ローラ32の回転に応じて従動ローラ33およびバックアップローラ34が回転する。これにより、中間転写ベルト31が矢印F5の方向に移動する。
【0127】
1次転写処理では、1次転写ローラ35Gに電圧が印加されている。この電圧は、例えば、高圧電源から1次転写ローラ35Gに供給される。この1次転写ローラ35Gは、中間転写ベルト31を介して感光体ドラム411に圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム411の表面に形成された金色のトナー像は、中間転写ベルト31の表面に転写される。
【0128】
こののち、金色のトナー像が転写された中間転写ベルト31は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像装置40Y,40M,40C,40Kおよび1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kにおいて、上記した現像装置40Gおよび1次転写ローラ35Gと同様の手順により現像処理および1次転写処理が順に行われる。よって、中間転写ベルト31の表面に各色のトナー像が順次転写される。
【0129】
すなわち、現像装置40Yおよび1次転写ローラ35Yにより、中間転写ベルト31の表面に黄色のトナー像が転写される。続いて、現像装置40Mおよび1次転写ローラ35Mにより、中間転写ベルト31の表面に赤色のトナー像が転写される。続いて、現像装置40Cおよび1次転写ローラ35Cにより、中間転写ベルト31の表面に青色のトナー像が転写される。続いて、現像装置40Kおよび1次転写ローラ35Kにより、中間転写ベルト31の表面に黒色のトナー像が転写される。
【0130】
もちろん、実際に現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kおよび1次転写ローラ35G,35Y,35M,35C,35Kにおいて現像処理および転写処理が行われるかどうかは、画像を形成するために必要な色(トナーの種類)に応じて決定される。
【0131】
[2次転写処理]
【0132】
搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ34と2次転写ローラ36との間を通過する。
【0133】
2次転写処理では、2次転写ローラ36に電圧が印加されている。この電圧は、例えば、高圧電源から2次転写ローラ36に供給される。この2次転写ローラ36は、媒体Mを介してバックアップローラ34に圧接されるため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト31の表面に転写されたトナー像は、媒体Mの表面に転写される。
【0134】
[定着処理]
2次転写処理においてトナー像が転写された媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着部50に投入される。
【0135】
定着処理では、ヒータ53により加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に圧接されている状態において加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
【0136】
これにより、媒体Mの表面に転写されたトナー像が加熱ローラ51により加熱されるため、そのトナー像が溶融する。また、溶融状態のトナー像が加圧ローラ52により媒体Mに圧接されるため、そのトナー像が媒体Mの表面に定着する。
【0137】
トナー像が定着された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ73により矢印F2の方向に搬送されるため、スタッカ部11に送出される。
【0138】
なお、ここでは詳細に説明しないが、例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3〜R5に沿って搬送ローラ74〜77により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ71,72により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド81,82により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
【0139】
また、同様に、ここでは詳細に説明しないが、例えば、媒体Mの片面に複数回に渡って画像が形成される場合には、定着部50を通過した媒体Mは、搬送経路R3,R5に沿って搬送ローラ74〜76により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ71,72により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド81,82により制御される。これにより、媒体Mの表面(既に画像が形成されている面)において、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が再び行われる。
【0140】
[クリーニング処理]
現像装置40Gでは、感光体ドラム411の表面に不要なトナー43Gが残留する場合がある。この不要なトナー43Gは、例えば、1次転写処理において用いられたトナー43Gの一部であり、中間転写ベルト31の表面に転写されずに感光体ドラム411の表面に残留したトナー43Gである。
【0141】
クリーニングブレード415に圧接されている状態において感光体ドラム411が回転すると、その感光体ドラム411の表面に残留しているトナー43Gがクリーニングブレード415により掻き取られる。これにより、感光体ドラム411の表面から不要なトナー43Gが除去される。
【0142】
このクリーニングブレード415によるクリーニング処理は、現像装置40Y,40M,40C,40Kにおいても同様に行われる。
【0143】
また、1次転写処理において中間転写ベルト31の表面に移行したトナー43Gの一部は、2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト31の表面に残留する場合がある。
【0144】
しかしながら、中間転写ベルト31が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト31の表面に残留したトナー43Gがクリーニングブレード37により掻き取られる。これにより、中間転写ベルト31の表面から不要なトナー43Gが除去される。
【0145】
このクリーニングブレード37によるクリーニング処理では、中間転写ベルト31の表面に残留したトナー43Gだけでなく、その中間転写ベルト31の表面に残留したトナー43Y,43M,43C,43Kも同様に除去される。
【0146】
<2−5.作用および効果>
この画像形成装置1によれば、現像装置40Gにおいてトナーカートリッジ42に収納されているトナー43Gが上記した本発明のトナーと同様の構成を有している。よって、媒体Mの表面に形成された光輝性画像の画質が向上するため、優れた光輝性画像を得ることができる。これ以外の作用および効果は、本発明のトナーと同様である。
【0147】
なお、上記した画像形成装置1では、5つの現像装置40(40G,40Y,40M,40C,40K)を備えるようにした。しかしながら、現像装置40の数は、任意に変更可能である。この場合において、光輝性画像を形成するために用いられるトナーの色は、金色、黄色、赤色、青色および黒色の5色に限らず、任意の色の組み合わせに変更可能である。
【0148】
また、中間転写ベルト31の移動方向において、金色のトナー43Gを収納する現像装置40Gと、黄色のトナー43Yを収納する現像装置40Yと、赤色のトナー43Mを収納する現像装置40Mと、青色のトナー43Cを収納する現像装置40Cと、黒色のトナー43Kを収納する現像装置40Kとが上流側から下流側に向かってこの順に配列されるようにした。しかしながら、現像装置40G,40Y,40M,40C,40Kの配列順序は、任意に変更可能である。
【実施例】
【0149】
本発明の具体的な実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.トナーの製造
1−1.油相の調製
1−2.水相の調製
1−3.造粒
2.光輝性画像の評価
2−1.画質
2−2.色味
2−3.評価結果の考察
【0150】
<1.トナーの製造>
(実験例1〜21)
金色の光輝性画像を形成するために、以下の手順により、溶解懸濁法を用いてトナーを製造した。
【0151】
<1−1.油相の調製>
油相を調製する場合には、最初に、有機溶媒(酢酸エチル)58.39重量部と、塩基性の官能基を有する高分子系分散剤(日本ルーブリゾール株式会社製のSolsperse 39000)0.11重量部とを混合して、その有機溶媒中に高分子系分散剤を溶解させた。これにより、分散剤溶液が得られた。
【0152】
続いて、分散剤溶液58.5重量部と、光輝性顔料(アルミニウム粉末)6.5重量部とを混合して、その分散剤溶液中に光輝性顔料を分散させた。これにより、光輝性分散液が得られた。分散工程では、プライミクス株式会社社製のバッチ式レディミル分散機およびジルコニアビーズを用いると共に、ビーズ径=0.3mm、ビーズ充填率=55%とした。この場合には、1.2m/sの分散速度でプレ分散処理(5分間)を行ったのち、3.8m/sの分散速度で本分散処理(10分間)を行った。
【0153】
続いて、光輝性分散液を撹拌しながら加熱(50℃)したのち、その光輝性分散液と、赤橙色蛍光色素(シンロイヒ株式会社製のシンロイヒカラーFM−34N)と、黄色蛍光色素(シンロイヒ株式会社製のシンロイヒカラーFM−35N)と、結着樹脂(ポリエステル)とを混合して、その混合物を固形分が消失するまで撹拌した。これにより、光輝性色素含有液が得られた。
【0154】
最後に、光輝性色素含有液と、あらかじめ加熱(50℃)しておいた有機溶媒(酢酸エチル)と、離型剤(パラフィンワックス)と、帯電制御剤(藤倉化成株式会社製のFCA−726N)とを混合した。なお、光輝性分散液、赤橙色蛍光色素、黄色蛍光色素、結着樹脂、有機溶媒、離型剤および帯電制御剤の混合比(重量部)は、表1に示した通りである。
【0155】
【表1】
【0156】
これにより、1種類の光輝性顔料と、2種類の色素(赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素)と、結着樹脂と、離型剤と、帯電制御剤とを含む油相が得られた。
【0157】
<1−2.水相の調製>
水相を調製する場合には、最初に、水性媒体(純水)82.16重量部と、工業用リン酸三ナトリウム十二水和物2.79重量部とを混合したのち、その混合物を加熱(60℃)して、水性媒体中に工業用リン酸三ナトリウム十二水和物を溶解させた。これにより、ナトリウム含有水溶液が得られた。こののち、ナトリウム含有水溶液にpH調整用の希硝酸を加えた。
【0158】
一方、水性媒体(純水)13.69重量部と、工業用塩化カルシウム無水物1.35重量部とを混合して、その水性媒体中に工業用塩化カルシウム無水物を溶解させた。これにより、カルシウム含有水溶液が得られた。
【0159】
続いて、ナトリウム含有水溶液と、カルシウム含有水溶液とを混合したのち、その混合物を撹拌した。撹拌工程では、プライミクス株式会社社製のネオミクサを用いた。この場合には、混合物の温度を高温(60℃)に維持しながら、4300回転/分の回転速度で撹拌処理(34分間)を行った。
【0160】
これにより、水性媒体と、無機分散剤(リン酸三カルシウム)とを含む水相が得られた。
【0161】
<1−3.造粒>
油相および水相を用いて造粒する場合には、最初に、水相に油相を混合したのち、その混合物を撹拌した。この場合には、水相と油相との混合比(重量比)を水相:油相=3:1とした。撹拌工程では、ラインミルを用いると共に、1000回転/分の回転速度で撹拌処理(5分間)を行った。これにより、混合相が懸濁すると共に造粒されたため、前駆粒子を含むスラリーが得られた。
【0162】
続いて、スラリーを減圧蒸留した。これにより、有機溶媒(酢酸エチル)が揮発除去された。続いて、スラリーにpH調整剤(硝酸)を加えて、そのスラリーのpHを1.5以下に調整した。これにより、無機分散剤(リン酸三カルシウム)が溶解除去された。続いて、スラリーを脱水して、前駆粒子を回収した。続いて、純水中に前駆粒子を再分散させたのち、その純水を撹拌した。続いて、前駆粒子を脱水乾燥させたのち、その前駆粒子を分級した。
【0163】
最後に、前駆粒子100重量部と、疎水性粒子1.8重量部とを混合したのち、その混合物を撹拌した。疎水性粒子としては、日本アエロジル株式会社製の疎水性シリカRX50(平均一次粒子径=40nm)1重量部と、日本アエロジル株式会社製の疎水性シリカRX200(平均一次粒子径=12nm)0.8重量部との混合物を用いた。撹拌工程では、日本コークス工業株式会社製のヘンシェルミキサ(10リットル容)を用いると共に、5400回転/分の回転速度で撹拌処理(10分間)を行った。
【0164】
これにより、前駆粒子の表面に疎水性粒子が外添されたため、トナーが得られた。
【0165】
(実験例22)
比較のために、赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素に代えて、マゼンタ顔料分散液(富士色素株式会社製のC.I.ピグメントレッド122)およびイエロー顔料分散液(クリアラントジャパン株式会社製のC.I.ピグメントイエロー180)を用いたことを除き、同様の手順によりトナーを製造した。
【0166】
<2.光輝性画像の評価>
【0167】
上記したトナーを用いて媒体の表面に金色の光輝性画像を形成して、その光輝性画像を評価した。
【0168】
<2−1.画質>
まず、上記したトナーが搭載された画像形成装置を用いて媒体の表面に光輝性画像を形成したのち、その光輝性画像の画質を目視で判定したところ、表2に示した結果が得られた。
【0169】
画像形成装置を用いて光輝性画像を形成する場合には、その画像形成装置として、株式会社沖データ製のカラーLEDプリンタC711dnを用いた。また、光輝性画像が形成される媒体として、富士ゼロックス株式会社製の上質紙color copy(秤量=160g/cm3 )を用いた。この場合には、媒体の表面に対するトナーの付着量が0.5mg/cm2 となるように、その媒体の表面にベタ画像を形成した。
【0170】
光輝性画像の画質を判定する場合には、トナー中において光輝性顔料が凝集しなかったため、十分な光輝性が得られると共に光輝性が均一であった場合を「良」と判定した。これに対して、トナー中において光輝性顔料が凝集したため、十分な光輝性が得られないと共に光輝性が不均一であった場合を「不良」と判定した。
【0171】
<2−2.色味>
上記した画質が「良」であった光輝性画像をさらに目視で確認して、その光輝性画像の色味を5段階評価したところ、表2および図6に示した結果が得られた。図6は、金色の光輝性画像に関する色味の評価結果を表しており、図6中に示した四角の内部に記載されている数値は、以下で説明する5段階の評価結果である。
【0172】
色味を5段階評価する場合には、鮮やかな金色である場合を「5」、普通の金色である場合を「4」、やや橙色がかった金色である場合を「3」、赤色および黄色の色味が強い金色である場合を「2」、赤色および黄色の色味が弱い金色である場合を「1」とした。この5段階評価では、3以上の評価結果が実使用上において許容可能なレベルである。
【0173】
表2に示した赤橙色蛍光色素、黄色蛍光色素、赤橙色顔料および黄色顔料のそれぞれの重量比は、光輝性顔料に対する重量比であり、その光輝性顔料の重量を10とした場合の値である。なお、トナー中における光輝性顔料の含有量は、17重量%とした。
【0174】
【表2】
【0175】
<2−3.評価結果の考察>
光輝性画像の評価結果は、トナーの組成に応じて大きく変動した。
【0176】
詳細には、トナーが光輝性顔料を含んでいる場合において、そのトナーが着色用材料として顔料(赤橙色顔料および黄色顔料)を含んでいると(実験例22)、光輝性顔料が凝集したため、良好な画質が得られなかった。これに対して、トナーが光輝性顔料を含んでいる場合において、そのトナーが着色用材料として色素(赤橙色蛍光色素および黄色蛍光色素)を含んでいると(実験例1〜21)、光輝性顔料が凝集しなかったため、良好な画質が得られた。
【0177】
また、良好な画質が得られた場合(実験例1〜21)には、赤橙色蛍光色素の重量比が1.5〜2.5であると共に、黄色蛍光色素の重量が5〜7であると、実使用上において許容可能なレベルである色味(3以上の評価結果)が得られた。図6では、赤橙色蛍光色素の重量比が1.5〜2.5であると共に黄色蛍光色素の重量が5〜7である範囲に、網掛けを施している。
【0178】
この場合には、特に、赤橙色蛍光色素の重量が1.5〜2であると共に、黄色蛍光色素の重量が5〜6であると、より色味が向上した。
【0179】
表2および図6に示した結果から、トナーが光輝性顔料を含んでいる場合において、そのトナーが着色用材料として色素を含んでいると、光輝性画像の画質および色味が向上した。よって、優れた光輝性画像が得られた。
【0180】
以上、実施形態および実施例を挙げながら本発明を説明したが、本発明は実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
【0181】
例えば、本発明のトナーは、中間転写ベルトを用いた中間転写方式の画像形成装置に限られず、中間転写方式以外の方式の画像形成装置に用いられてもよい。また、例えば、本発明のトナーは、電子写真方式の画像形成装置に限られず、電子写真方式以外の方式の画像形成装置に用いられてもよい。また、本発明のトナーは、画像形成装置に限られず、画像形成装置以外の装置に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0182】
1…画像形成装置、20…トレイ、30…転写部、31…中間転写ベルト、35(35G,35Y,35M,35C,35K)…1次転写ローラ、36…2次転写ローラ、40(40G,40Y,40M,40C,40K)…現像装置、41…現像部、42…トナーカートリッジ、43G,43Y,43M,43C,43K…トナー、50…定着部、M…媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6