(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の基部から凸部の幅が最大であるところまでの凸部長さと平行な方向の距離)/(凸部長さ)が0.6以上0.9以下である、請求項1に記載の芯鞘型複合繊維。
前記異形芯部の少なくとも一つにおいて、(異形芯部の基部から幅が最大であるところまでの異形芯部長さと平行な方向の距離)/(異形芯部長さ)が0.6以上0.9以下である、請求項7に記載の芯鞘型複合繊維。
異形芯部の少なくとも一つにおいて、(異形芯部の最大幅)/(異形芯部の長さ)が0.7以上0.95以下である請求項7〜9のいずれか1項に記載の芯鞘型複合繊維。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態に至った経緯)
一般に、不織布からなる表面シートは、構成繊維の繊度が小さいほど、柔らかく、かつなめらかな触感を有する傾向にあり、また、液通過性は、構成繊維の繊度が大きいほど、向上する傾向にある。すなわち、触感と液透過性はトレードオフの関係にあり、不織布を構成する繊維の繊度は、製品の用途および機能に応じて、所定の触感と液透過性が得られるように決定される。また、不織布の触感は、不織布が熱接着不織布である場合には、熱接着部の形態によっても影響を受ける。
【0011】
本発明者らは、熱接着性繊維としても使用可能な芯鞘型複合繊維について、触感が良好で、かつ液透過性に優れた不織布を与え得る構成を検討した。そして、本発明者らは、繊維の変形のしやすさが不織布の柔軟性等に影響を及ぼし、繊維の変形が生じやすいように芯部の形状を選択すれば、繊度を大きくしても、不織布が柔軟なものとなると考えた。さらに、本発明者らは、繊維断面の一部において鞘成分が薄くなるように、芯部の形状を選択すれば、熱処理により繊維同士を熱接着させて熱接着不織布を製造した際、少なくとも一方の繊維は鞘成分の薄い部分で熱接着して、比較的接着面積の小さな熱接着部(接着面積の小さい熱接着部は点接着部とも称される)が形成されるようになると考えた。接着面積の大きい熱接着部は、触感の悪化、例えば肌に強い摩擦感を与えたり、ザラザラとした触感の原因となったりするため、接着面積の大きい熱接着部ではなく、点接着部がより多く形成されれば、不織布が柔軟でなめらかなものになる。そして、芯部を3つ以上の凸部を有する多葉形状とし、各凸部基部が集まっている部分の面積を小さくすることによって、変形しやすく、また、凸部の先端部付近で鞘成分の厚さが小さくなり、繊度を大きくしても、柔軟な触感を与え得る芯鞘型複合繊維が得られることを本発明者らは見出した。以下、本実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態(芯鞘型複合繊維))
本実施形態の芯鞘型複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含み、第1成分が鞘部であり、第2成分が芯部であって、横断面において、第2成分が3個以上の凸部を有する多葉形状であって、凸部のうち少なくとも一つが、凸部基部から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(凸部長さ)/(繊維半径)を有するものである。この複合繊維においては、各凸部基部が集まっている芯部中央の面積が小さくなっており、それによって複合繊維は変形しやすくなり、これを用いて作製した不織布は柔軟な触感を与えると推察される。
【0013】
本実施形態の芯鞘型複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む。第1成分は、低融点成分ということもでき、第2成分は、高融点成分ともいうことができる。本実施形態の繊維は、第1成分が熱接着成分として機能する、熱接着性複合繊維としてもよい。その場合、第2成分は、熱接着処理後の不織布において繊維形態を保持して、不織布の機械的特性を確保する。
【0014】
第2成分の紡糸後の融点は、第1成分の紡糸後の融点よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが好ましく、25℃以上高いことがより好ましい。第1成分および第2成分の融点は、DSCにより得た融解熱量曲線から求めることができる。融解熱量曲線においては、二以上のピークが出現することがある。その場合には、最大のピークを示す温度を、融解ピーク温度、すなわち融点とする。一般に、紡糸前の熱可塑性樹脂の融点の関係は、紡糸後の熱可塑性樹脂の融点の関係とほぼ同じである。すなわち、第2成分の紡糸前の融点が、第1成分のそれよりも高い場合に、一般には、第2成分の紡糸後の融点は、第1成分のそれよりも高い。したがって、第1成分および第2成分を構成する熱可塑性樹脂は、紡糸前の融点を考慮して選択すればよい。
【0015】
本実施形態で使用する熱可塑性樹脂は、上記の通り、第2成分の紡糸後の融点が第1成分の紡糸後の融点よりも高いものである限りにおいて特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂とその共重合体;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの各種ポリエチレン系樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂、各種ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックが使用できる。本実施形態の繊維は、これらの樹脂から選択される1または2以上の樹脂を含む第1成分と、これらの樹脂から選択される1または2以上の樹脂を含む第2成分とからなる。
【0016】
第1成分と第2成分の組み合わせとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂/ポリエステル系樹脂、およびポリエチレン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂の組み合わせを挙げることができ、具体的には、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、エチレン−プロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリトリメチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリトリメチレンテレフタレート、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリトリメチレンテレフタレート、エチレン−プロピレン共重合体/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリトリメチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリプロピレンを挙げることができる。
【0017】
本実施形態において、第2成分は横断面において3個以上の凸部を有する多葉形状を有する。凸部が3個以上存在する多葉形状においては、各凸部基部が集まる部分の面積を小さくして、(凸部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内となるように芯部を設計することが容易となる。凸部の数は8個以下であってよく、好ましくは6個以下である。凸部の数が多すぎると、各凸部基部が集まる部分の面積を小さくすることが難しくなり、(凸部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内にあるような芯部を形成することが難しくなる。特に好ましい凸部の数は3または4であり、最も好ましい凸部の数は4である。
【0018】
本実施形態の第2成分の形状の例を
図1(a)および(b)にて断面図で模式的に示す。
図1(a)に示す複合繊維10において、第2成分2は4個の凸部を有する多葉形状である。
図1(b)に示す複合繊維10において、第2成分2は3個の凸部を有する多葉形状である。
図1(a)および(b)において符号1は第1成分を示す。
【0019】
本実施形態においては、凸部のうち少なくとも一つが、凸部基部から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(凸部長さ)/(繊維半径)を有する。ここで、「凸部の幅」、「凸部長さ」および「繊維半径」は以下に述べる方法で測定される寸法である。
【0020】
[凸部長さ]
図1(a)および(b)に示すとおり、多葉形状の芯部の中心Cと凸部の先端Tとを結ぶ直線において、当該直線と凸部基部Bに相当する線分との交点と、凸部の先端Tまでの距離Lを凸部長さとする。凸部の先端Tは、凸部の外周のうち多葉形状の芯部の中心から最も遠い位置にある点である。凸部基部Bは、多葉形状の芯部の隣り合う凹部を結ぶ線分である。
【0021】
[凸部の幅]
凸部の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、多葉形状の芯部の中心Cと凸部の先端Tとを結ぶ直線に直交する線分の長さWが凸部の幅に相当する。この線分のうち最も長いものが、凸部の最大幅W
Mに相当する。凸部基部Bと凸部の最大幅W
Mの間で測定される幅のうち最も短いものを凸部基部の最小幅W
Sと称する。
【0022】
多葉形状の芯部の中心は、凸部の寸法および形状が略同じであり、かつ断面形状が上下左右において対称である場合、各凸部において、凸部基部を結ぶ線分の中点と、凸部の先端とを結ぶ直線を引くと、当該直線は一点で交わるので、その交点を多葉形状の芯部の中心とする。それ以外の場合は、
図2に示すように、それぞれの凸部において、凸部基部に相当する線分の中点と、凸部の先端とを結ぶ直線を引いたときに、当該直線によって形成される三角形のうち、最も大きい面積の三角形に内接する円の中心を、多葉形状の芯部の中心とする。
【0023】
[繊維半径]
電子顕微鏡等で繊維の横断面を観察したときに、繊維の外周が円形である場合には、その円の半径を繊維半径とする。繊維の外周が円形でない場合には、当該繊維の横断面の面積を求め、求めた面積と同じ面積を有する真円の半径を算出し、その半径を繊維半径とする。特に、繊維束をカッター等でスライスして繊維の横断面を露出させ、これを観察して、繊維半径を求める場合には、スライスの際に加わる力で繊維の外周が変形することがあり、その場合には横断面の面積から繊維半径を算出する。
【0024】
少なくとも一つの凸部が、凸部基部から先端までの間で最大の幅(W
M)を有するような形状であると、当該凸部の先端部において第1成分の厚さ(繊維表面と凸部外周との最短距離に相当する)を小さくしやすい。第1成分に厚さの小さい部分が存在する複合繊維を熱接着性繊維として使用して熱接着不織布を製造すると、不織布に形成される熱接着部を、例えば芯部が円形である芯鞘型複合繊維を用いる場合と比較して小さくすることができ、不織布の触感がより柔軟となる。凸部基部から先端までの間でW
Mを有するような凸部は、例えば、つぼみのような形状、マッシュルームのような形状、杓文字形状(柄を除く部分の形状)、滴状、花弁状、イチョウの葉状、かんきつ類の房状、扇形、または楕円形を有するものであってよい。
【0025】
凸部において、(凸部長さ)/(繊維半径)がより大きいほど、複数の凸部が繋がっている部分の面積がより小さくなる傾向にあり、不織布にしたときにより柔軟な触感を与えやすい。(凸部長さ)/(繊維半径)が小さいと、多葉形状において、複数の凸部が繋がっている部分の面積が大きくなって円形に近づくため、芯部の断面が円形であるものと比較して、不織布の柔軟性等に差が生じにくい。(凸部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内にある凸部は、第2成分を構成する凸部のうち一つであってよく、複数であってよく、あるいは全ての凸部について(凸部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内にあってよい。
【0026】
また、本実施形態においては、第2成分を構成する凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部基部から凸部の幅が最大であるところまでの凸部長さと平行な方向の距離)/(凸部長さ)が、好ましくは0.6以上0.9以下であり、より好ましくは0.6以上0.85以下であり、特に好ましくは0.61以上0.80以下であり、最も好ましくは0.62以上0.78以下である。凸部基部から凸部の幅が最大であるところまでの凸部長さと平行な方向の距離(以下、便宜的に「B−W
M間距離」とも呼ぶ)がより長く、したがって(B−W
M間距離)/(凸部長さ)がより大きいと、凸部の幅が最大となる位置が繊維外周により近くなる。凸部の幅が最大となる位置が繊維外周により近い凸部は、繊維外周に近い側に向かって、より張り出している形状を有し、そのような形状の凸部が形成されると、凸部の先端部付近にて第1成分の厚さがより小さくなる。なお、B−W
M間距離は、
図1(a)において、B−W
Mで示されている。(B−W
M間距離)/(凸部長さ)が上記の範囲内にある凸部は、第2成分を構成する凸部の一つであってよく、複数であってよく、あるいは全ての凸部について(凸部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内にあってよい。
【0027】
本実施形態においては、凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)が2.0以上3.3以下であってよく、好ましくは2.2以上3.2以下であってよく2.4以上3.2以下であってよく、2.6以上3.1以下であってもよい。(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)は凸部の膨らみ度合いを示し、小さすぎる、すなわち(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)の値が1に近づくと、凸部の最大幅が狭すぎるため、凸部の形状が崩れやすくなるか、あるいは(凸部基部の最小幅)が大きすぎるため、各凸部基部が集まる部分の面積が大きくなる。凸部形状が崩れ、隣り合う凸部同士が接触または一体化する、あるいは各凸部基部が集まる部分の面積が大きくなると、第2成分の形状が通常の芯鞘型複合繊維と同じ円形に近づくため、本実施形態による効果を得られないことがある。
【0028】
一方、(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)が大きすぎる場合は、凸部の最大幅が必要以上に大きいか、あるいは凸部基部の最小幅が極端に小さい状態となり、隣り合う凸部同士が接触しやすくなるか、第2成分の形状が崩れやすくなる。凸部同士が接触し、場合よって一体化したり、あるいは第2成分の形状が崩れたりすると、第2成分の形状が通常の芯鞘型複合繊維と同じ円形に近づくため、本実施形態による効果を得られないことがある。(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)が上記範囲内にある凸部は、第2成分を構成する凸部の一つであってよく、複数であってよく、あるいは全ての凸部について(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)が上記範囲内にあってよい。
【0029】
本実施形態において、凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の最大幅)/(凸部長さ)が0.7以上0.95以下であってよく、好ましくは0.72以上0.90以下であってよく、0.75以上0.88以下であってよく、0.77以上0.85以下であってよい。(凸部の最大幅)/(凸部長さ)は、凸部のアスペクト比ともいえるものであり、小さすぎる場合は凸部の最大幅が小さすぎるか、凸部の長さが長すぎる状態である。凸部の最大幅が小さいと第2成分の形状が円形に近づくため、本実施形態による効果を得られないことがある。また、凸部長さが長すぎると、第1成分の極端に薄い部分や部分的に第2成分が繊維表面に露出する部分が生じるため、この繊維を用いて製造した熱接着不織布の接着強力が低下し、毛羽立ちが生じやすくなり、あるいは不織布の強度が不十分となることがある。
【0030】
一方、(凸部の最大幅)/(凸部長さ)が大きすぎる場合、凸部の最大幅が大きすぎるか、凸部長さが短すぎる状態である。凸部の最大幅が大きすぎると、隣り合う凸部同士が接触しやすくなり、第2成分の形状が崩れ、第2成分の断面形状が通常の芯鞘型複合繊維と同じ円形に近くなるため、本実施形態による効果を得られないことがある。凸部長さが短すぎる場合も、第2成分の断面形状が円形に近くなり、本実施形態による効果を得られないことがある。(凸部の最大幅)/(凸部長さ)が上記範囲内にある凸部は、第2成分を構成する凸部の一つであってよく、複数であってよく、あるいは全ての凸部について(凸部の最大幅)/(凸部長さ)が上記範囲内にあってよい。
【0031】
上記においては、凸部の形状を特定するパラメータとして、
a (凸部長さ)/(繊維半径)
b (B−W
M間距離)/(凸部長さ)
c (凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)
d (凸部の最大幅)/(凸部長さ)
を挙げている。第2成分を構成する凸部のうち、aを満たす凸部はbないしdのいずれか一つまたは複数を満たしてよい。例えば、第2成分を構成する凸部のうち、一つまたは複数の凸部が、aとbを満たしてよく、あるいはaとcを満たしてよく、あるいはaとdを満たしてよく、あるいはaとbとcを満たしてよく、あるいはaとbとcとdを満たしてよく、あるいはaとbとdを満たしてよく、あるいはaとcとdを満たしてよい。
【0032】
第2成分を構成する凸部のうち一つまたは複数は、aを満たさないが、bないしdのいずれか一つまたは複数を満たすものであってよい。例えば、一つまたは複数の凸部は、bとcを満たしてよく、あるいはbとdを満たしてよく、あるいはcとdを満たしてよく、あるいはbとcとdを満たしてよい。
【0033】
本実施形態において、横断面における第1成分(鞘部)の最小厚さ(
図1(c)においてDpで示される)、すなわち、第2成分と繊維表面との間の最短距離は3μm以下であってよく、好ましくは2.5μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1.8μm以下である。第1成分の最小厚さの下限は例えば0.5μmであり、好ましくは0.7μmである。本実施形態の繊維を熱接着性繊維として使用した場合に、第1成分の厚さが小さい部分では、熱接着部が点接着のようになり、熱接着部にて不織布の風合いが硬くなることを抑制することができる。したがって、第1成分の最小厚さが3μm以下である複合繊維によれば、より柔軟な熱接着不織布が得られる。第1成分の最小厚さは、第2成分の断面形状が上下左右において対称であり、かつその中心が繊維の中心と一致する場合には、各凸部と繊維表面との間の最短距離に等しくなる。
【0034】
本実施形態において、第1成分(鞘部)の最大厚さは、例えば、3μm以上15μm以下であってよく、5μm以上12μm以下であってもよい。第1成分の最大厚さは、多葉形状の第2成分の各凹部について、凹部と繊維外周を結ぶ線分のうち最も短い線分の長さ(以下、便宜的に「凹部深さ」と呼び、
図1(b)および(c)においてDrで示す)を求め、求めた凹部深さのうち、最も大きい凹部深さをいう。第2成分が上下左右において対称であり、かつその中心が繊維の中心と一致する場合には、すべての凹部について、凹部深さは同じとなり、すべての凹部の凹部深さが第1成分の最大厚さとなる。
【0035】
本実施形態において、第2成分(芯部)の最小厚さは、例えば、0.5μm以上4.2μm以下であってよく、0.8μm以上4μm以下であってよい。第2成分の最小厚さは、最も大きい凹部深さ(すなわち、第1成分(鞘部)の最大厚さDr)が得られる凹部と、第2成分の中心Cとを結ぶ線分の長さをいい、
図1(b)および(c)において、Dcで示す。
【0036】
本実施形態においては、第2成分は、隣り合う凸部間の距離が比較的大きい多葉形状にし得る。特に、本実施形態の複合繊維の第2成分は、(凸部長さ)/(繊維半径)が比較的大きくて凸部が比較的長く、また、(B−W
M間距離)/(凸部長さ)を大きくして、凸部の幅が最大になる箇所が繊維外周により近い、すなわち繊維中心からより遠い形状にすることができる。それにより、凸部の幅が最大となる箇所付近で、凸部間に十分な距離が確保されて、凸部間の距離を大きくできる。
【0037】
本実施形態において、第1成分と第2成分の複合比(第1成分/第2成分)は、容積比で30/70〜80/20であってよく、好ましくは40/60〜70/30であり、より好ましくは50/50〜65/35である。この範囲外の複合比で、上記のような形状および寸法比の芯部を有する芯鞘型複合繊維を得ることは困難である。また、第1成分の割合が小さすぎる繊維は、これを熱接着性繊維として使用する場合に、熱接着強度が不十分となることがある。第2成分の割合が小さすぎる場合には、繊維の強度が低下して、不織布の機械的強度が不十分となることがある。
【0038】
本実施形態の複合繊維の繊度は特に限定されず、用途等に応じて例えば0.6dtex以上15dtex以下としてよく、好ましくは0.8dtex以上10dtex以下であり、より好ましくは1.0dtex以上8dtex以下である。本実施形態の複合繊維は、繊度を例えば2.0dtex以上2.8dtex以下にしても、繊度が1.6dtex以上2.8dtex以下の芯部が円形であって凸部を有しない芯鞘型複合繊維と同程度またはそれより柔軟な不織布を得ることができる。
【0039】
本実施形態の複合繊維の繊維長も特に限定されない。不織布を製造するときに、繊維ウェブをカード機を用いて作製する場合、繊維は有限長の短繊維の形態であってよく、繊維長は、例えば、1mm〜100mmの範囲内にあってよく、好ましくは28mm〜72mm、より好ましくは32mm〜64mmの範囲内にある。エアレイド機を用いて繊維ウェブを作製する場合においては、繊維長は3mm〜30mmの範囲内にあってよく、好ましくは5mm〜25mmの範囲内にある。湿式抄紙法で繊維ウェブを作製する場合、繊維長は1.5mm〜20mmの範囲内にあってよく、好ましくは1mm〜10mmの範囲内にある。
【0040】
(第2の実施形態(芯鞘型複合繊維))
上記のとおり、第1の実施形態の複合繊維は、第2成分において凸部基部が集まった部分の面積が小さいものである。そのような第2成分を実現できるように、紡糸ノズルおよび紡糸条件を選択して芯鞘型複合繊維を製造する場合には、製造条件の変動等により、繊維断面を観察したときに1つまたは複数の凸部が「はずれた」または「ちぎれた」状態となっている、またはそのように見えることがある。また、凸部が「はずれた」または「ちぎれた」状態の繊維は、第1の実施形態の繊維を製造する場合に、一ロットにおいて一定割合で含まれることもある。そのように凸部の一部が「はずれた」または「ちぎれた」状態の繊維は、第1の実施形態の繊維と同様に、柔軟な触感の不織布を与え、本発明の実施形態に含まれるものである。そこで以下においてはそのような繊維を第2の実施形態として説明する。
【0041】
第2の実施形態の芯鞘型複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含み、長さ方向に垂直な面で切断した横断面において、第1成分が繊維表面の全部を占める鞘部を構成し、第2成分が、その断面形状において2個以上の凸部を有する多葉形状の芯部と、1または複数の、滴状、花弁状、イチョウの葉状、かんきつ類の房状、扇形、または楕円形の異形芯部とを構成し、異形芯部のうち少なくとも一つが、基部(異形芯部において、繊維の中心に近い先端部分のことを指す、以下同じ)から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(異形芯部長さ)/(繊維半径)を有するものである。
第1成分および第2成分については、第1の実施の形態で説明したとおりであるから、ここではその説明を省略する。
【0042】
本実施形態においては、第2成分が、断面形状において2個以上の凸部を有する多葉形状の芯部と、1または複数の、滴状、花弁状、イチョウの葉状、かんきつ類の房状、扇形、または楕円形の異形芯部とを構成している。すなわち、第2成分は、3つ以上の凸部を有する多葉形状から、1または複数の凸部がはずれた、またはちぎれたような構成のものである。
【0043】
本実施形態の第2成分の形状の例を
図3(a)〜(c)にて断面図で示す。これらの図において、符号12aが異形芯部であり、符号12bが多葉形状の芯部である。
図3(a)に示す繊維20においては、1個の異形芯部12aと、3つの凸部を有する多葉形状の芯部12bとで第2成分が構成されており、4個の凸部を有する多葉形状から1個の凸部が外れたように見えるものである。
図3(b)に示す繊維20においては、2個の異形芯部12aと、2つの凸部を有する多葉形状の芯部12bとで第2成分が構成されており、4個の凸部を有する多葉形状から2個の凸部が外れたように見えるものである。
図3(c)に示す繊維20においては、1個の異形芯部12aと、2つの凸部を有する多葉形状の芯部12bとで第2成分が構成されており、3個の凸部を有する多葉形状から1個の凸部が外れたように見えるものである。
【0044】
本実施形態においては、異形芯部の少なくとも一つが、基部から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(異形芯部長さ)/(繊維半径)を有する。ここで、「異形芯部の長さ」および「異形芯部の幅」は以下に述べる方法で測定される寸法である。「繊維半径」の測定方法は先に第1の実施形態に関して説明したとおりである。
【0045】
[異形芯部長さ]
異形芯部の基部B’と、異形芯部の先端T’を結ぶ線分の長さを異形芯部長さL’とする。異形芯部の基部B’は、繊維の中心に近い側の端部であり、通常、最も細くなっている部分であるか、その近傍にある。異形芯部の先端T’は、異形芯部の基部B’から最も遠い位置にある点である。滴状の異形芯部の基部B’と先端T’を
図4に示す。
【0046】
[異形芯部の幅]
異形芯部の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、異形芯部長さL’と平行な方向に直交する線分の長さが異形芯部の幅に相当する。この線分のうち最も長いものが、異形芯部の最大の幅W
M’に相当する。本実施形態において、異形芯部は基部から先端までの間で最大の幅W
M’を有する。
【0047】
少なくとも一つの異形芯部が、基部から先端までの間で最大の幅を有するような形状であると、当該異形芯部の先端部において第1成分の厚さ(繊維表面と凸部外周との最短距離に相当する)を小さくしやすい。また、本実施形態においては、2個以上の凸部を有する多葉形状の芯部とともに、(異形芯部長さ)/(繊維半径)が上記の範囲内にある異形芯部が存在しており、これらの芯部は、第1の実施形態にて説明した第2成分の凸部が「外れる」または「ちぎれる」ことによって形成されたものとみなすことができる。したがって、本実施形態の複合繊維は、第1の実施形態の複合繊維と同様の効果を発揮することができる。
【0048】
本実施形態においては、第2成分を構成する少なくとも一つの異形芯部において、(異形芯部の基部から幅が最大であるところまでの異形芯部長さと平行な方向の距離)/(異形芯部長さ)が0.6以上0.9以下であることが好ましい。異形芯部がそのような寸法比を満たすことによる効果は、第1の実施形態の複合繊維において、(B−W
M間距離)/(凸部長さ)が0.6以上0.9以下であることによりもたされる効果と同じである。
【0049】
本実施形態においては、異形芯部の少なくとも一つにおいて、(異形芯部の最大幅)/(異形芯部の長さ)が0.7以上0.95以下であってよく、好ましくは0.72以上0.90以下であってよく、0.75以上0.88以下であってよく、0.77以上0.85以下であってよい。異形芯部において、(異形芯部の最大幅)/(異形芯部の長さ)がこの範囲内にあることによる効果は、先に第1の実施形態に関連して説明したとおりである。
【0050】
上記においては、異形芯部の形状を特定するパラメータとして、
a’ (異形芯部長さ)/(繊維半径)
b’ (異形芯部の基部から幅が最大であるところまでの異形芯部長さと平行な方向の距離)/(異形芯部長さ)
c’ (異形芯部の最大幅)/(異形芯部の長さ)
を挙げている。異形芯部のうち、a’を満たす凸部はb’およびc’の一方または両方を満たしてよい。例えば、異形芯部のうち、一つまたは複数の芯部が、a’とb’を満たしてよく、あるいはa’とc’を満たしてよく、あるいはa’とb’とc’を満たしてよい。また、異形芯部のうち一つまたは複数は、a’を満たさないが、b’およびc’の一方または両方を満たすものであってよい。
【0051】
本実施形態において、横断面における第1成分(鞘部)の最小厚さ、すなわち、第2成分と繊維表面との間の最短距離は、3μm以下であってよく、好ましくは2.5μm以下であり、より好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1.8μm以下である。第1成分の最小厚さの下限は例えば0.5μmであり、好ましくは0.7μmである。第1成分の最小厚さが小さいことによる効果は、先に第1の実施形態に関連して説明したとおりである。
【0052】
本実施形態のその他の構成(複合比、繊度、繊維長等)は、第1の実施形態に関連して説明したとおりである。したがって、ここではその説明を省略する。
【0053】
(複合繊維の製造方法)
第1の実施形態および/または第2の実施形態の芯鞘型複合繊維(以下、これらを総称して「多葉芯鞘型複合繊維」とも呼ぶ)は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、第1成分および第2成分をそれぞれ形成する熱可塑性樹脂を用意する。次いで、所望の繊維断面構造が得られるように、適切な複合型ノズルを用いて複合紡糸し、引取速度100〜1500m/minで引き取り、紡糸フィラメントを得る。紡糸フィラメントの繊度は、1.5dtex以上60dtex以下としてよい。上記のとおり、複合紡糸の際に第1の実施形態の繊維を得ようとしても、第2の実施形態の繊維が不可避的に含まれることがあり、その逆もあり得る。
【0054】
次いで、紡糸フィラメントは、必要に応じて延伸される。紡糸フィラメントは、繊維を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて、50℃以上160℃以下の延伸温度にて、1.5倍以上8倍以下倍率で延伸してよい。延伸方法は特に限定されず温水(50℃以上100℃未満)などの高温の液体で加熱しながら延伸を行う湿式延伸、高温の気体中又は高温の金属ロールなどで加熱しながら延伸を行う乾式延伸、100℃以上の水蒸気を常圧もしくは加圧状態にして繊維を加熱しながら延伸を行う水蒸気延伸などの公知の延伸方法を用いてよい。
【0055】
得られた延伸フィラメントには、所定量の繊維処理剤を必要に応じて付着させ、クリンパー(捲縮付与装置)で機械捲縮が与えられる。捲縮数は、例えば、5個/25mm〜25個/25mmとしてよく、好ましくは8個/25mm〜20個/25mmであり、より好ましくは10個/25mm〜18個/25mmである。その後、所定の繊維長に切断する。
【0056】
(原綿)
合成繊維は、不織布等の製造のために、原綿または原料繊維として、ある程度まとまった量で製造され、販売される。上記のとおり、第1の実施形態の複合繊維を製造しようとする場合には、第2の実施形態の複合繊維が不可避的に含まれることがあり、あるいはその逆もある。したがって、原綿として提供される製品においては、第1の実施形態の繊維と第2の実施形態の繊維がともに含まれてよい。そのような原綿によれば、柔軟で、かつなめらかな触感の不織布を得ることができる。原綿において、第2の実施形態の繊維の割合は特に限定されず、例えば3質量%以上80質量%以下であってよく、3質量%以上75質量%以下であってよく、3質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0057】
(不織布)
本発明の別の実施形態は、第1の実施形態の繊維および/または第2の実施形態の繊維を含む不織布である。本実施形態の不織布においては、繊維同士が第1成分により熱接着されていてもよい。不織布には、第1の実施形態の繊維のみが20質量%以上含まれてよく、あるいは第2の実施形態の繊維のみが20質量%以上含まれてよく、あるいはまた両方が合わせて20質量%以上含まれてよい。
【0058】
不織布は、第1の実施形態の繊維を50質量%以上含んでよく、例えば、第1の実施形態の繊維のみで構成されてよい。あるいは、不織布は、第2の実施形態の繊維を50質量%以上含んでよく、例えば、第2の実施形態の繊維のみで構成されてよい。あるいは、不織布は、両方の形態の繊維を合わせて50質量%以上含んでよく、例えば、両方の形態の繊維のみで構成されてよい。不織布が両方の形態の繊維を含む場合、第2の実施形態の繊維は、両方の形態の繊維を合わせた量を100質量%としたときに、3質量%以上80質量%以下を占めていてよい。
【0059】
不織布は、多葉芯鞘型複合繊維以外の他の繊維を含んでよい。他の繊維は、例えば、コットン、シルク、ウール、麻、およびパルプなどの天然繊維、レーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、およびアクリル系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66等のアミド系、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系、ならびにポリウレタン系などの合成繊維が挙げられる。合成繊維は、単一繊維であっても、複合繊維であってもよい。例えば、複合繊維は、芯鞘型複合繊維、または分割型複合繊維であってよい。また、他の繊維として、2以上の繊維を組み合わせて使用してよい。
【0060】
上記のとおり不織布は、繊維同士が熱接着により一体化されたものであってよい。あるいは、不織布は、繊維同士がニードルパンチ処理または流体流交絡処理により交絡して一体化されたものであってよい。あるいはまた、不織布は、交絡処理後に熱接着処理が施されたものであってよい。上記のとおり、多葉芯鞘型複合繊維によれば、少なくとも一部の熱接着部は、第1成分の厚さの小さいところで形成されて、より小さい面積または体積を有する。そのため、本実施形態の不織布が熱接着不織布である場合には、熱接着が強固なものとなりにくく、不織布は全体として柔らかな触感を有する。
【0061】
本実施形態の不織布を熱接着不織布として提供する場合、熱接着不織布は、多葉芯鞘型複合繊維、および必要に応じて他の繊維を用いて繊維ウェブを作製し、繊維ウェブに熱処理を施して多葉芯鞘型複合繊維の第1成分で繊維同士を熱接着させる方法で製造してよい。
繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、ならびにスパンボンドウェブ等から選択されるいずれであってよく、不織布の用途等に応じて適宜選択される。例えば、カードウェブは、不織布製造のコストの点で有利であり、また、吸収性物品の表面シートに特に適した、柔軟な触感を有する熱接着不織布を与える。
【0062】
次に、繊維ウェブを熱処理して、多葉芯鞘型複合繊維の第1成分で繊維同士を熱接着させる。熱処理は、熱風を繊維ウェブに当てる熱風加工処理、赤外線を使用した熱処理、または熱ロールを用いる方法であってよい。熱風加工処理は、例えば、エアスルー加工機(熱風貫通式熱処理機)、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。
【0063】
熱処理温度および熱処理時間は、第1の成分を構成する樹脂が軟化または溶融して、繊維同士を接合するのに十分なものとなるように、熱処理方法に応じて選択される。例えば、第1成分が高密度ポリエチレンであり、熱風加工処理により熱接着を実施する場合には、熱処理温度は好ましくは130℃以上165℃未満であり、熱処理時間は0.2秒以上25秒以下である。また、第1成分が低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンであり、熱風加工処理により熱接着を実施する場合には、熱処理温度は好ましくは120℃以上145℃未満であり、熱処理時間は0.2秒以上25秒以下である。
【0064】
必要に応じて、繊維ウェブは、熱処理の前に繊維交絡処理に付してよい。繊維交絡処理を施すと、緻密な不織布が得られる。繊維交絡処理は、例えば、ニードルパンチ処理または流体流(特に水流)交絡処理であってよい。
【0065】
不織布の目付は特に限定されず、用途等に応じて適宜選択される。不織布の目付は、例えば、5g/m
2〜120g/m
2であってよく、10g/m
2〜100g/m
2であってよい。より具体的には、不織布を、吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、目付は12g/m
2〜 90g/m
2としてよいし、15g/m
2〜80g/m
2としてもよい。不織布の厚さも特に限定されず、例えば、5g/m
2〜120g/m
2の目付を有する不織布の場合、その厚さは0.2mm〜5mmであってよい。
【0066】
本実施形態の不織布は種々の用途に使用でき、その柔軟性となめらかな触感を活かして、皮膚に直接当てて使用する皮膚接触用製品に好ましく使用され、その場合、本実施形態の不織布は、皮膚に接触する面の少なくとも一部を占める。皮膚接触用製品は、例えば、マスク、サポーターおよび包帯等の衛生物品、紙おむつ、生理用ナプキン、およびおりもの用シート等の吸収性物品、化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆シート(例えば、フェイスマスク、角質ケアシート、およびデコルテシート等)である。
【0067】
本実施形態の不織布は、吸収性物品の表面シートとして特に好ましく用いられる。上記のとおり、多葉芯鞘型複合繊維はその繊度を大きくしても、柔軟な不織布を与え、また、熱接着部の面積を小さくできる。したがって、液通過性を高めるために、例えば繊度が2.0dtex以上2.8dtex以下である多葉芯鞘型複合繊維を用いて不織布を構成しても、繊度が1.6dtex以上2.6dtex以下である通常の芯鞘型複合繊維(芯部形状が円形であるもの)を用いたものと同程度の柔軟性および触感が得られる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
第1成分が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分が60/40(第1/第2)の複合比にて
図1(a)に示す断面形状になるように配置された芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1400m/minとして、繊度3.6dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.3倍に延伸し、繊度2.1dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、51mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
【0069】
(実施例2)
第1成分が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分が60/40(第1/第2)の複合比にて
図1(a)に示す断面形状になるように配置された芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1400m/minとして、繊度5.6dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.7倍に延伸し、繊度2.6dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、51mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
【0070】
(比較例1)
第1成分が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分の複合比が60/40(第1/第2)であり、第2成分が円形である芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1400m/minとして、繊度5.6dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.7倍に延伸し、繊度2.6dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、51mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
【0071】
(比較例2)
第1成分が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分の複合比が60/40(第1/第2)であり、第2成分が円形である芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1500m/minとして、繊度3.6dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.3倍に延伸し、繊度2.2dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、51mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
【0072】
(比較例3)
第1成分が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分の複合比が60/40(第1/第2)であり、第2成分が円形である芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1500m/minとして、繊度3.5dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.4倍に延伸し、繊度1.8dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、38mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
【0073】
(比較例4)
第1成分51が高密度ポリエチレン(紡糸前の融点:128℃)、第2成分52がポリエチレンテレフタレート(紡糸前の融点:253℃)から成り、二つの成分が60/40(第1/第2)の複合比にて
図5に示す断面形状になるように配置された芯鞘型複合繊維50を製造した。具体的には、第1成分の紡糸温度は270℃、第2成分の紡糸温度は330℃とし、引取速度を1500m/minとして、繊度3.6dtexの紡糸フィラメントを得た。次いで、紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.3倍に延伸し、繊度2.2dtexの延伸フィラメントを得た。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて、15個/25mmの機械捲縮を付与した。その後、乾燥処理を施し、51mmの繊維長に切断して複合繊維を得た。
合繊維を得た。
【0074】
各実施例および各比較例で得た複合繊維で不織布を作製し、不織布の機械的物性を評価するとともに、不織布の柔軟性およびなめらかさを官能試験により評価した。不織布は、目付け約30g/m
2の繊維ウェブをローラーカード機で作製し、得られた繊維ウェブを140℃に設定したエアスルー加工機(熱風貫通式熱処理機)にて、12秒間、熱処理に付して、繊維同士を熱接着させる方法で得た。不織布の機械的物性は下記に示す方法で評価した。
【0075】
(厚さ)
厚み測定機(商品名 THICKNESS GAUGE モデル CR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cm
2あたり2.94cNの荷重を加えた状態で測定した。
【0076】
(MD強度、MD伸度、10%MD強度)
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で、引張試験に付し、切断時の荷重値(引張強度)、破断伸度、ならびに10%伸長時応力を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)を引張方向として実施した。評価結果はいずれも3点の試料について測定した値の平均で示している。
【0077】
(官能試験)
5名のモニタ各々がすべての試料を触って、柔軟性およびなめらかさについて順位を付けた。1位は3点、2位は5点、3位は10点、4位は12点、5位は15点、6位は20点として、各試料の評点を合計した。合計点の少ないものほど、より多くのモニタがより柔軟である、あるいはよりなめらかであると判断したことになる。合計点に応じて下記のとおり評価した。
++:合計点15〜45点
+ :合計点46〜65点
− :合計点66〜100点
【0078】
各実施例および比較例で得た繊維の構成、繊維の断面形状、不織布の機械的物性、および不織布の官能試験の結果を表1に示す。繊維の断面形状に関する各寸法は、得られた実施例1、2および比較例1〜4の繊維について、その繊維断面を走査型電子顕微鏡にて1000倍に拡大して観察し、20本の繊維を無作為に抽出し、抽出した各繊維について、第1の実施形態において説明した方法で測定し、その平均値を求めた。比較例1〜3の繊維は第2成分の断面形状が円形であるため、凸部に関する寸法は測定できなかった。比較例4の繊維は第2成分の凸部の幅がほぼ全体にわたって一定であったため、凸部の幅を凸部の最大幅とし、凸部基部の最小幅等は求めなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1の繊維は繊度が比較例3のそれよりも大きいにもかかわらず、不織布の官能試験において同等の評価が得られ、このことから第2成分の断面形状が不織布の柔軟性およびなめらかさに寄与することが分かる。また、実施例1の繊維で作製した不織布は、ほぼ同じ繊度を有する比較例2の繊維で作製した不織布よりも明らかに柔軟性およびなめらかさの点で優れていた。同様に、実施例2の繊維で作製した不織布は、同じ繊度を有する比較例1の繊維で作製した不織布よりも柔軟性およびなめらかさの点で優れていた。比較例4の繊維は、第2成分が4つの凸部を有する多葉形状ではあるものの、凸部長さが短く、凸部の幅が凸部全体にわたって一定であり、円形に近い形状であったため、不織布の柔軟性およびなめらかさは比較例2のそれらと同程度であった。
【0081】
本実施形態の不織布は以下の態様のものを含む。
(態様1)
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含み、
長さ方向に垂直な面で切断した横断面において、前記第1成分が繊維表面の全部を占める鞘部を構成し、前記第2成分が、その断面形状において3個以上の凸部を有する多葉形状の芯部を構成し、
前記凸部のうち少なくとも一つが、凸部基部から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(凸部長さ)/(繊維半径)を有する、
芯鞘型複合繊維。
(態様2)
前記凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の基部から凸部の幅が最大であるところまでの凸部長さと平行な方向の距離)/(凸部長さ)が0.6以上0.9以下である、態様1の芯鞘型複合繊維。
(態様3)
横断面において前記第2成分と繊維表面との間の最短距離が、3μm以下である、態様1または2の芯鞘型複合繊維。
(態様4)
前記凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の最大幅)/(凸部基部の最小幅)が2.0以上3.2以下である態様1〜3のいずれか1つの芯鞘型複合繊維。
(態様5)
前記凸部の少なくとも一つにおいて、(凸部の最大幅)/(凸部長さ)が0.7以上0.95以下である態様1〜4のいずれか1つの芯鞘型複合繊維。
(態様6)
凸部の数が3個以上6個以下である態様1〜5のいずれか1つの芯鞘型複合繊維。
(態様7)
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含み、
長さ方向に垂直な面で切断した横断面において、前記第1成分が繊維表面の全部を占める鞘部を構成し、前記第2成分が、その断面形状において2個以上の凸部を有する多葉形状の芯部と、1または複数の、滴状、花弁状、イチョウの葉状、かんきつ類の房状、扇形、または楕円形の異形芯部とを構成し、
前記異形芯部のうち少なくとも一つが、異形芯部の基部から先端までの間で最大の幅を有し、かつ0.68以上0.95以下の(異形芯部長さ)/(繊維半径)を有する、
芯鞘型複合繊維。
(態様8)
前記異形芯部の少なくとも一つにおいて、(異形芯部の基部から幅が最大であるところまでの異形芯部長さと平行な方向の距離)/(異形芯部長さ)が0.6以上0.9以下である、態様7の芯鞘型複合繊維。
(態様9)
横断面において前記第1成分と繊維表面との間の最短距離が、3μm以下である、態様7または8の芯鞘型複合繊維。
(態様10)
異形芯部の少なくとも一つにおいて、(異形芯部の最大幅)/(異形芯部の長さ)が0.7以上0.95以下である態様7〜9のいずれか1つの芯鞘型複合繊維。
(態様11)
態様1ないし6のいずれか1つの芯鞘型複合繊維と、態様7ないし10のいずれか1つの芯鞘型複合繊維とを含む原綿。
(態様12)
態様1ないし10のいずれか1つの芯鞘型複合繊維を20質量%以上含んでなり、繊維同士が前記第1成分により熱接着されている、不織布。
(態様13)
態様12の不織布を含んでなる、吸収性物品用シート。