【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
[試薬等]
実施例において、以下の試薬等を用いた。
・L−乳酸:10wt%の水を含むL−乳酸(LA, HiPure 90) (ピュラック(Corbion Purac)社製試薬)
・グリシジルメタクリレート(GMA):ラジカル抑制剤として4−メトキシフェノールを含むグリシジルメタクリレート(GMA)(関東化学社製試薬)
・酢酸(AA):(関東化学社製試薬)
・トリエチルアミン(Et
3 N):(関東化学社製試薬)
・n−ブチルメタクリレート(BMA):(ナカライテスク社製試薬)
・界面活性剤:ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(PELEX)(PELEX OT-P、花王社製)
・界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(ナカライテスク社製)
・ラジカル開始剤:ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)(ナカライテスク社製試薬)
・ラジカル開始剤:α,α’−アゾビスイソブチロニトリル (AIBN)(ナカライテスク社製試薬)
・重クロロホルム(CDCl
3 )(市販試薬)
・トルエン(市販試薬)
・クロロホルム(市販試薬)
・n−ヘキサン(市販試薬)
・その他の溶剤(市販試薬)
【0060】
[分析方法]
・
1H NMRスペクトル測定は、アバンスシリーズ(AVANCE Series, 300MHz,Bruker Biospin 社製)を用いて行った。
・ESI−MS質量分析は、イオントラップ質量分析計 amazon SL (ESI-Ion Trap-MS) (Bruker Daltonics 社製)を用いて行った。(CDCl
3 ,TMS:テトラメチルシラン)
・ポリマーの分子量は、示差屈折検出器(Refractive Index(RI) Detector)を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GL-7400 Series, GL Science 社製)を用いて、カラム温度40℃にて、クロロホルム溶離液を用いて、ポリスチレン標準(分子量=2.2x10
3 −6.5x10
5 )を用いて測定した。
・粒子径測定は、動的光散乱装置(dynamic light scattering instrument) DLS-7000 (大塚電子社製)を用いて、He−Ne雰囲気下で行った。
・示差走査熱量分析 (Differential scanning calorimetric (DSC) analysis) は、DSC-50 (島津製作所製) を用いて、N
2 気流下(20mL/min)にて、昇温速度20℃/minにて行った。
・フィルムの物性値については、引張試験機(tensile testing machine) STA-1150 (オリエンテック社製)を用いて、20mm長さのフィルムに対して、30mm/minの引張速度(strain application change rate) で測定した。鉛筆硬度(Pencil hardness) は、4H〜4Bの三菱ユニペンシル(Mitsubishi Hi-uni pencils) を用いて行った。
【0061】
[モデル反応]
グリシジルメタクリレート(GMA)(10.0mmol)、酢酸(AA)(8.3mmol)、触媒としてトリエチルアミン(Et
3 N)(0.17mmol)、及びラジカル抑制剤として4−メトキシフェノールラジカル抑制剤として4−メトキシフェノール(0.08mmol)を密閉された試験管にて、100℃で4時間加熱した。反応は、均一系にて進行した。反応生成物を300MHz
1H NMRスペクトルにて解析した。
【0062】
図1に、
1H NMRチャートを示す。
図1(A)は、グリシジルメタクリレート(GMA)自体の
1H NMRチャートである。
図1(B)は、グリシジルメタクリレート(GMA)に酢酸(AA)を開環付加させた反応生成物
1H NMRチャートである。
図1(B)において、反応が進行するにつれて、GMAのプロトン(δ6.17)が減少し、新しいプロトンピーク(a:δ6.15,a’:δ6.12)が現れて増加した。α−付加体とβ−付加体との生成モル比は、プロトンa’とaとの強度比から、α−付加体:β−付加体=28:72と算出された。
【0063】
[実施例1:マクロモノマー(GMA-Macro)の合成]
代表例として、表1に示すコード(code)No.4について以下に示す。
【0064】
【化4】
【0065】
マグネチック撹拌子を入れた三ツ口の100mLの丸底フラスコ(その重量は予め測定したところ96.41gであった)内に、L−乳酸(9.90g,100mmol:乳酸自体としては9.0g)を入れた。フラスコを常圧で1時間、150℃にて攪拌しながら加熱し、15hPaまで徐々に減圧し、20時間維持した。その後、反応混合物を約90℃まで冷却し、反応フラスコの重さを測定すると103.36gであり、
1H NMR測定用に反応混合物の少量(〜0.02g)を取り出した。7.0g(=103.36g−96.41g)の重量差と、
1H NMRスペクトルから得られた平均重合度m=11.1とから、ポリ乳酸(PLA)の収率は、反応(1) によると96%であり、PLAの収量は8.6mmolであった。
【0066】
その後、同フラスコ内の反応混合物に、グリシジルメタクリレート(GMA)(1.35g,9.5mmol)、Et
3 N(0.19mmol)、及び4−メトキシフェノール(GMAに対して1.0mol%)を添加した。混合物を収容したフラスコをゴムストッパーを用いて密閉し、常圧にて窒素下で撹拌しながら130℃で3時間維持した。マクロモノマー生成物を単離するために、反応混合物を数mLのクロロホルムに溶解し、得られた溶液を50mLのn−ヘキサンに撹拌しながら注ぎ、生成物を沈殿させ、沈殿物をデカンテーションによって単離し、24時間真空乾燥を行い、8.0gのGMA-Macro(トータル収率:94%)を得た。
【0067】
表1に示すように、官能基(メタクリロイル基)含有率 (funct.) は97%と非常に高かった。また、バイオマス含量(biomass content) は85wt%と非常に高かった。
【0068】
図2に、
1H NMRチャートを示す。
図2(A)は、表1コード(code)No.4の反応混合物の
1H NMRチャートである。
図2(B)は、単離したGMA-Macro(m=11.1)の
1H NMRチャートである。
【0069】
図2(A)の
1H NMRチャートにおいて、カルテットプロトンピークc(δ4.38)は末端メチンプロトンに帰属され、多重プロトンピークa(δ5.15)は内部メチンプロトンに帰属される。これらピークの積分値から、PLA鎖長m=11.1と決定される。
【0070】
図2(B)の
1H NMRチャートにおいて、2つのプロトンピーク(a:δ6.14,a’:δ6.11)の強度比から、α−付加体とβ−付加体との生成モル比は、α−付加体:β−付加体=29:71と算出された。
【0071】
図3に、表1コード(code)No.4の単離したGMA-Macro(m=11.1)のESI−TOF−MS質量分析チャートを示す。GMA-Macroは、その構造として、乳酸繰り返し単位の質量72毎に鎖長m=2〜16の範囲となっていることが分かる。
【0072】
表1に示すコード(code)No.1(m<6)の場合には、GMA-Macroの単離はやや異なる方法で行った。すなわち、反応混合物のクロロホルム溶液を50mLのn−ヘキサンに撹拌せずにゆっくりと注ぎ、生成物を沈殿させた。上澄み溶剤をデカンテーションによって取り除き、残った沈殿物を24時間真空乾燥を行い、GMA-Macroを得た。
【0073】
【表1】
【0074】
[実施例2:マクロモノマーGMA-Macro (GMLm)を用いた溶液ラジカル共重合によるグラフトコポリマーの合成]
代表例として、表2に示すコード(code)No.2について以下に示す。なお、GMLmとは、マクロモノマーGMA-Macroについて、ポリ乳酸の平均重合度がmであるものを示している。
【0075】
【化5】
【0076】
n−ブチルメタクリレート(BMA)とGML7.8とを、BMA:GML7.8=87:13のモル比(共重合モノマー成分の合計量:1.0g)で混合し、バイオマス由来の含量(biomass content) が34%となるようにした。混合物をAIBN(全モノマーの3.0mol%)を含むトルエン溶液1.0mLに加え、混合溶液を75℃にて24時間攪拌しながら反応させた。反応は均一系にて進行した。その後、クロロホルム(3mL)を攪拌しながら反応混合物に添加し、クロロホルム溶液をn−ヘキサン(40mL)に撹拌しながら滴下して、生成物ポリマーを沈殿させた。ポリマーをデカンテーションによって単離し、24時間、室温にて真空下で乾燥した。0.62gのグラフトコポリマー PBMA-g-PGML7.8 を得た(収率:62%)。
【0077】
【表2】
【0078】
図4(A)に、表2コード(code)No.2のグラフトコポリマーの
1H NMRチャートを示す。
【0079】
[実施例3:キャストフィルムの作製]
実施例2で合成した各グラフトコポリマー(表2に示すコード(code)No.1〜4)を用いて、キャストフィルムをそれぞれ作製した。
【0080】
典型的には、0.30gのグラフトコポリマーサンプル(表3に示すコード(code)No.2)を含むジクロロメタン溶液(5.0mL)をテフロン(登録商標)頁岩(d=55mm)上に注ぎ、大気圧下、室温で24時間乾燥し、コポリマーのキャストフィルムを作製した。
【0081】
キャストフィルムの物性、ヤング率(Young’s modulus)、引張強度(tensile strength)、破断伸度(elongation at break)を測定した。また、コポリマーのガラス転移点温度Tg、鉛筆硬度(pencil hardness)を測定した。結果を表3に示す。良好な物性を示した。
【0082】
【表3】
【0083】
[実施例4:マクロモノマーGMA-Macro (GMLm)を用いた乳化ラジカル共重合によるグラフトコポリマーの合成]
代表例として、表4に示すコード(code)No.1について以下に示す。
【0084】
100mLのフラスコ内に、界面活性剤PELEX(2.0g,共重合モノマー成分の合計量に対して3.0wt%)及び脱イオン化水(DIW,17mL)を入れた。撹拌しながら、GML7.8(2.87g)及びn−ブチルメタクリレート(BMA,3.83g)を界面活性剤溶液に滴下して加えた。混合物をその後、超音波発生装置(UD 200,トミーデジタルバイオロジー社製)を用いて、4分間超音波処理に付した。混合物は安定なミニエマルション(miniemulsion)系を与えた。ミニエマルションを、窒素下で100mLの三ツ口フラスコに移し、温水浴を用いて70℃で30分間加熱した。攪拌しながら、ラジカル開始剤KPS(0.054g,共重合モノマー成分の合計量に対して0.84wt%)を含む3mLのDIWをミニエマルションに添加し、さらに、85℃で30分間加熱した。コモノマーへの完全な転換が観察され、PBMA-g-PGML7.8 の定量的な生成が示された。
【0085】
その後、グラフトコポリマーを次のようにして単離した。30gのNaClを含むDIW(100mL)に、3.0mLの共重合されたミニエマルション溶液を激しく撹拌しながら滴下して添加し、グラフトコポリマーを沈殿させた。コポリマーを真空下濾過によって単離し、DIWでさらに洗浄した。真空ろ過によって、白色固体を得た。単離されたグラフトコポリマーを12時間を乾燥したところ、0.53gであり、およそ60%収率に相当した。
【0086】
【表4】
【0087】
図5は、表4に示すコード(code)No.1におけるDLSによるサイズ分布測定結果を示す。
図5(A)は、重合反応前のDLSによるサイズ分布測定結果を示し、
図5(B)は、重合反応後のDLSによるサイズ分布測定結果を示す。
【0088】
[実施例5:櫛形ポリマーの合成]
代表例として、表5に示すコード(code)No.2について以下に示す。
【0089】
【化6】
【0090】
モノマーとしてGML7.8(1.01g,1.39mmol)をAIBN(モノマーの10mol%)を含むトルエン溶液1.0mLに加え、混合溶液を75℃にて24時間攪拌したところ、淡黄色の溶液が得られた。その後、クロロホルム(〜2mLまで)を溶液に添加し、クロロホルム溶液をn−ヘキサン(40mL)に撹拌しながら滴下して、生成物ポリマーを沈殿させた。ポリマーをデカンテーションによって単離し、24時間、室温にて真空下で乾燥した。0.77gの櫛形ポリマーPGML7.8を得た(収率:76%)。
【0091】
【表5】
【0092】
図4(B)に、表5コード(code)No.2の櫛形ポリマーの
1H NMRチャートを示す。